JP4173569B2 - ハロゲン化反応剤およびハロゲン化方法 - Google Patents

ハロゲン化反応剤およびハロゲン化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族性化合物から対応するハロゲン化物や酸化物を生成させる上で有用な反応剤、およびこの反応剤を用いた芳香族性化合物のハロゲン化又は酸化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン酸及びその塩(以下、ハロゲン酸類と称する場合がある)は、工業的に利用価値の高い酸化剤として利用されている。ハロゲン酸類は、比較的安価な酸化物であるとともに、ハンドリングが容易であり、代表的な空気酸化や過酸化物を用いた酸化反応などに比べて安全性が高く、しかも反応をコントロールしやすいという利点がある。また、化学量論的に反応が進行するため、反応制御が可能であり、高い酸化選択性が得られる。
【0003】
特開昭62−155225号公報には、アルカリ性媒体中、亜臭素酸又はその塩に対して、活性化剤として、マグネシウム、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウムの単体、又はこれらの金属の塩(硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、塩酸塩、燐酸塩)を添加し、炭化水素類やアルコール類を液相で酸化する方法が開示されている。特開平1−151532号公報および特開平1−151534号公報には、アルミナ又はシリカゲルの存在下、水に不溶な不活性有機溶媒中、固体の亜臭素酸塩とアルコールとを反応させ、ケトンやアルデヒドを生成させる方法が開示されている。
【0004】
さらに、特開平9−77705号公報には、アルコール類と、ハロゲン酸類および還元性無機化合物で構成された酸化反応剤とを反応させて酸化し、対応するカルボニル化合物を生成させることが開示されている。
【0005】
一方、芳香族化合物のハロゲン化は、通常、光照射や高温で、芳香族化合物とハロゲン化剤とを反応させることにより行われている。例えば、臭素化剤として臭素やN−ブロモコハク酸イミドを用い、光照射により、トルエンを臭素化すると、ベンジル位がブロム化され、ブロモメチルベンゼンを得ることができ、塩素化剤として塩素を用い、光照射によりベンゼンを塩素化してクロロベンゼンなどを得ることができる。しかし、光照射や高温反応では、反応の制御が困難であり、高い選択性でハロゲン化物を得ることが困難である。特に、温和な条件で選択的にハロゲン化物を得ることが困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高い反応性および選択性で、芳香族性化合物をハロゲン化できる反応剤(ハロゲン化剤)、およびそれを用いたハロゲン化方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、温和な条件下であっても、高い転化率および選択率で芳香族性化合物をハロゲン化できる反応剤、およびそれを用いたハロゲン化方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、NaBrO/NaHSO反応剤を、芳香族性化合物のハロゲン化反応に適用したところ、ベンジル位や芳香環を高い選択率でブロム化できることを見いだし、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の反応剤は、アルキル基置換芳香族性化合物のアルキル基のうち芳香環に隣接するα−位のメチル基又はメチレン基をハロゲン化、又は前記アルキル基置換芳香族性化合物の芳香環をハロゲン化するための反応剤であって、式 M(XO(式中、Mは水素原子又は金属、Xはハロゲン原子を示し、nは1又は前記金属Mの価数を示す)で表されるハロゲン酸又はその塩と、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩およびピロ亜硫酸塩から選択された少なくとも一種の還元性無機化合物とで構成されている。前記ハロゲン酸又はその塩において、通常、Mは水素原子又は1〜3価金属、Xは塩素、臭素又はヨウ素原子、nは1〜3の整数であり、このようなハロゲン酸には、塩素酸、臭素酸およびヨウ素酸が含まれる。前記アルキル基置換芳香族性化合物は、さらに、アルコキシ基,アシル基,アシルオキシ基,カルボキシル基,アルコキシカルボニル基,アルコキシカルボニルアルキル基,ニトロ基,ハロゲン原子から選択された少なくとも一種の置換基を有する化合物であってもよい。
【0010】
本発明の方法では、アルキル基置換芳香族性化合物を、前記反応剤により芳香環に隣接するα−位のメチル基又はメチレン基をハロゲン化、又は芳香環をハロゲン化する。前記芳香族性化合物は、さらに、種々の置換基(アルコキシ基,アシル基,カルボキシル基,アルコキシカルボニル基,アルコキシカルボニルアルキル基,ニトロ基,アシルオキシ基,ハロゲン原子など)を有する場合が多い。反応は、非酸化性有機溶媒と水とが共存する液相系で行うことができる。
【0011】
なお、本明細書において、「芳香族性化合物(特に、アルキル基置換芳香族性化合物)」を単に「基質」と称する場合がある。また、ハロゲン酸又はその塩を総称して「ハロゲン酸類」という場合がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるハロゲン酸又はその塩は、式 M(XO3n で表される。(式中、Mは水素原子又は金属、Xはハロゲン原子を示し、nは1又は前記金属の価数を示す)
Mで表される金属の種類は、ハロゲン酸の活性を損わない限り特に制限されず、例えば、Na,K,Liなどのアルカリ金属(周期表1A族金属)、Mg,Ca,Sr,Baなどのアルカリ土類金属(周期表2A族金属)、Sc,Yなどの周期表3A族金属、Ti,Zrなどの周期表4A族金属、V、Nbなどの周期表5A族金属、Cr,Mo,Wなどの周期表6A族金属、Mn,Tcなどの周期表7A族金属、Fe,Ru,Co,Rh,Ni,Pd,Ptなどの遷移金属(周期表8族金属)、Cu,Ag,Auなどの周期表1B族金属、Zn,Cdなどの周期表2B族金属、Al,Gaなどの周期表3B族金属、Sn,Pbなどの周期表4B族金属、Sb,Biなどの周期表5B族金属などが含まれる。好ましい金属Mは、通常、水溶性ハロゲン酸塩を形成する。
