JP4167860B2 - 生体光計測装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光計測技術に係り、特に、生体を含む被検体内部の情報を、光を用いて計測する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近赤外領域の光を用いた生体計測技術は、脳機能の計測に応用されている。特開平09−098972号公報には、2波長の光を用いて脳機能を多点同時計測する技術が記載されており、脳機能の画像計測技術として使用されている。
【0003】
図2に示すように、頭皮2−3上から照射した光2−1を離れた地点で再び検出光2−2として検出することによって、透過光強度の変化を計測する。その変化から、照射―検出点間の大脳皮質2−5におけるヘモグロビン濃度変化を算出することが出来る。図中、2−4は頭蓋骨、2−6は計測中深部位を示す。ヘモグロビンは、酸素化状態によって酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンとに分類されるが、図3に示すように、それぞれの吸光スペクトル(吸光係数)3−1、3−2が異なっているため、異なる2波長の光を用いることにより、各ヘモグロビンの濃度変化を独立に計測することが出来る。従来は、780nm(3−3)、830nm(3−4)の波長を使用し計測することが多かった。
【0004】
酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビン濃度変化の算出式に関しては、例えば、特開平9−19480公報や、「メディカルフィジックス(Medical Physics)、1995年、第22号,1997頁〜2005頁」に記載されている。脳の活動に伴い局所的に血液酸化状態が変化するため、この酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの濃度変化が、神経活動を表す指標の1つとして用いられる。
【0005】
上記の生体光計測方法において、計測波長によって誤差の大きさが変化することが、「メディカルフィジックス(Medical Physics)、2001年、第28号6巻、1108頁〜1114頁」に開示されている。ここでは、一定の照射―検出間距離(30mm)の計測において、830nmと組み合わせる波長を従来の780nmより短くした場合の計測誤差について検討している。透過光強度および透過光強度に含まれる雑音の大きさが波長に依存しないと仮定した場合、780nmの波長を短くすると、脱酸素化ヘモグロビンに対する吸光係数が大きくなり、ヘモグロビン濃度変化に対する計測誤差が低減する。理論的に示される計測誤差の波長依存性を、図4に示す。横軸には、一方の計測波長を830nmに固定した場合のもう一方の計測波長を示し、縦軸には、計測誤差(雑音の振幅)を示した。また、4−3は従来多く用いられてきた波長780nmを示す。元信号(透過光信号)に含まれる雑音の大きさは各波長で一定であると仮定し、酸素化ヘモグロビンの計測誤差(点線4−1)と、脱酸素化ヘモグロビンに対する計測誤差(実線4−2)を示した。この理論的予測の妥当性は、頭頂部の計測(被検体数=1)で確認されている。
【0006】
以上のように、従来の計測装置で多く用いられてきた780nmの光を短波長化することにより、計測誤差が小さくなる傾向が知られている。
【0007】
生体光計測に適した波長の選択方法としては、例えば、特開平7−222736号公報に記載されている。ここでは、反射光ではなく生体中を通過した光を測定する計測法において、測定対象の大きさ、つまり照射−検出間距離を考慮した波長の選択方法が提案されている。選択基準となる条件は、「ヘモグロビンの酸素化状態を精度よく計測する」という条件と「充分な通過光量を得る」という、下記に示す2点である。
【0008】
▲1▼酸素化ヘモグロビンの吸収量と脱酸素化ヘモグロビンの吸収量の差が大きい波長の方が、ヘモグロビン酸素化状態の変化を精度よく検出できる。従って、600nm台の短い波長域が適している。
【0009】
▲2▼充分な通過光量を検出するためには、生体に対する光透過性の高い波長が必要である。従って、700nm後半〜900nmの長波長域が適している。
【0010】
上記各条件を満たす波長域は異なっているため、上記の公知例では通過光量を変化させる一つの要因「照射−検出間距離」に応じて、両条件を考慮して照射−検出間距離に合わせた最適波長を選択する方法が開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
生体内部の情報を反射光によって計測する方法においては、同じ深部を計測する必要があり、また、複数の計測点を設けて画像化する場合もあるため、照射―検出間距離を一定にした計測方法が採られる。従って、照射―検出間距離の変化に応じて波長を選択する従来技術では、常に一定の計測波長を用いていた。
【0012】
しかし、様々な部位を計測した結果、同じ照射―検出間距離の計測でも、組織構造が異なる部位では計測誤差の低減に適した波長が異なる。830nmと組み合わせる波長を短く変化させた場合、ある値の波長までは計測誤差が漸次低減するが、ある値の波長を境に増加に転じる。
【0013】
例えば、骨や皮膚に代表される生体の組織は、それぞれが異なる光特性(光吸収・光散乱係数)を持つことが知られている。また、人間の頭部は部位によって骨や皮膚、筋肉層の厚さが異なっており、部位毎に光特性が異なる。そのため、照射−検出間距離に合わせて波長を選択する方法では、高精度の信号を得ることが出来ないという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、照射−検出間距離が一定の場合でも、計測誤差をさらに低減し得る生体光計測技術を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、異なる波長を持つ複数の光源から、計測する被検体(生体)部位の組織構造及び光特性に応じた波長の光源を選択する。もしくは、任意の波長を照射できる波長可変光源を備え、計測する生体部位の組織構造及び光特性に応じた波長を選択するよう構成する。
【0016】
図1は、本発明の基本概念を示す。被検体の計測部位を分類し、その分類に応じて異なる計測波長を設定する。被検体として、頭部を例に説明すると、例えば、頭部を頭頂部1−1、前頭部1−2、側頭部1−3、後頭部1−4の4つの部位に分類し、波長選択システム1−6においてそれぞれの組織構造に応じた波長を設定しておく。計測の際には、各計測部位に応じた波長を多波長光照射手段1−5により選択する。
【0017】
