JP3906371B2 - 耐熱性の適正な把手付き合成樹脂製中空容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、ポリエステル(PET)樹脂を用いて2軸延伸ブロー成形した大型の中空容器に把手を設けたもの、特に、射出成形により別体に成形した把手体を容器本体にインサート成形して耐熱性の把手付きの中空容器をブロー成形するに際して、限られた大きさと内容量を有する容器に対して可能な限り握り易い適正な大きさをした把手を設けることを可能にした耐熱性の把手付き中空容器の成形に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、大量に使用されている合成樹脂製の中空容器も、生活習慣の変化に伴ってジュースその他の液体飲料等が大量に消費されるようになって、これ等の液体を収容する容器が大型になって、重量も重くなり、内容液をコップ等への移し変える際や容器の持ち運びで不便に感ずるようになった。
このような不便さを解消した大型の容器して従来は、ポリエチレンや塩化ビニール樹脂を用いて把手と容器本体とを一体にブロー成形して、容器の取扱を容易にした把手付きの大型容器が、加熱充填を必要としない洗剤や油等を収容する容器として使用されてきた。
【0003】
飲食物を収容する容器として一般に広く使用されるものは、食品の安全性や透明性、機械的な強度等の面からポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いてブロー成形した容器であるが、これらの容器にジュース等の飲料品を収容するには、高温下で充填してから容器ごと加熱殺菌することが必要であるので、これ等食品に使用する容器は、ブロー成形した後でヒートセットを行って耐熱性を付与したものが用いられている。
【0004】
しかし、PET樹脂から耐熱性の飲料容器をブロー成形するに際して、把手と容器本体とを一体に成形することは非常に困難であり、ポリエチレンや塩化ビニール樹脂の場合のように簡単に成形することができないので、現在使用されているPET樹脂製の大型の中空容器の大半は、射出成形等により別体に成形しておいた把手を、容器本体をブロー成形すると同時にインサート成形して容器の胴壁面に組付ける方法により成形されたものである。
【0005】
このような方法により成形されたPET樹脂製の把手付き大型中空容器の典型的なものとしては、特開平2−191156号公報に見ることができる。
この容器は、握り部とその両端から横方向に突出せしめた嵌着部とからなる概略コの字状に形成すると共に、該嵌着部の先端に外方向に突起または凹入部を形成した把手を、ブロー成形時に容器本体の胴部上部側壁面に形成される把手取付け用の凹部に取付けるのに、前記把手の突起または凹入部を該把手取付け凹部の上下面の最奥部に係合せしめて、前記把手の握り部外面が容器胴部の外側面と面一になるように把手が取付けられたものである。
【0006】
しかし、このような把手を取付けた容器は、デザインがシンプルで、構造的にも簡単であるから、その成形は容易ではあるが、運搬時の荷崩れや使用時の不注意等による落下で、容器が把手方向側から床面に衝突した場合には、嵌着部の先端に集中して衝撃応力が作用して容器が割れ易い等の問題があった。
そこで、このような落下等の衝撃により容器が破損するのを防止したものとして、特開平7−223254号公報に記載されたようなものがある。
【0007】
それは、容器本体の胴部上部側壁面に形成した把手取付け用の凹部の上下面に設けた凹穴部に組付く上下の組付き板の後端部を板状の把手部に連設すると共に、該上下の組付き板の前端部間に板片状の組付き梁板を連設して把手体を環状に形成して、前記上組付き板の前端部に上向きの突片を、下組付き板の前端部に下向きの突片を突設するように射出成形した把手体をブロー成形金型内に保持した状態で、PET樹脂からなるプリフォームをブロー成形せしめると同時に、前記把手体が容器本体の胴部側壁面に一体化するようにインサート成形して固定したものである。
【0008】
上記のような把手体を取付けた容器は、把手の組付き梁板と上下の組付き板が、容器本体の胴部側壁面の凹部の中央縦溝と上下の凹穴部とに嵌合するようにインサート成形されているので、把手はガタ付くこともなく、抜け出すことがないように組付けられており、また、上下の組付き板に組付き梁板が連設されているので、上下組付き板間の間隔が変形することもなく、容器が把手側から床面に落下した場合でも、衝撃応力を平坦な組付き梁板で受けるので容器が割れるようなこともない。