【0013】
好ましいMには、水素原子又は1〜3価金属、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、アルミニウムなどが含まれる。経済性および安全性などを考慮すると、通常、前記Mはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属である。
【0014】
Xで表されるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が含まれる。好ましいハロゲン原子は、塩素、臭素およびヨウ素原子、特に臭素原子である。nは1又は前記金属Mの価数であり、通常、1〜3程度である。
【0015】
ハロゲン酸又はその塩の具体例としては、例えば、臭素酸、臭素酸アルカリ金属塩(臭素酸ナトリウムNaBrO3、臭素酸カリウムKBrO3、臭素酸リチウムなど)、臭素酸アルカリ土類金属塩(臭素酸マグネシウム、臭素酸カルシウムなど)、臭素酸亜鉛、臭素酸アルミニウム、これらの臭素酸又はその塩に対応する塩素酸又はヨウ素酸若しくはこれらの塩(例えば、塩素酸ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウムなど)などが挙げられる。これらのハロゲン酸又はその塩は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのハロゲン酸又はその塩のうち、臭素酸、臭素酸アルカリ金属塩(臭素酸ナトリウムNaBrO3、臭素酸カリウムKBrO3、臭素酸リチウムなど)、塩素酸又は塩素酸アルカリ金属塩、ヨウ素酸又はヨウ素酸アルカリ金属塩、特に臭素酸アルカリ金属塩を用いる場合が多い。
【0016】
なお、前記ハロゲン酸類は、反応系中で生成してもよく、例えば、臭素酸アルカリ金属塩は、対応するアルカリ金属水酸化物を含む水溶液に臭素を吹き込むことにより生成させてもよい。前記ハロゲン酸類は、結晶などの固体、水溶液、又は適当な有機溶媒溶液として使用でき、通常、水溶液として使用される。
【0017】
本発明の特色は、芳香族性化合物のハロゲン化又は酸化反応剤を、前記ハロゲン酸類と、還元性無機化合物とを組み合わせて構成している点にある。このような組み合わせにより構成される反応剤は、芳香族性化合物に対して高い反応活性を示し、選択的にハロゲン化又は酸化する能力が高い。
【0018】
前記還元性無機化合物には、種々の無機化合物、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、アルミニウム、クロム、マンガン、遷移金属(鉄、ニッケルなど)、銅、亜鉛などの金属単体、又はこれらの金属又はアンモニアと無機酸との塩(例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、リン酸塩、炭酸塩など)などが含まれる。
【0019】
好ましい還元性無機化合物としては、例えば、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩、特に、亜硫酸金属塩(例えば、亜硫酸ナトリウムNa2SO3、亜硫酸カリウムの亜硫酸アルカリ金属塩、亜硫酸アンモニウムなど)、亜硫酸水素金属塩(例えば、亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3,亜硫酸水素カリウムなどの亜硫酸水素アルカリ金属塩、亜硫酸アンモニウム塩など)、チオ硫酸金属塩(例えば、チオ硫酸ナトリウムNa223、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸アルカリ金属塩、チオ硫酸アンモニウムなど)、ピロ亜硫酸塩(ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムなどのピロ亜硫酸アルカリ金属塩、ピロ亜硫酸アンモニウムなど)などが例示できる。これらの還元性無機化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。還元性化合物としては、通常、亜硫酸金属塩、亜硫酸水素金属塩、チオ硫酸金属塩などが使用される。
【0020】
還元性無機化合物の使用量は、ハロゲン酸類の活性および選択能を損わない範囲で選択でき、例えば、ハロゲン酸換算で、ハロゲン酸類1当量に対して、0.1〜5当量、好ましくは0.25〜2.5当量、さらに好ましくは0.5〜1.5当量、特に0.7〜1.3当量(例えば、0.9〜1.1当量)程度である。
【0021】
このような反応剤は、芳香族性化合物からハロゲン化物又は酸化物を選択的に生成させる上で有用である。そのため、本発明の方法では、前記反応剤を用いて、芳香族性化合物をハロゲン化又は酸化する。
【0022】
芳香族性化合物は、同素環又は複素環を有する化合物のいずれであってもよい。芳香族性同素環化合物は、ベンゼン環,ナフタレン環などのC6-12同素環を有する場合が多く、芳香族性複素環化合物は、酸素,窒素および硫黄原子から選択された少なくとも1つ(通常、1〜3個程度)のヘテロ原子を有する5員又は6員ヘテロ環を有する場合が多く、ヘテロ環は縮合環を構成してもよい。
【0023】
