JP4161780B2 - 車高調整装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車高調整装置に関するものであり、特に、車高の自動調整とマニュアル調整(手動調整)とを選択的に実施可能な車高調整装置の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車高調整装置は、車輪と車体との間に設けられ、車輪に対する車体の相対的高さである車高を変更する車高変更装置と、その車高変更装置を制御することにより車高を調整する制御装置とを含んで構成される(例えば、特許文献1および2参照)。マニュアル操作部材の操作に応じて車高を調整するマニュアル調整モードと、実際の車高が予め設定された目標車高と等しくなるように自動で車高を調整する自動調整モードとで作動可能な車高調整装置(例えば、特許文献3および4参照)においては、制御装置は自動調整モードとマニュアル調整モードとで作動可能であり、自動調整モードでは、実際の車高が設定車高に自動で調整され、マニュアル調整モードでは、マニュアル操作部材の操作に応じた高さに調整される。設定車高は、自動調整モードによる車高調整の開始時には決まっている高さであり、マニュアル操作部材の操作により調整される車高は、その操作に応じて調整時に決められる。
【0003】
【特許文献1】
特開平2−106419号公報
【特許文献2】
特開昭60−191805号公報
【特許文献3】
特開昭62−94409号公報
【特許文献4】
特開平3−176219号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
しかしながら、従来の車高の自動調整およびマニュアル調整が行われる車高調整装置には、未だ改善の余地がある。そこで、本発明は、その改善を行うことを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の車高調整装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0005】
なお、以下の各項において、(1) 項, (2) 項, (6) 項および (7) 項と、 (3) 項の一部と、段落〔0033〕および段落〔0034〕に記載の事項とを合わせたものが請求項1に相当し、その請求項1に (2) 項の特徴を追加したものが請求項2に、請求項2に (3) 項, (4) 項および段落〔0045〕に記載の特徴を追加したものが請求項3に、請求項2に段落〔0052〕に記載の特徴を追加したものが請求項4に、請求項1ないし4のいずれかに (5) 項の特徴を追加したものが請求項5に、請求項1ないし5のいずれかに段落〔0046〕に記載の特徴を追加したものが請求項6に、それぞれ相当する。
【0006】
(1)マニュアル操作部材の操作に応じて車高を調整するマニュアル調整モードと、実際の車高が予め設定された目標車高と等しくなるように自動で車高を調整する自動調整モードとで作動可能な車高調整装置において、
当該車高調整装置が搭載された車両の停車中に前記マニュアル調整モードにされ、その後前記自動調整モードとされる場合に、前記目標車高をその時点の実車高に応じた高さに決定する目標車高決定手段を設けたことを特徴とする車高調整装置。
「マニュアル調整モードから自動調整モードにされる時点の実車高」は、その時点に車高センサにより検出されている車高でもよく、また、次項におけるように、マニュアル調整モードで車高が調整された際の車高(例えば、マニュアル調整の終了時に車高センサにより検出されていた車高)であって自動調整モードへの切替時点に現に車高メモリに記憶されている車高でもよい。
車両の停車中にマニュアル調整モードにされ、その後自動調整モードとされる場合に、運転者の操作によることなく、車高調整装置が設計上定められている目標車高に一律に調整されてしまうと、路面等の状況によっては不適切な場合がある。例えば、凹凸の多いモーグル等の不整地に進入する場合、不整地に入る前の平坦な路面で停車してマニュアル調整モードにし、路面干渉を避けるために車高を、自動調整モードの目標車高とは異なる任意の高さであって、上限値まで高くしてから不整地に進入することが行われるが、この場合、例えば、通常行われているように、車両の走行開始後に自動で自動調整モードに切り替えられると、車体が路面と干渉してしまったり、あるいは、運転者,同乗者に違和感を感じさせてしまったりするのである。例えば、自動調整モードにおける設定車高がローに設定されており、かつ、不整地への進入前に車高が上限値まで高められていた場合に、自動で自動調整モードに切り替えられれば、車高が著しく低くされることとなり、車体と路面との干渉が生じたり、運転者,同乗者の感じる違和感が大きくなったりするのである。あるいは、マニュアル調整モードにおいては、一般に、自動調整モードにおけるより低い車高から高い車高まで広い範囲で調整が可能とされるため、マニュアル調整モードにおいて自動調整モードにおいて調整可能な上限の車高より高く調整されていた場合には、たとえ自動調整モードにおける設定車高が上限の車高であった場合でも、自動で自動調整モードに切り替えられれば、車体と路面との干渉が生じることがあり得る。さらに、不整地のように左右輪の一方が低くなり、他方が高くなる状況下では、左右輪の平均車高は平坦路に停車させた場合より高めに検出される傾向があり、そのために自動調整モードにおいて車高が低めに制御され、車体が路面と干渉してしまうこともあり得るのである。
それに対して、本発明によれば、車両の走行が開始され、マニュアル調整モードから自動調整モードに切り替えられる場合に、自動調整モードにおける目標車高が、その時点の実車高に応じた高さに決定されるため、走行開始後における車高変化がなくなったり、小さくて済んだりする。それにより、車体と路面との干渉が良好に回避されたり、あるいは、運転者,同乗者の違和感が低減されたりする効果が得られる。
(2)前記目標車高決定手段が、前記停車中におけるマニュアル調整モードで調整された車高であるマニュアル調整車高に応じて前記目標車高を決定するマニュアル調整車高依拠目標車高決定手段を含む (1)項に記載の車高調整装置。