選択した波長の光を、複数の計測点に応じて信号を分離できるよう各位置所定の周波数で変調し、それぞれの光結合器に送信する。各光結合器では、異なる波長の光信号と混合され、照射用光ファイバに送信される。混合される波長は、異なる波長を持つ複数の光源から選択された波長、もしくは波長可変光源によって選択された波長、もしくは固定の光源から照射される一定の波長とする。
【0018】
照射用光ファイバからの混合光を生体に照射し、生体からの透過光信号を検出用光ファイバで検出する。検出された光信号を電気変換後、選択された光信号用の変調周波数で復調器により信号検出する。これらの信号を記録し、ヘモグロビン濃度変化を算出する。その変化に基づいて、脳活動を示す画像を取得する。
【0019】
なお、より正確に波長を設定する場合には、人種・年齢・性別など、他の生体特性を考慮して決定することもあり得る。
【0020】
また、本発明では、本計測の前に異なる波長を持つ複数光源を用いてテスト計測を行い、ヘモグロビン濃度変化に対する誤差を算出し、その誤差の大きさに基づき波長を選択するよう構成する。生体に対する透過率の観点から、事前テスト計測には600nm〜900nmの波長を用いる。
【0021】
複数の計測点で事前テスト計測を行う場合、光はそれぞれの計測点に応じた所定の周波数で変調され、光結合器に送信される。混合された光信号は、光照射用光ファイバに送信され、計測部位に照射される。計測部位からの光信号を検出用光ファイバで検出し、電気変換した後、選択された光信号用の変調周波数を利用して復調器により信号検出する。検出された光信号から、それぞれの波長組み合わせにおけるヘモグロビン濃度変化およびその誤差を算出する。誤差の大きさを比較することによって、本計測に用いる波長を選択する。
【0022】
事前テスト計測の結果から選択された波長の光は、複数の計測点に応じて信号を分離できるよう各位置所定の周波数で変調し、それぞれの光結合器に送信する。各光結合器では、異なる波長の光信号と混合され、照射用光ファイバに送信される。混合される波長は、異なる波長を持つ複数の光源から選択された波長、もしくは波長可変光源によって選択された波長、もしくは固定の光源から照射される一定の波長とする。照射用光ファイバからの混合光を生体に照射し、生体からの透過光信号を検出用光ファイバで検出する。検出された光信号を電気変換後、選択された光信号用の変調周波数で復調器により信号検出する。これらの信号を記録し、ヘモグロビン濃度変化を算出する。その変化に基づいて、脳活動を示す画像を取得する。
【0023】
本計測の前にテスト計測を行う効用は、以下のとおりである。多波長を用いた計測では、記録・処理するデータ量も波長の数に応じて増えるため、コストが増大する。したがって、短時間の事前テスト計測の結果から使用する波長を選択し、最小限の波長数にすることでコストの低減を実現することが出来る。また、更にコストを低減するためには、事前テスト計測を全計測点ではなく代表的な計測位置だけで行うことも可能である。
【0024】
以下に、本発明による計測する生体部位に応じて異なる波長を選択する理由について述べる。
【0025】
様々な部位を計測した結果、計測誤差の低減に適した波長は、計測する生体部位によって異なることを見出した。ある部位で計測誤差が増加した波長を検討すると、透過光強度は弱まり、雑音が大きくなっていた。短波長化に従い全ヘモグロビンの吸収が強まったため、皮膚や頭蓋骨、脳内での光吸収量が増加し、検出される透過光強度が減衰したと考えられる。透過光強度の弱まりに応じて信号増幅器による増幅率を上げるため、検出される透過光強度に含まれる装置系雑音も大きくなる。つまり、透過光強度の雑音が短波長化に従い増大してしまうため、実際の計測誤差は短い波長ほど理論曲線(先述した図4)から外れる傾向を持つ。従って、最終的な計測誤差の低減効果は、各波長の吸光係数によって決定される理論的な計測誤差と、計測部位によって異なる実際の透過光強度に含まれる雑音の両方によって、決定される。
【0026】
以上のように、同じ照射−検出間距離であっても、計測誤差を低減させる波長を一律には選択できないことが分かった。照射−検出間距離に応じて波長を設定する従来の方法では、同じ照射−検出間距離であれば常に一定の波長を用いることしか出来なかった。そのため、例えば、その照射−検出間距離で計測誤差の低減が予測された波長を用いても、透過光強度に含まれる雑音が吸光係数から予測された計測誤差の低減効果を上回り、誤差が増大する場合があった。また、逆に、透過光強度に含まれる雑音が小さい場合には、計測誤差を更に低減させる波長が使用可能であっても、照射−検出間距離に応じた波長しか選択されなかった。
【0027】
骨や皮膚に代表される生体の組織は、それぞれが異なる光特性(光吸収・光散乱係数)を持つことが知られている。人間の頭部は部位によって骨や皮膚、筋肉層の厚さが異なっており、部位毎に光特性が異なることを見出した。従って、同じ波長の光を照射しても、計測部位によって透過光強度および透過光強度に含まれる雑音が異なる。計測部位によって計測誤差の低減に適した波長域が異なるため、照射−検出間距離が一定の場合でも、計測部位の違いを考慮した波長選択方法が必要になる。
【0028】
また、計測部位によっては個人差が大きく、同じ部位を同じ波長で計測しても、誤差が低減する場合としない場合とが混在した。先述の特開平7−222736号公報には、事前に透過光強度を計測し使用する波長を選択する方法が記載されているが、透過光強度によりその波長を用いた計測が可能かどうか判断するだけであった。計測対象であるヘモグロビン濃度変化に対する計測誤差には、その波長のヘモグロビン吸光係数と、透過光強度に含まれる雑音の大きさの両方が影響するため、透過光強度だけを基準にした波長の評価は不充分である。
【0029】
そのため、例えば、計測には不充分だと判断された透過光強度の波長であっても、吸光係数による誤差の低減効果が大きく計測精度が良くなる場合が存在した。このような場合には、透過光強度だけではなく、透過光強度信号に含まれる雑音の大きさと、計測波長の吸光係数から予測される計測誤差の両方を考慮した波長選択方法が重要となる。
【0030】
このように、本発明では、照射−検出間距離が一定の場合でも、組織構造の違いに起因する光特性の違いを考慮して、各計測部位に応じた波長を選択し得る計測技術を実現し、また、計測対象であるヘモグロビン濃度変化に対する計測誤差を基準にして波長を選択し得る生体光計測技術を実現する。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
【0032】
(実施例1)
