JP4162847B2 - 建設機械及び建設機械の冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カバー内のエンジン室にシロッコファンを設けた建設機械に関し、さらに詳細には、エンジン、熱交換器、及びシロッコファンをカバー内空間の後方側領域に集中配置してエンジン室に必要なスペースを低減できる建設機械及びこれに備えられた建設機械の冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
建設機械のブーム、アーム、バケット、旋回体、及び走行体等の動作部材は、通常、液圧シリンダ、液圧モータ等の液圧アクチュエータ(例えば油圧アクチュエータ)によって駆動される。建設機械には、これら油圧アクチュエータの油圧源として油圧ポンプが設けられており、この油圧ポンプは原動機(例えばエンジン)によって駆動される。
【0003】
一般に、前記油圧ポンプ及び前記エンジンは、エンジンに接続するラジエータ等の熱交換器、消音器(マフラ)といった補機とともに、建設機械の車体本体(例えば旋回体)を覆うカバー内に設けたエンジン室に配置されている。このエンジン室において、前記エンジン及び前記補機の動作中には、それらの冷却を行うために、前記カバーの一方側に設けた吸気孔から導入した空気を、冷却ファンにより前記熱交換器、前記エンジン、及び前記油圧ポンプの周囲に通過させ、前記カバーの他方側に設けた排気孔から外部に排出している。
【0004】
ここで、前記の冷却ファンとしては、軸流ファン(=プロペラファン)が用いられることが多かったが、近年、例えば特開平7−83054号公報に記載のように、容易に高圧大流量化が図れる前向き羽根を有し騒音低減にも寄与する遠心送風機、いわゆるシロッコファンを用いる構成が提唱されている。
【0005】
この従来技術では、建設機械の車体本体(旋回体)のうち運転席以外の大部分をカバーで覆い、このカバー内のエンジン室に配置したラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器及びエンジンを、シロッコファンで生起する空気流を用いて冷却する構成が開示されている。詳細には、運転席に着座した操作者の前後左右方向で方向を表したとき、エンジン室内の後方側領域に前記熱交換器を配置すると共にその下方に前記シロッコファンを配置し、さらに前記後方側領域の右前方側領域にエンジンを配置している。このとき前記エンジンは、クランク軸が前後方向となるようにいわゆる縦置きに配置している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の油圧ショベルは、比較的小規模な掘削現場の稼動に配慮されたものであって、以前のものよりは比較的小さくなっている。ところが近年、例えば市街地におけるさらに狭隘な掘削現場への適用のニーズが高まっており、これに応じてさらに小型の油圧ショベルが既に提唱されている。
【0007】
このような小型の油圧ショベルは、前記のニーズに基づき、例えば前記旋回体の後端が、前記走行体の車幅(左右方向寸法)内に近い直径(=車幅よりも若干大きい直径)内で旋回可能な寸法に構成されており(いわゆる後方小旋回型)、前記カバー内のスペースが著しく小さくなっている。そのため、前記エンジン室として用いることのできる空間が極めて限定される。さらに、このような後方小旋回型の油圧ショベルでは、カウンタウェイトが旋回中心に近い位置に配置されることから安定性を確保するためにカウンタウェイトの増量が必要となるため、これによってもカバー内空間のうちエンジン室用に残されるスペースがさらに小さく限定される。
【0008】
ここで、上記従来技術におけるエンジン室の配置構造では、前述したように、前記エンジン室として、前記熱交換器及び前記シロッコファンを配置する前記後方側領域と前記エンジンを配置するための前記右前方側領域とを合わせた比較的広い空間が必要となる。そのため、前記のような小型の油圧ショベルに対してその配置構造を適用することができない。
【0009】
本発明の目的は、エンジン、熱交換器、及びシロッコファンをカバー内空間の後方側領域に集中配置してエンジン室に必要なスペースを低減できる建設機械及びこれに備えられた建設機械の冷却装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、車体本体のうち運転席以外の大部分をカバーで覆い、このカバー内のエンジン室に配置したラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器及びエンジンを少なくとも1つのシロッコファンで生起する空気流を用いて冷却する建設機械において、前記エンジンを、クランク軸が前記車体本体の略左右方向となるように配置し、前記熱交換器及び前記シロッコファンと前記エンジンとを、前記エンジン室内において前記左右方向に並設し、前記シロッコファンを、回転軸が略鉛直方向となるように配置する。
