JP7270390B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物及び硬化物に関する。
構造材料や接着剤に使用されるエポキシ樹脂組成物は、実使用において適切な粘度を有することが求められる。接着剤用途では、塗布時には一定の流動性を有しながら、塗布後硬化が完了するまで形状を維持できる必要がある。また、構造材料用途では、金型への注入時に適度な粘度を有することが必要であり、また十分なポットライフを有する必要もある。
従来、エポキシ樹脂組成物のレオロジーを制御するためには、エポキシ樹脂にシリカ粉末を配合することが知られている。しかし、シリカ粉末は一次粒子の凝集が生じやすいので、シリカ粉末を使用するためには人手を介したロールミル等を用いた分散工程が必要となる。さらに、分散工程の精度がレオロジーに影響するため、エポキシ樹脂組成物の品質が不安定となる。
エポキシ樹脂組成物の粘度に関して、特許文献1は、室温で硬化促進剤の活性を抑制して熱硬化性樹脂組成物のポットライフを改善するために、ウレア変性ポリアミドまたはウレアウレタンを配合している。
また、粘度調整剤としてのビスカーバメート化合物に関して、特許文献2は、インクジェット用のインク組成物の粘度を低下させるために、ビスカーバメート化合物を配合している。また、特許文献3は、水性塗料の増粘剤としてビスカーバメート化合物を配合している。しかし、ビスカーバメート化合物やビスウレア化合物が、エポキシ樹脂組成物の粘度を向上させることは知られていない。
特開2014-145073号公報 米国特許第6414051号公報 特開2000-239649号公報
本発明は、主要な増粘成分としてシリカ粉末を用いずに、エポキシ樹脂組成物の粘度を向上させることを目的とする。
本発明者が鋭意検討の結果、ビスカーバメート化合物およびビスウレア化合物が、エポキシ樹脂組成物の粘度を向上させられることを見出した。
すなわち、本発明は、
(A)エポキシ樹脂、及び
(B)(B-1)下記一般式(1):
Figure 0007270390000001
で表される化合物、又は
(B-2)下記一般式(2):
Figure 0007270390000002
で表される化合物(前記一般式(1)及び一般式(2)中、Rは炭素数6~12のアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素数10~22のアルキル基である)
を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
前記一般式(1)及び(2)中、R及びRが同一であることが好ましい。
エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、一般式(1)の化合物(B-1)、又は一般式(2)の化合物(B-2)の配合量が5重量部以下であることが好ましい。
チクソ比が1.5以上であることが好ましい。
さらに硬化剤を含むことが好ましい。
硬化剤が、酸無水物又は芳香族アミンであることが好ましい。
また、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物を含む接着剤に関する。
また、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ビスカーバメート化合物またはビスウレア化合物を含むため、主要な増粘成分としてシリカ粉末を含まなくても、粘度を向上できる。ビスカーバメート化合物またはビスウレア化合物は、シリカ粉末より少量でエポキシ樹脂組成物の粘度を向上できる。本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物は、シリカ粉末を含む従来の硬化物と同等以上の物性を示す。
<<エポキシ樹脂組成物>>
本発明は、(A)エポキシ樹脂、及び(B)(B-1)下記一般式(1):
Figure 0007270390000003
で表される化合物、又は
(B-2)下記一般式(2):
Figure 0007270390000004
で表される化合物(前記一般式(1)及び一般式(2)中、Rは炭素数6~12のアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素数10~22のアルキル基である)を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
<(A)エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂は、特に限定されず、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルジグリシジルエーテル、ジメチルジ-t-ブチルビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型又はテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂類、ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂としては、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,3-シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,2-シクロヘキサンジグリシジルエーテル、ジメチロールジシクロペンタジエンジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルエステル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等が挙げられる。
以上のエポキシ樹脂の中でも、耐熱性、機械強度が優れているため、芳香族エポキシ樹脂が好ましく、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、100~5000が好ましく、120~1000がより好ましい。エポキシ当量が5000を超えると、硬化不良となることがあり、100未満であると、機械強度が悪化したり、貯蔵安定性が悪くなることがある。
エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂の含有量は特に限定されないが、1~99.8重量%が好ましく、10~99.8重量%がより好ましい。含有量が1重量%未満、或いは99.8重量%を超えると、十分に架橋反応が進まずに硬化不良となることがある。
<(B)ビスカーバメート化合物またはビスウレア化合物>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、
(B)(B-1)下記一般式(1):
Figure 0007270390000005
で表される化合物、又は
(B-2)下記一般式(2):
Figure 0007270390000006
で表される化合物を含む。前記一般式(1)及び一般式(2)中、Rは炭素数6~12のアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素数10~22のアルキル基である。これらの化合物は、エポキシ樹脂組成物中で非共有結合的な相互作用により自己組織化し、エポキシ樹脂組成物の粘度を向上する。一般式(1)の化合物、または一般式(2)の化合物は、エポキシ樹脂との相溶性が高く、容易に溶解し、シリカ粉末のような煩雑な分散工程は必須ではない。また、一般式(1)の化合物、または一般式(2)の化合物は、シリカ粉末より少量でも、シリカ粉末より効率的にエポキシ樹脂組成物の粘度を向上できる。
前記一般式(1)及び一般式(2)中、Rは炭素数6~12のアルキレン基であるが、炭素数は6~10が好ましく、6~8がより好ましい。R及びRはそれぞれ独立して炭素数10~22のアルキル基であるが、炭素数は12~22が好ましい。R及びRの炭素数が10未満ではエポキシ樹脂組成物の粘度を向上できないことがあり、炭素数が22を超えると化合物の融点が高くなり、溶解性が低下することがある。RとRは異なっていてもよいが、合成が容易であり、得られる化合物がより効率的にエポキシ樹脂組成物の粘度を向上させられるため、同一であることが好ましい。
一般式(1)の化合物は、例えば、トルエン溶液中、ジイソシアネートとアルコールを混合して40~120℃で加熱することにより合成される。さらに反応は、触媒を用いて促進することも出来る。触媒としては、例えばジブチルスズジラウレートおよびオクタン酸亜鉛および第三アミン、例えばトリエチルアミンおよび1,4-ジアザビシクロ-(2,2,2)-オクタンが挙げられる。この合成に用いられるジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネートが挙げられる。また、アルコールとしては、ドデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。
一般式(1)の化合物の具体例としては、下記式(a)
Figure 0007270390000007
で示されるビスカーバメート化合物、下記式(b)
Figure 0007270390000008
で示されるビスカーバメート化合物が挙げられる。
一般式(2)の化合物は、例えばトルエン溶液中、ジイソシアネートとアミン化合物を混合して40~120℃で加熱することにより得られる。この合成に用いられるジイソシアネートの具体例としては、一般式(1)の化合物の原料として上述した化合物が挙げられる。アミン化合物としては、ドデシルアミン、オクタデカンアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンが挙げられる。一般式(2)の化合物の原料であるアミン化合物が残存したままエポキシ樹脂組成物に配合されるとエポキシ樹脂の硬化を促進しエポキシ樹脂組成物の保存安定性が悪くなる場合があることから、ジイソシアネートとアミン化合物の反応後は、剰余のアミン化合物を再結晶、アルコール洗浄により除去してビスウレア化合物を精製することが好ましい。
一般式(2)の化合物の具体例としては、下記式(c)
Figure 0007270390000009
で示されるビスウレア化合物が挙げられる。
一般式(1)の化合物(B-1)、又は一般式(2)の化合物(B-2)は、少量でも効率的にエポキシ樹脂組成物の粘度を向上できる。したがって、一般式(1)の化合物(B-1)、又は一般式(2)の化合物(B-2)の配合量は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し5重量部以下であってもよい。当該配合量は、3重量部以下であることがより好ましく、0.5重量部以下であることが更に好ましい。
<エポキシ樹脂組成物のチクソ比>
エポキシ樹脂組成物は、チクソ比が1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。チクソ比が1.5未満では、形状維持が困難なため、作業性が悪化することがある。本発明においてチクソ比は、次の方法により測定される値をいう。すなわち、レオメータARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用し、25℃において、せん断速度1(1/s)における粘度ηと、せん断速度10(1/s)における粘度ηとの比(η/η)をチクソ比とする。
<エポキシ樹脂組成物の粘度>
エポキシ樹脂組成物は、粘度が10000mPa・s以上であることが好ましく、20000mPa・s以上であることがより好ましく、30000mPa・s以上であることがさらに好ましい。粘度が10000mPa・s未満では、流動性が高過ぎるため、作業性が悪化することがある。また、エポキシ樹脂組成物の粘度は、操作性の観点から50000mPa・s以下が好ましい。本発明においてエポキシ樹脂組成物の粘度は、次の方法により測定される値をいう。すなわち、レオメータARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用し、25℃において、せん断速度1(1/s)において測定される粘度である。
