JP4174278B2 - 送風機のファンカバー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、羽根を有する送風機、電動機、圧縮機等の冷却ファンを覆うファンカバーから漏れる騒音を低減する送風機のファンカバーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のファンカバー付回転電機を図14を参照して説明する。
電動機本体11は、固定子枠12および軸受ブラケット13を備えており、固定子枠12の内周面には固定子鉄心14が固着され、その固定子鉄心14には固定子巻線15が巻装されている。固定子鉄心14の内部には、所定の間隔をもって回転子16が配設されており、この回転子16の回転軸17は、軸受18を介して軸受ブラケット13に支持されている。このとき、回転軸17の両端部は電動機本体11よりも外方に突出するように構成されている。また、固定子枠12の外周面には、回転軸17に沿った方向に複数の冷却フィン19が形成されており、これらの冷却フィン19間に通風路20が形成されている。
【0003】
回転軸17の両端部のうち負荷側端部とは反対側である図示左端部には、冷却ファンの羽根21が固定され、回転軸17と一体に回転するように構成されている。そして、羽根21を覆うように、左側の軸受ブラケット13にはファンカバー22が、例えばネジ止めされて取り付けられている。ファンカバー22の羽根21と対向する左端面には、吸気口26が形成されている。
【0004】
このように構成されたファンカバー付回転電機において、回転子16が回転駆動されて羽根21が回転すると、その送風作用により空気が矢印Bで示すように吸気口26から吸引される。この吸引された空気は、羽根24によって出口27から通風路20内に送風されることによって、電動機本体11が冷却される。
【0005】
前記回転電機の運転時(例えば、回転周波数Nは、6000rpm(回転/分)=100Hz)における騒音を騒音計を用いて調査した。図15は騒音計にて得た騒音の波形をFFTにて周波数分析した結果を示したものである。この結果から、羽根枚数をZとすると、卓越周波数はZ・N=(13×100=1300Hz)が大きく発生している。また、その2倍成分(2Z・N=2600Hz)も発生している。このZ・N成分と2Z・N成分は一般的に羽根回転音と称している。
【0006】
さらに、全周波数域において、細かいギザギザのスペクトルが見られる。これは、羽根の回転によって発生する渦、はく離、または流れの乱れから発生する騒音である。一般的にランダム騒音と称している。
【0007】
ここで、注目すべき卓越周波数として、390Hz、650Hz、900Hz、1145Hz、1570Hz、1810Hzが見られる。これらの特徴として、
(1)図16に示すように、回転数5000rpmに変化しても上記卓越周波数は、ほとんど変化しない。その他の回転数においても同じ傾向にある。
【0008】
(2)図17に示すように、ファンカバー22を取り外すとZ・N成分と2Z・N成分以外の卓越した周波数はなくなる。
(3)ファンカバー22もしくは回転電機本体11の固有振動数とは一致していない。
【0009】
(4)ファンカバー内部に吸音材を貼り付けると、卓越した周波数は2dB程度低減する。
(5)図18に示すように、ファンカバー22内にスピーカにてホワイトノイズの音源を発生させると、上記の卓越周波数も発生する。
【0010】
(6)ファンカバー内に形成する冷却ファン周りの空間の共鳴周波数は下記式(1)に示すように計算する。
式(1)に円筒空間の空間共鳴周波数を計算する式を示す。
【0011】
【数1】
Figure 0004174278
ここで、α:表1に示す値、R:ファンカバーの内径半径、
,l:それぞれx、y、z方向の節線の数
C:音速、空気の場合C=(331.5+0.6t)(m/s)
t:温度(℃)
【0012】
【表1】
Figure 0004174278
【0013】
【表2】
Figure 0004174278
【0014】
表2に示すように、ファンカバー内の空間の空間共鳴周波数を計算すると、前記の卓越周波数に一致することからもファンカバー内に形成させるのは空間共鳴周波数であるといえる。したがって、冷却ファンで発生した騒音が、騒音伝搬経路であるファンカバー内の空間で空間共鳴し、拡大していたものであると推定される。
【0015】
図19は騒音要因をまとめたものである。前記ファンカバーから漏れる騒音を低減するための手法は大別すると、騒音発生源自体を抑制する方法と騒音の伝搬経路で騒音を抑制する方法の2種類がある。