【0011】
本発明においては、エンジン室内を冷却する空気流(冷却風)を生起するのにシロッコファンを用いることにより、軸流ファンを用いる場合に比べて、同一条件で容易に高圧大流量化を図れる。これにより、同一冷却性能を確保しつつ熱交換器の放熱面積を小さくすることができるので、熱交換器を小型化しその設置のために必要なスペースを低減できる。
【0012】
そして、本発明においては、この上記熱交換器の小型化を利用し、熱交換器及びシロッコファンと、クランク軸を左右方向にしたエンジンとを、エンジン室内において左右方向に並設配置する。このような配置関係とすることにより、エンジン、熱交換器、及びシロッコファンをカバー内空間の後方側領域に集中配置することが可能となるので、これによってエンジン室に必要なスペースを低減することができる。
【0013】
また、本発明においては、シロッコファンの回転軸を略鉛直方向に配置することにより、シロッコファンの側方にラジエータ等の熱交換器を配置し、シロッコファンから吹き出した冷却風でラジエータを冷却する構造とすることが可能となる。このような構造とする場合、通常、ラジエータの放熱フィンで構成されたコア部はシロッコファンの大きさに比べて大きいため、ラジエータの高さ方向寸法がシロッコファンの高さ方向寸法よりも大きくなる。したがって、ラジエータとシロッコファンを並設するときにその寸法差の分シロッコファンの上下に余るスペースのうち少なくとも一部を、例えばファン駆動手段やオイルクーラ設置のためのスペースにも活用できるので、その分さらに設置スペース低減を図れる。
【0014】
以上のように十分な設置スペース低減を図れるので、近年の市街地等におけるさらに狭隘な掘削現場に適用する小型の油圧ショベルの場合でも、そのエンジン室配置構造を実現することができる。
【0015】
好ましくは、前記ラジエータの冷却風導入面を、前記シロッコファンの回転軸と略平行に配置する。
【0016】
これにより、ラジエータとシロッコファンとをより近接させて配置可能となってこれら2つの設置スペースをさらに確実に低減できる。また、これら2つの間を接続し導風通路を画定するダクトの長さをさらに確実に短くできる。
【0017】
また好ましくは、前記シロッコファンの上部又は下部にファン駆動手段を設ける。
【0018】
また好ましくは、前記シロッコファンの上部又は下部に前記オイルクーラを設ける。
【0019】
また好ましくは、前記シロッコファンとして、片吸い込み型シロッコファンを略鉛直方向に複数個配列する。
【0020】
また好ましくは、前記車体本体は、走行体の上部に設けた旋回体であって、かつこの旋回体の後端を、前記走行体の車幅内に近い直径内で旋回可能な寸法に構成する。
【0021】
上記目的を達成するために、また本発明は、走行体の上部に設けた旋回体のうち運転席以外の大部分をカバーで覆い、このカバー内のエンジン室に配置したラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器及びエンジンを1つの両吸い込み型シロッコファンで生起する空気流を用いて冷却する建設機械において、前記旋回体の後端を、前記走行体の車幅内に近い直径内で旋回可能な寸法に構成し、前記エンジンを、クランク軸が前記旋回体の略左右方向となるように配置し、前記カバーのうちエンジン室部分の左側に吸気孔を設けると共に右側に排気孔を設け、前記エンジン室内の前記左側に前記エンジンを、前記右側に前記熱交換器及び前記シロッコファンを並設し、前記シロッコファンを、回転軸が略鉛直方向となるように配置し、前記ラジエータの冷却風導入面を、前記シロッコファンの回転軸と略平行に配置する。
【0022】
上記目的を達成するために、また本発明は、車体本体のうち運転席以外の大部分をカバーで覆った建設機械に設けられ、前記カバー内のエンジン室に配置したラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器及びエンジンを、少なくとも1つのシロッコファンで生起する空気流を用いて冷却する建設機械の冷却装置において、前記エンジンを、クランク軸が前記車体本体の略左右方向となるように配置し、前記熱交換器及び前記シロッコファンと前記エンジンとを、前記エンジン室内において前記左右方向に並設し、前記シロッコファンを、回転軸が略鉛直方向となるように配置する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を油圧ショベルに適用した場合の一実施の形態を図1乃至図5により説明する。なお、以下の説明において、「左側・右側・前方・後方」等の方向は、図1や図2に示す油圧ショベルの通常の状態で操作者が運転席7(後述)の座席26(同)に着座したときにおける操作者に対する左側・右側・前方・後方で表している。
【0024】
