JP4162096B2 - 蓄電デバイス - Google Patents
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Description
しかし、電極活物質に低分子量の有機化合物を用いた蓄電デバイスでは、充放電を繰り返すと、電気容量が低下する場合がある。これは活物質である有機化合物分子の一部が、充放電に伴い電極から電解質中に溶出することにより、電極内部から脱離し、その脱離した活物質が充放電反応に寄与しなくなるためであると考えられる。
第1には、電池反応は電極表面で起こるが、上記電池の正極活物質は電解質中に溶解して散逸しているため、電極表面から離れて存在する正極活物質は電池反応に利用されない。すなわち、電解質に溶解させたペリレンのうち充放電反応に寄与することのできる割合は低いため、蓄電デバイスとしての容量密度が著しく低下する。
これらの現象は、溶解・析出の電池反応機構を有する、金属リチウム電極を用いた非水系電池において、よく知られている。
これにより、高容量かつ高出力を有し、かつ充放電サイクル特性に優れた蓄電デバイスが得られる。本発明は、有機化合物のなかでも、電解質に溶解しやすい分子量10000以下の低分子量の有機化合物に対して特に有効である。
これまで、活物質である有機化合物の分子構造が異なると、容量や電圧等の蓄電デバイス特性が変化するという知見は既に得られていた。これに対して、本発明者は、これ以外に、有機化合物の分子構造が全く同じでも、有機化合物の結晶性が異なることにより、蓄電デバイスの特性が大きく変化するということを見出した。すなわち、活物質である有機化合物が充電状態および放電状態のいずれにおいても結晶質である場合、充放電サイクル特性に優れた蓄電デバイスが得られることが明らかになった。そして、逆に、活物質である有機化合物が放電状態および充電状態のうち少なくともいずれかにおいて結晶質でない場合、蓄電デバイスの充放電サイクル特性が急激に低下してしまうことが明らかになった。
活物質である有機化合物が結晶質でない、すなわちアモルファスまたは有機化合物が特定の周期的な結晶構造を有しない場合、有機化合物分子間に電解質が侵入し易くなり、有機化合物と電解質の分子レベルでの接触面積が増加し、有機化合物の電解質への溶解性が増加してしまう。これに対して、活物質である有機化合物が結晶質である場合、有機化合物分子同士が密にパッキングされるために、有機化合物分子間に電解質が侵入し難くなり、有機化合物と電解質との分子レベルでの接触面積が減少する。このため、有機化合物の電解質への溶解性が大幅に低下し、これにより蓄電デバイスの充放電サイクル特性が向上する。
これに対して、結晶子3のサイズが数nm以下、あるいは観測できない場合、一般に非晶質と呼ばれる。この場合、試料は結晶質ではないとみなされる。
試料の結晶子サイズおよびX線回折測定における回折ピークの半値幅は、下記に示す式(a)(シェラーの式)を満たす。
D=K×λ/(β・cosθ) (a)
上記式中、Dは結晶子サイズ(nm)、Kは定数、λはX線波長(nm)、βは回折ピークの半値幅(rad)である。
試料の結晶性が高く、すなわち結晶子サイズが大きい場合、回折ピークの半値幅は小さくなり、すなわちシャープな回折ピークが得られる。試料の結晶性が低く、すなわち結晶子が小さい場合、得られる回折ピークの半価幅が大きくなり、いわゆるブロードな回折ピークが得られる。試料の結晶子が極端に小さい場合、回折ピークは現れず、ハローパターンが得られる。この状態を「X線的な非晶質」と称する。このような場合、半値幅は、例えば2〜3°程度またはそれ以上である。
以上のように、試料の結晶性の有無は、X線回折測定で得られる回折線における回折ピークの有無により判断される。
(A)活物質の分子構造
本発明の蓄電デバイスにおける活物質として酸化還元反応(充放電反応)に寄与する部位を有する有機化合物としては、π電子共役雲を有する有機化合物(以下、π電子化合物と表す)や、ラジカルを有する有機化合物(以下、ラジカル化合物と表す)が挙げられる。
π電子化合物またはラジカル化合物を活物質に用いる場合、酸化還元反応は、活物質の物理的および化学的な構造変化を伴わず、π電子またはラジカルに基づく電子の授受により進行する。これにより、反応速度が非常に速くなり、充放電時の反応抵抗が低減されるため、蓄電デバイスの出力特性が向上する。
π電子化合物としては、例えば以下に示す一般式(1)または一般式(2)で表わされる構造を有する有機化合物などが挙げられる。
一般式(1):
一般式(2):
また、別のπ電子化合物としては、例えば以下に示す一般式(3)で表わされる構造を有する有機化合物などが挙げられる。
一般式(3):
分子間力が強い有機化合物の分子構造は平面構造であり、かつ前記平面に対して垂直方向にπ電子共役雲を有するのが好ましい。これらの有機化合物分子の平面同士が互いに重なり合い、かつ平面に対して垂直方向に存在するπ電子共役雲により強い分子間力が働くことにより、活物質である有機化合物が結晶を構成することができる。また、結晶を構成するためには、有機化合物の分子構造が対称性を有することが望ましい。
上記有機化合物の中でも、特に分子間力が強い点で、後述する式(4)〜(26)で表される化合物が好ましい。
化学式(4):
R1〜R4およびR7〜R10で用いられる脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、チオアルキル基、アルデヒド基、カルボン酸基、ハロゲン化アルキル基などが挙げられる。また、この脂肪族基の炭素数は、特に制限はないが、炭素数は1〜6が好ましい。
化学式(4)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物のなかで最も分子量が小さいため、活物質のエネルギー密度が最も高くなり、高エネルギー密度の蓄電デバイスが得られる。また、反応速度が速い。
一般式(5)で表される化合物の代表例としては、化学式(6)〜(9)で表される化合物が好ましい化合物として挙げられる。
化学式(6):
化学式(10):
