JP4166766B2 - エアゾール製品 - Google Patents

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Description

本発明はエアゾール製品に関する。さらに詳しくは、畳やカーペットなどの床面に広く噴射するエアゾール製品に関する。
特開平11−221499号公報 特開2000−325834号公報 特開2001−233390号公報 特開2003−205984号公報
従来、畳やカーペットの中にいるダニなどの害虫を駆除すべく、畳やカーペットなどの床面に噴霧する害虫用エアゾール製品が知られている。しかし、このようなエアゾール製品は、噴射孔からの噴射の拡がり(噴射パターン)が狭く、また、噴射方向への勢いが強いために、噴射したエアゾール組成物(以下、噴霧粒子)が床面で跳ね返り飛散することがある。そのため、エアゾール組成物中の有効成分が目的とする部分に効率良く付着せず、有効成分の効果を充分に発揮できないという問題がある。
一方、このような問題を解決すべく、噴射パターンを大きくし、エアゾール製品の噴射圧力を低下させて噴射の勢いを弱く(噴射速度が遅い)すると、噴霧粒子の床面への付着性は向上する。しかし、原液が炭化水素溶剤や低級アルコールなどの可燃性溶剤を含有し、さらに噴射剤として液化石油ガスやジメチルエーテルなどの可燃性液化ガスを含有する場合、噴霧粒子が火や静電気などの火源により引火しやすくなり、噴霧粒子に引火した場合は炎がエアゾール製品側に逆流する逆火現象が見られ、生活製品としての安全基準を満たさなくなる。これは噴霧粒子の噴射速度が火炎の伝播速度よりも遅くなったときに生じる現象であり、特に噴射パターンが大きく噴霧粒子が小さい場合に生じやすい。
特許文献1には、導入口よりも先端部開口が大きくなっていることを特徴としている噴口を備えたエアゾール装置が開示されている。また、このようなエアゾール装置の噴口として導入口から開口までの内径が少しずつ大きくなっている形状と、段階的に大きくなっている形状とが例示されている。
このような構成を備えているため、導入口から先端部開口に進むエアゾール組成物中の液化ガスは開口から噴射される前に段階的に気化され、その圧力も段階的に低下する。そして、その圧力の低下に伴って噴霧粒子は微細化されずに粗い粒子のまま噴射される。そのため、床面に対して噴射する場合、噴霧粒子の舞い上がりを抑え、床面への付着量を多くすることができる。しかし、この特許文献1に記載されているエアゾール装置は、噴口の先端部開口により噴霧粒子の拡がりが抑制されており、噴霧粒子の流れに方向性を持たしているため、絞られた範囲において噴霧され、逆火現象を抑えることができる。しかし、広範囲に噴霧するものではなく、また、噴霧粒子が粗いため、床面に均一に付着させにくい。
また、特許文献2、3、4には噴射孔が複数個設けられたエアゾール製品が開示されている。このように噴射孔を複数個備えている場合、それぞれの噴射孔を異なる方向に向かせることにより噴射パターンを拡げることができる。しかし、これらのエアゾール製品は、エアゾールバルブのステム孔から噴射部材に流入するエアゾール組成物を複数の噴射孔に分散させるため、噴射に要する液化ガスのエネルギーも分散されて噴射の勢いが抑制される。特に、広範囲に噴射するためにそれぞれの噴射孔の向きを広角に配置した場合、エアゾール製品の軸線に対して垂直に交差する噴射方向への勢いが弱くなる。その結果、床面に噴射しても跳ね返りは少なくなるが、逆火現象が生じやすくなり、使用者に対して安全であるとはいい難い。
本発明は畳やカーペットなどの床面に噴射するものであって、噴射パターンが大きく、床面に噴射しても跳ね返りが小さく、噴霧粒子の付着性が高く、さらに、逆火現象が生じない範囲の噴射の勢いを有する安全なエアゾール製品を提供することを目的としている。
本発明のエアゾール製品は、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器と、エアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物と、エアゾールバルブに装着される噴射部材とからなり、前記エアゾール組成物が炭化水素系溶剤を含有する原液と可燃性液化ガスとからなり、原液と可燃性液化ガスとの割合配合が50/50〜30/70(容積比)であるエアゾール製品であって、前記エアゾールバルブと耐圧容器との間はエアゾール組成物の液体を通す噴射通路のみを備えており、前記噴射部材が、噴射方向が異なる3個の噴射孔と、エアゾールバルブに連結するステム装着部と、噴射孔とステム装着部とを連通する噴射部材内通路とを備えており、前記噴射部材の噴射孔は上下一列に設けられており、中心の噴射孔に対する両側の噴射孔の噴射角度が10〜45度で同じであり、中心の噴射孔がエアゾール製品の軸線と垂直に交差する方向を向いており、それぞれの噴射孔が、噴射部材内通路と一直線に連通しており、径大部と径小部とからなる外部に段状に拡がる形状を有しており、前記径大部の直径が0.3〜0.7mmであり、径小部の直径が0.1〜0.5mmであり、径小部と径大部の直径の比(径小部/径大部)が0.3〜0.9であり、前記噴射部材内通路が、ステム装着部から延びる通路と;その通路と連通しており、その通路より縮径した3本の底部連通孔と;その底部連通孔および前記噴射孔の径小部と連通しており、前記底部連通孔および径小部より拡径した空間とからなることを特徴としている。
ここでいう「エアゾールバルブと耐圧容器との間はエアゾール組成物の液体を通す噴射通路のみを備えている」とは、耐圧容器内の気相とエアゾールバルブとの間を連通するベーパータップ(気相導入孔)を設けておらず、エアゾール組成物の液体を移動させる通路のみを備えていることをいう。
また、「噴射部材内通路と一直線に連通している」とは、噴射ノズルの噴射孔と噴射部材内の通路とが直線的に連通していることをいい、噴射されるエアゾール組成物が噴射孔を直線的に通過するものをいう。そして、いわゆる噴射孔の直前でエアゾール組成物を旋回させてうず流の状態で噴射孔を通過させるメカニカルブレークアップ形状を備えたものを排除することをいう。
このようなエアゾール製品であって、前記エアゾール容器内の25℃における圧力が0.25〜0.6MPaであるものが好ましい。また、1分間の噴射量が10〜50gであるものが好ましい。
また、エアゾールバルブが、エアゾールバルブ内部に供給されるエアゾール組成物の流量を調整する直径が0.3〜2.0mmの液体導入孔を備えているエアゾール製品が好ましい。
本発明のエアゾール製品は、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器と、エアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物と、エアゾールバルブに装着される噴射部材とからなり、前記エアゾール組成物が炭化水素系溶剤を含有する原液と可燃性液化ガスとからなり、原液と可燃性液化ガスとの割合配合が50/50〜30/70(容積比)であって、前記噴射部材が、噴射方向が異なる3個の噴射孔と、エアゾールバルブに連結するステム装着部と、噴射孔とステム装着部とを連通する噴射部材内通路とを備えている。噴射方向が異なる3個の噴射孔を設けることにより、噴射するエアゾール組成物の噴射パターンを拡げることができる。また、噴射の勢いを低下させることができるため、上記構成のエアゾール組成物を床面に噴射しても、その跳ね返りを最小限にし、床面への付着性を高めることができる。
しかし、上記構成だけではその噴射物の勢いが小さくなりすぎるため、逆火現象を起こしやすくなり安全上問題がある。そのため、本発明のエアゾール製品はさらに、エアゾールバルブと耐圧容器との間にはエアゾール組成物の液体を通す噴射通路のみが形成されたエアゾールバルブ、つまり、ベーパータップ孔が形成されていないエアゾールバルブを使用している。さらに、噴射部材内通路の直線上に形成されており、径大部と径小部とからなる外部に段状に拡がる形状を有する噴射孔を使用しているため、過剰に拡散して噴射速度が小さくなった噴霧粒子をなくし、噴霧粒子にある程度の勢いおよび方向性を持たせて噴射させ、逆火現象の問題を解決しているのである。
通常、上記の割合で炭化水素系剤を含有する可燃性原液と可燃性液化ガスが含まれているエアゾール組成物を充填するエアゾール容器には、エアゾール容器の気相部とエアゾールバルブのハウジング内とを連通するベーパータップ孔を設ける。これは噴射されるエアゾール組成物中に気体を混合させ可燃性原液の噴射量を少なくして、噴霧粒子の飛距離を短くして火炎長試験において火炎長が長くなりすぎないようにするためである。しかし、本発明では3つの噴射孔を備え、上記エアゾール組成物を充填したエアゾール製品にあえてベーパータップ孔を形成させないことにより噴霧粒子に充分な勢いを与えたものである。
つまり、本発明者は、広い噴射パターンを有し、かつ、逆火現象を防止し、さらに床面に噴射しても噴霧粒子が跳ね返らず均一に付着するエアゾール製品に適した組み合せを見出したのである。