図1は、本実施の形態による油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。図2は、図1に示した油圧ショベルの上面図である。図3は、図1に示した油圧ショベルの正面図(但し煩雑防止のため後述のフロント装置5は図示省略)である。
【0025】
これら図1〜図3において、油圧ショベルは、例えば全重量3t程度のものである。2は左右の無限軌道履帯1L,1Rを備えた走行体である。3はこの走行体2の上部に旋回可能に搭載される車体本体としての旋回体である。4はこの旋回体3の基礎下部構造をなすメインフレーム3aに垂直ピン4aを中心にして水平方向に回動可能に取り付けられたスイングポストである。5はこのスイングポスト4に上下方向に回動可能に取り付けられた多関節型のフロント装置である。6は前記メインフレーム3aの後端部に取り付けられたカウンタウェイトである。7は前記メインフレーム3a上に設けられた運転席である。8は前記メインフレーム3a上の運転席7以外の大部分を覆うカバー(上部カバー)である。
【0026】
前記の走行体2において、9は略H字形状のトラックフレームである。10L,10R(図示せず)はこのトラックフレーム9の左・右両側の後端近傍に回転自在に支持された駆動輪である。11L,11R(図示せず)はこれら駆動輪10L,10Rをそれぞれ駆動する左・右走行モータである。12L,12R(図示せず)は前記トラックフレーム9の左・右両側の前端近傍に回転自在に支持され、前記無限軌道履帯1L,1Rを介し前記駆動輪10の駆動力でそれぞれ回転される回転輪(アイドラ)である。14は前記トラックフレーム9の前方側に上下動可能に設けられ、ブレードシリンダ13により上下動する排土用のブレードである。また15は前記走行体2の中央部に配置されている旋回台軸受である。
【0027】
前記の多関節型のフロント装置5において、16はブームである。17はこのブーム16に回動可能に結合されたアームである。18はこのアーム17に回動可能に結合されたバケットである。そして、前記ブーム16、アーム17、及びバケット18は、それぞれブームシリンダ19、アームシリンダ20、及びバケットシリンダ21により駆動動作される。
【0028】
前記のスイングポスト4は、前記メインフレーム3aに設けられたスイングシリンダ22に、連結ピン23を介して連結されており、スイングシリンダ22の伸縮でスイングポスト4全体が回動することによって、前記多関節型のフロント装置5が左・右にスイング(首振り動作)するようになっている。
【0029】
前記メインフレーム3aは、その中心近傍に、前記走行体2に対しメインフレーム3aを旋回させる旋回モータ(図示せず)が配置されている。このとき前記旋回体3の後端側は、特に明確には図示しないが、前記走行体2の車幅内に近い直径(=車幅よりも若干大きい直径)内で旋回可能な寸法に構成されている(いわゆる後方小旋回型)。
【0030】
なお、ここまでに述べてきた駆動機器、すなわち、前述したブレードシリンダ13、旋回モータ、ブームシリンダ19、アームシリンダ20、バケットシリンダ21、スイングシリンダ23、及び左・右走行モータ11L,11Rといった油圧アクチュエータは、特に詳細な説明を行わないが、運転席7内の操作者によって操作される操作手段(後述する左・右走行レバー24L,24R、スイングペダル(図示せず)、左・右作業レバー25L,25R、ブレードレバー等)の操作に応動し、エンジン29(後述の図4等参照)で駆動される油圧ポンプ31(同)からの圧油を制御する制御弁装置(図示せず)からの圧油により駆動される。
【0031】
一方、前記の運転席7は、前記メインフレーム3a上に設けられており、24L,24Rは前記走行体2の左・右走行モータ11L,11Rをそれぞれ駆動するための左・右走行レバーである。また前記スイングシリンダ22を駆動し前記多関節型のフロント装置5をスイングさせるためのスイングペダル(図示せず)を備えている。25L,25Rは前記ブームシリンダ19、アームシリンダ20、及びバケットシリンダ21を駆動して前記ブーム16、アーム17、及びバケット18をそれぞれ動作させるための左・右作業レバーである。また前記ブレードシリンダ13を駆動しブレード14を上下動させるためのブレードレバー(図示せず)とを備えている。また運転席7はキャノピータイプであって、これが備えるもののうち、26は座席である。27はこの座席26の上方に設けられたルーフである。28は前記カバー8上に立設されたルーフ支持部材である。
【0032】
図4は、前記運転席7の後方に位置する前記カバー8内部の構造を表す水平断面図である。図5は、図4に示した構造を図4中A方向から(図1中ではB方向からすなわちショベル後方側から)見た鉛直断面図である。図1〜図3と同符号のものは同一部分を示す。
【0033】