【0009】
しかし、上記のような方法で成形された大型の中空容器入りの製品は、現在のところほとんどのものが常温充填されたものであり、その充填温度は高くてもせいぜい70℃程度が限界であり、これよりも高い温度である85℃前後の高温下で充填が行われた耐熱容器については、現在までところ見当たらない。
その理由としては、上記のような把手体を金型内に保持してインサート成形する場合、複雑な形状をした把手体の接合部分にPET樹脂が絡みつくように設けられたアンダーカット部分に上手くヒートセットを施すことが困難であるから、そのような把手付き容器に高温充填した場合には、アンダーカット部分が熱変形を起して把手が外れ易くなるからである。
【0010】
また、上記したいずれの中空容器に於いても、容器本体に強固に取り付けるためにアンダーカットを設けた把手体の下側のアンダーカット部が容器の最大径の近く(胴部の外周寄り)にあるため、その部分には容器胴壁のPET樹脂が絡み付き易く、また、容器が最大径にブロー成形されているので容器壁の肉厚が薄くなるので、容器の剛性が弱くなるだけでなく、延伸倍率も部分的に高くなるので、熱充填時に容器が熱変形を起し易くなるからである。
【0011】
そこで、上記のような欠点をなくすべく大型容器に適した把手体に関して色々と研究を重ねた結果、特開平7−32455号公報に記載するような構造をした把手体を組付けた把手付き容器を出願人は既に提案している。
その把手体は、図7に示すように、上下両端部を後方に湾曲させて平行に配置された一対の直線棒状の組付き梁片53の上下端間に、平板状の把手板52を連結した構造にしたものを射出成形により一体に成形したもので、前記組付き梁片の対向面には直線状に係合突片54が突設して、また、組付き梁片の前端面中央には嵌合突片55が突設されると共に両梁片の上下端の湾曲部の先端面は角片状の組付き突部56が形成されており、必要に応じて、前記把手板52の裏面には肉抜きのための多数の凹部を形成されている。
【0012】
このような把手体51をインサート材として用いてブロー成形することにより、図6に示すように、容器本体50の上半部の胴部側壁面に把手取付け用の凹部57が形成されて、該凹部の上下両端部を除いた底面中央部分に組付き梁片53間に沿って上下方向にやや幅広で平坦な突条部58が突設され、該突条部の両側端面には縦状の膨出片が形成されて凹部底面との間で係合溝が形成されたものとなる。
そして、前記の組付き梁片53に沿って接する凹部底面の中央部には盲穴状の嵌合穴部59a,59bが、該嵌合穴部の上下には組付き凹部がそれぞれ形成されて、前記突条部の膨出片を含んだ係合溝と嵌合穴部と組付き凹部とにより、前記組付き梁片の係合突片と嵌合突片と組付き突部とが嵌合固定されて、容器本体に対して把手体51が組付けられている。
【0013】
上記のような構成をした容器の把手体51は、容器本体と把手体とが嵌合するためのアンダーカット部分が容器の最大径部から離れた内側にあるので、従来のように胴壁の肉厚が薄くなったりして容器が脆弱になるような恐れはない。
しかし、前記把手のアンダーカット部を包み込んだ部分のPET樹脂はヒートセットされないので、この部分はたの部分に比べて耐熱性が低下したものとなり、高温充填時に熱収縮を引き起こして、把手が外れる危険性が依然として残されている。
【0014】
しかし、把手体51は容器本体に強固に組付けられてはいるが、図6に示すように、把手板52に容器から引き抜く方向に強い力Xが加えられると、アンダーカット部分の剛性が弱いので、把手体51の組付き梁片53の嵌合部が外側へ開くように変形し易すいので、把手体が容器本体50から外れるのを完全に防ぐことはできない。
また、上記したような構造にした把手体51を握り易いものとするには、把手板52に親指除く4本の指が掛かるように長くする必要があり、そのためには容器上部胴壁の組付け部分の寸法を長く取らなければならないが、それに反して、実際に使用されている容器には、陳列棚や貯蔵棚等の面から大きさに制限があるから、把手板及び把手体の取り付け部を勝手に大きくすることができない。
【0015】
更に、PET樹脂からなる耐熱性の中空容器を用いてジュース等の飲料体を充填する場合には、殺菌処理をすることが必要であるために、容器内に内容物を高温充填したら直ちに密封して加熱殺菌されるが、剛性が小さいPET樹脂容器は、冷却されると内容物が収縮して減圧状態となって容器が変形する。
