JP7252843B2 - 蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法 - Google Patents

蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7252843B2
JP7252843B2 JP2019122020A JP2019122020A JP7252843B2 JP 7252843 B2 JP7252843 B2 JP 7252843B2 JP 2019122020 A JP2019122020 A JP 2019122020A JP 2019122020 A JP2019122020 A JP 2019122020A JP 7252843 B2 JP7252843 B2 JP 7252843B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
heat storage
storage structure
cnf
composition
substance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019122020A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021008972A (ja
Inventor
翔 大高
壮 宮田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Lintec Corp
Original Assignee
Lintec Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Lintec Corp filed Critical Lintec Corp
Priority to JP2019122020A priority Critical patent/JP7252843B2/ja
Publication of JP2021008972A publication Critical patent/JP2021008972A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7252843B2 publication Critical patent/JP7252843B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/14Thermal energy storage

Landscapes

  • Building Environments (AREA)

Description

本発明は、蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法に関する。
省エネルギー化の要請に応えるため、建築資材や内装材などに用いられる断熱材として、蓄熱物質を含有する断熱材が検討されている。
例えば、特許文献1には、パラフィンと高分子バインダー成分とを含み、100℃以下の温度範囲で固体である蓄熱材組成物を、繊維基材に含浸してなる蓄熱シートが記載されている。
特開2014-125626号公報
しかしながら、従来提案されている蓄熱シートには様々な課題がある。例えば、特許文献1に記載される蓄熱シートは、布や紙にパラフィンを含浸することによって作製されるため、パラフィンが流動して蓄熱シートからブリードアウトし、周囲を汚染するという問題がある。
また、従来の蓄熱シートには、蓄熱物質の含有量を多くして蓄熱性を高めたり、蓄熱応答性を高めたりする点において改善の余地がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、より多くの蓄熱材料を含有して高い蓄熱性能を発揮することができ、しかも蓄熱材料の保持性が高い、蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、セルロースナノファイバーを含む膜と、該膜から構成された閉塞空間とを備える構造体であって、前記閉塞空間内に、特定の温度範囲に融点を持つ蓄熱物質を含む構造体によって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[15]を提供するものである。
[1]セルロースナノファイバーを含む膜と、該膜から構成された閉塞空間とを備える構造体であって、
前記閉塞空間内に、融点が-100℃~+90℃の蓄熱物質を含む、蓄熱構造体。
[2]前記蓄熱物質が、融解熱量が10J/g以上の潜熱材料、及び、比熱が1.0J/g・K以上の顕熱材料のうち少なくとも一方を含む、上記[1]に記載の蓄熱構造体。
[3]前記蓄熱物質が炭素数7以上の炭化水素である、上記[1]又は[2]に記載の蓄熱構造体。
[4]前記蓄熱物質の含有量が、前記構造体全体の質量に対して30~98質量%である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の蓄熱構造体。
[5]前記膜の第1面が前記蓄熱物質に面しており、前記膜の第1面とは反対側の第2面が、前記蓄熱物質と同じ組成の物質、気体及び固体の少なくともいずれかに接している、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の蓄熱構造体。
[6]前記閉塞空間を複数有する、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の蓄熱構造体。
[7]前記複数のうち隣り合う一組の閉塞空間が前記膜を共有している、上記[6]に記載の蓄熱構造体。
[8]前記構造体はシート形状を有する、上記[6]又は[7]に記載の蓄熱構造体。
[9]前記構造体の厚さが0.5~300μmである、上記[8]に記載の蓄熱構造体。
[10]単独で自立性を有する、上記[8]又は[9]に記載の構造体。
[11]前記構造体の前記複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均が、1μm~100μmである、上記[6]~[10]のいずれか一つに記載の蓄熱構造体。
[12]上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の蓄熱構造体が、支持体上に設けられている、支持体付き蓄熱構造体。
[13]上記[1]~[12]のいずれか一つに記載の蓄熱構造体の製造方法であって、
セルロースナノファイバーが液体分散媒に分散している分散液に、前記蓄熱物質を添加し、
前記蓄熱物質が添加された前記分散液を、前記蓄熱物質が液体となる温度で撹拌して、前記蓄熱物質の少なくとも一部が、前記セルロースナノファイバーを含む外殻で囲まれる空間内に取り込まれた粒子を生成させて前記蓄熱構造体を得る、蓄熱構造体の製造方法。
[14]前記蓄熱物質を、加熱して固体から液体に相変化させてから、前記分散液へ添加する、上記[13]に記載の蓄熱構造体の製造方法。
[15]前記粒子を含む前記分散液を支持体上に塗布して塗布層を形成し、
前記塗布層を乾燥して前記蓄熱構造体を形成する、上記[13]又は[14]に記載の蓄熱構造体の製造方法。
本発明によれば、より多くの蓄熱材料を含有して高い蓄熱性能を発揮することができ、しかも蓄熱材料の保持性が高い、蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法を提供することができる。
本発明の構造体の一実施態様であるシート状蓄熱構造体の構成例を示す模式図である。図1(A)は、シート状蓄熱構造体の一構成例の外観図である。図1(B)は、図1(A)のシート状蓄熱構造体の表面の部分拡大図である。 構造体の製造方法を示す拡大模式図である。図2(A)は、蓄熱物質内包粒子含有組成物が支持体上に塗布された様子を示す模式的な側面図である。図2(B)は、支持体に形成された蓄熱物質内包粒子含有組成物の塗布層の拡大平面図である。図2(C)は、蓄熱物質内包粒子含有組成物の塗布層を乾燥して得られた蓄熱層の拡大平面図である。
<構造体の構成>
本発明の実施形態に係る蓄熱構造体は、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」と略す)を含む膜と、該膜から構成された閉塞空間とを備える構造体であって、前記閉塞空間内に、融点が-100℃~+90℃の蓄熱物質を含む、蓄熱構造体である。
本明細書において、「CNFを含む膜から構成された閉塞空間」とは、上方、下方、側方等の全方位がCNFを含む膜によって囲まれた、閉じた空間を意味する。なお、後述するように、CNFを含む膜は緻密な膜であるが微細な空隙を有している。したがって、CNFを含む膜によって囲まれた空間が、上記微細空隙を超える大きさの開口に通じていなければ、「CNFを含む膜から構成された閉塞空間」に該当する。
上記構造体の形状は特に制限がなく、例えば、CNFを含む膜から構成された閉塞空間内に蓄熱物質が取り込まれた粒子が生成された後の分散液(以下、「蓄熱物質内包粒子含有組成物」という)を、成形型に入れて乾燥させる等の方法により、任意の形状とすることができる。なお、蓄熱物質内包粒子含有組成物については後で詳しく説明する。
本発明の蓄熱構造体の好ましい一態様は、シート状蓄熱構造体である。シート状蓄熱構造体は、蓄熱物質内包粒子含有組成物を、支持体に塗布して乾燥することにより容易に大量に製造でき、しかも幅広い用途に利用することができる。
なお、以下の説明において、「蓄熱物質内包粒子含有組成物」を単に「組成物」という場合がある。
以下、シート状蓄熱構造体を例にして、図を用いて具体的に本発明の実施形態に係る蓄熱構造体を説明する。なお、以下の説明で用いる図1及び図2は模式図であり、理解を容易にするため誇張して図示されている。閉塞空間の数や大きさ、蓄熱構造体の厚み等も模式的に示されており、これらは図面によって限定されるものではない。
図1は、本発明の蓄熱構造体の一実施態様であるシート状蓄熱構造体の一構成例を示す模式図である。図1(A)は、シート状蓄熱構造体の一構成例の外観図である。図1(B)は、図1(A)の一部の拡大平面図である。
図1(A)に示すように、上記の構成例においては、複数の閉塞空間を有しそれぞれの閉塞空間に蓄熱物質が内包された蓄熱層31が、支持体40の一方の表面に積層されている。この蓄熱層31がシート状蓄熱構造体でもある。そして、図1(A)に示す例では、支持体40と蓄熱層31とで支持体付き蓄熱構造体50を構成している。図1(A)において、シート状蓄熱構造体31の厚さを符号Lで示している。
なお、後述するように、支持体40はなくても構わない。支持体40がない場合は、単体のシート状蓄熱構造体31となる。
図1(A)に符号Pで示す、蓄熱層31の表面の一部の領域を拡大したものが、図1(B)である。図1(B)に破線で示すように、本実施形態に係る蓄熱構造体31は、CNFを含む膜35と、該膜から構成された複数の閉塞空間33とを備える蓄熱構造体である。そして、閉塞空間33内に蓄熱物質36を含む。より多くの蓄熱物質を保持させ、また、より良好な蓄熱応答性を確保する観点から、このような複数の閉塞空間を備える構造体であることが好ましい。
膜35の第1面(内側の面)は、蓄熱物質36に面しており、膜35の上記第1面とは反対側の第2面(外側の面)は、周囲の雰囲気(つまり、気体)、支持体40(つまり、固体)、及び、隣接する閉塞空間に内包されている、上記第1面が面している蓄熱物質と同じ組成の蓄熱物質のうち、少なくともいずれかに接している。具体的には、蓄熱層31の最も表面側(支持体が存在する面とは反対の面側)に存在する膜は周囲の雰囲気に接している。また、蓄熱層31の最も裏面側(支持体が存在する面側)に存在する膜は支持体に接している。更に、蓄熱層31の内部(支持体が存在する側の表面とその反対側の面との間の領域)に存在し、隣り合う一対の閉塞空間で共有されている膜35は、一方の面が一方の閉塞空間内に存在する蓄熱物質や空気に接しており、他方の面が他方の閉塞空間内に存在する蓄熱物質や空気に接している。
このように、CNFを含む膜の周囲に蓄熱物質、固体及び気体のうちの少なくともいずれかのみを配置することが好ましい。こうすることで、流動性の高い液体を膜の周囲に存在させないようにすることができ、結果として、蓄熱構造体の形状保持性を高めるやすくなる。
後述する製造方法によって形成されるCNFを含む膜35は、複数のCNFが並んだり絡み合ったりすることで形成される網目状もしくは繊維状の緻密な膜であると考えられる。したがって、CNFを含む膜35で囲まれた閉塞空間33内に蓄熱物質を保持することができる。また、CNFを含む膜35は、CNFの緻密な膜であるため、膜を厚くしなくても一定の強度を有しており、蓄熱物質を内部に保持することができる閉塞空間を構成することができる。したがって、蓄熱構造体内部に、例えばバインダー成分等の、CNFを含む膜以外の要素が必ずしも必要ではなくなり、蓄熱構造体における空間の存在割合を高くし、延いては蓄熱物質の含有割合を大きくすることができる。
なお、凍結乾燥を用いてCNFの多孔質体を作製することも可能であるが、凍結乾燥を用いる製造方法は工程が複雑であることに加えて、得られる多孔質体がいわゆる連続気泡構造を有している。このような連続気泡構造を有する多孔質体は、蓄熱物質の保持性に課題があり、使用時に蓄熱材がブリードアウトしたり、周囲を汚染したりする問題がある。
また、図1(B)に示すように、シート状蓄熱構造体31においては、隣り合う一組の閉塞空間33a、33bの間で、CNFを含む膜35aが共有されている。本発明の蓄熱構造体の一態様においては、シート強度を高める観点から、蓄熱構造体31のように、複数の閉塞空間のうち隣り合う一組の閉塞空間が少なくとも一つの膜を共有することが好ましい。
このように、閉塞空間に蓄熱物質が保持されているため、蓄熱構造体が外部から受ける熱量を蓄熱物質が蓄えることによって、蓄熱構造体による蓄熱が行われる。そして、蓄熱構造体の周辺環境の温度が低くなると、蓄熱構造体に蓄えられた熱量が外部に放出される。なお、膜35及び蓄熱物質36に用いる材料の詳細は後述する。
[蓄熱物質]
本発明で用いる蓄熱物質は、融点が-100℃~+90℃の蓄熱物質である。
