JP4172324B2 - 硬化性樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温での硬化が可能である新規な難燃・硬化性樹脂組成物及びその用途に関する。更に詳しくは、密閉系では1液保存安定性が高く、塗料、接着剤、樹脂成形物、難燃化コート材、ガスバリアコート材等に好適な材料で、硬化の際には、大気中では、10〜110℃という温度範囲での硬化可能な、難燃・硬化性樹脂組成物及びその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートと水酸基を複数個有するポリオールとを混合した後、加熱することによってウレタン結合が形成し、ネットワークポリマー(以下ウレタン樹脂と総称する。)が得られることが知られている。ウレタン樹脂は、その低温硬化性、機械特性、耐薬品性、電気特性、原料の入手のしやすさ等を理由とし、様々な分野で用いられている。しかしながら、低温でも反応が進行するため、保存安定性が問題であった。
保存安定性の問題を解決すべく、ポリイソシアネートのイソシアネート基をフェノール、弱酸、酸アミド、ラクタム等で化学的に保護する手法が知られている(参考文献:解説塗料学、理工出版、三原一幸、1971、65)(非特許文献1)。
しかしながら、一般に化学保護されたポリイソシアネート(以下ブロック化イソシアネートと総称)は脱保護基する温度が高いため、120℃以上の高温硬化が必要になり、実用に足る硬化物を5時間以内に得るには150℃以上の高温硬化が必要であった。
ポリオールの代わりにポリカルボン酸を硬化剤として用いることは可能であるが、一般的に多くのポリカルボン酸はポリイソシアネートとは相溶性が著しく低いため汎用性が低い組み合わせであった。
【0003】
また、難燃化が必要なウレタン樹脂には、リン系難燃剤やハロゲン系難燃剤等の各種難燃剤が配合されている。これらの難燃剤には、樹脂を硬化させる際、あるいは成形後の製品を使用する際に受ける熱への耐性が必要であり、また、耐水性や物理性能等本来の樹脂が持つ性能を損なわないことが望まれる。
しかしながら、これまで難燃剤として用いられてきたリン含有化合物に関しては、その多くが添加型難燃剤であったために、ウレタン樹脂の特性を損なったり、安定性や耐水性に問題がある等の短所があった。
さらには、添加型難燃剤として用いられるリン含有化合物の多くは樹脂との相溶性が悪いため、樹脂へ均一に配合することが難しく、さらに、成形後の樹脂より難燃剤がブリードアウトしてしまうという問題もあった。
【0004】
このような問題を解決するため、リン原子を有しさらにイソシアネート基と反応するリン含有ポリオールやリン含有カルボン酸等も優秀な反応性難燃剤として考えられるが、多くの有機溶剤に対する溶解性や各種樹脂に対する相溶性が低いため汎用性に問題があった。さらには、水酸基やカルボキシル基とイソシアネート基とは反応性が高いため、リン含有ポリオールやリン含有カルボン酸とイソシアネート基を含有する化合物とが共存する組成物においては、貯蔵中にゲル化を起こしたり、可使時間が短くなるなど、その安定性が問題であった。
【0005】
【非特許文献1】
解説塗料学、理工出版、三原一幸、1971年、65頁
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。本発明の第1の目的は、密閉系では1液保存安定性が高く、塗料、接着剤、樹脂成形物、難燃化コート材、ガスバリアコート材等に好適であり、かつ、10〜110℃の温度範囲での硬化可能な難燃化樹脂組成物及びその用途を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するリン含有化合物及びイソシアネート基を2個以上有する樹脂を必須成分とする樹脂組成物が低温で硬化し、その降下物が優れた物性を有することの知見を得て、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、次の〔1〕〜〔8〕である。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕下記のA、B成分を含有することを特徴とする難燃・硬化性樹脂組成物。A成分;分子中にリン原子と、フェノール性水酸基および/又はカルボキシル基のいずれかの基を2つ以上有するリン含有化合物(a)と、ビニル(チオ)エーテルとを付加反応させてなるリン含有化合物誘導体(A)、
B成分;イソシアネート基を2個以上有する樹脂(B)。
〔2〕リン化合物誘導体(A)が、下記式(1)で表される基を分子内に有するリン含有化合物である前記〔1〕記載の難燃・硬化性樹脂組成物。
【0009】
【化5】
【0010】
(式中のR1、R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基であり、R4は炭素数1〜18の炭化水素基であって、Yは酸素原子又はイオウ原子である。また、R3とR4,とは、互いに結合して環を形成していてもよい。)