本発明の第1の実施例を、図5に示す装置構成に従い、説明する。本実施例の装置は、パーソナルコンピュータやワークステーション等に代表される電子計算機から構成される制御装置5−3と、波長の異なる複数の光源(本実施例では、それぞれ波長の異なる4個の光源、光源5−5(678nm)、光源5−6(692nm)、光源5−7(780nm)、光源5−8(830nm))と、上記複数の光源を異なった周波数で変調する変調器5−4と、ケーブル5−10を通して上記制御装置5−3から伝えられる命令により制御される光選択スイッチ5−9と、上記変調器5−4により変調された1波長(本実施例では、光源5−8(830nm))の光と上記光スイッチ5−9により選択された波長の光を結合する光結合器5−11と、上記光結合器5−11からの光を光照射用光ファイバ5−13を通して被検体5−18の頭皮上の異なる位置に照射する複数の光照射手段と、上記複数の光照射手段の光照射位置から等距離(本実施例では、30mmとする。)の位置に先端が位置するよう設けられた複数の光検出用光ファイバ5−14とそれぞれに設けられた光検出器5−12からなる複数の受光手段と、上記変調器5−4からの変調周波数が参照信号として入力されるロックインアンプ5−1とを備える。
【0033】
本実施例では、複数の光信号を1点から検出しているが、変調器を用いることによって、どの照射位置からの信号かを区別している。このように複数の光信号を分離する方法以外にも、変調器は使わずにパルス光を用いて、点灯タイミングで光信号を分離することも可能である。
【0034】
また、一方の波長のみを複数の光源から選択しているが、両方の波長を複数光源から選択することも可能とする。
【0035】
図中、被検体5−18上に示した白丸(○印)および黒丸(●印)は、各々、光照射用の光ファイバを配置する光照射位置(本実施例では、計4箇所)および光検出用の光ファイバを配置する光検出位置(同、5箇所)であり、交互に配列される。光照射位置と隣り合った光検出位置の各略中点を各計測位置5−15とする(同、12箇所)。
【0036】
図5には、一つの計測位置5−15における計測の装置構成のみ枠内5−16に記したが、他の計測位置でも同様に計測される(例えば、枠5−16の中身は枠5−17と同じ構成となる。)。
【0037】
本実施例では、被検体を部位により分類し、それぞれの部位に応じて波長組み合わせを制御装置で選択する。図6に、実験者が操作する制御装置のインターフェース画面の1例を示した。プルダウンメニュー6−1から「部位選択」を選択すると、被検体分類6−2および計測部位分類6−3を設定するラジオボタンが表示される。被検体および計測部位に応じて該当箇所をチェックすると、一定の規則に従い計測対象に最適な波長が選択され、表示部6−4に表示される。例えば、「成人」「側頭部」を選択すると「692/780nm」の光が選択される規則などである。
【0038】
この選択規則は、核磁気共鳴画像法等を用いて、データベースとなる研究を元に設定したり、実験者の経験的な知見やシミュレーション結果から任意に設定したりすることが出来る。設定は、ソフト開発者のみが行える場合と各ユーザーが任意に行える場合の両方が可能である。
【0039】
また、図7に示すように、プルダウンメニュー7−1から例えば「部位選択」選択し、ラジオボタン7−2により「成人」を設定して、個々の計測チャンネル毎にプルダウンメニュー7−3から計測部位を入力し、表示部7−4においてそれぞれ適した波長を設定することも可能である。ある程度広い部位を計測する場合には、このように計測チャンネル毎に異なる波長を設定する必要がある。
【0040】
制御装置により決定された波長は、ケーブル5−10を介して波長選択スイッチ5−9に伝えられ、選択される。結合器5−11において、830nmの光5−8と混合された後、その混合光は上記の光照射手段5−13より所定の光照射位置に照射される。隣の光検出位置から光検出用ファイバ5−14で集光された生体透過光は、光検出器5−12によって光電変換される。上記受光手段は被検体内部で反射して戻ってきた光を検出し電気信号に変換するためのもので、例えばアバランシェフォトダイオードに代表される光電変換素子を用いる。光検出器で光電変換された透過光信号は、それぞれロックインアンプ5−1に入力される。 ここで、各光検出器5−12は、検出器から等距離にある複数の照射点からの入射光を検出し、更にそれぞれの入射光は異なる2波長が混合されているため、各計測位置および波長毎に透過光信号を分離する必要がある。ロックインアンプ5−1には、各変調器5−4からの変調周波数が参照周波数として入力されているため、個々の光源に対応した生体透過光強度を分離し、出力することができる。
【0041】
ロックインアンプの出力である分離された各波長の透過光信号は、アナログ−デジタル変換器5−2でアナログ−デジタル変換された後、制御装置5−3に入力され記憶される。この透過光信号を元に各計測部位におけるヘモグロビンの濃度変化が算出され、画像化される。
【0042】
なお、詳細な信号処理過程に関しては、特開平9−19480号公報や、「メディカルフィジックス(Medical Physics)、1995年、第22号,1997頁〜2005頁」などに記載されている。
【0043】
以上のように、本実施例では、計測対象を部位により分類し、それぞれの分類における標準的な透過光強度および各波長のヘモグロビン吸光係数を考慮して波長を選択する。そのため、算出された各ヘモグロビン濃度変化に対する計測誤差は、従来と比べて小さくなる。
【0044】
この実施例の有効性を、図8に示す。これは、計測精度を計測誤差(刺激がない状態におけるヘモグロビン変化の標準偏差)で評価し、計測波長に依存した計測精度の変化を示した図である。ここでは、多点同時計測による画像化技術を前提としており、測定サイズを30mmに統一し計測した。4箇所の計測部位(頭頂部・前頭部・側頭部・後頭部)において、従来多く用いられてきた波長組み合わせ(780/830nm)と、理論的に計測誤差の低減が予測された波長組み合わせ(678/830nm、692nm/830nm)を同時に用いて計測を行った。脱酸素化ヘモグロビンを対象に、780/830nmの波長を用いた計測における計測誤差を1として、各計測波長による計測誤差を相対的な値で示した。
【0045】
その結果、頭頂部・前頭部・後頭部においては計測波長が短くなるにつれて計測誤差が減少する傾向を示した。しかし、側頭部に関しては、692/830nmで極小値を示して678/830nmでは逆に大きくなった。この傾向は、複数の被検体で一致しており、典型的パターンの一つと考えられる。従って、標準的な選択基準を「頭頂部・前頭部・後頭部は678/830nm、側頭部は692/830nm」と設定しておけば、従来の計測波長780/830nmより精度が向上する。
