JP4173666B2 - マイクロカプセル固形化物及びその利用方法 - Google Patents

マイクロカプセル固形化物及びその利用方法 Download PDF

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  • Materials Applied To Surfaces To Minimize Adherence Of Mist Or Water (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はマイクロカプセルの固形化物とその利用方法に関するものであり、粒状、ボード状、塊状など如何なる形態でも加工可能なマイクロカプセル固形化物に関するものである。特に蓄熱材を内包するマイクロカプセルを用いることにより、ビル、住宅など建造物の空調用蓄熱材として用いることが可能であり、室温が変化しにくい内装材や夜間の内に冷気あるいは暖気を蓄熱しておき昼間に放熱する蓄熱式空調用蓄熱材として利用することが可能となる。
【0002】
【従来の技術】
マイクロカプセル分散液、とりわけ水系のマイクロカプセル分散液を固形化する方法としては、加熱して分散媒である水を物理的に脱水、蒸発させる手法があり、本発明者はスプレードイヤー、ドラムドライヤー、フィルタープレス方法などの乾燥、脱水装置を用いた固形化物を特開平7−133479号公報で提案した。この方法により、マイクロカプセルは粉体、粒状に加工されるが、シート状あるいはボード状に加工するためには更にもう一段階の成型工程が必要であった。
【0003】
物理的乾燥に依らないマイクロカプセル分散液の固形化方法として、セメントと混合して固める方法(特開平10−297950号公報)、吸水性高分子ポリマーや各種ゲル化剤と混合する方法が知られている。しかしこれらの方法では、完全に固化させるためにはマイクロカプセル分散液に対し多量のセメントあるいはゲル化剤を添加する必要があり硬化までに長時間を有するものであった。更に単位重量当たりのマイクロカプセルの含有比率が低下し、その機能が発現しにくくなるという問題や、充分な強度が得られないという問題点もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、1.少量の固形化材を用いて充分な強度を有するマイクロカプセル固形化物を一工程で得ること、2.マイクロカプセルの劣化をもたらさないこと、3.容易に平板状に成型加工して空調用及び融雪用の蓄熱材として使用可能にすること、の3点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、マイクロカプセル分散液の固形化材として焼成酸化マグネシウムを用いることにより達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の固形化物は、マイクロカプセル分散液と焼成酸化マグネシウムを混合することにより容易に得られる。焼成酸化マグネシウムとは酸化マグネシウムを熱処理したものであり、その加熱温度により固化能力に変化が生じるが、とりわけ1000℃以下の温度で加熱処理された焼成酸化マグネシウムが好ましい。焼成マグネシウムは肥料や家畜用飼料、あるいは窯業材料として利用されているが、水と反応して水酸化マグネシウムを生成して自硬性を示すことが知られている。セメント材料も同様に水と反応して硬化するが、本発明で用いられるマイクロカプセル分散液の様に有機系素材を主成分とするものと混合されるとセメントの水和反応が阻害されるため強度が低下し、必然的にマイクロカプセルの混合比率を下げざるを得なかった。
【0007】
本発明者は焼成酸化マグネシウムとマイクロカプセル分散液を混合したところ、マイクロカプセル分散液の比率が極めて高い混合比率であっても短時間の内に極めて堅い硬化物を形成することを見出し本発明の第一の課題を達成できた。更に酸化マグネシウムは、セメントが強アルカリ性であるのに対し、中性から弱アルカリ性であるためにマイクロカプセルに対する化学的な損傷が極めて少なく劣化が生じないことも判明し、第二の課題も達成し得るものであった。
【0008】
第三の課題である、平板状に成型して空調用蓄熱材を得る方法であるが通常、マイクロカプセルをシート状の支持体に塗工又は含浸等の固定化処理を施せば可能である。しかしながら通常シート状の支持体として用いられる紙や布、合成樹脂フィルムに塗工や含浸を行ない担持させることが可能なマイクロカプセルの重量比率はせいぜい総重量の50%未満であった。しかしながら本発明の焼成酸化マグネシウムを用いることにより50%以上の混合比率が容易に達成され、平板状、棒状、円筒状など容易に成型が可能であった。
【0009】
