JP4168276B2 - Dioscorea sp.抽出物およびその医学的使用 - Google Patents

Dioscorea sp.抽出物およびその医学的使用 Download PDF

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Description

発明の背景
1.技術分野
本発明は、Dioscorea sp.の活性抽出物を含む経口組成物、特に、細胞の増殖及び分化を増強すること、ならびに化学療法によって誘発される副作用を緩和することが可能な経口組成物に関する。本発明は、骨粗鬆症の処置方法及び化学療法によって引き起こされる副作用の緩和方法を提供する。
2.関連分野
“野生ヤマノイモ(wild yam)”としても知られる、ヤマノイモ(Dioscorea)は、熱帯及び亜熱帯地方に分布する、単子葉植物ヤマノイモ科の一種である。世界中におよそ650種が存在し、うち93種及び9変種が中国で見出され、ならびに14種及び5変種が台湾で見出されている。
Dioscoreaは、漢方(traditional Chinese medicine)で使用される非常に重要な薬用植物の1種であり、その医学的効果が何年もの間研究されてきた。1936年、Tsukamotoらは、Dioscorea科の植物から、Dioscoreaのステロイドサポニンであるジオスゲニンを単離し、その後、医療用ステロイドの迅速合成原料として使用した。1992年のAradhana, Rao Ar. Kale RK.の研究において、ジオスゲニンがラットの乳腺上皮細胞の増殖を促進することを示した。Biochemical & Biophysical Research Communications 207(1):398−404, Feb/1995において、J.L. Beneytoutらは、ヒト赤白血病(HEL)細胞培養にジオスゲニンを加えた場合、ジオスゲニンが巨核球細胞の形態的及び生化学的な特徴の変化を誘発し、したがって、ジオスゲニンがHEL細胞の巨核球分化誘導物質として使用され得ることを報告した。Life Sciences 59(11):147−57, 1996において、Dioscoreaのステロイド抽出物は、血清脂質レベルを調節するために、抗酸化剤としての顕著な活性を有することが示唆されている。
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、ジオスゲニンと類似の化学構造を有し、骨量制御の効果だけでなく、抗癌、抗酸化、及び抗糖尿病効果を有することが知られている。血清DHEAレベルは、加齢に伴って徐々に減少し、老化に関係する。様々な研究から、Dioscoreaのジオスゲニン抽出物は、ヒト体内においてDHEAに変換され、このようにして加齢に伴って減少するDHEAを補うのかもしれないと、推測されている。しかし、これらの研究は、ジオスゲニンが、血清脂質の過剰酸化(over−oxidation)を減少させ、血清中のトリグリセリドの低下及びLDLの過剰酸化の損傷を減少させる一方、HDLレベルを増加させることができるか否かを調べるために、Dioscorea中に存在するジオスゲニンを摂取する高齢者に対して行われただけである。
DHEAの骨量の制御における効果に関し、Life Sciences 62(1):59−68, 1998においてBen A.A. Schevenらは、DHEA及びそのサルフェート誘導体(DHEA−S)は、ヒト骨芽細胞の増殖及び分化において、それ自身、直接的、独立的に有意な効果を発揮することはできなかったが、該細胞を骨細胞調節剤(modulating agent)、1,25(OH)23を併用して処置すると、骨芽細胞成熟の特異的マーカーである、特定のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の増強を生じたことを報告した。この研究は、DHEA/DHEA−Sの骨芽細胞増殖及び分化における効果が、骨細胞内での1,25(OH)23−誘導性の変化に対する効果を介して成立し得るということを示した。
本発明に従い、Dioscorea sp.のメタノール抽出物及びさらなる抽出画分は、細胞再生における生物学的活性を有するということが見出された。特に、いかなる骨細胞調節剤の存在もなしに、Dioscorea sp.のメタノール抽出物及びさらなる抽出画分それ自体が、骨における骨原性細胞(osteoprogenitor cell)を補うように骨原性細胞の増殖及び分化を刺激して、骨芽細胞の成熟及び骨芽細胞の石灰化を促進し、それによって骨修復(bone repair)、回復(restoration)及び再生を達成し、言い換えれば骨粗鬆症を予防及び治療することを見出した。さらに、該Dioscorea sp.抽出物は、GM−CSFの存在下で骨髄における造血幹細胞の増殖及び分化を刺激するだけでなく、抗癌薬処置(anti−cancer drug treatment)によって引き起こされた白血球及び赤血球の欠乏に苦しむ患者の回復を促進し、従って、化学療法アジュバントとして抗癌薬と組み合わせて使用され得る。
発明の要約(Summary of the invention)
したがって、本発明の目的は、Dioscorea sp.の抽出物を有効成分として含む、骨原性細胞の増殖及び分化を増強するための経口組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、Dioscorea sp.の抽出物を有効成分として含む、抗癌薬アジュバントとしての使用のための経口組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、骨粗鬆症の予防及び処置に有用な経口組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、抗癌薬によって引き起こされる副作用を緩和するためのアジュバントとして有用な、経口組成物を提供することである。
