JP4163171B2 - 変性ポリオレフィン樹脂組成物およびその水分散物 - Google Patents
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Description
上記課題を解決するため、従来から、ポリオレフィン樹脂を複数の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体などで変性した酸変性ポリオレフィン樹脂組成物が、塗装前処理剤あるいは接着剤として提案されている(特許文献1及び特許文献2)。しかし、それらの酸変性ポリオレフィン樹脂は、非極性基材への付着力が低い上、乾燥塗膜にはタックがありフィルム塗装後の巻き取りが困難である、ごみが付着するなどの問題があった。そのため、タックを低減させるため新たな手段を講じる必要があった。
また、酸変性ポリオレフィン樹脂は、溶剤溶解性が低いという欠点があった。このため、それを溶解する溶剤には、トルエン、キシレン等の非極性の芳香族溶剤の使用が必須であり、付着性等の諸物性を維持したまま非芳香族溶剤に溶解させることは極めて困難であった。しかし、近年は環境問題の観点から、芳香族溶剤をまったく含有しない溶剤に溶解する樹脂が求められるようになっている。さらに、酸変性ポリオレフィンは、他樹脂との相溶性に乏しいため、塗装時の作業性が悪く、また、混合する他の樹脂が限定されるという問題点があった。
水分散物の耐水性、耐ガソホール性、耐ブロッキング性を改善する方法としては、樹脂を架橋する方法がある。架橋剤として、オキサゾリン系、アミン系、ヒドラジド系、エポキシ系架橋剤等が公知である。例えば、[特許文献10]、[特許文献11]には、架橋性官能基を導入したオレフィン系単量体とビニル系単量体のブロック共重合体の水分散体とポリウレタン系あるいはビニル系水性樹脂の混合物をエポキシ系架橋剤で架橋させる方法が、また、[特許文献12]には、架橋性官能基を導入した変性オレフィン系水性樹脂とポリウレタン系水性樹脂の混合物を、オキサゾリン系あるいはアミン系、ヒドラジド系、エポキシ系架橋剤で架橋させる方法がある。しかしながら、これらの方法では、ポリウレタン系あるいはビニル系水性樹脂を混合するため、ポリオレフィン基材に対する付着性に問題があった。
即ち、本発明は、
(1)ホモポリマーのガラス転移点(Tg)が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体(A)1種類以上をポリオレフィン樹脂にグラフト共重合してなる樹脂組成物(C)を主成分とする変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(2)ホモポリマーのガラス転移点(Tg)が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体(A)1種類以上、および不飽和カルボン酸および/またはその誘導体(B)1種類以上をポリオレフィン樹脂にグラフト共重合してなる樹脂組成物(D)を主成分とする変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(3)ホモポリマーのガラス転移点(Tg)が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体(A)が、ダイアセトンアクリルアミドおよび/またはN,N,−ジエチルアクリルアミドであることを特徴とする(1)〜(2)記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物を、水に分散させた分散物。
また、上記グラフト重合により、変性ポリオレフィン樹脂組成物の軟化温度が向上したため、課題であったタックも消失した。
さらに、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト重合時に併用することで、他樹脂との相溶性をさらに向上させることができた。
本発明により、従来の技術では為しえなかった特徴を兼ね備えた、有用な変性ポリオレフィン樹脂を得ることができた。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物の被着材となる非極性樹脂とはポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のシート状物、フィルム形成物及び成形体等をいう。本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、これらの被着材がプラズマ、コロナ等による表面処理がなされていない難付着性のものであっても使用できることを特徴としているが、当然、表面処理されている被着材であっても同様に使用できる。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−2、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1,4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2以上20以下、好ましくは2以上6以下のα−オレフィン、あるいはシクロペンテン、シクロヘキセン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の鎖状あるいは環状ポリエン、あるいはスチレン、置換スチレンなどのモノマーを単位とする同種モノマーの重合体または異種モノマーの共重合体である。
重合体中のこれらのモノマーの割合は任意に選択できるが、ポリエチレン、ポリプロピレンを被着材とする場合は、プロピレンの割合が50モル%以上98モル%以下であることが好ましく、特にエチレン−プロピレン、プロピレン−ブテン、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体が好ましい。プロピレンの割合が50モル%よりも少ないと被着材への付着が劣り、98%モルより多いと柔軟性が不足する。