蓄熱物質はある一定の温度範囲の中で、相変化することによって外部から熱を吸収して蓄える性質を持つ潜熱材料、及び、相変化を伴わず物質の温度を変化させた時の熱量を蓄熱する顕熱材料のうち少なくとも一方を含む。
蓄熱物質の融点は、好ましくは-75℃以上、より好ましくは-50℃以上、更に好ましくは-25℃以上、更に好ましくは0℃以上、更に好ましくは+25℃以上、特に好ましくは+40℃以上であり、また、好ましくは+85℃以下、より好ましくは+80℃以下、更に好ましくは+70℃以下である。蓄熱物質の融点が上記温度範囲にあると、蓄熱温度が低温から高温までの幅広い温度範囲に存在する蓄熱構造体を容易に製造することができる。
なお、本明細書において、「蓄熱温度」とは、示差走査熱量分析によって得られる、経過時間に対する温度変化を表す特性曲線において、最も大きい吸熱ピークのピークトップの温度を意味し、具体的には、実施例で測定した数値で示される。
本発明の一態様の蓄熱構造体において用いられる蓄熱物質は、好ましくは、融解熱量が10J/g以上の潜熱材料、及び、比熱が1.0J/g・K以上の顕熱材料のうち少なくとも一方を含む。
潜熱材料は、顕熱材料と比較して大きな熱エネルギーを蓄えることができるという特徴がある。また、相変化が一定の温度で起きることを利用して、定温での保冷材、保温材として利用することができる。
上記潜熱材料の融解熱量は、より好ましくは30J/g以上、更に好ましくは50J/g以上であり、また、好ましくは1,000J/g以下、より好ましくは750J/g以下、更に好ましくは500J/g以下、より更に好ましくは250J/g以下である。
上記潜熱材料としては、例えば、炭化水素系油性成分、天然動植物油脂類及び半合成油脂類、潤滑油及び潤滑剤組成物からなる群から選択される少なくとも一つの油分が挙げられる。
炭化水素系油性成分としては、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ワセリン、n-パラフィン、イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン、ポリイソブチレン、水素化ポリイソブチレン、ポリブテン、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン・ポリピロピレンワックス、スクワラン、スクワレン、プリスタン、ポリイソプレン、ロウ等が例示される。
天然動植物油脂類及び半合成油脂類としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、肝油、キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、キョウニン油、鯨ロウ、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、オリーブスクワラン、セラック樹脂、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、豚脂、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、水添ホホバエステル、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、羊脂、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、POE(ポリオキシエチレン)ラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等が挙げられる。
潤滑油としては、エンジン油、駆動系油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、工作機械用潤滑油、切削油、歯車油、流体軸受け油、転がり軸受け油等に用いられる、潤滑剤組成物に用いられるベースオイル(基油)を用いることができる。
基油としては、原油から得られる鉱物油、化学合成されるエステル系油、フッ素油、ポリαオレフィン系油、これらの混合物などが挙げられる。
潤滑剤組成物としては、上記基油又はそれらの混合物と、流動点降下剤、粘度指数向上剤、金属系清浄剤、分散剤、耐摩耗剤、極圧剤、酸化防止剤、消泡剤、摩擦調整剤、防錆剤、金属不活性化剤等の各種の添加剤とを含むものが挙げられる。エンジン油として市販されている潤滑剤組成物を用いることもできる。
蓄熱物質は、常温で固体の油分を常温で液体の油分に溶解したものであってもよい。また、蓄熱物質は、全てが上述したような各種の油分からなるものであってもよいし、これらの油分を有機溶媒に溶解したものであってもよい。後者の場合、例えば、上述した炭化水素系油性成分、天然動植物油脂類及び半合成油脂類からなる群から選択される少なくとも一つの成分を、当該成分を溶解可能な有機溶媒に溶解したものを蓄熱物質として用いることができる。
蓄熱物質が油分を溶解し得る有機溶媒を含む場合、当該有機溶媒の含有量は、油分と有機溶媒との合計質量に対して、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%、更に好ましくは40~60質量%である。
一方、上記顕熱材料は、比熱を利用して蓄熱を行うため、蓄熱及び放熱において相変化を伴わず、材料が劣化しづらいという利点がある。
顕熱材料の比熱は、1.0J/g・K以上であり、好ましくは1.5J/g・K以上、より好ましくは2.0J/g・K以上であり、また、好ましくは6.0J/g・K以下、より好ましくは5.0J/g・K以下である。
比熱が1.0J/g・K以上の顕熱材料としては、滑油、シリコーンオイル、スピンドル油、エチレングリコール、グリセリン、n-オクタン、オリーブ油、トルエン、パラフィン油、ひまし油、n-ヘキサン、アマニ油、燃料油、ガソリン、潤滑油が挙げられる。
本発明の一態様の蓄熱構造体において用いられる蓄熱物質は、好ましくは炭素数7以上、より好ましくは炭素数8以上、更に好ましくは炭素数10以上、より更に好ましくは炭素数12以上、より更に好ましくは炭素数16以上、特に好ましくは炭素数20以上の炭化水素である。また、通常40以下の炭化水素である。
炭素数7以上の炭化水素としては、上述した各種の油分やオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、流動パラフィン、パラフィンワックスが挙げられる。
蓄熱物質として、水性溶媒や親水性物質を用いることも可能である。水性溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ジエチレングリコール、グリセリン、ピロリドン系溶媒が挙げられる。親水性物質としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアミド)、でん粉等が挙げられ、また、これらのうちの少なくとも1つと水との混合物、又は、これらのうち2種類以上の混合物等が挙げられる。
蓄熱物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
蓄熱物質の含有量は、蓄熱構造体全体の質量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50量%以上、更に好ましくは75質量%以上、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。蓄熱物質の含有量が、蓄熱構造体全体の質量に対して30質量%以上であると、十分な蓄熱性能を確保しやすくなる。また、蓄熱物質の含有量が、蓄熱構造体全体の質量に対して98質量%以下であると、CNFを含む膜からなる外殻で蓄熱物質をカプセル化しやすくなる。
[セルロースナノファイバー(CNF)、及び、その他の成分]
蓄熱構造体を構成するCNFの材質や形状等は、蓄熱物質内包粒子含有組成物に配合されるCNFで説明するものがそのまま当てはまる。また、蓄熱構造体に含有し得る、CNF及び蓄熱物質以外の多糖類やその他の成分についても、蓄熱物質内包粒子含有組成物に配合される成分がそのまま当てはまる。したがって、ここではこれらについての詳しい説明を省略する。
なお、後述する製造方法によって上記蓄熱構造体を作製すると、界面活性剤などの分散剤を用いずとも、CNFを含む外殻を備える粒子を含む蓄熱物質内包粒子含有組成物を生成することができ、この蓄熱物質内包粒子含有組成物を用いることで、蓄熱構造体におけるCNF含有率を高くすることができる。蓄熱構造体の界面活性剤の含有量は、CNF100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは1質量部未満、更に好ましくは0.1質量部未満、更に好ましくは0.01質量部未満、特に好ましくは0.001質量部未満、最も好ましくは0質量部である。
また、上記蓄熱構造体において、CNF以外の多糖類を含有してもよいが、意図した蓄熱性能を発揮させやすくする観点から、その含有量は、CNFの全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは1質量部未満、更に好ましくは0.1質量部未満、より更に好ましくは0.01質量部未満、特に好ましくは0質量部である。
蓄熱構造体における界面活性剤の含有量の測定方法としては、界面活性剤を溶媒により抽出し、高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)や核磁気共鳴装置(NMR)等で化学組成の同定と定量を行う方法が挙げられる。多糖類も界面活性剤と同様の手順で同定及び定量することができる。
[閉塞空間の最大フェレ径]
図1(B)には、蓄熱層31に含まれる特定の一つの閉塞空間について、閉塞空間の最大フェレ径を符号dfで示している。上記閉塞空間は様々な形状をとり得るため、本明細書においては、閉塞空間の大きさを最大フェレ径で表す(閉塞空間の大きさにはCNFを含む膜の厚さは含まれない)。本発明の実施形態に係る構造体においては、上記複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均が、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、より更に好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上である。また、複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均は、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、更に好ましくは80μm以下、より更に好ましくは70μm以下である。
上記最大フェレ径が1μm以上であると、蓄熱応答性が低くなり過ぎることを防止することができる。また、上記最大フェレ径が100μm以下であると、構造体の強度が低くなり過ぎることを防止することができる。
ここで、ある図形の「最大フェレ径」とは、2本の平行線で挟まれた当該図形の最大距離を意味する。本明細書においては、CNFを含む膜から構成された閉塞空間を備える構造体の表面の観察画像において、閉塞空間に対応する図形を特定し、この図形について2本の平行線で挟まれた最大距離を測定することで閉塞空間の最大フェレ径を算出する。
本明細書において、「複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均」は、蓄熱構造体の表面の観察画像における、複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均値である。本明細書においては、蓄熱構造体において、任意の36個の閉塞空間を選んで各々の最大フェレ径を測定し、それらの平均値を「複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均」とする。なお、蓄熱構造体上に別の層が設けられている等の理由により、蓄熱構造体の表面から閉塞空間を観察できない場合、蓄熱構造体を任意に切断し、その切断面について、上述したのと同様の手順で、複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均を求めてもよい。
本発明の実施形態に係る蓄熱構造体の複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均が、上述した範囲にあると、閉塞空間の大きさが概して小さくなる。このため、CNFを含む膜が構造体の内部に多数存在することとなり、蓄熱構造体の強度を高められる。したがって、加圧等に対する形状維持性に優れた蓄熱構造体を得やすくなる。また、蓄熱構造体の強度が高くなる結果、閉塞空間内に蓄熱物質を長く保持することに対しても有利に働く。更に、閉塞空間の大きさが小さいため、多くの閉塞空間内において個別に蓄熱物質を保持することができ、蓄熱物質の保持性を高められる。
更に、図1(B)に示すように、複数の閉塞空間が膜を共有することにより、蓄熱構造体の強度が増すので、バインダー成分を添加することなく自己保持性を有する膜(自立膜)を作製することができる。この自立膜は、バインダー成分を必ずしも必要とせず、例えば、内部空間を有する複数のカプセルをバインダーで結合したものに比べると、蓄熱物質を保持する空間を大きくすることができる。
上記シート状蓄熱構造体は、単独で自立性を有していることが好ましい。本明細書において、「自立性を有する」とは、自己支持性を有しており、他の支持体等に保持されていなくても構造体単独で形状を維持できる状態のことをいう。蓄熱構造体が単独で自立性を有しているかどうかは、シート形状を有する単独の蓄熱構造体に、先端部分の直径が1mmのプランジャーを用いて、進入速度0.5mm/秒で、深度15mmまで押し付けてクリープ試験を行い、そのときの最大荷重を測定することで判断することができる。上記最大荷重が、0.10N/1mmΦ以上である場合、蓄熱構造体が十分なシート強度を有しており、自立性を有していると判断できる。また、複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均を上述した数値範囲内にすることにより、シート状蓄熱構造体に自立性を向上させやすくなる。