芳香族性化合物は、所望のハロゲン化部位に応じて、種々の置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,イソブチル,s−ブチル,t−ブチル,ペンチル,ヘキシル,ヘプチル,オクチル基などのC1-10アルキル基、好ましくはC1-6アルキル基、特にC1-4アルキル基),アルケニル基(例えば、ビニル,1−プロペニル,2−プロペニル,アリル,ブテニル基などのC2-6アルケニル基),ヒドロキシル基,アルコキシ基(例えば、メトキシ,エトキシ,プロポキシ,イソプロポキシ,ブトキシ,イソブトキシ,t−ブトキシなどのC1-6アルコキシ基、特にC1-4アルコキシ基),アシル基(例えば、ホルミル基,アセチル,プロピオニル基などのC1-6アルキル−カルボニル基,ベンゾイル基などのアリール−カルボニル基など),アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ,アセチルオキシ,プロピオニルオキシ基などのC1-6アシルオキシ基),カルボキシル基,アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル,エトキシカルボニル,プロポキシカルボニル,イソプロポキシカルボニル,ブトキシカルボニル,イソブトキシカルボニル,t−ブトキシカルボニルなどのC1-6 アルコキシ−カルボニル基など),アルコキシカルボニルアルキル基(例えば、メトキシカルボニルメチル,メトキシカルボニルエチル,エトキシカルボニルメチル,エトキシカルボニルエチル,エトキシカルボニルプロピル基などのC1-6アルコキシ−カルボニル−C1-4アルキル基など),アミノ基,モノ又はジアルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ,ジメチルアミノ,ジエチルアミノ基などのモノ又はジC1-6アルキルアミノ基),アシルアミノ基(例えば、ホルミルアミノ,アセチルアミノ基などのC1-6アシルアミノ基など),カルバモイル基,置換カルバモイル基,カルボニル基,ニトリル基,ニトロ基,ハロゲン原子(フッ素,塩素,臭素,ヨウ素原子)などを有していてもよい。
【0024】
さらに、芳香族性化合物は、非芳香族性同素環又は非芳香族性複素環を有する縮合多環式化合物であってもよく、このような化合物において、芳香環に隣接するα−位(ベンジル位)は通常メチレン基であってもよい。
【0025】
前記芳香族性化合物は、通常、アルキル基,ヒドロキシル基,アルコキシ基,アシル基,アシルオキシ基,カルボキシル基,アルコキシカルボニル基,アルコキシカルボニルアルキル基,ニトリル基,ニトロ基,ハロゲン原子などから選択された少なくとも1つの置換基を有しており、芳香環の隣接位にメチレン基を有していてもよい。特に、少なくとも1つの置換基は、通常、C1-6アルキル基、なかでも少なくともC1-4アルキル基であり、本発明は、アルキルベンゼンなどのアルキル基置換芳香族性化合物に好適に適用される。芳香族性化合物は、これらの置換基のうち同一又は異なる複数の置換基を有していてもよい。芳香族性化合物は、通常、これらの置換基を、芳香環当たり少なくとも1つ(1〜6個、好ましくは1〜3個)程度有している。
【0026】
なお、溶媒などの反応条件にも依存するが、本発明において、アルキル基又はアルキレン基(芳香環の隣接位にメチル基又はメチレン基)を有する化合物においては、通常、芳香環に隣接するα−位(ベンジル位)が選択的にハロゲン化されるか、又は芳香環が選択的にハロゲン化される。さらに、溶媒などの反応条件にも依存するが、置換基が電子供与性基(アルコキシ基,メチル基など)である場合には、芳香環のハロゲン化が進行しやすく、置換基が電子吸引性基(カルボキシル基,ハロゲン原子など)である場合には、芳香環の側鎖のハロゲン化が進行しやすい傾向を示す。なお、反応は、ラジカル的又はイオン的に進行するようであり、溶媒の種類や光線(室内光線,紫外線など)の有無などによっても反応部位を高い選択率で選択できる。そのため、本発明の方法は、芳香環に隣接する部位(α−位)や芳香環にハロゲン原子が置換したハロゲン化物の製造に有用である。
【0027】
芳香族性同素環化合物のうちメチル基を有する化合物としては、芳香環に1〜6個(通常、1〜3個)程度のメチル基が置換した化合物、例えば、トルエン,キシレン(o−,m−,p−キシレン),メシチレン,1,2,3−トリメチルベンゼン,1−メチルナフタレン,2−メチルナフタレン,1,2−ジメチルナフタレンなどが例示できる。芳香環のα−位にメチレン基を有する化合物には、炭素数2以上のアルキル基(例えば、C2-6アルキル基など)又は置換アルキル基が置換した化合物、および芳香環に非芳香族性の同素又は複素環が縮合した縮合化合物が含まれる。このような化合物には、C2-10アルキル基を有する化合物[例えば、エチルベンゼン,ジエチルベンゼン(1,4−ジエチルベンゼンなど),プロピルベンゼン,イソプロピルベンゼン,ジイソプロピルベンゼン(1,4−ジイソプロピルベンゼンなど),ブチルベンゼン,イソブチルベンゼン,s−ブチルベンゼン,クメン,シメン(p−シメンなど)など]などが例示できる。
【0028】
メチル基が置換した複素環化合物としては、例えば、1〜6個(好ましくは1〜3個、特に1又は2個)程度のメチル基が置換した化合物、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む化合物(メチル基置換フラン類など)、ヘテロ原子として硫黄原子を含む化合物(メチル基置換チオフェン類、メチル基置換チアゾール類、メチル基置換イソチアゾール類など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む化合物(メチル基置換ピロール類、メチル基置換ピラゾール類、メチル基置換イミダゾール類、メチル基置換トリアゾール類、メチル基置換ピリジン類(2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジンなどのピコリン、2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジンなどのルチジン、2,3,4−トリメチルピリジン、2,3,5−トリメチルピリジン、2,3,6−トリメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンなどのコリジンなど)、メチル基置換ピリダジン、メチル基置換ピリミジン、メチル基置換ピラジン、メチル基置換トリアジン、メチル基置換インドール、メチル基置換イソインドール、メチル基置換キノリン、メチル基置換イソキノリンなど)などが例示できる。
【0029】
前記アルキル基又は置換アルキル基を有する複素環化合物としては、例えば、前メチル基置換複素環化合物に対応し、かつメチル基がC2-10アルキル基に置換した化合物(例えば、2−エチルフラン、3−プロピルフラン、2−エチルチオフェン、2,6−ジエチルチオフェン、2−エチルピリジン、2−プロピルピリジン、3−エチルピリジン、3−ブチルピリジン、4−エチルピリジンなど)が例示できる。
