JP4162275B2 - ウェブ搬送系のモータ回転数比制御方法及び装置 - Google Patents

ウェブ搬送系のモータ回転数比制御方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コータ、印刷機あるいはフィルム加工時等におけるフィルムや紙等のウェブ搬送系のモータ回転数比制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ウェブ印刷機では、特に多色刷の場合に製品の品質を維持するためウェブの張力を一定に保つことが望ましい。かかる張力制御の方法として従来、ダンサーロールによる制御、張力フィードバック制御あるいはドロー制御等が知られている。
【0003】
ダンサーロールによる制御では、図5に示すように、2つのガイドローラ70の間に、支点71を中心に回動する梃式の腕72の一端にダンサーロール74を設け、これにウェブ76を巻きかけるようにしている。そして、梃の腕72によりダンサーロール74を上下に移動させて、この間のウェブ76のパス長を変化させることにより張力を制御している。従って、図の矢印Fのように、張力分の一定圧がかけられているため、常に張力が一定圧に制御される。このダンサーロールによる制御は、大きな張力変動に対する応答性が良いため、主に巻出しや巻取りロールの近くで用いられている。
【0004】
張力フィードバック制御では、図6に示すように、それぞれモータ80及び81によって駆動される2つのロール82及び83の間に設置された張力検出器84によりウェブ85の張力を検出し、これに基づいて張力制御を行っている。即ち、一方のモータ80を基準として、張力検出器84によって検出された張力を他方のモータ81へフィードバックし、ウェブ85の張力が大きいときにはモータ81の回転速度を基準となるモータ80に対し遅くし、ウェブ85の張力が小さいときにはモータ81の回転速度を基準となるモータ80に対し速くするようにしている。
【0005】
又、ドロー制御は、図7に示すように、それぞれモータ90及び91によって駆動される2つのロール92及び93に対し、一方のモータ90を基準として他方のモータ91の回転数を、基準となるモータ90の回転数に一定の固定回転数(これをドロー比という)を加算し、両モータ90、91の回転数比を一定として制御するものである。このドロー制御によれば、速度変動は微量であり、走行精度が良く、結果として張力が自然に安定していく。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したダンサーロールによる制御では、ダンサーロールを移動してパス長を変化させているためウェブの速度が変化してしまい、又、張力フィードバック制御では、張力の設定が簡便ではあるが制御が入る毎にモータの回転数が変化するため、ウェブの走行速度が変化し、速度ムラが発生するので、良好な品質が得られないという問題がある。
【0007】
又、ドロー制御では、モータ単独の回転数設定により張力を得るため、前述したように回転数の変動が微量であり、走行精度は良いが、安定した張力が達成できるドロー比を設定することは困難であった。即ち、かかるドロー比を即座に決定するには熟練を必要とし、又適切なドロー比を設定しないと全体のドロー制御系との協調が得られず、走行精度が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであり、張力変動が少なく且つ速度変動率が少なく安定性が良いドロー比の自動設定を可能とすると共に、一度設定されたドロー条件を、張力が変動した際に速度変動が起きない程度に微調整し、設定張力を維持することのできるウェブ搬送系のモータ回転数比制御技術を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ウェブ搬送系のモータ回転数比を一定値に保つドロー制御を行う際、予め、ウェブの張力の目標値と、該目標値を含む第1の所定範囲及び該目標値を含み該第1の所定範囲に含まれる第2の所定範囲を設定しておき、前記ウェブの張力を監視し、該張力が前記第1の所定範囲を出た場合には、張力フィードバック制御を行い、前記張力が前記第2の所定範囲以内に入った場合には、張力フィードバック制御を打切ると共に、そのときのモータ回転数比を一定のドロー比として固定し、ドロー制御に入るようにしたことにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
本発明によれば、ドロー制御を行う際、ウェブの張力の目標値に対して予め大小2つの所定範囲を設定しておき、ウェブの張力が、大きい方の所定範囲を外れた場合には張力フィードバック制御に入り、前記張力が、小さい方の所定範囲に入った場合には張力フィードバック制御を打切り、そのときのモータ回転数比をドロー比としてドロー制御に入るようにしたため、最適なドロー比の設定を自動的に行うことが可能となると共に、張力が変動した場合に速度変動が起きない程度に微調整することが可能となった。
【0011】
又、前記張力が、前記第2の所定範囲に入ってから少なくとも所定時間、該範囲内に留まっていた場合に、張力フィードバック制御を打切り、ドロー制御に入るようにした場合には、前記所定範囲や所定時間を最適に設定することにより、最適なドロー比の自動設定が可能となり、高精度なウェブ走行が達成できる。