目標車高決定手段を (3)項あるいは (4)項に記載の段階割当手段とする態様がそれぞれ、本項に係る発明の一実施態様であるが、それ以外の態様で本項に係る発明を実施することも可能である。例えば、マニュアル調整モードでしきい値より高い車高に調整されていた場合は、自動調整モードでの設定車高のいかんを問わず、自動調整モードでの目標車高を、強制的に通常の自動調整モードにおけるノーマルより高い車高としたり、マニュアル調整モードで上記しきい値より低いしきい値以下の車高に調整されていた場合は、自動調整モードでの目標車高を強制的にノーマルとしたりすることができる。また、自動調整モードにおいて、目標車高が、選択操作部材の操作に応じて、例えば、ハイ,ノーマルおよびローというように複数段階から選択可能であり、その選択された段階の目標車高に自動的に調整される場合、各段階における目標車高がマニュアル調整車高に応じて臨時に変更されるようにすることも可能である。
(3)前記自動調整モードにおいて目標車高が複数段階に設定可能であり、前記マニュアル調整モードにおいて車高が自動調整モードにおけるより多段階で調整可能であって、かつ、前記マニュアル調整車高依拠目標車高決定手段が、前記マニュアル調整車高を前記自動調整モードにおける前記複数段階の目標車高のいずれかに割り当てる段階割当手段を含む (2)項に記載の車高調整装置。
自動調整モードにおいては車高が段階的に調整されることが多いが、マニュアル調整モードにおいては車高が少なくとも自動調整モードにおける段階数よりは多段階に調整可能であることが望ましい。それら2つのことが可能な車高調整装置においては、本項の段階割当手段が有用である。同様の目的で、車高調整装置を、複数段階のマニュアル調整車高をそれより少ない段数の段階目標車高に割り当てる規則に基づいて目標車高を決定する段階割当式決定手段を含むものとすることも可能である。なお上記「少なくとも自動調整モードにおける段階数よりは多段階に調整可能」には、次項の「連続的に調整可能」も含まれるものとする。「連続」は「無限に大きい段数の段階」と考えるのである。
(4)前記マニュアル調整モードにおいて車高が連続的に調整可能であり、前記段階割当手段が、その連続的な車高を前記自動調整モードにおける前記複数段階の目標車高に割り当てるものである (3)項に記載の車高調整装置。
マニュアル調整モードにおいては車高が連続的に調整可能であることが望ましく、自動調整モードにおいては車高が段階的に調整されることが望ましい。それら2つのことが可能な車高調整装置においては、本項の段階割当手段が有用である。
【0007】
(5)前記車両の停車中は前記マニュアル調整モードの設定が可能であるが、車両の走行中は前記マニュアル調整モードの設定が不可能である (1)項ないし (4)項のいずれかに記載の車高調整装置。
車両の走行中にマニュアル操作部材が操作されて任意に車高調整が行われることは望ましくない場合が多い。その理由の一つは、車両の走行中には運転者によるマニュアル操作部材の操作ができる限り少ないことが望ましいことである。運転者が必要不可欠な運転操作に集中できるようにするためである。また、一般にマニュアル調整モードにおいては自動調整モードにおけるより広い範囲で車高が調整できるようにされるため、車両の走行中にマニュアル調整モードによる車高調整が可能であるようにすれば、走行には適さない車高に調整される可能性があることも理由の一つである。その観点からすれば、走行中にもマニュアル調整モードによる車高調整は可能であるが、調整可能範囲が走行に適した範囲に限定されるようにしてもよい。例えば、走行中における車高調整可能範囲を停車中におけるそれより狭く制限する調整範囲制限手段を設けるのである。
【0008】
(6)前記車両の停車中に前記マニュアル調整モードが設定された場合に、前記車両の走行開始後に自動で前記自動調整モードに切り替える自動モード切替手段を含む (1)項ないし (5)項に記載の車高調整装置。
一般に、走行中は自動調整モードによる車高調整の方がマニュアル調整モードによる車高調整より望ましいため、本項の自動モード切替手段を含むものとすることは望ましいことである。
(7)前記自動モード切替手段が、前記車両の走行開始後に走行速度が始めて設定速度以上になった場合に自動で前記自動調整モードに切り替える手段を含む (6)項に記載の車高調整装置。
車両が走行を開始するやいなや直ちに自動調整モードへの切替えが行われるようにすることも可能であるが、走行開始後しばらくして切替えが行われるようにすることが望ましい場合が多い。走行速度が始めて設定速度以上になった場合に切り替える手段はそのための一つの手段である。この手段と共に、あるいはこの手段に代えて、走行開始後、設定時間が経過した時点で切替えを行う手段を採用することもできる。
【0009】
(8)モード切替操作部材を備えたモード切替装置と、そのモード切替装置の操作に応じて前記マニュアル調整モードから前記自動調整モードに手動で切り替え可能なマニュアル・オート手動切替手段とを含む (1)項ないし (7)項のいずれかに記載の車高調整装置。
(9)前記車高を検出する車高センサを含む(1)項ないし (8)項のいずれかに記載の車高調整装置。
(10)前記車高センサが、前記車両の左右の車輪に対して共通に一つ設けられた (9)項に記載の車高調整装置。
車高センサが左右の車輪に対してそれぞれ1つずつ設けられる場合には、不整地における自動調整モードでの不適切な車高調整が行われることが比較的少ないのであるが、左右の車輪に共通に1つ設けられる場合にはその可能性が高くなり、次項におけるように中央より左右いずれか一方へ片寄った位置に設けられる場合特にその可能性が高くなるため、 (1)項の発明が特に有効となる。
(11)前記車高センサが、前記車両の幅方向の中央から前記左右の車輪のいずれか一方に寄った位置に設けられた(10)項に記載の車高調整装置。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の実施形態である車高調整装置が概略的に示されている。本車高調整装置は、後輪に対する車体の相対的高さである車高を制御する装置であり、車高変更装置10および制御装置12を備えている。
【0011】
