JP4169416B2 - ケーブル架設用エクステンドコイル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種ケーブルを架設する場合に使用するエクステンドコイル及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、ケーブルの架設作業を簡略化すると共に、架設作業時及び架設後においてケーブルを安定状態で保持することを可能にしたケーブル架設用エクステンドコイル及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、通信用ケーブルやテレビ用ケーブル等の各種ケーブルを架設する場合、電柱間に抗張材としてメッセンジャーワイヤを張設し、このメッセンジャーワイヤにケーブルハンガー等の金属製吊具を50〜60cmの間隔で1個ずつ取り付けながらケーブルを並列に懸架させている。
【0003】
しかし、上記ケーブル架設工事は、作業者が多数の金属製吊具を所持し、これら吊具をメッセンジャーワイヤの長手方向に沿って50〜60cmの間隔で移動しながら取り付けていくものであり、しかも吊具の取付け作業を高所で行うため、多大な時間と労力を要し、かなりの熟練を要する作業であった。
【0004】
近年、ケーブル架設工事を簡略化する手法として、合成樹脂を主体とする材料から連続螺旋状に成形された伸縮自在のチェーンコイルを用いることが提案されている。チェーンコイルを用いてケーブルを架設する場合、メッセンジャーワイヤにチェーンコイルを外挿し、このチェーンコイルをメッセンジャーワイヤに沿って伸長させると同時にコイル内側にケーブルを延線し、そのまま固定することが可能であるので、ケーブルの架設作業性を著しく向上することができる。
【0005】
しかしながら、上述のように伸縮自在のチェーンコイルは、架設作業が簡単であるという利点があるものの、その反面、メッセンジャーワイヤに対する留め具が外れたり、或いは火災や事故等により一部が切断された場合、コイルが収縮してケーブルが垂れ下がってしまうという問題があった。また、チェーンコイルを伸長させながらケーブルを架設する際に、固定された後端部が外れたり、伸長させた先端部を不意に放したりすると、弾性伸縮力によりチェーンコイルが元の長さに収縮してしまうため、ケーブル架設作業を初めからやり直さなければならず、その作業性が悪いという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ケーブルの架設作業を簡略化すると共に、架設作業時及び架設後においてケーブルを安定状態で保持することを可能にしたケーブル架設用エクステンドコイルを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明のケーブル架設用エクステンドコイルは、螺旋状に成形された金属線の表面に合成樹脂を被覆して非伸長時の長さが500〜2000mmの範囲にあるコイル本体を構成すると共に、該コイル本体を非伸長時の長さの10倍以上に伸長させたとき前記金属線が永久変形するような物性を備え、該コイル本体を非伸長時の長さの10倍〜80倍の範囲で前記金属線が永久変形するまで伸長させた状態で該コイル本体の内側にケーブルを支持するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、電柱間に張設されたメッセンジャーワイヤや既設ケーブル等の抗張材に螺旋状のエクステンドコイルを外挿し、このエクステンドコイルを抗張材に沿って伸長させると同時にコイル本体の内側にケーブルを延線し、そのまま固定することが可能であるので、ケーブルの架設作業性を著しく向上することができる。
【0009】
しかも、上記エクステンドコイルにはコイル本体を伸長させたとき金属線が永久変形するような物性が付与されているため、メッセンジャーワイヤや既設ケーブル等の抗張材に対する留め具が外れたり、火災や事故等により一部が切断された場合であっても、永久変形した金属線の強度に基づいてケーブルの垂れ下がりを防止することが可能であり、ケーブルを長期間にわたって安定した状態で保持することができる。また、ケーブル架設作業時にエクステンドコイルの固定された後端部が外れたり、伸長させた先端部を不意に放しても、エクステンドコイルが元の長さに収縮してしまうことがないので、ケーブル架設作業を効率良く行うことができる。