また本発明のエアゾール製品は、噴射部材の噴射孔は一列に設けられており、中心の噴射孔に対する両側の噴射孔の噴射角度が同じであるため、隙間無く噴射パターンを拡げることができ、かつ、噴霧濃度を均一にすることができる。そして、一列に並んでいるため、並んでいる直線に対して垂直方向に噴射しながら噴霧方向を変えることにより、広い床面に対して均一な濃度で噴霧粒子を付着させることができる。さらに、製品としての美的作用も高い。
さらに、本発明のエアゾール製品は中心の噴射孔に対する両側の噴射孔の噴射角度が10〜45度であるため、噴射パターンが狭くならずに付着性に優れ、かつ、過剰に広く拡散せず、噴霧粒子に引火しても逆火現象が生じにくく好ましい。
そして、噴射孔の径大部の直径が0.3〜0.7mmであり、径小部の直径が0.1〜0.5mmであるため、噴射孔から過剰に拡がる噴霧粒子をなくして逆火現象を生じにくくできる。
このようなエアゾール製品であって、エアゾール容器内の25℃における圧力が0.25〜0.6MPaである場合、さらには1分間の噴射量が10〜50gである場合は、3つの噴射孔から噴射される噴霧粒子に逆火現象が生じにくい範囲で噴射の勢いを保つことができ、かつ床面に付着させやすく好ましい。圧力が0.25MPaより小さい場合、あるいは、1分間の噴射量が10gより小さい場合、噴射の勢いが小さくなりすぎて逆火現象が生じやすくなる。また、圧力が0.6MPaより大きい場合、あるいは、1分間の噴射量が50gより大きい場合、噴射の勢いが強くなり噴霧粒子の跳ね返りが起こりやすくなる。
次に本発明のエアゾール製品を図面を用いて説明する。図1は本発明のエアゾール製品の一実施形態を示す側面図、図2は図1のエアゾール製品のエアゾールバルブおよび押しボタンを示す拡大断面図、図3aは図2に示す押しボタンのノズル装着部材および噴射ノズルを示す拡大断面図、図3bは図2に示す押しボタンの噴射ノズルを示す拡大断面図、図4aは図1に示すエアゾール製品の噴射状態を示す断面図、図4bは本発明のエアゾール製品を用いて火炎長試験を行っている断面図である。
図1に示すエアゾール製品10は、エアゾール容器11と、そのエアゾール容器に装着される噴射部材12と、エアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物Aとから構成される。
エアゾール容器11は、耐圧容器13と、その開口部に固着されるエアゾールバルブ14とからなる。
耐圧容器13は、ブリキや錫−ニッケル系鋼板(TNS)などの金属板を円筒状に成形した胴部13aに、目金部13bと底部13cとを二重巻き閉めにより固着したスリーピース缶であり、目金部の上端開口にはビード部13dが形成されている。なお、この耐圧容器として、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属板を円盤状に成形したスラグをインパクト加工、絞り・しごき加工などにより有底筒状に成形し、さらに、ネッキング加工、ローリング加工などにより肩部、ビードを成形したモノブロック缶を用いてもよい。
図2に示すようにエアゾールバルブ14は、耐圧容器13のビード部13dにガスケット21を介して固着されるマウンティングキャップ15と、マウンティングキャップの中央に保持される筒状のハウジング16と、ハウジング内に上下移動自在に収容され大気とエアゾール容器11内部とを連通するステム孔22を備えたステム17と、そのステムを常に上方に付勢するスプリング18と、ステム17が上方に位置するときステム孔22を塞ぐステムラバー19と、上端がハウジングの下端23に装着され下端がエアゾール容器11の底部に延びているディップチューブ20とを備えている。
また、ハウジング16には、噴射時にディップチューブの下端開口から導入され、ハウジング内部に供給される液体のエアゾール組成物の流量を調整する液体導入孔24が設けられている。この液体導入孔24の直径は0.3〜2.0mm、特に0.4〜1.0mmであることが好ましい。この液体導入孔24の直径が0.3mm未満の場合は噴射の勢いが弱くなりすぎ逆火現象が生じやすい。一方、2.0mmを越える場合は噴射の勢いが強くなりすぎて床面に噴射すると跳ね返りやすく、噴霧粒子の付着性が悪くなる。