【0012】
上記ドロー制御を実現するための装置は、ウェブ搬送系のモータ回転数比を一定値に保つドロー制御を行う装置であって、予め、ウェブの張力の目標値と、該目標値を含む第1の所定範囲及び該目標値を含み該第1の所定範囲に含まれる第2の所定範囲を設定する手段と、前記ウェブの張力を監視する手段と、該張力が前記第1の所定範囲を出た場合に、張力フィードバック制御に切換える手段と、前記張力が前記第2の所定範囲以内に入った場合に、張力フィードバック制御を打切り、そのときのモータ回転数比をドロー比として設定してドロー制御に入る手段と、を備えたことにより実現される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明が適用されたコータ制御系統の概略構成図である。
【0015】
このコータ制御系統は、巻出しロール12から供給されたウェブ10をコーティングロール14によりコーティングし、乾燥機16で乾燥して、巻取りロール18に巻き取るものである。このとき、ウェブ10を、巻出しロール12よりコーティングロール14へ送るためのインフィードロール20と、コーティングされ乾燥されたウェブ10を巻取りロール18へ送るためのアウトフィードロール22が設けられると共に、ウェブ10を円滑に搬送するためにサクションロール24a、24bが乾燥機16の前後に設けられている。
【0016】
前記巻出しロール12直後及び巻取りロール18の直前にそれぞれ張力を制御するためのダンサーロール26a及び26bが設けられている。又、各ロールの間にはウェブ10の張力を監視する張力検出器28a、28b、28c、28dが設けられ、各張力検出器28の検出値により各下流側のロールの回転数が制御される。張力の目標値や該目標値を含む所定範囲の設定はプロセスコンピュータ30を通じて行われる。該プロセスコンピュータ30により、張力検出値に応じた各ロール回転数の制御やドロー比の設定、張力フィードバック制御とドロー制御の切換え等も行われる。
【0017】
以下、図2のフローチャートに沿って本実施形態の作用を説明する。
【0018】
まず、図3あるいは図4に示すように、張力の目標値と該目標値を内部に含む2つの所定範囲を設定する。第1の所定範囲は設定された目標値を中心とし、幅が2αの範囲であり、又第2の所定範囲は同じく設定された目標値を中心として幅が2βの範囲である。ここで、α及びβは共に正の数でα>βである。
【0019】
図2のステップ100において、ドロー制御を行っていた場合に、張力検出器28によって検出された実測張力値の設定張力値に対する偏差sが±α以上に達したか否か(s≧α又はs≦−αか否か)判断する。偏差sが±α以上に達しない場合には、それまでのドロー制御を続ける(図3の範囲P)。又、偏差sが±α以上に達した場合(図3の符号A)には、次のステップ110において、それまでのドロー制御を張力フィードバック制御に切換える(図3の範囲P→Q)。
【0020】
次にステップ120において、前記偏差sが±β以下に収束したか否か(−β≦s≦βか否か)判断する。偏差sが±β以下に収束しない場合には、それまでの張力フィードバック制御を続ける。
【0021】
偏差sが±β以下に収束した場合には、次のステップ130において、該偏差sが±β以下に収束している状態が時間tの間保持されているか否か判断する。時間tが経過するまではそれまでの状態を維持する。又、偏差sが±β以下に収束している状態が時間tの間保持された場合には、それまでの張力フィードバック制御を打切り、その時点における回転数比をドロー比として、ドロー制御へ移行する(図3の範囲Q→R)。
【0022】
このように張力フィードバック制御により張力が目標値に近づいた所で、そのときのモータ回転数比をドロー比として固定しドロー制御に入ることで自動的に最適なドロー比を設定することができる。このとき、偏差sが時間tの間第2の所定範囲±β内に収まっていることを確認した上でドロー制御に切換えるようにしているのは、偏差sが±β以内に入って直ちにドロー制御に切換えた場合、最終偏差sが±β以内に収まらずオーバーシュートしてしまう可能性があるからである。
【0023】
以上は、ドロー制御状態より張力の変動により偏差sが第1の所定範囲±αを超えた場合の制御である。
【0024】
又、立ち上げ等の場合に発生する初期的な張力変動に関する制御状態を図4に示す。
【0025】
張力フィードバック制御(図4の範囲S)を行った結果張力の偏差sが第2の所定範囲±β以内に収束した場合(図4の符号C)に、その状態が時間tだけ保持されたときには張力フィードバック制御を打切り、その時点での回転数比をドロー比として、ドロー制御に入る(図4の範囲S→T)。その後、張力の変動があった場合には図3に示すような制御が行われる。
【0026】
ドロー制御を行う場合、主に機械的損失(メカロス)あるいはウェブ10のばたつき等により発生する避けることのできない小さな周期的張力変動があるが、上の制御で用いられた偏差αは、これらを制御対象より除外することにより、制御不可能な慢性的な高速の不安定要因に対するマージンを与えるものである。又、偏差αは、ドロー制御中における基材の物性変化、塗工状態の変化等による経時的に緩慢な微量の張力変動に対するマージンをも与えている。
【0027】