【0010】
一方、本発明のケーブル架設用エクステンドコイルの製造方法は、金属線を螺旋状に成形した後、該金属線を溶融状態又は粉末状態の合成樹脂に接触させると共に、該合成樹脂を前記金属線の表面に溶融状態で付着させ、次いで該合成樹脂を硬化させることを特徴とするものである。
【0011】
このように金属線を螺旋状に成形した後、金属線の表面に合成樹脂を溶融状態で付着させ、これを硬化させることにより、合成樹脂を内部歪みを形成することなく金属線の表面に被覆することができる。そのため、コイル本体を伸長させた状態において、外皮を構成する合成樹脂にひび割れを生じ難くなるので、雨水等の浸入による金属線の腐食を防止し、エクステンドコイルの強度を長期間にわたって維持することが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態を参照して具体的に説明する。
図1〜図4は本発明の実施形態からなるケーブル架設用エクステンドコイルを例示するものである。
【0013】
図1に示すように、エクステンドコイル10は螺旋状に成形したコイル本体1を備え、該コイル本体1の両端部にそれぞれ電柱或いはメッセンジャーワイヤや既設ケーブル等の抗張材に対して固定するためのスリーブ2が連結された構成になっている。このように成形されたエクステンドコイル10は、ケーブル架設工事に使用する前の無負荷の非伸長状態では長さLO であるが、ケーブルの架設に使用されたときは、電柱間の1スパンに相当する長さL1 に伸長して図2に示すような状態になる。
【0014】
図3は上記エクステンドコイルを使用して通信用ケーブルを架設した状況を示すものである。図3に示すように、エクステンドコイル10のコイル本体1は電柱間に張設したメッセンジャーワイヤ3に外挿され、電柱間の1スパンにわたって伸長した状態になっている。コイル本体1のループ内には通信用ケーブル4が挿通されている。そのため、ケーブル4はコイル本体1の螺旋状ループを介してメッセンジャーワイヤ3に懸架された状態になっている。
【0015】
上記エクステンドコイル10を用いた架設工事においては、単にエクステンドコイル10を電柱間に伸長させる一度の操作だけで、ケーブル4を螺旋状ループを介して一定間隔に懸架するための懸架点を全て形成し、ケーブル4の延線を行うことができ、しかもケーブル4を延線した後はエクステンドコイル10をそのままケーブル固定用吊具として使用することができる。
【0016】
従って、滑車等のケーブル延線用治具を用いてケーブル4を仮架設する作業が不要になると共に、従来のケーブル架設のように多数の金属製吊具を一定間隔に1個ずつ取り付ける作業を簡略化することができる。なお、エクステンドコイル10の両端部の固定方法としては、スリーブ2を介して電柱に連結してもよく、或いはスリーブ2を介することなくメッセンジャーワイヤ3に金具等により直接固定してもよい。
【0017】
図4は本発明におけるエクステンドコイルの断面を例示するものである。図4に示すように、コイル本体1は螺旋状に成形された金属線1aの表面に合成樹脂1bを被覆した構造を有している。このエクステンドコイル10はコイル本体1の非伸長時の長さLO から伸長させたとき、金属線1aが永久変形するような物性が与えられている。より具体的には、コイル本体1を非伸長時の長さLO の10倍以上に伸長させたとき金属線1aが永久変形するようになっている。この金属線1aの永久変形が非伸長時長さLO の10倍未満の伸長で生じると、ケーブルの懸架点として螺旋ピッチを一定間隔にしながらエクステンドコイル10を伸長させることが困難になる。
【0018】
上述のようにエクステンドコイル10はコイル本体1の伸長時に金属線1aが永久変形するので、メッセンジャーワイヤ3に対する留め具が外れたり、火災や事故等によりコイル本体1の一部が切断された場合であっても、永久変形した金属線1aによりケーブル4の垂れ下がりを防止することができる。また、ケーブル架設作業時に、エクステンドコイル10の固定された後端部が外れたり、伸長させた先端部を不意に放しても、エクステンドコイル10が元の長さに収縮してしまうことはない。そのため、本発明のエクステンドコイル10を用いれば、ケーブル架設時や架設後において、ケーブル4を安定した状態で保持することができる。また、ケーブル架設場所の近辺で火災が発生し、エクステンドコイルが火炎に煽られて合成樹脂部分が焼け落ちたとしても、コイル本体1は金属線1aを備えているので、この金属線1aがケーブル4を保持することが可能である。