車高変更装置10は、左右の後輪についてそれぞれ設けられたエアばね20,22と、それらに共通のエア給排装置24とを含み、後輪と車体との間に設けられている。エアばね20,22は同様に構成されており、エアばね20を代表的に説明する。エアばね20は、本実施形態においては、図2に示すように、ショックアブソーバ26と共に設けられている。
【0012】
ショックアブソーバ26は、本実施形態においてはツインチューブ式のものであり、その本体28を構成する外筒30においてばね下部材(図示省略)に連結され、ピストンロッド32の上端部において車体後部(図示省略)に連結されている。ピストンロッド32は、本体28の内筒34内に摺動可能に嵌合されたピストン36から延び出させられており、ピストン36が移動するとき、ピストン36内に設けられたオリフィスをオイルが流れることにより減衰力が得られる。
【0013】
バウンド方向(車体と車輪とが接近する方向であって、ピストンロッド32の収縮方向)のピストン36の移動限度は、ピストンロッド32の上端部であって、本体28からの突出端部に設けられたストッパ部材44が外筒30の上端部に設けられたストッパ部46に当接することにより規定され、リバウンド方向(車体と車輪とが離間する方向であって、ピストンロッド32の伸長方向)のピストン36の移動限度は、ピストンロッド32のピストン近傍部であって、内筒34内に位置する部分に設けられたストッパ部材48が、内筒34と外筒30とに保持されたストッパ部材50に当接することにより規定される。
【0014】
ピストンロッド32の上端部と、外筒30の外側とにはそれぞれ、エア室形成部材としてのフレーム60,62が取り付けられるとともに、それらフレーム60,62の間にローリングダイアフラム64が設けられ、ショックアブソーバ24の外側に気密のエア室66が形成されている。符号68はダストカバーを示す。
【0015】
エア室66には、前記エア給排装置24によって圧縮エアが供給され、あるいは大気に排出される。エア給排装置24は、本実施形態においては、図1に示すように、コンプレッサ80,第一制御弁としてのハイトコントロールバルブ82および第二制御弁としてのエアソレノイドバルブ84等を含む。コンプレッサ80は電動モータ86を駆動源とし、大気とエアばね20,22のエア室66とを接続する通路88に設けられ、フィルタ90を介して空気を吸入し、圧縮してエアばね20,22に供給する。
【0016】
ハイトコントロールバルブ82は、通路88のコンプレッサ80とエアばね20,22との間の部分に設けられている。ハイトコントロールバルブ82は、本実施形態においては、常閉のシート弁であって、電磁制御弁たる電磁開閉弁とされており、ソレノイドの消磁により閉状態に切り換えられ、通路88を閉じてコンプレッサ80とエアばね20,22のエア室66との連通を遮断する。また、ハイトコントロールバルブ82は、ソレノイドの励磁により開状態に切り換えられ、通路88を開いてコンプレッサ80とエア室66とを連通させる。ハイトコントロールバルブ82は、通電中、コンプレッサ80により作られた圧縮エアがエアばね20,22に流入することを許容するのである。
【0017】
通路88のコンプレッサ80とハイトコントロールバルブ82との間の部分には、逆止弁94,ドライヤ96が直列に設けられるとともに、ドライヤ96とハイトコントロールバルブ82との間の部分には、絞り98および逆止弁100が並列に設けられている。逆止弁94,100は、コンプレッサ80からエアばね20,22に向かう向きのエアの流れは許容するが、逆向きの流れは阻止するものとされている。ドライヤ96は、コンプレッサ80で作られた圧縮エアの水分を除去する。
【0018】
エアソレノイドバルブ84は、通路88の逆止弁94が設けられた部分とドライヤ96が設けられた部分との間の部分に接続されるとともに大気に開放された通路110に設けられている。エアソレノイドバルブ84は、本実施形態においては、常閉のシート弁であって、電磁制御弁たる電磁開閉弁とされており、ソレノイドの消磁により閉状態に切り換えられて通路110を閉じ、エアの大気への流出を阻止する。また、ソレノイドの励磁により開状態に切り換えられて通路110を開き、エアの大気への流出を許容する。エアソレノイドバルブ84はまた、非通電状態においても通路88の圧力が異常に高くなった場合には、開いて大気へのエアの流出を許容するように構成されている。リリーフ弁を兼ねているのである。
【0019】
車高を高くする場合には、コンプレッサ80が作動させられるとともに、ハイトコントロールバルブ82が開、エアソレノイドバルブ84が閉の状態とされ、圧縮エアが逆止弁94,ドライヤ96,絞り98,逆止弁100およびハイトコントロールバルブ82を経てエアばね20,22のエア室66に供給される。それにより、ピストンロッド32およびエアばね20,22が伸長させられて、ばね下部材に保持された車輪と車体との間の距離が増大させられ、車高が高くされる。
【0020】
車高を高くする際、本実施形態においては、まず、コンプレッサ80が作動させられ、通路88内の圧力が上昇させられる。そして、圧力が上昇し、閉状態にあるエアソレノイドバルブ84から圧縮エアが漏れるより小さく、エアばね20,22を伸長させるのに十分な大きさになれば、ソレノイドが励磁されてハイトコントロールバルブ82が開かれ、圧縮エアがエア室66に供給される。圧縮エアの圧力の上昇は、圧力上昇検出装置により検出される。例えば、圧縮エアの圧力を圧力センサにより検出し、設定圧以上になった場合、あるいはコンプレッサ80の作動開始からの時間を計時手段によって計り、圧縮エアの圧力が十分高くなるのに要する時間が経過した場合に、圧縮エアの圧力が上昇したとする。ハイトコントロールバルブ82において弁子を弁座に着座する向きに付勢するスプリングの付勢力は大きくされており、圧縮エアの圧力が上昇するまでの間に非通電状態にあるハイトコントロールバルブ82が開くことはないようにされている。
【0021】
