JP4171558B2 - 円筒状の耐熱性中空容器 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、合成樹脂を用いた２軸延伸ブロー成形した耐熱性の中空容器に係わり、特に、容器本体に把手体を設けることなく、容器壁面に指先が引っ掛かり易くした突起部を壁面に設けて容器を持ち易くした、合成樹脂製の耐熱中空容器に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
近年、大量に使用されている合成樹脂製の中空容器も、生活習慣の変化に伴ってジュースその他の液体飲料等が大量に消費されるようになるにつれて、これ等を収容する容器も種々雑多な形状をしたものが出現するようになり、また、その容器も大型のものが出回り、重量も重くなって持ちにくくもなり、これ等の容器は飲用や持ち運びその他の取扱い時にいささか不便さを感ずることがある。
【０００３】
そこで、このような容器の取扱い時の不便さを解消するために、容器の胴壁に把手を取り付けて持ち易くした中空容器が使用されている。
従来から洗剤や油等の加熱充填を必要としない大型の中空容器に於いては、ポリエチレンや塩化ビニール樹脂等を用いてブロー成形した容器が用いられているが、これらの容器は、ブロー成形時に容器本体と把手部を一体になるように同時に成形することを簡単に行うことが可能である。
【０００４】
ところが、ジュースその他の色々な飲食物を容器に収容するには、食品衛生上の理由から高温で加熱充填して、滅菌することが義務づけられており、そのような充填をする中空容器には、耐熱性を備えている容器が必要である。
そこで、そのような耐熱性の中空容器としては、食品の安全性や外観面からの透明性、更には、軽量で持ち易くて、機械的な強度も有する等の面から、近年は一般的に、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）樹脂を用いてブロー成形した後、ヒートセットを行って耐熱性を付与した中空容器が使用されている。
【０００５】
しかし、上記のような耐熱性の飲料容器を、従来のポリエチレンや塩化ビニール樹脂から中空容器を成形する場合と同様にして、ＰＥＴ樹脂を用いて中空容器にブロー成形する際に、容器本体の成形と同時に把手部を一体に成形するということは、樹脂の性質や耐熱処理等の点から非常に困難である。
そこで、現在使用されているＰＥＴ樹脂製の中空容器にあっては、射出成形等により別体に成形しておいた把手を、容器本体をブロー成形する際にインサート成形を行って、容器の胴壁面に組付ける方法が一般に取られている。
【０００６】
上記のようにして、把手体を取り付けたＰＥＴ樹脂製の耐熱容器として知られている典型的なものとしては、特開平２−１９１１５６号公報に見るようなものが知られており、それは図９に示すように、握り部５２とその両端から横方向に突出せしめた嵌着部５３とからなる概略コの字状に形成すると共に、該嵌着部の先端に外方向に突起または凹入部５４を形成した把手５１を、ブロー成形時に容器本体の胴部上部側壁面に形成される把手取付け用の凹部５５に取付けるのに、前記把手の突起または凹入部を該把手取付け凹部の上下面の最奥部に係合せしめて、前記把手の握り部外面が容器胴部の外側面と同一面になるように把手を取付けた容器５０がある。
【０００７】
しかし、このような形状をした把手を取付けた容器は、デザインがシンプルで、構造的にも簡単であるから、その成形が容易ではあるが、運搬時の荷崩れや使用時の不注意等による落下で、容器が把手方向側から床面に衝突した場合に、把手の取り付け端部が食い込んで容器が割れ易い等の問題があった。
【０００８】
また、上記のものを改良したものとして、特開平７−２２３２５４号公報に見るようなものがあるが、それは図１０に示すように、容器本体の胴部上部側壁面に形成した把手取付け用の凹部６７の上下面に設けた凹穴部に組付く上下の組付き板６３ａ，６３ｂの後端部を板状の把手部６２に連設すると共に、該上下の組付き板の前端部間に板片状の組付き梁板６５を連設して環状に形成すると共に、前記上組付き板の前端部に上向きの突片６４ａを、下組付き板の前端部に下向きの突片６４ｂを突設するように形成した把手体６１を、ブロー成形金型内に保持した状態で、ＰＥＴ樹脂のプリフォームをブロー成形可能に保持したブロー成形金型にセットして、ブロー成形により容器本体の胴部側壁面に形成される凹部にインサート成形して固定した容器６０である。
【０００９】