【0019】
金属線1aと合成樹脂1bとの複合材料からなるエクステンドコイル10に上記物性を付与するには、金属線1aの材料を適宜選択すると共に、コイル本体1に対する金属線1aの断面積比率を適切に設定すればよい。
【0020】
金属線1aとしては、直径が1.0〜5.0mmの鋼線、銅線、アルミニウム線等を使用することができる。特に、腐食防止のために亜鉛メッキ鋼線を用いると良い。金属線1bの直径が1.0mm未満であるとケーブルを保持する能力が不足し、逆に5.0mmを超えるとコイル自体が重くなるため好ましくない。
【0021】
また、コイル本体1の断面積に対する金属線1aの断面積の比率は50%以上にすることが好ましい。金属線1aの断面積比率が50%未満であると、合成樹脂1bの存在により金属線1aが永久変形し難くなる。なお、金属線1aの断面形状は特に限定されるものではなく、図示のような楕円形のほか、円形や三角形、四角形、八角形等の多角形にすることが可能である。
【0022】
一方、合成樹脂1bとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を使用することができる。これら熱可塑性樹脂のなかでも、特にポリエステルが好ましい。このポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはこれらにアジピン酸、イソフタル酸、イソフタル酸スルホネートおよびポリエチレングリコールなどの第三成分を共重合した共重合ポリエステルなどを挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレートは最も好ましい素材である。
【0023】
また、ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12およびこれら各ナイロン構成成分の組み合わせからなる共重合ポリアミドなどを挙げることができる。
【0024】
これらの熱可塑性樹脂には、もちろん必要により耐熱剤、耐候剤、耐光剤、酸化防止剤、帯電防止剤、平滑剤、染料および顔料などの通常の添加剤成分を任意に含有させることができる。
【0025】
これら合成樹脂1bで金属線1aを被覆することにより、金属線1aの腐食を防止すると共に、ケーブル架設作業においてエクステンドコイル10をメッセンジャーワイヤ3に沿って円滑に伸長させることができる。
【0026】
エクステンドコイル10の非伸長時の長さLO は、取扱い性の観点からすると短い方が好ましいが、ケーブル架設のため伸長したときの長さL1 としては、少なくとも電柱間の1スパンまで延長できるようにした方がケーブル架設時の作業性を良好にする。そのため、非伸長時の長さLO が500〜2000mmの範囲であるとき、その比L1 /LO を10〜80、特に20〜60の範囲にすることが好ましい。また、コイル本体1の非伸張時のコイルピッチPは、2〜50mmの範囲に設定すると良い。
【0027】
上述したエクステンドコイル10のコイル本体1は、金属線1aを螺旋状に成形した後、金属線1aを溶融状態又は粉末状態の合成樹脂に接触させると共に、該合成樹脂を金属線1aの表面に溶融状態で付着させ、次いで該合成樹脂を硬化させることにより製造することができる。
【0028】
このように金属線1aを螺旋状に成形した後にその表面に合成樹脂1bを被覆することにより、合成樹脂1bにおける内部歪みを実質的に排除することができる。そのため、ケーブル架設時にコイル本体1を伸長させても、合成樹脂1bに過大な歪みが生じることはなく、ひび割れが生じ難くなるので、雨水等の浸入による金属線1aの腐食を長期間にわたって防止することができる。
【0029】
つまり、直線状の金属線の表面に合成樹脂を被覆した後に、この金属線を合成樹脂の外皮と共に螺旋状に成形すると、外皮を構成する合成樹脂に大きな内部歪みを生じるため、これをケーブル架設時にメッセンジャーワイヤに沿って伸長させると更なる歪みが与えられることにより、合成樹脂にひび割れを生じ易くなる。エクステンドコイルは長期間にわたって屋外に曝されるため、外皮を構成する合成樹脂にひび割れを生じると、雨水等の浸入により内部の金属線が腐食し、その寿命が短くなってしまうのである。
【0030】