また、本発明に用いるポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、グラフト変性されてできる変性ポリオレフィン樹脂組成物の重量平均分子量が15,000〜500,000となるように自由に選択できる。例えば、重量平均分子量が500,000より大きい重合体であっても、熱やラジカルの存在下で減成するなど公知の方法で適当な範囲に調節すればよい。なお、ポリオレフィン樹脂として、上記(共)重合体の中から複数の(共)重合体を併用してもよい。
本発明における(メタ)アクリルアミド誘導体とは、アクリルアミドまたはメタアクリルアミド末端の水素原子の一つまたは二つが、他の置換基で置換された化合物をいう。
本発明における(メタ)アクリルアミド誘導体は、ホモポリマーのガラス転移点(Tg)が100℃以下であることが必須である。
ガラス転移点とは、ポリマー特有の物理現象であり、ポリマーが分子レベルで柔軟性を発現する温度を意味する。従って、一定の温度で比較した場合、ガラス転移点が低いポリマーの方が、柔軟性が高く、ガラス転移点の高いポリマーは、柔軟性が低く硬く脆い傾向にある。ガラス転移点は、示差走査熱量測定法(DSC)等により測定することができる。
本願では、グラフト変性されたポリオレフィン樹脂には、結果としてグラフト重合する(メタ)アクリルアミド誘導体のホモポリマーの物性が付与されると考えられるため、ホモポリマーの物性値を重要視した。
(メタ)アクリルアミド誘導体のホモポリマーのガラス転移点は、80〜180℃と幅があり、大半の(メタ)アクリルアミド誘導体のホモポリマーは100℃以上であり、例えばアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドのホモポリマーのガラス転移点は、それぞれ180℃、135℃である。
本発明では、(メタ)アクリルアミド誘導体の中では、ガラス転移点(Tg)が100℃以下となる(メタ)アクリルアミド誘導体を用いる。その例としては、ダイアセトンアクリルアミド(ガラス転移点:約85℃)、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド(ガラス転移点:約80℃)があるが、これに限られない。また、それらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明では、特に、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドが好適に用いられる。
ガラス転移点が100℃以下である(メタ)アクリルアミド誘導体をグラフト重合で導入すると、硬度と柔軟性を兼ね備えた樹脂となるのに対し、ガラス転移点が100℃以上のものでは、硬度と柔軟性のバランスが取れず、硬く脆い樹脂となってしまう。
また、ガラス転移点は極性と相関があり、極性が高いとガラス転移点が高くなる傾向がある。本願の目的である各種溶剤への溶解性の向上のためには、変性ポリオレフィンの極性を高くすることが考えられるが、そのための手段の一つとして、比較的極性の高いモノマーをグラフト重合することが考えられる。
(メタ)アクリルアミド誘導体はアミド基を有するため全般的に極性が高く、各種極性溶剤へ溶解するものが多いため、ポリオレフィンに重合するモノマーとして一定の効果があることが期待される。しかし、モノマーの極性が高すぎると目的とする物性を十分に満足できない。即ち、ポリオレフィンは非極性ポリマーであるため、モノマーの極性が高すぎると、ポリオレフィンとの相溶性が悪くなり、グラフト重合率が極端に低くなってしまう。そのため、反応系内の未反応のモノマーが、ホモポリマーを形成し、得られる変性ポリオレフィン樹脂組成物は、付着力が低く、溶解性も低くなる。また、極性が高すぎると、極性溶剤にしか溶解しなくなってしまう。
例えば、(メタ)アクリルアミド誘導体でも、ホモポリマーのガラス転移点が100℃より高いものは、極性が高いため、非極性溶剤への溶解度は低い。該当するアクリルアミドは、水、メタノールにしか溶解せず、そのホモポリマーは水にしか溶解しない。
しかし、ホモポリマーのガラス転移点が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体は、極性がそれほど高くないため、極性溶剤はもとより、非極性溶剤まで幅広い溶剤に溶解する。そして、これらのホモポリマーも同様の性質を示す。
そのため、ガラス転移点100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体をポリオレフィンに導入した場合、トルエン、キシレン等従来使われている非極性芳香族溶剤以外の極性溶剤への溶解性が向上する。
また、極性は他樹脂との相溶性にも影響を与えるため、ガラス転移点100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体をモノマーとしてグラフト重合すると、生成した変性ポリオレフィン樹脂組成物と他樹脂との相溶性は向上する。
さらに、(メタ)アクリルアミド誘導体は、水素結合を有することから融点ので、ポリオレフィンに導入した場合、軟化温度が上昇する。それにより、タックが改善される。
一方、多くの(メタ)アクリルアミド誘導体は、毒性が高く、取り扱いに十分注意を払わなくてはならない。しかし、ホモポリマーのガラス転移点が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体の中でも、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドは他の(メタ)アクリルアミド誘導体とは異なり毒性が低い。
たとえば、ダイアセトンアクリルアミドとアクリルアミドの急性毒性値(ラットLD50)を比べた場合、前者は1770mg/Kgであるのに対し、後者は124mg/Kgと圧倒的に毒性が高く、それ故、毒物及び劇物取締法では劇物に指定され、労働安全衛生法では扱いに注意すべき特定化学物質に指定されている。このように、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドは安全性が高く、作業性が高く、作業員の健康、及び、廃棄する際の環境へ影響を与える可能性が小さい。