【0016】
まず、第1の騒音発生源自体を抑制する方法の中で羽根の回転によって発生する騒音の抑制方法は、例えば、特開2000−045992号公報に開示されている。この騒音の抑制方法は図20に示すように、機械的回転バランスを考慮し送風羽根21の車軸25から放射状に形成される。羽根24の間隔を不等配ピッチにすることによって、冷却性能の低下を招くこともなく、羽根の回転によって発生する卓越した周期的な騒音の低減を図ることができる。つまり、Z・N成分と2Z・N成分の羽根回転音を低減することができる。23は車盤である。
【0017】
次に、羽根によって発生する渦による騒音と流れの乱れによるランダム騒音に関しては、従来から一般的に羽根断面形状を流線形にすることにより、渦による騒音と流れの乱れによる騒音を低減してきている。
【0018】
上記のような構成において、騒音発生源自体を抑制する方法として騒音の低減が図られている。送風機の騒音は、効率が最大になる定格点においては、流れの状態が良好で渦、はく離もできにくく、ランダム騒音に対する空気力学的の諸条件も最も良いので、騒音も最小となる。しかしながら、可変速運転などで回転数が変化する場合、定格点がずれると、特に流量が減少して圧力が大きくなったり、失速状態になると、渦、はく離もでき、ランダム騒音が大きくなる場合がある。
上記の点に鑑み、第2の騒音源から発生した音について伝搬経路で騒音を抑制する方法が施されている。
【0019】
発生した冷却ファン騒音の伝搬経路を抑制する方法として、消音装置で騒音を低減する方法があり、例えば、特開昭62−217833号公報、特開昭62−221837号公報、特開昭63−121445号公報、特開昭63−206137号公報、特開平07−298545号公報に開示されている。
【0020】
代表例として、特開昭62−221837号公報に記載のものを図21に示す。回転電機本体1の左端に取り付けられた冷却ファン2を覆うようにファンカバー3を配置しこのファンカバー3の内側に、多孔質プラスチック、グラスウール、フェルトロックウール等からなる吸音部材4を取着した消音装置が示されている。
【0021】
しかしながら、上記構成の吸音部材を取着した消音装置では、吸音部材が経年劣化し、吸音部材をその都度交換しなければならない。例えば、10年間メンテナンスフリーとしての仕様もあり、吸音部材が使用できない場合もある。
【0022】
また、吸音材に頼らない消音装置として、図22に示す特開平07−298545号公報に開示の二重構造のファンカバーが知られている。内部に回転子5と固定子6を包含した回転電機本体9の左端にファン7を取り付け、このファン7を取り囲むように二重構造のファンカバー8,8が配置されている。しかしながら、このように二重構造のファンカバーにすると、遮音性能は向上するが、通風特性が損なわれる場合がある。また、回転電機本体の軸方向の寸法が大きくなるため、取り付けが不可能となる場合もある。さらに、コストアップになるなどの問題もある。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたもので、その課題は、騒音伝搬経路で騒音を抑制する方法として、空間共鳴音を低減することで、騒音源の音を拡大することなく、吸音部材に頼ることなく、また二重構造のファンカバーでなくても騒音が低減でき、しかも通風特性の損なわれない送風機のファンカバーを提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、内周面に固定子鉄心を固着した固定子枠と固定子鉄心の内部に所定の間隔をもって配置された回転子を軸受を介して支持する軸受ブラケットとを備えた回転電機本体の前記軸受ブラケットから外部に突出した回転軸に冷却ファンを固定し、前記冷却ファンをファンカバーで覆い、前記冷却ファンの回転により前記ファンカバーの中央部に設けられた吸込口から吸い込んだ空気を、前記ファンカバーの内壁と前記軸受ブラケットとで構成される空間部を通って前記固定子枠外周に形成された出口から吐き出すように構成された送風機のファンカバーにおいて、前記ファンカバーの内径半径をRとして、前記ファンカバーの中心から半径方向への距離をLとしたとき、前記ファンカバーの内側に平坦面を0.75R≦L≦0.95Rの範囲内に設けたことを特徴とする。
【0025】
請求項1によると、ファンカバー内部の空間における空間共鳴は、単純な円筒形状などの空間ほど、卓越周波数が発生しやすく、前記ファンカバーの内側に平坦面を設けることにより卓越した周波数を分散させ、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の送風機のファンカバーにおいて、前記平坦面の個数を9個以下であることを特徴とする。