【0046】
本実施例に示した被検体群が代表的被検体であり、且つ個人差は小さいと仮定すると、上記のような選択基準が出来る。本発明の装置を使わずに計測精度を向上させる標準波長を一律に決めた場合、計測部位によっては最適な波長を設定できない。例えば、前頭部を基準に選択して「678/830nm」を標準的な波長として装備してしまうと、側頭部の計測においては最適な波長を用いることが出来なくなる。このような観点から、計測部位に応じて波長を選択することの有効性は高い。
【0047】
上記の計測例は、限定された波長を用いて特定の被検体群で検討した例なので、適切な波長や計測部位の分類は必ずしもこの通りではない。計測誤差を小さくする波長は、各計測部位の吸光係数、つまり組織構造の違いに依存するため、被検体群や計測部位の分類方法の違い、あるいは用いる波長の違いによって適切な選択基準が異なる場合が考えられる。また、計測誤差を小さくする波長は透過光強度に依存することから、照射光自体の強度によっても選択基準は変化する。
【0048】
上記例の重要なことは、同じ照射−検出間距離の計測においても計測誤差を小さくする計測波長は計測部位によって異なるため、計測部位に応じて波長を選択することによって効果的に計測精度を向上させることが可能であるという点である。
【0049】
(実施例2)
本発明の第2の実施例は、光源の選択機能以外は実施例1と共通である。実施例1との相違点を、図9に示す装置構成に従い説明する。
【0050】
本実施例の装置では、波長を選択する光スイッチを用いない。9−5、9−6、9−7、9−8に示したような複数の波長の光を結合器9−11で結合した後、実施例1と同様に計測を行う。各波長の光信号は分離して計測するため、計測後に複数の波長組み合わせによるデータを取得できる。それらのデータから、計測位置毎に適切なデータを選択する。または、複数のデータを使い平均化するなど、より安定したデータを取得する。
【0051】
図9に示す装置では、波長を選択することなく候補となる波長組み合わせを全て使い計測するため、事前に波長を選択する必要がない。従って、部位からだけでは予測不能な個人差などを計測後に確認することが出来る。また、複数の波長組み合わせのデータを用いた信号安定化が可能となる。本実施例では、各光信号を変調器で周波数変調することによって計測位置に応じて複数の光信号を分離しているが、変調器は使わずにパルス光を用いて点灯タイミングで光信号を分離することも出来る。
【0052】
(実施例3)
本発明の第3の実施例は、光源以外は実施例1と共通である。実施例1との相違点を、図10に示す装置構成に従い説明する。
【0053】
本実施例の装置で用いる光源は、波長を自由に変化させることが出来る波長可変光源10−5である。制御装置10−3で計測波長が決定され、その命令がケーブル10−10を介して伝えられると、その命令に従い波長が設定される。任意の波長を設定した2つの波長可変光源10−5を、結合器10−11で結合し、実施例1と同様に計測を行う。もしくは任意の波長を設定した波長可変光源と特定の波長を持つ固定光源の2波長を結合し、計測を行うことも可能とする。
【0054】
図10の装置では、各光信号を変調器で周波数変調することによって、計測位置に応じて複数の光信号を分離している。しかし、変調器は使わずにパルス光を用いて、点灯タイミングで光信号を分離することも出来る。
【0055】
本実施例の効果は実施例1と共通だが、連続的に波長を変化させて設定することが可能であるため、限界近くまで計測誤差を低減させることが出来る。更に、1台の装置であらゆる年代・人種の被検体に対する計測を可能とする。
【0056】
(実施例4)
本発明の第4の実施例は、装置構成の一部と選択波長の設定方法以外は、実施例1と共通である。実施例1との相違点を、図11に示す装置構成に従い説明する。
【0057】
本実施例の各光照射手段は、それぞれ2波長の光源を備え、予め定められた波長組み合わせを照射する。例えば、光照射用光ファイバ11−12を含む光照射手段で照射される光は692nmと830nmの混合光、光照射用光ファイバ11−14を含む光照射手段で照射される光は780nmと830nmの混合光、光照射用光ファイバ11−16を含む光照射手段で照射される光は678nmと830nmの混合光となる。また、かかる光照射手段に対応して、それぞれ光検出用光ファイバ11−11、11−13、11−15を含む光検出手段が装備される。このように、各光照射手段が異なる波長の光を照射できる装置構成を用いて、複数種類の波長組み合わせを使用できるようにした。
【0058】
実施例1と同様に、計測部位によって波長組み合わせを選択する。具体的な波長設定方法が実施例1と異なり、計測部位に応じた波長の照射用光ファイバを手動で設定する。例えば、照射する波長によって各光ファイバの色を変え、被検体11−18の頭部に装着する各計測部位用のヘルメット11−17、11−23、11−26上のファイバ固定具(11−19、11−20;11−21、11−22;11−24、11−25)も、該当する波長の光ファイバと同じ色で着色する。このように選択する光ファイバを区別し易くすると、計測部位毎に決められた光ファイバを正しく装着することが容易になる。
【0059】
以上のように、本実施例では異なる波長光を照射する複数の光照射手段から、各計測部位に応じた波長を照射する光ファイバを手動で選択する。この方法により、実施例1と同様に各ヘモグロビン濃度変化に対する計測誤差を従来方法より小さくすることが可能である。また、実施例1と比べて、ひとつの照射手段には2つの光源しか装備しないため、波長を切り替える必要がなく、少ないコストで実施可能である。
【0060】
(実施例5)
本発明の第5の実施例の装置構成および全般的な計測方法は、実施例1で説明した図5と共通であるため、省略する。以下に、実施例1とは異なる波長選択方法について説明する。
【0061】
本実施例では、装備された波長の中から最も計測誤差を小さくする波長を制御装置5−3で判断し選択する。具体的には、装備された全ての波長を用いて事前テスト計測を行い、算出されたヘモグロビン濃度変化に対する計測誤差が最も小さくなる波長組み合わせを各計測位置で設定する。
【0062】
図12に、実験者が操作する制御装置のインターフェース画面例を示した。プルダウンメニュー12−1から「テスト計測」を選択すると、テスト計測開始ボタン12−3が表示される。計測前にテスト計測を実行すると、各波長組み合わせにおける計測誤差の大きさが12−2に、また、選ばれた最適波長が12−4に表示される。
【0063】
