JP4170647B2 - すべり抵抗部材およびボルト摩擦接合構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はすべり抵抗部材を用いた金属部材相互のボルト摩擦接合構造に関し、特に摩擦係数の信頼性およびコスト面で有利なすべり抵抗部材を提供する。
【0002】
【従来の技術】
従来、土木建築分野において被接合金属部材同士をボルト接合する場合には、被接合金属部材の摩擦面に次のような加工を施してすべり係数を確保している。すなわち、(a)グラインダーなどにより黒皮を除去した後、長時間放置して赤錆を発生させるか、または(b)ショットブラスト加工やグリッドブラスト加工を摩擦面に施して、表面粗さを50μmRy以上としている。
【0003】
しかし、現状の摩擦接合では赤錆またはショットブラスト等の加工表面のすべり係数に基づいているため摩擦係数が安定せず、摩擦係数の下限値である0.45よりも大きな値を接合部の設計に用いることができない。したがって、十分なすべり係数を確保するためにはボルトの本数が多くなり、スプライスプレートを含む接合部が大きくなってしまう。
【0004】
また、赤錆を発生させる場合には、所定のすべり係数を得るための赤錆発生の条件が目視による方法が取られており、その確認に個人差があるため信頼性の面で改善の余地がある。しかも、十分に赤錆を発生させる時間が確保できない場合は採用することができない。
さらに、グラインダーによって黒皮を除去する際にボルト穴周りの局部的な削りが0.3mm程度生じるため、この削られた部分によりスプライスプレートとの接触が不十分となる肌空きが生じうる点でも改善の余地がある。
【0005】
一方、ショットブラストやグリッドブラスト等のブラスト処理による方法は、作業の効率が高い反面で設備投資が必要となる。また、研削材の摩耗により粒度が変わりやすく、表面粗さ50μmRy以上を確保するための管理には多大な労力を要する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような問題点を解決するために、被接合金属板の摩擦面に直接凹凸を加工してすべり係数を増加し、ボルト摩擦接合の効率を改善する方法が考案されている。しかし、この場合には、被接合金属板の曲がりや反りにより、摩擦抵抗を伝える際に重要なボルト周辺での凹凸部の接触が不十分となるおそれがある点で問題がある。また被接合金属部材は、サイズ、板厚、ボルトの本数および間隔などに応じて注文生産され、一般的には同一規格で大量生産を行うことは困難である。したがって、被接合金属板に直接凹凸を加工をする場合には、作業工数が増加するためコスト面で不利になる。
【0007】
また被接合金属板の間に、接合面を粗面にしたすべり抵抗部材を挿入する方法も考案されている。しかし、ボルト穴を複数有するすべり抵抗部材では非接合金属部材ごとにボルト配置等は異なるため、多様な非接合金属部材に応じた多種類のすべり抵抗部材を生産することはコスト面で不利になる。
【0008】
一方、ボルトによる摩擦接合では、被接合金属部材の摩擦面の状態が接合部のすべり係数に大きい影響を与える。黒皮・浮きさび・塵埃・油・塗料・溶接スパッタなどが摩擦面に介在しているとすべり抵抗力は著しく低下するため、施工時における摩擦面の管理には多大な労力が要求される。
【0009】
特に摩擦接合面に錆び止めなどの塗装を施す場合には、摩擦抵抗力の低下を防止するため、摩擦面だけをシーリングして被接合金属部材を塗装する。そして、建設現場でのボルト接合後に改めて露出した摩擦面の境界部を塗装するため、作業が非常に煩雑となる。
【0010】
さらに、形鋼材を溶接で作成する際には一定の誤差が設計上許容されているので、形鋼材同士をボルトで摩擦接合する場合には誤差を如何にして吸収するかも大きな問題となる。例えば、1991年に改定された日本建築学会の鉄骨精度測定指針によれば、鋼板を溶接してH形鋼を作成する場合には、せい(H)の部分で±2mmから±4mmまでの誤差(ΔH)が許容されている。