ホモポリマーのガラス転移点(Tg)が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体(A)の変性ポリオレフィン樹脂組成物中の含有率(重量%)は、(A)のみでグラフト変性する場合は、好ましくは0.1〜90重量%、さらに好ましくは0.1〜80重量%、特に好ましくは0.1〜70重量%である。
また、本発明では目的に応じて不飽和カルボン酸および/またはその誘導体(B)を併用することができる。本発明における不飽和カルボン酸とは、カルボキシル基を含有する不飽和化合物をいい、その誘導体とは該化合物の酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等をいう。
例を挙げれば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸及びこれらの無水物、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、及び、(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、及び、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンの群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である。
好ましくは無水イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、N−メチロール(メタ)アクリルアミドである。
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体(B)を併用することで、特定の官能基を導入することができ、他成分との相溶性が向上する。
ホモポリマーのガラス転移点(Tg)が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体(A)と不飽和カルボン酸および/またはその誘導体(B)を併用する場合は好ましくは(A)+(B)が0.1〜90重量%であり、さらに好ましくは0.1〜80重量%、特に好ましくは0.1〜70重量%である。但し、この内(B)のグラフト含有量は、グラフト変性した変性ポリオレフィン樹脂組成物の物性値に悪影響を与えない程度でなければならず、グラフト含有量は、(B)の種類により変える必要がある。
一般的には、好ましくは0.1〜45重量%、さらに好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜40重量%である。いずれの場合も指定範囲よりもグラフト含有量が少ないと変性ポリオレフィン樹脂組成物の溶剤溶解性や他樹脂との相溶性が低下する。また、逆に多すぎるとポリオレフィン骨格にグラフトしないホモポリマー、あるいはコポリマーの生成量が増加し、付着力が低下するため好ましくない。
また、本発明では用途、目的に応じて前記(A)、(B)と併用して、マレイミド、N−フェニルマレイミド、イソシアネート含有(メタ)アクリレート、ポリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等を使用することもできるが、本発明の目的とする付着性を得るためには、これらの化合物の使用量が(A)と(B)のモノマーの合計使用量を超えないことが望ましい。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物には、グラフト効率向上のための反応助剤、樹脂組成物安定性の調整のための安定剤、反応促進のためのラジカル開始剤等を配合することができる。
反応助剤としてはスチレン、o−、p−、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。安定剤としてはヒドロキノン、ベンゾキノン、ニトロソフェニルヒドロキシ化合物等が挙げられる。ラジカル開始剤は公知のものから適宜選択できるが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物を用いることが好ましい。
上記の化合物を用いてグラフト共重合させ変性ポリオレフィン樹脂組成物を得る方法は、公知の方法でよい。例えば、ポリオレフィン樹脂をトルエン等の溶剤に加熱溶解し、ホモポリマーのガラス転移点(Tg)が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体(A)、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体(B)を添加する溶液法や、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して溶融したポリオレフィン樹脂に(A)、(B)を添加する溶融法などが挙げられるが、環境問題の観点から有機溶媒を用いない溶融法が好ましい。(A)、(B)の添加方法は、逐次でも一括添加でも構わない。
変性ポリオレフィン樹脂組成物中の上記化合物の反応形態は、ポリオレフィン骨格にホモポリマーのガラス転移点(Tg)が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体(A)、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体(B)が直接グラフト重合してもよいし、ポリオレフィン骨格に(A)、(B)の(ホモ)コポリマーがグラフト重合してもよく、反応形態は特に制限されない。
変性ポリオレフィン樹脂組成物の重量平均分子量は15,000〜500,000、好ましくは30,000〜400,000である。特に好ましくは30,000〜300,000である。15,000より小さいと非極性基材への付着力や凝集力が劣り、500,000より大きいと溶融粘度の増加により作業性が低下し、溶剤型樹脂の場合は、さらに溶剤溶解性、他樹脂との相溶性が低下する。
また、必要に応じて、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物に架橋性成分を添加することもできる。架橋性成分としては、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物に含まれる水酸基、カルボニル基等の活性水素と反応し、架橋構造を形成する化合物を意味する。