これら図4及び図5において、カバー8内の空間は、隔壁37によって、後方側領域としてのエンジン室36とそれ以外の前方側領域38とに仕切られている。前記エンジン室36内において29はエンジンである。31はこのエンジン29のクランク軸(図示せず)にカップリング30を介し連結されその駆動力によって駆動される油圧ポンプである。32は前記エンジン29への吸入空気を清浄化するエアクリーナである。33はこのエアクリーナ32に接続された吸気パイプである。34は前記エンジン29からの排気ガスが導かれてその消音を行うマフラである。35はこのマフラ34の吐出側に一端が連結され他端が前記カウンタウェイト6の貫通孔6a(図1参照)を貫通して外部に露出した排気ガス管である。また、39は前記前方側領域の右側部分に設けられ前記油圧ポンプ31の圧油源となる作動油タンクである。そして左側部分には前記エンジン29の燃料を貯留する燃料タンク(図1にその給油口40のみを示す)が設けられている。
【0034】
前記のエンジン29は、下カバーを兼用する前記メインフレーム3a上に振動減衰装置(エンジンマウントともいう、図示せず)を介して設置されており、このとき、図4及び図5に示すように、前記エンジン室36の中央部よりやや一方側(この例では左側)の領域に、前記クランク軸が略左右方向となるようにいわゆる横置きに配置されている。また前記の作動油タンク39は、前記油圧ポンプ31やオイルクーラ43(後述)と図示しない配管により接続されている。
【0035】
このようなエンジン室36には、前記エンジン29、前記油圧ポンプ31、及び前記マフラ34等の冷却を行うための冷却装置が設けられている。図4及び図5において、41はエンジン室36の他方側(この例では右側)の領域に設けられた(言い換えれば前記エンジン29と左右方向に並設された)ファン装置である。42及び43はそれぞれファン装置41の略右後方の側方位置に配置した熱交換器であるラジエータ及びオイルクーラである。44は前記ファン装置41を駆動するための駆動力を発生する駆動手段としての油圧モータ(又は電動モータでもよい、以下同様)である。45は前記カバー8のうち左側方部分に設けられた吸気孔である。47は前記メインフレーム3aのうち前記ファン装置41から流出する空気流を外部に排出するために前記カバー8の略右後方の側方部分(左右方向他方側の略後方)に設けられた排気孔である。
【0036】
前記ラジエータ42は、前記ファン装置41に対して略右後方の側方位置に配置してラジエータ支持部材(図示せず)を介しメインフレーム3aに固定されている。このとき、前記エンジン29のクランク軸の前記油圧ポンプ31と反対側には、プーリやベルトを介して水ポンプ(図示せず)が連結されており、この水ポンプによってホース48a,48bを介しラジエータ42に前記エンジン29の冷却水が循環供給され、これを冷却している。
【0037】
前記のオイルクーラ43は、前記ラジエータ42に対して前記ファン装置41と反対側の面にブラケット49a,49bを介して取り付けられており、その取り付け面の反対側は前記排気孔47に面している。また上流側で図示しない配管を介し前記の各種油圧アクチュエータへ連通する一方、下流側も図示しない配管を介し前記作動油タンク39へ連通している。これにより、前記油圧ポンプ31から前記アクチュエータに供給される作動油を冷却するようになっている。
【0038】
前記のファン装置41は多翼型の遠心送風機となっており、50はケーシングであり、51はこのケーシング50内に配置されたシロッコファン(多翼羽根車)である。
【0039】
前記の油圧モータ44は、モータ支持部材60を介し前記メインフレーム3aに固定され、ケーシング50の下方でモータ回転軸70を略鉛直方向にする配置となっており(ケーシング50に対する詳細な取り付け構造は後述)、前記油圧ポンプ31から吐出される圧油が(例えばコントロールバルブを介して)供給されることによって駆動されるようになっている。なお、いわゆるパイロットポンプからの圧油によって駆動しても良い。
【0040】
前記のシロッコファン51は、円周上に多数の羽根51aが設けられた多翼羽根車である。これは軸方向中央部にしきりを設けた公知のいわゆる両吸込みタイプとなっている。またその回転軸は略鉛直方向に配置しており、すなわちラジエータ42における空気流を導入する面(冷却風導入面)と略平行な配置となっている。
【0041】
前記のケーシング50のラジエータ側端部(吐出口)50aは前記ラジエータ42に向かって開口されており、そのケーシング側方開口部50aとラジエータ42との間がダクト52で連結されている。またケーシング50の上下面両には略円形の開口部53a,53bがあり、これらを介してケーシング50内部のシロッコファン51はエンジン室36内の空間と連通している。そして、前記略円形の2つの開口部53a,53bのうち下面側(図4中の奥側、図5中の下側)の開口部53bの外周側4ヶ所には、ネジ穴加工が施された板部材(図示せず)が設けられている。
【0042】