したがって、図6(c)に示すように、添板を用いてH形鋼のフランジ同士をボルトで摩擦接合する場合には、添板とフランジとの間に誤差(ΔH)による隙間が生じてしまい、本来要求されるすべり抵抗の性能を発揮できないこともある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の従来技術における課題を解決するために、本発明のすべり抵抗部材は、1つのボルト穴が開孔された板状の鋼材からなるすべり抵抗部材であって、前記すべり抵抗部材の両面には断面略三角形状の凸部が波状に連続する凹凸加工が施され、前記凸部の先端には エッジが形成されており、前記凹凸加工の形状は中央部のボルト穴を中心として波線による縞模様状であって、前記すべり抵抗部材の形状は、前記ボルト穴を中心として接合時に使用される座金径の1倍から2倍の円形を包絡する形状であって、隣接するボルト接合部のすべり抵抗部材と干渉しない大きさに設定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のすべり抵抗部材は、表層部の硬さの層の深さが0.2mm以上であり、また凹凸加工の表面硬さは、被接合金属部材の表層部の硬さとの比が2.5以上となるように設定され、かつ凸部の高さを0.2〜1.0mmとするのが好ましい。また、凸部先端の角度が70度から110度であることが好ましく、特に好ましくは90度である。
【0013】
また、本願のすべり抵抗部材の凹凸加工の形状は、(A)縞模様状、(B)中央部のボルト穴を中心とした同心円状、(C)中央部のボルト穴を中心として相似形の正方形が連続する角型状、(D)中央部のボルト穴を中心とした放射状(E)波線による縞模様状、に形成されるのが好ましい。
【0014】
さらに、本願のすべり抵抗部材が挟まれた状態で、2つの被接合金属部材をボルト接合する場合には、被接合金属部材におけるすべり抵抗部材との接触面に、塗装、防食被覆等の被膜を形成してもよい。また、2つの被接合金属部材をボルト接合する前に、一方の被接合金属部材とすべり抵抗部材とをボルト穴の位置を合わせた状態で仮付けしておいてもよい。
【0015】
前記のボルト摩擦接合においては、ボルト接合部の一方のすべり抵抗部材の厚みを他方より厚くして、2つの被接合金属部材の段差をボルト接合部で吸収するようにしてもよい。特に、2枚以上のすべり抵抗部材を重ね合わせて、すべり抵抗部材の厚みを他方より厚くするようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本願の実施の形態を説明する。図1は、本発明におけるすべり抵抗部材を用いたボルト摩擦接合構造を示した図である。図2から図4は、本願のすべり抵抗部材の例を示したものである。
【0017】
本願のすべり抵抗部材は、1つのみボルト穴が開孔された板状体の両面に凹凸加工を施したものであり、鋼材で形成されている。すべり抵抗部材の形状は、ボルト穴を中心として接合時に使用される座金径の1倍から2倍の円形を包絡する形状であって、隣接するボルト接合部のすべり抵抗部材と干渉しない大きさに設定するのが好ましい。例えば、図2(b)に示すように、座金径の1倍から2倍の円を内接する正方形状であってもよい。また正方形状に限定されることなく六角形などの多角形であってもよい[図示を省略する]。
【0018】
これは、一般にボルト締結時における摩擦接合面への力の分布は座金径の2倍以内とされているため、十分なすべり係数を得るためには座金径の1倍から2倍の円形を包絡した形状とするのが設計上好ましいからである。一方で、すべり抵抗部材の大きさを制限するのは、隣接するボルト接合部のすべり抵抗部材同士が干渉する場合は、ボルト配置の異なる被接合金属部材においてすべり抵抗部材を共有できなくなり、コストが上昇するためである。
【0019】
本願のすべり抵抗部材の両面には、断面略三角形状の凸部が波状に連続する凹凸加工が施されており、ボルト締結時にすべり抵抗部材の凸部が非接合金属部材にかみ込むことで、すべり抵抗が増加するようになっている。
【0020】
そして、凹凸加工の各凸部の先端は尖った形状(突起の頂部の平坦幅は0で、かつ先端にRを帯びていない形状)であり、各凸部の先端にはエッジが形成されている。凹凸加工の凸部先端の角度(鋭利さ)は、特に限定するものではないが、すべり抵抗力が0.9から1.0(ボルトの軸力と同じすべり抵抗力)を確保できる70度から110度の範囲が好ましい。なかでも特に90度が一番安定しており好ましい。その理由は、すべり抵抗部材の凸凹加工の各凸部先端の角度が小さすぎる場合にはすべり抵抗力は増すが、各凸部先端が非接合金属部材とのせん断力に対抗できずに破壊されるおそれがあるからである。一方、各凸部先端の角度が大きすぎる場合には、被接合金属部材への各凸部先端のかみ込みが少なくなるため、すべり抵抗力が低下するからである。