このようにして容器が変形した容器に入ったものは商品価値が低下するので、容器が変形するのを防止するためには、容器の胴壁部分に減圧を吸収するための適切な大きさの吸収壁(減圧吸収パネル部)を設けておくことが必要である。
【0016】
そして、耐熱容器の減圧による変形を防ぐために容器の胴壁部に設けられる減圧吸収パネルの大きさは、充填する内容物の種類とその容量、容器の大きさやその形状、デザイン等により変わるが、中でも容器のデザイン面から受ける影響力が大きくて、また、容器の壁面に貼着する色々なラベルやその貼着位置等によっても減圧吸収パネル部分の大きさや形状を変えざるを得ないが、容器の大きさは物流面や販売面、利便性等からの色々な制約を受けることになる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、容器本体に組付けられた把手に対して引き抜く方向の強い外力が加わっても、把手体の組付け部が変形して外側に開くことがないように特別な構造にした把手体をインサート材として用いてブロー成形すると共に、把手体を容器本体に組付けると同時に組付け部のアンダーカット部分をヒートセットして耐熱性を付与することにより、把手体が容器本体から離脱するのを防止して、高温充填時にアンダーカット部が熱変形を起こさないようにした耐熱性の適正な把手付き容器を提供する。
【0018】
更に、色々な制約条件により限定された寸法内で成形される容器に対して、限られた大きさの把手取り付け部にグリップを限度一杯の大きさにした持ち易い把手体を装着する最適な条件式を見い出して、加熱充填される容器の減圧変化に伴う変形を防止するための減圧吸収パネル部の面積を最小限に抑えるようにして、大きさが制限される容器に対して、可能な限り大きな面積の吸収パネルを設けることができるようにすると共に、握り易い適正な把手部を設けることができる耐熱性の把手付き容器を提供する。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記したような技術的な課題を解決するために、本願発明は、中空容器の中央部より上部の胴壁面に把手を取り付けると共に該中央部より下部の胴壁面に減圧吸収パネルを設けてなる把手付きの耐熱PET樹脂容器に於いて、容器の口頸部のネックリングより下の表面積対する減圧吸収パネルの面積の割合Xと容器の容量に対する容器の吸収容量の割合Yとの間で、Y=0.1329X+0.013 の関係式を満足すると共に、X=0.22以上となる範囲の大きさに設計した把手体をインサートした中空容器をブロー成形するか、もしくは、容器の内容量に対する容器の吸収容量の割合Yとネックリングより下の長さに対する減圧吸収パネルの長さの割合Xとの間で、Y=0.1061X+0.0075の関係式を満足すると共に、X=0.34以上となる範囲の大きさに設計した適正な把手体をインサートした中空容器をブロー成形することにより、限られた高さを有する容器に対して限度一杯にグリップ部を大きくして握り易くした把手体を装着すると共にヒートセットして、PET樹脂からなる耐熱性の適正な把手付き中空容器を成形する。
【0020】
【作用】
PET樹脂を射出成形により所定形状をしたプリフォームに成形した後、ブロー成形可能な温度に加熱したプリフォームを、容器の容量に対する容器の吸収容量の割合と、ネックリングより下の表面積対する減圧吸収パネルの面積の割合、または、ネックリングより下の長さに対する減圧吸収パネルの長さの割合との関係に基づいて計算した最適な形状に設計されたヒートセットが可能なブロー成形金型内にブロー可能に保持すると共に、前記ブロー成形金型により成形される中空容器に適合するように成形した把手体をインサート可能な状態に保持してから、前記プリフォームと把手体とを挟むように両側から成形金型を閉じる。
【0021】
続いて、前記閉じられた成形金型をブロー成形が可能な位置に移動してから、プリフォーム保持体に同軸状に設けられたブローピンを通してプリフォーム内に加圧空気を吹き込んでブロー成形を行うことにより、インサート材である前記把手の組付き梁片に設けられた嵌合突片及び組付け突部のアンダーカット部分を包み込むようにして容器本体の胴壁部に把手を強固に組付けると共に、前記アンダーカット部分の容器胴壁部をヒートセットして耐熱性を付与せしめて耐熱把手付き中空容器を成形する。
【0022】
【発明の実施の形態】