車高を低くする場合には、コンプレッサ80は作動させられず、バルブ82,84がそれぞれ開かれる。それにより、エアばね20,22のエア室66内のエアがハイトコントロールバルブ82,絞り98,ドライヤ96およびエアソレノイドバルブ84を通って外部に流出させられ、ピストンロッド32およびエアばね20,22が収縮させられる。それにより、車輪と車体との間の距離が減少させられ、車高が低くされる。この際、エア室66からのエアの流出は絞り98により制限され、車高が急激に低下することが防止される。車高を維持する場合には、バルブ82,84がいずれも閉じられ、コンプレッサ80は作動させられない。本車高調整装置では、車体の左右後輪に対する高さが同時に制御される。
【0022】
車高変更装置10による車高の変更可能範囲は、車高を高くする側においては、ストッパ部材48がストッパ部材50に当接することにより規定され、低くする側においては、ストッパ部材44がストッパ部46に当接することにより規定される。本実施形態においては、これらストッパ部材44,48,50およびストッパ部46がストッパ装置114を構成している。
【0023】
前記制御装置12は、コンピュータを主体として構成されており、図1に示すように、車高調整モード切替スイッチ120,車高切替スイッチ122,アンチロック制御コンピュータ124,ドア開閉スイッチ126および車高センサ128が接続されている。
【0024】
車高調整モード切替スイッチ120および車高切替スイッチ122は、例えば、車両の運転席の近傍、例えば、インストルメントパネルに設けられ、運転者によりマニュアル操作される。制御装置12は、実際の車高を、設定された設定車高に自動で調整する自動調整モードと、車高切替スイッチ122の操作に応じて、実際の車高を設定車高とは異なる車高に調整するマニュアル調整モードとで作動可能であり、運転者は、車高調整モード切替スイッチ120の切替操作により、制御装置12の車高調整モードを自動調整モードとマニュアル調整モードとのいずれか一方に切り替え、選択する。本実施形態においては、車高調整モード切替スイッチ120は、プッシュタイプ(押しボタン式)のスイッチであり、押しボタンを押すことにより、自動調整モードを指令する状態とマニュアル調整モードを指令する状態との一方から他方への切替を指令する信号が供給される。制御装置12の記憶手段(RAM)には、現在自動とマニュアルとのいずれの調整モードが選択されているかが記憶されており、押しボタンが操作される毎に一方のモードから他方のモードへの記憶変更が行われる。
【0025】
車高切替スイッチ122は、本実施形態においては、複数、例えば、ロー,ノーマルおよびハイの3つの位置に節度感をもって切り替えられ、操作力が加えられない限り、切替位置を維持するものとされている。例えば、車高の維持(ノーマル位置)を経て増大(ハイ位置)から減少(ロー位置)へ、あるいは減少から増大へ切り替えられるのである。この場合、制御装置12がマニュアル調整モードで作動する状態では、車高切替スイッチ122の操作に応じて実際の車高が車高変更装置10により変更される。車高切替スイッチ122のロー位置への切替えにより車高の減少が指示され、ハイ位置への切替えにより車高の増大が指示され、ノーマル位置への切替えにより車高の維持が指示され、制御装置12が車高切替スイッチ122の切替位置に応じて実際の車高を変更するように車高変更装置10を作動させる。車高切替スイッチ122がロー位置あるいはハイ位置に切り替えられている間、車高は減少あるいは増大し続けさせられ、ノーマル位置に切り替えられている間、車高が維持され、車高が自動調整モードにおいて制御目標とされる設定車高とは異なる任意の高さに調整される。また、制御装置12が自動調整モードで作動する状態で車高切替スイッチ122が上記3つの位置のそれぞれに操作されれば、実際に制御目標とされる設定車高がロー,ノーマルおよびハイの3段階のいずれかに変更される。設定車高は、本実施形態では予め設定され、決まった高さである。
【0026】
なお、車高切替スイッチ122を、2つの位置に節度感をもって切り替えられる2接点スイッチであって、操作力が加えられない限り、切替位置を維持するものとすることも可能である。上記2つの位置はロー位置およびハイ位置である。制御装置12がマニュアル調整モードで作動する状態では、車高切替スイッチ122の操作に応じて実際の車高が車高変更装置10により変更される。車高切替スイッチ122のロー位置への切替えにより車高の減少が指示され、ハイ位置への切替えにより車高の増大が指示され、制御装置12が車高切替スイッチ122の切替位置に応じて実際の車高を変更するように車高変更装置10を作動させる。車高切替スイッチ122がロー位置あるいはハイ位置に切り替えられている間、車高は連続的に減少あるいは増大し続けさせられ、車高が自動調整モードにおいて制御目標とされる設定車高とは異なる任意の高さに調整される。また、制御装置12が自動調整モードで作動する状態で車高切替スイッチ122が操作されれば、実際に制御目標とされる設定車高がローおよびハイの2段階のいずれかに変更される。
【0027】
アンチロック制御コンピュータ124は、制動時における車輪の過大なスリップを抑制するアンチロック制御装置(図示省略)に設けられ、アンチロック制御のために演算した左,右の前輪の各車輪速度(周速)を制御装置12に供給する。ドア等開閉スイッチ126は、車両に設けられた全部のドアおよびトランクリッドについてそれぞれ設けられており、各ドアおよびリッドの開閉状態が検出される。
【0028】
車高センサ128は、本実施形態では、車体後部であって、左右の後輪に対して共通に1つ設けられ、車両の幅方向の中央から左右の車輪のいずれか一方(例えば左側)に寄った位置において、ばね下部材と車体との間に設けられ、その検出信号に基づいて後輪と車体との間の距離が制御装置12において取得される。本実施形態において車高センサ128は、スリット板および複数組、例えば4組のフォトインタラプタを含み、制御装置12のコンピュータにおいて、車高が複数段階、例えば、16段階に検出される。16段階は、大きさの順に、複数組、例えば、5組に分けられる。低過ぎ,ロー,ノーマル,ハイおよび高過ぎの5組である。前記車高切替スイッチ122の切替位置により指示される設定車高のロー,ノーマルおよびハイはそれぞれ、上記ローの組、ノーマルの組およびハイの組にそれぞれ属する段階のうちの1つに設定されている。前記ストッパ装置114により機械的に規制される車高の変更可能範囲の上限および下限はそれぞれ、高過ぎの組の最も高い段階の高さおよび低過ぎの組の最も低い段階の高さとして検出される。