これら4ヶ所の板部材は、そのネジ穴部においてボルト締めによりL型アーム状のブラケット55が互いに先端部(板部材と反対側の端部)が密集するような向きにそれぞれ取り付けられており、それら4つのブラケット55の前記先端部には略ドーナッツ状のフランジ56が取り付けられている。これにより、このフランジ56は、前記ケーシング開口部53bと径方向にも軸方向にも所定の距離を保つようになっている(図5参照)。
【0043】
そして、前記のフランジ56には前記油圧モータ44がボルト締めにて取り付けられている。このとき、前記油圧モータ44のモータ回転軸70が、前記シロッコファン51のファン回転軸71に結合されて駆動力を伝達するようになっている。すなわち、油圧モータ44の回転軸は、ファン回転軸の延長線上に略鉛直方向に配設されている。
【0044】
なお、前記ケーシング側方開口部50aは、シロッコファン51の上下方向(図5中の上下方向)寸法に合わせてその上下方向寸法が比較的小さくなっているため、ダクト52の上流側端部52aもその上下方向寸法が比較的小さくなっている。一方、ダクト52の下流側端部52bはラジエータ42の上下方向寸法に合わせてその上下方向寸法が比較的大きくなっている(図5参照)。そのため、ダクト52は、全体として拡開形状(図5参照)となっている。
【0045】
図6は、ケーシング50の詳細構造を表す拡大水平断面図である。この図6において、前記のようにして前記油圧モータ44からファン回転軸71に回転力が与えられシロッコファン(多翼羽根車)51が図6中矢印方向に回転させられると、シロッコファン51の内部流路51cの空気が羽根51aにより遠心力で径方向外周側の流路57a,57b,57cに送られる。このとき、前記ケーシング50と前記シロッコファン51とは、ファン外径とケーシング50内周面との間の隙間により形成される前記流路57a,57b,57cの広さがファン回転方向(図6矢印方向)に沿って周方向に徐々に大きくなるように配置されている。これにより、シロッコファン51の前記羽根51aによって径方向外周側に流出する空気の流れをスムーズに周方向に導き、前記隙間が最大となる流路57cから最終的に吐出流路58を経て前記ダクト52の内部へ空気流を吐出する。
【0046】
上記構成の冷却装置において、エンジン29を駆動すると、エンジン29のクランク軸の駆動力で油圧ポンプ31が駆動され、吐出された圧油が油圧モータ44に供給されて油圧モータ44が駆動力を発生し、これがシロッコファン回転軸71に伝達されることによりシロッコファン(多翼羽根車)51が回転する。このシロッコファン51の回転により、吸気孔45,46から空気流P1,P2が吸入されて、エンジン29や油圧ポンプ31の周囲を流れながらそれらを冷却し、前記ケーシング50の上下面両側に設けられた開口部53a,53bからケーシング50内に流入し、さらにシロッコファン51の内部流路51cへ流入する。この流入した空気流は、内部流路51cで昇圧されて径方向外側へ流出した後、流路57a,57b,57c,58、及びダクト52を介しラジエータ42の前面側(図4中の略左前方側、すなわち冷却風導入面側)へ導入され、ラジエータ42を冷却後、大部分はさらに下流側のオイルクーラ43を冷却する。そして、それらラジエータ42、オイルクーラ43を冷却した空気流Pは、前記排気孔47から略右後方に向けて旋回体3の外部に放出される。
【0047】
以上のように構成した本実施の形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0048】
すなわち、本実施の形態においては、エンジン室36内を冷却する空気流(冷却風)Pを生起する冷却ファンとして、シロッコファン51を用いる。一般に、シロッコファン51は、その性能特性上、軸流ファンに比べて同一条件で容易に高圧大流量化を図れることが知られており、このようにシロッコファン51を用いることによって、同一冷却性能を確保しつつ熱交換器(この例では特にラジエータ42)のコア部を小さくすることができる。したがって、ラジエータ42を小型化しその設置のために必要なスペースを低減できる。以下、このことを詳細に説明する。
【0049】
本実施の形態においては、この上記熱交換器の小型化を利用し、図4に示すように、熱交換器及びその側方に位置するシロッコファン51を含むファン装置41と、クランク軸を左右方向に配置したエンジン29とを、エンジン室36内において左右方向に並設配置する。このような配置関係とすることにより、図4に示すようにエンジン29、ラジエータ42、オイルクーラ43、及びファン装置41をカバー8内空間の後方側領域に集中配置することが可能となるので、これによってエンジン室36に必要なスペースを低減することができる。
【0050】