一般式(3)で表される化合物としては、例えば一般式(11)〜(14)で表される化合物が挙げられる。
一般式(11):
一般式(12):
一般式(13):
一般式(14):
また、一般式(3)で表される化合物としては、例えば、以下に示す式(15)〜(26)で表される化合物が好ましい。これらの中でも、特に、エネルギー密度が高いという点で、化学式(16)及び化学式(20)で表される化合物がより好ましい。
化学式(15):
有機化合物を良溶媒に溶解させ、その後溶媒を蒸発させる操作、または有機化合物を融点付近まで加熱した後、急冷する操作を行うと、有機化合物は結晶性の低い状態、もしくはアモルファスとなり得るため、本発明の蓄電デバイスに用いる有機化合物としては好ましくない。
電解質には、例えば、有機溶媒および前記有機溶媒に溶解する支持塩からなる非水電解質が用いられる。電解質中において、支持塩は、イオン、すなわちアニオンとカチオンとして存在する。
充電状態および放電状態のうちの少なくとも一方において、正極および負極のうちの少なくとも一方に含まれる前記有機化合物が正または負に帯電し、前記正または負に帯電した有機化合物が、前記有機化合物が帯電する電荷と逆の符号の電荷を有する前記電解質中のイオンと結晶質の塩を形成するのが好ましい。
アニオンは活物質のみからなる分子結晶の中に侵入すると、正に帯電した活物質とアニオンからなる新たな結晶を形成するため、アニオンのイオン半径が大きいと活物質のみからなる分子結晶を壊してしまうと考えられる。また、アニオンが、電荷の偏りの大きな3次元的に非対称な構造を有する場合、正に帯電した活物質とアニオンからなる、3次元的な周期構造を有する新たな結晶を形成し難いと考えられる。このような観点から、上記アニオンの中でも、ハロゲン化物アニオン、過塩素酸アニオン、ほうフッ化物アニオン、6フッ化リン酸アニオンなどが好ましい。
カチオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のカチオンや、マグネシウムなどのアルカリ土類金属のカチオン、テトラエチルアンモニウムや1、3−エチルメチルイミダゾリウムなどの4級アンモニウムのカチオンが用いられる。
f=e2/εrd2 (b)
ここでeは単位電荷、εrは有機溶媒の比誘電率、dはイオン間距離を示す。式(b)から、有機溶媒の比誘電率が大きくなると、アニオンとカチオン間における引力は小さくなるため、イオンが解離しやすくなることが分かる。従って、比誘電率が大きい有機溶媒を用いた場合は充電状態の活物質とアニオンが解離するので、正極活物質が電解質に溶解しやすくなり、繰り返し充放電試験における容量低下が生じる原因となる。
ビスエチレンジチオテトラチアフルバレンのようなπ電子化合物を正極活物質として用いると、有機溶媒の比誘電率が30以下では、充放電反応時において正極活物質の溶解を抑制できる。
このように低誘電率溶媒と高誘電率溶媒とを混合することにより、有機溶媒の比誘電率を10以上30以下に容易に調整することができ、目的とするレベルの特性が簡便に得られる。単独で10以上30以下の比誘電率を有する有機溶媒としては、ジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、ジメチルスルホキシドは電位窓が狭く、また初期状態の活物質を溶解するため本発明における蓄電デバイスに使用することは難しい。
第2の溶媒は、環状炭酸エステル、環状エステル、および環状エーテルからなる群から選ばれた少なくとも1つであるのが好ましい。第2の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ガンマブチロラクトンなどが挙げられる。
これらの有機溶媒は電位窓が広く、π電子共役雲を有する有機化合物を溶解しにくいため、非水電解質の有機溶媒として好適に用いられる。
解離度が大きい支持塩を使用することにより、非水電解質中のイオン濃度が向上し、反応抵抗を軽減することが可能となる。支持塩の会合定数が3を超えると、上記範囲の比誘電率の有機溶媒では、解離したイオン濃度が低くなり、導電率が低くなる。
会合定数が3以下である支持塩は特に制限はないが、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニル)イミド(LiBETI)が好適に用いられる。これらの支持塩はリチウムイオン二次電池用支持塩として広汎に使用されており、低誘電率溶媒中でも高い解離度を有し、また、化学的安定性にも優れている。
充放電反応における活物質1分子当たりの反応電子数nは、大きいほど高容量の蓄電デバイスが得られる。一方、結晶性の維持のためには、活物質1分子当たりの反応電子数nは小さい方が好ましい。例えば、充電および放電の少なくとも一方で、電解質中のイオンが活物質である有機化合物の結晶中に侵入し、有機化合物とイオンとからなる塩を形成する場合、反応電子数nが小さいと、有機化合物の結晶内部に侵入するイオン量が少なくなり、上記塩は結晶性を維持しやすい。逆に反応電子数nが大きくなると、有機化合物の結晶内部に侵入するイオン量が多くなり、上記塩の結晶性を維持することが困難になる。
反応電子数nが閾値以下であると、有機化合物の充放電時の結晶性が維持され、充放電サイクル特性に優れた蓄電デバイスが得られる。反応電子数nが閾値を超えると、充放電時に有機化合物の結晶性が維持されなくなり、充放電サイクル特性が低下する。したがって、本発明の蓄電デバイスでは、高容量かつ優れた充放電サイクル特性を同時に得るためには、反応電子数nが有機化合物の結晶性を維持することができる閾値以下の領域において充放電する。活物質利用率(放電容量)の観点から反応電子数nはできるだけ大きな値であるのが望ましい。
反応電子数nは、例えば、充電上限電圧、放電下限電圧、充電電気量、もしくは放電電気量などの充放電条件、または正極容量と負極容量とのバランス(例えば、正極容量に対する負極容量の比)などの蓄電デバイスの設計により、容易に制御することができる。
ET + nBF4 - → [ETn+ ・nBF4 -] + ne- (c)
