JP4164140B2 - 蟻ビット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は蟻ビットに関するものであって、更に詳細には、木材、木質系材料その他窯業系材料等を材質とする継ぎ手接合部に蟻継ぎ手を切削加工する蟻ビットの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばルーター等の加工機械に蟻ビットを取付け、この蟻ビットを回転させつつ木材を相対移動させることで、該木材の継ぎ手接合部に鳩尾状に先の広がった溝や、同じく鳩尾状に先の広がったホゾ等の仕口(蟻継ぎ手)を切削加工する技術が木材加工の分野で広く実施されている。本発明は蟻ビットの改良に関するものであるので、従来技術に係る蟻ビットの構造を図7〜図11を参照して説明する。図7に示すように、蟻ビット10は、ルーター等の加工機械の回転軸に取付けるためのシャンク12と、該シャンク12が後端側に設けられ、先端側へ向かうにつれて切削半径が大きくなるよう設定した円錐台状のボデー14とを基本的に備えている。このボデー14における外周の長手方向には、図10に示す替刃16と裏座18の収納を許容する刃物溝20が、中心軸線CAを中心として回転対称に2つ形成されている。
【0003】
またボデー14の外周には、図7,図8および図10に示すように、前記刃物溝20の底部20aに連通するボルト孔22が穿設され、このボルト孔22へ図示のボルト24が挿通されるようになっている。図示例では、1つの刃物溝20に2つのボルト孔22,22が所要距離だけ離間して穿設され、図10に示す如く、該ボルト孔22におけるボルト差し込み側を前記ボデー14の外周に開口させている。また前記替刃16は、図10に示すように、板状をなす刃体の対向し合う2辺に切刃稜16a,16aが形成されている。更に替刃16の刃体裏面には、図11に示す如く、長手方向に延在する飛び出し防止溝16bが形成され、該刃体の長手方向両端で開放している。この飛び出し防止溝16bは、後述する替刃16と前記裏座18の装着時に、該裏座18の表面に長手方向に突設した突条18a(図10参照)が係合して、該替刃16を前記刃物溝20へ確実に保持するべく機能する。また裏座18には、前記ボルト孔22,22の離間距離に対応して雌ネジ18b,18bが螺設され、この雌ネジ18bに前記ボルト24がねじ込み可能になっている。
【0004】
前記替刃16を前記ボデー14の刃物溝20に取付けるためには、図9および図10に示すように、該替刃16の飛び出し防止溝16bに前記裏座18の突条18aを指向させると共に、該裏座18の夫々の雌ネジ18bを前記刃物溝20の底部20aに開口している前記ボルト孔22に対応的に整列させる。そして前記ボデー14の外周側からボルト孔22に前記ボルト24を差し込んで、刃物溝20の底部20aに位置している裏座18の雌ネジ18bにねじ込ませる。このボルト24のねじ込みの進行に伴って前記裏座18は底部20aの側へ締め付けられ、前記替刃16を該裏座18と刃物溝20の溝壁面20bとの間で挟着するに至る。このときは前述した如く、裏座18に設けた突条18aが替刃16の飛び出し防止溝16bに係合(図9参照)するので、該替刃16の確実な装着が達成される。
【0005】
ところで前記替刃16の切刃稜16a,16aは、図7および図11に示すように、蟻ビット10におけるボデー14の略全長に亘って形成されている。このように切刃稜16aがボデー14の略全長に亘っていると、蟻ビット10を回転させて被切削材(図示せず)の切削を行なう際に、衝撃的な切削抵抗が断続的に発生して瞬間的な抵抗が大きくなり、切削音が大きくなったり、切削面の仕上り状態が低下したりする等の不都合がある。このような問題を解決するために、所要の切削領域を受け持つ短い替刃16を、蟻ビット10の回転方向に所定角度だけ位相をずらした状態で取付けるようにした提案がなされている。この場合は、夫々の替刃16はボデー14の全長に亘っていないので切削時の抵抗は比較的小さくなり、前記の如き不都合が低減される利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし短い替刃16を蟻ビット10の回転方向に位相をずらして取付けるようにした前記の提案では、比較的小径な蟻ビット10におけるボデー14の外周は面積的に限られているので、これに複数の替刃16を分散して配設するには限度が有る。例えばボデー14において長手方向の切削領域を2分割するようにした場合に、夫々の切削領域が1回転で2刃切削(2回切削)となるよう維持した状態で各替刃16を配設しようとすると、位相をずらして略90°毎に刃物溝20を設ける必要がある。また夫々の刃物溝20には、前記裏座18を引き付けるボルト24を挿入すべきボルト孔22を対応的に設ける必要もある。
この場合に刃物溝20は分割された替刃16よりも長めの溝となるため、単純にボルト孔22を穿設すると、該刃物溝20と該ボルト孔22の外周面開口部との位置が部分的に重なって連通してしまい、該替刃16の交換時にボルト24を回す際に切刃稜16aを損傷したり、また切り屑がボルト孔22の前記開口部に詰まる等の不都合を生じたりする難点が予想される。更には、前記刃物溝20と該ボルト孔22とが接近することで、ボデー14に強度低下を来す部分を生ずることも考えられる。
【0007】