選択された計測波長は光スイッチ5−9によって設定され、各計測部位へ照射される。この方法は、透過光強度自体ではなく算出したヘモグロビン濃度変化の計測誤差を評価するため、透過光信号の減衰及び各波長の吸光係数の両方を考慮した総合的な判断が可能である。また、適切な波長が分からない場合や部位選択方法ではうまく行かない場合に探索的に用いることができる。
【0064】
この方法で波長を選択した場合、同時に図6や図7の部位選択方法で示したような部位の分類を入力することによって、そのデータをデータベースとして蓄積することが出来る。そのデータベースを部位選択方法の選択基準に反映させることにより、部位選択方法の信頼性が継続的に向上する。前述の実施例1と同様に、この事前テスト計測による結果も計測チャンネル毎に算出し、それぞれに適した波長を選択することが可能である。
【0065】
本実施例の効果は、図8および図14の計測例から示される。実施例1、2で示した波長選択方法は、被検体間で傾向が一致している計測部位では有効だが、計測部位によっては被検体間で傾向が異なるため、本実施例を用いた方が良い場合がある。例えば、図14に示した被検体では、頭頂部と後頭部では678/830nmにおける計測誤差が692/830nmより大きくなっており、図8で示した被検体とは異なった傾向を示した。このように、計測誤差を小さくする波長の傾向が被検体間で異なる頭頂部と後頭部においては、事前テスト計測の結果から計測波長を選択する方法が有効であると考えられた。
【0066】
また、多点を同時に計測し、課題に応じた長さの計測を繰り返し行う本計測に対し、事前テスト計測では、多点を計測する必要はなく、計測時間も短時間で充分である。従って、本計測まで多波長で計測する方法と比較した場合、事前テスト計測によって使用波長を限定する方法はコスト面で優れている。つまり、記録・処理するデータが少なくて済むため、制御装置に対する負担が小さい。
【0067】
計測対象を計測部位によって分類しなくても、事前テスト計測を用いると図8および図14に示したような各波長組み合わせにおける計測誤差が算出され、計測誤差を小さくする波長組み合わせを選択することが出来る。従って、図8の被検体を計測した場合では、頭頂部・前頭部・後頭部には678/830nmの計測波長を選択し、側頭部を計測した場合には692/830nmを選択する。また、図14の被検体では前頭部を計測した場合は678/830nmの計測波長を選択し、頭頂部・側頭部・後頭部を計測した場合は692/830nmを選択する。このように、部位選択方法では対応できない場合にも計測波長を設定することが出来る。
【0068】
この選択方法は、計測対象を正確に分類できない場合や、部位選択法により選択された波長が適切でない場合も含め、殆どの場合に有効である。例えば、毛根の太さや皮膚の色など、個人差が大きく実際に計測しなければ知る事の困難な要因を考慮し、適切な波長を選択することが出来る。
【0069】
(実施例6)
本発明の第6の実施例は、波長の決定のための事前テスト計測用の光照射検出手段と、この事前テスト計測等で使用する光の波長の組が定まったとき選択的に使用する複数組の本計測用の光照射検手段、光検出手段を有する。
【0070】
図13に、その構成を示す。事前テスト計測用の光照射検出手段13−16の内部構成は図9のブロック9−16と同様であり、同一部分には図9と同一符号を付してある。この例でも候補となる波長の組み合わせは678/830nm、692、/830nm、780/830nmである。これら波長の光を全て用いてテスト計測をするために複数の光源9−5、9−6、9−7、9−8を備え、各光源は変調器9−4で異なった周波数で変調される。光結合器9−11で混合され、光照射用光ファイバ9−13で照射位置に導かれた照射光による検出信号は、ロックインアンプ9−1で波長毎の検出信号に分離される。分離された各検出信号はアナログ−ディジタル変換器13−7を介して制御装置13−8に取り込まれる。
【0071】
本実施例では、事前テスト計測用の光照射検出手段13−16は一組だけ備えるので、被検体13−18の代表的計測位置13−20を選んでテスト計測を行うことになる。光検出器9−12の数を増やし、あるいは更にテスト用の光照射手段の数も増やす変形、つまり複数の計測点でテスト計測を行うことができるようにする変形も可能である。前述の実施例5と同様に、事前のテスト計測で得た複数波長の検出信号からそれぞれの波長の組み合わせによる計測誤差を算出し、計測誤差が最も小さい波長の組み合わせを選択する。
【0072】
本実施例は、上述の候補となる波長の組み合わせ毎にそれぞれ専用に、計測用の光照射手段を備える。678/830nmの計測のため光照射手段13−21は変調器13−10、678nm光源13−11、830nm光源13−14、および光結合器13−15を含む。また、これに対応して光検出器13−22とロックインアンプ13−9を含む光検出手段を備える。692/830nmの計測のための光照射手段13−23、及び780/830nmの計測のための光照射手段13−25も同様に構成されている。ただし光源13−12は692nm、光源13−13は780nmの波長のものである。図は略してあるが、波長の組み合わせ毎に、それぞれ光照射位置の数だけ光照射手段がある。同様に、波長の組み合わせ毎に、それぞれ光検出位置の数だけ光検出手段があり、全てのロックインアンプの出力はアナログ−ディジタル変換器13−7を介して制御装置13−8に接続されている。
【0073】
上述の事前のテスト計測により本計測での波長の組み合わせが決まると、被検体13−18に装着するファイバ固定具に固定された光ファイバを、対応する光照射手段および光検出器にそれぞれ接続する。以上で、選択した波長の組み合わせによる計測が可能となる。
【0074】
本実施例では、多波長光の混合機能とそれに対応する分離機能を備える特殊なテスト計測用の光照射検出手段の数が少数であり、本計測用の光照射手段、光照射手段は2波長混合、2波長分離という従来どおりの構成でよい。よって、装置コストの上で有利である。また、本計測用の光照射手段の構成を更に変形し、図5に示す光スイッチで波長が選択可能な光照射手段を採用することも可能である。この変形では装置トータルの光源の数が減る。また、光ファイバの接続は固定したままで、光スイッチの操作で波長の選択が完了するので、装置操作がより簡便となる利点をも有する。
【0075】
(実施例7)
本発明の第7の実施例の装置構成および全般的な計測方法は実施例1と共通であるため、省略する。以下に、実施例1とは異なる波長選択方法についてのみ説明する。
【0076】