【0029】
また、制御装置12は、自動調整モードランプ136,マニュアル調整モードランプ138,車高調整中断表示ランプ140,車高上限表示ランプ142,車高下限表示ランプ144を制御する。車高がいずれの高さに調整されているかは、車高切替スイッチ122の切替位置によりわかる。制御装置12はまた、コンプレッサリレー150を制御し、コンプレッサ80を駆動するモータ86を制御する。さらに、制御装置12のコンピュータのROMには、図3にフローチャートで示す車高調整ルーチン等、種々のプログラムおよびデータ等が記憶されている。
【0030】
車高調整ルーチンに基づく車高の調整を概略的に説明する。
車両の走行中は、車高調整モード切替スイッチ120の切替位置に関係なく、すなわち運転者による設定に関係なく、制御装置12は自動調整モードで作動し、車高が、車高切替スイッチ122の切替えにより設定された設定車高となるように車高変更装置10が制御される。
【0031】
車両停止時には、自動調整モードが選択されていれば、制御装置12は自動調整モードで作動させられる。また、マニュアル調整モードが選択されていれば、マニュアル調整モードで作動させられ、車高が、車高切替スイッチ122の操作に応じて、自動調整モード時の設定車高とは異なる任意の高さとなるように車高変更装置10が制御される。
【0032】
制御装置12がマニュアル調整モードで作動させられるとき、車高切替スイッチ122がハイ位置あるいはロー位置に切り替えられていれば、車高は増大あるいは減少が許容される間、すなわち車高の増大あるいは減少が開始されてから所定時間が経過するまで、あるいは車高が変更可能範囲内にある間、増大あるいは減少させられ続ける。なお、図6には、マニュアル調整モードにおける車高の変更可能範囲と、自動調整モードにおける3つの目標位置(ロー,ノーマルおよびハイ)との相対関係の一例が示されている。本実施形態では、マニュアル調整モードの車高上限値が自動調整モードのハイより高くされ、マニュアル調整モードの車高下限値が自動調整モードのローより低く設定されている。つまり、マニュアル調整モードにおいては自動調整モードにおけるより広い範囲で車高が調整できるようにされているのである。
【0033】
図3のフローチャートに基づいて説明する。
車高調整ルーチンのステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同じ。)において、車両が走行中であるか否かの判定が行われる。この判定は、アンチロック制御コンピュータ124から供給される左,右前輪の車輪速度に基づいて行われる。左,右前輪の各車輪速度が読み込まれ、それらの平均値が設定値以上であれば、車両の走行速度が所定の速度(後述する「設定速度」と区別するために、「マニュアル状態許可速度」と称する)以上であって走行中であると判定され、設定値より小さければ走行中ではないと判定される。
【0034】
車両が走行中であれば、S1の判定結果がYESになってS2が実行される。S2では、車両の走行速度が設定速度以上であるか否かの判定が行われる。この設定速度は、車両が走行中であるか否かを判定する基準となる前記マニュアル状態許可速度(例えば5km/h)より大きい値(例えば30km/h)に設定されている。車両の走行速度が設定速度以上であると判定されれば、S3において自動調整モードが選択される。なお、S3における自動調整モードと、後に説明する別の形態の自動調整モードとを区別するために、S3の自動調整モードを自動調整モード1と称する。自動調整モード1において、自動調整モード表示ランプ136が点灯させられ、自動調整モードの実行が表示される。車高調整モード切替スイッチ120の切替えにより設定されている車高調整モードが、マニュアル調整モードであっても、車両の走行中は、制御装置12が自動調整モードで作動させられて車高が設定車高に調整されるため、S3では、マニュアル調整モード表示ランプ138が点灯させられていれば、消灯させられて自動調整モード表示ランプ136が点灯させられる。次いで、車高切替スイッチ122の切替位置に基づいて車高調整が行われ、実際の車高が車高切替スイッチ122の切替えにより設定されたロー,ノーマルおよびハイの3つの目標位置ないし設定位置のいずれかに自動で調整される。車高切替スイッチ122が操作されれば、設定車高が車高切替スイッチ122の切替えにより設定される設定車高に変更され、実際の車高が、設定車高になるように車高変更装置10が制御されるのである。
【0035】
自動調整モード1では、車高センサ128の検出信号に基づいて得られる実際の車高と、車高切替スイッチ122の切替えにより設定された設定車高とが比較され、実際の車高の方が低いのであれば、コンプレッサ80が作動させられ、ハイトコントロールバルブ82が開かれてエアばね20,22のエア室66に圧縮エアが供給されて車高が高くされる。エア室66へのエアの供給は、実際の車高が設定車高と等しくなるまで行われ、等しくなれば、ハイトコントロールバルブ82が閉じられてエア室66へのエアの供給が遮断される。また、コンプレッサ80が停止させられる。
【0036】
実際の車高が設定車高より高いのであれば、エアばね20,22のエア室66からエアが流出させられる。ハイトコントロールバルブ82およびエアソレノイドバルブ84が開かれ、エア室66内のエアが大気に流出させられるのである。そして、実際の車高が設定車高と等しくなれば、両バルブ82,84が閉じられる。この際、コンプレッサ80は作動させられない。実際の車高が設定車高と同じであれば、バルブ82,84は閉じられたままとされ、コンプレッサ80は作動させられない。コンプレッサ80が作動させられていれば、停止させられる。
【0037】
車両が走行中でなければ、S1の判定結果がNOになってS4が実行され、自動調整モードが選択されているか否かが判定される。自動調整モードが選択されていれば、S4の判定結果がYESになってS5が実行され、車高調整モード切替スイッチ120が操作されたか否かが判定される。操作されていなければ、判定はNOとなり、S3において自動調整モード1が選択され、実行される。
【0038】