また図11に関して先に述べた如く、替刃16の前記飛び出し防止溝16bは刃裏面の長手方向に全長に亘って形成され、その刃体の長手方向両端で開放している。しかも替刃16を蟻ビット10に取付けた際に、該替刃16の一端は該ビット10の先端側へ僅かに突出した形となる(図7参照)。このように替刃16が突出した状態で被切削材の切削を行なうと、該替刃16に形成した前記飛び出し防止溝16bの側からクラックが発生し易くなる欠点があった。替刃16における飛び出し防止溝16bを設けた部分は、これにより強度が低下してしまうからである。
【0008】
【発明の目的】
この発明は、従来の蟻ビットに内在している前記欠点に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、例えば短い替刃を蟻ビットの回転方向に位相をずらして取付ける場合において、ボルト孔と刃物溝との位置が部分的に重なることがなく、従って替刃交換のためボルトを回しても該替刃の切刃稜を損傷したり、また切削屑がボルト孔に詰まったり、ボデーの強度が低下したりすることのない手段を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し、所期の目的を好適に達成するため本発明は、加工機械への取付用シャンクと、該シャンクが後端側に設けられ、先端側へ向かうにつれて切削半径が大きくなるボデーと、このボデーの外周に形成されて、所要の替刃と裏座との収納を許容する刃物溝と、この刃物溝の底部に開設したボルト孔とからなり、このボルト孔に挿入したボルトにより前記裏座を該刃物溝の底部側へ締め付けることで、前記替刃を該裏座と溝壁面との間で挟着するよう構成した蟻ビットにおいて、
前記ボルトが挿入されるボルト孔のボルト差し込み側を、前記ボデーの先端面に開口させたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る蟻ビットに関して、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら説明する。なお従来技術の項で述べた部材名については、実質的に同じ部材は同じ符号で指示するものとする。
【0012】
図1〜図4は、本発明の好適実施例に係る蟻ビット10を示すものであって、替刃16による切削領域がボデー14の長手方向に2分割されている。すなわち蟻ビット10のボデー14に設けられる替刃収容用の刃物溝20は、図4の背面図(シャンク12の後端側)に示す如く、円周方向に90°の位相角をもって4つ形成されている。そして図3の側面図に示すように、ボデー14のシャンク側に位置する刃物溝20と蟻ビット10の先端側に位置する刃物溝20とが、90°の位相角で隣り合う形で形成されている結果として、前記の如く替刃16による切削領域がボデー14の長手方向に2分割されている。この場合にボデー14におけるシャンク側の刃物溝20に関しては、図4に示すように、ボルト孔22は該ボデー14の反対側に開口し穿設されている。そして該ボルト孔22にボルト24が挿入され、これにより前記裏座18を刃物溝20の底部20a側へ締め付けることで、前記替刃16は該裏座18と溝壁面20bとの間で挟着される。
【0013】
またボデー14における先端面14aの側に位置する刃物溝20に関しては、図1および図2に示すように、ボルト孔22はボデー先端面14aに開口し、その開口側がボルト24の差し込み側に設定されている。すなわちボデー先端側の刃物溝20に前記替刃16を装着するには、ボデー14の先端面14aに開口する前記ボルト孔22からボルト24の先端を差し込み、該ボルト24の先端を対応の刃物溝20に突出させて、該刃物溝20に位置する裏座18の雌ネジ18bにねじ込ませる。このとき替刃16は、刃物溝20における溝壁面20bの定位置にあって、その飛び出し防止溝16bに前記裏座18の突条18aが係合可能になっている。このような状態で前記ボルト24を締め付け方向へ回転させることにより、前記裏座18は刃物溝20の底部20aに向けて引き寄せられ、前記替刃16は該裏座18と溝壁面20bとの間で強力に挟着されるに至る。
【0014】
このように面積的に余裕の少ないボデー14の外周部にボルト孔24を開設するのを回避し、該ボデー14の先端面14aに該ボルト孔24を開口させるようにしたことで、ボデー外周にボルト孔24と刃物溝20との位置が部分的に重なったり、或いは強度に影響を及ぼす程に接近するのを防止することができる。なお図示の実施例では、替刃16を2分割して切削する構成を示したが、本発明の適用はこのような分割切削の例に限られるものではない。例えば蟻ビット10におけるボデー14の全長が短くて切削範囲が狭い場合は、前述の如き分割切削とする必要はないが、このときは先端に開口する刃物溝20を3乃至4設けても、該刃物溝20とボルト孔24とを干渉させることなく形成し得るものである。
【0015】
図5は、本願の別の発明の好適実施例に関するものであって、先に述べた蟻ビット10に使用される替刃16の側面および裏面が示されている。この替刃16は、刃体の長手方向の1辺にだけ切刃稜16aが設けられており、刃体裏面には前述の飛び出し防止溝16bが形成されている。但し飛び出し防止溝16bは、その替刃16を蟻ビット10の刃物溝20に装着した際に、少なくとも前記ボデー14における先端面14aの側には開口しない構成となっている。すなわち替刃16を蟻ビット10に装着すると、先に説明したように該替刃16の一端は該ビット10の先端面14aより僅かに突出するが、この状態において前記飛び出し防止溝16bは替刃16における突出側の一端には開口しない、というものである。
【0016】