本実施例では、候補となる複数の計測波長組み合わせから、任意の波長を実験者が直接選択する。図15に、実験者が操作する制御装置のインターフェース画面を示した。プルダウンメニュー15−1から「直接選択」を選択すると、選択できる複数の波長組み合わせが表示される。用いる波長組み合わせの左にあるラジオボタン15−2をチェックすることによって、その波長組み合わせが採用される。
【0077】
また、図16に示すように、プルダウンメニュー16−1から「直接選択」を選択すると、個々の計測チャンネル毎のプルダウンメニュー16−2より計測波長を選択し、設定することも可能である。実施例1と同様に、決定された波長は波長選択スイッチ5−9によって設定され、結合器5−10に入る。あるいは、実施例3と同様に波長可変光源10−5によって適切な波長が設定され、結合器10−7に入る。部位選択を適用できない場合や事前に適切な計測波長が分かっている場合、あるいは何らかの理由で特定の計測波長を使いたい場合に有効である。
【0078】
また、図11や図13に示したような固定の波長を照射する光照射手段および光検出器を複数種類備えた装置構成においては、任意の光照射手段を手動で選択することも出来る。
【0079】
以上の詳述した実施例に関し、波長設定方法の各選択過程をフローチャートとして、図17、図18、図19に示した。
【0080】
図17は、本発明の実施例1、2、3、5、7に関する波長選択アルゴリズムを示すフローチャートで、選択した波長の設定を制御装置により行う場合を示す。
【0081】
図18は、実施例4、6、7に関する波長選択アルゴリズムを示すフローチャートで、選択した波長の設定を手動で行う場合を示す。
【0082】
また、図19は、計測波長を設定した後の本計測の流れを示したものである。
【0083】
以上詳述したように、本発明は、生体光計測において、計測部位に応じて波長を設定でき、また、各計測位置の透過光信号に含まれる雑音とヘモグロビン吸光係数に依存した最終的な計測誤差に応じて波長を設定できるため、最大限に計測誤差を低減させることが出来る。従来の計測方法より信号検出力が高まるため、雑音の除去に必要な加算平均の回数が減り、計測時間の短縮・被検体への負担軽減などの効果が得られる。また、多点同時計測を用いた画像計測、特に全脳を計測する装置においては、各計測位置に応じて波長を選ぶことが出来るので、全体の誤差のばらつきが最小限になるよう波長を選択する事が出来る。各計測点のS/Nを揃えることによって、異なる計測位置の信号を比較することが可能となる。
【0084】
以下に、本発明に含まれる構成例を列挙する。
【0085】
(1)被検体へ光を照射する光照射手段と、前記光照射手段から照射され前記被検体内を伝播した通過光を検出する受光手段とを被検体上に配置し、前記受光手段によって検出された信号に基き、前記光照射手段と前記受光手段の略中点位置を計測点として被検体内の情報を計測するよう構成した生体光計測装置において、前記光照射手段が、それぞれ異なる波長を持つ複数の光源を有し、かつ、前記複数の光源から前記被検体における計測部位の組織構造および光特性に応じた波長をもつ光源を選択し、計測するよう構成したことを特徴とする生体光計測装置。
【0086】
(2)前記(1)記載の生体光計測装置において、前記波長の選択は、計測対象を前記計測部位によって分類し、前記計測部位毎に予め設定した波長から選択するようにしたことを特徴とする前記(1)記載の生体光計測装置。
【0087】
(3)前記(1)記載の生体光計測装置において、前記波長の選択は、複数の計測波長を用いて予めテスト計測を行い、計測対象信号に対する誤差を算出して、その誤差の大きさに基づき波長を選択するようにしたことを特徴とする生体光計測装置。
【0088】
(4)前記(1)記載の生体光計測装置において、予め設定した基準に従い計測対象に応じた波長選択方法を表示する表示部を設けてなることを特徴とする生体光計測装置。
【0089】
(5)前記(1)記載の生体光計測装置において、前記光照射手段が、任意の波長の光を照射できる波長可変光源を有し、前記複数の光源および前記波長可変光源のうちいずれかの光源を選択することにより、前記被検体における計測部位の組織構造および光特性に応じた波長を選択し得るよう構成したことを特徴とする生体光計測装置。
【0090】
(6)被検体へ光を照射する光照射手段と、前記光照射手段から照射され前記被検体内を伝播した通過光を検出する受光手段とを被検体上に配置し、前記受光手段によって検出された信号に基き、前記光照射手段と前記受光手段の略中点位置を計測点として被検体内の情報を計測するよう構成した生体光計測装置において、前記光照射手段が、任意の波長の光を照射できる波長可変光源を有し、かつ、前記被検体における計測部位の組織構造および光特性に応じて前記光源の照射光の波長を選択するよう構成したことを特徴とする生体光計測装置。
【0091】
(7)前記(6)記載の生体光計測装置において、前記波長の選択は、計測対象を前記計測部位によって分類し、前記計測部位毎に予め設定した波長から選択するようにしたことを特徴とする生体光計測装置。
【0092】
(8)前記(6)記載の生体光計測装置において、前記波長の選択は、複数の計測波長を用いて予めテスト計測を行い、計測対象信号に対する誤差を算出して、その誤差の大きさに基づき波長を選択するようにしたことを特徴とする生体光計測装置。
【0093】
(9)前記(6)記載の生体光計測装置において、予め設定した基準に従い計測対象に応じた波長選択方法を表示する表示部を設けてなることを特徴とする生体光計測装置。
【0094】
(10)前記(6)記載の生体光計測装置において、前記光照射手段が、それぞれ異なる波長を持つ複数の光源を有し、前記波長可変光源および前記複数の光源のうちいずれかの光源を選択することにより、前記被検体における計測部位の組織構造および光特性に応じた波長を選択し得るよう構成したことを特徴とする生体光計測装置。
【0095】
(11)被検体の所定の照射位置へ光を照射する工程と、前記被検体内を伝播した通過光を所定の受光位置で検出する工程と、検出された信号に基き、前記被検体上の前記光照射位置と前記受光位置の略中点位置を計測点として前記検体内の情報を計測するよう工程とを有し、前記被検体への光照射を、異なる波長の光を照射できる複数の光源もしくは任意の波長の光を照射できる波長可変光源を用いて行い、かつ、前記複数の光源もしくは前記波長可変光源から、前記被検体における計測部位の組織構造および光特性に応じた波長を選択し計測するよう構成したことを特徴とする光計測方法。
【0096】
(12)被検体内部の情報を光を用いて測定する装置に関して、計測部位の組織構造の違いに応じて、その部位の光特性に合わせた波長を選択し計測する生体光計測装置。
【0097】