このようにして把手体を取付けた容器は、把手の組付き梁板と上下の組付き板が、容器本体の胴部側壁面の凹部の中央縦溝と上下の凹穴部とに嵌合するようにインサート成形されているので、把手はガタ付くこともなく、抜け出すことがないように組付けられており、また、上下の組付き板に組付き梁板が連設されているので、上下組付き板間の間隔が変形することもなく、床面に把手側から落下した場合も把手の端部が食い込んで容器が割れるようなこともない。
【００１０】
しかし、上記したいずれの形式の容器も必ずしも持ち易いとは言えない、何故ならば、把手体を取り付けた容器が持ち易いものであるためには、人の手の親指を除く４本の指が把手板（グリップ部）にかけられる程度の充分な余裕が必要であるが、それには容器本体の把手組み付け部分に、それだけの寸法がとれる余裕がなければならないが、上記容器にはその余裕が充分であるいは言えない。
【００１１】
ところで、ジュースやその他の食品容器として、現在最も多く使用されているのは、基本的な形状として円筒状をした丸形や四角形その他の多角形の筒状をした角形の1.5 リットル以下の耐熱性中空容器が一般的であるが、これらの容器の胴壁部に把手を取り付けるには、容器の形や大きさ、高さ、吸収パネル面積、容器の強度、成形性等が優先されて、これらの諸条件を満たすための種々の制約を受けることから、把手取り付け部に充分な余裕を取ることができず、把手部は最小限の大きさの範囲に止めざるを得ないので、把手体を自由に任意の大きさとすることはできず、特に、陳列棚等による高さ制限を受けるような場合にはむずかしいことである。
従って、このような条件の下で容器の胴部に把手が取り付けられた中空容器、特に、円筒形をした丸形の中空容器に把手を取り付けたものは、必ずしも持ち易いとは言えない。
【００１２】
また、このようにして容器壁部に把手体を取り付けるには、把手体の成形と、それを取り付けるためのインサート成形とを行わなければならないので、成形装置と成形工程が複雑になり、生産コストが嵩む原因ともなる。
更に、上記したような方法で成形されたＰＥＴ樹脂製の容器で一般に使用されているものは、ほとんどが内容物を常温に近い温度で充填するか、加熱充填するにしてもせいぜい７５℃程度の温度で充填したものであり、これよりも高い温度である８５℃前後の高温下で充填がなされる耐熱容器については、現在までところあまり見当たらない。
それは、複雑な形状をした把手体をＰＥＴ樹脂容器本体の胴壁部に絡みつくようにインサート成形してアンダーカット部分を完全に均一にヒートセットすることが困難であるから、あまり高い温度で内容物を加熱充填すると、把手の取り付け部分が熱変形を起こして把手が外れ易くなるからである。
【００１３】
ジュースその他の液体飲料をＰＥＴ樹脂等の耐熱性の中空容器に充填するには、食品衛生面から内容物を充填したら直ちに密封して、パストライザーなどにより容器ごと加熱して殺菌する必要があるので、剛性が小さいＰＥＴ樹脂容器の場合には、加熱した後で、冷却されると内容物が収縮して減圧状態となって容器が変形することになる。
このようにして容器の外観が変形したものは商品価値が低下するので、そのように容器が変形するのを防ぐためには、容器の胴壁部分に減圧を吸収するための適切な吸収壁（減圧吸収パネル部）を設ける手段が採られている。
【００１４】
そこで、８５℃程度の温度にも耐え得る高い耐熱性を有する中空容器として、現在のところ一般的に最も広く使用されている容器は、成形性及び耐圧性に優れている構造の円筒状に成形した中空容器である。
従って、このような円筒状をした中空容器としては、図７や図８に見るように、容器の胴壁部に四面または六面の圧力の変化を吸収するための吸収パネルを設けたものが一般的であった。
【００１５】
図７に見るものは、口頸部１１と上部胴壁１４と中部胴壁１５と底部胴壁とからなる円筒状の中空容器１１に於いて、中部胴壁１５に平板状をした広い吸収面１５ａを変形可能に設けて吸収パネル部を形成したものであり、この形式のものは圧力の吸収量を大きくすることが容易であり、同様に、図８に見るものは、口頸部２１と上部胴壁２４と中部胴壁２５と底部胴壁とからなる円筒状の中空容器２１に於いて、胴壁部に多数の突出部２５ａを変形可能に設けて吸収パネル部を形成して、圧力の吸収量を大きくしたものである。
【００１６】
上記のいずれの容器も、５００ミリリットル程度迄の小さいものであれば、持ち易さの点で問題はなかったが、しかし、それよりもやや大きな１リットル以上の容器ともなれば、直径が大きくなって片手では持ちにくくなり、また、無理にあるいは不注意で片手では持とうとすると、時には手から滑り落ちることがあり、両手で抱えるようにして持たざるを得ない場合ある等の不便さがあった。