請求項2によると、平坦面が10箇所以上の場合、従来のファンカバーの形状である円筒に近づくため、平坦面を2箇所から9箇所までにすることにより、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0027】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2記載の送風機のファンカバーにおいて、前記平坦面の個数をZ個配列したとき、配列の位置角度をθ1とし、360/Z=θと定義したとき、θ1=θ±10度の範囲内を満たすことを特徴とする。
【0028】
請求項3によると、前記ファンカバー内部の空間共鳴は、平坦面の配列の位置角度を360/Z=θとすると、平坦面が等間隔にすることにより、平坦面の長さが大きくとれるため、空間共鳴周波数の基本波に対して分散周波数のズレが大きくなり、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2記載の送風機のファンカバーにおいて、前記平坦面の個数を2個配列したとき、配列の位置角度をθ2とし、θ2=60度〜180度の範囲にあって、θ3=θ2±10度の範囲内を満たすことを特徴とする。
【0030】
請求項4によると、平坦面の個数を2個とした場合のみ、配列の位置角度をθ2とし、θ2=60度〜180度とすると、平坦面の長さがさらに大きくとれることから、空間共鳴周波数において、円筒部の基本波成分の占める割合が小さくなり、平坦面で形成される周波数成分の割合が大きくなり、分散される成分のズレが大きくなり、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0031】
請求項5に記載の発明は、内周面に固定子鉄心を固着した固定子枠と固定子鉄心の内部に所定の間隔をもって配置された回転子を軸受を介して支持する軸受ブラケットとを備えた回転電機本体の前記軸受ブラケットから外部に突出した回転軸に冷却ファンを固定し、前記冷却ファンをファンカバーで覆い、前記冷却ファンの回転により前記ファンカバーの中央部に設けられた吸込口から吸い込んだ空気を、前記ファンカバーの内壁と前記軸受ブラケットとで構成される空間部を通って前記固定子枠外周に形成された出口から吐き出すように構成された送風機のファンカバーにおいて、前記ファンカバーの内径の半径Rと波形の振幅Aとの比が、0.1≦A/R≦0.2の範囲内にある波形を前記ファンカバーに設けたことを特徴とする。
【0032】
請求項5によると、前記ファンカバー内側の空間共鳴は、低減したい卓越した形状にすることによって周波数のズレを周期的に分散させることができるため、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0033】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の送風機のファンカバーにおいて、前記波形の略正弦波形をD、波形の数をn、機械角をφとしたとき、D=A・Sin・nφで表されることを特徴とする。
【0034】
請求項6によると、前記ファンカバー内側の空間共鳴は、低減したい卓越した略正弦波形状にすることによって周波数のズレを周期的に分散させることができるため、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0035】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の送風機のファンカバーにおいて、前記波形の数nは、3≦n≦12の範囲のうちいずれか1つとしたことを特徴とする。
【0036】
請求項7によると、前記ファンカバー内側の空間共鳴は、卓越した周波数のズレを周期的に分散させるが、次数nが13以上であると、従来のファンカバーの円筒形状に近づくため、前記ファンカバーを周期的変形の3から12までが騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0037】
請求項8に記載の発明は、請求項5または請求項7記載の送風機のファンカバーにおいて、前記波形をのこぎり波形状としたことを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項5または請求項7記載の送風機のファンカバーにおいて、前記波形を矩形波形状としたことを特徴とする。
【0038】