(13)被検体に可視から近赤外領域までの波長の光を照射する複数の光照射手段と、上記光照射手段から照射され、上記被検体内部で通過した光を検出する複数の受光手段と、上記受光手段で検出された信号を複数の受光手段毎にかつ経時的に記憶する記憶手段と、上記記憶手段に記憶された信号を用いて複数の計測点毎に計測対象の信号に変換する演算手段と、上記演算手段の出力を推定測定点の信号として求め二次元表示面に強度信号として画像表示する画像作成部を持つことを特徴とする生体光計測装置において、計測部位の組織構造の違いに応じて、その部位の光特性に合わせた波長を選択し計測する生体光計測装置。
【0098】
(14)前記(12)および(13)に関して、計測対象を部位によって分類し、その部位毎に予め設定した波長の光を選択し照射する生体光計測装置。
【0099】
(15)前記(12)および(13)に関して、複数の計測波長を用いた事前テスト計測を行い、計測対象信号(例: 酸素化ヘモグロビン)に対する誤差を評価し、その値を基準に計測波長を選択する生体光計測装置。
【0100】
(16)前記(12および(13)に関して、各計測位置における組織構造の特徴を核磁気共鳴画像法などによって取得し、その特徴に応じて波長を選択する生体光計測装置。
【0101】
(17)前記(12)〜(16)の照射する波長を可変とする生体光計測方法に関して、予め装備された複数の光照射手段から適切な波長を照射する光照射手段を選択する方法か、連続的に波長を変化させられる光源を備え適切な波長を設定し照射する方法のどちらか、もしくは両方の手段を持つ生体光計測装置。
【0102】
【発明の効果】
本発明によれば、照射−検出間距離が一定の場合でも、組織構造の違いに起因する光特性の違いを考慮して、各計測部位に応じた波長を選択できるため、また、計測対象であるヘモグロビン濃度変化に対する計測誤差を基準にして波長を選択できるため、計測誤差をさらに低減し得る生体光計測技術を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本概念を示す図。
【図2】光を用いた脳機能計測技術の基本原理を示す概念図。
【図3】酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの吸光スペクトルおよび生体光計測装置で多く使用される計測波長を示す図。
【図4】理論的に求められる計測誤差の波長依存性を示す図。
【図5】本発明の第1の実施例に関する装置構成例を説明する図。
【図6】本発明の第1の実施例に関する波長選択画面の表示例を示す図。
【図7】本発明の第1の実施例に関する波長選択画面の別の表示例を示す図。
【図8】代表的被検体における計測結果。計測波長に依存した脱酸素化ヘモグロビンの計測誤差の違いを示す図。
【図9】本発明の第2の実施例に関する装置構成例を説明する図。
【図10】本発明の第3の実施例に関する装置構成例を説明する図。
【図11】本発明の第4の実施例に関する装置構成例を説明する図。
【図12】本発明の第5の実施例に関する波長選択画面の表示例を示す図。
【図13】本発明の第6の実施例に関する装置構成例を説明する図。
【図14】代表的被検体とは異なる傾向の計測結果。計測波長に依存した脱酸素化ヘモグロビンの計測誤差の違いを示す図。
【図15】本発明の第7の実施例に関する波長選択画面の表示例を示す図。
【図16】本発明の第7の実施例に関する波長選択画面の別の表示例を示す図。
【図17】本発明の実施例における波長設定の選択過程を示す図。
【図18】本発明の実施例における波長設定の別の選択過程を示す図。
【図19】本発明における波長選択後に行う本計測のフローを示す図。
【符号の説明】
1−1…頭頂部、1−2…前頭部、1−3…側頭部、1−4…後頭部、1−5…多波長光照射手段、1−6…波長選択システム、2−1…照射光、2−2…検出光、2−3…頭皮、2−4…頭蓋骨、2−5…大脳皮質、2−6…計測中心部位、3−1…酸素化ヘモグロビンの吸光係数、3−2…脱酸化ヘモグロビンの吸光係数、3−3…従来装置に多く用いられている計測波長(782nm)、3−4…従来装置に多く用いられている計測波長(830nm)、4−1…酸素化ヘモグロビンの計測誤差、4−2…脱酸素化ヘモグロビンの計測誤差、4−3…従来装置に多く用いられている計測波長(782nm)、5−1…ロックインアンプ、5−2…アナログ−デジタル変換器、5−3…制御装置、5−4…変調器、5−5…678nm光源、5−6…692nm光源、5−7…780nm光源、5−8…830nm光源、5−9…波長選択光スイッチ、5−10…制御装置と光スイッチを繋ぐケーブル、5−11…光結合器、5−12…光検出器、5−13…光照射用光ファイバ、5−14…光検出用光ファイバ、5−15…計測位置、5−16…計測位置5−15を計測する装置構成、5−17…5−16と同様の装置構成、5−18…被検体、6−1…波長選択方法を選択するプルダウンメニュー、6−2…被検体の分類を選択するラジオボタン、6−3…計測部位を選択するラジオボタン、6−4…選択された計測波長の表示部、7−1…波長選択方法を選択するプルダウンメニュー、7−2…被検体の分類を選択するラジオボタン、7−3…計測部位を選択するプルダウンメニュー、7−4…選択された計測波長の表示部、9−1…ロックインアンプ、9−2…アナログ−デジタル変換器、9−3…制御装置、9−4…変調器、9−5…678nm光源、9−6…692nm光源、9−7…780nm光源、9−8…830nm光源、9−11…光結合器、9−12…光検出器、9−13…光照射用光ファイバ、9−14…光検出用光ファイバ、9−15…計測位置、5−16…計測位置9−15を計測する装置構成、9−17…9−16と同様の装置構成、9−18…被検体、10−1…ロックインアンプ、10−2…アナログ−デジタル変換器、10−3…制御装置、10−4…変調器、10−5…波長可変光源、10−10…制御装置と波長可変光源を繋ぐケーブル、10−11…光結合器、10−12…光検出器、10−13…光照射用光ファイバ、10−14…光検出用光ファイバ、10−15…計測位置、10−16…計測位置10−15を計測する装置構成、10−17…10−16と同様の装置構成、10−18…被検体、11−1…ロックインアンプ、11−2…アナログ−デジタル変換器、11−3…制御装置、11−4…変調器、11−5…678nm光源、11−6…692nm光源、11−7…780nm光源、11−8…830nm光源、11−9…光結合器、11−10…光検出器、11−11…692/830nmの光検出用光ファイバ、11−12…692/830nmの光照射用光ファイバ、11−13…780/830nmの光検出用光ファイバ、11−14…780/830nmの光照射用光ファイバ、11−15…678/830nmの光検出用光ファイバ、11−16…