式(c)中において、ETは、正極活物質であるビスエチレンジチオテトラチアフルバレンを示す。式(c)における右向き矢印は充電反応の向きを表す。従って、放電状態の活物質はETであり、充電状態の活物質は、[ETn+ ・nBF4 -]である。また、式(c)におけるnは活物質1分子当たりの反応電子数を表す。
反応電子数は、例えば、蓄電デバイスの充電量や放電量に応じて制御することができる。
図6に示すように、放電時の活物質は、有機化合物(ET)の分子結晶のみからなる。一方、充電時の活物質は、図7に示すように、有機化合物(ET)の分子間にアニオン(BF4 -)が入り込み、正に帯電した活物質とアニオンとからなる塩が、周期性を有する結晶として形成される。このように、充電時および放電時の両方において、活物質である有機化合物が結晶構造を有する場合、優れた充放電サイクル特性を有する蓄電デバイスが得られる。
ここでいう、活物質利用率とは、電極中に含まれる活物質の重量に基づいて算出される理論容量に対して実際に充放電反応で使用される容量の割合を意味する。活物質の理論容量は、反応電子数(n)、分子量(Mw)に対して次式(d)により求められる。なお、ここでいう容量とは電流容量を意味する。
理論容量(mAh/g)=(n×96500/Mw)×(1000/3600) (d)
例えば、上記有機化合物を正極活物質に用いた蓄電デバイスを、活物質利用率が90%以下に充放電することにより、充放電時において活物質は結晶質を維持することができる。
正極活物質の容量利用率を上記範囲とすることにより、活物質1分子あたりの反応電子数を閾値以下に制御することができる。10000以下の低分子量の有機化合物を活物質に用いた場合でも、活物質の電解質中への溶出を抑制することができる。特に、電解質中へ溶出し易い分子量が1000以下の有機化合物の場合に対して有効である。
上記π電子化合物のような多電子反応の反応機構を有する活物質を正極活物質に用いた場合、充放電曲線は複数段の平坦部を有する。ここでいう最高反応電圧とは、充電時の電圧曲線が複数段の平坦部を有する場合、充電電圧曲線において最も高い電圧側に位置する平坦部の電圧を意味する。この充電電圧曲線における複数の平坦部間の段差を利用して充電時の上限電圧を設定することにより、活物質の酸化状態を制御し、特別な装置・回路などを用いることなく、正極活物質の利用率を、活物質が結晶質を維持できる範囲に容易に制御することができる。
なお、ここでいう正極活物質が難溶性を示す電解質とは、活物質利用率100%に相当する量を充電した場合に充放電効率が90%以上となるような電解質のことをいう。
したがって、上記に基づいて電解質の組成を最適化することにより、活物質が2価の酸化状態であっても電解質への溶解を抑制し、さらに活物質利用率を90%以下とすることで充放電サイクル特性を向上させることが可能となる。
図10に示すように、ケース11には、正極19、負極20、および正極19と負極20との間に配されたセパレータ14からなる発電要素が収容されている。正極19は正極集電体12と正極集電体12上に形成された正極合剤層13からなる。正極合剤層13は、例えばビスエチレンジチオテトラチアフルバレンのような上記有機化合物を含む。負極20は負極集電体17と負極集電体17上に形成された負極活物質を含む負極合剤層16からなる。発電要素は電解質を含む。
負極集電体17上に封口板15が配され、ケース11の開口端部を、ガスケット18を介して封口板15の周縁部にかしめつけることにより、ケース11内が密封されている。
正極合剤層13は、例えば、正極活物質、導電材、および結着剤を含む。導電材は、電子伝導性を向上させる目的で用いられる。導電剤には、例えば、カーボンブラック、グラファイト、もしくはアセチレンブラックなどの炭素材料、またはポリアニリン、ポリピロール、もしくはポリチオフェンなどの導電性高分子が用いられる。
結着剤は、正極活物質の結着性を向上させるために用いられる。結着剤には、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアクリル酸などが用いられる。
正極集電体12には、一般の電池と同様、金属箔、金属メッシュ、導電性フィラーを含む樹脂フィルムなどが用いられる。
負極活物質は、特に制限されないが、例えば、グラファイト、非晶質炭素などの炭素材料、リチウム金属、リチウム含有複合窒化物、リチウム含有チタン酸化物、スズと炭素の複合物、スズと他の金属との複合物、シリコン、シリコン酸化物などのリチウムイオン二次電池で用いられる活物質が挙げられる。また、例えば、活性炭などの電気二重層容量を有する炭素材料が用いられる。
負極集電体17には、一般の電池と同様、金属箔、金属メッシュ、導電性フィラーを含む樹脂フィルムなどが用いられる。
負極20には、上記以外に金属リチウムシートからなる負極を用いてもよい。
《実施例1》
本発明の蓄電デバイスとして図10と同じコイン型電池を以下の手順により作製した。
(1)正極の作製
正極活物質には、π電子共役雲を有する有機化合物としてビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(東京化成工業(株)製)を用いた。正極活物質は、精製し、再結晶したものを用いた。正極活物質の精製および再結晶は、正極活物質50mgを二硫化炭素の溶媒20mlに溶解させ、さらにヘキサン20mlを加え、温度5℃の環境下で静置し、再沈殿させることによって行った。
ケース11の内面に正極19を配置し、正極合剤層13上に、厚さ20μmの多孔質ポリエチレンシートからなるセパレータ14を配した。電解質を正極合剤層13およびセパレータ14に注液した。電解質には、0.5mol/Lの4フッ化ホウ酸リチウムを含む、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:5)を用いた。