上記最大荷重は、よりシート強度を高める観点から、好ましくは0.20N/1mmΦ以上である。上記最大荷重の上限に特に制限はないが、通常は100N/1mmΦ以下である。
蓄熱構造体における閉塞空間の大きさは、例えば、蓄熱物質内包粒子含有組成物中の、CNFを含む外殻を備える粒子の大きさを変えることによって調整することができる。これによって、閉塞空間の最大フェレ径を調整し、複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均を上述した数値範囲内にすることができる。
[閉塞空間の形状]
上記閉塞空間の形状は任意であるが、後述する製造方法を用いて構造体を製造すると、その製造方法に由来して、上述したように隣り合う一組の閉塞空間同士がCNFを含む膜を共有する構造をとりやすくなるため、各閉塞空間は、複数の平坦な膜で囲まれた多面体形状を有している。
[蓄熱構造体の厚さ]
蓄熱構造体がシート状や帯状である場合、蓄熱構造体の厚さL(図1(A)参照)は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、更に好ましくは3.5μm以上、より更に好ましくは5.0μm以上、特に好ましくは7.5μm以上であり、また、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、更に好ましくは200μm以下である。蓄熱構造体の厚さが300μm以下であれば、乾燥時間が長くなったり、乾燥不良が発生したりするのを回避し、結果として、閉塞空間の形状や大きさにおけるばらつきを抑え、かつ、蓄熱構造体が変質する等の問題を防ぎやすい。また、蓄熱構造体の厚さが0.5μm以上であれば、蓄熱構造体の強度が不足したり、閉塞空間内に保持できる蓄熱物質が少なくなったりすることを防止しやすい。
蓄熱構造体がシート状や帯状である場合、蓄熱構造体の面積や長手方向の大きさに特に制限はなく、製造設備を用意できる範囲で任意の大きさとすることができる。なお、蓄熱構造体がシート状や帯状以外の形状、例えば、塊状の形状を有する場合も、上述したのと同様の観点から、蓄熱構造体の最大径は、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上、更に好ましくは1cm以上、更に好ましくは2.5cm以上、特に好ましくは5cm以上であり、また、好ましくは5m以下、より好ましくは3m以下、更に好ましくは1m以下、より更に好ましくは50cm以下、特に好ましくは10cm以下である。
[支持体]
本発明の一態様においては、支持体付きのシート状蓄熱構造体50のように、蓄熱構造体が支持体を備えている。支持体を設ける場合、蓄熱構造体と支持体とを一体のものとしてもよいし、蓄熱構造体を形成した後に支持体から蓄熱構造体を分離してもよい。つまり、剥離材等の、一時的に使用する保持体上にシート状蓄熱構造体を形成してもよい。
前者の場合は、好ましくは、支持体の、蓄熱物質内包粒子含有組成物が塗布される面に易接着処理を施しておく。易接着処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等を用いることができる。また、例えば、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂などを用いて易接着層を設けることもできる。後者の場合は、蓄熱物質内包粒子含有組成物を塗布する面に剥離層が形成されたものを用いてもよいし、支持体全体が、蓄熱構造体を剥離しやすい材料から構成されているものを用いてもよい。
支持体は、シート状蓄熱構造体の用途に応じて適宜選択され、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;アルミニウム箔や銅箔や鉄箔等の金属箔;不織布等の多孔質材料:ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の1種以上の樹脂を含む樹脂フィルム又はシート;等が挙げられる。
支持体は、単層フィルム又はシートであってもよく、2層以上の積層体である複層フィルム又はシートであってもよい。
また、樹脂フィルム又はシートは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
更に、樹脂フィルム又はシートは、上述の樹脂のほかに、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
支持体の厚さは、シート状蓄熱構造体の用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下である。支持体の厚さが10μm以上であると、塗工時に強い張力がかかった際に破れを生じる等のトラブルが生じることを回避しやすくなる。支持体の厚さが250μm以下であると、ロール状に巻きやすくなり、良好な生産性を確保しやすい。
保持体の種類や厚さも、上述した支持体と同様のものとすることができる。
<蓄熱構造体の製造方法>
CNFを含む膜から構成される閉塞空間を有する蓄熱構造体は、CNFが液体分散媒に分散している分散液に蓄熱物質を添加し、蓄熱物質が添加された分散液を、蓄熱物質が液体となる温度で撹拌して、当該蓄熱物質の少なくとも一部が、CNFを含む外殻で囲まれる空間内に取り込まれた粒子を生成させて蓄熱構造体を得る製造方法によって製造することができる。
蓄熱構造体の製造方法の一態様においては、以下説明するように、CNFが液体分散媒に分散した分散液に蓄熱物質を添加する工程(添加工程(工程(1)))、蓄熱物質を含む分散液を支持体の一方の面に塗布する工程(塗布工程(工程(2)))、支持体上に形成された塗布層を乾燥する工程(乾燥工程(工程(3)))を含む。以下、CNFを含む外殻で囲まれる空間内に蓄熱物質が取り込まれた粒子である蓄熱物質内包粒子含有組成物を含む分散液を支持体上に供給してシート状の蓄熱構造体を作製する態様を例にして、蓄熱構造体の製造方法を具体的に説明する。
図2(A)は、製造工程中の一過程を示しており、蓄熱物質内包粒子含有組成物30が支持体40の表面(塗布面)40a上に塗布された様子を示す模式図である。工程(1)で調製された蓄熱物質内包粒子含有組成物30は、支持体40の塗布面40a上に塗布された時点では、図2(A)、(B)に示すように、CNFを含む外殻を備える粒子32と、液体分散媒を主体とする媒質34とを含んでいる。また、粒子32は、蓄熱物質を主体とする物質を内部に含んでいる。この後、乾燥工程において、媒質34が乾燥により除去されて、図2(C)に示すように、CNFを含む膜35による閉塞空間33が多数形成され、各閉塞空間33内に蓄熱物質36を含む層31(図1(A)参照)が支持体40上に形成される。
[添加工程(工程(1))]
CNFが液体分散媒に分散した分散液に蓄熱物質を添加するに当たっては、分散液を撹拌しながら、蓄熱物質を少量ずつ分散液に供給することが好ましい。以下、蓄熱物質を分散液に添加する工程を「添加工程」又は「工程(1)」という。
液体分散媒中にCNFが均一に分散された状態で、更に蓄熱物質が添加され、この蓄熱物質も均一に分散されることにより、界面活性剤などの分散剤を用いなくても、液体分散媒と蓄熱物質の界面にCNFが集まってCNFを含む外殻を備える粒子が形成される。CNFを含む外殻を備える粒子が形成される過程は、これに限られるものではないが、一つには以下のようなメカニズムによるものと推測される。つまり、CNFは、両親媒性を有する不溶材料であるため、乳化に用いられた水性溶媒等の液体分散媒と蓄熱物質との界面に存在することで、エネルギー的に安定な状態を作り出す。加えて、CNFは不溶性であり、造膜性があることから、界面への局在化の結果、不可逆的独立相を形成する。こうして、CNFを含む外殻を備え、その外殻によって囲まれる空間内に蓄熱物質を含む粒子が形成されるものと考えられる。
均一分散したCNFを含む分散液に蓄熱物質が添加された際に、CNFが界面に局在化して生成される粒子は比較的安定性が高いと考えられる。このため、生成されたカプセル同士の結合による大径カプセルへの変化は発生しにくく、上記蓄熱物質が添加された分散液を十分に撹拌することにより、小径でしかも均一な粒子になると考えられる。結果的に、過度な刺激を与えたり、意図的に一定の圧力を加えたりしない限り、数ヶ月以上消失せず安定して存在する粒子になると考えられる。
なお、上記蓄熱物質内包粒子含有組成物は、蓄熱物質を内包した粒子が分散したものであるため、組成物自体も蓄熱性を有している。したがって、蓄熱物質内包粒子含有組成物が、液体分散媒を含んだ蓄熱構造体であるともいえる。また、蓄熱物質内包粒子含有組成物を調製する工程が、蓄熱構造体の製造方法でもあるといえる。さらに、例えば、上記蓄熱物質内包粒子含有組成物を容器に封入することで、その蓄熱物質内包粒子含有組成物を含む容器を蓄熱構造体とすることもできる。
工程(1)においては、CNFを含む外殻を備える粒子が形成されずに、蓄熱物質が液体分散媒と相分離してしまうことを防止する観点から、分散液の全量100質量部に対して、10秒毎の蓄熱物質の添加量が、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは7質量部以下となるように蓄熱物質を添加する。蓄熱物質を連続的に供給してもよいし、蓄熱物質を断続的に供給してもよい。いずれにしても、分散液に限られた量の蓄熱物質を添加しながら撹拌することで、蓄熱物質が分散液に均一に分散され、結果として、CNFを含む外殻を備える粒子を良好に生成することができる。
工程(1)においては、蓄熱物質を均一に分散させやすくする観点から、前記蓄熱物質を、加熱して固体から液体に相変化させてから、前記分散液へ添加することが好ましい。なお、常温で液体の蓄熱物質は必ずしも加熱する必要はない。また、常温で固体の蓄熱物質であっても、常温で液体の蓄熱物質や特定の有機溶剤に溶解する蓄熱物質であれば、それらに溶解した状態で使用する場合は必ずしも加熱する必要はない。
工程(1)においては、ホモディスパー、ミキサー、パドル翼等の撹拌翼を取り付けた撹拌装置を用いて、分散液を撹拌しながら、蓄熱物質を添加することが好ましい。撹拌翼を分散液に接触させて撹拌することにより、CNFを含む外殻を備える粒子を効率よく生成することができる。
分散液を撹拌する際の撹拌速度(回転数)は、CNFの凝集を抑え、形成される粒子の形状及び大きさのばらつきを小さくする観点から、好ましくは500rpm以上、より好ましくは1,000rpm以上、更に好ましくは1,500rpm以上、より更に好ましくは2,000rpm以上であり、また、好ましくは5,000rpm以下、より好ましくは4,500rpm以下、更に好ましくは4,000rpm以下、より更に好ましくは3,500rpm以下、特に好ましくは3,000rpm以下である。
撹拌時間は、CNFを含む外殻を備える粒子の形状や大きさを均一にする観点から、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上とする。また、撹拌時間の上限は、製造時間が長くなり過ぎるのを防止する観点から、好ましくは180分以下、より好ましくは120分以下、更に好ましくは60分以下、より更に好ましくは40分以下、特に好ましくは20分以下である。
また、液体分散媒の温度は、使用する液体分散媒の種類や、圧力等の周囲の環境条件等によっても異なるが、内包させようとする蓄熱物質が液体状態を保ち得る温度とすることが望ましい。例えば、液体分散媒(B)として水を用いる場合は、0℃より高く100℃以下の温度とすることが好ましい。CNFの凝集を抑え、形成される粒子の形状及び大きさのばらつきを小さくする観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、また、添加した蓄熱物質が均一に分散されるようにする観点から、好ましくは95℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは50℃以下、より更に好ましくは40℃以下である。
工程(1)は、好ましくは80kPa以上、より好ましくは90kPa以上、更に好ましくは95kPa以上で行い、また、好ましくは120kPa以下、より好ましくは110kPa以下、更に好ましくは105kPa以下で行い、特に好ましくは大気圧下で行う。大気圧に近い条件で蓄熱物質内包粒子含有組成物を調製することにより、短時間で組成物を調製することができ、製造設備も簡素なものにすることができる。また、工程(1)は、空気又は不活性ガスの雰囲気中で行えばよい。空気雰囲気中であれば、製造設備を簡素にすることができ、不活性ガス雰囲気中であれば、蓄熱物質内包粒子含有組成物の失活等を抑制しやすくなる。なお、シート状蓄熱構造体を、特定種類の気体の雰囲気下で蓄熱物質内包粒子含有組成物を調製することにより、生成される粒子内に蓄熱物質と共にこの気体が封入されるようにしてもよい。
これらの、温度条件、圧力条件、及び、雰囲気条件は、後述する工程(2-1)、工程(2-2)についても当てはまる。
[工程(1)で得られる組成物、及び、組成物の構成材料]
工程(1)によって調製される蓄熱物質内包粒子含有組成物は、CNF(A)、液体分散媒(B)、及び、蓄熱物質(C)を配合してなるものであって、CNF(A)を含む外殻を備える粒子を含有する。なお、本明細書において、CNF(A)、液体分散媒(B)及び蓄熱物質(C)をまとめて、成分(A)~(C)と称することがある。
上記組成物において、蓄熱物質(C)の少なくとも一部は、当該粒子に取り込まれた状態であり、具体的には、前記粒子の外殻を形成しているCNF(A)に内包されている状態、及び、前記粒子の外殻を形成しているCNF(A)に吸着されている状態の少なくとも一方であることが好ましい。
ここで、「蓄熱物質(C)がCNF(A)を含む外殻に内包されている状態」とは、CNF(A)を含む外殻が中空粒子を形成し、当該中空粒子の中空部分に蓄熱物質(C)が取り込まれた状態を意味する。この際、中空粒子を構成する外殻によって、蓄熱物質(C)は、中空粒子の外側から隔てられた状態となっている。
なお、添加工程によって調製される蓄熱物質内包粒子含有組成物において、前記粒子は、蓄熱物質(C)を内包しつつ、かつ、当該粒子の外殻を構成するCNF(A)が、蓄熱物質(C)を吸着している状態であってもよい。本明細書において、「CNF(A)によって構成される外殻が蓄熱物質(C)を吸着する」とは、CNF(A)によって構成される外殻の網目構造内に蓄熱物質(C)が存在することを意味する。