PET樹脂から所定形状をした種々の大きさの把手付き耐熱中空容器をブロー成形して、これらの耐熱中空容器に関して色々な実験を行った、そして、内容積別に容器の寸法、及び、ネックリング下の表面積とパネル寸法、減圧吸収パネルの面積と口頸部ネックリングより下の表面積等の割合等について、色々と詳しく調べてみたところ、表1に示すような関係があることが分かった。
【0023】
【表1】
【0024】
この表から明らかなように、表面上からは容器の容量が小さくなれば当然のことながら減圧吸収容量も小さくなるので、吸収パネルの面積及び寸法も小さくて済むことが分かるが、しかし、容器の寸法(ネックリング下の高さ)Hと減圧吸収パネルの長さPLとの割合(PL/H)の値は、0.34〜0.45の間にあって、その割合が大きくなればなる程、吸収量が大きくなるが、パネルが大きくなると容器に貼着するラベルの大きさや容器のデザイン等に制限がでてくる。
また、容器のネックリングより下の表面積Aと吸収パネルの面積aとの割合(a/A)の値についても同様で、0.22〜0.32の間にあって、その割合が大きくなる程、吸収量が大きくなるが、容器には大きさの制限が課せられる。
【0025】
そこで、減圧吸収パネルと容器の大きさの割合が大きくなると吸収容量が大きくなる点について色々と検討してみたところ、表1に示したものを、容器の容量別に、容器の容量と吸収容量との割合、容器とパネルの大きさの割合にまとめ直してみると、表2に示すような関係を得ることができた。
【0026】
【表2】
【0027】
通常、容器内に水が85℃で充填されたものを、水が最大密度となって体積が最も小さくなる4℃まで冷却した場合、容積1リットルに付き約31ccの体積変化があり、これに充填時に生ずるヘッドスペース分の約10ccがあって、これが内容液に溶け込むので、その吸収容量は約4%となるが、これが耐熱容器にとって最小限必要な吸収容量である。
【0028】
上記で取った10ccのヘッドスペースの容積は、充填時に内容液が容器の開口部から溢れ出て無駄になるのを防ぐために充填機を操作する都合上から決められるものであり、従って、このようなヘッドスペースの容量は容器の大小には関係しないものである。
そして、上記の割合は、容器が大きくなった場合には4%でも問題にはならないが、逆に容器が小さくなった場合には4%以上ないと、充填された容器が長い期間にわたって保管されていると、容器内の水分の透過等により容器が変形する可能性がでてくる。
【0029】
次に、上記表2に示した関係を基にして、容器の容量と吸収容量の割合に対するネック下の表面積とパネル面積の割合の関係について調べてみた結果、図1で表したような関係式 y=0.1329x+0.013 を得ることができた。
このことから、容器の表面積に対してパネル面積が大きくなると吸収容量の割合も大きくなるのが分かる。
従って、この数値が図中の一次回帰線より下側になると、容量が小さい容器の場合には、長期保管等で水分が透過して、容器が減圧変形する可能性がある。
【0030】
同様に、上記表2に示した関係を基にして、容器の容量と吸収容量の割合に対するネック下の長さとパネル長さの割合の関係を調べてみると、図2で表したような関係式 y=0.1061x +0.0075を得ることができた。
このことから、容器の長さに対するパネル長さも相関関係にあり、パネル長さの割合が大きくなると吸収容量の割合も大きくなることが分かる。
【0031】
以上の調査結果から、円筒形の耐熱容器の場合には、構造的には内外からの応力に対して強いが、表面積が小さくなるので、容器のネック下の寸法とパネル長さの割合が0.34以下になるか、または、容器のネック下の表面積とパネル面積の割合が0.22以下になると、容器の容量と吸収容量の割合が0.04(4 %)近くなって、小容量の容器では減圧変形をすることが分かる。
上記に説明したように、耐熱容器の吸収容量は、一般に使用されている大きさで容器で最小限約4 %程度は必要であるが、それよりも小さい小型の容器の場合には、5 〜6 %程度の吸収容量が必要であるから、この割合を保つためには、減圧吸収パネルの大きさを一定以上の大きさにしなければならないことが理解されよう。
【0032】
ところで、胴部が手で持ちにくいような容器に対しては、容器の上部の胴壁部に把手を設けて持ち易くする手段が取られているが、その場合、手で握り易い把手の構造とするには、親指を除いた4本の指を揃えた状態で把手板(グリップ部分)の下に入れて、親指との間で把手板を掴むことができる程度の大きさを有したものが適しているが、通常の大人の手にとってそのような把手は、把手板の長さが少なくとも70〜80mmが必要であり、特に大型の容器ともなれば更に長くなって、把手板の長さは85mm程度が最適なものとなる。