架橋性成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のポリイソシアネート、ポリアミン、ポリエポキシ、ポリヒドラジド、カルボジイミド樹脂、オキサゾリン樹脂等の群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
重量平均分子量は、公知の方法、例えばゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC法)、光散乱法等により求めることができる。また、(メタ)アクリルアミド誘導体のグラフト含有量は元素分析により測定し、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体のグラフト含有量はアルカリ滴定法、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、核磁気共鳴分析法(NMR)にて測定する。
本発明における変性ポリオレフィン樹脂組成物の水分散物を得る方法を、以下に詳述する。
変性ポリオレフィン樹脂組成物の水分散物は、変性ポリオレフィン樹脂組成物に、乳化剤及び塩基性物質を配合し乳化した後、イオン交換水などの水を加えることにより製造する。
乳化剤としては、アニオン界面活性剤や、ノニオン界面活性剤が使用できる。アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられる。
その使用量は変性ポリオレフィン樹脂組成物に対して0〜30重量であり、30重量部よりも多い場合は水分散物を形成するのに十分な量以上の乳化剤が系内に存在することになり、付着力を著しく低下させ、また、乾燥被膜とした際に可塑効果、ブリード現象を引き起こし、ブロッキングが発生してしまう。
乳化方法は、公知の強制乳化法、転相乳化法、D相乳化法、ゲル乳化法等のいずれの方法でもかまわず、使用機器は攪拌羽根、ディスパー、ホモジナイザー等による単独攪拌及びこれらを組み合わせた複合攪拌、サンドミル、多軸押出機の使用が可能である。
塩基性物質は、変性ポリオレフィン樹脂組成物中の酸成分を中和し、水に分散させることを目的として添加する。
本発明において、水分散物のpHは6以上が望ましく、特にpH6〜10が好ましい。pH6以下では中和が不十分であるために変性ポリオレフィン樹脂が水に分散しない、あるいは分散しても経時で沈殿・分離が生じ、貯蔵安定性が悪化するので好ましくない。また、pH10以上では、他成分との相溶性や作業上の安全性に問題を生じる。
塩基性物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリン等があり、好ましくはアンモニア、トリエチルアミン、モルホリンが挙げられる。
その使用量は変性ポリオレフィン樹脂組成物の酸成分の量より任意に添加できるが、水分散物のpHが6以上、好ましくはpH6〜10になるように添加しなくてはならない。
本発明では、用途、目的に応じて前記水分散物に架橋性成分を添加できる。架橋性成分とは、水分散物中に存在する、変性ポリオレフィン樹脂、乳化剤、塩基性物質等に由来する水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の活性水素と反応し架橋構造を形成する化合物であればよく、それ自体が水溶性でもよいし、何らかの方法で水に分散されているものでもよい。
具体例として、ブロックイソシアネート化合物、脂肪族または芳香族のエポキシ化合物、アミン系化合物、アミノ樹脂等が挙げられる。
架橋性成分としてブロックイソシアネート化合物を用いると、付着性、耐水性に優れた被膜を形成できるだけでなく、水分散物の貯蔵安定性が優れる。脂肪族又は芳香族のエポキシ化合物を用いると、耐水性、耐薬品性に優れるだけでなく、架橋反応性に優れ、反応触媒等の添加によって幅広い温度範囲での架橋反応が可能であるため、それを用いて製造した塗料、接着剤等の使用条件にあった製品を調製することができる。
アミン系化合物を用いると、ポリオレフィン等の非極性基材に付着性がある常温乾燥型組成物として利用することができる。アミノ樹脂を用いると、メラミン系上塗り塗料に対する層間付着力に優れ、耐水性にも優れる。
架橋性成分の添加方法は特に限定されるものではない。例えば、水分散工程途中で配合してもよいし、水分散後に添加してもよい。
次に、架橋性成分について詳述する。
ブロックイソシアネート化合物とは1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、例えばエチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′,4″−トリフェニルメタントリイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンイソシアネート等のイソシアネート、及び前記のイソシアネート化合物と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールとの付加反応又は付加重合反応において前記イソシアネート化合物を過剰に配合することで得られる2官能以上のポリイソシアネート、ビュウレット構造を有するポリイソシアネート、アロファネート結合を有するポリイソシアネート、ヌレート構造を持つイソシアネート等をブロック剤でブロックしたイソシアネート化合物である。
該ブロック剤としては、フェノール、クレゾール等のフェノール系、メタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系、アセト酢酸メチル、マロン酸ジメチル等の活性メチレン類、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド類、その他イミド類、アミン類、イミダゾール類、尿素類、カルバミン酸塩類、イミン類、アセトキシム、メチルエチルケトキシム等のオキシム類、マロン酸ジエチル等のマロン酸エステル類、メルカプタン類、亜硫酸類、イプシロンカプロラクタム等のラクタム類等がある。
すなわち本発明でいうブロックイソシアネート化合物とは一般的にブロックイソシアネート、マスクドイソシアネート、反応性ウレタンと呼ばれる化合物又はこれに類するものである。