エアゾールバルブ14は、エアゾール組成物の液体のみを噴射するものであり、ステム17を押し下げてステム孔22を開放したとき、液体のエアゾール組成物はディップチューブ20の下端開口からチューブ内通路、ハウジングの液体導入孔24を経てハウジング16内部に導入され、さらにステム孔22を通過して噴射部材12の噴射孔から外部に噴射される。エアゾール容器11内部の噴射通路、すなわち上述したディップチューブ20の下端開口からステム孔22までの通路にはエアゾール組成物の気相と連通するベーパータップ孔などの気相連通孔は設けられていない。そのため、3個の噴射孔から広角方向に噴射されても、逆火が生じない程度に噴射方向への勢いを保つことができる。
図1に戻って噴射部材12は、エアゾール容器の頭部(マウンティングキャップ15)に装着されるカバー部材26と、エアゾールバルブのステム17に装着され、使用時に天面28を指で押し下げて噴射操作する押しボタン27とからなる。
カバー部材26は、マウンティングキャップのカール部分(容器ビード部13dをカシメた部分)に装着するための装着部29と、押しボタンの両側面を覆う一対の側壁部31とを備えている。
図2に示す押しボタン27は、噴射孔32を有する上下一列に並んだ3つの噴射ノズル35(上ノズル35a、中ノズル35b、下ノズル35c)と、それらの噴射ノズルを装着するノズル装着部材36と、そのノズル装着部材を装着するとともに、押しボタン27をステム17に装着するためのステム装着部37を有する押しボタン本体38とからなる。
噴射ノズル35およびノズル装着部材36の拡大図を図3aに示す。図3bに示す噴射ノズル35は、ジュラコンやナイロンなどの合成樹脂、アルミニウムやステンレスなどの金属を用いて有底筒状に成形される。その底部39の中央には噴射孔32が設けられ、その噴射孔32は直径の異なる径小部41と径大部42とから構成されている。この径小部41は噴射ノズル35の内側に形成され、径大部42は噴射ノズル35の外側に形成されている。この噴射ノズル35をノズル装着部材36に装着した状態(図3a参照)では、径小部41と径大部42によって噴射孔32は外側に段状に拡がる形状を呈している。
このように噴射ノズル35は構成されているため、この噴射ノズル35を通過するエアゾール組成物は外側に行くにつれて圧力が低下する。そして、径小部41の出口(径小部41と径大部42の境界)で液化ガスの気化によって拡散される噴霧粒子が径大部42の側面42aによって抑えられる。そのため、過剰に拡散して噴射速度が小さくなった噴霧粒子をなくすことができ、噴霧粒子に方向性を与えることができ、逆火現象を抑えることができる。このような径小部41の直径は0.1〜0.5mm、さらに好ましくは0.2〜0.4mmである。また、径大部42の直径は0.3〜0.8mm、さらに好ましくは0.4〜0.7mmである。特に径小部41と径大部42の直径の比(径小部/径大部)が0.3〜0.9、さらに好ましくは0.4〜0.8である場合は逆火現象を一層抑えることができる。
ノズル装着部材36は、各噴射ノズル35の噴射方向を所定の角度となるよう噴射ノズル35を支持するものであり、噴射ノズル35の筒状部分40を挿入する有底筒状のノズル挿入部43と、押しボタン本体38に装着するための有底筒状の装着部44を有し、ノズル挿入部43と装着部44の共通する底部45には、装着部44と各ノズル挿入部43とが連通するように底部連通孔46がそれぞれ形成されている。
噴射ノズル35をノズル装着部材36に装着した状態では、噴射ノズル35の円筒40内側とノズル挿入部43との間に空間47が形成される。そして、噴射孔32は底部連通孔46と直線的に空間47を介して連通している。そのため、この空間47には噴射時にエアゾール組成物Aが押しボタン本体38から底部連通孔46を通って流入し、空間47内で大きく旋回することなく直線状に通過し噴射孔32に至り、直線的に外部に噴射される。なお、直線状に通過するとは、メカニカルブレークアップ機構を通過したエアゾール組成物のように、エアゾール組成物を強制的に旋回させた状態を除くものである。メカニカルブレークアップ機構は、噴射孔の直前でエアゾール組成物を渦巻き状にして滞留させ、噴射物の方向性を低下させるものである。つまり直線上に通過するとは、噴射ノズルに導入されるエアゾール組成物の方向性あるいは勢いを弱めることなく、噴射孔から噴射する形状の有するものをいう。
図2に示すように押しボタン本体38は、ノズル装着部材36の装着部44(筒状部分)を嵌入する嵌入部51と、押しボタンをステムに装着するためのステム装着部37を有する。また、ノズル装着部材36を嵌入した状態でノズル装着部材36とステム装着部37との間を連通するボタン内通路52が形成されている。