【0030】
ヒドロキシル基を有する化合物としては、芳香環に1〜3個程度のヒドロキシル基が置換した同素環化合物[例えば、フェノール,o−,m−,p−クレゾール,キシレノール,1−ヒドロキシ−4−イソプロピルフェノール,チモール,ヒドロキノン,レゾルシノール,ピロガロール,ナフトール,ジ(4−ヒドロキシフェニル)メタン,1,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エタン,2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど]、複素環化合物(キノリノール,インドール−5−オールなど)が例示できる。
【0031】
アルコキシ基を有する化合物としては、前記ヒドロキシル基含有化合物に対応するC1-6アルコキシ基含有化合物、例えば、メトキシ基を有する化合物(アニソール,o−,m−,p−メチルアニソール,エチルアニソール,フェネトール,メトキシフェノールなど)、これらのメトキシ基含有化合物に対応するC2-4アルコキシ基含有化合物などが例示できる。
【0032】
アシル基を有する化合物としては、例えば、同素環化合物(例えば、ベンズアルデヒド,アニスアルデヒド,バニリン,フタルアルデヒド,アセトフェノン,プロピオフェノン,ベンゾフェノンなど),複素環化合物(ニコチンアルデヒド,フルフラールなど)が例示できる。アシルオキシ基を有する化合物としては、ホルミルオキシベンゼン,アセチルオキシベンゼン,ホルミルオキシトルエン,アセチルオキシトルエン(p−アセチルオキシトルエンなど)などが例示できる。
【0033】
カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、同素環化合物(安息香酸,o−,m−,p−メチル安息香酸,エチル安息香酸,オキシ安息香酸,アミノ安息香酸,ジメチルアミノ安息香酸,フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸,ナフタレンカルボン酸,ナフタレンジカルボン酸など)、複素環化合物(フランカルボン酸,チオフェンカルボン酸,ピリジンカルボン酸など)が例示できる。アルコキシカルボニル基を有する化合物としては、前記カルボキシル基含有化合物に対応するC1-6アルコキシカルボニル基含有化合物などが例示できる。
【0034】
アルコキシカルボニルアルキル基を有する化合物としては、例えば、エチルフェニルアセテート(メトキシカルボニルエチルベンゼン),エトキシカルボニルエチルベンゼンなどのC1-6アルコキシ−カルボニル−C1-4アルキル基含有化合物などが例示できる。
【0035】
さらに、基質の具体例としては、ニトリル基を有する化合物(ベンゾニトリル、ジシアノベンゼンなど),ニトロ基を有する化合物[ニトロベンゼン,p−メチルニトロベンゼン,p−エチルニトロベンゼン,ピクリン酸など],ハロゲン原子を有する化合物[ブロモベンゼン,クロロベンゼン,ハロトルエン(p−ブロモトルエン,p−クロロトルエンなど),ハロキシレンなど]などが例示できる。
【0036】
ハロゲン化反応において、ハロゲン酸類の使用量は、例えば、基質芳香族性化合物1モルに対して0.5〜5モル、好ましくは1〜3モル程度であり、還元性無機化合物の使用量は、ハロゲン酸類に対して0.5〜2モル、好ましくは0.7〜1.7モル、さらに好ましくは0.8〜1.5モル程度である。ハロゲン酸類及び還元性無機化合物の使用量は、基質芳香族性化合物1モルに対して、それぞれ、0.9〜5モル、好ましくは1〜4モル(例えば、1〜3モル)程度である場合が多い。
【0037】
これらの芳香族性化合物のハロゲン化は、通常、液相(特に非酸化性有機溶媒と水との共存系)で行われる。有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタンなど)、脂環族炭化水素類(シクロヘキサン,メチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン,ジクロロエタン,クロロホルム,四塩化炭素など)、アルコール類(メタノール,エタノール,プロパノール,t−ブタノールなど)、エーテル類(ジオキサン,ジエチルエーテル,テトラヒドロフランなど),ケトン類(アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸ブチルなど)、低級カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸など)、非プロトン性極性溶媒(アセトニトリル,ベンゾニトリルなどのニトリル類,ホルムミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド,ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類など)またはこれらの混合溶媒が使用できる。有機溶媒としては、通常、炭化水素類,ハロゲン化炭化水素類,エステル類,非プロトン性極性溶媒などを用いる場合が多い。
【0038】
有機溶媒と水の割合は特に制限されないが、通常、有機溶媒/水=95/5〜5/95(重量比)、好ましくは90/10〜10/90(重量比)、特に70/30〜30/70(重量比)程度の範囲から選択できる。溶媒系は、水を含む均一系又は二相系(不均一系)であってもよい。二相系で反応させる場合、基質の溶解性などを考慮して、相間移動触媒(例えば、四級アンモニウム塩など)、界面活性剤などを併用してもよい。さらには、基質を溶媒として利用することもできる。
【0039】
反応において、基質や各成分の添加順序などは特に制限されないが、反応操作性の観点からは、基質とハロゲン酸類とを含む所定温度の混合液に、還元性無機化合物を添加するのが有利である。ハロゲン酸類を用いて基質をハロゲン化する際、反応系に活性化剤として還元性無機化合物を添加すると、常温常圧下であっても、基質を化学量論的に、しかも高選択率でハロゲン化し、対応するハロゲン化物を高い収率で得ることができる。
【0040】