【0021】
なお、突起角度の適正な範囲を70〜110度とする理由は、さらに次のような理由がある。すなわち、角度が小さくなると、突起形状の加工において非常に精密かつ高度な技術が必要とされ、本構造のような量産化が要求されるような場合には適さない。また、角度が大きな場合には突起を成形するために、より大きなエネルギーを必要とし、低コストかつスピーディーに突起を加工することが困難となるからである。
【0022】
すべり抵抗部材の凹凸加工の形状例としては、(A)縞模様状[図2参照]、(B)中央部のボルト穴を中心とした同心円状[図3a参照]、(C)中央部のボルト穴を中心として相似形の正方形が連続する角型状[図3b参照]、(D)中央部のボルト穴を中心とした放射状[図4参照]、(E)波線による縞模様状[図5参照]などが挙げられる。上記した凹凸加工の形状例のうち、摩擦方向に対して直行する縞模様、特に波線による縞模様とした場合が最もすべり抵抗を高めるが、その他の方向性の少ない凹凸部模様でも、安定した高いすべり係数を得ることが可能である。また、高さがやや異なり、形状が相似的あるいは近似的であるものが連続的に繰り返すように設けてもよい。かかる突起の成形加工は切削加工、レーザー加工、ローレット加工、プラズマ加工により可能である。
【0023】
ここで、すべり抵抗部材の凹凸加工の表面硬さが被接合金属部材の表面硬さを上回る場合には、被接合金属板へ凸部がかみ込み易くなるため、凹凸加工の表面硬さは、被接合金属部材の表面硬さよりも硬く設定されるのが好ましい。特に本発明におけるすべり係数に関連する要素として、すべり抵抗部材における摩擦面の表層部の硬さと、被接合金属部材の摩擦面の表層部の硬さとの差、およびすべり抵抗部材の表面に設ける複数の凸部の高さが大きく関与する。このことから、すべり抵抗部材の硬さと、被接合金属部材の表層部の硬さとの比を2.5以上とし、また凸部の高さを0.2〜1.0mmとする。
【0024】
また、本願において、すべり抵抗部材の厚さに関連して、上下の表面に設けた突起の谷部底間の長さは、強度の点から約1mm程度あればよいが、高力ボルトの長さが、あまり長くならない範囲で1mm以上の厚さにすることは差し支えない。すべり抵抗部材の全体の厚さは、かかる突起の谷部底間の長さと上下の突起高さとの和となる。
【0025】
さらに、すべり抵抗部材の長手方向における、上の表面の突起の谷部底と、下の表面の突起の谷部底との相対的な位置関係(位相)は、上述したように、突起の谷部底の長さが約1mm以上あれば、両面で一致していてもよく、また片面の凸部先端に反対面の凹部底が位置するようにしてもよい(図2c、図3c、図3d参照)。すなわち、上の表面の突起の谷部底と、下の表面の突起の谷部底とが上下方向で重なっても、強度上破損等の心配はない。
【0026】
本願のボルト摩擦接合構造は、ボルト穴を開孔した2つの被接合金属部材の間に上記のすべり抵抗部材を各ボルト穴毎に挿入して、被接合金属部材の外側からボルトとナットとを締結することで構成される。ボルト摩擦接合構造は、ボルト締結時にすべり抵抗部材の凸部が非接合金属部材にかみ込むことで、大きなすべり抵抗を得る。したがって、被接合金属部材の表面状態について説明すると、被接合金属部材の表面は、機械仕上げ面ほど平滑でなくてもよく、ショットブラスト処理かサンダー掛け処理にて十点平均粗さRz(DIN)で70μm以下程度に、最大突起高さで表示すると0.1mm以下程度に仕上げてあればよい。また、特に処理を施さずに、黒皮のままであっても表面の粗さとしてよい場合もある。つまり、被接合母金属板の表面は、ショットブラストやグリッドブラスト等のブラスト処理が施された状態、赤錆が発生した状態、または塗装、防食被覆等の被膜が形成された状態のいずれであってもよい。
【0027】
また、すべり抵抗部材は、ボルト穴1つに対して1つの部材が配置され、かつ隣接するボルト接合部のすべり抵抗部材とは干渉しない大きさに設定されている。したがって、被接合金属部材のボルト配置が異なる場合でもすべり抵抗部材を共用できる。
