JP4168458B2 - 偽造防止策を施した用紙及びこの用紙を用いた印刷物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙幣、株券、債券、商品券、宝くじ等の紙からなる有価証券類の偽造防止に関するもので、さらに詳しくは、電子複写機による偽造や改竄行為が極めて困難である偽造防止策を施した用紙及びこの用紙を用いた印刷物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、紙は紙幣をはじめ、株券、債券、商品券、宝くじなど、金銭的価値を有する有価証券として幅広く使用されている。それら有価証券用紙は容易に偽造又は変造出来ない様に、紙自身に透かしを施したり、あるいはマイクロ文字や凹版印刷、隠し文字、蛍光印刷等の特殊な印刷を施したり、金属光沢を有する箔やホログラム箔などを転写またはシールで施してあるのが一般的である。
【0003】
これらの有価証券類が偽造される場合は、主に印刷による方法と電子複写機による方法があるが、今日では電子複写機の解像度が格段に良くなり、電子複写機さえあれば簡単に本物と見分けがつかないくらい正確に複写出来ることから、電子複写機による偽造が増加している。この場合には、マイクロ文字や隠し文字といったパターン印刷法では、オリジナルとコピーを見分けることが困難になっている。
【0004】
さらに、電子複写機や通常の印刷による偽造に対しては、紙自身の偽造防止策として黒透かしや白透かしといった透かし技術が、真偽判定が簡単で偽造防止効果が高いとして多くの有価証券類において現在でも使用されている。しかし、精巧な印刷技術による偽造品に対し、黒透かしや白透かしでは環境条件によっては真偽判定が正確に行えないことがあり、偽造された有価証券が使用されてしまうという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、以上のような問題点に着目してなされたものであり、その課題とするところは、真偽判定が簡単・確実にでき、かつ印刷技術や電子複写機による偽造ができないようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1においては、温度により色が可変する熱変色層を一方の面に設けた高分子樹脂フィルム若しくは紙からなる基材を含み、前記熱変色層及び前記基材の他方の面が、少なくとも部分的に露出するように用紙の層中に漉き入れし、熱変色層面及び基材の他方の面を露出させたことにより、温度変化で色が可変して簡単に真偽判定ができ、かつ偽造が極めて困難なことを特徴とする偽造防止策を施した用紙としたもので、本発明の基本的な構成である。
【0007】
また、請求項2においては、前記熱変色層の温度変化による色変化を用紙の表裏から目視可能とし、用紙の表裏にかかわらず温度変化により熱変色層の色変化が確認でき、真偽判定を容易にしており、本発明の応用的な構成である。
また、請求項3においては、前記基材は透明な高分子樹脂フィルムからなることにより、用紙の用紙の表裏から露出部分を目視した場合、熱変色層が無色のときに「透明透かし」が現出し、真偽判定を容易にするだけではなく、偽造防止効果も高い用紙となり、本発明の理想的な構成である
【0008】
また、請求項においては、熱変色層に有色から無色、または無色から有色に変化する材料を用いることにより、色変化による真偽判定を更に容易にしたもので、本発明の応用的な構成である。
【0010】
請求項においては、請求項1乃至の何れか一項の偽造防止策を施した用紙を用いて、有価証券類の印刷物としたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、温度により変色する熱変色層を積層した基材を紙層中に漉き入れし、熱変色層、または熱変色層と基材の両面を、露出させたことにより、温度変化で色が可変して簡単に真偽判定ができ、かつ偽造が極めて困難なことを特徴とする偽造防止策を施した用紙としたものである。
【0012】
以下、実施の形態に基づき本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる用紙は、植物繊維または合成繊維を原料とし、水中にて叩解し漉いて絡ませた後、脱水・乾燥させて作られる。この時、紙は原料であるセルロースの水酸基間の水素結合により繊維間強度が得られる。また、紙に用いるてん料としてはクレイ、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン等があり、サイズ剤としてはロジン、アルキル・ケテン・ダイマー、無水ステアリン酸、アルケニル無水こはく酸、ワックス等があり、紙力増強剤には変性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、ポリエチレンイミン等があり、これらの材料をそれぞれ抄紙時に加え、主として長網抄紙機で抄造する。
【0013】
抄紙方法は、通常の植物繊維紙の製造に用いられる方法でよく、原料濃度0.5〜10%好ましくは1〜2%の水希薄原料で十分に膨潤させた繊維をよく混練し、スダレ・網目状のワイヤー等に流して並べ搾水後、加温により水分を蒸発させて作られる
【0014】
また、植物繊維以外の例えば合成繊維を混入した紙の場合は、合成繊維間に水素結合などの結合力を持たないため結着剤を必要とすることが多いので、合成繊維比率と結着剤量は、紙の強度を落とさない程度に適宜決めるのが望ましい。