本発明で用いられるマイクロカプセルの製法及び内包される化合物の種類は限定はされないが、本発明の固形化物の利用方法として蓄熱材を内包する空調用蓄熱材が特に好ましい例として挙げられる。蓄熱材をマイクロカプセル化する方法としては、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱材粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(同62−45680号公報)、蓄熱材粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(同62−149334号公報)、蓄熱材粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(同62−225241号公報)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052号公報)等に記載されている方法を用いることができる。
【0010】
カプセル膜材としては特に限定されないが、界面重合法、インサイチュー法等の手法で得られる、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、またゼラチンとカルボキシメチルセルロース若しくはアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成あるいは天然の樹脂が用いられるが、物理的、化学的に安定で、脂肪族系炭化水素化合物でも良好な品質のマイクロカプセルが得られるインサイチュー法による尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂皮膜を用いたマイクロカプセルが特に好ましい。マイクロカプセル分散液のpHは特に限定されないが10以下が好ましい。
【0011】
本発明で用いられる蓄熱材の相変化点、即ち融点は如何なる温度域にも設定可能であるが、食品用保冷又は保温剤あるいは暖房用器具として用いる場合には0〜70℃の範囲に設定することが好ましく、特に空調用蓄熱材として5〜35℃の範囲に設定することが好ましい。また、融雪材として利用することも本発明の固形化物の有効な利用方法の一つであり、蓄熱材の融点としては昼間の日射で確実に蓄熱し、夜間の温度低下で融雪し得る温度範囲として0〜16℃が好ましい。
【0012】
本発明で使用できる蓄熱材としては、炭素数が約14〜22程度のn-パラフィン類や、無機系共晶物及び無機系水和物、パルミチン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸類、ベンゼン、p-キシレン等の芳香族炭化水素化合物、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等のエステル化合物、ステアリルアルコール等のアルコール類等の化合物が挙げられ、好ましくは融解熱量が20kcal/kg以上の化合物で、化学的、物理的に安定でしかも安価なものが用いられる。これらは混合して用いても良いし、必要に応じ過冷却防止材、比重調節材、劣化防止剤等を添加することができる。また、融点の異なる2種以上のマイクロカプセルを混合して用いることも可能である。
【0013】
マイクロカプセル分散液と焼成酸化マグネシウムの混合比率は目的、固形化物の強度に合わせて自由に設定されるがマイクロカプセル固形重量と焼成酸化マグネシウムの好ましい固形比率は95:1〜30:70の範囲で混合される。この範囲以上であると固形化物の強度が低くなり好ましくなく、この範囲より低いとマイクロカプセルとしての充分な機能が発現されないため好ましくない。マイクロカプセル分散液中に含まれる水分も固形化物の強度に大きく影響するので、焼成酸化マグネシウムの水和反応が充分進行するだけの充分な量が確保されていなければならない。
【0014】
混合工程は充分な撹拌力を有した混練装置を用いてお互いが均一になるように混合される。その際に必要に応じ、補強繊維、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料、金属化合物、砂、離型剤、吸放湿剤、吸水ポリマー等を適宜添加することも可能である。混練りの後、成型用の型枠の中に流し込み、充分な強度が得られるまで養生処理が施される。通常セメントの養生は充分な水分が施されるが、本発明の焼成酸化マグネシウムの場合にはある程度水和が進んだ後は加熱乾燥処理を施して水分を除去しても構わない。焼成酸化マグネシウムとセメント、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、プラスティックピグメント、バインダー等の各種有機系及び無機系の添加剤を組み合わせることも可能である。
【0015】
本発明に係るマイクロカプセルの粒子径は、物理的圧力による破壊を防止するために10μm以下、特に好ましくは5μm以下が好ましい。マイクロカプセルの粒子径は、乳化剤の種類と濃度、乳化時の乳化液の温度、乳化比(水相と油相の体積比率)、乳化機、分散機等と称される微粒化装置の運転条件(攪拌回転数、時間等)等を適宜調節して所望の粒子径に設定する。この粒子径以上になるとマイクロカプセルが外圧で容易に壊れやすくなったり、蓄熱材の比重が分散媒のそれと大きく差がある場合など、浮遊したり沈降したりし易くなるので好ましくない。