さらに他の目的において、本発明は、処置を必要とする患者に薬学的に活性なDioscorea sp.の抽出物の有効量を経口的に投与することを含む骨粗鬆症の治療方法を提供する。
また、さらなる目的において、本発明は、化学療法で処置されている患者に、薬学的に活性なDioscorea sp.の抽出物の有効量を経口的に投与することを含む、化学療法薬アジュバント(chemotherapeutic ajuvant)を使用する化学療法によって引き起こされた副作用緩和のための方法を提供する。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の添付図面に関する好ましい実施態様の詳細な説明において明らかになるであろう。
本発明は、Dioscorea sp.抽出物の生物学的活性、特に、細胞の再生に対する活性の発見に基づく。本発明の方法に従って調製された、Dioscorea sp.のメタノール又はエタノール抽出物及びさらなる抽出画分は、マウス骨髄前駆細胞の増殖及び分化を増強する活性物質を含むことが、実験によって確認された。特に、Dioscorea sp.のメタノール又はエタノール抽出物及びさらなる抽出画分は、それ自身、機能的骨原性細胞の細胞増殖を増強し、ならびに骨原性細胞の骨芽細胞への分化を広範囲にわたって誘導し、そして骨芽細胞の石灰化をも増強する。さらに、Dioscorea sp.のメタノール抽出物は、抗癌薬によって引き起こされる副作用を緩和することができる。特に、該メタノール抽出物は、シクロフォスファミド(CY.)で処置されたマウスの末梢血中に存在する白血球及び赤血球を回復させる。従って、Dioscorea sp.のメタノール抽出物は、加齢過程において一般的な疾病である骨粗鬆症の予防及び処置において有用であり、また、化学療法アジュバントとして抗癌薬と組み合わせて使用され得るであろう。
自己再生及び分化が可能な細胞を、幹細胞と呼ぶ。幹細胞は、胎児期の間、最大レベルに存在し、そして加齢と共に徐々に数が減少する。従って、幹細胞と老化の間には、重要な相関関係/関連があると推測されていた。成人における幹細胞は、新たな幹細胞が産生され又は特定の細胞に分化する、微小環境(microenvironment)の変化を通して伝達される、特定のメッセージに対する特定の応答を生み出すことができる。前記幹細胞が分化のメッセージを受け取った場合、該幹細胞は、素早く多量に再生し、そしてその後、ついに分化に進む。これらの幹細胞は、成人における細胞のバランスを維持するため、及び自然原因又は傷害が原因で死ぬ細胞の数を補充するために使用される。
骨髄中の幹細胞は、2つのタイプの細胞、即ち造血幹細胞{これは2つのさらに特殊化したタイプの幹細胞、すなわちリンパ系前駆細胞(これはT及びBリンパ球を生じる)及び骨髄系前駆細胞(これは白血球、赤血球及び巨核球を生じる)}、及び骨髄において支持構造を形作る細胞の源であるストローマ細胞に分けられる。該ストローマ細胞は、培養中、プラスチック培養プレートの底面、及び筋芽細胞にさえも接着する性質を有する。ストローマ細胞は、造血幹細胞の増殖及び分化に必要とされる。
幹細胞の産生及び数は、老化が起こるにつれて大幅に減少して老化の様々な問題をもたらし、中でも骨粗鬆症が最も一般的である。骨粗鬆症の原因は、骨形成と再吸収の間のバランスの喪失を含む。骨原性細胞に由来する骨芽細胞は、骨マトリクス及び骨格の石灰化からなる骨形成に寄与する。骨原性細胞は、骨髄のストローマ細胞に由来する。デキサメタゾン及びアスコルビン酸は、骨原性細胞の増殖及び成長を促進することができ、また、該細胞の成熟骨芽細胞への分化を可能にする。前記分化過程の間、骨芽細胞の異なるマーカーが発現される:最初にコラーゲンマトリクスの蓄積(deposition)があり、そして10〜14日後、アルカリフォスファターゼ(ALP)が発現される。アルカリフォスファターゼは、骨芽細胞活性の識別用の生化学的マーカーとして広く使用され、その実際の機能はまだ知られていないが、最近では、骨格石灰化過程に関与すると考えられている。21日の連続培養の後、該細胞は、オステオカルシン(osteocalcein)を分泌し、そして最終的に、骨結節を形成するために石灰化する。
本発明において、本発明者は、予想外にもDioscorea sp.のメタノール又はエタノール抽出物、もしくはさらなる抽出画分を含む経口組成物を、骨細胞調節剤の非存在下に骨原性細胞の増殖及び分化を増強するために使用でき、したがって、該活性抽出物を含む組成物を、骨粗鬆症の処置に使用できることを見出した。
本発明において、細胞の増殖及び分化を増強するための経口組成物は、Dioscorea sp.の抽出物を活性成分として含む。該抽出物は、Dioscorea sp.のルートチューバー部分(root tuber part)から調製され、抽出溶液としてアルコールベース(alcohol−based)溶媒を使用して得られる。この調製プロセスは、(a)酸の存在下、好ましくは1%酢酸の存在下でアルコールベースの溶媒(ここでアルコールベースの溶媒が、メタノール、エタノールベース溶媒、又はこれらの混合物である)Dioscorea sp.の塊茎(tuber)を抽出することを包含する。
加えて、得られた抽出物は、薬理学的に活性な画分を得るように、極性に基づいてさらに抽出され得る。本発明の好ましい実施態様の1つとして、該メタノール抽出物は、さらに、以下の工程を含む分配クロマトグラフィーにかけられる:
(b)酢酸エチルと水の溶媒混合物を使用して工程(a)から得られたメタノール抽出物を抽出し、該水相中に存在する該水抽出物から該酢酸エチル抽出物を分離する工程;
(c)n−ブタノール溶媒を該水相に添加して更なる抽出を行い、該水相中に残存している該水抽出物の残りからブタノール抽出物を分離する工程;ならびに
(d)工程(c)から得られた該水相へ75%アルコール溶媒を添加してポリサッカリドを抽出しそして更に除去し、精製水抽出物を得る工程。
Dioscorea sp.の成分の生物学的活性を確認するため、健常マウス及びグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症に苦しむヒト患者から得られた細胞に対して、Dioscorea塊茎のメタノール抽出物及びさらなる抽出画分の生物学的活性についての解析を行った。
図1に示される実験的結果より、本発明者は、予想外にも、Dioscorea sp.のメタノール抽出物及びさらなる抽出画分が、骨細胞調節剤の助けなしに、骨原性細胞の増殖を増強することを見出した。同じ濃度下で、DHEAは、骨原性細胞の増殖に全く増強効果を示さなかった。図2において、この結果は、Dioscorea sp.抽出物が、正常細胞において発現したアルカリフォスファターゼの量を有意に増加させ、すなわち、本発明に従って調製された該抽出物が、骨原性細胞の成熟骨芽細胞への分化を刺激できることを示した。
本発明者は、さらに、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症に苦しむヒト患者から得られた異常骨髄細胞に対する効果を確認した。グルココルチコイドは、様々な炎症及び自己免疫疾患に不可欠な治療法(therapy)である。しかし、長引くグルココルチコイドの使用は、骨粗鬆症の最も一般的な医原性原因の1つである。グルココルチコイドは、骨芽細胞に対する様々な効果、すなわち、骨芽細胞系統の複製の阻害、新たな骨芽細胞の産生低下、及び骨芽細胞死の誘導、を通して骨損失を増加し得る。図3に示される結果より、本発明者は、本発明の活性抽出物が、この様な細胞でのアルカリフォスファターゼの発現量を増加させることから、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症に苦しむ患者を該活性抽出物で処置することによって、骨芽細胞の機能を回復することができることを見出した。
さらに、in vivoでの骨粗鬆症の処置において、Dioscorea sp.の抽出物の有効性をさらに確認するため、本発明者は、本発明の抽出物を経口投与された、正常マウス及び骨粗鬆症を誘発するために卵巣摘出を行ったマウスに対して実験を行った。
図4−5において、この結果は、in vivoでのDioscorea sp.のメタノール抽出物が、アルカリフォスファターゼの発現量、ならびに正常マウス及び卵巣摘出マウスから得られた骨芽細胞の石灰化を増加することを実証した。従って、Dioscorea sp.の抽出物は、骨原性細胞の増殖及び分化を制御するだけでなく、骨形成及び再構築もコントロールすることから、該活性抽出物は、骨粗鬆症を予防及び処置することが可能である。
一方、骨髄細胞の増殖及び分化は、BMP−2(骨形成因子−2(bone morphogenetic protein−2))、TGF−β、IL−4、EGF、GM−CSF等の特定の因子によって支配されているであろうことが知られていた。培養環境においてこの因子が変化すると、幹細胞は、前記因子の特異性に従って異なる細胞に分化する。例えば、BMP−2、TGF−β、IL−4及びEGFは、骨髄ストローマ細胞の骨芽細胞系統への増殖及び分化にポジティブに関係する。この研究において、本発明者は、Dioscorea sp.のメタノール抽出物のBMP−2、TGF−β、及びIL−4の遺伝子発現に対する効果、ならびにDioscorea sp.のメタノール抽出物及びさらなる抽出画分のEGF及びGM−CSFの存在下での骨髄幹細胞の増殖及び分化に対する効果を確認するために実験を行った。
図6において、このデータは、Dioscorea sp.のメタノール抽出物は、BMP−2、TGF−β、及びIL−4の遺伝子発現、特にBMP−2及びTGF−βのそれを増加することを明らかにした。さらに、図7及び表2に示される実験結果より、本発明者は、Dioscorea sp.のメタノール抽出物が、EGFの存在下において、マウス骨髄細胞の分化を刺激することを見出した。該メタノール抽出物のさらなる抽出画分、DioMPwは、マウス骨髄細胞の増殖を増強する。
GM−CSFに関しては、GM−CSFは、骨髄造血を刺激するために造血前駆細胞上に存在する特異的受容体コンプレックスに働きかけることができることから、骨髄中の造血前駆細胞の単球、好中球、マクロファージ等への増殖及び分化を促進することができる。従って、GM−CSFは、化学療法で治療される患者のマクロファージを回復するための治療法において可能性があると考えられる。この研究において、本発明者は、GM−CSFの存在下において、Dioscorea sp.のメタノール抽出物及びさらなる抽出画分の刺激のもとで、骨髄細胞の増殖が増強されたことを見出した(表3参照)。加えて、この結果は、幹細胞の分化が、Dioscorea sp.のさらなる抽出画分によって増強されたことを示す。同じ条件下において、DHEAは、細胞分化の増強効果を現したが、細胞増殖を増強し得なかった。従って、この研究は、本発明に従って調製されたDioscorea sp.のメタノール抽出物及びさらなる抽出画分は、増殖を通して化学療法によって減少したマクロファージ数の回復及び骨髄細胞の増殖においてGM−CSFを補助する可能性があり、化学療法アジュバントとして使用され得る。
さらに、本発明者は、in vivoにおける、化学療法アジュバントとしての化学療法に対するDioscorea sp.の抽出物の応用を確認した。シクロフォスファミド(CY)は、多くの癌の治療に使用される薬物である;しかし、それは、骨髄機能を破壊し、白血球、マクロファージ、及び赤血球等の血液細胞を減少させ、多くの他の副作用を引き起こす。本発明において、化学療法アジュバントとして本発明の活性抽出物の機能測定に使用する動物モデルを作製するためにマウスに白血球減少症を引き起こすため、シクロフォスファミドを用いた。得られた結果は、本発明の活性抽出物は、白血球数の減少を防止し、ならびに赤血球細胞数及びヘモグロビン含有量を正常レベルに維持し、CY−処置マウスにおける白血球減少症からの回復を促進した。従って、本発明の活性抽出物は、抗癌薬によって誘発された副作用の緩和のために、化学療法アジュバントとして使用され得る。