【0015】
熱変色層は、電子供与性化合物と電子受容性化合物と、両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体とからなり、熱変色材料を無色のポリビニルアルコール(以下、PVAと称す)系水溶性バインダーに添加してインキ化したもの(以下、示温インキと称す)を、5〜500μm、好ましくは15〜20μmのポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの高分子樹脂フィルム基材の少なくとも片面に塗布して作られる。
【0016】
また、請求項における無色から有色、または有色から無色に変化する熱変色層の色濃度については、発色状態における色濃度の明度値が6以下で、消色状態における明度値が8以上であることが望ましい。
【0017】
前記の混合抄紙法や場合によっては抄き合わせ法などにより抄紙される熱変色層を有する基材は、熱変色層、または熱変色層及び基材の両面が露出(部分的または全面でもよい)するように用紙の層中に漉き込まれ、特に請求項の構成の場合には、熱変色層が温度により無色に変化した際に、透明な樹脂フィルム基材面からも目視することができ、所謂、透明透かしが現出する。
【0018】
本発明の偽造防止策が施された用紙への印刷・加工は、従来の紙の場合と同じ設備、方法が使用可能である。すなわち、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法で文字や絵柄を印刷した後、断裁機を用いて小切れ化するなどである。
【0019】
本発明の偽造防止策が施された用紙は、温度変化によって、基材に積層された熱変色層の色が変化することにより、特別な器具を用いなくとも目視により確実に真偽判定ができると同時に、熱変色層を有する基材が用紙の層中に漉き込まれているため偽造も困難である。
【0020】
図に基づきさらに詳細に説明すると、図1は、用紙1の一部領域に熱変色層3を積層した基材2を漉き込み、熱変色層3を目視できる部分を露出部5とした偽造防止策を施した用紙10に、文字や絵柄等の印刷層4を設けたもので、本発明の参考としての構造を示すものである。
【0021】
また、図2及び図3は、透明な樹脂フィルムからなる基材7上に、熱変色層8を積層して、この熱変色層8と基材7の両面が露出するように用紙6の層中に漉き込んだ構造の偽造防止策を施した用紙10aであり、平面図及びA−A断面図として説明したものである
【0022】
上記熱変色層を施す基材7は、透明性に優れ、機械的に強く、柔軟性や可とう性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート等の高分子樹脂フィルムが必要に応じて用いられる。フィルムは一般的に15〜500μmであるが、この場合あまり厚いと印刷等を施す用紙としては意匠性を損なう他に、抄紙も難しくなることから、厚さとしては15〜25μmのものが好ましい。
【0023】
また、用紙1,6上の印刷層4は、通常の印刷であるオフセット印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法などによる文字や絵柄の他、金属箔やホログラムを用いても良い。
【0024】
熱変色層3,8は、グラビアインキ、オフセットインキ、スクリーンインキなど、目的の印刷用の水溶性インキに熱変色材料を混合して示温インキとし、それを直接印刷、またはコーティングした形で基材7上に設ける。
【0025】
なお、図1に示す熱変色層3の場合は、温度変化によって有色から有色へ、例えば赤色から緑色などへと変色する材料を用いて、真偽判定を容易にする。
【0026】
また、図3の熱変色層8では、熱変色層を有する基材7に透明な高分子樹脂フィルムを用いるだけでなく、温度変化によって有色から無色もしくは無色から有色へと変色する材料を使用することにより、例えば露出部9が透明となり、真偽判定を更に容易にするとともに、電子複写機による偽造や改竄を困難にする。
【0027】
一方、用紙1,6の原料となるパルプ繊維としては、針葉樹や広葉樹、イネ、エスパルト、バガス、麻、亜麻、ケナフ、カンナビス等の木材パルプと、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックから作られた合成繊維などを、通常の植物繊維紙の製造に用いられる方法で、原料濃度0.5〜10%好ましくは1〜2%の水希薄原料で十分に膨潤させた繊維をよく混練しスダレ・網目状のワイヤーパート上に流して並べ、搾水後加温により水分を蒸発させて作られる。この際、前記の熱変色層を積層した熱変色層基材の漉き込みには、針金あるいは薄板(金属その他)を切り抜いて作った型をワイヤーパート上に固定したものを漉き網として使い、この部分に熱変色層を積層した基材をあて、露出部分以外が隠れるように紙を漉く、漉き込みが可能である。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げ、詳細に説明する。
【0029】
参考例1>