請求項8または請求項9によると、前記ファンカバー内側の空間共鳴は、のこぎり波または矩形波形状にすると、卓越した周波数を分散させるとともに、前記ファンカバー内面が音波の反射が拡散するため、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0039】
請求項10に記載の発明は、請求項5または請求項7記載の送風機のファンカバーにおいて、前記波形をのこぎり波形状または矩形波形状とし、前記内径の半径Rの外側半波分のみを残した形状としたことを特徴とする。
【0040】
請求項11に記載の発明は、請求項5または請求項7記載の送風機のファンカバーにおいて、前記波形をのこぎり波形状または矩形波形状とし、前記内径の半径Rの内側半波分のみを残した形状としたことを特徴とする。
【0041】
請求項10または請求項11によると、反射面が拡散されるため、騒音を極めて効果的に低減することができるとともに、次数が小さい略正弦波形状のn=3〜7程度においては、円周面ができるため、送風機本体とファンカバーの取り付けが簡単となる。
【0042】
本発明の送風機のファンカバーは上記のように構成されているので、ファンカバー内側の空間共鳴は、円筒形状の単純な空間ほど起こりやすいことから、ファンカバーの内側に平坦面を設けた形状にすることにより卓越した周波数を分散させ、騒音が効果的に低減できる。またファンカバーの形状を周期的に変形させることにより、卓越した周波数を分散させるとともに、ファンカバー内部の音波の反射を拡散させるため、騒音を効果的に低減できる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を回転電機の中で全閉外扇形の電動機に適用した実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバー方向からみた正面図である。本実施の形態の送風機のファンカバーが既に説明した図14の従来例と相違する構成は、ファンカバーの内部の一部分に平坦面10を設けた点であり、その他の構成は同一であるので、同一部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0044】
前記式(1)に示したように、ファンカバー22の平均半径Rで空間共鳴周波数が決定される。平均半径Rを短くすると空間共鳴周波数が高くなり、平均半径Rを長くすると空間共鳴周波数が低くなる。このことを利用し、平坦面10を設けることによって空間の一部の共鳴周波数が高くなる。また、平坦面10のない円筒部の共鳴周波数はそのまま変化しない。したがって、卓越した空間共鳴周波数が、そのまま変化しない周波数と平坦面10によりできる共鳴周波数によって分散される。
【0045】
さらに、この原理を前記式(1)から数値でもって説明する。円筒部の半径R以外は、温度が一定であるとすれば、α、n、l、C、tは、すべて定数となる。ファンカバー22内部の空間の半径Rを変数とすると、空間共鳴周波数が変化する。この空間共鳴周波数は、ファンカバー22の内部空間の長さによる波長である。したがって、ファンカバー22内部の空間の長さを一部変更することによって、空間共鳴周波数が分散されることになる。表3に分散されるズレの周波数を示す。
【0046】
【表3】
Figure 0004174278
【0047】
本実施形態に係る回転電機について、騒音測定を行った結果は図2に示すようになった。この図2と従来例で示した図15とを比較して、卓越周波数が分散し、騒音レベルが低下していることが確認できた。従来のファンカバーの円筒部のみでは、顕著な周波数として390Hz、651Hz、904Hz、1151Hz、1576Hz、1807Hzが発生していたが、本実施形態では分散しており、顕著な周波数スペクトルが低減している。
【0048】
次に、図3にファンカバー内部における平坦面の位置Lの寸法を変えて半径Rに対する騒音のレベルを示した。騒音レベルは、絶対値ではなく、相対値としている。
【0049】
この結果から0.75R≦L≦0.95Rの範囲内に位置すると騒音が5dB以上低減していることが認められた。
0.75R≦L≦0.95Rとした理由は、図3と表3に示すように、0.95Rでズレの周波数の変化率が5.0%以上であると騒音が低減するからである。また、図3から分かるように、0.75R以下においては、空間共鳴周波数のズレ周波数33%と大きくなるが、通風特性に影響が出始めることから下限値とした。
【0050】