さらに、すべり抵抗部材を、スポット溶接または接着等の手段によって一方の被接合金属部材の接合面に予め仮り付けしておいてもよい。例えば、高所作業時など作業性の悪い場所では、すべり抵抗部材を現場で取り付ける必要がなくなるため、作業効率が向上する。
【0028】
図6は、誤差のある被接合金属部材を添板で挟み込んでボルトにより摩擦接合する場合に、本願のすべり抵抗部材を用いた例を示したものである。
【0029】
図6では、被接合金属部材に誤差(ΔH)がある場合において、ボルト接合部の一方のすべり抵抗部材の厚みを他方より厚くして、添板と被接合金属部材との隙間がすべり抵抗部材で埋められている。したがって、被接合金属部材に誤差などにより段差が生じる場合でも、添板および被接合金属部材にすべり抵抗部材が確実にかみ込むので、ボルト摩擦接合構造に要求される性能が発揮される。
【0030】
なお、すべり抵抗部材の厚さの調整は、図6(a)に示すように、厚さの異なるすべり抵抗部材を数種類用意し、適宜選択して用いてもよい。また、図6(b)に示すように、2枚以上のすべり抵抗部材を重ね合わせて、すべり抵抗部材の厚みを調整するようにしてもよい。
【0031】
なお、図7から図10は、本願の実験例を示したものである。
【0032】
<実験例1:硬さ比・突起高さとすべり係数との関係>
硬さ比と凸部の突起高さを変え、すべり係数の関係について試験した。図7においてその試験例を説明する。図7の試験では、2枚の被接合金属部材の継ぎ目を、すべり抵抗部材を介して鋼製の添板で両側から挟み込み、高力ボルトで固定する形式のすべり試験体を用いた。そのすべり試験体の寸法につき、被接合金属部材(鋼材)は幅100mm、長さ370mm、厚さ25mm、添板は幅100mm、長さ350mm、厚さ16mm、すべり抵抗部材は幅100mm、長さ350mm、厚さ2mm(上下の表面に設けた突起の高さ頂部間の長さ)である。図7において、(注)等によりその他の試験条件を示す。
【0033】
その結果、図7に示すように、(1)すべり抵抗部材と被接合金属部材との硬さ比の増加に伴ってすべり係数も増大するが、硬さ比が2.5を越えるとすべり係数はほとんど増加しない。(2)0.5mmから1.0mmの範囲のある突起高さまでは、突起高さの増大に伴ってすべり係数は増大するが、それ以上の突起高さについてはすべり係数は減少する。(3)0.9以上のすべり係数を確保するためには、硬さ比は2.5以上かつ突起高さが0.2mm以上必要である。かかる試験例等から、表層部の硬さの比を2.5以上とし、また、突起の高さを0.2〜1.0mmとすることとした。表層部の硬さの比は大きくしても、すべり係数はそれに応じてあまり増加しないことに鑑み、この比の上限は5程度あればよい。また、表層部の硬さがあまり硬いと割れのおそれがあり、力学的性能上安全性に問題が生じるということからも、この比の上限は5程度がよい。なお、すべり抵抗部材の両側の表層部の硬さ、突起の高さは、同一にせずに、異なる数値とする場合がある。凸部の突起の形状についても、同様である。
【0034】
<実験例2:すべり抵抗部材の硬い層の深さとすべり係数との関係>
本発明のすべり抵抗部材では、摩擦面の表層部の硬さの大なる層の深さは0.2mm以上とするのが望ましい。ここでいう層の深さは、突起の頂部を起点として突起の高さ方向に測定した長さである。硬さの大なる層の深さについても、試験を行い、その結果を図8により説明する。
【0035】
図8は突起高さ0.5mmの場合であり、硬い層の深さを変化させたが、その他の試験条件は実験例1(図7)におけるものと同様である。その結果、(1)表層部の硬い層の深さが0.2mm以上において、すべり係数にほとんど変化がない。(2)硬い層の深さが0.2mm以上の場合にすべり係数0.9以上の確保が可能である。(3)鋼材全厚にわたって硬くなくても、摩擦面表面から0.2mm以上の層で硬さ比が確保できていればよい。
【0036】
以上を踏まえて、本発明における表層部の硬さについて、その層の深さは少なくとも表面から0.2mm以上とすればよい。設計上、層の深さの長さについては、突起の高さの長さがあれば充分である。ただし、層の深さの長さの上限ということでは、鋼材全厚にわたり硬さが大なる鋼材を使用してもよい。なお、突起部の硬化処理は切削加工を行う場合は、突起の成形加工後に熱処理により行うのがよい。真空熱処理、浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れ、火炎焼入れ、等の方法を適宜選定して行う。レーザー加工またはプラズマ加工により突起の成形加工を行う場合は、加工に伴う突起部の急冷により硬化が行われる。すべり抵抗部材(硬さの大なる側の鋼材)には、焼入れ可能な鋼、例えばSCM435やS45C等を使用する。また、高強度鋼や耐磨耗鋼さらに表層のみに硬さが大きな鋼を備えた複層鋼板等も使用できる。