ブロックイソシアネート化合物と変性ポリオレフィン樹脂組成物の水分散物の割合としては1:20〜10:1の範囲で用いることが好ましいが、ブロックイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基と、乾燥処理後の塗膜に残る成分に含まれる変性ポリオレフィン樹脂組成物や界面活性成分等由来の水酸基、カルボキシル基等のイソシアネート基と反応する官能基の量によって最適割合を決めることができる。
ブロックイソシアネート化合物添加の水分散物を用いて被膜を形成させる場合、被膜形成時に脱ブロックしイソシアネートと他の活性水素との反応を進めるため80〜200℃で1分〜2時間熱処理を行う。この処理条件については、用いるブロックイソシアネートの脱ブロック条件、脱ブロック触媒の種類や添加量によって最適値を設定する。
エポキシ化合物とはその分子構造中に1以上のオキシラン構造を持ち室温で液状か又は、室温で固体であっても、それ自体が水溶性又は水分散性を持つか、あるいは水溶性又は水分散性を持たなくとも界面活性剤の添加や親水性保護コロイドを形成させる等何らかの方法で水性化されたものをいう。
代表的なものとしてポリオレフィンエポキシド、シクロアルケンエポキシド、エポキシドアセタール、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、グリシジルイミン等のグリシジル基の誘導体、オキセタン化合物などが用いられる。
具体的にはビスフェノールAジグリシジルエーテルに代表されるビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、ポリフェノール系エポキシ樹脂、ポリヒドロキシベンゼン系エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、クレゾールモノグリシジルエーテル等のフェノール類からのエポキシ化誘導体、グリシジルメタクリレートと他のアクリルモノマーの共重合物、シクロヘキセンオキシド系エポキシ樹脂、アニリン誘導体からなるエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、オキセタン環を1個以上有する化合物、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、1,4−ビス〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ベンゼン、1,3−ビス〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ベンゼン、4,4´−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン等が例示される。
エポキシ化合物の配合においては水分散物の使用条件によって硬化剤又は硬化触媒を配合し被膜形成条件にあわせた処方を調製することができる。
硬化剤、硬化触媒としては、ジエチレントリアミンに代表される脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミンに代表される芳香族ポリアミン、ピペリジン、ピロリジンに代表される第二アミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリスジアミノメチルフェノールに代表される第三アミン、無水フタル酸、無水シトラコン酸、無水ピロメリット酸等に代表される酸無水物、酸弗化ほう素アミンコンプレックス、フェノールノボラック樹脂、尿素樹脂初期縮合物、メラミン樹脂初期縮合物、ジシアンジアミドなどが例示される。
本発明においてエポキシ化合物は水分散物100重量部に対して2〜500重量部が使用される。使用量が2部より少ない場合にはその添加効果が現れず、500部より多い場合には非極性基材に対する付着性が低下する。
アミン系硬化剤としては1分子中に2個以上の活性アミノ基またはイミノ基を有するポリアミン系化合物または1分子中に2個以上のヒドラジン基を有するヒドラジン系化合物などが使用できる。
前記ポリアミン系化合物としてはアミン価が100〜2000の範囲のものが好ましく、アミン価が100未満では毒性が高く使用が困難であり、アミン価が2000を超えると充分な塗膜の硬化が得られにくい。
前記ヒドラジン系化合物としては、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタミン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ウンデカン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ペンタン−1,3,5−トリカルボン酸(トリ)ヒドラジド等のジ(トリ)カルボン酸のジ(トリ)ヒドラジド類、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、ヘキシレン−1,6−ジヒドラジン等の脂肪族ジヒドラジン類等が例示される。
前記ポリヒドラジド以外のポリヒドラジドであっても、それ自体が水溶性であるか、自己乳化性を持つもの、又は何らかの方法によって水中に分散されるものであれば良い。
本発明においてアミン系化合物は水分散物100重量部に対し、0.1〜30重量部配合される。0.1部未満では耐ブロッキング性の改良がみられず、30部を越えては上塗りを塗った時の付着性が低下する。
架橋性成分としてアミン系化合物を用いることを特徴とする水分散物はポリオレフィン等の非極性基材に付着性がある常温乾燥型組成物として利用することができる。
アミノ樹脂とは尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させて得られる熱硬化性樹脂を意味する。本発明に使用されるアミノ樹脂としては公知のものが使用できるが、好ましくは室温付近で液状であるか、又は、室温で固体であっても、それ自体が水溶性又は水分散性を持つか、あるいは水溶性又は水分散性を持たなくとも界面活性剤の添加や親水性保護コロイドを形成させる等何らかの方法で水性化されたものをいう。