上述したように、本実施形態の送風機のファンカバー22では、ファンカバー22内部の空間における空間共鳴は、単純な円筒形状などの空間ほど、卓越周波数が発生しやすく、ファンカバー22の内周平均半径Rと当該内周平均半径Rの中心位置からの距離Lが、0.75R≦L≦0.95Rの範囲内に位置する前記ファンカバー22の内側に平坦面を設けた円筒形状の一部を平坦面にすることにより、卓越した周波数を分散させ、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0051】
図4は本発明の第2実施形態の構成図であり、同図(a1),(a2),(a3)及び同図(b1),(b2),(b3)は平坦面の個数をZとすると、それぞれZ=7,8,9の場合の断面図及びファンカバーからみた正面図である。本実施形態が図1の第1実施形態と異なる構成はファンカバーに設ける平坦面の個数Zのみであり、その他の構成は同一であるので、同一部分には同一符号を付して重複説明は省略する。
【0052】
本実施形態によると、図5のZの個数と騒音の大きさを示す特性図から分かるように、Zの個数が9個より大きくなると、ファンカバー22の形状が従来の円筒に近づくことから、騒音値が低減しない。したがって、Z≦9の範囲の平坦面にすることにより、卓越した周波数を分散させ、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0053】
図6は本発明の第3実施形態の構成図であり、同図(a)は断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図である。本実施形態が図1の第1実施形態と異なる構成はファンカバーの構造のみであり、その他の構成は同一であるので、同一部分には同一符号を付して重複説明は省略する。
【0054】
本実施形態によると、図7のn角形の個数と騒音の大きさを示す特性図から分かるように、ファンカバー22内部の空間共鳴は、一部を平坦面とすることで、卓越した周波数を分散できるが、平坦面の配列の位置角度を360/Z=θとすると等間隔となり、等間隔にすることにより、対向する面が平行になり、距離が短くなるため、基本波に対して分散周波数が大きくなり、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0055】
図8は本発明の第4実施形態の構成図であり、同図(a)は断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図である。本実施形態が図1の第1実施形態と異なる構成はファンカバーの構造のみであり、その他の構成は同一であるので、同一部分には同一符号を付して重複説明は省略する。
【0056】
図から分かるように、本実施形態では、平坦面の個数を2個とした場合のみ、配列の位置角度をθ2とし、θ2=60度〜180度とすると、基本波成分の占める割合が小さくなり、分散される成分が大きくなり、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0057】
図9は本発明の第5実施形態の構成図であり、同図(a)は断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図である。本実施形態が図1の第1実施形態と異なる構成はファンカバーの構造のみであり、その他の構成は同一であるので、同一部分には同一符号を付して重複説明は省略する。
【0058】
本実施形態において、ファンカバー22の内周平均半径Rと当該内周平均半径Rの変形量Aとの比が、0.1≦A/R≦0.2の範囲にあって、機械角をφとした場合に、下記式(2)で表される略正弦波形状Dに前記ファンカバー22を形成し、当該波形状としている。ただし、波形の数をn、機械角をφとする。 D=A・Sin・nφ ………(2)
【0059】
前記ファンカバー内側の空間共鳴は、単純な円筒形状などの空間ほど起こり易いことは前述したとおりである。本実施形態では、ファンカバー22の内周の平均半径Rと当該内周平均半径Rの変形量Aとの比が、0.1≦A/R≦0.2の範囲にあることによって、低減したい卓越した周波数を周期的に分散させることができ、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0060】
本発明の第6実施形態は、第5実施形態において、送風機のファンカバーの形状を上記式(2)で表される略正弦波形状としている場合である。
ファンカバー内側の空間共鳴は、単純な円筒形状などの空間ほど起こり易いので、本実施形態では、ファンカバー22の内周を略正弦波にすることによって、低減したい卓越した周波数を周期的に分散させることができ、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0061】