本発明は、温和な条件で、しかも高い選択率でハロゲン化物を生成させることができるという特色がある。反応温度は、特に制限されないが、通常、温度0〜100℃(例えば、10〜70℃)、好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは15〜50℃(特に20〜50℃)程度であり、特に室温(15〜25℃)程度であっても、反応は円滑に進行する。反応は、常圧又は加圧(例えば、1〜10atm程度)下で行なうことができる。
【0041】
反応終了後、慣用の分離精製手段、例えば、蒸留、濃縮、溶媒抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどにより、ハロゲン化物を容易に分離精製できる。このように、本発明の方法では、温和な条件で反応を促進できるとともに、従来法に比べて非常に安全である。しかも、高い転化率及び選択率で芳香族性化合物をハロゲン化できるとともに、分離精製を含む後処理工程を極めて簡素化でき、簡単な操作で目的生成物を高い収率で得ることができる。そのため、本発明の方法は、工業的及び経済的に極めて有利である。
【0042】
【発明の効果】
本発明の反応剤は、ハロゲン酸類と還元性無機化合物とを組み合わせているため、高い反応性および選択性で、基質をハロゲン化できる。また、温和な条件下であっても、化学量論的に高い転化率および選択率で基質を効率よくハロゲン化でき、汎用性が高い。
【0043】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0044】
実施例1
(1)トルエン5ミリモルと臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量)とを含む混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5ml)中に、亜硫酸水素ナトリウム15ミリモル(3当量)の水溶液(15ml)を室温で15分間に亘り滴下した後、室温で4時間反応させたところ、側鎖のブロム化が進行し、転化率99%でα−ブロモトルエン(ブロモメチルベンゼン)が収率72%で生成した。
【0045】
(2)さらに、非照明下(暗室)で上記と同様にして反応させたところ、転化率38%でα−ブロモトルエンが収率16%、ブロモトルエンが収率16%(o−ブロモトルエン/p−ブロモトルエン=8/8(%))で生成した。
【0046】
(3)一方、混合溶媒(アセトニトリル/水=10/7.5ml)を用いた均一条件下では、芳香環がブロム化され、転化率99%、ブロモトルエンが収率57%(o−ブロモトルエン/p−ブロモトルエン=18/39(%))で生成した。
【0047】
実施例2
o−キシレン,臭素酸ナトリウムNaBrO3 ,混合溶媒(有機溶媒/水=10/7.5(容積比))10mlに,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 水溶液を表1に示す条件で使用する以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で反応させたところ、表1に示す結果を得た。なお、混合溶媒中、AcOEtは酢酸エチル,n−C614はn−ヘキサン,CH3CNはアセトニトリルを示す。
【0048】
【表1】
Figure 0004173569
【0049】
実施例3
m−キシレン,臭素酸ナトリウムNaBrO3,混合溶媒(有機溶媒/水=10/7.5(容積比))10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 水溶液を表2に示す条件で使用する以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で反応させたところ、表2に示す結果を得た。なお、混合溶媒中、c−C612はシクロヘキサン、MCHはメチルシクロヘキサン、CH2Cl2はジクロロメタンを示す。
【0050】
【表2】
Figure 0004173569
【0051】
実施例4
p−キシレン,臭素酸ナトリウムNaBrO3,混合溶媒(有機溶媒/水=10/7.5(容積比)),亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3水溶液を表3に示す条件で使用する以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で反応させたところ、表3に示す結果を得た。
【0052】
【表3】
Figure 0004173569
【0053】
実施例5
メシチレン,臭素酸ナトリウムNaBrO3,溶媒(酢酸エチルまたはアセトニトリル),亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 水溶液を表4に示す条件で使用する以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で反応させたところ、表4に示す結果を得た。
【0054】
【表4】
Figure 0004173569
【0055】
実施例6
(1)1−メチルナフタレン5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 10ミリモル(2当量),酢酸エチル10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 10ミリモル(2当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で2時間反応させたところ、転化率86%、収率10%で1−(ブロモメチル)ナフタレン、収率67%で1−メチル−4−ブロモナフタレン、収率で2%1−(ブロモメチル)−4−ブロモナフタレンが生成した。
【0056】
(2)溶媒酢酸エチルに代えてn−ヘキサンを用いる以外、上記と同様にして反応させたところ、転化率68%、収率51%で1−(ブロモメチル)ナフタレン、収率8%で1−メチル−4−ブロモナフタレン、収率2%で1−(ブロモメチル)−4−ブロモナフタレンが生成した。
【0057】
実施例7