また、本実施の形態においては、シロッコファン51のファン回転軸71を略鉛直方向に配置することにより、シロッコファン51の側方にラジエータ42等の熱交換器を配置し、シロッコファン51から吹き出した冷却風でラジエータ42を冷却する構造としている。ここで図5に示すように、通常、ラジエータ42のコア部はシロッコファン51の大きさに比べて大きいため、ラジエータ42の高さ方向寸法がシロッコファン51の高さ方向寸法よりも大きくなる。したがって、ラジエータ42とシロッコファン51を並設するときにその寸法差の分シロッコファン51の上下に余るスペースのうち少なくとも一部を、例えばファン駆動手段(この例では油圧モータ44)のためのスペースにも活用できるので、その分さらに設置スペース低減を図れる。したがって、例えば総重量3t程度の小型の油圧ショベルに適用可能なエンジン室配置構造を実現することができる。
【0051】
また、上述のように、シロッコファン51の側方にラジエータ42等の熱交換器を配置し、シロッコファン51から吹き出した冷却風Pでラジエータ42を冷却するが、ラジエータ42とシロッコファン51とを近接させて立設配置しているのでこれら2つの間の距離を短縮し、これら2つの設置スペースを低減できる。またこれら2つの間を接続し導風通路を画定するダクト52の長さを短くできるので、ダクト52による流路損失を低減できる効果もある。
【0052】
さらに、本実施の形態は、シロッコファン51のファン回転軸71を略鉛直方向に配置することにより、シロッコファン51の回転軸を略水平方向に配置する場合に比べて水平面上の占有面積を縮小(およそ1.3分の1)することができるため、効率的な設置スペースの低減が可能である。
【0053】
また、シロッコファン51は軸方向両側から吸い込んで径方向外周側に吹き出す構造であるが、ファン回転軸71を略鉛直方向に配置することにより、ファン回転軸71の上端近傍と下端近傍とから冷却風P3,P4を吸い込むこととなる(図5参照)。これにより、エンジン室36上部をファン回転軸71上端近傍に向かって流れる冷却風P3と、エンジン室36下部をファン回転軸71下端近傍に向かって流れる冷却風P4との両方をまんべんなく生起することができるので、エンジン室36内、特にエンジン29まわりの冷却効率を向上できる効果もある。
【0054】
さらにラジエータ42、オイルクーラ43を冷却して熱くなった空気流Pは排気孔47から略右後方に向けて外部に放出されるので、前方に位置する運転席7への熱風漏れが防止され、運転室7における快適性が保たれるという効果もある。
【0055】
なお、上記本発明の一実施の形態においては、ケーシング50の下方に油圧モータ44を配置したが、この逆にケーシング50を下方に配置して油圧モータ44を上方に配置することも可能である。この場合も上記本発明の一実施の形態と同様の効果を得る。
【0056】
また、上記本発明の一実施の形態においては、エンジン室36の一方側(左側)にエンジン29を配置しかつカバー8の左側部分に吸気孔45を設け、そしてエンジン室36の中央から他方側(右側)に向けて順にファン装置41及びラジエータ42、オイルクーラ43を配置しカバー8の右側部分に排気孔47を設けたが、この逆でも良い。すなわち、エンジン室36の右側にエンジン29を配置しかつカバー8の右側部分に吸気孔45を設ける一方、エンジン室36の中央から左側に向けて順にファン装置41及び熱交換器42,43を配置しカバー8の左側部分に排気孔47を設けてもよい。この場合も、同様の効果を得る。
【0057】
本発明を油圧ショベルに適用した場合の他の実施の形態を図7により説明する。本実施の形態は、前述した上記発明の一実施の形態においてラジエータ42の下流側に配置していたオイルクーラ43Aをケーシング50の上面側の開口部53aの前面に配置する、つまりファン装置41とラジエータ42の上流側に配置するものである。
【0058】
図7は本発明の他の実施の形態の要部である、運転席7の後方に位置するカバー8内部の構造を表す水平断面図であって、前述した上記本発明の一実施の形態の図4に相当する図である。図7において、上記本発明の一実施の形態と同符号のものは同一部分を示し、適宜説明を省略する。
【0059】
この図7において、熱交換器の一部であるオイルクーラ43Aは前述した本発明の一実施の形態における構成よりもそのコア部を小さくした構成となっており、ケーシング50の上面において開口部53aを覆うように、ブラケット61a,61bを介しラジエータ42に取り付けられている。
【0060】
この実施の形態においては、オイルクーラ43Aがファン装置41の上流側に位置していることで、ファン装置41によりエンジン室36内に生起されてラジエータ42に流入前のまだ低温の状態の冷却風をオイルクーラ43Aに通過させることができる。そのため、オイルクーラ43Aに対して同一冷却性能を確保しつつ本実施の形態のようにオイルクーラ43Aのコア部を小さくすることができる。
【0061】
そしてオイルクーラ43Aをケーシング50の上面に配置できることで、ケーシング50とラジエータ42との高さの差により存在していたケーシング50上方の余剰スペース(図5参照)を有効に利用できると同時に、ラジエータ42の下流側の省スペース化が可能となるため、さらにエンジン室36内に必要なスペースを低減することができる。