上記蓄熱物質内包粒子含有組成物において、前記粒子に取り込まれない蓄熱物質(C)が存在していてもよい。
(組成物中のCNFを含む外殻を備える粒子の平均粒子径)
蓄熱構造体の閉塞空間の最大フェレ径の平均が上述した数値範囲になるようにするためには、蓄熱物質内包粒子含有組成物における、CNFを含む外殻を備える粒子の平均粒子径を適切な範囲に設定することが好ましい。
蓄熱物質内包粒子含有組成物に含まれる、前記粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは7μm以上、より更に好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、また、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、より更に好ましくは35μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
前記粒子の平均粒子径が1μm以上であれば、粒子同士の凝集を抑制しやすくなり、また、蓄熱構造体の閉塞空間が小さくなりすぎるのを防止しやすくなる。
また、前記粒子の平均粒子径が60μm以下であれば、粒子の浮上に起因して粒子が組成物の表面に偏在することを抑制しやすくなる。
また、蓄熱物質内包粒子含有組成物に含まれる、前記粒子の平均粒子径に対する標準偏差は、粒子に内包される蓄熱物質の割合が各粒子間でばらつくのを抑制し、蓄熱構造体の蓄熱性能が不均一になるのを回避する観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、更に好ましくは15μm以下、より更に好ましくは12μm以下であり、また、通常1μm以上である。
なお、本明細書において、前記粒子の平均粒子径、及び平均粒子径に対する標準偏差は、対象となる組成物を、デジタル顕微鏡を用いて倍率500~1,000倍にて観察した際に取得した画像から算出することができる。
つまり、当該画像に写し出された前記粒子のうち、任意に選択した36個の粒子の粒径(外径)の平均値を上記の「平均粒子径」とすることができる。また、36個の各粒子の粒径の値から、「平均粒子径に対する標準偏差」も算出することができる。上記標準偏差は母集団の標準偏差であり、上記計算においては、36個の粒径の値の全てを対象として標準偏差を算出する。
蓄熱物質内包粒子含有組成物の23℃、回転数50rpmにおける粘度は、容器からの取り出しの容易性、撹拌の容易性、及び、沈降の抑制性等の観点から、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは1,000mPa・s以上、更に好ましくは1,200mPa・s以上であり、また、好ましくは20,000mPa・s以下、より好ましくは15,000mPa・s以下、更に好ましくは12,000mPa・s以下である。
なお、後述する工程(2-2)において、組成物を支持体に良好に塗布できるようにするために、組成物を支持体に塗布する際の温度において、蓄熱物質内包粒子含有組成物の粘度が上記数値範囲となるように材料を選択することが好ましい。
また、蓄熱物質内包粒子含有組成物の23℃でのTI値(回転数5rpmにおける粘度/回転数50rpmにおける粘度)は、貯蔵安定性、容器中に保存するときの沈降の抑制性、及び、容器からの取り出し容易性等の観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、より更に好ましくは4以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下である。
また、本明細書において、蓄熱物質内包粒子含有組成物の粘度は、JIS Z 8803:2011に準拠して、B型粘度計を用いて測定した値を意味する。
蓄熱物質内包粒子含有組成物のpHは、形成される粒子が安定し、組成物中で分散状態を維持し易いという観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
蓄熱物質内包粒子含有組成物は、上記成分(A)~(C)以外の成分を含有してもよい。
ただし、蓄熱物質内包粒子含有組成物において、CNF(A)、液体分散媒(B)及び蓄熱物質(C)の合計含有量は、前記組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下である。
蓄熱物質内包粒子含有組成物の有効成分濃度は、前記組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
なお、本明細書において、「有効成分」とは、蓄熱物質内包粒子含有組成物に含まれる成分のうち、液体分散媒(B)を除いた成分を指す。
CNF(A)を含む外殻を備え、蓄熱物質(C)を取り込んだ粒子は、配合するCNF(A)の配合量、CNF(A)と蓄熱物質(C)との配合量比、及び蓄熱物質(C)の種類等を適宜調整することで、形成させ得る。
なお、蓄熱物質内包粒子含有組成物においては、後述のとおり、CNF(A)を液体分散媒(B)に分散させた分散液に、蓄熱物質(C)を配合することで、前記粒子を形成するように組成物を調製している。更に上記以外にも、CNF(A)の形状(直径、繊維長、アスペクト比)、液体分散媒(B)及び蓄熱物質(C)の配合量、液体分散媒(B)と蓄熱物質(C)との配合量比等を適宜設定することによっても、前記粒子を形成し易くなるように組成物を調製することができる。
(セルロースナノファイバー(CNF)(A))
本発明の一態様の蓄熱構造体及びその製造方法において用いられるCNF(A)の原料としては、例えば、木材由来のクラフトパルプ又はサルファイトパルプ;クラフトパルプ又はサルファイトパルプを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース;粉末セルロースを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末;コウゾ、雁皮、三椏等の靭皮繊維パルプ;コットンパルプ、ケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物由来のセルロース系原料;等のセルロース系原料が挙げられる。植物由来のCNFは、結晶化度が高く直鎖構造を有しアスペクト比が大きいため、外殻の強度を高くでき、しかも入手しやすい。
なお、これらの原料中に、リグニンが多く残留してしまうと、当該原料の酸化反応を阻害するおそれがあるため、これらの原料に対して、リグニンの除去を施した、セルロース系原料が好ましい。
また、上述のセルロース系原料を高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの分散装置、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザー等で微細化したものを使用することもできる。
また、これらのセルロース系原料は、化学修飾及び/又は物理修飾して機能性を高めたものであってもよい。ここで、化学修飾としては、アセチル化、カルボキシ化、カルボキシナトリウム化、エステル化、シアノエチル化、アセタール化、エーテル化、アリール化、アルキル化、アクリロイル化、イソシアネート化等によって官能基を付加させること、及び、シリケートやチタネート等の無機物を化学反応やゾルゲル法等によって複合化や被覆化させること等が挙げられる。
また、物理修飾としては、金属やセラミック原料を、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、無電解メッキや電解メッキ等のメッキ法等によって表面被覆させることが挙げられる。
なお、これらの変性処理は、セルロース系原料を解繊時もしくは解繊する前後のいずれに行ってもよい。
上述のセルロース系原料は、解繊してナノファイバー化することで、CNFとすることができる。
具体的な方法としては、セルロース系原料が水等の分散媒に分散している分散液を調製した後、セルロース系原料にせん断力を印加することで、CNFを含む分散液とする方法を用いることができる。
セルロース系原料にせん断力を印加する方法としては、水等の分散媒にセルロース系原料を添加した後、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式等の装置を用いて調製する方法を採用することが好ましい。
この際、分散液にかかる圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは140MPa以上である。
このような高圧下で、セルロース系原料に強力なせん断力を印加する観点から、高圧式の装置を用いてせん断力を印加することが好ましく、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
CNFの直径(太さ)の平均は、前記粒子を形成し易くするとともに、形成された粒子の膜強度を向上させる観点から、好ましくは1.0nm以上、より好ましくは1.5nm以上、更に好ましくは2.0nm以上、より更に好ましくは2.5nm以上であり、また、好ましくは1,000nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは200nm以下、より更に好ましくは100nm以下である。
CNFの繊維長の平均は、前記粒子を形成し易くするとともに、形成された粒子の膜強度を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上、より更に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7.0μm以下、更に好ましくは5.0μm以下、より更に好ましくは2.5μm以下である。
CNF(A)の平均アスペクト比は、前記粒子を形成し易くするとともに、形成された粒子の膜強度を向上させる観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上であり、また、好ましくは10,000以下であり、より好ましくは5,000以下であり、更に好ましくは3,000以下、より更に好ましくは1,000以下、特に好ましくは500以下である。
なお、「アスペクト比」とは、対象であるCNFの太さに対する長さの割合〔長さ/太さ〕であり、CNFの「長さ」とは、当該CNFの最も離れた2点間の距離を指す。
また、対象となるCNFの一部分が、他のCNFと接触して「長さ」の認定が難しい場合には、対象のCNFのうち、太さの測定が可能な部分のみの長さを測定し、当該部分のアスペクト比が上記範囲であればよい。
なお、本実施形態の製造方法では、蓄熱物質内包粒子含有組成物を調製する際に、CNFに対して過度のストレスが加わらないため、配合前のCNFの繊維径や繊維長は、シート状蓄熱構造体においてもほぼそのまま維持される。したがって、上述したCNFの繊維径、繊維長、アスペクト比についての数値範囲は、組成物を調製する前のCNF、組成物調製後のCNF、及び、後述する組成物を用いて作製された蓄熱構造体におけるCNFのいずれについてもそのまま当てはまる。
(組成物中のCNFの含有量)
蓄熱物質内包粒子含有組成物におけるCNF(A)の含有量は、当該組成物の全量(100質量%)に対して、前記粒子を形成し易くするとともに、形成された粒子の膜強度を向上させる観点から、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは1.2質量%以上であり、また、前記粒子を形成し易くするように、蓄熱物質内包粒子含有組成物の粘度を適切に調整する観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
(液体分散媒(B))
蓄熱物質内包粒子含有組成物において、液体分散媒(B)は、そのほとんどが、前記粒子が備える外殻に吸着されているか、又は、前記粒子の外側に存在している。
ただし、液体分散媒(B)の一部が、前記粒子の内部で蓄熱物質(C)とともに内包されていてもよい。
液体分散媒(B)としては、水性分散媒や有機溶媒を用いることができる。特に、CNF(A)との親和性の観点から水性分散媒が好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ジエチレングリコール、グリセリン、ピロリドン系溶媒、及び、これらのうち2つ以上の混合物等の水性溶媒が挙げられる。特に、物質内包カプセル(X)の分散性がよいことから、水が好ましい。
なお、後述するように、蓄熱物質(C)として、水や水性溶媒を用いる場合は、液体分散媒(B)として、水や水性溶媒と相溶しにくい有機溶剤を用いることも可能である。
いずれにしても、液体分散媒(B)及び蓄熱物質(C)は、液体分散媒(B)に蓄熱物質(C)を混ぜた際に、蓄熱物質(C)とは独立した相を形成し、かつ、撹拌することで一時的に乳化状態をとり得る組合せとすることが好ましい。この組み合わせとすることで、界面活性剤等の分散剤を用いることなく、CNFを含む外殻を備える粒子を生成させることができる。
蓄熱物質内包粒子含有組成物において、適度な粘度を有する組成物を調製するとともに、前記粒子を形成し易くする観点から、液体分散媒(B)の含有量は、当該組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98.7質量%以下、更に好ましくは98.5質量%以下である。
蓄熱物質内包粒子含有組成物において、適度な粘度を有する組成物に調製するとともに、前記粒子を形成し易くする観点から、CNF(A)100質量部に対する、液体分散媒(B)の含有割合は、好ましくは500質量部以上、より好ましくは1,000質量部以上、更に好ましくは2,000質量部以上、より更に好ましくは3,000質量部以上であり、また、好ましくは20,000質量部以下、より好ましくは15,000質量部以下、更に好ましくは10,000質量部以下である。