そこで、本願発明は、容器の胴壁部に把手を取り付けることなく、円筒状をした中空容器の指を掛ける側の直径が小さくなるようにして、容器を片手で把持し易くした耐熱性を有する中空容器を提供する。
【００１７】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、容器の大きさや形状、構造についての色々な制限が加えられて成形される中空容器、中でも、円筒状をした丸形に成形される中空容器を手で持ち易いようにするために、該中空容器の胴部に把手を設けることなしに、容器の胴部を手で持ち易い形状にすると共に、該容器に内容物を加熱充填しても変形しない形状をした中空容器、特に円筒状をした丸形の高い耐熱性を有する中空容器を提供することを目的とする。
【００１８】
【課題を解決するための手段】
上記したような技術的課題を解決するのに、本願発明は、別体に成形した把手体をインサート成形して中空容器の胴壁部に把手を設けることなしに、容器が手で持ち易くて、且つ、高い耐熱性を有する円筒状の中空容器を成形するために、前記円筒状容器の胴壁部には、二面の減圧吸収パネル面とラベル面とを対称になるように設けて、且つ、前記吸収パネル面は円筒状の曲線よりも内側に略平坦な面となるように形成して直径を小さくすると共に、該吸収パネル面には少なくとも２個のこぶ状をした突起を形成する。
そして、前記こぶ状をした突起は、その間に手の指が引っ掛かり易いような大きさに突出せしめて形成して、更に、前記胴壁部の吸収パネル面及びラベル面の上下端部に凹溝状のリブを周設すると共に、該リブは凹溝の深さがラベル面の一方の側面で次第に浅くなって消滅すように形成することにより、容器は持ち易くて、且つ、内圧の変化を吸収する高い耐熱性を有する中空容器となす。
【００１９】
【発明の実施の形態】
ＰＥＴ樹脂を射出成形により所定形状をしたプリフォームに成形して、該プリフォームをブロー成形が可能な温度に加熱したものを、本願発明の容器に合わせた形状に形成されたブロー成形金型内に装着して、該ブロー成形金型を閉じてから前記プリフォーム内に加圧空気を吹き込んでブロー成形を行って、円筒状をした胴壁部には、二つの減圧吸収パネル面５ａ，５ｂと二つのラベル面５ｃ，５ｄとを形成して、該二つの減圧吸収パネル面には、それぞれ少なくとも２個のこぶ状をした突起７を形成すると共に、該突起７の間には手の指が引っ掛かり易いように突出せしめて形成することにより、把手がなくても容器を手に持ち易い構造をした高い耐熱性を有する中空容器１に成形する。
【００２０】
【実施例】
本願の発明について、最適な一つの実施例に基づいて、図面を参照しつつ以下に説明する。
周知である通常の射出成形装置によりＰＥＴ樹脂を所定形状をしたプリフォームに成形してから、該プリフォームをブロー成形が可能な温度に加熱した後、該プリフォームを通常用いているブロー成形装置の成形金型内にセットすると共に、該プリフォーム内に加圧空気を吹き込んでブロー成形を行って、該ブロー成形した中空容器を熱処理をすることにより、本願の発明である高い耐熱性を有する中空容器を成形した。
【００２１】
上記のようにして中空容器をブロー成形したことにより、本願の発明である円筒状の中空容器１は、図１及び図２に示すように、口頸部２と、それに続く肩部３と、凹凸状にリブ４ａを設けた上部胴壁４と、吸収パネル５ａを設けた中央胴壁５と、自立可能な底壁部６ａを設けた下部胴壁６とから形成されている。
このようにして成形した容器１には、円筒状をした中空容器の胴壁部５の前面と後面とに、円筒状の曲面の外形線の内側に存するように略平坦な面をした内圧の変化を吸収するための突起７を設けた減圧吸収パネル面５ａ，５ｂを対称な位置になるように形成されると共に、前記容器の胴壁部５の左右の両側面に、それぞれ商品等の表示をするための円筒状の曲面をしたラベル面５ｃ，５ｄが形成されている。
【００２２】
そして、前記吸収パネル面５ａ，５ｂには、少なくとも２個のこぶ状をした突起７が形成されると共に、該突起７はその間に指が引っ掛かり易いような大きさ、即ち、突起７の間の谷間に指先が嵌入するような高さに突出して形成され、更に、前記胴壁部５の吸収パネル面の上下端部には、凹溝状のリブ８，９がそれぞれ周設されると共に、該リブの凹溝８，９の深さは、図１及び図４に示すように、ラベル面の一つの面で漸次浅くなるように形成されて、側面Ｃの点でなくなるように偏心させた変則状に形成されている。
このようにして中空容器をブロー形成することにより、該容器の吸収パネル面方向の直径は手に持ち易い大きさをした構造に成形できると共に、ブロー成形された容器は均一に全体をヒートセットする熱処理を行うことができるので、容器の内圧の変化を吸収可能である高い耐熱性を有する円筒状の中空容器１が成形される。