本発明に従って行われた実験は、明らかにDioscorea sp.の抽出物及びそのさらなる抽出画分が、骨細胞調節剤の非存在下で骨原性細胞の増殖及び分化を増強することを示したことから、本発明は、骨粗鬆症の処置におけるDioscorea sp.の適用を提供する。さらに、本発明に従って調製された抽出物は、化学療法によって減少したマクロファージ、白血球、及び赤血球の数を増加及び回復させることから、化学療法アジュバントとして使用され得る。
以下の実施例は、本発明を説明するために提供される。本実施例は、本発明を限定するものではなく、またそのように解されるべきである。
本発明の実施例
予備工程1:Dioscorea sp.のメタノール抽出物の調製
台湾にあるYang−Ming Mountainから採取したDioscorea sp.の皮をむいた塊茎4kgを、1%酢酸溶液中に一晩浸漬した。次いで、得られた固形部分を−70℃で凍結させ、そして凍結乾燥した。凍結乾燥した部分を、1%酢酸の存在下でメタノール溶液中に浸漬した。撹拌しそして40容積%にメタノール濃度を調整した後、混合溶液を一晩静置させ、そして次いで遠心分離によって分離した。得られた可溶性画分を凍結乾燥し、そしてDioMsと呼ぶ。
更に、DioMsを、以下の工程を含む分配クロマトグラフィーに供した:酢酸エチルと水の溶媒混合物(1:1)を使用してDioMsを抽出し、該水相中に存在する水抽出物から酢酸エチル抽出物(DioMPeと呼ぶ)を分離する工程;n−ブタノール溶媒を該水相に添加して更なる抽出を行い、該水相中に残存している水抽出物からブタノール抽出物(DioMPbと呼ぶ)を分離する工程;ならびに該水相へ75%アルコール溶媒を添加してポリサッカリドを抽出しそして更に除去し、精製水抽出物を得ること(DioMPwと呼ぶ)。
予備工程2:Dioscorea sp.のメタノール抽出物を含有するマウス用飼料の調製
市販のマウス飼料であるPurina Chow 5001を、粉末にすり潰した。Dioscorea sp.の凍結乾燥メタノール抽出物を、該すり潰した飼料からの同量を置換する量で、該すり潰した飼料中に添加し、飼料混合物を形成した。飼料混合物を、蒸留水と均一に混合し、押出し成形によって再成形し、好適な出力で電子レンジにおいて2分間ベークし、そして室温まで冷却した後、−70℃で冷凍した。凍結乾燥後、該飼料混合物を、Purina Chow飼料の特徴と非常に類似したペレットに形成した。該形成化ペレットを−20℃冷凍機において保存する。該ペレットを食餌供給の日に室温まで加温し、そして滅菌作業テーブル上においてUVランプ照射によって滅菌する。異なる濃度のメタノール抽出物を有する飼料混合物を調製した。
予備工程3:骨髄細胞の単離および培養
滅菌条件下で、SPFグレードC3H/HeNマウスを犠牲にし、そして大腿骨にDMEM/F12の液体培養物を注入して、骨髄細胞を取り出した(flush out)。細胞を、滅菌No.53ナイロンメッシュを通して濾過した。このようにして得た単一細胞懸濁液に、N2を含有するDMEM/F12培養培地を添加し、好適な濃度へ調節した。
予備工程4:マウス由来の骨原性細胞の調製
滅菌条件下で、SPFグレードのC3H/HeNマウスの大腿骨を得、そしてDMEM/F12を注入した。骨髄細胞を取り出し、そしてNo.53滅菌ナイロンメッシュを通して濾過した。得られた単一細胞懸濁液に、15%FCSを含有するDMEM/F12培養培地を添加し、細胞の濃度を調節した。
細胞を、6日間、Tフラスコ中、15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有するDMEM/F12培地において培養し、培養培地は3日毎で取り換えた。細胞濃度は106細胞/cm2であった。第6日に、懸濁した細胞および培養培地を抜き取った(drawn out)。付着している細胞層を、室温まで加温された1×PBSで洗浄し、そして次いで、5〜10分間37℃で0.01%EDTAを用いて処理した。EDTAを除去し、そして反応を、FCSを含有する培養培地において停止させた。続いて、5分間37℃でTEGを用いて処理した。反応を、FCSを含有する培養培地において同様に停止させた。細胞を全て回収し、そして1000rpmで5分間遠心分離した。
実施例1:Dioscorea sp.のメタノール抽出物および更に抽出した画分で処理したマウス骨原性細胞の増殖性応答
予備工程4で得られた細胞を、22Gゲージ針を使用して分散させ、そして15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有するDMEM/F12培地に懸濁させて、4.5×104細胞/mlの濃度にした。225μl細胞懸濁液を、96−ウェルマイクロプレートの各ウェルへ添加した。3時間後、各ウェル中の細胞懸濁液に、25μl メタノール抽出物、更に抽出した画分の各々およびDHEAを添加し、そして72時間インキュベートした。次いで、MTTアッセイを行った。1mg/ml MTT溶液を各ウェルに添加し、そして4時間反応させた。MTT溶解緩衝液(20%SDS−50%DMF)を、150μl/ウェルの量で各ウェルに添加し、そして16時間反応させ、そして吸光度を各ウェルにおいて得られた細胞懸濁液についてO.D.570nmで測定した。
図1に示されるように、Dioscorea sp.のメタノール抽出物の刺激下で、骨原性細胞の増殖が増強され、ここで、0.01および0.1μg/ml濃度が、顕著な増強効果を示す。同一濃度下で、DHEAは、骨原性細胞の増殖を増強する効果を示さない。抽出された画分、DioMPeおよびDioMPbは、10〜400μg/mlで細胞増殖を増強し、ここでDioMPeは優れた効果を示す。