〔3〕前記の式(1)で表される基が、下記式(2)で表される基である前記〔1〕記載の難燃・硬化性樹脂組成物。
【0011】
【化6】
【0012】
(R4は炭素数1〜18の炭化水素基である。)
〔4〕リン含有化合物誘導体(A)が、下記式(3)で表される化合物である前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の難燃・硬化性樹脂組成物。
【0013】
【化7】
【0014】
(R4は炭素数1〜18の炭化水素基であり、R5及びR6は炭素数1〜20の有機基であり、互いに結合していても良い。)
〔5〕リン含有化合物誘導体(A)が、下記式(4)で表される化合物である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の難燃・硬化性樹脂組成物。
【0015】
【化8】
【0016】
(R4は炭素数1〜18の炭化水素基であり、R5及びR6は炭素数1〜20の有機基であり、互いに結合していても良い。)
〔6〕難燃・硬化性樹脂組成物中に、前記のリン化合物誘導体(A)10重量%〜70重量%と、イソシアネート基を2個以上有する樹脂(B)10重量%〜90重量%とを有効成分として含み、かつ (A)/(B)の重量比が1/9〜7/1である前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の難燃・硬化性樹脂組成物。
【0017】
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の難燃・硬化性樹脂組成物を10〜110℃の温度領域で硬化させてなる樹脂硬化物。
〔8〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の難燃・硬化性樹脂組成物を基材表面に塗布した後に硬化させてなる樹脂被覆物。
【0018】
【発明実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の難燃・硬化性樹脂組成物は、〔1〕下記のA、B成分を含有することを特徴とする難燃・硬化性樹脂組成物。
A成分;分子中にリン原子と、フェノール性水酸基および/又はカルボキシル基を2つ以上有するリン化合物(a)と、ビニル(チオ)エーテルとを付加反応させてなるリン化合物誘導体(A)、
B成分;イソシアネート基を2個以上有する樹脂(B)。
ここで、「リン化合物」とは、分子中にリン原子と、フェノール性水酸基もしくはカルボキシル基のいずれかの基を2つ以上有するリン化合物(a)を意味する。
また「リン化合物誘導体」は、前記の「リン化合物」と、ビニル(チオ)エーテルとを付加反応させてなる誘導体を意味する。
また、難燃・硬化性樹脂組成物とは、配合組成物は、未硬化状態であって、硬化させることができ、その硬化物は、難燃性を有する樹脂となることを意味する。
【0019】
前記の、分子中にリン原子と、フェノール性水酸基もしくはカルボキシル基のいずれかの基を2つ以上有するリン含有化合物(a)と、ビニル(チオ)エーテルとを付加反応させてなるリン含有化合物誘導体(A)は、例えば、下記式(1)
【0020】
【化9】
【0021】
(式中のR1、R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基であり、R4は炭素数1〜18の炭化水素基であって、Yは酸素原子又はイオウ原子である。R3、R4は、互いに結合して環を形成していてもよい。)
で示される基を有する化合物であり、式(1)で表される基としては、例えば、さらに下記式(2)で表される基が挙げられる。
【0022】
【化10】
【0023】
(R4は炭素数1〜18の炭化水素基である。)
【0024】
式(1)で表される基は、リン含有化合物1分子当たりに、好ましくは1〜10個であり、より好ましくは1〜4個である。この基がリン含有化合物の1分子当たりに10個を越える場合、合成樹脂に対するリン含有化合物の相溶性が低下する等、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。
【0025】
また、本発明で用いられるリン含有化合物誘導体としては、例えば、下記式(3)又は(4)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
【化11】
【0027】
(R4は炭素数1〜18の炭化水素基であり、R5及びR6は炭素数1〜20の有機基であり、互いに結合していても良い。)
【0028】
【化12】
【0029】
(R4は炭素数1〜18の炭化水素基であり、R5及びR6は炭素数1〜20の有機基であり、互いに結合していても良い。)
さらに、分子中にリン原子とフェノール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物と、ビニル(チオ)エーテル化合物とを反応したものが挙げられる。
【0030】
次に、上記のような構造を有するリン含有化合物の製造方法について説明する。