<任意成分>
エポキシ樹脂組成物は、上記(A)エポキシ樹脂、(B-1)ビスカーバメート化合物または(B-2)ビスウレア化合物の他に、必要に応じて他の任意成分を含有していても良い。他の任意成分としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、有機溶剤等が挙げられる。
<硬化剤>
硬化剤は特に限定されず、例えば、アミン系化合物、酸無水物、アミド系化合物、フェノール系化合物等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン等の脂肪族アミン、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン、1、3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環族アミンが挙げられる。
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。また潜在性触媒として、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体なども挙げられる。
これらの硬化剤の中でも、ポットライフを維持でき、毒性も低いという理由で、酸無水物又は芳香族アミンが好ましい。硬化剤の配合量は特に制限されないが、エポキシ基1モルに対して、硬化剤の官能基が0.7~1.5モルとなる量であることが好ましい。硬化剤の官能基とは、アミン系化合物やフェノール系化合物であれば、活性水素のことをいい、酸無水物であれば酸無水物基のことをいう。エポキシ基1モルに対して、硬化剤の官能基が0.7モル未満、または1.5モルを超えると、十分に架橋反応が進まずに硬化不良となることがある。
<硬化促進剤>
硬化促進剤としては、上記エポキシ樹脂組成物が硬化する際にそれ自体架橋せずに架橋反応を促進するものであれば特に限定されず、例えば、イミダゾール、第3級アミン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
イミダゾールとしては、特に限定されず、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
第3級アミンとしては、特に限定されず、例えば、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール、トリエチルアミン、1、5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン(サンアプロ社商標:DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(サンアプロ社商標:DBU)、DBU-フェノール塩、DBU-オクチル酸塩、DBU-p-トルエンスルホン酸塩等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物中、0.01~10重量%であることが好ましく、0.1~5重量%であることがより好ましく、0.4~3重量%であることがさらに好ましい。硬化促進剤の含有量が0.01重量%未満であると、十分な硬化性が得られないことがあり、10重量%を超えると、エポキシ樹脂組成物を半硬化させる際、半硬化状態とするための硬化時間や硬化温度等の硬化条件を厳密に制御しなければならず、作業性が低下することがある。
<充填剤>
充填剤としては、特に限定されず公知の充填剤を用いることができ、例えば、無機酸化物、無機塩、ガラス、窒化物、金属粉等が挙げられる。
無機酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。無機塩としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。窒化物としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ケイ素等が挙げられる。金属粉としては、例えば、銀粉、銅粉、銀メッキ銅粉、スズメッキ銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物が充填剤を含有する場合、その含有量は、エポキシ樹脂組成物中、5~90重量%であることが好ましく、10~70重量%であることがより好ましい。
<有機溶剤>
有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、N-メチルピロリドン;N,N-ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物等のエステル類;エタノール、プロパノール、メタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物中、1~90重量%であることが好ましい。
<エポキシ樹脂組成物の作製方法>
エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂に、(B-1)ビスカーバメート化合物または(B-2)ビスウレア化合物を溶解することにより得られる。溶解方法としては、特に限定されず従来公知の方法を用いることができるが、例えば、撹拌機を用いて撹拌する方法、3本ロールミルを用いて混練する方法等を用いることができる。溶解時の温度は80~150℃が好ましい。
エポキシ樹脂組成物に、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、有機溶剤等の任意成分を配合する場合には、先に(A)エポキシ樹脂に(B-1)ビスカーバメート化合物または(B-2)ビスウレア化合物を溶解させた後に、任意成分を配合することが好ましい。
<用途>
エポキシ樹脂組成物の用途は特に限定されないが、適切な粘度が求められる用途で特に好適に使用でき、例えば、接着剤、構造体、塗料等に使用できる。