一方、マニュアル調整モードが選択されていれば、S4の判定がNOとなり、S6においてマニュアル調整モードが実行される。S6のマニュアル調整モードは、図4のフローチャートで表されるマニュアル調整ルーチンの実行により実現される。なお、本実施形態におけるマニュアル調整モードは、本出願人による未公開の特願2002−173487の明細書に記載のマニュアル調整と同様の処理が行われるものであるため、ここでは簡単に説明することとする。
【0039】
マニュアル調整ルーチンにおいて、S21が実行され、マニュアル調整モード表示ランプ138の点灯により、マニュアル調整モードが実行されることが表示される。続いて、車高切替スイッチ122の切替位置がノーマル位置であることが検出されれば、S23の実行により、車高が現在の高さ(S22の判定結果がYESになったときの高さ)に維持される。この際、コンプレッサ80が作動させられていれば停止させられ、バルブ82,84は閉状態とされ、エアばね20,22のエア室66への圧縮エアの供給も排出も為されないようにされる。また、車両停止中であってマニュアル調整モードが選択された状態で車高切替スイッチ122がハイ位置に切り替えられている間、S24ないしS28が繰り返し実行され、エアばね20,22が伸長させられ続け、車高が増大させられ続ける。さらに、マニュアル調整モードにおいて車高切替スイッチ122がロー位置に切り替えられていれば、S24の判定結果がNOになってS33ないしS36が実行され車高が減少させられる。バルブ82,84が開かれ、エア室66からエアが大気に流出するようにされるのである。この際、コンプレッサ80は停止させられる。車高切替スイッチ122がロー位置に切り替えられている間、S36が実行されて車高が下げられ続ける。
【0040】
また、本実施形態におけるマニュアル調整モードでは、車高切替スイッチ122の同じ切替位置での車高調整が所定時間以上連続して行われれば、車高調整中断フラグがONにセットされて、車高調整が途中で中断され、停止される(S27,S29ないしS31およびS35,S37ないしS39参照)。車高調整中断フラグは、制御装置12のコンピュータのRAMに設けられており、図示を省略するメインルーチンの初期設定においてOFFにリセットされている。車高調整中断フラグは、ONにセットされることにより、車高調整が中断ないし停止されていることを表し、OFFにリセットされることにより車高調整が中断ないし停止されておらず、車高調整システムが車高調整を行うことができる状態にあることを表す。車高調整中断フラグがONにセットされている場合、車高調整が中断ないし停止されてから所定時間が経過するまで車高調整は行われない(S41,S42参照)。上記時間は、所定時間の連続した通電により上昇したコンプレッサ80とバルブ82,84との少なくとも一方の温度が、その少なくとも一方に再度、電流を供給して作動させても支障が生じないほど低下するのに十分な長さに設定されている。したがって、コンプレッサ80やバルブ82,84の自己発熱による損傷の発生等が回避される。
【0041】
さらに、本マニュアル調整モードでは、実際の車高が制御装置12の制御による変更可能範囲の上限あるいは下限を超えた場合は、車高が制御装置12の制御による変更可能範囲の上限あるいは下限に達したことが表示される(S25,S32およびS33,S40参照)。車高上限表示ランプ142あるいは車高下限表示ランプ144が点灯させられるのである。そして、車高調整が停止させられる(S31およびS39)。車高が上限を超えた場合、コンプレッサ80が停止させられ、ハイトコントロールバルブ82が閉じられるのである。それにより、車高が上限を超えている間は、車高の増大が指示されても、車高は増大させられず、エア室66の圧力が上昇し過ぎてエアばね20,22が損傷することが回避される。車高が上限を超えている場合、車高調整は停止させられるが、逆向きの車高調整を行うことはでき、運転者が車高上限表示ランプ142の点灯に基づいて車高切替スイッチ122をロー位置に切り替えて、車高を低下させることはできる。車高が下限を超えた場合、バルブ82,84が閉じられ、車高がそれ以上、低くならないようにされる。それにより、例えば、車高が異常に低くなって車体が路面上の障害物等と干渉することが回避される。マニュアル調整モードにおいては、車高切替スイッチ122の操作に応じて、前記ストッパ装置114により機械的に規制される車高の変更可能範囲より狭く制限された範囲において車高が増大、減少させられる。実際の車高が制御装置12の制御による変更可能範囲内の高さになれば、車高上限表示あるいは車高下限表示が解除される(S26およびS34)。車高上限表示ランプ142あるいは車高下限表示ランプ144が消灯されるのである。
【0042】
このように制御装置12がマニュアル調整モードで作動可能であり、車高切替スイッチ122の操作に基づいて車高が十分な高さに変更されていれば、例えば、大きな凹凸の存在するモーグル等の不整地においても、車体が路面と干渉しないようにすることができる。ただし、前述から明らかなように、S6のマニュアル調整モードの設定は、車両の停車中(S1の判定がNOである場合)は可能であるが、走行中は不可能である。
【0043】
再び図3の車高調整ルーチンに戻って説明する。
車両の停車中に一旦マニュアル調整モードが選択された後、マニュアル調整モードから自動調整モードに切替え操作が行われた(車高調整モード切替スイッチ120が押された)場合、S1を経てS4の判定がYESとなっても、S5の判定がYESとなるため、S6においてマニュアル調整モードが選択され、実行される。つまり、本実施形態では、車両の停止中にはマニュアル調整モードから自動調整モードへの切替えができないようにされている。車両の停止中には、車高調整モード切替スイッチ120が押されても、制御装置12においてその切替指令が無視されることにより切替えが禁止されているのであり、それによって、運転者の不用意な自動調整モードへの切替えにより不整地で路面干渉が発生してしまい、脱出できなくなることを回避できる。