(1)2−メチルナフタレン5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量),酢酸エチル10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO315ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で4時間反応させたところ、転化率99%、収率95%で2−メチル−1−ブロモナフタレンが生成した。
【0058】
(2)溶媒酢酸エチルに代えてn−ヘキサンを用いる以外、上記と同様にして反応させたところ、転化率97%、収率29%で2−(ブロモメチル)ナフタレン、収率37%で2−メチル−1−ブロモナフタレン、収率8%で2−(ブロモメチル)−1−ブロモナフタレンが生成した。
【0059】
(3)溶媒酢酸エチルに代えてシクロヘキサンを用いる以外、上記と同様にして反応させたところ、転化率93%、収率23%で2−(ブロモメチル)ナフタレン、収率52%で2−メチル−1−ブロモナフタレン、収率で3%2−(ブロモメチル)−1−ブロモナフタレンが生成した。
【0060】
実施例8
(1)4−t−ブチルトルエン5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量),酢酸エチル6ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、50℃で1時間反応させたところ、転化率64%、収率56%で4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼンが生成した。
【0061】
(2)反応時間を2時間とする以外、上記と同様にして反応させたところ、転化率100%、収率62%で4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼン、収率16%で4−t−ブチル−1−ジブロモメチルベンゼン、収率2%で4−t−ブチルベンズアルデヒドが生成した。
【0062】
(3)反応時間を3時間とする以外、上記と同様にして反応させたところ、転化率100%、収率10%で4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼン、収率5%で4−t−ブチルベンズアルデヒド、収率11%で4−t−ブチル安息香酸が生成した。
【0063】
(4)反応時間を4時間とする以外、上記と同様にして反応させたところ、転化率100%、収率2%で4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼン、収率2%で4−t−ブチルベンズアルデヒド、収率21%で4−t−ブチル安息香酸が生成した。
【0064】
(5)酢酸エチルの使用量を18ml、反応温度を40℃、反応時間を4時間とする以外、上記(1)と同様にして反応させたところ、収率21%で4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼン、収率10%で4−t−ブチルベンズアルデヒド、収率7%で4−t−ブチル安息香酸が生成した。
【0065】
(6)反応時間を6時間とする以外、上記(5)と同様にして反応させたところ、収率4%で4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼン、収率4%で4−t−ブチルベンズアルデヒド、収率28%で4−t−ブチル安息香酸が生成した。
【0066】
(7)酢酸エチルの使用量を18ml、反応温度を30℃、反応時間を4時間とする以外、上記(1)と同様にして反応させたところ、収率89%で4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼン、収率4%で4−t−ブチルベンズアルデヒドが生成した。
【0067】
(8)反応時間を8時間とする以外、上記(7)と同様にして反応させたところ、収率53%で4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼン、収率38%で4−t−ブチルベンズアルデヒドが生成した。
【0068】
(9)溶媒を混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5(容積比))に変更し、室温で4時間反応させる以外、上記(1)と同様にして反応させたところ、転化率99%以上、収率63%で4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼンが生成した。
【0069】
なお、香料の原料又は添加物として利用されている4−t−ブチルベンズアルデヒドは、入手が困難で、しかも高価な4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼンから合成されているが、本発明では、温和な条件であっても、前記のように4−t−ブチル−1−ブロモメチルベンゼンを高い収率で容易に得ることができる。
【0070】
実施例9
(1)p−メチルアニソール3ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 9ミリモル(3当量),酢酸エチル10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 9ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で2時間反応させたところ、転化率99%、収率94%で4−メトキシ−3−ブロモトルエンが生成した。
【0071】
(2)溶媒を酢酸エチルからn−ヘキサンに代えたところ、転化率99%、収率92%で4−メトキシ−3−ブロモトルエンが生成した。
【0072】
(3)溶媒を酢酸エチルからベンゼンに代えたところ、転化率99%、収率93%で4−メトキシ−3−ブロモトルエンが生成した。
【0073】
(4)溶媒を酢酸エチルからトルエンに代えたところ、転化率88%、収率96%で4−メトキシ−3−ブロモトルエンが生成した。
【0074】
(5)さらに、臭素酸ナトリウムNaBrO3の使用量を3当量,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3の使用量を3当量とするとともに、溶媒を酢酸エチルからアセトニトリルに代えたところ、転化率68%、収率45%で4−メトキシ−3−ブロモトルエンが生成した。