エポキシ樹脂組成物はその用途に応じて他の任意成分を含有していても良く、例えば接着剤用途に使用する場合には、シランカップリング剤、難燃付与剤等を、構造体用途に使用する場合には離型剤等を、塗料用途に使用する場合は顔料等をそれぞれ配合してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン類;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン等のビニルシラン類;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類などが挙げられる。
離型剤としては、例えば、カルナバワックスなどの天然系ワックス、ポリエチレンワックスなどのポリオレフィン系ワックス、シリコーンオイルなどのシリコーン化合物、モンタン酸アミドなどのアミド系ワックス、モンタン酸エステルなどのエステル系ワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸の金属塩類等が挙げられる。
顔料としては、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、酸化鉄、亜鉛粉末、二酸化チタン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料、イソインドリノン系顔料、各種焼成顔料等の着色顔料、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ガラスフレーク等の体質顔料等が挙げられる。
難燃付与剤としては、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化合物、赤リンや各種燐酸エステル化合物等の燐原子含有化合物、メラミン或いはその誘導体等の窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウム等の無機系難燃化合物が挙げられる。難燃付与剤の配合量は特に制限されないが、通常、エポキシ樹脂組成物中に、1~20重量%程度含まれるように配合する。
<<硬化物>>
上記エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。硬化方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱装置を用いて、100℃にて1時間、その後180℃にて4時間加熱する方法等が挙げられる。加熱装置は特に限定されず、例えば、送風定温乾燥器、定温恒温乾燥器等を用いることができる。本発明の硬化物は、製造が容易なエポキシ樹脂組成物を用いて製造されるが、シリカ粉末を含む従来のエポキシ樹脂組成物の硬化物と同等以上の物性を示す。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
(1)使用材料
(1-1)エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル製、JER828)
(1-2)シリカ粉末
疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル製、アエロジルRY200)
(1-3)硬化剤
ヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製、MH-700)
メタキシレンジアミン(三菱ケミカル製、W)
(1-4)硬化促進剤
2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化学製、2E4MZ)
(2)ビスカーバメート化合物およびビスウレア化合物の合成
(合成例1) ビスカーバメート化合物1の合成
撹拌機及び温度計、窒素ラインを接続したガラス管を設置した300mL三口反応容器に、トルエン100.0g、ヘキサメチレンジイソシアネート10.0g(59mmol)、ドデカノール23.0g(120mmol)、1,4-ジアザビシクロ-(2,2,2)-オクタン(DABCO)0.01g(0.09mmol)を仕込んだ後、窒素バブリングしながら、60℃で5時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却した後、減圧ろ過、エタノール洗浄をして白色結晶を得た。続いて80℃で5時間減圧乾燥することで、30gの目的化合物を得た。反応の終点は、赤外吸収分析によって、イソシアネート結合由来の2250cm-1付近のピーク消失と、カーバメート結合に基づく1680cm-1(C=O伸縮振動)、1530cm-1(NH変角振動)付近のピーク生成によって確認した。
(合成例2~8)
表1に示す重量比で、ジイソシアネート、アルコール、およびアミン、触媒(DABCO)を使用した以外は合成例1と同様にして、ビスカーバメート化合物(合成例2、4、6~8)およびビスウレア化合物(合成例3、5)を合成した。合成例3および5については、ウレア結合に基づく1610cm-1(C=O伸縮振動、1570cm-1(NH変角振動)付近のピーク生成を確認した。その後、エタノールによる再結晶により未反応のアミンを除去した。なお、合成例4の化合物は一般式(1)におけるR~Rの要件を満たさず、合成例5の化合物は一般式(2)におけるR~Rの要件を満たさない。合成例6~8の化合物は、一般式(1)におけるRの用件を満たさない。
Figure 0007270390000010
(3)エポキシ樹脂組成物の製造(実施例1~3、比較例1~7)
表2に示す重量比で各成分を混合し、120℃で加熱し、ビスカーバメート化合物およびビスウレア化合物を溶解させた。実施例1~3、比較例1~5においては各成分の混合後、ビスカーバメート化合物およびビスウレア化合物は容易に溶解した。比較例6においてはシリカ粉末を3本ロールミルを用いて混合した。得られたエポキシ樹脂組成物の粘度およびチクソ比を後述の方法により測定した。結果を表2に示す。
Figure 0007270390000011