なお、制御装置12において切替指令が検出されても、その指令が記憶されるが、指令の実行が車両の走行が開始されるまで延期されることにより切替えが禁止されるようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態の車高調整ルーチンにおいては、車両が走行中であってS1の判定がYESであっても、その走行速度が前記設定速度に達していなければ、S2の判定結果がNOになってS7が実行される。S7では、車両停止中にマニュアル調整モードが選択されていたか否かが判定される。マニュアル調整モードが選択されていなければ、S7の判定はNOとなり、S3において前述の自動調整モード1が選択される。車両停止中にマニュアル調整モードにされ、その後車両が走行を開始した場合であれば、S7の判定がYESとなってS8において自動調整モード2が実行される。自動調整モード2は、後述するように、前記自動調整モード1とは形態の異なる自動調整モードである。自動調整モード2においても自動調整モード表示ランプ136が点灯させられ、自動調整モードの実行が表示される。車高調整モード切替スイッチ120の切替えにより設定されている車高調整モードがマニュアル調整モードであっても、車両の走行中は、制御装置12が自動調整モードで作動させられて車高が設定車高に調整されるため、S8では、マニュアル調整モード表示ランプ138が点灯させられていれば、消灯させられて自動調整モード表示ランプ136が点灯させられる。なお、自動調整モード表示ランプを2個設け、あるいは点灯状態(色、あるいは連続点灯と点滅とのような点灯形式)を2種類とし、自動調整モード1と自動調整モード2とを区別して表示し得るようにすることも可能である。
【0045】
自動調整モード2では、マニュアル調整モードで調整された際の車高(マニュアル調整の終了時に車高センサ128により検出されていた車高)であって、自動調整モード2への切替時点に現に制御装置12のコンピュータのRAMに設けられている車高メモリに記憶されている車高(「実車高」と称する)に応じた高さになるように、自動調整モード2における目標車高が決定される。この自動調整モード2における目標車高の決定は、図5のフローチャートで表される目標車高決定ルーチンに従って行われる。S60において、実車高が所定値α(第一しきい値と称する)より低いか否かが判定される。第一しきい値αは、本実施形態では、図6に示すように、自動調整モードにおける目標位置のローよりは高いが、ノーマルよりは低い値とされている。実車高が第一しきい値αより低い範囲内にあればS60の判定がYESになり、S61で自動調整モード2における目標位置がローに決定される。実際の車高が、上記設定車高になるように車高変更装置10が制御されるのである。実車高が第一しきい値α以上であればS60の判定はNOとなり、S62において実車高が所定値β(第二しきい値と称する)より高いか否かが判定される。第二しきい値βは、本実施形態では、自動調整モードのハイよりは低いが、ノーマルよりは高い値とされている。実車高が第二しきい値βより高ければ、S62の判定はYESとなり、S63で自動調整モード2における目標位置がハイに決定される。実車高が第一しきい値α以上であり、かつ、第二しきい値β以下である場合には、S60およびS62の判定が共にNOとなって、S64で自動調整モード2における目標位置がノーマルに決定される。以上のようにして、自動調整モード2における目標車高が決定された後の自動車高調整は、前記自動調整モード1におけると同様にして行われる。なお、上記第一,第二しきい値α,βと自動調整モードの3つの目標位置との相対関係は、図6に示された例に限らず、種々の値に設定可能である。
【0046】
このように、停車中にマニュアル調整モードで車高調整が行われた後、車両が走行を開始して走行速度が設定速度以上となるまでの間、自動調整モード2が実行されることにより、走行開始後直ちに車高が変わること、および車高が大幅に変わることが回避され、車両と路面との干渉が回避され、また、運転者等の違和感が低減される。その後、車両の走行速度が設定速度以上となれば、前述の自動調整モード1が選択,実行されることとなる。この際、自動調整モード2において決定された目標車高が、運転者による車高切替スイッチ122の操作により設定された目標車高と同じであれば、自動調整モード2から自動調整モード1に移行しても実際の車高は変化しないが、変化する場合もあり、その場合に、自動調整モードが2つ設定されていることの実益が生じる。例えば、車高切替スイッチ122の操作により設定された目標車高がローであり、自動調整モード2において決定された目標車高がハイである場合には、車両が走行を開始しても、走行速度が設定速度より小さい間は、車高がハイに自動調整され、走行速度が設定速度以上となれば、車高がローに自動調整されるのである。したがって、設定速度を、車両が不整地内を走行している間にはそれ以上にはされず、通常の路面上を走行し始めればそれ以上にされる走行速度に設定しておけば、不整地内を走行している間は、車高が高く保たれて路面と車体との干渉が良好に回避され、通常路面を走行し始めれば、自動的に車高が低くされて走行安定性が確保されることになる。しかも、車両が不整地内を走行している間も、マニュアル調整された車高がハイより高い場合には、自動的にハイまで低下させられて、不整地での走行安定性も得られる。
【0047】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、車高調整モード切替スイッチ120がモード切替操作部材を構成し、車高切替スイッチ122がマニュアル操作部材を構成し、制御装置12のS1,S4,S5を実行する部分がモード切替禁止手段を構成し、S1,S2,S7を実行する部分が自動モード切替手段を構成している。また、制御装置12のS60ないしS64を実行する部分が目標車高決定手段たるマニュアル調整車高依拠目標車高決定手段を構成するとともに、段階割当手段を構成している。
【0048】
本実施形態において、車両が走行を開始後に走行速度が始めて設定速度以上となった場合に自動で自動調整モードに切り替えられていたが、これは不可欠ではない。具体的には、車高調整ルーチンのS2を省略することができ、車両が走行を開始した後、比較的速やかに通常の自動調整モードへの切替えが行われてもよいのである。例えば、まず自動調整モード2に切り替えられて設定時間が経過した時点で、自動調整モード1に切り替えられるようにすることができる。