【0016】
本発明のマイクロカプセル固形化物は、ガラスウール、中空粒子、ウレタンフォーム、発泡性樹脂などの断熱材と組み合わせて用いることにより断熱性と蓄熱性の相乗効果が得られるため好ましい態様である。例えば、低密度の発泡スチロール樹脂板の片面表面に硬化前のマイクロカプセル分散液と焼成酸化マグネシウムの混合スラリーを塗布、含浸することにより、蓄熱性と断熱性の両方を兼ね揃えた住宅用建材が得られる。本発明の固形化物は空調用蓄熱材としての利用方法以外に、融雪材、凍結防止材、道路、橋、建造物の材料、農業用保温剤、食品用保温保冷材等、様々な用途に使用可能である。
【0017】
【実施例】
次ぎに本発明の実施例を示す。実施例中の融点及び融解熱量は、米国パーキンエルマー社製熱分析装置DSC−7型を用いて測定した値である。
【0018】
実施例1
蓄熱材マイクロカプセルの製法
メラミン粉末12重量部に37%ホルムアルデヒド水溶液15.4重量部と水40重量部を加え、pHを8に調整した後、約70℃まで加熱してメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。pHを4.5に調整した10%スチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100重量部中に、蓄熱材として、n-オクタデカン(融点26〜28℃ )80重量部を激しく撹拌しながら添加し、粒子径が3.0μmになるまで乳化を行なった。
【0019】
得られた乳化液に、上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液全量を添加し70℃で2時間撹拌を施した後、pHを9まで上げて水を添加して乾燥固形分濃度40%の蓄熱材マイクロカプセル分散液を得た。このマイクロカプセル分散液100部に対し、800℃で熱処理した焼成酸化マグネシウム10部を添加し良く混合した後室温で6時間、80℃で6時間処理して厚さ10mmの固形ボードを作製したところ極めて強度が高く、固形当たり132kJ/kgの融解熱量を有する固形ボードが得られた。
【0020】
この固形ボードの表面に市販の壁紙を貼り付け、裏面には断熱材としてウレタンフォームシートを貼り付けて空調用蓄熱ボードを得た。この蓄熱ボードを厚さ14mmの木材と貼り合わせ、ボード面が内側になるようにして一辺が50cmの立方体の木箱を作製した。この木箱を環境温度を強制的にコントロール可能な雰囲気内で木箱の外気温度を0〜40℃間を1時間で昇温と降温を繰り返し、木箱の中心部分の温度を測定したところ、木箱内では22〜28℃の範囲で温度変化幅の少ない環境が得られることが分かった。
【0021】
実施例2
実施例1で蓄熱材として用いたn-オクタデカンの代わりに、n-ヘキサデカン(融点16〜18℃)を用いて同様にして蓄熱材マイクロカプセル分散液を得た。この分散液100部と実施例1と同様の焼成酸化マグネシウム20部を添加し良く混合した後80℃で加熱して底面直径15cm、高さ30cmの円柱状に加工して120kJ/kgの融解熱量を有する強固な融雪用の蓄熱ブロックを得た。この蓄熱ブロックを土中に埋めたところ、降雪時には明らかな融雪効果が見られた。
【0022】
比較例1
実施例1において、焼成酸化マグネシウムの代わりに市販のポルトランドセメントを同重量添加して同様に固形ボードに成型したところ、全く強度が得られずボード状の形態を留めなかった。また、マイクロカプセルが強アルカリ性に曝されたためかマイクロカプセルが破壊して蓄熱材が流出した痕跡が見られた。また、充分な強度が得られるまでにはセメント含有比率を70%まで高める必要があった。
【0023】
【発明の効果】
実施例の結果からも明らかなように、本発明で示されるマイクロカプセル固形化物はマイクロカプセル分散液と少量の焼成酸化マグネシウムと混合するだけで容易にマイクロカプセル固形化物が得られ、とりわけ空調用として有用な蓄熱材を得ることが可能となる。

Claims (5)

  1. マイクロカプセル分散液と焼成酸化マグネシウムを混合して得られるマイクロカプセル固形化物。
  2. マイクロカプセル分散液が蓄熱材を内包したマイクロカプセルの分散液である請求項1記載のマイクロカプセル固形化物。
  3. 蓄熱材の融点が5〜35℃の範囲の蓄熱材を内包する請求項1記載のマイクロカプセル固形化物を建造物の空調用蓄熱材として用いる利用方法。
  4. 蓄熱材の融点が0〜16℃の範囲の蓄熱材を内包する請求項1記載のマイクロカプセル固形化物を融雪材として用いる利用方法。
  5. 請求項1記載のマイクロカプセル固形化物と断熱材を貼り合わせて用いる利用方法。
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