【0075】
実施例10
4−メチル安息香酸3ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 9ミリモル(3当量),混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5(容積比))10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 9ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で6時間反応させたところ、転化率100%、収率98%で4−ブロモメチル安息香酸が生成した。
【0076】
参考例1
(1)アニソール3ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 9ミリモル(3当量),混合溶媒(アセトニトリル/水=10/7.5(容積比))10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 9ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で2時間反応させたところ、転化率99%以上、収率61%で4−ブロモアニソール、収率9%で2,4−ジブロモアニソールが生成した。
【0077】
(2)溶媒を混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5(容積比))とする以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率99%以上、収率84%で4−ブロモアニソール、収率3%で2,4−ジブロモアニソールが生成した。
【0078】
(3)溶媒を混合溶媒(n−ヘキサン/水=10/7.5(容積比))とする以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率99%以上、収率81%で4−ブロモアニソール、収率4%で2,4−ジブロモアニソールが生成した。
【0079】
参考例2
(1)フェノール3ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 9ミリモル(3当量),混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5(容積比))10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 9ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で2時間反応させたところ、転化率99%、収率13%で2−ブロモフェノール、収率35%で4−ブロモフェノール、収率2%で2,6−ジブロモフェノール、収率10%で2,4−ジブロモフェノール、収率5%で2,4,6−トリブロモフェノールが生成した。
【0080】
(2)溶媒を混合溶媒(アセトニトリル/水=10/7.5(容積比))とする以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率99%、収率1%で2−ブロモフェノール、収率4%で4−ブロモフェノール、収率41%で2,4−ジブロモフェノール、収率1%で2,4,6−トリブロモフェノールが生成した。
【0081】
実施例11
(1)エチルベンゼン5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量),酢酸エチル10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で4時間反応させたところ、転化率80%、収率51%でアセトフェノン、収率10%でo−/p−ブロモ−1−エチルベンゼンが生成した。
【0082】
(2)溶媒を酢酸エチルからアセトニトリルに変更する以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率99%、収率15%でアセトフェノン、収率48%でo−/p−ブロモ−1−エチルベンゼン、収率11%で2,4−ジブロモ−1−エチルベンゼンが生成した。
【0083】
(3)溶媒を酢酸エチルからn−ヘキサンに変更する以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率92%、収率19%でアセトフェノン、収率62%でα−ブロモエチルベンゼンが生成した。
【0084】
参考例3
(1)α−ブロモエチルベンゼン5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量),酢酸エチル10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で1時間反応させたところ、転化率99%以上、収率82%でアセトフェノンが生成した。
【0085】
(2)溶媒を酢酸エチルからアセトニトリルに変更する以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率99%以上、収率81%でアセトフェノンが生成した。
【0086】
(3)溶媒を酢酸エチルからn−ヘキサンに変更する以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率32%、収率3%でアセトフェノン、収率21%で1−(α−ブロモエチル)−2−/−4−ブロモベンゼンが生成した。
【0087】
参考例4
n−プロピルベンゼン5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量),混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5(容積比))10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で4時間反応させたところ、転化率99%、収率96%でプロピオフェノンが生成した。
【0088】
参考例