本発明で用いられるリン含有化合物誘導体は、例えば、下記式(5)又は(6)で表される反応式に示すように、リン原子及びカルボキシル基(又はフェノール性水酸基)を有するリン含有カルボン酸(又はリン含有フェノール)と、ビニル(チオ)エーテル化合物(ここで、ビニル(チオ)エーテル化合物は、ビニルエーテルおよび/又はビニルチオエーテルとを示す。)反応させることにより製造される(ブロック化)。
すなわち、リン含有カルボン酸又はリン含有フェノールのカルボキシル基又はフェノール性水酸基と、ビニルエーテル化合物又はビニルチオエーテルのビニル基とを反応させることによって、式(5)又は(6)のようにヘミアセタール基を有し、かつリン原子を有するリン含有化合物誘導体が得られる。この反応は比較的容易であり、リン含有化合物誘導体が収率良く得られる。なお、リン含有化合物は、前記の意味から、カルボキシル基とフェノール性水酸基を共に有する化合物であってもよい。
【0031】
【化13】
【0032】
【化14】
【0033】
この反応は平衡反応であるため、リン含有カルボン酸又はリン含有フェノールに対してビニルエーテル化合物又はビニルチオエーテル化合物を若干多く使用すると反応が促進され、収率を向上させることができる。具体的には、リン含有化合物のカルボキシル基又はフェノール性水酸基に対するビニルエーテル化合物又はビニルチオエーテル化合物のビニル基のモル当量比;カルボキシル基のみを有する化合物の場合には、[(ビニル基/カルボキシル基)のモル当量比]で示される比、フェノール性水酸基のみを有する化合物の場合には、[(ビニル基/フェノール性水酸基)のモル当量比]で示される比、カルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物の場合には、[{(ビニル基/(カルボキシル基+フェノール性水酸基))のモル当量比]で示される比は、1/1〜2/1であることが望ましい。このモル比が2/1を越える場合、反応温度を上げることができず、一定以上反応が進まない場合があり、また製造コストも上昇する。尚、用途によって部分的に反応させたほうが良い場合も有り、その場合にはモル当量比を0.5/1〜1/1とすることもできる。
【0034】
本発明で用いられるビニルエーテル化合物及びビニルチオエーテル化合物とは、下記式(7)
【0035】
【化15】
【0036】
(式中のR1、R2およびR3はそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基であり、R4は炭素数1〜18の炭化水素基であって、Yは酸素原子又はイオウ原子である。R3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるものを意味し、さらに、前記の環を形成する化合物としては、下記式(8)で表される環状の化合物を使用することもできる。
【0037】
【化16】
【0038】
(式中のR1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基であり、R6は炭素数1〜35の炭化水素基であって、Yは酸素原子又はイオウ原子である。)
すなわち、式(8)は酸素原子又はイオウ原子をヘテロ原子とするビニル二重結合を1つ有する複素環式化合物などの環状ビニルエーテル化合物である。
【0039】
前記式(7)又は(8)で表されるビニルエーテル化合物又はビニルチオエーテル化合物の具体例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルモノビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル化合物;及びこれらに対応する脂肪族ビニルチオエーテル化合物;更には、2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸ナトリウムなどの環状ビニルエーテル化合物;及びこれらに対応する環状ビニルチオエーテル化合物などが挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物又はビニルチオエーテル化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を配合して使用してもよい。
これらの中でも、入手性や取り扱い性等の点から、好ましくは、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルモノビニルエーテルが挙げられる。
【0040】
本発明で用いられるリン含有化合物誘導体は、リン含有カルボン酸やリン含有フェノール等と、前記ビニルエーテル化合物又はビニルチオエーテル化合物とを室温ないし150℃の範囲の温度で反応させることにより得ることができる。この際、反応を促進させる目的で酸触媒を使用することも出来る。そのような触媒としては例えば、下記式(9)で表される酸性リン酸エステル化合物が挙げられる。