より具体的なエクステンドコイルの製造方法としては、以下に示す種々の方法を挙げることができる。第1の製造方法は、金属線1aを螺旋状に成形した後、この金属線1aを溶融状態の合成樹脂に浸漬する方法である。第2の製造方法は、金属線1aを螺旋状に成形した後、金属線1aを合成樹脂の融点以上の温度に加熱し、これを粉末状の合成樹脂に挿入することにより、金属線1aに接触して溶融した合成樹脂を金属線1aの表面に付着させる方法である。第3の製造方法は、金属線1aを螺旋状に成形した後、該金属線1aを螺旋状の成形空間を有する金型内に挿入し、この金型内に溶融状態の合成樹脂を注入する方法である。いずれの方法においても、金属線1aの表面に合成樹脂1bを内部歪みを形成することなく被覆することが可能である。
【0031】
上述した本発明のエクステンドコイルは、通信用ケーブル、テレビ用ケーブル、送電用ケーブル等の各種ケーブルを架設する場合に使用することが可能である。また、上記実施形態においては、抗張材にメッセンジャーワイヤを用いた場合について説明したが、この抗張材として既設ケーブル等を利用することが可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、螺旋状に成形された金属線の表面に合成樹脂を被覆して非伸長時の長さが500〜2000mmの範囲にあるコイル本体を構成すると共に、該コイル本体を非伸長時の長さの10倍以上に伸長させたとき前記金属線が永久変形するような物性を備えたケーブル架設用エクステンドコイルを用い、該コイル本体を非伸長時の長さの10倍〜80倍の範囲で金属線が永久変形するまで伸長させた状態で該コイル本体の内側にケーブルを支持するようにしたことにより、ケーブルの架設作業性を著しく向上することが可能になり、しかもメッセンジャーワイヤに対する留め具が外れたり、火災や事故等により一部が切断された場合であっても、永久変形した金属線の強度に基づいてケーブルの垂れ下がりを防止することが可能であるので、架設作業時及び架設後においてケーブルを安定した状態で保持することができる。
【0033】
また、本発明のケーブル架設用エクステンドコイルの製造方法では、金属線を螺旋状に成形した後、該金属線を溶融状態又は粉末状態の合成樹脂に接触させると共に、該合成樹脂を金属線の表面に溶融状態で付着させ、次いで該合成樹脂を硬化させるので、金属線の表面に合成樹脂を内部歪みを形成することなく被覆することができ、それにより外皮を構成する合成樹脂にひび割れを生じ難くなり、金属線の腐食を長期間にわたって防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるエクステンドコイルの非伸長状態を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態からなるエクステンドコイルの伸長状態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態からなるエクステンドコイルを使用してケーブルを架設した状態を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態からなるエクステンドコイルを示す断面図である。
【符号の説明】
1 コイル本体
1a 金属線
1b 合成樹脂
2 スリーブ
3 メッセンジャーワイヤ
4 通信用ケーブル
10 ケーブル架設用エクステンドコイル
Claims (4)
- 螺旋状に成形された金属線の表面に合成樹脂を被覆して非伸長時の長さが500〜2000mmの範囲にあるコイル本体を構成すると共に、該コイル本体を非伸長時の長さの10倍以上に伸長させたとき前記金属線が永久変形するような物性を備え、該コイル本体を非伸長時の長さの10倍〜80倍の範囲で前記金属線が永久変形するまで伸長させた状態で該コイル本体の内側にケーブルを支持するようにしたケーブル架設用エクステンドコイル。
- 前記金属線が鋼線、銅線又はアルミニウム線である請求項1に記載のケーブル架設用エクステンドコイル。
- 前記金属線が亜鉛メッキ鋼線である請求項1に記載のケーブル架設用エクステンドコイル。
- 前記合成樹脂がポリエステル、ポリアミド又はポリオレフィンである請求項1〜3のいずれかに記載のケーブル架設用エクステンドコイル。
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