封口板15の内面に負極20を圧着させた後、封口板15の周縁部にガスケット18を装着した。負極20には、厚さ400μmのリチウム金属板を13.5mmの円盤状に打ち抜いたものを用いた。負極20が、セパレータ14を介して正極12と対向するように、ケース11の開口部に封口板15を配した。プレス機でケース11の開口端部を、ガスケット18を介して封口板15の周縁部にかしめつけて、ケース11の開口部を封口板15で封口した。このようにして、コイン型電池Aを得た。
そして、電池Aを、閉路電圧が4.0Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
電解質として、0.5mol/Lの6フッ化リン酸リチウムを含む、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:5)を用いた。これ以外は実施例1と同じ方法により電池Bを作製し、充放電した。
電解質として、0.5mol/Lの過塩素酸リチウムを含む、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:5)を用いた。これ以外は実施例1と同じ方法により電池Cを作製し、充放電した。
比較例1の電池は、電解質に溶解させる塩以外は実施例1と全く同じ構成の電池とした。電解質として、0.5mol/Lのトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを含む、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:5)を用いた。これ以外は実施例1と同じ方法により電池Dを作製し、充放電した。
電解質として、0.5mol/Lのノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸リチウムを含む、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:5)を用いた。これ以外は実施例1と同じ方法により電池Eを作製し、充放電した。
実施例1〜3および比較例1〜2の電池について、以下のように、充放電時の有機化合物の結晶性、および電池の充放電サイクル特性を評価した。
(1)充放電時の有機化合物の結晶性の評価
充放電時の電池を分解して正極を取り出し、正極に対してX線回折測定を行った。X線回折測定は、入射X線にCu−Kα線を用い、2θ/θ法により測定角度範囲は1〜34度(2θ)の範囲で、スキャン速度1度/minの速度で行った。そして、有機化合物結晶に由来する回折線(回折ピーク)が確認できるか否かで結晶性の評価を行った。結晶性の評価は、放電状態(充電前)および充電状態(充電後)の2つの状態に対して行った。
上記充放電において、充電容量に対する放電容量の割合、すなわち充放電効率(%)を求めた。
また、放電容量(Q[Coulomb])を、活物質である有機化合物のモル数(M[mol])と、ファラデー定数(96500[Coulomb/mol])とで割り、以下の式(e)から、活物質1分子当たりの反応電子数nを算出した。
(反応電子数n)=(放電容量Q[Coulomb])/96500
/(有機化合物のモル数M[mol]) (e)
上記評価結果を表1にまとめて示す。
電解質として、0.5mol/Lの6フッ化リン酸リチウム含む、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:3)を用いた。これ以外は実施例2と同じ方法により電池Fを作製し、充放電した。
電解質として、0.5mol/Lの6フッ化リン酸リチウムを含む、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:2)を用いた。これ以外は実施例2と同じ方法により電池Gを作製し、充放電した。
電解質として、0.5mol/Lの6フッ化リン酸リチウムを含む、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)を用いた。これ以外は実施例2と同じ方法により電池Hを作製し、充放電した。
電解質として、0.5mol/Lの6フッ化リン酸リチウムを含むプロピレンカーボネートを用いた。これ以外は実施例2と同じ方法により電池を作製し、充放電した。
そして、実施例4および5、ならびに比較例3および4の電池について上記と同様の評価を行った。その評価結果を、実施例2の結果とともに表2に示す。
また、電解質に用いられる溶媒の物性が、活物質である有機化合物の充放電時の結晶性に影響を与えることがわかった。具体的には、実施例2、4、および5、ならびに比較例3および4の電池の電解質に用いられた溶媒の25℃における比誘電率は、それぞれ10.7、20.2、25.7、36.3、および65.0であった。溶媒の25℃における比誘電率が30以下である実施例2、4、および5の電池では、活物質である有機化合物分子の結晶性の維持に有効であり、充放電効率、すなわち充放電サイクル特性が向上することがわかった。
電池Dを0.3mAの定電流で1000秒間充電し、その後、閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。つまり、活物質1分子当たりの反応電子数nが0.4となるように充放電を行った。
電池Dを0.3mAの定電流で2500秒間充電し、その後、閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。つまり、活物質1分子当たりの反応電子数nが1.2となるように充放電を行った。
電池Eを0.3mAの定電流で1000秒間充電し、その後、閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。つまり、活物質1分子当たりの反応電子数nが0.4となるように充放電を行った。
電池Eを0.3mAの定電流で2500秒間充電し、その後、閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。つまり、活物質1分子当たりの反応電子数nが1.2となるように充放電を行った。
電池Aを0.3mAの定電流で1000秒間充電し、その後、閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。つまり、活物質1分子当たりの反応電子数nが0.4となるように充放電を行った。