このように構成される押しボタン27は、噴射孔32が上下一列に三個並んでおり、中心の噴射孔32bがエアゾール製品の軸線と垂直に交差する方向を向くように、噴射ノズル35bがノズル装着部材36に装着されている。また、上下の噴射孔32a、32cが中心の噴射孔32bに対して上下に広角方向に向くように、噴射ノズル35a、35cはノズル装着部材36に装着されている。上下の噴射孔32a、32cは中心の噴射孔32bを基準(0度)として上下逆ではあるが噴射角度が同じになるように設けられている。その上下の噴射孔32a、32cの角度は中心の噴射孔32bに対して10〜45度であり、さらに好ましくは15〜30度である。噴射角度が10度未満である場合、噴射パターンが小さくなり、噴射の勢いが強くなるため床面に噴射すると跳ね返りが生じやすくなる。一方、噴射角度が45度を超えると噴射パターンが大きくなるが、噴射の勢いが弱くなりすぎて逆火現象が生じやすくなる。
噴射孔32の間隔は3〜20mmm、さらに好ましくは5〜15mmである。噴射孔32間の距離が3mm未満の場合は噴射孔付近で噴霧粒子が重なりやすくなり、噴射パターン内での濃度差が生じやすくなる。一方、噴射孔間の距離が20mmを超えると噴射角度によっては各噴射孔から噴射された噴射パターンの間で噴霧粒子が存在しない部分(隙間)が生じやすくなり、噴射対象の床面で噴霧粒子が付着しない部分ができる。
なお、この実施の形態では、中心の噴射孔32bに対する上側の噴射孔32aの噴射角度と、中心の噴射孔32bに対する下側の噴射孔32cの噴射角度を同じにしているが、床面での跳ね返りがなく逆火現象が生じない範囲で両噴射角度が異なるようにしてもよい。また、中心の噴射孔32bと上側の噴射孔32aの距離と、中心の噴射孔32bと下側の噴射孔32cとの距離とを同じにしているが、床面での跳ね返りがなく逆火現象が生じない範囲で両噴射孔間の距離を異なるようにしてもよい。
前記エアゾール容器11内に充填されるエアゾール組成物Aは、炭化水素系溶剤を含有する原液と可燃性液化ガスとからなる。
前記原液は、炭化水素系溶剤を有効成分の溶媒として含有しており、噴射時に液化ガスの気化により微細化されて霧状となり、畳やカーペットなどの床面に付着して、あるいは害虫に直接付着して効力を発揮する。
前記炭化水素系溶剤としては、たとえば、ケロシン、スクワラン、スクワレン、ノルマルパラフィン、イソパラフィンなどの常温で液体である炭化水素が挙げられる。
前記有効成分としては、たとえば、フタルスリン、アレスリン、ペルメトリン、フラメトリン、プラレトリン、レスメトリン、d−フェノトリン、テフルスリン、トランスフルトリン、イミプロトリン、アミドフルメトなどの殺虫及び殺ダニ成分、サイネピリン、ピペロニルブトキサイト、オクタクロロジプロピルエーテルなどの効力増強剤、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸メチルなどの消臭成分、香料などがあげられる。
前記有効成分は、原液中の濃度が0.001〜10重量%、さらには0.005〜5重量%となるように配合することが好ましい。前記有効成分の濃度が0.001重量%未満の場合は噴射物中に含まれる有効成分濃度が低くなり、通常の使用量では効果が得られにくい。一方10重量%を越えると噴射物中に含まれる有効成分濃度が高くなり、通常の使用量でも使用者に悪影響を及ぼす場合がある。
前記原液は有効成分を炭化水素系溶剤に配合することにより調製することができるが、用途や目的などに応じて他の油性溶剤、界面活性剤、水性溶剤などを適宜配合することができる。
前記油性溶剤としては、たとえば、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエトキシエチルなどのエステルオイル、メチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂、オレイン酸などの高級脂肪酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコールなどがあげられる。
前記界面活性剤としては、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、ジ、トリ、テトラ、ヘキサ、デカなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンアルコールなどが挙げられる。
前記水性溶剤としては、たとえば、精製水やイオン交換水などの水、エタノールやイソプロピルアルコールなどの低級アルコール、プロピレングリコールや1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールなどが挙げられる。
