JP4170273B2 - ダイカスト金型補修用粉末およびこれを用いたダイカスト金型の補修方法 - Google Patents
ダイカスト金型補修用粉末およびこれを用いたダイカスト金型の補修方法 Download PDFInfo
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係る損傷部分を補修するため、硬質金属や耐熱合金からなる溶接棒を用いるTIG溶接が行われている。しかし、TIG溶接は、ワイヤ加工できる金属や合金に限定されるため、耐熱性および高硬度を求められる上記損傷部分の補修には不向きで、且つ損傷部分の位置によっては溶接できないこともあった。
ところで、金型などの補修に用いる溶接用超硬合金が提案されている。これは、総含有量が25〜45wt%のCoおよび/またはNiからなる結合材中に粒径0.3〜3μmのWC微粉末を均一に分散させている(例えば、特許文献1参照)。
また、金型などの耐磨耗性を向上させるため、係る金型などの表面に粉体プラズマアーク溶接にて形成した溶接肉盛部を有する合金複合部材も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
即ち、本発明のダイカスト金型補修用粉末(請求項1)は、NbC、VC、およびWCの少なくとも1種以上からなり総計で10wt%以下の炭化物と残部がNi−Cr−Mo系耐熱合金とからなる合金粉末、あるいは、粉径15μm以下の上記炭化物の粉末:10wt%以下と、残部:上記Ni−Cr−Mo系耐熱合金の粉末と、の混合粉末である、ことを特徴とする。
上記CoおよびWの添加理由を説明する。
Co:13wt%以下、Coは、高温強度を高めるため添加するが、13wt%を越えると脆性化を招くため、これ以下とした。その下限は、0.1wt%である。
W:5wt%以下、Wも、高温強度を高めるために添加するが、5t%を越えると脆性化を招くため、これ以下としたもので、その下限は、0.1wt%である。
ここで、上記Ni−Cr−Mo系耐熱合金の各元素の添加理由を説明する。
Cr:10〜30wt%、Crは、耐熱性および耐酸化性を高めるために添加され、係る効果を得るために10wt%以上添加するが、30wt%を越えると、固溶せず析出し始めるため、これ以下とした。
Mo:10wt%以下、Moは、高温強度および耐食性を高めるために添加するが、10wt%を越えると、係る効果が飽和するため、これ以下とした。尚、その下限値は、約0.1wt%である。
Fe:3wt%以下、Feは、不純物として不可避的に入るが、3wt%を越えると、耐食性が低下するため、これ以下とした。
NbおよびTaの合計:3〜4wt%、NbおよびTaは、結晶粒界強化のために添加され、係る効果を得るために3wt%以上添加するが、4wt%を越えると脆性化を招くため、これ以下とした。尚、その下限値は、約0.05wt%である。
上記Ni−Cr−Mo系耐熱合金の各元素の添加理由を説明する。
Si:0.5wt%以下、Siは、脱酸作用を得るために添加するが、0.5wt%を越えると、脆性化を招くため、これ以下とした。
Mn:0.3wt%以下、Mnも、脱酸作用を得るために添加するが、0.3wt%を越えると、肉盛り溶接時に酸化を招くため、これ以下とした。
C:0.10wt%以下、Cは、結晶粒界強化のために添加するが、0.10wt%を越えると、脆性化を招くため、これ以下とした。
S:0.01wt%以下、Sは、不純物として不可避的に入るが、0.01wt%を越えると、粒界に析出して脆くするため、これ以下とした。
Al:3.0wt%以下、Alは、Ni3(Al,Ti)の分散強化のため添加するが、3.0wt%を越えると脆性化するため、これ以下とした(下限値は0.01wt%)。
Ti:3.5wt%以下、Tiも、Ni3(Al,Ti)の分散強化のため添加するが、3.5wt%を越えると脆性化するため、これ以下とした(下限値は0.01wt%)。
尚、上記Ni−Cr−Mo系耐熱合金に、Co:13wt%以下と、W:5wt%以下とを含むもの、または、Cr:10〜30wt%、Mo:10wt%以下、Fe:3wt%以下、NbおよびTaの合計:3〜4wt%、および残部Niであるもの、あるいは、Si:0.5wt%以下、Mn:0.3wt%以下、C:0.10wt%以下、S:0.01wt%以下、Al:3.0wt%以下、およびTi:3.5wt%以下を更に含むものを用いた、ダイカスト金型の補修方法も本発明に含めることが可能である。
また、前記ダイカスト金型補修用粉末(請求項2〜4)によれば、上記効果を一層確実に発揮せしめることができる。