電池Aを0.3mAの定電流で2500秒間充電し、その後、閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。つまり、活物質1分子当たりの反応電子数nが1.2となるように充放電を行った。
電池Iを0.3mAの定電流で1000秒間充電し、その後、閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。つまり、活物質1分子当たりの反応電子数nが0.4となるように充放電を行った。
電池Iを0.3mAの定電流で2500秒間充電し、その後、閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。つまり、活物質1分子当たりの反応電子数nが1.2となるように充放電を行った。
また、活物質1分子当たりの反応電子数nが、活物質である有機化合物の充放電時の結晶性に影響を与えることがわかった。具体的には、反応電子数nがある閾値以下の場合に、活物質である有機化合物の充放電時の結晶性の維持に有効であることがわかった。
正極活物質には、π電子共役雲を有する有機化合物として上記の化学式(20)で表される有機化合物を用いた。化学式(20)で表される化合物は、非特許文献(Yohji Misaki et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1996, 284, P.337-344)に記載の方法に基づいて作製した。正極活物質は、精製し、再結晶したものを用いた。正極活物質の精製および再結晶は、正極活物質50mgを二硫化炭素溶媒20mlに溶解させ、さらにヘキサン20mlを加え、温度5℃で静置し、再沈殿させることによって行った。
そして、電池Iを、閉路電圧が3.7Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
電池Iを閉路電圧が4.0Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
電池Iを閉路電圧が4.3Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
正極活物質には、π電子共役雲を有する有機化合物として化学式(16)で表される化合物を用いた。化学式(16)で表される化合物は、非特許文献(Yehji Misaki et al., Chemistry Letters, 1993, P.1337-1340)に記載の方法に基づいて作製した。
正極活物質は、精製し、再結晶したものを用いた。正極活物質の精製および再結晶は、正極活物質50mgを二硫化炭素溶媒20mlに溶解させ、さらにヘキサン20mlを加え、温度5℃で静置し、再沈殿させることによって行った。
そして、電池Jを、閉路電圧が3.3Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が2.8Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
電池Jを閉路電圧が3.8Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が2.8Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
電池Jを閉路電圧が4.2Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が2.8Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
正極活物質には、π電子共役雲を有する有機化合物として、一般式(3)に表される化合物の一つである化学式(27)で表される化合物を用いた。化学式(27)で表される化合物は、非特許文献(T. Suzuki et al., J. Am. Chem. Soc., 1989, 111, P.3108-3109)に記載の方法に基づいて作製した。
上記で得られた正極活物質を用いた以外は、実施例1と同様の方法により電池Kを作製した。
そして、電池Kを、閉路電圧が3.65Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が3.1Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
電池Kを閉路電圧が3.8Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が3.1Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
正極活物質には、π電子共役雲を有する有機化合物として、一般式(3)で表される化合物の一つである化学式(28)で表される化合物を用いた。化学式(28)で表される化合物は、非特許文献(Takeshi Senga, et al., Mol. Cryst. Lig. Cryst., 1997, 296, P.97-143)に記載の方法に基づいて作製した。
上記で得られた正極活物質を用いた以外は、実施例1と同様の方法により電池Lを作製した。
そして、電池Lを、閉路電圧が3.65Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
電池Lを閉路電圧が4.1Vに達するまで0.3mAの定電流で充電し、その後閉路電圧が3.0Vに達するまで0.3mAの定電流で放電した。
以下の手順で評価用の試験セルを作製した。
(1)正極の作製
正極活物質30mgと、アセチレンブラック30mgとを均一に混合し、さらにNメチルピロリドンを1mg加えてスラリーを得た。正極活物質にはビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(Ardrich社製)を用いた。このスラリーにポリフッ化ビニリデン5mgを加えて混合し、正極合剤を得た。この正極合剤をアルミニウム箔からなる正極集電体上に塗布し、真空乾燥した後、これを1cm×1cmの大きさに打ち抜き裁断して、正極集電体上に正極活物質を含む正極合剤層が形成された正極を得た。正極にAlリードを溶接した。このとき、正極活物質の塗布量は、正極の単位面積あたり5mg/cm2であった。