678/830nmの光照射用光ファイバ、11−17…頭頂部計測用ヘルメット、11−18…被検体、11−19…780/830nmの光照射用光ファイバを固定するソケット、11−20…780/830nmの光検出用光ファイバを固定するソケット、11−21…692/830nmの光照射用光ファイバを固定するソケット、11−22…692/830nmの光検出用光ファイバを固定するソケット、11−23…側頭部計測用ヘルメット、11−24…678/830nmの光照射用光ファイバを固定するソケット、11−25…678/830nmの光検出用光ファイバを固定するソケット、11−26…前頭部計測用ヘルメット、12−1…波長選択方法を選択するプルダウンメニュー、12−2…事前テスト計測の結果表示部、12−3…事前テスト計測を開始するプッシュボタン、12−4…計測チャンネル毎に選択された計測波長の表示部、13−6…ロックインアンプ、13−7…アナログ−デジタル変換器、13−8…制御装置、13−9…ロックインアンプ、13−10…変調器、13−11…678nm光源、13−12…692nm光源、13−13…780nm光源、13−14…830nm光源、13−15…光結合器、13−16…事前テスト計測用の光照射検出手段、13−18…被検体、13−20…計測位置、13−21、13−23、13−25…本検出用の光照射手段、13−22…光検出器、15−1…波長選択方法を選択するプルダウンメニュー、15−2…計測波長を選択するラジオボタン、16−1…波長選択方法を選択するプルダウンメニュー、16−2…計測チャンネル毎に計測波長を選択するプルダウンメニュー。

Claims (11)

  1. 被検体頭部へ光を照射するそれぞれ異なる波長を持つ複数の光源を有する光照射手段と、前記光照射手段から照射され前記被検体頭部内を伝播した通過光を検出する受光手段と、
    前記光照射手段からの光を前記被検体頭部に導く複数の照射用光ファイバと、
    前記被検体頭部を透過した光を前記受光手段に導く複数の検出用光ファイバと、
    前記照射用光ファイバおよび前記検出用光ファイバを前記被検体頭部に固定するための複数の光ファイバ固定具を有する計測用ヘルメットと、
    前記受光手段によって検出された信号に基き、被検体頭部内の情報を計測する制御装置と、
    前記照射用光ファイバと前記光源は接続されており、前記複数の光源のうちどの光源と前記照射用光ファイバを接続するかを切り替える光選択スイッチとを有し、
    前記制御装置は、前記被検体の計測部位に応じて前記光選択スイッチを切り替えることにより、前記異なる波長を持つ複数の光源のうち選択された光源前記照射用光ファイバを経て前記複数の光ファイバ固定具のうち所定の光ファイバ固定具に接続させ、前記計測部位へ照射する前記光の波長の組み合せを変えることを特徴とする生体光計測装置。
  2. 入力手段を有し、
    前記制御装置は、前記入力手段から入力された各計測部位ごとの照射される前記光源の波長に応じて前記光選択スイッチを制御することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
  3. 入力手段を有し、
    前記制御装置は、前記入力手段から入力された前記被検体の分類または前記被検体頭部の計測部位の入力結果に応じて前記光選択スイッチを制御することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
  4. 前記制御装置は、テスト計測での計測対象信号に対する誤差を算出し、前記誤差の大きさに基づき前記光選択スイッチを制御することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
  5. 前記テスト計測に基づく制御は、複数の波長の光を前記被検体頭部に照射し、各波長ごとの計測誤差を算出し、最も小さい計測誤差となる波長を選択することにより行われることを特徴とする請求項4記載の生体光計測装置。
  6. 入力手段を有し、
    前記入力手段は、1)各計測部位ごとの照射される前記光源の波長の指定、2)前記被検体頭部の計測部位、3)テスト計測での計測対象信号に対する誤差の大きさ、のいずれに基づき前記光選択スイッチを制御するかを入力でき、
    前記制御装置は、前記入力手段からの入力結果に基づき前記光選択スイッチを制御することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
  7. 被検体頭部へ光を照射する任意の波長の光を照射できる複数の波長可変光源を有する光照射手段と、
    前記光照射手段から照射され前記被検体頭部内を伝播した通過光を検出する受光手段と、
    前記光照射手段からの光を前記被検体頭部に導く複数の照射用光ファイバと、
    前記被検体頭部を透過した光を前記受光手段に導く複数の検出用光ファイバと、
    前記照射用光ファイバおよび前記検出用光ファイバを前記被検体頭部に固定するための複数の光ファイバ固定具を有する計測用ヘルメットと、
    前記受光手段によって検出された信号に基き、被検体頭部内の情報を計測する制御装置とを有し、
    前記複数の波長可変光源から照射された光がそれぞれ前記被検体頭部の異なる位置に照射されるように、前記複数の波長可変光源は前記前記照射用光ファイバを経てそれぞれ異なる前記光ファイバ固定具に接続されており、
    前記制御装置は前記被検体の計測部位に応じて前記複数の波長可変光源ごとにどの波長の組合わせを選択し光を照射するか制御可能であることを特徴とする生体光計測装置。
  8. 入力手段を有し、
    前記制御装置は、前記入力手段から入力された前記複数の波長可変光源ごとの波長に応じて前記波長可変光源から照射される波長を制御することを特徴とする請求項7記載の生体光計測装置。
  9. 入力手段を有し、
    前記制御装置は、前記入力手段から入力された前記被検体の分類または前記被検体頭部の計測部位の入力結果に応じて前記波長可変光源から照射される波長を制御することを特徴とする請求項7記載の生体光計測装置。
  10. 前記制御装置は、テスト計測での計測対象信号に対する誤差を算出し、前記誤差の大きさに基づき前記波長可変光源から照射される波長を制御することを特徴とする請求項7記載の生体光計測装置。
  11. 前記テスト計測に基づく制御は、複数の波長の光を前記被検体頭部に照射し、各波長ごとの計測誤差を算出し、最も小さい計測誤差となる波長を選択することにより行われることを特徴とする請求項10記載の生体光計測装置。
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