前記可燃性液化ガスはエアゾール容器11内部では液体であり、大気中に放出されると気化してその容積が膨張し、原液を微細化して霧状で噴射するための噴射剤として作用する。
可燃性液化ガスとしては、たとえば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの炭素数が3〜5個の炭化水素、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物などが挙げられる。特に、噴霧粒子の付着性、逆火現象、噴射パターンを考慮して、25℃での飽和蒸気圧が0.2〜0.6MPa、さらには0.25〜0.5MPaである液化ガスが好ましい。
前記原液と可燃性液化ガスとの配合比は、原液/可燃性液化ガス=50/50〜30/70(容積比)であることが好ましく、さらには45/55〜35/65であることが好ましい。前記配合比が50/50よりも大きくなると噴霧粒子が粗くなり、床面に均一に付着し難くなる。一方配合比が30/70よりも小さくなると噴霧粒子が細かくなりすぎ、床面で跳ね返り易くなる。
図1のエアゾール製品10の製造方法としては、たとえば、有効成分を炭化水素溶剤に配合して原液を調整し、その原液を耐圧容器13内に充填する。次いで、耐圧容器13の開口部にエアゾールバルブ14を載置し、可燃性液化ガスをビード部13dとマウンティングカップ15のカール部分との間からアンダーカップ充填し、エアゾールバルブ14を耐圧容器13に固着する。このようにして、エアゾール容器内部で原液を可燃性液化ガスとを混合する。そして、エアゾールバルブ14に噴射部材12を装着してエアゾール製品10が製造される。
エアゾール製品10の25℃における圧力は0.25〜0.6MPa、さらに好ましくは0.3〜0.55MPaである。この圧力が0.25MPa未満の場合、3個の噴射孔32から噴射するには噴射の勢いが弱くなりすぎ逆火現象が生じやすくなる。0.6MPaを超えると3個の噴射孔32から噴射させても噴射の勢いが強すぎて床面での跳ね返りが生じやすくなる。
このエアゾール製品10を使用する場合は、耐圧容器13の胴部13aを把持し、噴射口32を床面に向けて押しボタンの天面28を指Yで押し下げる(図4a参照)。このとき、ステム17が押し下げられてステム孔22が開放される。これにより、可燃性液化ガスによって高圧になっているエアゾール容器11内部のエアゾール組成物Aの液体がディップチューブ20の下端開口からディップチューブ内に導入され、チューブ内の通路を通って液体導入孔24からハウジング16内部に入る。さらに、エアゾール組成物Aはハウジング16内部からステム孔22、ボタン内通路52を通り、底部連通孔46、空間47を経由し噴射孔32を直線状に通過して外部に噴射される。このように3個の噴射孔32から所定の噴射角度で広角に噴射されるため、床面に噴射したときに跳ね返りが生じない程度に噴霧粒子の勢いを抑えることができる。
しかし、噴射孔を3個にすることによってその噴射の勢いを抑えられた噴霧粒子では逆火現象が生じやすい。そのため、ベーパータップ孔が形成されていないエアゾールバルブ14を用い、そして、ボタン内通路の直線上に噴射孔を形成することによって、耐圧容器から最大限の勢いで噴射ノズル35にエアゾール組成物を導入する。さらに、その導入されたエアゾール組成物が径小部41と径大部42とからなる噴射ノズル35を通過することにより、過剰に拡散して噴射速度が小さくなった噴霧粒子をなくすことができる。つまり、3個の噴射孔を有しており、可燃性液化ガスが多いエアゾール組成物を備えた広範囲に噴射できるエアゾール製品であるが、本発明の構成を備えることにより対象とした床面での跳ね返りを防止する効果を残しつつ、逆火現象が生じない噴射速度で噴射するのである。
またエアゾール製品10の一分間の噴射量は10〜50g、さらに好ましくは15〜45gである。噴射量が10g未満である場合は、噴射方向への勢いが不充分になりやすく、逆火現象を生じやすくなる。噴射量が50gを超えると複数の噴射孔32から噴射しても噴射方向への勢いが強くなりすぎ、床面での跳ね返りが強くなる。
本発明のエアゾール製品は、床面などに噴射しても跳ね返りが少なく付着量が多いことから、畳やカーペットなどに潜んでいるダニやノミなどの害虫を死滅させる床用殺虫エアゾール製品に好適に用いることができる。また、エアゾール製品を噴射しているときに噴霧粒子に引火した場合であっても逆火現象が生じないため、使用者は混乱すること無く冷静に噴射をとめるなどの対応が取れる。さらに、エアゾール製品が不要になり廃棄するときにエアゾール容器内に残っているエアゾール組成物を継続して噴射しているときに噴霧粒子が引火しても、逆火現象が生じないため使用者は冷静に対処できる。