【0041】
【化17】
【0042】
(式中のRは炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基、mは1又は2である。)
ここで、式(9)で表される酸性リン酸エステル化合物としては具体的に、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール等の第一級アルコール類、及びイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類が挙げられる。
【0043】
また、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶媒も使用してもよい。そのような有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、モノメチルエーテル、酢酸メトキシブチル、酢酸メトキシプロピル等のエステル及びエーテルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチル−n−ブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の含チッ素溶剤;さらにジメチルスルホキシド等が挙げられる。より好ましくは、酢酸メトキシブチル、酢酸メトキシプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0044】
本発明で用いられるリン含有化合物誘導体は、加熱又は紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射によりビニルエーテル化合物の脱離が生じ、元のカルボキシル基又はフェノール性水酸基を再生することができる(脱ブロック化)。このカルボキシル基又はフェノール性水酸基の再生反応は、酸触媒により促進される。そのような酸触媒としては、例えばハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類などのプロトン酸、フッ化ホウ素(BF3)、塩化第二鉄(FeCl3)、塩化第二スズ(SnCl4)、塩化アルミニウム(AlCl3)、塩化亜鉛(ZnCl2)などのルイス酸等を挙げることが出来る。また、光酸触媒としてはアデカオプトマーSPシリーズ(商品名、旭電化工業(株)製)等が利用できる。
【0045】
本発明で用いられるイソシアネート樹脂は、イソシアネート基を2つ以上有すれば特に限定されるものではないが、例えば、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(以下TDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、リジンメチルエステルジイソシアネート、ビス(イソシアネートエチル)フマレート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート及びこれらのビュレット体やイソシアヌレート体、さらにはこれらのイソシアネート類とポリオールとのアダクト化合物などのイソシアネート基含有化合物;前記イソシアネート基含有化合物のフェノール類、ラクタム類、活性メチレン類、アルコール類、酸アミド類、イミド類、アミン類、イミダゾール類、尿素類、イミン類、オキシム類によるブロック体などのブロック化イソシアネート基含有化合物等が挙げられる。
これらのうち、入手性の点から、TDI、HDI、及びこれらのビュレット体やイソシアヌレート体、さらにはこれらのイソシアネート類とポリオールとのアダクト化合物などのイソシアネート基含有化合物が好ましく挙げられる。
【0046】
本発明の樹脂組成物においては、イソシアネート樹脂とリン含有化合物誘導体(硬化剤という場合もある。)が脱ブロック化した後に生じるリン含有カルボン酸又はリン含有フェノールとが反応し架橋構造を形成する。この反応は10〜110℃の低温で充分に進行するが、短時間硬化が必要な際には110〜240℃の高温で硬化させることも可能である。
この樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じてさらに、他の硬化剤やフィラー、充填材、顔料、着色剤、可塑剤、触媒、溶剤、添加剤等を配合してもよい。さらに加えて使用する他の硬化剤としては、例えば、酸無水物、ポリアミン系化合物、フェノール系化合物等の慣用されている硬化剤、更には、カルボン酸化合物を(7)の構造を有する化合物で変性した化合物も硬化剤として用いることができる。これらの他の硬化剤は、本発明のリン含有化合物誘導体に100重量部対して120重量部未満の配合に抑えることが好ましく、120重量部以上配合した場合には硬化樹脂中のリン原子が占める重量比率が低くなるため、要求される難燃性等の改質性が得られない場合があるので好ましくない。
【0047】