アミノ樹脂の使用量は水分散物100部に対して5〜500部であり、5部未満では添加効果が現われず、500部以上ではポリオレフィン基材に対する付着性が不足する。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物およびその水分散物は、非極性基材用の接着剤、プライマー、塗料用バインダー樹脂、インキ用バインダー樹脂として使用できる。変性ポリオレフィン樹脂組成物は、溶液、粉末、シートなど、用途に応じた形態で使用できるが、塗工する段階では水以外の溶媒を媒体とし、溶液として用いることもできる。また、その際に必要に応じて添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤等を配合できる。
水分散物に関しては、低級アルコール類、低級ケトン類、低級エステル類、防腐剤、レベリング剤、金属塩、酸類等も配合できる。
変性ポリオレフィン樹脂組成物を溶液として使用する場合、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、あるいは前記の溶剤の混合物等の各種の溶剤が使用できるが、特にシクロヘキサン系脂肪族溶剤とエステル系あるいはケトン系溶剤の混合物を使用することが好ましい。なお、環境問題の観点から芳香族溶剤を使用しないことが望ましい。
本発明の樹脂や水分散物を使用する際の熱処理条件としては、170、180℃程度の高温下でフィルムにラミネートしたり、溶液状態でスプレー、刷毛塗り、バーコーティング等で塗布した後、80〜100℃程度の温度で乾燥、焼付を行ったり、そのまま室温で乾燥して使用することもできる。
接着剤、インキ用バインダー樹脂用途では、ポリエチレン、ポリプロピレン等の非極性基材だけでなく、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等の極性基材を併用することも多いが、本発明の樹脂はこのような極性基材への付着性も有することから同用途にも適する。
同様にプライマー、塗料用バインダー樹脂として用いる場合も上塗り塗料やクリアーとの付着性に優れるため、同用途にも適する。
塗料、インキ用バインダーとして用いる場合は、必要に応じてウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、硝化綿などの他樹脂、水分散物に関してはこれらの水性化樹脂をブレンドしてもよい。
変性ポリオレフィン樹脂組成物およびその水分散物を各種用途に用いる際、上記の添加剤や他樹脂を配合する場合には、非極性基材への付着性を維持するために、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物を、全樹脂料に対して固形分で少なくとも5重量%以上用いる必要がある。
この他本発明の水分散物には、用途により水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、低級アルコール類、低級ケトン類、低級エステル類、防腐剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、金属塩、酸類等を配合できる。
本発明は、ポリオレフィンにグラフト重合するモノマーとして、そのホモポリマーが、ガラス転移点100℃以下である(メタ)アクリルアミド誘導体を選択することにより、グラフト変性後の変性ポリオレフィン樹脂に有用な特性を付与することができた。即ち、ガラス転移点100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体は、全般的に極性が高い(メタ)アクリルアミド誘導体にあって、ある程度の極性を有するが、他の(メタ)アクリルアミド誘導体に比べて極性が低いため、それをモノマーとしてグラフト変性したポリオレフィン樹脂組成物に溶剤溶解性、付着性、他樹脂との相溶性及び樹脂剛度の諸物性をバランスよく付与することができた。また、その水分散物も、変性樹脂の有用な性質を失うことなく水に分散することができた。
重量平均分子量は、GPCにより測定し、(メタ)アクリルアミド誘導体のグラフト重量は、元素分析により測定し、無水マレイン酸、無水イタコン酸のグラフト重量は、アルカリ滴定法により、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ヒドロキシエチルのグラフト重量は、NMRにより測定した。
実施例の重合条件と物性は表1に、比較例の重合条件と物性は表2にまとめた。
4つ口フラスコにプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(プロピレン成分68モル%、エチレン成分8モル%、ブテン成分24モル%、重量平均分子量60,000)100重量部と、N,N−ジエチルアクリルアミド20重量部、ジクミルパーオキサイド1重量部を投入し、180℃にて2時間攪拌し、反応させた。
L/D=40、反応部が全体長の30%を占め、反応部位中のニーディングディスクの占有率が50%であり、その構成がニーディングディスクライト17%、ニーディングディスクレフト17%、ニーディングディスクニュートラル16%である同方向2軸押出機に、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(プロピレン成分95モル%、エチレン成分5モル%、重量平均分子量250,000)100重量部、ダイアセトンアクリルアミド500重量部、ジクミルパーオキサイド3重量部を投入した。滞留時間は10分、反応部の温度は180℃とし、最終バレルにて脱揮を行い、残留する未反応物を除去した。
実施例1に用いたプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体並びに表1に示す(メタ)アクリルアミド誘導体及び不飽和カルボン酸誘導体を用いて、実施例1と同様の方法で変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
実施例2に用いたプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体並びに表1に示す(メタ)アクリルアミド誘導体及び不飽和カルボン酸誘導体を用いて、実施例2と同様の方法で変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