(1)エチルフェニルアセテート(メトキシカルボニルエチルベンゼン)5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量),混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5(容積比))10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で4時間反応させたところ、転化率81%、収率73%で(1−ブロモ−2−メトキシカルボニル)エチルベンゼンが生成した。
【0089】
(2)反応時間を6時間とする以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率99%、収率95%で(1−ブロモ−2−メトキシカルボニル)エチルベンゼンが生成した。
【0090】
(3)溶媒を混合溶媒(n−ヘキサン/水=10/7.5(容積比))に変更する以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率70%、収率66%で(1−ブロモ−2−メトキシカルボニル)エチルベンゼンが生成した。
【0091】
参考例6
イソブチルベンゼン5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量),混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5(容積比))10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で4時間反応させたところ、転化率99%以上、収率56%でイソブチロフェノンが生成した。
【0092】
参考例7
(1)クメン5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量),混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5(容積比))10ml,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15ミリモル(3当量)水溶液を用いる以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で4時間反応させたところ、転化率99%、収率91%でα−ヒドロキシイソプロピルベンゼン(すなわち、(1−ヒドロキシ−1,1−ジメチル)メチルベンゼン)が生成した。
【0093】
(2)溶媒を混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5(容積比))に変更する以外、上記(1)と同様に反応させたところ、転化率99%、収率14%でα−ヒドロキシイソプロピルベンゼン、収率7%で2−ブロモクメン,収率22%で4−ブロモクメン、収率17%で4−ブロモ−1−(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンが生成した。
【0094】
参考例
表5に示す基質5ミリモル,臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル,表5に示す混合溶媒10mlに,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15ミリモルの水溶液を使用する以外、実施例1と同様にして、室温で15分間に亘り滴下した後、室温で4時間反応させたところ、表5に示す結果を得た。
【0095】
【表5】
Figure 0004173569
【0096】
実施例12
(1)4−ニトロトルエン5ミリモルと臭素酸ナトリウムNaBrO3 15ミリモル(3当量)とを含む混合溶媒(酢酸エチル/水=10/7.5ml)中に、亜硫酸水素ナトリウム15ミリモル(3当量)の水溶液(15ml)を室温で15分間に亘り滴下した後、室温で4時間反応させたところ、側鎖のブロム化が進行し、4−ニトロ−1−ブロモメチルベンゼンが収率18%で生成した。
【0097】
(2)4−ニトロトルエンに代えて4−ブロモトルエンを用いる以外、上記(1)と同様に反応させたところ、4−ブロモ−1−ブロモメチルベンゼンが収率83%で生成した。
【0098】
(3)4−ニトロトルエンに代えて4−クロロトルエンを用いる以外、上記(1)と同様に反応させたところ、4−クロロ−1−ブロモメチルベンゼンが収率80%で生成した。

Claims (7)

  1. ルキル基置換芳香族性化合物のアルキル基のうち芳香環に隣接するα−位のメチル基又はメチレン基をハロゲン化、又は前記アルキル基置換芳香族性化合物の芳香環をハロゲン化するための反応剤であって、式 M(XO
    (式中、Mは水素原子又は金属、Xはハロゲン原子を示し、nは1又は前記金属Mの価数を示す)で表されるハロゲン酸又はその塩と、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩およびピロ亜硫酸塩から選択された少なくとも一種の還元性無機化合物とで構成されている反応剤。
  2. アルキル基置換芳香族性化合物が、さらに、アルコキシ基,アシル基,アシルオキシ基,カルボキシル基,アルコキシカルボニル基,アルコキシカルボニルアルキル基,ニトロ基,ハロゲン原子から選択された少なくとも一種の置換基を有する化合物である請求項1記載の反応剤。
  3. ハロゲン酸又はその塩において、Mが水素原子又は1〜3価金属、Xが塩素、臭素又はヨウ素原子、nが1〜3の整数である請求項1又は2記載の反応剤。
  4. ハロゲン酸が、塩素酸、臭素酸およびヨウ素酸から選択された少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の反応剤。
  5. ハロゲン酸又はその塩1当量に対する還元性無機化合物の割合が、0.1〜5当量である請求項1〜4のいずれかに記載の反応剤。
  6. ルキル基置換芳香族性化合物を、請求項1〜5のいずれかに記載の反応剤により芳香環に隣接するα−位のメチル基又はメチレン基をハロゲン化、又は芳香環をハロゲン化する方法。
  7. 非酸化性有機溶媒と水とが共存する液相で反応させる請求項6記載の方法。
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