難燃・硬化性樹脂組成物中に含まれるリン原子の含有量は、樹脂組成物全重量に対して好ましくは0.1〜30重量%である。この含有量が0.1重量%未満の場合、難燃性等の機能を充分に発揮することができず、30重量%を越える場合、合成樹脂の本来の性質が損なわれる。
【0048】
前記のポリイソシアネートとリン含有化合物との配合量は特に限定されるものではないが、脱ブロック後に生じるカルボキシル基又はフェノール性水酸基とイソシアネート基との個数比が0.2/1〜2/1になるよう配合することが好ましく、より好ましい個数比は0.5/1〜1.5/1である。カルボキシル基又はフェノール性水酸基とイソシアネート基との個数比が0.2/1以下であると、硬化後にイソシアネート基が多量に残留するため、架橋密度が低くなり、樹脂物性が低下する。また、カルボキシル基又はフェノール性水酸基とイソシアネート基との個数比が2/1以上であると、カルボキシル基が過剰となり、多くの場合樹脂物性が低下する。
ただし、本発明のリン含有カルボン酸誘導体より生じるカルボキシル基又はフェノール性水酸基以外のイソシアネート基と反応する官能基(加えて配合する硬化剤のカルボキシル基も含む)が樹脂中に存在したり、イソシアネート基以外の官能基が樹脂中に存在し、過剰なイソシアネート基又はカルボキシル基又はフェノール性水酸基が反応により消費される場合はこの限りではなく配合により調整することが望ましい。
【0049】
難燃・硬化性樹脂を用いて硬化する成形物の形態は、繊維状、不織布状、フィルム状、シート状、ブロック状等のいずれの形状でもよい。また、樹脂組成物を繊維、不織布又は織布の形態の無機又は有機強化材料に含浸させた後に硬化成形して樹脂成形物を得るようにしてもよく、また、各種基材の表面に塗布した後に硬化させてもよい。その際は、前記のように本発明の難燃・硬化性樹脂を用いて温度10〜110℃で硬化する。その場合、解放系で放置しておいてもよいし、加熱してもよい。
【0050】
本発明の樹脂硬化物は樹脂にリン原子が化学結合で導入されているため、高い難燃性を有する。このため、難燃化コート材等として用いることができる。これらの用途に関しては、各種基材に塗布した後硬化させるコート材としての使用も可能である。
【0051】
以上述べたように、本発明に用いられるリン含有化合物は、そのカルボキシル基又はフェノール性水酸基がビニルエーテル化合物又はビニルチオエーテル化合物により変性(ブロック化)され、極性が低くなっていることから、有機溶剤、特に非極性有機溶剤に対する溶解性に優れるとともに、イソシアネート樹脂に対する相溶性に優れる。しかも、リン含有化合物誘導体は、イソシアネート基を有する樹脂と混合しても、カルボキシル基又はフェノール性水酸基に基づく硬化反応が進行しないため、樹脂組成物の安定性が良好となる。さらには、10〜110℃という低温であっても、ビニルエーテル化合物が揮発し系から除去される状況下においては、脱ブロック反応が進行し生成したカルボキシル基又はフェノール性水酸基とイソシアネート基が速やかに反応し、硬化樹脂が得られる。
また、本発明の樹脂硬化物は、リン原子を有していることから、リン原子の特性に基づいて難燃性を有する。さらには、イソシアネート樹脂に由来し、難燃助剤となりうる窒素原子を多量に有するため、難燃化効果が一層優れている。
【0052】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。
以下に本実施例で用いた測定方法、評価方法を示す。
1.〈保存安定性試験〉
各試料をローターを用いて室温で1時間攪拌した。攪拌後、30日間室温にて放置し、粘度の上昇の有無を目視で観察した。
2.〈硬化確認〉
アセトンに浸したキムワイプでフィルムを30往復擦り、傷の有無を目視にて確認した。
3.〈燃焼試験〉
燃焼試験は、UL〈Underwriter Laboratorics〉94薄手材料垂直燃焼試験〈Thin Material Vertical Burning Test〉に準じて行なった。
4.〈IR測定〉
機種;日本分光(株)社製 FT/IR-600
分解;4 cm-1
積算回数;16回
【0053】
次に本実施例、参考例、及び比較例で用いた略号および材料を示す。
〈硬化剤〉
1.nPr−Macid:下記式10の構造であるリン含有化合物
【0054】
【化18】
【0055】
2.nPr−HCAHQ:下記式11の構造であるリン含有化合物
【0056】
【化19】
【0057】
3.nPr−FTMA:下記式12の構造である非リン含有化合物
【0058】
【化20】
【0059】
4.HQ:ハイドロキノン
5.TMA:トリメリット酸
6.A16X:デスモフェンA16X(住化バイエルウレタン(株)社製)アクリルポリオール
7.680X:デスモフェン680X(住化バイエルウレタン(株)社製)ポリエステルポリオール
〈ポリイソシアネート〉
A.N3200:スミジュールN3200(住化バイエルウレタン(株)社製)HDI−ビュレット体
B.N3300:スミジュールN3300(住化バイエルウレタン(株)社製)HDI−イソシアヌレート体