そして、これに把手が容器の胴壁に嵌合するアンダーカットが把手の上下に付随するので、把手の長さは90〜100 mm程度の長さになってしまう。
【0033】
しかし、現在使用されている耐熱容器の大半が、その内容物はジュース等のソフトドリンクであるから、これらはほとんどが冷却してから飲用に供されるので、冷蔵庫の収納棚の高さや販売店の陳列棚の高さに制限があることから、把手板の長さに合わせて容器の高さを高くすることができないので、現行の容器には上記のような大きさにした握り易い把手を装着することはできないことになる。
従って、逆に制限された容器の大きさに合わせた握り易い把手を設けることが必要となる。
【0034】
このような制限の下で実際に使用されている通常の容器としては、日本国内で流通しているものは300 mm程度の高さが最大であり、米国内で流通しているものは280 mm程度の高さが最大である。
これらの高さの数値は口頸部分の長さも入れた値であるから、その分を差し引くと更に低いものでなければならないので、現在一般に使用されている耐熱容器には、上記したような長さの構造をした把手を装着することは、現実的に不可能であった。
【0035】
【実施例】
種々の要件から高さの制限を受ける耐熱容器に対して、可能な限り握り易くした把手体を取り付けるには、以下のような方法により設計することができる。
米国で一般的に使用されている1ガロン入り容器(3789cc、約4リットル)を例にとって、前記したような関係からパネルの大きさの割合を算出してみると、容器の全体の高さ280 mmから口頸部の長さを引いたネックリング下の高さは前記した表1から265 mmであるから、これに見合う吸収パネルの大きさを設定するには、パネル部の最大径は154 mm程度にすることが必要となる。
【0036】
一般に、容器の吸収容量の割合として、通常の容量に対して設計上では約5%程度が取られていますが、上記した1ガロン入り容器の場合には、容器の全体の高さに対して胴径が大きいために、吸収容量が一定の割合にはならない。
そこで、容器の径と吸収容量との関係について調べてみると、図3に示すように、容器のネック下の長さとパネル部分の最大径との割合が小さくなると、容量に対しての減圧吸収容量の割合も減少傾向にあることが分かるので、このような径が大きい容器の場合には、容器の容量に対して6%程度の吸収容量を取る必要がある。
【0037】
上記したような理由に基づいて1ガロン入り容器の設計計算を行うと、図1の1次回帰線で求めた式、y=0.1329x+0.013 に於いて、y=0.06SU.点を求めるとx=0.354 (PL/H)となり、パネル長さPL=265 ×0.354 (mm)となり、PL=93.81 、即ち、吸収パネル部の長さとして約95 が必要となる。
また、容器に把手を取り付ける場合には、注ぎ易さの関係から把手は口元近くに付けることが必要であり、そして、ラベルは把手部には貼着することができないので、パネル部に貼着しなければならない。
【0035】
しかし、パネル部は減圧変形をするので、中空容器の下部胴壁面にラベルを貼るためには、パネル部の上下に約10mm程度のフラット部分を設けておかなければならず、また、それ以外にもラベルの保護部分を片側に10mmづつ設けるとなると、容器の胴部の高さは、95+10+10+10+10=135 (mm)が必要となる。
更に、この外に底部のヒール部で20mm、また、首部と肩部で20mmが必要であるから、全体で135 +20+20=175 (mm)が必要となり、この寸法を容器の全高Hから差し引くと、265 −175 =90(mm)となり、この寸法内に納まる把手を取り付ければよいことになる。
【0036】
上記の計算に基づいた把手付き容器を設計すると、図4に示したような容器になり、このような容器に於いては、把手体1は90mm以内の取り付け凹部3に装着しなければならないので、把手の握り板(グリップ)部2の長さGを可能な限り長くして、できる限り握り易くした把手を設けるためには、把手体1の取り付け部の上下部分にアンダーカットが無いものにすることにより、把手のグリップ部2の長さGを限度一杯の75mm程度のもにはすることができる。