【0037】
<実験例3:非接合金属部材の表面状態とすべり係数との関係>
被接合金属部材(硬さの小なる鋼材)の表面状態について、図9により、さらに具体的に説明する。図9は被接合金属部材の表面状態をパラメーターにしたすべり試験について示す。ここで、すべり試験体は実験例1において示したのと同様の形状、寸法のものであり、図7において記載する試験条件により試験を行った。その結果、次の通りである。
(1)被接合金属部材の摩擦面の状態に関わらず、0.9以上のすべり係数の確保が可能である。このことは、被接合金属部材に塗膜処理、グリース処理等を施したものについても、すべり係数0.9以上の確保が可能であることを意味する。
(2)すなわち、加工工場段階で摩擦面に錆止め塗装等の防錆処理を施すことが可能である。
(3)したがって、被接合金属部材の摩擦面の表面状態にかなりの柔軟性があるとともに、現在行っている塗装時の摩擦面のマスキング等の処理も不要になることから、加工や施工の省力化、工程短縮が図られる。さらに、摩擦面の管理に特別な技能・技術を要しないことから施工品質の確保が容易となる。
【0038】
<実験例4:凸部の突起角度とすべり係数との関係>
図10により、突起において相対する斜面のなす角度である突起角度と、すべり係数との関係を示す。図10は、すべり抵抗部材の表層部に、長手方向に沿って三角形の波形状の突起を設けた場合であり、試験条件について、図10において示す。
(1)すべり係数は突起角度が90度付近で最大となり、それよりも突起角度が大きくなるにつれ、また小さくなるにつれ、すべり係数は小さくなる。
(2)突起角度は60度から120度の範囲で0.9以上のすべり係数の確保が可能である。
【0039】
【発明の効果】
本発明のすべり抵抗部材は、断面略三角形状の凸部が波状に連続する凹凸加工が両面に施され、かつ凸部の先端にはエッジが形成されている。したがって、凸部が被接合金属板に食い込むことで、接合面の摩擦(すべり)抵抗力が大幅に高まる。これにより、接合部分に使用されるボルトの数を減少させることができ、現場におけるボルト施工作業が簡素化できる。また、すべり抵抗部材の凹凸加工は、工場での生産時になされ、かつショットブラスト加工やグリッドブラスト加工等に比べてバラツキが少なく管理も容易であるため、摩擦係数の信頼性は向上する。特に波線による縞模様としたので、すべり抵抗を高めることができる。
【0040】
本発明では、ボルト締結時にすべり抵抗部材の凸部が非接合金属部材にかみ込むことですべり抵抗を得るため、非接合金属部材における摩擦接合面の状態は問われない。すなわち、摩擦接合面にも塗装、防食被覆等の被膜を形成することが可能であり、作業工数を著しく減少させることができる。
【0041】
また本発明では、ボルト穴が1つのみ開孔され、かつ隣接するボルト接合部のすべり抵抗部材と干渉しない大きさに設定されたすべり抵抗部材を用いる。2つの被接合金属部材をボルト接合する場合には、被接合金属部材間の各ボルト穴毎にすべり抵抗部材を配置して使用できる。すなわち、被接合金属部材のボルト配置が異なる場合でもすべり抵抗部材を共用できるため、すべり抵抗部材の標準化(小サイズ化)による大量生産が実現でき、コスト面で非常に有利である。
【0042】
さらに本発明では、ボルト接合部の一方のすべり抵抗部材の厚みを他方より厚くすることで、2つの被接合金属部材の誤差により生じる段差をボルト接合部で吸収できるようになっている。したがって、添板と被接合金属部材との隙間がすべり抵抗部材で埋められるので、被接合金属部材に誤差がある場合でもボルト摩擦接合構造に要求される性能が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のすべり抵抗部材を用いたボルト摩擦接合構造を示した図である。
【図2】 (a)円形状の板状体に縞模様状の凹凸加工を施したすべり抵抗部材であり、