【００２３】
上記のように成形した本発明の円筒状をした中空容器１は、その中にジュース等の液体飲料が加熱充填されて、パストライザー装置により滅菌処理されると、加熱時に上昇する圧力は、先ず突起７を含む吸収パネル面５ａ，５ｂの膨張変形により吸収されて、それでも不充分な場合には、続いて中央胴部５の両端部に偏心して変則状に凹溝状のリブ８，９が周設されたによるラベル面５ｄの変形により吸収される。
また、滅菌処理が終わって、容器が冷却されて圧力が減少すると、先ずラベル面５ｄの変形が元に復帰して、続いて突起７を含む吸収パネル面５ａ，５ｂの膨張変形が解けて元の形に復帰する。
【００２４】
このようして容器の中にジュース等の液体飲料が充填されて商品となった中空容器が、消費者のところに渡って使用に供される際には、図６に示すように、掌面を容器の胴部の一つのラベル面５ｄに押し当てた状態にして、容器の片方の吸収パネル面５ａのこぶ状突起７の谷間に親指を入れて突起に引っ掛けると共に、他方の吸収パネル面５ｂのこぶ状突起７の谷間に中指もしくは人指し指等を嵌入せしめて指を突起に引っ掛けた状態にして容器を持ち上げれば、円筒状の容器１を片手により容易に持つことができる。
【００２５】
本発明の容器は、上記のように形成したことにより吸収パネル面方向の直径は容易に片手で持つことができる程度に小さくできているので、掌は滑らかな円筒面に押し当てられて密着した状態になると共に、指先がこぶ状の突起に引っ掛かけられているので、容器が手から滑って落ちるようなこともない。
また、手の大きさは、こぶ状突起の間に指先が引っ掛かる程度の大きさをしていれば、どのようなサイズの容器であっも、吸収パネル面のこぶ状突起に指先を引っ掛けて簡単に持つことができる。
そして、把手体を必要としないので、ブロー成形時に高い耐熱性を付与することができて、且つ、安価に成形することができる。
【００２６】
【発明の効果】
本発明は、上記に述べたことから、把手を設けずとも円筒状をした容器を簡単に片手で持つことができるように成形できて、また、把手を設けないので容器全体を均一に熱処理することができるので容器に高い耐熱性を付与することも可能である。
そして、吸収パネル面は少なくなるが突起を大きくすると共に、吸収パネル面の上下端部に凹溝状のリブを変則状に周設したので、大きな圧力の変化も吸収することが可能である。
従って、安価で、軽量で、片手で持ち易くて、熱変形性がない、高い耐熱性を有する円筒状の中空容器が成形可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の容器を示す正面図である。
【図２】本発明の容器を示す側面図である。
【図３】図２に於けるＡ−Ａ断面図である。
【図４】図１に於けるＢ−Ｂ断面図である。
【図５】本発明の容器を示す斜視図である。
【図６】本発明の容器を手に持った斜視図である。
【図７】従来の耐熱性容器を示す正面図である。
【図８】本発明の先行例を示す正面図である。
【図９】簡単な把手体を設けた円筒状容器を示す図である。
【図１０】改良型の把手体を設けた円筒状容器を示す図である。
【符号の説明】
１． 中空容器
２． 口頸部
３． 肩部
４． 上部胴壁
４ａ．凹状リブ
４ｂ．凸状リブ
５． 中部胴壁
５ａ．吸収パネル面
５ｂ．吸収パネル面
５ｃ．ラベル面
５ｄ．ラベル面
６． 下部胴壁
６ａ．
７． 突起
８． 上部リブ
９． 下部リブ

Claims (2)

1. 口頸部に続く肩部の下に凹凸状の補強用リブを形成した上部胴壁と中程に減圧吸収パネル面を形成した中部胴壁と底壁を形成した下部胴壁とからなる円筒状をした耐熱性の中空容器に於いて、前記中部胴壁には、二面の減圧吸収パネル面と二面のラベル貼付面とが対称になるように設けられていて、前記減圧吸収パネル面は容器の円筒状曲面より内側に略平坦状に形成され、且つ、前記減圧吸収パネル面には少なくとも一対の手の指を引っ掛け可能なこぶ状をした突起が設けられており、前記こぶ状の突起は、突起間の谷間に指が嵌まるのに適した幅と高さに形成されていることを特徴とする円筒状の耐熱性中空容器。
2. 前記中部胴壁には、減圧吸収パネル面の上下端部に、深さがラベル面の一方の側面で次第に浅くなって消滅するように偏心させて変則状に形成された凹溝状のリブが周設されていることを特徴とする請求項１に記載する円筒状の耐熱性中空容器。

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