参考例1として図1の構成のものを以下に説明する。厚さ15μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材2上に、発色時の明度値が4.5、消色時の明度が6.0である、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン6部、ビスフェノールA10部、ステアリン酸ネオペンチル25部の相容体からなる消色時に無色とならない熱変色性組成物を、エポキシ/アミン系硬化材の界面重合法によって得られた平均粒子径8μmのマイクロカプセル形態の熱変色材料とアクリル酸エステル樹脂とからなる、15℃以下で赤色で、30℃以上で黄色に、可逆的に変色する熱変色層3を積層した。しかる後、針葉樹パルプを水中で叩解後、手漉き装置を用いて任意の形状に熱変色層3が露出(露出部5)するように熱変色層を積層した基材2を用紙1の層中に漉き込んで脱水した後、乾燥させ、偽造防止策を施した用紙10(130g/m2 )を作製し、絵柄・文字の印刷層4を凹版印刷法で印刷した。
【0030】
<実施例
実施例として、図2の構成のものを以下に説明する。
厚さ15μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材7上に、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1.5部、ビスフェノールA6部、ステアリン酸ネオペンチル50部の相溶体からなる熱変色性組成物を、エポキシ樹脂/アミン系硬化剤の界面重合法によるマイクロカプセル化で得られた平均粒子径8μmのマイクロカプセル形態の熱変色材料とアクリル酸エステル樹脂とからなる、15℃以下では青色で、30℃以上で無色に、可逆的に変色する熱変色層8を積層した。しかる後、針葉樹パルプを水中で叩解後、手漉き装置を用いて任意の形状に基材7及び熱変色層8の両面が露出(露出部9)するように、熱変色層を積層した基材7を用紙6の層中に漉き込んで脱水、乾燥させ、偽造防止策を施した用紙10a(120g/m2 )を作製し、絵柄・文字の印刷層4を凹版印刷法で印刷した。
【0031】
<比較例1>
比較例1として、図4に基づく構成により説明する。
一般的な白透かし11を有する有価証券用紙20を使用し、表面に絵柄・文字の印刷層4を凹版印刷法により印刷した。
【0032】
本発明における実施例1、参考例1と比較例1を偽造防止効果や真偽判定などの面から比較した結果を、以下の表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0004168458
【0034】
表1の比較結果から、比較例1で電子複写で「可」、偽造の難易度「易」となっているのは、電子複写や印刷での偽造品が見た目には「透かし」に近い色合いを再現することがあるため、目視による真偽判定では不確実なものとなり、実際に偽造品が使用されてしまうことがあるので、「透かし」用紙自身の偽造は困難でも、有価証券類としてはそれぞれ「可」や「易」となる。
【0035】
これに対して、本発明の偽造防止策を施した用紙である実施例1、参考例1は、漉き込まれた基材上に熱変色層を積層し、露出させた熱変色層が加わる温度により変色することから、真偽判定が容易に、かつ確実に行うことが可能で、しかも偽造防止効果などの問題点を全て解決した。
【0036】
【発明の効果】
本発明の偽造防止策を施した用紙は、紙または透明な樹脂フィルムからなる基材に、熱変色層を設け、この熱変色層を有する基材を用紙の層中に漉き入れしたもので、この熱変色層が温度変化で無色になると、所謂、透明透かしが現出する。従って、偽造を困難にした。また今までのホログラム箔貼付や凹版印刷などの後工程での偽造防止策と比較して偽造や入手が困難であり、その真偽判定においても加熱を要するが簡単で、確実に判定できるという効果を奏する有価証券用紙となる。
【0037】
また、明らかな様に、従来の白透かしを有する用紙では、精巧な印刷や電子複写での偽造の問題、及び光に透かすなどの目視での真偽判定の際、周囲の環境によっては偽造品を誤判定してしまう問題があったが、本発明の偽造防止策を施した用紙は、これら全てを解決するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一参考例における偽造防止策が施された用紙の構成を示す断面図である。
【図2】 本発明の実施例における偽造防止策が施された用紙の平面図である。
【図3】 上記偽造防止策が施された用紙のA−A断面図である。
【図4】 比較例における透かし用紙に印刷層を施した偽造防止策が施された用紙の断面図である。

Claims (5)

  1. 温度により色が可変する熱変色層を一方の面に設けた高分子樹脂フィルム若しくは紙からなる基材を含み、
    前記熱変色層及び前記基材の他方の面が、少なくとも部分的に露出するように用紙の層中に漉き入れたことを特徴とする偽造防止策を施した用紙。
  2. 前記熱変色層の温度変化による色変化を用紙の表裏から目視可能としたことを特徴とする請求項1記載の偽造防止策を施した用紙。
  3. 前記基材は透明な高分子樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1記載の偽造防止策を施した用紙。
  4. 前記熱変色層が温度変化により無色から有色、または有色から無色に色が可変することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の偽造防止策を施した用紙。
  5. 請求項1乃至の何れか一項の偽造防止策を施した用紙に、有価証券類の印刷を施したことを特徴とする偽造防止策を施した用紙を用いた印刷物。
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