表5に示す条件で比誘電率の異なる溶媒を含む種々の電解質を調整した、なお、表5における、PCはプロピレンカーボネート、DECはジエチルカーボネート、GBLはガンマブチロラクトン、DMEはジメチルエーテル、MPはメチルプロピオネートを表す。
なお、混合溶媒の比誘電率は有機溶媒のモル分率に対してほぼ線形近似することにより求めることができるため、モル分率および各有機溶媒の比誘電率から混合溶媒の比誘電率を計算した。電解質中の支持塩の濃度は0.5mol/Lとした。
上記で得られた正極および電解質、ならびに対極および参照極にリチウム金属を用い、これらを電解質10cm3に浸して試験セルを作製した。なお、参照極の大きさは5mm×5mmとし、対極の大きさは15mm×15mmとし、ポリプロピレン製の容器に電極を浸漬して真空中に保存し、正極内の細孔に電解質を含浸させた。
(4)反応抵抗の測定
ソーラートロンを用い、交流インピーダンス測定法に基づいて反応抵抗を求めた。交流インピーダンス測定は、振幅が開回路電圧(OCV)に対して10mV、周波数領域が1GHz〜0.1Hzの範囲で行った。このとき試験セルのOCVはおおむね3.2V付近であった。
正極活物質の電解質への溶解性については、試験セルを用いて充放電試験を行い、次式(f)から求められる充放電効率に基づいて評価した。
充放電効率(%)=(放電容量)/(充電容量)×100 (f)
充電容量よりも放電容量が小さくなる主要因は、充電時の活物質の電解質中への溶解であるため、充放電効率から活物質の電解質への溶解性を評価することができる。なお、充放電試験は、充電電流値および放電電流値0.048mA、充電上限電圧4.2V、および放電下限電圧3.0Vの条件で行った。
また、上記と同じ方法により、充電時および放電時における正極活物質の結晶性の有無を確かめた。
上記の評価結果を表5に示す。
これに対して、有機溶媒の比誘電率が30を超える比較例9〜13の試験セルでは、反応抵抗は小さいが、充電時に正極活物質が結晶性を有しないことが確認され、充放電効率が低下した。
実施例20〜28の試験セルでは、高い充放電効率とともに低い反応抵抗が得られる、すなわち優れた充放電サイクル特性とともに高い出力特性が得られる点で、有機溶媒の比誘電率が10〜30であるのが好ましいことがわかった。
なお、本実施例では、活物質の溶解が抑制される効果を明確に評価するために、多量の電解質を用いているため、実際の蓄電デバイスの場合と比べて活物質の溶解量は多い。
本発明の蓄電デバイスの充放電サイクル特性を評価するために、図10と同じコイン型電池を以下の手順で作製した。
(1)正極の作製
正極活物質30mgと、アセチレンブラック30mgとを均一に混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドンを1mg加えてスラリーを得た。正極活物質にはビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(Ardrich社製)を用いた。このスラリーにポリフッ化ビニリデン5mgを加えて混合し、正極合剤を得た。この正極合剤をアルミニウム箔からなる正極集電体12上に塗布し、真空乾燥した後、これを直径1.3cmの円盤状に打ち抜き裁断して、正極集電体12上に正極活物質を含む正極合剤層13が形成された正極19を得た。このとき、正極活物質の塗布量は、正極の単位面積あたり5mg/cm2であった。
ケース11の内面に正極19を配置し、正極合剤層13上に、厚さ20μmの多孔質ポリエチレンシートからなるセパレータ14を配した。電解質を正極合剤層13およびセパレータ14に注液した。電解質には、PCおよびDECの混合溶媒(比誘電率:14.9、および体積比:PC/DEC=1/5)中にLiPF6を1.0M溶解させたものを用いた。
封口板15の内面に負極20を圧着させた後、封口板15の周縁部にガスケット18を装着した。負極20には、厚さ400μmのリチウム金属板を1.5cmの円盤状に打ち抜いたものを用いた。負極20が、セパレータ14を介して正極12と対向するように、ケース11の開口部に封口板15を配した。プレス機でケース11の開口端部を、ガスケット18を介して封口板15の周縁部にかしめつけて、ケース11の開口部を封口板15で封口した。このようにして、コイン型電池を作成した。
実施例32の電解質の代わりに、PCおよびDECの混合溶媒(比誘電率:10.7、および体積比:PC/DEC=1/8)中にLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させた電解質を用いた以外は、実施例32と同様の方法により電池を作製した。
実施例32の電解質の代わりに、PC(比誘電率:65)中にLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させた電解質を用いた以外は、実施例32と同様の方法により電池を作製した。
実施例32、実施例33、および比較例14のコイン型電池を用いて充放電サイクル試験を行った。充放電条件は、充電電流値および放電電流値0.24mA、充電上限電圧4.0V、放電下限電圧3.0Vとし、充電と放電とを交互に繰り返した。そして、10、50、100、300、500サイクル時における容量維持率を求めた。なお、容量維持率は、容量維持率(%)=(初回充電容量)/(各サイクル数における放電容量)×100の式により求められる。その評価結果を表6に示す。
図10と同じコイン型電池を以下の手順で作製した。
(1)正極の作製