実施例2:インビトロにおけるアルカリホスファターゼ活性(ALP)によって測定された、マウスの成熟骨芽細胞の分化に対する、Dioscorea sp.のメタノール抽出物および種々の抽出された画分の効果
予備工程4において回収した骨原性細胞を、6日間、T−フラスコ中でインキュベートした。細胞を22Gゲージ針で分散させ、そして細胞濃度を5×103細胞/cm2に調節した。次いで、細胞を6−ウェルプレート(ここに、4.5mlの細胞培養培地を各ウェルに添加した)中でインキュベートし、そして0.5mlメタノール抽出物および該抽出された画分の各々を翌日添加した。14日間のインキュベーション後、次いで、アルカリホスファターゼ活性アッセイを、以下に記載のように行った。
培養培地を抜き取り、細胞層をPBSで数回洗浄した。PBS中0.5%Triton X−100を、各ウェルへ添加した。得られた懸濁液を、それぞれ−70℃および37℃の温度で凍結および解凍プロセスに供する。処理を2回行って、テストサンプルを得る。50μlのテストサンプルを、各ウェルからELISAプレートへ移した。次いで、50μl AMP−基質緩衝液(蒸留水中2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP、0.5M)、pH10;2mM 塩化マグネシウムおよび9mM p−ニトロフェニルホスフェート)を該ELISAプレートへ添加して、10〜20分間室温でテストサンプルと反応させた。ELISAリーダーを使用して410nm波長で吸光度を測定した直後に、各ウェルの蛋白質濃度を定量的に測定した。測定されたアルカリホスファターゼ活性を、単位/μgで示す。
図2において示されるように、骨髄前駆細胞の14日インキュベーション後、アルカリホスファターゼ(これは、成熟骨芽細胞に対して特異的な発現されるマーカーである)の発現が示された。Dioscorea sp.の該メタノール抽出物および該メタノール抽出物の更に抽出された画分の各々は、発現されるアルカリホスファターゼの量を有意に増加させ、ここで0.1μg/mlのメタノール抽出物、0.1μg/mlのDioMPb、0.01〜0.1μg/mlのDioMPe、および0.1μg/mlのDioMPwが、最大増強効果を示した。
実施例3:グルココルチコイド誘発化骨粗鬆症に罹患する患者から誘導された骨髄細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性に対する、メタノール抽出物Dioscorea sp.の効果
The Taipei Veterans General Hospitalから得た患者の骨髄細胞を、7日間、15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有するDMEM/F12培地において培養した。次いで、アルカリホスファターゼ活性アッセイを行った。
図3に示されるように、アルカリホスファターゼの発現が示された。コントロールグループおよび陽性グループ(1nMエストロゲン、これは骨粗鬆症についての公知の処置である)と比較すると、Dioscorea sp.のメタノール抽出物は、発現されるアルカリホスファターゼの量を増加させ、ここで10μg/mlのメタノール抽出物が最大増強効果を示した。
実施例4:インビボにおける骨髄細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性および石灰化に対する、Dioscorea sp.のメタノール抽出物の効果
異なる濃度(0、40、200、および1000mg/ml)のメタノール抽出物を、経口投与のために調製した。5日間の異なる投薬量(容積)のメタノール抽出物の経口投与後、マウスを犠牲にし、その骨髄細胞を得た。
(1)アルカリホスファターゼ活性アッセイ
得られた骨髄細胞を、2×105細胞/ウェルで96−ウェルマイクロプレート[ここに、15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有するα−MEM培地250μlを添加した]において培養し、そして2日間37℃で5%CO2インキュベーターにおいてインキュベートした。125μl/ウェルの培養培地を抜き取り、そして15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有する新鮮な培地(125μl/ウェル)で置換した。4日間インキュベーション後、アルカリホスファターゼ活性アッセイを行った。
図4(A)に示されるように、アルカリホスファターゼの発現が示された。図4(A)において、Dioscorea sp.のメタノール抽出物は、発現されるアルカリホスファターゼの量を増加させ、ここで、1000mg/kgのメタノール抽出物は、コントロールグループと比較して、3倍増強まで達し得る。
(2)結節(nodule)形成アッセイ
このアッセイは、骨量(bone mass)の石灰化を分析するために使用する。異なる濃度(0、40、200、および1000mg/ml)のメタノール抽出物を経口投与したマウスから得られた骨髄細胞を、1×106細胞/ウェルで24−ウェルプレート中に接種し、15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有するα−MEM培地において培養し、そして24時間37℃で5%CO2インキュベーターにおいてインキュベートした。500μl/ウェルの培養培地を抜き取り、そして15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有する新鮮な培地(500μl/ウェル)で置換した。骨量の石灰化を分析するために、細胞を更に15日間インキュベートし、そして培養培地を4日毎で取り換えた。次いで、結節形成アッセイ(Nodule formation assay)を、以下に示すように行った。