前記偏差βは、張力制御の目標値に対するオーバーシュート量を加味するための変数であり、この偏差βを設けることにより、目標値達成のためにも最適なドロー比に近い回転数を出すためのものである。即ち、偏差βは制御上で言う比例ゲイン的な役割を受け持つ。
【0028】
又、偏差sが±β以内にある状態が時間tの間保持されることをドロー制御への切換えの要件としたため、オーバーシュートによる目標張力値に対するズレを防止することができる。即ち、一定時間分の張力補正エネルギを与えて修正する変数が必要となるが、制御上で言う積分制御的な役割をこの時間tが受け持つこととなる。この時間tは、張力制御系の比例ゲイン・ウェブ速度等の張力補正の収束速度に対する応答性変化に対する追従性を受け持っている。
【0029】
以上の変数α、β、tを予め設定しておくことで、上に述べたような制御により最適なドロー比を自動設定することが可能となる。
【0030】
又、複数の張力制御系を含む場合、上記制御方法を適用し、グループ制御を行うと、個々の張力制御系で最も張力変動が少なく且つ安定性が良いドロー比が自動設定されるため、全体として協調性のある制御が行われ、結果として全体のモータが無理のない回転数を自動選択するために高精度なウェブ走行が達成される。
【0031】
なお、以上の制御における具体的な制御条件は、例えば、ライン速度が150m/min 、基材材質がPET(ポリエチレンテレフタレート)12μm、ウェブ幅が500mm、設定張力が5kgである場合、設定張力を100%として、αを5%、βを1.5%、時間tを0.1sec とすることができる。又、使用モータはパルスジェネレータ付のベクトルインバータモータであり、張力検出器はロードセルタイプのテンションピックアップとしたものである。
【0032】
なお、以上の制御は、シーケンス又は電子回路上の装置等で実施してもよい。但し、時間tの設定や安定したドロー比を得るための制御モード切換えタイミング等について高速処理を要する場合が多いので、シーケンス等の使用の場合には高速スキャンモード(数10msec以下)を使用するのが望ましい。
【0033】
以上説明した実施形態によれば、高精度なウェブ走行を可能とするドロー制御の制御定数を簡単に決定することができると共に、複数の張力制御系を協調的に制御できる制御定数を簡便に決定でき、高精度なウェブ搬送系の制御が可能となる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、ドロー制御のドロー比が速度変動率の少ない最適値へ自動設定されると共に、一度設定されたドロー条件が張力の変動により変化した場合においても、速度変動が起きない程度に微調整されるので設定張力を維持し、高精度なウェブ走行を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたコータ制御系統を示す概略構成図
【図2】本実施形態の作用を示すフローチャート
【図3】本実施形態において、ドロー制御状態より張力変動により偏差αを超えた場合を示す線図
【図4】本実施形態において、立ち上げ時等における初期的な張力変動に関する制御状態を示す線図
【図5】従来のダンサーロールによる張力制御を示す説明図
【図6】従来の張力フィードバック制御による張力制御を示す説明図
【図7】従来のドロー制御による張力制御を示す説明図
【符号の説明】
10…ウェブ
12…巻出しロール
14…コーティングロール
16…乾燥機
18…巻取りロール
20…インフィードロール
22…アウトフィードロール
24a、24b…サクションロール
26a、26b…ダンサーロール
28a、28b、28c、28d…張力検出器
30…プロセスコンピュータ

Claims (3)

  1. ウェブ搬送系のモータ回転数比を一定値に保つドロー制御を行う際、
    予め、ウェブの張力の目標値と、該目標値を含む第1の所定範囲及び該目標値を含み該第1の所定範囲に含まれる第2の所定範囲を設定しておき、
    前記ウェブの張力を監視し、
    該張力が前記第1の所定範囲を出た場合には、張力フィードバック制御を行い、
    前記張力が前記第2の所定範囲以内に入った場合には、張力フィードバック制御を打切ると共に、そのときのモータ回転数比を一定のドロー比として固定し、ドロー制御に入るようにしたことを特徴とするウェブ搬送系のモータ回転数比制御方法。
  2. 請求項1において、前記張力が、前記第2の所定範囲に入ってから少なくとも所定時間、該範囲内に留まっていた場合に、張力フィードバック制御を打切り、ドロー制御に入るようにしたことを特徴とするウェブ搬送系のモータ回転数比制御方法。
  3. ウェブ搬送系のモータ回転数比を一定値に保つドロー制御を行う装置であって、
    予め、ウェブの張力の目標値と、該目標値を含む第1の所定範囲及び該目標値を含み該第1の所定範囲に含まれる第2の所定範囲を設定する手段と、
    前記ウェブの張力を監視する手段と、
    該張力が前記第1の所定範囲を出た場合に、張力フィードバック制御に切換える手段と、
    前記張力が前記第2の所定範囲以内に入った場合に、張力フィードバック制御を打切り、そのときのモータ回転数比をドロー比として設定してドロー制御に入る手段と、
    を備えたことを特徴とするウェブ搬送系のモータ回転数比制御装置。
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