正極活物質30mgとアセチレンブラック30mgとを均一に混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドンを100mg加えてスラリーを得た。正極活物質には、π電子共役雲を有する有機化合物としてビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(Aldrich社製)を用いた。このスラリーにポリフッ化ビニリデン5mgを加えて混合し、スラリー状の正極合剤を得た。この正極合剤を、アルミニウム箔からなる正極集電体12の上に塗布し、真空乾燥した後、これを直径13.5mmの円盤状に打ち抜き裁断して、正極集電体12上に正極合剤層13が形成された正極19を作製した。このとき、正極活物質の塗布重量は、正極の単位面積あたり1.7mg/cm2であった。
負極活物質として粉状グラファイト15mgと、アセチレンブラック6mgとを均一に混合し、さらにポリビニルピロリドン6mgおよびメタノール250mgを加えてスラリーを得た。このスラリーを、アルミニウム箔からなる負極集電体17上にキャストし、真空乾燥を行い、これを直径14.5mmの円盤状に打ち抜き裁断して、負極集電体17上に負極活物質を含む負極合剤層16が形成された負極20を作製した。
ケース11の内面に上記で得られた正極19を配置し、正極合剤層13上に、厚さ20μmの多孔質ポリエチレンシートからなるセパレータ14を配した。次に、電解質を正極合剤層13およびセパレータ14に注液した。電解質には、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)を重量比1:1で混合した混合溶媒に、ホウフッ化リチウムを1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
封口板15の内面に負極20を圧着させた後、封口板15の周縁部にガスケット18を装着した。負極20が、セパレータ14を介して正極12と対向するように、ケース11の開口部に封口板15を配した。プレス機でケース11の開口端部を、ガスケット18を介して封口板15の周縁部にかしめつけて、ケース11の開口部を封口板15で封口した。
上記の負極作製において、キャスト時の厚さを制御することにより、容量の異なる負極20を作製し、正極容量に対する負極容量の割合を30%、50%、70%、90%および100%と変えた。そして、正極容量に対する負極容量の割合が30%、50%、70%、90%および100%である負極を用いたコイン型電池を、それぞれサンプル1、2、3、4および5とした。
実施例34の電解質の代わりに、プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)とを重量比1:4で混合した混合溶媒に6フッ化リン酸リチウムを1mol/Lの濃度で溶解させた電解質を用いた以外は、実施例34と同様の方法により電池を作製した。なお、上記電解質を用いた時の初回充放電効率は95%であった。正極容量に対する負極容量の割合が30%、50%、70、90%、100%である負極を用いたコイン型電池を、それぞれサンプル6、7、8、9、および10とした。
PC/DEC系の電解質を使用したサンプル6〜10の電池を比較すると、正極活物質利用率が90%以下であるサンプル6〜9の電池では、活物質の結晶性が維持され、充放電サイクル特性が大幅に向上した。正極活物質利用率が100%のサンプル10の電池では、活物質が電解質中に溶解しやすくなるため、充放電サイクル特性が低下した。
負極20にリチウム金属を用いた以外は、実施例34と同様の方法により電池を作製し、上記の充放電サイクル試験と同様の条件で充放電試験を行った。
図13に、正極活物質にビスエチレンジチオテトラチアフルバレンを用い、負極活物質にリチウム金属を用いた時の充電電圧曲線を示す。ビスエチレンジチオテトラチアフルバレンはπ電子共役雲に2電子が配位するため、充放電曲線は2段の平坦部を示すと考えられるが、充放電試験により充電電圧曲線が3段の平坦部を有することが確かめられた。充電電圧曲線が3段の平坦部を示す理由は明らかでないが、低電圧領域aでは0価から1価の反応が進行し、高電圧領域cでは1価から2価の反応が進行していると考えられる。また、中電圧領域bでは0価から1価の反応および1価から2価の反応の両方が進行していると考えられる。
Claims (26)
- 正極と、負極と、電解質とを含む蓄電デバイスであって、
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、酸化還元反応に寄与する部位を有する有機化合物を活物質として含み、
前記有機化合物が、充電状態および放電状態の両方において結晶質であり、一般式(1)で表わされる構造を有することを特徴とする蓄電デバイス。
一般式(1):
- 正極と、負極と、電解質とを含む蓄電デバイスであって、
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、酸化還元反応に寄与する部位を有する有機化合物を活物質として含み、
前記有機化合物が、充電状態および放電状態の両方において結晶質であり、一般式(2)で表わされる構造を有することを特徴とする蓄電デバイス。
一般式(2):
- 正極と、負極と、電解質とを含む蓄電デバイスであって、
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、酸化還元反応に寄与する部位を有する有機化合物を活物質として含み、
前記有機化合物が、充電状態および放電状態の両方において結晶質であり、一般式(3)で表わされる構造を有することを特徴とする蓄電デバイス。
一般式(3):
- 充電状態および放電状態のうちの少なくとも一方において、前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方に含まれる前記有機化合物が正または負に帯電し、
前記正または負に帯電した有機化合物が、前記有機化合物が帯電する電荷と逆の符号の電荷を有する前記電解質中のイオンと結晶質の塩を形成している請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス。 - 前記有機化合物の分子量が10000以下である請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス。