蓄熱物質(C)として、液体分散媒(B)の融点より高く液体分散媒(B)の沸点より低い温度の間で、液状になるものを用いることで、蓄熱物質内包粒子含有組成物を製造する際に、蓄熱物質(C)が組成物全体に均一に分散しやすくなり、また、蓄熱物質内包カプセル(X)に内包されやすくなる。したがって、蓄熱物質(C)は、使用する液体分散媒(B)の融点及び沸点を考慮して選択することが好ましい。換言すれば、液体分散媒(B)は、使用する蓄熱物質(C)の温度特性を考慮して、蓄熱物質(C)が液状になる温度が液体分散媒(B)の融点より高く液体分散媒(B)の沸点より低い温度の間になるものを選択することが好ましい。
(分散液)
CNF及び液体分散媒を含む分散液は、上述したように、セルロース系原料を例えば水性溶媒に分散させた後、セルロース系原料にせん断力を印加することで得られる水性分散液をそのまま分散液として用いることができる。CNFの水分散液として市販されているものを用いることもできる。
分散液のpHは、分散液中でCNF(A)の凝集を抑え、形成される粒子の形状及び大きさのばらつきを小さくする観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
(組成物中の蓄熱物質の含有量)
蓄熱物質内包粒子含有組成物において、前記粒子を形成し易くする観点から、CNF(A)100質量部に対する、蓄熱物質(C)の含有割合は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、より更に好ましくは50質量部以上、更に好ましくは75質量部以上、更に好ましくは90質量部以上であり、また、好ましくは6,000質量部以下、より好ましくは4,500質量部以下、更に好ましくは4,000質量部以下、より更に好ましくは3,500質量部以下である。
蓄熱物質内包粒子含有組成物においては、前記粒子を形成し易くする観点から、蓄熱物質(C)の含有量は、当該組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.8質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは42質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは38質量%以下である。
有機溶剤に蓄熱物質が溶解されている場合、蓄熱物質内包粒子含有組成物においては、その溶液全体を油分(C)という。
(液体分散媒と蓄熱物質の割合)
蓄熱物質内包粒子含有組成物において、前記粒子を形成し易くする観点から、液体分散媒(B)と蓄熱物質(C)との含有量比〔(B)/(C)〕は、質量比で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは1.5以上であり、また、好ましくは1,000以下、より好ましくは700以下、更に好ましくは500以下、より更に好ましくは300以下、特に好ましくは100以下である。
(他の成分)
蓄熱物質内包粒子含有組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)~(C)以外の他の成分を含有してもよい。
このような他の成分としては、前記組成物の用途に応じて適宜選択されるが、例えば、着色剤、酸化防止剤、pH調整剤、ゲル化剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、蛍光剤、撥水剤、甘味料、香料等が挙げられる。
蓄熱物質内包粒子含有組成物において、界面活性剤を含有してもよい。
ただし、界面活性剤を含む組成物を用いて作製された蓄熱構造体を、人体に触れる用途に使用する場合、特に、敏感肌の使用者にとって、当該界面活性剤は浸透剤及び刺激的な刺激物ともなる。また、界面活性剤を含む組成物は、当該組成物の物性の安定性に影響を与える懸念もある。更に、界面活性剤が蓄熱構造体の物性の安定性に影響を与え、蓄熱物質の保持性が損なわれたりするおそれがある。
そのため、本発明一態様の蓄熱物質内包粒子含有組成物において、界面活性剤の含有量は少ないほど好ましい。組成物中の界面活性剤の含有量を少なくすることで、蓄熱構造体における蓄熱物質への界面活性剤の混入も抑制しやすくなる。
上記観点から、蓄熱物質内包粒子含有組成物において、界面活性剤の含有量は、CNF(A)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは1質量部未満、更に好ましくは0.1質量部未満、より更に好ましくは0.01質量部未満、特に好ましくは0.001質量部未満、最も好ましくは0質量部である。組成物における界面活性剤の含有量をこのように調整することで、蓄熱構造体における界面活性剤の含有量を上述した範囲内とすることができる。
また、蓄熱物質内包粒子含有組成物において、CNF(A)以外の多糖類を含有してもよいが、前記粒子の熱的安定性を向上させること、及び、前記粒子を形成し易くする観点から、当該多糖類の含有量は少ないほど好ましい。
上記観点から、蓄熱物質内包粒子含有組成物において、CNF(A)以外の多糖類の含有量は、CNF(A)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは1質量部未満、更に好ましくは0.1質量部未満、より更に好ましくは0.01質量部未満、特に好ましくは0質量部である。蓄熱物質内包粒子含有組成物における、CNF(A)以外の多糖類の含有量をこのように調整することで、蓄熱構造体における、CNF(A)以外の多糖類の含有量を上述した範囲内とすることができる。
[塗布工程(工程(2))及び乾燥工程(工程(3))]
本例のようにシート状の蓄熱構造体を作製する場合は、蓄熱物質内包粒子含有組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥してシート状の蓄熱構造体とする。塗布工程(2)においては、工程(1)で調製した組成物中の、CNFを含む外殻を備える粒子に過度なストレスがかかるのを回避する観点から、好ましくは、まず組成物を支持体上に供給し(工程(2-1))、次に支持体上の組成物を均一に塗布する(工程(2-2))。
(工程(2-1):支持体の一方の面に組成物を供給する工程)
工程(2-1)においては、例えば、蓄熱物質内包粒子含有組成物の入った容器を傾けて組成物を自重で容器から支持体へと徐々に移動させることにより、上記組成物を支持体上に供給する。また、ポンプ等を用いて上記組成物を支持体上に供給しても良い。
工程(2-1)における、温度条件、圧力条件、及び、雰囲気条件は、工程(1)で説明したのと同様に設定すればよい。
(工程(2-2):組成物を支持体に塗布する工程)
工程(2-2)においては、工程(2-1)で支持体上に供給された蓄熱物質内包粒子含有組成物を、例えば塗布装置を用いて支持体上に塗布する。
ここで、塗膜を形成する際のコーティングギャップは、CNFを含む膜で構成される閉塞空間を良好な形状で十分な数だけ形成するとともに、乾燥に時間を要したり比較的高温での加熱が必要になったりする結果、塗布後の組成物における一部の粒子が、壊れたり消失したりするのを防止する観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは100μm以上、更に好ましくは150μm以上、より更に好ましくは200μm以上であり、また、好ましくは1,250μm以下、より好ましくは1,000μm以下、更に好ましくは750μm以下、より更に好ましくは500μm以下とする。
組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、ディップコート法等が挙げられる。中でも、ナイフコート法、グラビアコート法が好ましい。
工程(2-2)においては、組成物中の、CNFを含む外殻を備える粒子が塗布によって壊れることを回避する観点から、上記粒子の直径よりも大きいギャップを形成し得る治具を用いることが好ましい。この場合、治具が形成するギャップを、CNFを含む外殻を備える粒子の直径の、好ましくは1倍以上、より好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上であり、また、好ましくは10倍以下、より好ましくは9倍以下、更に好ましくは8倍以下とする。
工程(2-2)においては、液体分散媒が揮発して組成物の塗布が困難になることを防止し、また、蓄熱物質として融点が低いものを用いている場合に蓄熱物質が揮発して所期の蓄熱性能が確保できなくなることを防止する観点から、組成物の温度が、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下となる環境下で塗布を行う。また、組成物の粘性が高くなりすぎて塗布層が均一に形成できなくなったり、CNFを含む外殻を備える粒子が損傷したりするのを防ぐ観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上となる環境下で塗布を行う。
工程(2-2)における、圧力条件、及び、雰囲気条件は、工程(1)で説明したのと同様に設定すればよい。
なお、ダイコーターのような塗布装置を用いて、組成物を支持体に供給すると同時に塗布を行う(つまり、工程(2-1)と工程(2-2)とを同時に行う)ことも可能であるが、この場合は、組成物中の、CNFを含む外殻を備える粒子に過度なストレスが加わらないように、射出条件等を調整することが好ましい。
(乾燥工程(工程(3)))
支持体上に塗布された蓄熱物質内包粒子含有組成物の層は、例えば加熱等により乾燥することにより、CNFを含む膜で構成された複数の閉塞空間と、各閉塞空間内に内包された蓄熱物質とを備える蓄熱層となる。具体的には、支持体上に塗布された蓄熱物質内包粒子含有組成物の層を、ヒーター等によって乾燥し、上記組成物の層から液体分散媒を蒸発させることにより、蓄熱物質を内包する、CNFを含む膜で構成された複数の閉塞空間を備える蓄熱層を形成する。
工程(3)において、蓄熱物質を内包する、CNFを含む膜で構成される閉塞空間が形成される機構は、必ずしもこれに限られるものではないが、次のように推測される。つまり、蓄熱物質内包粒子含有組成物の層から液体分散媒が揮発する過程において、隣接する粒子同士で粒子の一部が固着したり、一部の粒子がより安定な位置へ移動したりして、粒子間の隙間が徐々になくなり、その一方、蓄熱物質と液体分散媒との界面に集まったCNFが安定に存在するため、CNFを含む膜が破壊されることなく、最終的に、蓄熱物質を内包した、密な閉塞空間が三次元的に形成されるものと推測される。
工程(3)においては、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、また、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下で乾燥を行う。90℃以上で乾燥することにより、液体分散媒が速やかに除去され、良好な形状の閉塞空間を形成しやすくなる。150℃以下で乾燥することにより、閉塞空間の形状や大きさが不均一になったり、支持体が変形したりするのを防止しやすくなる。
工程(3)における、圧力条件、及び、雰囲気条件は、工程(1)で説明したのと同様に設定すればよい。
工程(3)においては、液体分散媒が除去されずに残存して、閉塞空間の形状が崩れるのを防止する観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、更に好ましくは1分以上、より更に好ましくは5分以上、特に好ましくは10分以上、また、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは30分以下の時間をかけて乾燥する。
なお、上述した例では、蓄熱物質内包粒子含有組成物を支持体上に塗布した後に乾燥を行っているが、支持体へ組成物を塗布する工程を省略することもできる。例えば、上記組成物をスプレーなどの噴霧装置により粒子状に噴霧し、形成された各粒子を乾燥することによって、外表面に液体分散媒が存在しない(換言すれば、該表面が乾燥した状態の)粒子状の蓄熱構造体を得るようにしてもよい。この場合、噴霧によって形成された各粒子が空中に存在している間に乾燥させることで、一つ一つが乾燥した個別の粒子となるようにしてもよいし、支持体等に向けて噴霧してから乾燥したり、組成物を型に入れてから乾燥したりすることにより、複数の粒子が結合した状態で外表面が乾燥した、複数粒子の凝集体からなる蓄熱構造体としてもよい。
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
<CNFの直径(太さ)の平均、長さの平均、アスペクト比の平均>
透過型電子顕微鏡(カールツァイス社製、製品名「LEO912」)を用いて、任意に選択した10本のCNFの直径(太さ)及び長さを測定し、10本の平均値を、対象となるCNFの「直径(太さ)の平均」及び「長さの平均」とした。また、「長さの平均」/「直径(太さ)の平均」を「アスペクト比の平均」とした。
<水性分散液、組成物のpH>
23℃、相対湿度50%の環境下、コンパクトpHメータ(株式会社堀場アドバンスドテクノ製、製品名「LAQUAtwin pH-22B」)を用いて、pH4.01標準液とpH6.86標準液の2点校正を行った後、平面センサ全体を覆うように試料を滴下して測定した。
(実施例1)
1.蓄熱物質内包粒子含有組成物E1の調製
蓄熱物質内包粒子含有組成物E1の調製に際し、下記の市販品のCNFを含む水分散液(1)と市販のパラフィンワックス(1)とを使用した。
・水分散液(1)製品名「BiNFi-s AMa10002」、株式会社スギノマシン製。直径(太さ)の平均=76.8nm、長さの平均=1.4μm、平均アスペクト比=18.2である、機械処理型のCNFを2質量%含む水分散液。水分散液(1)は、CNF100質量部に対して、水を4,900質量部含有するものであり、水分散液(1)のpH=7.0であった。
・パラフィンワックス(1):製品名「Paraffin Wax-115」、日本精蝋株式会社製。融点は48.9℃、融解熱量は141.0J/gであった。