このようにして設計して射出成形された把手体1は、出願人が先に提出した特願平10−199701号公報に記載するような方法によりヒートセットされて、耐熱性の把手付き合成樹脂製中空容器となる。
【0037】
尚、上記のように把手の取り付け部にアンダーカットが設けられていないものは強度的に弱くなることを避けることができないので、把手の取り付け部を強度的に強くしようとすると、図5に示すように把手体21の取り付け部24の上下にアンダーカット24a,24bを設けることが考えられる。
しかし、このような手段をとれば、アンダーカット部分にPET樹脂が絡み付くので、容器に把手を強く固定することはできるが、その反面、把手のグリップ部分22の長さGを大きく取ることができないので、図4に示したものに比べて更に小さな把手でなければならないことが理解できよう。
【0038】
【発明の効果】
本願発明は、容器の容量に対する容器の吸収容量の割合とネックリングより下の表面積対する減圧吸収パネルの面積の割合との関係、または、容器の容量に対する容器の吸収容量の割合とネックリングより下の長さに対する減圧吸収パネルの長さの割合との関係を求めておくことにより、成形しようとする容器の容量と必要とする吸収パネルの大きさを決めるので、容器の胴部高さと把手体の取り付け部の高さが決まり、それに合わせて把手の最大長さが決まるので、その結果に基づいてブロー成形金型を設計することにより、限られた寸法内で握り易い把手を設けた耐熱性の把手付き合成樹脂製中空容器に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】容器の吸収容量の割合と吸収パネル面積の割合を示す図である。
【図2】容器の吸収容量の割合とパネル長さの割合を示す図である。
【図3】容器の吸収容量の割合と容器の高さと径の割合を示す図である。
【図4】アンダーカットの無い握り易い把手を設けた容器を示す側面図である。
【図5】アンダーカットを設けた場合の比較例を示した側面図である。
【図6】本発明の先行例を示す側面図である。
【図7】図6に示す容器に用いた把手体の(a)側面図及び(b)正面図を示す図である。
【符号の説明】
1. 把手体
2. グリップ
3. 凹部
21. 把手体
22. グリップ
24 取り付け部
24a 上部アンダーカット部
24b 下部アンダーカット部
G グリップ長さ
PL パネル部長さ
Claims (5)
- 中空容器の中央より上部胴壁面に把手体をインサート成形して設けると共に、中央より下部胴壁面に減圧吸収パネルを設けてなる耐熱性の把手付きポリエチレンテレフタレート樹脂製のブロー成形容器に於いて、口頸部のネックリングより下の表面積(A)に対する減圧吸収パネルの面積(a)の割合X(=a/A)と容器の容量(V)に対する容器の吸収容量(Vk)の割合Y(=Vk/V)との間で、関係式Y=0.1329X+0.013を満足して、X=0.22以上となる範囲の大きさとなる中空容器とし、当該中空容器の上部胴壁面に把手体を設けてなることを特徴とする耐熱性の適正な把手付き合成樹脂製中空容器。
- 中空容器の中央より上部胴壁面に把手体をインサート成形して設けると共に、中央より下部胴壁面に減圧吸収パネルを設けてなる耐熱性の把手付きポリエチレンテレフタレート樹脂製のブロー成形容器に於いて、容器の容量(V)に対する容器の吸収容量(Vk)の割合Y(=Vk/V)とネックリングより下の長さ(PL)に対する減圧吸収パネルの長さ(H)の割合X(=PL/H)との間で、関係式Y=0.1061X+0.0075を満足して、X=0.34以上となる範囲の大きさとなる中空容器とし、当該中空容器の上部胴壁面に把手体を設けてなることを特徴とする耐熱性の適正な把手付き合成樹脂製中空容器。
- 前記上部胴壁面にインサート成形して設けてなる把手体の取り付け部の胴壁部がヒートセットされていることを特徴とする請求項1または2に記載する耐熱性の適正な把手付き合成樹脂製中空容器。
- 前記減圧吸収パネルを設けてなる下部胴壁面は、円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載する耐熱性の適正な把手付き合成樹脂製中空容器。
- 前記減圧吸収パネルを設けてなる下部胴壁面は、略四角形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載する耐熱性の適正な把手付き合成樹脂製中空容器。
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