更に、前記ダイカスト金型の補修方法(請求項5)によれば、ダイカスト金型の表面改質や損傷部分などを確実に補修できると共に、耐ヒートチェック性や耐溶損性などの耐久性に優れた補修部などを得ることができる。
あるいは、それぞれ個別に作製した粉径15μm以下で且つ総計が10wt%以下の上記炭化物からなる粉末と、上記Ni−Cr−Mo系耐熱合金の粉末とを、公知のブレンダにより均一に混合した混合粉末を作製する。
次いで、図1に示すように、ダイカスト金型Kにおいて、アルミニウム合金の溶湯を繰り返しダイカスト鋳造して溶損したキャビティに連通する湯口付近の欠け部に対し、図1に示す溶接トーチTを用いてプラズマアーク溶接による粉末肉盛溶接を行う。尚、ダイカスト金型Kには、例えばシリンダブロック用やクランクケース用などがある。
上記溶接トーチTの流路4には、前記合金粉末pまたは混合粉末pがホッパHから搬送管7を経て送給され(送給するステップ)、キャリアガスとの混合物8となり、溶接トーチTの先端で中心部のプラズマアークPにより溶解されつつ当該溶接トーチTから上記欠け部に肉盛り溶接Wされる(肉盛溶接するステップ)。
尚、上記混合粉末pを用いる場合、2つのホッパHに予め個別に貯留した前記炭化物の粉末と前記合金粉末pとを、途中で合流させてから上記溶接トーチTに送給するようにしても良い。
係る溶接肉盛り部Wは、Ni−Cr−Mo系耐熱合金の生地中に比較的少量の上記炭化物がほぼ均一に分布していため、硬さが過大に上がらないと共に、靭性および耐熱性が向上する。このため、アルミニウム合金の溶湯を繰り返しダイカスト鋳造しても、これに伴うヒートチェック(割れ)や溶損を確実に低減することが可能となる。尚、上記溶接肉盛り部は、その外周面を適宜研削しても良い。
実施例1〜7用のNi−Cr−Mo系耐熱合金などの合金粉末に対し、表1に示す粉径10μm以下の炭化物を表1の重量でそれぞれ混合することにより、実施例1〜7の混合粉末を得た。
そして、各例の試験片を観察し、発生したヒートチェックの総長さ、平均長さなどを測定し、それらの結果を表2および図2〜5のグラフに示した。また、各例の肉盛溶接部の硬度および溶損(面積)率も測定し、表2に示した。
以上のような実施例1〜7の結果によって、本発明の作用が理解され且つ効果が裏付けられた。
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、前記合金粉末または混合粉末は、水アトマイズ法や鋳塊を粉砕する方法にって作製したり、更に分級を加えて作製しても良い。
また、ダイカスト金型の表面改質についても、本発明の補修用粉末を適用することが可能である。
K…ダイカスト金型
T…溶接トーチ
P…プラズマアーク
Claims (5)
- NbC、VC、およびWCの少なくとも1種以上からなり総計で10wt%以下の炭化物と残部がNi−Cr−Mo系耐熱合金とからなる合金粉末、
あるいは、粉径15μm以下の上記炭化物の粉末:10wt%以下と、残部:上記Ni−Cr−Mo系耐熱合金の粉末と、の混合粉末である、
ことを特徴とするダイカスト金型補修用粉末。 - 前記Ni−Cr−Mo系耐熱合金は、Co:13wt%以下と、W:5wt%以下とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト金型補修用粉末。
- 前記Ni−Cr−Mo系耐熱合金は、Cr:10〜30wt%、Mo:10wt%以下、Fe:3wt%以下、NbおよびTaの合計:3〜4wt%、および残部Niである、ことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト金型補修用粉末。
- 前記Ni−Cr−Mo系耐熱合金は、Si:0.5wt%以下、Mn:0.3wt%以下、C:0.10wt%以下、S:0.01wt%以下、Al:3.0wt%以下、およびTi:3.5wt%以下を更に含む、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のダイカスト金型補修用粉末。 - NbC、VC、およびWCの少なくとも1種以上からなり総計で10wt%以下の炭化物と残部がNi−Cr−Mo系耐熱合金とからなる合金粉末、あるいは、粉径15μm以下の上記炭化物の粉末:10wt%以下と、残部:上記Ni−Cr−Mo系耐熱合金の粉末と、の混合粉末であるダイカスト金型補修用粉末を用い、
上記ダイカスト金型補修用粉末を溶接トーチに送給するステップと、
送給された上記ダイカスト金型補修用粉末をプラズマアークにより溶解しつつダイカスト金型の欠け部または表面に対して肉盛溶接するステップと、を含む、
ことを特徴とするダイカスト金型の補修方法。
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