水分散液(1)5,000質量部(CNF100質量部)を容器に投入し、超高速マルチ撹拌システム(プライミクス社製、製品名「ラボ・リューション(登録商標)」、撹拌羽:ホモディスパー(同社製、羽の直径35mm))を用いて、90℃の水分散液を、回転数2,000rpmで撹拌した。撹拌開始後、予め90℃で融解しておいたパラフィンワックス(1)を、水分散液の全量100質量部に対して、10秒毎に5質量部の速さで添加した。上記水分散液5,000質量部(CNF100質量部)に対して、パラフィンワックス(1)が500質量部(固形分比でCNF:パラフィンワックス=1:5)となるまでパラフィンワックス(1)の添加を続け、撹拌開始から20分経過後に撹拌を終了し、CNFを含む外殻を備える蓄熱物質内包カプセルを含む蓄熱物質内包粒子含有組成物E1を調製した。
2.シート状の蓄熱構造体E1の作製
蓄熱物質内包粒子含有組成物E1を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(登録商標)、品番「A4100」、厚さ:50μm)の易接着層面に静かに載置し、アプリケーター(コーティングギャップ:254μm(10mil))を用いて組成物E1を上記フィルムに塗布した。更に、120℃で10分間加熱して乾燥することにより、支持体付きのシート状の蓄熱構造体E1を作製した。
組成物E1の調製から塗布までの工程は、全て、空気雰囲気中で、大気圧下、23℃の条件で行った。
(実施例2)
パラフィンワックス(1)に代えて、下記の市販のパラフィンワックス(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、蓄熱物質内包カプセルを含む蓄熱物質内包粒子含有組成物E2を調製した。
・パラフィンワックス(2):製品名「Paraffin Wax-135」、日本精蝋株式会社製。融点は59.6℃、融解熱量は143.7J/gであった。
そして、組成物E1に代えて組成物E2を用いた以外は実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状蓄熱構造体E2を作製した。
(実施例3)
パラフィンワックス(1)に代えて、下記の市販のパラフィンワックス(3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、蓄熱物質内包カプセルを含む蓄熱物質内包粒子含有組成物E3を調製した。
・パラフィンワックス(3):製品名「Paraffin Wax-155」、日本精蝋株式会社製。融点は68.9℃、融解熱量は203.1J/gであった。
そして、組成物E1に代えて組成物E3を用いた以外は実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状蓄熱構造体E3を作製した。
(実施例4、5)
パラフィンワックス(2)の添加総量を、それぞれ、100質量部、3,000質量部に変更した以外は、実施例2と同様の手順で蓄熱物質内包カプセルを含む蓄熱物質内包粒子含有組成物E4、E5を調製した。そして、組成物E1に代えて、それぞれ、組成物E4、E5を用いた以外は、実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状蓄熱構造体E4、E5を作製した。
(実施例6)
水分散液(1)に代えて、下記の市販品のCNFを含む水分散液(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、蓄熱物質内包カプセルを含む蓄熱物質内包粒子含有組成物E6を調製した。
・水分散液(2):製品名「TEMPO酸化CNF」、日本製紙株式会社製。直径(太さ)の平均=3.8nm、長さの平均=0.7μm、平均アスペクト比=184である、化学処理型のCNFを1質量%含む水分散液。CNF100質量部に対して、水を9,900質量部含有するものであり、pH=7.0であった。
そして、組成物E1に代えて組成物E6を用いた以外は、実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状蓄熱構造体E6を作製した。
(実施例7、8)
パラフィンワックス(1)に代えて、それぞれ、パラフィンワックス(2)、パラフィンワックス(3)を用いた以外は、実施例6と同様にして、蓄熱物質内包カプセルを含む組成物E7、E8を調製した。そして、組成物E1に代えて、それぞれ、蓄熱物質内包粒子含有組成物E7、E8を用いた以外は、実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状蓄熱構造体E7、E8を作製した。
(実施例9)
パラフィンワックス(1)に代えて、下記の市販のエンジン油を用いるとともに、水分散液(1)へのエンジン油添加時のエンジン油及び水分散液(1)の温度を23℃とし、撹拌を非加熱で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、蓄熱物質内包カプセルを含む蓄熱物質内包粒子含有組成物E9を調製した。
・エンジン油:製品名「アウディ純正エンジンオイル 5W-30」、アウディ社製。融点は-14.5℃、融解熱量は14.6J/gであった。
そして、組成物E1に代えて、組成物E9を用いた以外は、実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状蓄熱構造体E9を作製した。
(実施例10)
パラフィンワックス(1)500質量部に代えて、下記の市販のラノリン(1)3,000質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、蓄熱物質内包カプセルを含む蓄熱物質内包粒子含有組成物E10を調製した。
・ラノリン(1):製品名「精製ラノリン」、山桂産業株式会社製。融点は45℃、融解熱量は63.0J/gであった。
そして、組成物E1に代えて、組成物E10を用いた以外は、実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状蓄熱構造体E10を作製した。
(実施例11)
パラフィンワックス(1)500質量部に代えて、ラノリン(1)3,000質量部を用いた以外は、実施例6と同様にして、蓄熱物質内包カプセルを含む蓄熱物質内包粒子含有組成物E11を調製した。
そして、組成物E1に代えて、組成物E11を用いた以外は、実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状蓄熱構造体E11を作製した。
(実施例12)
水分散液(1)に代えて、下記の市販品のCNFを含む水分散液(3)を用い、パラフィンワックス(1)に代えて、下記の市販の流動パラフィン(1)を用いるとともに、水分散液(3)への流動パラフィン(1)添加時の流動パラフィン(1)及び水分散液(3)の温度を23℃とし、撹拌を非加熱で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、蓄熱物質内包カプセルを含む蓄熱物質内包粒子含有組成物E12を調製した。
・水分散液(3):製品名「CM化CNF 粉末品」、日本製紙株式会社製のカルボキシメチル化CNF(CM化CNF)を2質量%含むように調製した水分散液。直径(太さ)の平均=50nm、長さの平均=約2μm、平均アスペクト比=約40であり、CNF100質量部に対して、水を4,900質量部含有するものであり、pH=7.0であった。
・流動パラフィン(1)製品名「モレスコホワイトP-350」株式会社MORESCO製。融点は、-16.2℃、融解熱量は15.3J/gであった。
そして、組成物E1に代えて組成物E12を用いた以外は、実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状蓄熱構造体E12を作製した。
(比較例1)
パラフィンワックス(1)を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較組成物CE1を調製した。
そして、組成物E1に代えて比較組成物CE1を用いた以外は、実施例1と同じ手順で、CNFの層が形成された支持体CE1を作製した。
(比較例2)
パラフィンワックス(2)の配合量を500質量部から100質量部に変更し、撹拌装置を使用せず、薬匙を用いて手混ぜで各成分を混合する方法に変更した以外は実施例1と同様にして、比較組成物CE2を調製した。
そして、組成物E1に代えて比較組成物CE2を用いた以外は、実施例1と同じ手順で、支持体付きのシート状構造体CE2を作製した。
実施例1~12及び比較例1、2で用いた各成分、それらの配合量、及び、配合比率を表1にまとめて示す。なお、表1において「全体」とあるのは組成物全体の質量であることを表す。
次に各例で作製した構造体について下記の評価を行った。評価結果を表2に示す。
[蓄熱温度および融点]
示差走査熱量計(DSC)(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、製品名「DSC Q2000」)を用いて、以下の条件で、JIS K 7121:2012に準じてサンプルの蓄熱温度および融点[℃]を測定した。
・測定条件:大気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲-85℃~+100℃
より具体的には、まず、降温速度10℃/分で室温から-85℃まで低下させ、昇温速度10℃/分で-85℃から+100℃まで上昇させ、降温速度10℃/分で-85℃まで再度低下させる。その後、再び昇温速度10℃/分で+100℃まで上昇させる際にDSC曲線を作成し、最も大きい吸熱ピークのピークトップの温度を蓄熱温度および融点とする。
[蓄熱量(融解熱量)]
示差走査熱量計(DSC)(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、製品名「DSC Q2000」)を用いて、以下の条件で、サンプルの蓄熱量(融解熱量)[J/g]を測定した。
・測定条件:大気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲-85℃~+100℃
より具体的には、まず、降温速度10℃/分で室温から-85℃まで低下させ、昇温速度10℃/分で-85℃から+100℃まで上昇させ、降温速度10℃/分で-85℃まで再度低下させる。その後、再び昇温速度10℃/分で+100℃まで上昇させる際にDSC曲線を作成し、最も大きい吸熱ピークの面積を算出して蓄熱量とする。
[構造体の閉塞空間の最大フェレ径とその平均]
各シート状構造体の表面をデジタル顕微鏡で500倍の倍率で観察し、得られた画像から36個の閉塞空間を任意に選択し、それぞれの最大フェレ径を測定し、それらの平均値を算出することにより、最大フェレ径の平均とした。
[蓄熱構造体の厚さ]
定圧膜厚計を用いて、支持体付きのシート状蓄熱構造体全体の厚さを測定し、既知である基材の厚さを減じることで、シート状蓄熱構造体の厚さ(図1(A)の符号Lに相当)を算出した。
[シート強度]
実施例1~12の支持体付きのシート状蓄熱構造体について、各支持体から蓄熱構造体を剥離して単独のシート状蓄熱構造体とし、先端部分の直径が1mmのプランジャーを用いて、進入速度0.5mm/秒で、深度15mmまで押し付けてクリープ試験を行い、そのときの最大荷重を、蓄熱構造体のシート強度とした。
シート強度が0.10N/1mmΦ以上である場合、蓄熱構造体が自立性を有していると判断し、シート強度が0.10N/1mmΦ未満である場合、蓄熱構造体は自立性が不十分であると判断した。
Figure 0007252843000001
Figure 0007252843000002
表2に示すように、実施例1~12のシート状構造体は、いずれもCNFを含む膜から構成された閉塞空間を有しており、その閉塞空間に被内包物質を有していることが確認された。また、実施例1~12のシート状蓄熱構造体は、50質量%以上の蓄熱物質を含んでおり、所定の蓄熱温度において良好な蓄熱性能を有していることが分かる。また、実施例1~3、5~8、10、11のシート状蓄熱構造体は、83質量%を超える蓄熱物質を含有し、50J/gを超える融解熱量を示しており、より多くの蓄熱物質を含有し、より高い蓄熱性能を有していることが分かる。更に、実施例2、3、5~8のシート状蓄熱構造体は、100J/gを超える融解熱量を示しており、更に高い蓄熱性能を有していることが分かる。更に、実施例5、10、11の蓄熱構造体は、95質量%を超える多量の蓄熱物質を含有していることが分かる。また、実施例1~12の構造体はいずれも0.10N/1mmΦ以上のシート強度を備えており、自立性を有することが分かる。実施例1~8の構造体は0.15N/1mmΦ以上のより高いシート強度を有しており、さらに、実施例1、3~5、7,8の構造体は更に高いシート強度を備えている。
なお、表2から明らかなように、実施例1~12において調製した蓄熱物質内包粒子含有組成物は、蓄熱構造体と比較して、融解熱量の大きさが小さく、蓄熱温度も若干低温側になるものの、一定の蓄熱性能を有していることが理解できる。
これに対して、比較例1においては、蓄熱物質を配合しなかったことにより、自立性を有する構造体を得ることができず、得られた構造体中にCNFを含む膜からなる閉塞空間を形成することができなかった。また、その構造体の蓄熱温度及び融解熱量を測定すると、明確なピークが存在せず、当該構造体では蓄熱を行えないことが理解できる。
また、比較例2においては、蓄熱物質であるパラフィンワックス(2)が用いられているものの、組成物の調製時に相分離が発生してしまい、CNFを含む膜から構成される閉塞空間が形成されず、パラフィンワックス(2)を内包するカプセルは形成されなかった。また、このため、支持体上に適切に塗工することは出来ず、加えて、温度を上昇させたときにパラフィンワックス(2)が溶出してしまった。
30:蓄熱物質内包粒子含有組成物
31:複数の閉塞空間を有する蓄熱層(シート状蓄熱構造体)
32:CNFを含む外殻を備える粒子
33、33a、33b:閉塞空間
34:液体分散媒を主体とする媒質
35:CNFを含む膜
35a:隣り合う一組の閉塞空間で共有される膜
36:蓄熱物質
40:支持体
40a:塗布面
50:支持体付きのシート状蓄熱構造体
df:閉塞空間の最大フェレ径
P:シート状蓄熱構造体の表面の一部の領域
L:複数の閉塞空間を有する蓄熱層(シート状蓄熱構造体)の厚さ