[エアゾール製品A]
原液として炭化水素系溶剤(商品名:ネオチオゾール)120mlを3ピース型のブリキ製耐圧容器13に充填し、耐圧容器13の開口部にエアゾールバルブ14を載置した。次いで可燃性液化ガスとして液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物(LPG(25℃での蒸気圧が0.20MPa)/DME=72.2/27.8(重量比))180mlをアンダーカップ充填により充填し、マウンティングキャップ15をクリンプしてエアゾールバルブ14を固着した。さらに図1に示す噴射部材12を装着してエアゾール製品10を製造した。
噴射部材12の押しボタン27は3個の噴射ノズル12を縦方向に一列に配置したものであり、中心の噴射孔32bはエアゾール製品10の軸線と垂直に交差する方向を向いており、上下の噴射孔32a、32cは中心の噴射孔32bに対してそれぞれ20度傾斜している。エアゾール製品10の25℃での製品圧力は0.30MPaであった。
なお試験に用いたエアゾールバルブ14と押しボタン27の条件は表1の通りである。表1の噴射孔の欄において、「ST」とはエアゾール組成物を直線状に通過させる形状の噴射ノズルをいい、「MB」とはメカニカルブレークアップ機構付きの噴射ノズルをいい、「CP」とはセンターポストの両面にメカニカルブレークアップ機構を設けた噴射ノズルをいう。
[エアゾール製品B]
25℃での蒸気圧が0.34MPaである液化石油ガスを用いた以外は、エアゾール製品Aと同様のエアゾール製品Bを製造した。25℃での製品圧力は0.4MPaであった。なお、試験に用いたエアゾールバルブ14と押しボタン27の条件は表2の通りである。
[エアゾール製品C]
25℃での蒸気圧が0.45MPaである液化石油ガスを用いた以外は、実施例3(ステム孔φ0.3、液体導入孔φ0.5、気相導入孔なしのエアゾールバルブと、径大部φ0.5、径小部φ0.3、ストレート形状である噴射孔を備えた押しボタン)と同様のエアゾール製品C(実施例6)を製造した。なお25℃での製品圧力は0.45MPaであり、1分間の噴射量は35.6gであった。
[エアゾール製品D]
25℃での蒸気圧が0.50MPaである液化石油ガスを用いた以外は、実施例3(ステム孔φ0.3、液体導入孔φ0.5、気相導入孔なしのエアゾールバルブと、径大部φ0.5、径小部φ0.3、ストレート形状である噴射孔を備えた押しボタン)と同様のエアゾール製品D(実施例7)を製造した。なお25℃での製品圧力は0.49MPaであり、1分間の噴射量は36.4gであった。
[エアゾール製品E]
気体導入孔を備えたエアゾールバルブを用いた以外はエアゾール製品Aと同様のエアゾール製品Cを製造した。なお、試験に用いたエアゾールバルブと噴射孔の条件は表3の通りである。
[エアゾール製品F]
噴射ノズルが1個であり、噴射孔がエアゾール製品の軸線と垂直に交差する方向に開口している押しボタンを用いた以外はエアゾール製品Aと同様のエアゾール製品Dを製造した。なお、試験に用いたエアゾールバルブと噴射孔の条件は表4の通りである。
[試験方法]
噴射試験は、25℃に調整した恒温水槽中に1時間保持したエアゾール製品を用い、畳からの高さ80cm、畳に対してエアゾール製品の軸線が45°傾く状態で噴射し、畳での噴霧粒子の跳ね返りの有無を観察した。その評価基準は次の通りである。
○:跳ね返りはほとんどなく、表面付近での飛散もない。
△:跳ね返りは少ないが、表面付近での飛散がある。
×:跳ね返りが多く、跳ね返った噴霧粒子が畳の表面付近で飛散している。
火炎長試験は、25℃に調整した恒温水槽中に1時間保持したエアゾール製品を用い図4bに示すように火炎(長さ5cm)までの距離15cmの位置から、下側の噴射孔から噴射した噴射物が火炎の上部1/3を通過するように噴射したとき、火炎がエアゾール製品側に逆流する逆火現象Bの有無を評価した。
噴射試験および火炎長試験の結果を表5に示す。
噴射試験について、3個の噴射孔を有している噴射ノズルを用いた場合、表面付近での飛散があるものも見られたが、噴霧粒子の跳ね返りを抑えることができた。また、火炎長試験について、径小部と径大部を備えたストレート形状の噴射ノズル(「ST」)を用いることによりその逆火現象を抑えることができた。しかし、径小部と径大部を備えていてもメカニカルブレークアップ機構付きの噴射ノズル「MB」、「CP」では逆火現象を充分に抑えることができなかった。また、径小部と径大部を備えていない噴射ノズルは、たとえストレート形状を備えていても逆火現象を抑えることはできなかった。