培養培地を抜き取り、細胞を、37℃で5%CO2インキュベーター中30分間、500μl/ウェル ホルマリンと反応させることによって、固定した。ホルマリンを除去しそして該細胞を滅菌水で3回リンスし、200μl/ウェルの2%アリザリンレッドS溶液(Alizarine Red S solution)(これは、カルシウムと反応する)を該ウェル中へ添加し、そして該細胞を10分間37℃で5%CO2インキュベーターにおいて更にインキュベートした。次いでアリザリン溶液を除去し、そして該細胞を無水アルコールで3回リンスした。骨量の石灰化された領域を、Metaイメージによって測定した。
図4(B)に示されるように、コントロールグループと比較すると、Dioscorea sp.のメタノール抽出物は、骨量の石灰化を促進し、ここで、1000mg/kg濃度のメタノール抽出物が、3.5倍までの最大増強効果を示した。
実施例5:卵巣摘出した(ovariectomized)マウスモデルにおける骨髄細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性および石灰化に対する、Dioscorea sp.のメタノール抽出物の効果
滅菌条件下で、SPFグレードC57BL/6jマウスのグループを、外科手術に供し卵巣を除去して、骨粗鬆症の発生を誘発させ、そして別のグループを、コントロールグループとしての使用のために、卵巣を除去しないで手術のみを行った(偽手術したマウスと呼ぶ)。
異なる濃度(0、40、200、および1000mg/ml)のメタノール抽出物を、経口投与のために調製した。42日間異なる投薬量(容積)のメタノール抽出物を経口投与した後、マウスを犠牲にし、その骨髄細胞を得た。
(1)アルカリホスファターゼ活性アッセイ
異なる濃度(0、40、200、および1000mg/ml)のメタノール抽出物を経口投与したマウスおよび偽手術したマウスから得られた骨髄細胞を、2×105細胞/ウェルで96−ウェルマイクロプレート[ここに、15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有するα−MEM培地250μlを添加した]において培養し、そして2日間37℃で5%CO2インキュベーターにおいてインキュベートした。125μl/ウェルの培養培地を抜き取り、そして15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有する新鮮な培地(125μl/ウェル)で置換した。4日間インキュベーション後、アルカリホスファターゼ活性アッセイを行った。
図5(A)に示されるように、アルカリホスファターゼの発現が示された。図5(A)において、Dioscorea sp.のメタノール抽出物は、発現されるアルカリホスファターゼの量を増加することが示され、ここで、1000mg/kgのメタノール抽出物が最大増強効果を示した。
(2)結節形成アッセイ
異なる濃度(0、40、200、および1000mg/ml)のメタノール抽出物を経口投与したマウスおよび偽手術したマウスから得られた骨髄細胞を、1×106細胞/ウェルで24−ウェルプレート中に接種し、15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有するα−MEM培地において培養し、そして24時間37℃で5%CO2インキュベーターにおいてインキュベートした。500μl/ウェルの培養培地を抜き取り、そして15%FCS、50μg/ml アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸ナトリウムおよび10nMデキサメタゾンを含有する新鮮な培地(500μl/ウェル)で置換した。骨量の石灰化を分析するために、細胞を更に15日間インキュベートし、そして培養培地を4日毎で取り換えた。結節形成アッセイを行った。
図5(B)に示されるように、コントロールグループと比較すると、Dioscorea sp.のメタノール抽出物は、骨量の石灰化を促進し、ここで、1000mg/kgのメタノール抽出物が、最大増強効果を示した。
実施例6:骨髄細胞におけるサイトカインの遺伝子発現に対するメタノール抽出物Dioscorea spの効果
全RNAを、UltraspecTMRNA単離キット(Biotex laboratories INC,U.S.A.)を使用して、実施例4から得られた骨髄細胞から抽出した。5μg全RNAおよび2.5μgオリゴdTを10分間70℃で加熱し、10分間室温まで冷却し、次いで4μl 10mM dNTP、0.5μl rRNasin、1μl(10単位)AMV(Avian Myeloblastosisウイルス)逆転写酵素およびその緩衝液を添加し、そして最終反応容積は26.5μlであった。60分間42℃でそして次いで5分間90℃で前記反応溶液を反応させることによって、cDNAを得た。2.5μlの得られたcDNAに、0.5μl 10mM dNTP、0.5μlポリメラーゼ(2単位)およびその緩衝液、1μlの10μM標的化プライマーを添加し、そして反応混合物の最終容積は25μlであった。PCRを好適なサイクルについて行い、各サイクルは、94℃での45秒の変性、好適なアニーリング温度での45秒のアニーリング、および72℃での1分間の伸張からなった。反応産物を、2%アガロースゲルにおける電気泳動によって可視化させた。PCRプライマーの配列を表1に示した。実験結果を図6に示す。
図6に示されるように、BMP−2、TGF−β、およびIL−4の遺伝子発現が、増加される(特に、BMP−2およびTGF−β)。
Figure 0004168276
実施例7:上皮増殖因子(EGF)の存在下でのC3Hマウスの骨髄細胞の形態学的変化に対する、Dioscorea sp.のメタノール抽出物の効果