Claims (15)

  1. セルロースナノファイバーを含む膜と、該膜から構成された閉塞空間とを備える構造体であって、
    前記閉塞空間内に、融点が-100℃~+90℃の蓄熱物質を含む、蓄熱構造体。
  2. 前記蓄熱物質が、融解熱量が10J/g以上の潜熱材料、及び、比熱が1.0J/g・K以上の顕熱材料のうち少なくとも一方を含む、請求項1に記載の蓄熱構造体。
  3. 前記蓄熱物質が炭素数7以上の炭化水素である、請求項1又は2に記載の蓄熱構造体。
  4. 前記蓄熱物質の含有量が、前記構造体全体の質量に対して30~98質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄熱構造体。
  5. 前記膜の第1面が前記蓄熱物質に面しており、前記膜の第1面とは反対側の第2面が、前記蓄熱物質と同じ組成の物質、気体及び固体の少なくともいずれかに接している、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄熱構造体。
  6. 前記閉塞空間を複数有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄熱構造体。
  7. 前記複数のうち隣り合う一組の閉塞空間が前記膜を共有している、請求項6に記載の蓄熱構造体。
  8. 前記構造体はシート形状を有する、請求項6又は7に記載の蓄熱構造体。
  9. 前記構造体の厚さが0.5~300μmである、請求項8に記載の蓄熱構造体。
  10. 単独で自立性を有する、請求項8又は9に記載の構造体。
  11. 前記構造体の前記複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均が、1μm~100μmである、請求項6~10のいずれか1項に記載の蓄熱構造体。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載の蓄熱構造体が、支持体上に設けられている、支持体付き蓄熱構造体。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の蓄熱構造体の製造方法であって、
    セルロースナノファイバーが液体分散媒に分散している分散液に、前記蓄熱物質を添加し、
    前記蓄熱物質が添加された前記分散液を、前記蓄熱物質が液体となる温度で撹拌して、前記蓄熱物質の少なくとも一部が、前記セルロースナノファイバーを含む外殻で囲まれる空間内に取り込まれた粒子を生成させて前記蓄熱構造体を得る、蓄熱構造体の製造方法。
  14. 前記蓄熱物質を、加熱して固体から液体に相変化させてから、前記分散液へ添加する、請求項13に記載の蓄熱構造体の製造方法。
  15. 前記粒子を含む前記分散液を支持体上に塗布して塗布層を形成し、
    前記塗布層を乾燥して前記蓄熱構造体を形成する、請求項13又は14に記載の蓄熱構造体の製造方法。
JP2019122020A 2019-06-28 2019-06-28 蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法 Active JP7252843B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019122020A JP7252843B2 (ja) 2019-06-28 2019-06-28 蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019122020A JP7252843B2 (ja) 2019-06-28 2019-06-28 蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021008972A JP2021008972A (ja) 2021-01-28
JP7252843B2 true JP7252843B2 (ja) 2023-04-05