(b)は矩形状の板状体に縞模様状の凹凸加工を施したすべり抵抗部材である。
また(c)は、(a)および(b)の断面図例である。
【図3】 (a)円形状の板状体に同心円状の凹凸加工を施したすべり抵抗部材であり、
(b)は円形状の板状体に角型状の凹凸加工を施したすべり抵抗部材である。
また(c)は(a)の断面図例であり、(d)は(b)の断面図例である。
【図4】 (a)円形状の板状体に放射状の凹凸加工を施したすべり抵抗部材である。
(b)は(a)の断面図例である。
【図5】 (a)円形状の板状体に波線による縞模様状の凹凸加工を施したすべり抵抗部材である。(b)は(a)の断面図例である。
【図6】 (a)は添板を用いたボルト摩擦接合において、厚さの異なるすべり抵抗部材を用いた例を示す横断面図であり、(b)は(a)において2枚のすべり抵抗部材を重ね合わせた例を示す図である。(c)はH形鋼を添板を用いてボルト摩擦接合する場合において、誤差による隙間が生じる状態を示した図である。
【図7】 硬さ比・突起高さとすべり係数との関係を示した図である。
【図8】 すべり抵抗部材の硬い層の深さとすべり係数との関係を示した図である。
【図9】 非接合金属部材の表面状態とすべり係数との関係を示した図である。
【図10】 凸部の突起角度とすべり係数との関係を示した図である。
【符号の説明】
1 ボルト
2 ワッシャー
3 非接合金属部材
4 すべり抵抗部材
5 ナット
6 H形鋼
7 添板
Claims (9)
- 1つのボルト穴が開孔された板状の鋼材からなるすべり抵抗部材であって、前記すべり抵抗部材の両面には断面略三角形状の凸部が波状に連続する凹凸加工が施され、前記凸部の先端にはエッジが形成されており、前記凹凸加工の形状は中央部のボルト穴を中心として波線による縞模様状であって、前記すべり抵抗部材の形状は、前記ボルト穴を中心として接合時に使用される座金径の1倍から2倍の円形を包絡する形状であって、隣接するボルト接合部のすべり抵抗部材と干渉しない大きさに設定されていることを特徴とするすべり抵抗部材。
- すべり抵抗部材の表層部の硬さの層の深さが0.2mm以上であり、また凹凸加工の表面硬さは、被接合金属部材の表層部の硬さとの比が2.5以上となるように設定され、かつ凸部の高さを0.2〜1.0mmとしたことを特徴とする請求項1に記載のすべり抵抗部材。
- 凸部先端の角度が70度から110度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のすべり抵抗部材。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載されたすべり抵抗部材が挟まれた状態で、2つの被接合金属部材がボルト接合されてなることを特徴とするボルト摩擦接合構造。
- 被接合金属部材におけるすべり抵抗部材との接触面に、塗装、防食被覆等の被膜が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のボルト摩擦接合構造。
- 一方の被接合金属部材とすべり抵抗部材とがボルト穴の位置を合わせた状態で仮付けされていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のボルト摩擦接合構造。
- ボルト接合部の一方のすべり抵抗部材の厚みを他方より厚くして、2つの被接合金属部材の段差をボルト接合部で吸収してなることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のボルト摩擦接合構造。
- 2枚以上のすべり抵抗部材を重ね合わせて、すべり抵抗部材の厚みを他方より厚くしたことを特徴とする請求項7に記載のボルト摩擦接合構造。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のすべり抵抗部材が挟まれた状態で、2つの被接合金属部材がボルト接合されてなり、前記ボルト接合部において、一方のすべり抵抗部材の厚みを他方より厚くし、または、2枚以上のすべり抵抗部材を重ね合わせてすべり抵抗部材の厚みを他方より厚くして、2つの被接合金属部材の段差をボルト接合部で吸収してなることを特徴とするボルト摩擦接合構造。
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