【0062】
なお、上記本発明の他の実施の形態においては、ファン装置41の上方にオイルクーラ43Aを配置したが、この逆に、オイルクーラ43Aを下方に配置してファン装置41を上方に配置する、すなわちケーシング50の上方に油圧モータ44を配置し、ケーシング50の下面側の開口部53bを覆うようにオイルクーラ43Aを配置することも可能である。この場合も上記本発明の他の実施の形態と同様の効果を得る。
【0063】
本発明を油圧ショベルに適用した場合のさらに他の実施の形態を図8により説明する。本実施の形態は、両軸油圧モータ44Aの両端にそれぞれ片吸い込みのシロッコファン51A1,51A2を取り付けたファン装置41Aを備えるものである。
【0064】
図8は本発明のさらに他の実施の形態の要部である運転席7の後方に位置するカバー8内部の構造をショベル後方側から見た鉛直断面図であって、前述した本発明の一実施の形態の図5に相当する図である。図8において、上記本発明の一実施の形態及び他の実施の形態と同符号のものは同一部分を示し、適宜説明を省略する。
【0065】
この図8において、ファン装置41Aは、軸方向端部にしきりを設けた片吸い込み式のシロッコファン51A1,51A2を、略鉛直方向に配置した両軸油圧モータ44Aのモータ回転軸70A1,70A2の両端に取り付け、各ケーシング50A1,50A2内に配置した多翼型の遠心送風機となっている。
【0066】
両軸油圧モータ44Aは、モータ支持部材(図示せず)を介してメインフレーム3aに固定されている。
【0067】
各ケーシング50A1,50A2の側方にはラジエータ42に向かって開口する側方開口部50A1a,50A2aが設けられており、それらが1つのダクト52Aで合流してラジエータ42との間と連結されている。また上方に位置するケーシング50A1の上面及び下方に位置するケーシング50A2の下面にはそれぞれ開口部53A1a,53A2aがあり、これらを介してケーシング50A1,50A2内部のシロッコファン51A1,51A2はエンジン室36内の空間と連通している。
【0068】
ケーシング50A1,50A2内部のシロッコファン51A1,51A2は軸方向端部を両軸油圧モータ44A側に位置させ、ファン回転軸と兼用する両軸油圧モータ44Aのモータ回転軸70A1,70A2に結合されており、これによってシロッコファン51A1,51A2に駆動力が伝達されるようになっている。
【0069】
この実施の形態においては、上下2つのシロッコファン51A1,51A2からラジエータ42の前面側に向けて上下2ヶ所に分けた冷却風Pa,Pbを導入するため、ラジエータ42のコア部に対して均一に冷却することができる。これは上記本発明の一実施の形態のように1つのシロッコファン51からラジエータ42の前面側中央付近に向けて集中的に導入する構成と比較し、より効率的な冷却が可能となる。
【0070】
また上下2つのシロッコファン51A1,51A2の径を異ならせることで、下流側の熱交換器に対する上下方向の風量配分を適正化することができる。つまり上下2つのシロッコファン51A1,51A2のうちオイルクーラ43の取り付け高さに近い方の径を大きくして風量を増加させることで、ラジエータ42及びオイルクーラ43の両方に対して効率的に冷却風を導入することができる。
【0071】
また上下2つのシロッコファン51A1,51A2に同一のもの(同じ羽根枚数のもの)を用いる場合、互いに羽根のピッチを2分の1ずらすよう配置することにより、ファンの回転速度と羽根枚数との積で求められるファンのピーク音(いわゆる風切り音、NZ音)を低減することができる。つまり、シロッコファン51A1,51A2の羽根のピッチを2分の1ずらすことにより、上方側のシロッコファン51A1のピーク音と下方側のシロッコファン51A2のピーク音とで各音波の山と谷とを干渉させ、減衰させることができる。
【0072】
また、以上の説明では、本発明を油圧ショベルに適用した場合を例にとって説明したが、クローラクレーン、ブルドーザ等の他の建設機械に適用することもできることは言うまでもなく、その場合も、同様の効果を得る。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、熱交換器及びシロッコファンと、クランク軸を左右方向にしたエンジンとを、エンジン室内において左右方向に並設配置するとともに、シロッコファンの回転軸を略鉛直方向に配置することにより、シロッコファンの側方にラジエータ等の熱交換器を配置することが可能となる。したがって、ラジエータとシロッコファンを並設するときにその寸法差の分シロッコファンの上下に余るスペースのうち少なくとも一部を、例えばファン駆動手段やオイルクーラ設置のためのスペースにも活用できるので、十分な設置スペース低減を図れる。この結果、例えば総重量3t程度の小型の油圧ショベルの場合でも、そのエンジン室配置構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の建設機械の一実施の形態の全体構造を表す側面図である。