C.HT:スミジュールHT(住化バイエルウレタン(株)社製)HDI−アダクト化合物
D.E1361:デスモジュールE1361(住化バイエルウレタン(株)社製)TDI−プレポリマー体
E.FL−2:スミジュールFL−2(住化バイエルウレタン(株)社製)TDI−イソシアヌレート体
F.VPLS:デスモジュールVPLS2010/1(住化バイエルウレタン(株)社製)HDI−プレポリマー体
〈触媒〉
OtZn:オクチル酸亜鉛
【0060】
参考例1
nPr−Macidを55.2重量部、N3200を43.4重量部はかりとり、スウィングローターを用いて、室温で配合し、均一とし、さらにOtZnを1.1重量部加えて難燃・硬化性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の外観と保存安定性を表3に示す。
実施例1〜6および参考例2〜6
材料組成を表1に示したように変更した以外は前記の参考例1に準じて、配合し樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の外観と保存安定性試験の結果を表3に示す。
比較例1〜10
材料組成を表2に示したように変更した以外は前記の参考例1に準じて、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の外観と保存安定性試験の結果を表3に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
*1:○はローターにて1時間攪拌後に均一混合したことを示し、×は明らかな不溶物が確認できることを示す
*2:○は増粘が確認されなかったことを示し、×は明らかな増粘が確認されたことを示す。
【0065】
実施例7〜12および参考例7〜12
実施例1〜6および参考例1〜6で得た樹脂組成物をブリキ板にバーコーターで塗布し、100℃、1時間の条件で硬化させて樹脂成形物としての硬化膜を得た。アマルガム法により硬化膜をブリキ板より剥離し、フィルムを得た。得られたフィルムの硬化確認と燃焼試験の結果を表4に示す。
また、参考例4で得られた樹脂組成物のIRチャートを図1に、100℃、1時間の条件で硬化させた後のIRチャートを図2に示す。
図1の2276cm−1のピークはイソシアネートに由来するピークであり、このピークが図2では見られないことから、硬化後にイソシアネート基が消費されていることがわかる。また、図2に3000cm−1のカルボキシル基に由来するピークが確認されないことから、脱ブロック後に生じたカルボキシル基が消費されていることがわかる。以上より、イソシアネート基とカルボキシル基とが反応していることがわかる。
【0066】
比較例11〜20
比較例1〜10で得た樹脂組成物をブリキ板にバーコーターで塗布し、100℃、1時間の条件で硬化させて樹脂成形物としての硬化膜を得た。アマルガム法により硬化膜をブリキ板より剥離し、フィルムを得た。得られたフィルムの硬化確認と燃焼試験の結果を表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
*3:○は傷が確認されなかったことを示し、×は傷ができたことを示す。
*4:○はVTM−0相当であったことを示し、×は規格外であったことを示す。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、均一で1液保存安定性が高い樹脂組成物を得ることができる。さらには、10〜110℃という低温であっても、ビニルエーテル化合物が揮発し系から除去される状況下においては、脱ブロック反応が進行し生成したカルボキシル基又はフェノール性水酸基とイソシアネート基が速やかに反応し、硬化樹脂が得られる。
また、本発明の樹脂硬化物は、リン原子を有していることから、リン原子の特性に基づいて難燃性を有する。さらには、イソシアネート樹脂に由来し、難燃助剤となりうる窒素原子を多量に有するため、難燃化効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、参考例4で得られた樹脂組成物のIRチャートである。
【図2】図2は、参考例4で得られた樹脂組成物をさらに、100℃、1時間の条件で硬化させた後のIRチャートである。
Claims (4)
- 難燃・硬化性樹脂組成物中に、少なくとも前記のリン含有化合物誘導体(A)10重量%〜70重量%と、イソシアネート基を2個以上有する樹脂(B)10重量%〜90重量%とを有効成分として含み、かつ (A)/(B)の重量比が1/9〜7/1である請求項1に記載の難燃・硬化性樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の難燃・硬化性樹脂組成物を10〜110℃の温度領域で硬化させてなる樹脂硬化物。
- 請求項1または2に記載の難燃・硬化性樹脂組成物を基材表面に塗布した後に硬化させてなる樹脂被覆物。
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