実施例8で得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部に対して、架橋剤としてイソホロンジイソシアネート1重量部を加えた。
実施例7で得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部に対して、架橋剤としてカルボライトV−05(日清紡績株式会社製)1重量部加えた。
[実施例14]
L/D=40、反応部が全体長の30%を占め、反応部位中のニーディングディスクの占有率が50%であり、その構成がニーディングディスクライト17%、ニーディングディスクレフト17%、ニーディングディスクニュートラル16%である同方向2軸押出機に、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(プロピレン成分68モル%、エチレン成分8モル%、ブテン成分24モル%、重量平均分子量が60,000)100重量部、N,N−ジエチルアクリルアミド500重量部、無水イタコン酸250重量部、ジクミルパーオキサイド3重量部を投入した。滞留時間は10分、反応部の温度は180℃とし、最終バレルにて脱揮を行い、残留する未反応物を除去した。
四つ口フラスコに得られた変性ポリオレフィン100重量部、ジメチルエタノールアミン10重量部、ポリオキシエチレンアルキルアミン10重量部を攪拌羽根で100℃、2時間均一に攪拌し、溶解させた後、90℃のイオン交換水300重量部を加えて水分散物を得た。
四つ口フラスコに実施例6で得られた変性ポリオレフィン100重量部を110℃で溶融し、モルホリン10重量部を滴下後、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩10重量部を添加した。その後、90℃のイオン交換水300重量部を加えて水分散物を得た。
実施例14で得られた水分散物に、架橋剤として水性ブロックイソシアネート(エラストロンBN-44、第一工業製薬製)を固形分で2:1に混合した。
実施例15で得られた水分散物100重量部に対して、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジド20重量部を配合した。
実施例2に用いたプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体並びに表2に示す(メタ)アクリルアミド誘導体及び不飽和カルボン酸誘導体を用いて、実施例2と同様の方法で変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
実施例1に用いたプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体並びに表2に示す(メタ)アクリルアミド誘導体及び不飽和カルボン酸誘導体を用いて、実施例1と同様の方法で変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
[比較例6]
4つ口フラスコに比較例1にて得られた変性ポリオレフィン100重量部を110℃で溶融し、モルホリン10重量部を滴下後、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩10重量部を添加した。その後、90℃のイオン交換水を300重量部加えて水分散物を得た。
4つ口フラスコに比較例3にて得られた変性ポリオレフィン100重量部を110℃で溶融し、モルホリン10重量部を滴下後、ポリオキシエチレンアルキルアミン10重量部を添加した。その後、90℃のイオン交換水を300重量部加えて水分散物を得た。
上記、実施例1〜13、比較例1〜5で得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物および実施例14〜17、比較例6〜7で得られた水分散物について、以下の試験を行った。
(1)溶剤溶解性
メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=9/1(w/w)溶液に、得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物を10重量%溶解し、溶剤溶解性を評価した。
(2)タック試験
表面処理されていない高密度ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムに#20のマイヤーバーを用いて、変性ポリオレフィン樹脂組成物をトルエンに溶解した溶液を塗布し、室温で15時間乾燥した。水分散物については、表面処理されていないポリプロピレンフィルムに#7のマイヤーバーを用いて塗布し、室温で15時間乾燥後、120〜130℃で2〜15分熱処理した。それぞれについて、被膜面が重なるように試験片を折り曲げ、指で軽く押さえた後で引き剥がし、その剥がれ易さからタックを評価した。
(3)フィルム室温付着性試験
上記タック試験と同様に変性ポリオレフィン樹脂組成物および水分散物を塗布したフィルムに対し、塗布面上にセロハン粘着テープを密着させて180度方向に引き剥がし、残存する塗布層の様子を観察した。
(4)付着性試験
タック試験に用いた変性ポリオレフィン樹脂組成物のトルエン溶液および水分散物を超高剛性ポリプロピレン板に乾燥被膜厚が10μm以上15μm以下となるようスプレー塗布し、変性ポリオレフィン樹脂組成物は80℃で30分間、水分散物は120〜130℃で2〜15分乾燥させた。試験片を室温で3日間静置した後、塗膜表面にカッターで素地に達する切れ目を入れ、1mm間隔で100個の碁盤目を作り、その上にセロハン粘着テープを密着させて180度方向に5回引き剥がし、残存する碁盤目の数を数えた。
(5)ヒートシール強度試験