【図2】図1に示した本発明の建設機械の一実施の形態の上面図である。
【図3】図1に示した本発明の建設機械の一実施の形態の正面図である。
【図4】図1に示した本発明の建設機械の一実施の形態の運転席の後方に位置するエンジン室の構造を表す水平断面図である。
【図5】図4に示したエンジン室の構造を図4中A方向から見た鉛直断面図である。
【図6】図5に示したケーシングの詳細構造を表す拡大水平断面図である。
【図7】本発明の建設機械の他の実施の形態の運転席の後方に位置するエンジン室の構造を表す水平断面図である。
【図8】本発明の建設機械のさらに他の実施の形態の運転席の後方に位置するエンジン室の構造をショベル後方側から見た鉛直断面図である。
【符号の説明】
2 走行体
3 旋回体(車体本体)
7 運転席
8 カバー
29 エンジン
36 エンジン室
42 ラジエータ
43,43A オイルクーラ
44 油圧モータ(ファン駆動手段)
44A 両軸油圧モータ(ファン駆動手段)
45,46 吸気孔
47 排気孔
51 シロッコファン
51A1,51A2 片吸い込み型シロッコファン
70A1,70A2 両軸油圧モータ回転軸(回転軸)
P,P1〜P4, 冷却風(空気流)
Pa,Pb 冷却風(空気流)

Claims (8)

  1. 車体本体のうち運転席以外の大部分をカバーで覆い、このカバー内のエンジン室に配置したラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器及びエンジンを少なくとも1つのシロッコファンで生起する空気流を用いて冷却する建設機械において、
    前記エンジンを、クランク軸が前記車体本体の略左右方向となるように配置し、
    前記熱交換器及び前記シロッコファンと前記エンジンとを、前記エンジン室内において前記左右方向に並設し、
    前記シロッコファンを、回転軸が略鉛直方向となるように配置したことを特徴とする建設機械。
  2. 請求項1記載の建設機械において、前記ラジエータの冷却風導入面を、前記シロッコファンの回転軸と略平行に配置したことを特徴とする建設機械。
  3. 請求項1又は2記載の建設機械において、前記シロッコファンの上部又は下部にファン駆動手段を設けたことを特徴とする建設機械。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の建設機械において、前記シロッコファンの上部又は下部に前記オイルクーラを設けたことを特徴とする建設機械。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の建設機械において、前記シロッコファンとして、片吸い込み型シロッコファンを略鉛直方向に複数個配列したことを特徴とする建設機械。
  6. 請求項1乃至4のいずれかに記載の建設機械において、前記車体本体は、走行体の上部に設けた旋回体であり、かつこの旋回体の後端を、前記走行体の車幅内に近い直径内で旋回可能な寸法に構成したことを特徴とする建設機械。
  7. 走行体の上部に設けた旋回体のうち運転席以外の大部分をカバーで覆い、このカバー内のエンジン室に配置したラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器及びエンジンを1つの両吸い込み型シロッコファンで生起する空気流を用いて冷却する建設機械において、
    前記旋回体の後端を、前記走行体の車幅内に近い直径内で旋回可能な寸法に構成し、
    前記エンジンを、クランク軸が前記旋回体の略左右方向となるように配置し、
    前記カバーのうちエンジン室部分の左側に吸気孔を設けると共に右側に排気孔を設け、
    前記エンジン室内の前記左側に前記エンジンを、前記右側に前記熱交換器及び前記シロッコファンを並設し、
    前記シロッコファンを、回転軸が略鉛直方向となるように配置し、
    前記ラジエータの冷却風導入面を、前記シロッコファンの回転軸と略平行に配置したことを特徴とする建設機械。
  8. 車体本体のうち運転席以外の大部分をカバーで覆った建設機械に設けられ、前記カバー内のエンジン室に配置したラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器及びエンジンを、少なくとも1つのシロッコファンで生起する空気流を用いて冷却する建設機械の冷却装置において、
    前記エンジンを、クランク軸が前記車体本体の略左右方向となるように配置し、
    前記熱交換器及び前記シロッコファンと前記エンジンとを、前記エンジン室内において前記左右方向に並設し、
    前記シロッコファンを、回転軸が略鉛直方向となるように配置したことを特徴とする建設機械の冷却装置。
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