Family

ID=74199732

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019122020A Active JP7252843B2 (ja) 2019-06-28 2019-06-28 蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7252843B2 (ja)

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003246977A (ja) 2002-02-26 2003-09-05 Mitsubishi Paper Mills Ltd マイクロカプセル固形化物及びその利用方法
JP2007145946A (ja) 2005-11-25 2007-06-14 Rengo Co Ltd セルロース系蓄熱材
JP2017535641A (ja) 2014-10-30 2017-11-30 セルテック・アクチボラゲットCellutech Ab アニオン性界面活性剤を有するcnf多孔性固体材料
WO2018009139A1 (en) 2016-07-08 2018-01-11 Cellutech Ab A cellular solid material drug carrier comprising cellulose nanofibers (cnf) wherein the cellular solid material comprises closed cells
JP2018016690A (ja) 2016-07-26 2018-02-01 Jsr株式会社 組成物、成形体及び建築材料
WO2018105617A1 (ja) 2016-12-05 2018-06-14 日産化学工業株式会社 蓄熱層形成用組成物
JP2019065264A (ja) 2017-09-28 2019-04-25 住友理工株式会社 断熱材用塗料および断熱材
JP2021007905A (ja) 2019-06-28 2021-01-28 リンテック株式会社 構造体及び構造体の製造方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003246977A (ja) 2002-02-26 2003-09-05 Mitsubishi Paper Mills Ltd マイクロカプセル固形化物及びその利用方法
JP2007145946A (ja) 2005-11-25 2007-06-14 Rengo Co Ltd セルロース系蓄熱材
JP2017535641A (ja) 2014-10-30 2017-11-30 セルテック・アクチボラゲットCellutech Ab アニオン性界面活性剤を有するcnf多孔性固体材料
WO2018009139A1 (en) 2016-07-08 2018-01-11 Cellutech Ab A cellular solid material drug carrier comprising cellulose nanofibers (cnf) wherein the cellular solid material comprises closed cells
JP2018016690A (ja) 2016-07-26 2018-02-01 Jsr株式会社 組成物、成形体及び建築材料
WO2018105617A1 (ja) 2016-12-05 2018-06-14 日産化学工業株式会社 蓄熱層形成用組成物
JP2019065264A (ja) 2017-09-28 2019-04-25 住友理工株式会社 断熱材用塗料および断熱材
JP2021007905A (ja) 2019-06-28 2021-01-28 リンテック株式会社 構造体及び構造体の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021008972A (ja) 2021-01-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5666837B2 (ja) ナノファイバシート
de Vries et al. The effect of oil type on network formation by protein aggregates into oleogels
Kakkar et al. Topical delivery of tetrahydrocurcumin lipid nanoparticles effectively inhibits skin inflammation: in vitro and in vivo study
Pereda et al. Characterization of core-shell alginate capsules
AU2005238471B2 (en) Fibrous structures comprising a transferable agent
US20050238701A1 (en) Fibrous structures comprising a transferable agent
JP7252843B2 (ja) 蓄熱構造体及び蓄熱構造体の製造方法
Chen et al. Engineering phytosterol-based oleogels for potential application as sustainable petrolatum replacement
CN112961409A (zh) 一种含肉桂油/纤维素纳米晶的壳聚糖基可食用膜及其制备方法和应用
CA2564660A1 (en) Compressed candle
JP2021007905A (ja) 構造体及び構造体の製造方法
CN107242999A (zh) 一种固体多重自乳化载体及其制备方法
Moradabbasi et al. Effect of biopolymers concentration and drying methods on physicochemical properties of emulsion-templated oleogel
JP7385576B2 (ja) 構造体
WO2014112009A1 (ja) 外用貼付剤
JP7385577B2 (ja) 構造体
CN113845677A (zh) 一种乳液薄膜及其制备方法
JP2006272162A (ja) 水中油型エマルジョン組成物及びその製造方法
WO2018009113A1 (en) Lotion comprising an emulsion
WO2020050151A1 (ja) シート状構造体の製造方法
CN100536826C (zh) 一种绵羊油纳米乳液及其制备方法和应用
Yang et al. Effect of different gelators on the physicochemical properties and microstructure of coconut oleogels
Benegra et al. Preparation and evaluation of w/o/w-type emulsions for encapsulation of citronella essential oil by inverse ionic gelation
JP7386629B2 (ja) 植物被覆用組成物、植物被覆用組成物の製造方法、及び、植物の被覆方法
Han et al. Preparation and characterization of microcapsules containing squalene

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220506

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230220

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230307

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230324

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7252843

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150