なおベーパータップ孔を備えたバルブを用いた場合は、径小部と径大部を備えたストレート形状の噴射ノズルを用いても逆火現象を抑えることができなかった。さらに、噴射孔が1個の噴射ノズルを用いた場合は噴霧粒子の跳ね返りが多く、逆火現象を抑えることもできなかった。
これらの試験結果より、径小部と径大部を備えている噴射孔を3個有し、かつ、ストレート形状を呈した噴射ノズルは、両者相反する噴霧粒子の跳ね返りおよび逆火現象を抑えることができることがわかる。
本発明のエアゾール製品の一実施形態を示す断面図である。 図1に示すエアゾール製品のエアゾールバルブおよび押しボタンを示す拡大断面図である。 図3aは図2に示す押しボタンのノズル装着部材および噴射ノズルを示す拡大断面図であり、図3bは、図2に示す押しボタンの噴射ノズルを示す拡大断面図である。 図4aは図1に示すエアゾール製品の噴射状態を示す断面図であり、図4bは図1に示すエアゾール製品を用いた火炎長試験図である。
符号の説明
A エアゾール組成物
10 エアゾール製品
11 エアゾール容器
12 噴射部材
13 耐圧容器
13a 耐圧容器の胴部
13b 耐圧容器の目金部
13c 耐圧容器の底部
13d 耐圧容器のビード部
14 エアゾールバルブ
15 マウンティングカップ
16 ハウジング
17 ステム
18 スプリング
19 ステムラバー
20 ディップチューブ
21 ガスケット
22 ステム孔
23 ハウジング下端
24 液体導入孔
26 カバー部材
27 押しボタン
28 押しボタンの天面
29 装着部
31 側壁部
32 噴射孔
35 噴射ノズル
35a 上ノズル
35b 中ノズル
35c 下ノズル
36 ノズル装着部材
37 ステム装着部
38 押しボタン本体
39 ノズルの底部
40 ノズルの筒状部
41 径小部
42 径大部
42a 径大部の内面
43 ノズル挿入部
44 装着部
45 ノズル装着部材の底部
46 底部連通孔
47 空間
51 押しボタン本体の嵌入部
52 押しボタン本体のボタン内通路

Claims (4)

  1. 耐圧容器の開口部にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器と、
    エアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物と、
    エアゾールバルブに装着される噴射部材とからなり、
    前記エアゾール組成物が炭化水素系溶剤を含有する原液と可燃性液化ガスとからなり、原液と可燃性液化ガスとの割合配合が50/50〜30/70(容積比)であるエアゾール製品であって、
    前記エアゾールバルブと耐圧容器との間はエアゾール組成物の液体を通す噴射通路のみを備えており、
    前記噴射部材が、噴射方向が異なる3個の噴射孔と、エアゾールバルブに連結するステム装着部と、噴射孔とステム装着部とを連通する噴射部材内通路とを備えており、
    前記噴射部材の噴射孔は上下一列に設けられており、中心の噴射孔に対する両側の噴射孔の噴射角度が10〜45度で同じであり、中心の噴射孔がエアゾール製品の軸線と垂直に交差する方向を向いており、
    それぞれの噴射孔が、噴射部材内通路と一直線に連通しており、径大部と径小部とからなる外部に段状に拡がる形状を有しており、
    前記径大部の直径が0.3〜0.7mmであり、径小部の直径が0.1〜0.5mmであり、径小部と径大部の直径の比(径小部/径大部)が0.3〜0.9であり、
    前記噴射部材内通路が、ステム装着部から延びる通路と;その通路と連通しており、その通路より縮径した3本の底部連通孔と;その底部連通孔および前記噴射孔の径小部と連通しており、前記底部連通孔および径小部より拡径した空間とからなる、エアゾール製品。
  2. 前記エアゾール容器内の25℃における圧力が0.25〜0.6MPaである請求項1記載のエアゾール製品。
  3. 1分間の噴射量が10〜50gである請求項1記載のエアゾール製品。
  4. 前記エアゾールバルブが、エアゾールバルブ内部に供給されるエアゾール組成物の流量を調整する直径が0.3〜2.0mmの液体導入孔を備えている請求項1記載のエアゾール製品。
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