予備工程3において得られたマウスの骨髄細胞(1×104細胞/ウェル)を、N2および10ng/ml EGFを有するDMEM/F12培養培地を含有する96−ウェルマイクロプレート中に接種し、そして24時間37℃で5%CO2インキュベーターにおいてインキュベートした。メタノール抽出物およびDHEAを、それぞれ、異なるウェルへ添加した。メタノール抽出物およびDHEAが添加されずそして同一インキュベーション手順へ供した純粋培養培地を含有するウェルを、コントロールとして使用した。さらに、陽性コントロールとしての使用のために、50ng/ml EGFを使用した以外はコントロールと同一の手順を繰り返した。増殖応答を、MTTアッセイによって測定した。MTTアッセイに従って、各々のウェルに1mg/ml MTT溶液を添加し、そして4時間の反応後、MTT溶解緩衝液(20%SDS−50%DMF)を、150μg/ウェルの量でそこへ添加した。得られた混合物を16時間反応させた。吸光度をO.D.570nmで測定した。
図7に示されるように、EGFで誘発した骨髄中の前駆細胞(progenitor cells)が増殖する事象において、Dioscorea sp.のメタノール抽出物が、骨髄前駆細胞を更に刺激して有意に分化させることがわかった。より望ましい最適な結果が、使用されるメタノール抽出物の濃度が10μg/mlであった場合に得られたことに、注意され得る。10μg/mlのDioMPwが刺激のために使用された場合に、細胞は、有意に増強された増殖効果を示したことが、表2において更に示される。100μg/mlのDioMPwが使用される事象において、表2に示されるように、細胞の増殖率は、コントロールの1.9倍まで達し得る。
Figure 0004168276
実施例8:GM−CSFの存在下におけるDioscorea sp.のメタノール抽出物および更に抽出した画分で処理したマウスの骨髄細胞の増殖性応答
予備工程3において得られた1×104細胞を、96−ウェルマイクロプレートの各ウェルへ接種し、N2および4ng/ml mGM−CSFを含有するDMEM/F12培地において培養した。異なる濃度を有するDioscorea sp.のメタノール抽出物を、それぞれ、異なるウェルにおいて得られた培養細胞へ添加した。次いで、異なるウェル中の得られたメタノール抽出物含有培養細胞を、14日間37℃で5%CO2インキュベーターにおいてインキュベートした。N2および20ng/ml mGM−CSFを含有するDMEM/F12培地において培養した細胞を、陽性コントロールとして使用する。MTTアッセイを行った。この点で、1mg/ml MTT溶液を各ウェルに添加して、4時間そこにおいて該培養細胞と反応させた。MTT溶解緩衝液(20%SDS−50%DMF)を、150μl/ウェルの量で添加した。得られた混合物を16時間反応させた。吸光度をO.D.570nmで測定した。
表3に示されるように、0.001μg/ml〜1000μg/mlの範囲の濃度における、Dioscorea sp.のメタノール抽出物の刺激下で、骨髄細胞の増殖率が有意に増加された。増殖増強の点で、メタノール抽出物についての濃度の最も好ましい範囲は0.01〜1000μg/mlであることに気付かれ得る。メタノール抽出物の更なる抽出から得られた画分は、全て、細胞増殖を増強する能力を有するとわかる。それらの中でも、DioMPbおよびDioMPeは、特に、増殖の増強に対して優れた効果を有するとわかった。更に、20週齢成体マウス骨髄細胞は、1〜10μg/mlの濃度のDioscorea sp.のメタノール抽出物による刺激時に、分化し得るとわかった。メタノール抽出物の抽出された画分[これらは、水および酢酸エチルの溶媒混合物によって、或いは続いて順にブタノールおよび75%アルコールを使用して該水抽出物を抽出することによって、抽出された]の中でも、該酢酸エチル抽出された画分および該水抽出物を該75%アルコールで更に抽出することから得られる該75%アルコール抽出画分は両方とも、20週齢の成体マウス骨髄細胞の分化を促進するとわかる。しかし、同一条件下で、DHEAは、対照的に、細胞分化を増強する効果のみを示し、そして細胞増殖を増強しない。従って、幹細胞の再生および分化の両方に対する優れた効果を示すDioscorea sp.の抽出物は、化学療法によって減少されたマクロファージの数を回復させることにおいてGM−CSFを補助し得、そして化学療法アジュバントとして使用され得る。
Figure 0004168276
Figure 0004168276
実施例9:シクロホスファミドによって誘発された白血球減少症マウスの末梢血中の白血球および赤血球およびヘモグロビン含有量の数に対する、メタノール抽出物の効果
異なる濃度(0、20、100、および500mg/ml)のメタノール抽出物を、経口投与のために調製した。マウスに、200および100mg/kgのシクロホスファミド(CY)を第0日および第5日に腹腔内注射して、白血球減少症を引き起こし、そして血液を定期的に採血して、貧血(anemie)状態を引き起こした。マウスが犠牲になるまで、マウスに、第1日に異なる投薬量(容積)のメタノール抽出物を経口投与した。後眼窩洞(retro−orbital sinus)から回収した末梢血を、第0、4、8、および12日にサンプル化した。
第0、4、8、および12日に得られた血液(0.1ml)に、25μl EDTA溶液(72mg/ml)を添加して血液凝固を防止し、そしてチュルク液(0.01%クリスタルバイオレットを含む2%酢酸)で10×または20×稀釈した。白血球の数を顕微鏡でカウントした。
第8日に得られた血液(0.1ml)に、25μl EDTA溶液(72mg/ml)を添加して血液凝固を防止し、そして生理食塩水で2000×稀釈した。赤血球の数をカウントした。ヘモグロビン(Hbg)含有量を、Worthington REら,Experimental Hematology,15:85−92,1987によって記載されるように測定した。
図8〜10に示される結果から、本発明の活性な抽出物は、末梢血中の白血球数の減少を軽減しそして白血球の回復を促進し、そして赤血球およびHbg含有量を正常レベルへ維持することが示される。