比較例1~2のエポキシ樹脂組成物に配合されたビスカーバメート化合物、およびビスウレア化合物は、末端のアルキル基の炭素数が少ないため、増粘剤を含まない比較例7のエポキシ樹脂組成物と同程度の粘度およびチクソ比しか有していなかった。比較例3~5のエポキシ樹脂組成物に配合されたビスカーバメート化合物、およびビスウレア化合物は、ジイソシアネート由来の構造が本発明を構成するものとは異なるため、粘度が十分なものとはいえず、増粘剤を含まない比較例7のエポキシ樹脂組成物と同程度のチクソ比しか有していなかった。比較例6のエポキシ樹脂組成物においては、シリカ粉末をロールミルで分散する必要があり、粘度が十分なものとはいえなかった。実施例1~3のエポキシ樹脂組成物では、ビスカーバメート化合物、およびビスウレア化合物が容易に溶解し、さらに、粘度およびチクソ比は比較例1~7を上回っていた。
(4)硬化剤、硬化促進剤の添加、ならびに硬化物の製造(実施例4~7、比較例8~11)
実施例1~3、比較例1、2、7のエポキシ樹脂組成物に、さらに、表3に示す重量比で硬化剤および硬化促進剤を配合し、150℃で3時間加熱して硬化物を得た。得られた硬化物のガラス転移温度、弾性率、線膨張係数、接着強度を後述の方法により測定した。結果を表3に示す。
Figure 0007270390000012
(5)評価方法
(5-1)エポキシ樹脂組成物の粘度
レオメータARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用し、25℃において、せん断速度1(1/s)における粘度を測定した。
(5-2)エポキシ樹脂組成物のチクソ比
レオメータARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用し、25℃において、せん断速度1(1/s)における粘度ηと、せん断速度10(1/s)における粘度ηとの比(η/η)を算出した。
(5-3)硬化物のガラス転移温度
粘弾性測定装置DMS7100(日立ハイテクサイエンス製)を用いて、周波数1Hz、1分間に5℃の割合で-30℃から300℃まで昇温させて、損失正接tanδピークの値を求めた。
(5-4)硬化物の弾性率
粘弾性測定装置DMS7100(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、周波数1Hz、1分間に5℃の割合で-30℃から300℃まで昇温させて、25℃での貯蔵弾性率を求めた。
(5-5)硬化物の線膨張係数
熱分析装置TMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、圧縮モードにて1分間に10℃の割合で温度を-30℃から400℃まで昇温させて、30~50℃での平均線膨張係数を求めた。
(5-6)硬化物の接着強度
アルミ試験片、万能材料試験機ストログラフVG20F(東洋精機社製)を用いて、ロードセル1KN、クロスヘッドスピード200mm/minで測定した。
(6)考察
実施例4~7の硬化物は、製造が容易な実施例1~3のエポキシ樹脂組成物を用いて製造されたが、ガラス転移温度、弾性率、線膨張係数、接着強度を損なうことなく、比較例8~11の硬化物と同等以上の物性を示した。

Claims (12)

  1. (A)エポキシ樹脂、及び
    (B)(B-1)下記一般式(1):
    Figure 0007270390000013
    で表される化合物、又は
    (B-2)下記一般式(2):
    Figure 0007270390000014
    で表される化合物(前記一般式(1)及び一般式(2)中、Rは炭素数6~12のアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素数10~22のアルキル基である)
    を含み、
    チクソ比が1.5以上であるエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記一般式(1)及び(2)中、R及びRが同一である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、一般式(1)の化合物(B-1)、又は一般式(2)の化合物(B-2)の配合量が5重量部以下である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. さらに硬化剤を含む請求項1~のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 硬化剤が、酸無水物又は芳香族アミンである請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含む接着剤。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
  8. (A)エポキシ樹脂、及び
    (B)(B-1)下記一般式(1):
    Figure 0007270390000015
    で表される化合物、又は
    (B-2)下記一般式(2):
    Figure 0007270390000016
    で表される化合物(前記一般式(1)及び一般式(2)中、R は炭素数6~12のアルキレン基であり、R 及びR はそれぞれ独立して炭素数10~22のアルキル基である)
    を含むエポキシ樹脂組成物を含む接着剤。
  9. 前記一般式(1)及び(2)中、R 及びR が同一である、請求項8に記載の接着剤。
  10. エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、一般式(1)の化合物(B-1)、又は一般式(2)の化合物(B-2)の配合量が5重量部以下である、請求項8または9に記載の接着剤。
  11. 前記エポキシ樹脂組成物がさらに硬化剤を含む請求項8~10のいずれか1項に記載の接着剤。
  12. 硬化剤が、酸無水物又は芳香族アミンである請求項11に記載の接着剤。
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