変性ポリオレフィン樹脂組成物については、コロナ表面処理されたポリプロピレンフィルムに#20のマイヤーバーを用いて、タック試験のトルエン溶液を塗布し、室温で15時間乾燥した。水分散物については、#7のマイヤーバーを用いて塗布し、室温で15時間乾燥後、120〜130℃で2〜15分熱処理した。塗布面同士を重ね合わせ、No.276ヒートシールテスター(安田精機製作所)を用いて1.5kg/cm2、90℃、1秒間の条件でヒートシールを行った。各試験片を15mm幅となるように切断し、引っ張り試験器を用いて5kg重、100mm/minの条件で引き剥がし、その剥離強度を測定した。3回試験を行って、その平均値を結果とした。
(1)〜(5)までの試験結果を表3に示す。
変性ポリオレフィン樹脂組成物を、トルエンにそれぞれ40重量%溶解させたトルエン溶液を調整し、それをバインダー樹脂として、以下の配合で塗料を調整した。
バインダー樹脂(40%含有トルエン溶液):100重量部
アルキド樹脂(フタルキッドV904 日立化成工業製) :15重量部
TiO2 :5重量部
カーボンブラック:1重量部
弁柄:2重量部
タルク:15重量部
シリカ艶消し剤:5重量部
上記成分をサンドミルで約1時間混練した後、フォードカップ#4で12〜13秒/20℃の粘度となるようトルエンで希釈して、塗料を作製した。各塗料を超高剛性ポリプロピレン板に乾燥被膜厚が30μm以上35μm以下となるようスプレー塗布し、室温で30分乾燥した後、80℃で30分間焼付を行った。試験片を室温で2日間静置した後、以下の試験を行った。
・付着性試験
試験片について、前記と同様の碁盤目試験を行った。
・耐温水性試験
試験片を40℃の温水に240時間浸漬し、塗膜の状態を目視にて観察し、その後、碁盤目試験による付着性試験を行った。
・耐ガソリン性試験
試験片をガソリンに2時間浸漬し、塗膜の状態を目視にて観察した。
・耐ガソホール性試験
試験片をガソリンとエタノールを9/1(w/w)で混合した溶液に2時間浸漬し、塗膜の状態を目視にて観察した。
(6)の試験結果を表4に示す。
変性ポリオレフィン樹脂組成物について、それぞれ固形分が10重量%のトルエン溶液を調整し、超高剛性ポリプロピレン板に乾燥被膜厚が10μm以上15μm以下となるようスプレー塗布し、80℃で30分間乾燥を行った。次に、二液型上塗り白塗料を乾燥被膜厚が45μm以上50μm以下となるようスプレー塗布し、15分室温で静置した後、90℃で30分焼付を行った。水分散物については、変性ポリオレフィン樹脂組成物と同様の条件でスプレー塗装し、15分室温に静置した後、80℃で30分乾燥後、120〜130℃で2〜15分熱処理した。試験片を室温で3日間静置した後、上記の塗料試験と同様の試験を行った。結果を表5に示す。
・相溶性試験
変性ポリオレフィン樹脂組成物を、エチルシクロヘキサン/酢酸ブチル=7/3(w/w)溶液に、それぞれ40重量%溶解させた溶液を調整し、それをバインダー樹脂として、以下の配合でインキを調整した。
バインダー樹脂(40%含有溶液):100重量部
インキ用ウレタン樹脂 :50重量部
TiO2 :100重量部
酢酸エチル:100重量部
イソプロピルアルコール:50重量部
上記成分をペイントシェーカーで練肉し、白色印刷インキを調整した。インキ成分との相溶性を、インキの分離状態から目視で判断した。
実施例11〜14、比較例9〜11で得られた水分散物については、インキの他成分の代表的なものである水性化ポリウレタンとを固形分比で1:1になるように配合し、十分攪拌したものを室温で30日間保存し、相溶性を確認した。
・接着性
実施例1〜10、比較例1〜8で得られた変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する上記組成の印刷インキを#12マイヤーバーでポリエステル(PET)、ナイロン(NY)、延伸ポリプロピレン(OPP)、高密度ポリエチレン(HDPE)の各フィルムに塗布した。
接着性は、塗布面にセロハン粘着テープを貼りつけ、これを急速に剥がした時の塗布面の状態を目視で判断した。
(8)試験結果を表6に示す。
[変性ポリオレフィン樹脂組成物]
実施例に示されるように、ガラス転移点が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体を用いてグラフト重合した変性ポリオレフィン樹脂組成物は、溶剤溶解性、付着性、相溶性、耐タック性、耐ガソリン性、耐ガソホール性、耐温水性が非常に優れていた。さらに、実施例9〜10に示されるように、架橋剤を添加すると、ヒートシール強度が著しく向上した。
比較例1に示すように、(メタ)アクリルアミド誘導体をグラフト重合しないと、試験した全ての項目について満足する結果が得られなかった。
比較例2から5に示すように、ガラス転移点が100℃以上の(メタ)アクリルアミド誘導体を用いてグラフト重合すると、付着性、ヒートシール強度、耐ガソリン性、耐ガソホール性等が悪化した。
実施例14〜17に示されるようにガラス転移点が100℃以下の(メタ)アクリルアミド誘導体を用いてグラフト重合した変性ポリオレフィン樹脂組成物の水分散物は、溶剤溶解性、付着性、相溶性、耐タック性、耐ガソリン性、耐温水性が非常に優れていた。さらに、架橋剤を添加すると、耐ガソホール性が著しく向上した。
Claims (3)
- ダイアセトンアクリルアミドおよび/またはN,N,−ジエチルアクリルアミド(A)を、ポリオレフィン樹脂にグラフト共重合してなる樹脂組成物(C)であって、樹脂組成物(C)中のダイアセトンアクリルアミドおよび/またはN,N,−ジエチルアクリルアミド(A)のグラフト含有量が0.1〜80重量%である樹脂組成物(C)を主成分とすることを特徴とする変性ポリオレフィン樹脂組成物。
- ダイアセトンアクリルアミドおよび/またはN,N,−ジエチルアクリルアミド(A)、および不飽和カルボン酸および/またはその誘導体(B)1種類以上を、ポリオレフィン樹脂にグラフト共重合してなる樹脂組成物(D)であって、樹脂組成物(D)中のダイアセトンアクリルアミドおよび/またはN,N,−ジエチルアクリルアミド(A)と不飽和カルボン酸および/またはその誘導体(B)の合計グラフト含有量が0.1〜80重量%である樹脂組成物(D)を主成分とすることを特徴とする変性ポリオレフィン樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物を、水に分散させた分散物。
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