図10は本発明の第7実施形態の構成図であり、本実施形態は第5実施形態において、前記略正弦波形状の次数をnとし、前記羽根の枚数、回転数、ファンカバー22の内周平均半径Rに応じて適宜選択される3≦n≦12のうち1つの次数としている場合である。
【0062】
ファンカバー22内側の空間共鳴は、卓越した周波数を周期的に分散させるが、n=12以上に周期を大きくしていくと、従来の円筒に近づき低減効果が小さくなる。周期的変形を3つから12までが騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0063】
図11は本発明の第8実施例の構成図であり、同図(a)は断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図である。
図に示すように、本実施形態は送風機のファンカバー22の外形形状を略正弦波形状からのこぎり波形状としている。ファンカバー22内側の空間共鳴はのこぎり波的にすると、反射面がさらにランダムとなるため、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0064】
図12は本発明の第9実施例の構成図であり、同図(a)は断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図である。
図に示すように、本実施形態は送風機のファンカバー22の外形形状を略正弦波形状から矩形波形状としている。ファンカバー22内側の空間共鳴は矩形波形形状にすると、反射面がさらにランダムとなるため、騒音を極めて効果的に低減することができる。
【0065】
図13は本発明の第10実施例の構成図であり、同図(a)は断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図である。
図に示すように、本実施形態は、送風機のファンカバー22の外形形状を略正弦波形状、のこぎり波形状または矩形波形状を前記内周平均半径Rの外側分または内側分のみの半波のみの形状としている。
【0066】
本実施形態は、請求項8および請求項9と同様に、反射面がランダムとなるため、騒音を極めて効果的に低減することができる。さらに、次数が小さいn=3〜7程度においては、送風機本体とファンカバー22の取り付けが簡単になる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の送風機のファンカバーによれば、ファンカバーの内側に平坦面を設けた形状にすることにより卓越した周波数を分散させ、騒音が効果的に低減でき、またファンカバーの形状を周期的に変形させることにより、卓越した周波数を分散させるとともに、ファンカバー内部の音波の反射を拡散させるため、騒音を効果的に低減できる、というすぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図2】図1のファンカバーの実験による騒音の周波数分析を示す特性図。
【図3】図1におけるLの位置と騒音の大きさを示す特性図。
【図4】本発明の第2実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図5】図4におけるZの個数と騒音の大きさを示す特性図。
【図6】本発明の第3実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図7】図6におけるn角形の個数と騒音の大きさを示す特性図。
【図8】本発明の第4実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図9】本発明の第5実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図10】本発明の第7実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図11】本発明の第8実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図12】本発明の第9実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図13】本発明の第10実施形態の構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図14】従来の送風機ファンカバーの構成図であり、同図(a)は縦断面図、同図(b)はファンカバーからみた正面図。