- 前記有機化合物の分子構造が平面構造であり、かつ前記平面に対して垂直方向に前記π電子共役雲を有する請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス。
- 前記電解質が、有機溶媒および前記有機溶媒中に溶解する支持塩からなる請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス。
- 前記支持塩は、アニオンおよびカチオンを含み、
前記アニオンは、3次元的に対称な構造を有する請求項7記載の蓄電デバイス。 - 前記アニオンが、4フッ化ホウ酸アニオン、6フッ化リン酸アニオン、および過塩素酸アニオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項8記載の蓄電デバイス。
- 前記支持塩の会合定数が3以下である請求項7記載の蓄電デバイス。
- 前記支持塩は、6フッ化リン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、およびリチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニル)イミドよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7記載の蓄電デバイス。
- 前記有機溶媒の比誘電率が30以下である請求項7記載の蓄電デバイス。
- 前記有機溶媒の比誘電率が10以上である請求項12記載の蓄電デバイス。
- 前記有機溶媒は、比誘電率が10以下の第1の溶媒と、比誘電率が30以上の第2の溶媒との混合溶媒からなる請求項13記載の蓄電デバイス。
- 前記第1の溶媒は、鎖状炭酸エステル、鎖状エステルおよび鎖状エーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記第2の溶媒は、環状炭酸エステル、環状エステルおよび環状エーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項14記載の蓄電デバイス。 - 充放電時における前記有機化合物の1分子あたりの反応電子数が、結晶質を維持することができる閾値以下である請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス。
- 正極と、負極と、電解質とを備え、前記正極および前記負極の少なくと も一方が、酸化還元反応に寄与する部位を有する有機化合物を活物質として含む蓄電デバイスの充放電制御方法であって、
前記有機化合物1分子あたりの反応電子数が、前記有機化合物の結晶質を維持することができる閾値以下の領域において、前記蓄電デバイスを充放電し、
前記有機化合物は、一般式(1)で表わされる構造を有することを特徴とする蓄電デバイスの充放電制御方法。
一般式(1):
- 正極と、負極と、電解質とを備え、前記正極および前記負極の少なくとも一方が、酸化還元反応に寄与する部位を有する有機化合物を活物質として含む蓄電デバイスの充放電制御方法であって、
前記有機化合物1分子あたりの反応電子数が、前記有機化合物の結晶質を維持することができる閾値以下の領域において、前記蓄電デバイスを充放電し、
前記有機化合物は、一般式(2)で表わされる構造を有することを特徴とする蓄電デバイスの充放電制御方法。
一般式(2):
- 正極と、負極と、電解質とを備え、前記正極および前記負極の少なくと も一方が、酸化還元反応に寄与する部位を有する有機化合物を活物質として含む蓄電デバイスの充放電制御方法であって、
前記有機化合物1分子あたりの反応電子数が、前記有機化合物の結晶質を維持することができる閾値以下の領域において、前記蓄電デバイスを充放電し、
前記有機化合物は、一般式(3)で表わされる構造を有することを特徴とする蓄電デバイスの充放電制御方法。
一般式(3):
- 正極と、負極と、電解質とを備え、前記正極および前記負極の少なくとも一方が、酸化還元反応に寄与する部位を有する有機化合物を活物質として含む蓄電デバイスの充放電制御方法であって、
前記活物質の利用率が、前記有機化合物が結晶質を維持できる閾値以下の領域において、前記蓄電デバイスを充放電し、
前記有機化合物は、一般式(1)で表わされる構造を有することを特徴とする蓄電デバイスの充放電制御方法。
一般式(1):
- 正極と、負極と、電解質とを備え、前記正極および前記負極の少なくとも一方が、酸化還元反応に寄与する部位を有する有機化合物を活物質として含む蓄電デバイスの充放電制御方法であって、
前記活物質の利用率が、前記有機化合物が結晶質を維持できる閾値以下の領域において、前記蓄電デバイスを充放電し、
前記有機化合物は、一般式(1)で表わされる構造を有することを特徴とする蓄電デバ イスの充放電制御方法。
一般式(2):
- 正極と、負極と、電解質とを備え、前記正極および前記負極の少なくとも一方が、酸化還元反応に寄与する部位を有する有機化合物を活物質として含む蓄電デバイスの充放電制御方法であって、
前記活物質の利用率が、前記有機化合物が結晶質を維持できる閾値以下の領域において、前記蓄電デバイスを充放電し、
前記有機化合物は、一般式(3)で表わされる構造を有することを特徴とする蓄電デバイスの充放電制御方法。
一般式(3):
- 前記正極が前記有機化合物を活物質として含み、
充放電時における前記活物質の利用率が90%以下である請求項20〜22のいずれかに記載の蓄電デバイス。 - 前記正極の容量に対する前記負極の容量の割合が90%以下である請求項23記載の蓄電デバイスの充放電制御方法。
- 充電において上限電圧が設定され、前記上限電圧は最高反応電圧以下である請求項23記載の蓄電デバイスの充放電制御方法。
- 前記活物質が前記電解質に対して難溶性を有する請求項23記載の蓄電デバイスの充放電制御方法。
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