図6は、替刃16に関する別の実施例を示すもので、この替刃16は刃体の長手方向の2辺に切刃稜16a,16aが設けられて、反転させることで両方の切刃稜16aを使用できるようになっている。この替刃16も、その刃体裏面に前述の飛び出し防止溝16bが形成されているが、この溝16bの両端は替刃16の裏面内に止まり、刃体の両端には開口しないよう構成されている。すなわち図6に示す例でも、替刃16を蟻ビット10の刃物溝20に装着した際に、少なくともボデー先端面14aの側には開口しない構成となっている。このように図5および図6に示す替刃16では、飛び出し防止溝16bの突出端の部分の強度が必然的に低下しクラックを生じ易くなるが、替刃16の突出端に飛び出し防止溝16bを開口させないように構成したことにより、切削時の応力が溝16bの部分に集中することがなく、クラックが発生する畏れを有効に防止し得るものである。
【0017】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明に係る蟻ビットによれば、替刃取付け用のボルトが挿通されるボルト孔をボデーの先端面に開口させるよう構成したので、限られた面積のボデー外周においてボルト孔と刃物溝との位置が部分的に重なることがない。このため替刃を交換するためボルトを回しても該替刃の切刃稜を損傷する畏れがなく、また切削屑がボルト孔に詰まったりすることがない等の有用な効果を奏するものである。更には、ボルト孔と刃物溝との位置が重ならないまでも、不都合な程に接近することもないので、蟻ビットにおけるボデーの強度低下を来す等の畏れも回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る蟻ビットを、その先端部が判明するように傾斜させた状態で示す斜視図である。
【図2】本発明に係る蟻ビットの先端側をもって正面とした正面図である。
【図3】本発明に係る蟻ビットの側面図である。
【図4】本発明に係る蟻ビットの後端側をもって背面とした背面図である。
【図5】本願の別の発明に係る替刃の側面および裏面を示す概略説明図である。
【図6】別の実施例に係る替刃の側面および裏面を示す概略説明図である。
【図7】従来技術に係る蟻ビットの側面図である。
【図8】図7に示す蟻ビットの背面図である。
【図9】図7に示す蟻ビットの正面図である。
【図10】図7に示す蟻ビットから替刃および裏座を外すと共に、替刃裏面の飛び出し防止溝に裏座の突条を係合させた状態でボルト結合する状態を説明的に示す分解斜視図である。
【図11】図7に示す蟻ビットに使用される替刃の裏面に、裏座の突条と係合させられる飛び出し防止溝が形成されている状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 蟻ビット
12 シャンク
14 ボデー
14a 先端面(ボデーの)
16 替刃
18 裏座
20 刃物溝
20a 底部(刃物溝の)
20b 溝壁面(刃物溝の)
22 ボルト孔
24 ボルト
Claims (1)
- 加工機械への取付用シャンク(12)と、該シャンク(12)が後端側に設けられ、先端側へ向かうにつれて切削半径が大きくなるボデー(14)と、このボデー(14)の外周に形成されて、所要の替刃(16)と裏座(18)との収納を許容する刃物溝(20)と、この刃物溝(20)の底部(20a)に開設したボルト孔(22)とからなり、このボルト孔(22)に挿入したボルト(24)により前記裏座(18)を該刃物溝(20)の底部(20a)側へ締め付けることで、前記替刃(16)を該裏座(18)と溝壁面(20b)との間で狭着するよう構成した蟻ビットにおいて、
前記ボルト(24)が挿入されるボルト孔(22)のボルト差し込み側を、前記ボデー(14)の先端面(14a)に開口させた
ことを特徴とする蟻ビット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31124097A JP4164140B2 (ja) | 1997-10-27 | 1997-10-27 | 蟻ビット |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31124097A JP4164140B2 (ja) | 1997-10-27 | 1997-10-27 | 蟻ビット |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11129215A JPH11129215A (ja) | 1999-05-18 |
JP4164140B2 true JP4164140B2 (ja) | 2008-10-08 |
Family
ID=18014788
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31124097A Expired - Lifetime JP4164140B2 (ja) | 1997-10-27 | 1997-10-27 | 蟻ビット |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4164140B2 (ja) |
-
1997
- 1997-10-27 JP JP31124097A patent/JP4164140B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11129215A (ja) | 1999-05-18 |
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