本発明の特定の形態が例示および記載されているが、種々の変形が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく成され得ることが、上記より明らかであろう。従って、添付の特許請求の範囲による場合を除いて、本発明は限定されないことが意図される。
図1は、(A)Dioscorea spのメタノール抽出物及びDHEA、ならびに(B)それぞれのさらなる抽出画分のC3Hマウスの骨原性細胞の分化に対する効果を図示する棒グラフを示す; 図2は、(A)Dioscorea spのメタノール抽出物、および(B)それぞれのさらなる抽出画分の、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性によって測定された、in vitroでのマウスの骨原性細胞の成熟骨芽細胞への分化に対する効果を示す棒グラフを含む; 図3は、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症に苦しむ患者から得られた骨髄細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性に対する、Dioscorea spのメタノール抽出物のin vitroでの効果を示す棒グラフである; 図4は、(A)アルカリフォスファターゼ(ALP)活性によって測定されたマウスの骨原性細胞の成熟骨芽細胞への分化、及び(B)結節形成によって測定された健常マウスの骨髄細胞における骨量の石灰化に対する、Dioscorea spのメタノール抽出物のin vivoでの効果を示す棒グラフを含む; 図5は、(A)アルカリフォスファターゼ(ALP)活性、及び(B)卵巣摘出マウスの骨髄細胞における骨量の石灰化に対する、Dioscorea spのメタノール抽出物のin vivoでの効果を示す棒グラフを含む; 図6は、本発明によるDioscorea sp.のメタノール抽出物を経口的に投与されたマウスから単離された骨髄細胞における、サイトカインのRT−PCRの結果を示す; 図7は、上皮増殖因子(EGF)の存在下での、マウス骨髄細胞の初代培養の形態的変化に対するDioscorea sp.のメタノール抽出物の効果を示した、フェーズコントラストマイクログラフ(phase contrast micrograph)から成る; 図8は、シクロフォスファミド(CY)によって誘発された白血球減少症マウスの末梢血中の白血球数(leukocyte count)に対する、Dioscorea sp.のメタノール抽出物のin vivo効果を示す; 図9は、重度の貧血に苦しむシクロフォスファミド(CP)誘発性白血球減少症マウスの末梢血中の赤血球(RBC)数(count)に対する、Dioscorea sp.のメタノール抽出物のin vivo効果を示す棒グラフである;ならびに 図10は、重度の貧血に苦しむシクロフォスファミド(CP)誘発性白血球減少症マウスの末梢血中のヘモグロビン含有量に対する、Dioscorea sp.のメタノール抽出物のin vivo効果を示す棒グラフである。

Claims (7)

  1. Dioscorea sp.の塊茎(tuber)から酸の存在下においてアルコールベースの溶媒で抽出する工程を含むプロセスによって調製されるDioscoreasp.の抽出物を有効成分として含む骨粗鬆症の治療用薬学的組成物
  2. Dioscorea sp.の塊茎(tuber)から酸の存在下においてアルコールベースの溶媒で抽出する工程を含むプロセスによって調製されるDioscoreasp.の抽出物を有効成分として含む化学療法によって引き起こされる白血球、赤血球、赤血球細胞、又はヘモグロビンの減少を緩和するための薬学的組成物。
  3. 前記調製プロセスにおいて使用される前記アルコールベースの溶媒が、メタノール、エタノールベースの溶媒、またはこれらの混合物である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物
  4. 前記調製プロセスにおいて使用される酸が、1%酢酸である請求項1〜3のいずれかに記載の薬学的組成物
  5. 前記抽出物が、(a)酸の存在下においてアルコールベースの溶媒でDioscorea sp.の塊茎を抽出する工程、ならびに(b)酢酸エチルと水の溶媒混合物を使用して工程(a)から得られた該抽出物を抽出し、該水相中に存在する前記水抽出物から前記酢酸エチル抽出物を分離する工程を含むプロセスによって調製される、請求項1〜4のいずれかに記載の薬学的組成物
  6. 前記抽出物が、(a)酸の存在下においてアルコールベースの溶媒でDioscorea sp.の塊茎を抽出する工程、(b)酢酸エチルと水の溶媒混合物を使用して工程(a)から得られた前記抽出物を抽出し、該水相中に存在する前記水抽出物から前記酢酸エチル抽出物を分離する工程、及び(c)n−ブタノール溶媒を工程(b)から得られた該水相に添加して更なる抽出を行い、該水相中に残存している水抽出物からブタノール抽出物を分離する工程を含むプロセスによって調製される、請求項1に記載の薬学的組成物
  7. 前記抽出物が、(a)酸の存在下においてアルコールベースの溶媒でDioscorea sp.の塊茎を抽出する工程、(b)酢酸エチルと水の溶媒混合物を使用して工程(a)から得られた該抽出物を抽出し、該水相中に存在する前記水抽出物から前記酢酸エチル抽出物を分離する工程、(c)n−ブタノール溶媒を工程(b)から得られた前記水相に添加して更なる抽出を行い、該水相中に残存している水抽出物からブタノール抽出物を分離する工程、ならびに(d)工程(c)から得られた前記水相へ75%アルコール溶媒を添加してポリサッカリドを抽出しそして更に除去し、精製水抽出物を得る工程を含むプロセスによって調製される、請求項に記載の薬学的組成物
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