【図15】図14のファンカバーの実験による騒音の波形をFFTにて周波数分析した結果の特性図。
【図16】図14の卓越周波数の実験による騒音の周波数分析を示す特性図。
【図17】図14においてファンカバーを取り外した場合の実験による騒音の周波数分析を示す特性図。
【図18】図14においてファンカバー内に音源を発生した場合の実験による共鳴周波数を示す特性図。
【図19】ファン騒音の分類を示す図。
【図20】従来の騒音発生源を抑制する回転電機の正面図。
【図21】従来の送風機ファンカバーの内側に吸音材を取着した回転電機の縦断面図。
【図22】従来の吸音材を用いない送風機ファンカバーを有する回転電機の縦断面図。
【符号の説明】
1…回転電機本体、2…冷却ファン、3…ファンカバー、4…吸音部材、5…回転子、6…固定子、7…ファン、8,8…ファンカバー、9…回転電機本体、10…平坦面、11…電動機本体、12…固定子枠、13…軸受ブラケット、14…固定子鉄心、15…固定子巻線、16…回転子、17…回転軸、18…軸受、19…冷却フィン、20…通風路、21…冷却ファンの羽根、22…ファンカバー、23…車盤、24…羽根、25…車軸、26…吸気口、27…出口。

Claims (11)

  1. 内周面に固定子鉄心を固着した固定子枠と固定子鉄心の内部に所定の間隔をもって配置された回転子を軸受を介して支持する軸受ブラケットとを備えた回転電機本体の前記軸受ブラケットから外部に突出した回転軸に冷却ファンを固定し、前記冷却ファンをファンカバーで覆い、前記冷却ファンの回転により前記ファンカバーの中央部に設けられた吸込口から吸い込んだ空気を、前記ファンカバーの内壁と前記軸受ブラケットとで構成される空間部を通って前記固定子枠外周に形成された出口から吐き出すように構成された送風機のファンカバーにおいて、前記ファンカバーの内径半径をRとして、前記ファンカバーの中心から半径方向への距離をLとしたとき、前記ファンカバーの内側に平坦面を0.75R≦L≦0.95Rの範囲内に設けたことを特徴とする送風機のファンカバー。
  2. 前記平坦面の個数は9個以下であることを特徴とする請求項1記載の送風機のファンカバー。
  3. 前記平坦面の個数をZ個配列したとき、配列の位置角度をθ1として、360/Z=θと定義したとき、θ1=θ±10度の範囲内を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2記載の送風機のファンカバー。
  4. 前記平坦面の個数を2個配列したとき、その配列の位置角度をθ3として、θ2=60度〜180度の範囲にあって、θ3=θ2±10度の範囲内を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2記載の送風機のファンカバー。
  5. 内周面に固定子鉄心を固着した固定子枠と固定子鉄心の内部に所定の間隔をもって配置された回転子を軸受を介して支持する軸受ブラケットとを備えた回転電機本体の前記軸受ブラケットから外部に突出した回転軸に冷却ファンを固定し、前記冷却ファンをファンカバーで覆い、前記冷却ファンの回転により前記ファンカバーの中央部に設けられた吸込口から吸い込んだ空気を、前記ファンカバーの内壁と前記軸受ブラケットとで構成される空間部を通って前記固定子枠外周に形成された出口から吐き出すように構成された送風機のファンカバーにおいて、前記ファンカバーの内径の半径Rと波形の振幅Aとの比が、0.1≦A/R≦0.2の範囲内にある波形を前記ファンカバーに設けたことを特徴とする送風機のファンカバー。
  6. 前記波形の正弦波形をD、波形の数をn、機械角をφとしたとき、D=A・Sin・nφで表されることを特徴とする請求項5記載の送風機のファンカバー。
  7. 前記波形の数nは、3≦n≦12の範囲のうちいずれか1つとしたことを特徴とする請求項6記載の送風機のファンカバー。
  8. 前記波形をのこぎり波形状としたことを特徴とする請求項5または請求項7記載の送風機のファンカバー。
  9. 前記波形を矩形波形状としたことを特徴とする請求項5または請求項7記載の送風機のファンカバー。
  10. 前記波形をのこぎり波形状または矩形波形状とし、前記内径の半径Rの外側半波分のみを残した形状としたことを特徴とする請求項5または請求項7記載の送風機のファンカバー。
  11. 前記波形をのこぎり波形状または矩形波形状とし、前記内径の半径Rの内側半波分のみを残した形状としたことを特徴とする請求項5または請求項7記載の送風機のファンカバー。
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