【0049】
なお、本実施形態において、特願2002−173487の明細書に記載のように、ドア等開閉スイッチからの信号に基づいてドアあるいはトランクリッドが1つでも開いていることが検出されれば車高調整を停止,中断し、全部のドア等が閉じられていて、かつその状態が設定時間継続すれば車高調整を行うための処理が実行されるようにすることも可能である。
【0050】
また、制御装置12が自動調整モードで作動させられる場合、車高は予め設定された3つの設定車高のいずれかに制御されるようにされていたが、例えば、制御装置がマニュアル調整モードで作動させられた状態で得られた車高が、自動調整モードでの作動時に維持されるようにしてもよい。この車高が設定車高とされて車高の自動調整が行われるようにするのである。
【0051】
さらに、本実施形態において、車両停車中にマニュアル調整モードにされた場合には、車両の走行が開始されるまでは自動調整モードへの切替えが禁止されていたが、このことは不可欠ではない。すなわち、図3の車高調整ルーチンにおいてS5を省略することも可能なのである。
【0052】
自動調整モードにおける複数段階の設定車高がマニュアル調整車高に応じて臨時に変更されるようにすることも可能である。その一例を、図7に示す。自動調整モードにおいて設定車高がロー,ノーマルおよびハイの3段階に設定可能であるとする。仮に、図7 (a)に示すように、前記自動調整モード1における設定車高がローに設定されている場合に、マニュアル調整モードにおいてマニュアル調整車高Mに調整されていたとすれば、前記自動調整2における目標車高Aが図示の位置に決定される。符号Dはマニュアル調整車高Mと設定車高ローとの差であり、符号kは0より大きく1より小さい範囲から適宜選定される係数である。係数kは可変値でも固定値でもよい。また、図7 (b)に示すように、自動調整モード1における設定車高がノーマルに設定されている場合に、マニュアル調整モードにおいてマニュアル調整車高Mに調整されていたとすれば、自動調整2における目標車高Aが図示の位置に決定される。つまり、本実施形態においては、自動調整モード2における目標車高Aが、自動調整モードにおける設定車高とマニュアル調整モードにおける調整車高Mとの中間の値に決定されるのであり、自動調整モード1における設定車高(本実施形態では、ロー,ノーマルおよびハイ)がそれぞれマニュアル調整車高Mに応じて臨時に変更されると考えることができる。
【0053】
また、自動調整モードでの複数の設定車高とマニュアル調整モードでの車高の増大,減少との少なくとも一方は、ランプ等のインジケータにより表示するようにしてもよい。また、実際の車高は車高検出装置により連続的に検出されるようにしてもよく、その連続的に検出された車高が連続的に表示されるようにしてもよい。
【0054】
さらに、自動調整モードでの設定車高は、1種類でもよく、4種類以上でもよい。
【0055】
また、マニュアル操作部材は、複数の車高設定スイッチにより構成してもよい。例えば、ON操作により、自動調整モードでの設定車高がそれぞれ異なる高さに設定される車高設定スイッチを複数設けるのである。その場合、それら複数の車高設定スイッチの各々に、マニュアル調整モードでの車高の増大(,維持)および減少を割り振って、マニュアル調整モードにおいて車高設定スイッチの操作に応じて実際の車高が変更されるようにすることもできる。
【0056】
また、車高減少時および車高調整中断時にコンプレッサを停止させることは不可欠ではなく、作動させたままでもよい。この際、コンプレッサの作動により作られる圧縮エアはエアソレノイドバルブから流出させられる。コンプレッサを停止させなければ、例えば、車高増大時に、直ちにハイトコントロールバルブを開けてエア室にエアが供給されるようにすることができる。
【0057】
さらに、本発明は、車両の左後輪側と右後輪側とにおいてそれぞれ車高を独立に調整する車高調整装置、車両の前部の車高を調整する車高調整装置、車両の左右の前輪側および左右の後輪側においてそれぞれ車高が調整される車高調整装置等にも適用することができる。
【0058】
また、本発明は、エア以外の作動流体、例えば、作動油を用いた油圧式車高調整装置にも適用することができる。油圧式車高調整装置は、例えば、特開平11−190629号公報に開示されているように、油圧シリンダを備え、作動油給排装置による油圧シリンダへの作動油の供給および排出により車高が調整されるように構成することができる。油圧シリンダは、コイルスプリング,可変オリフィスおよびアキュムレータと協働して、車輪に対して車体を弾性的に支承するとともに車体の振動を減衰させるショックアブソーバとしても機能するようにされることが望ましい。
【0059】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施形態である車高調整装置を概略的に示す回路図である。
【図2】上記車高調整装置を構成する車高変更装置のエアばねをショックアブソーバと共に示す正面図(一部断面)である。
【図3】上記車高調整装置を構成する制御装置の主体を成すコンピュータに記憶された車高調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図4】上記コンピュータに記憶されたマニュアル調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図5】上記コンピュータに記憶された目標車高決定ルーチンを表すフローチャートである。
【図6】本実施形態におけるマニュアル調整モードの車高調整可能範囲と自動調整モードの3つの目標位置(目標車高)との相対関係を表す図である。
【図7】本発明の別の実施形態における、マニュアル調整モードの調整車高に応じた自動調整モードの目標車高の決め方を説明するための図である。
【符号の説明】
10:車高変更装置 12:制御装置 20,22:エアばね 24:エア給排装置 120:車高調整モード切替スイッチ 122:車高切替スイッチ

Claims (6)

  1. 際の車高が予め複数段階のいずれかに選択的に設定された目標車高と等しくなるように自動で車高を調整する自動調整モードと、マニュアル操作部材の操作に応じて車高を前記自動調整モードの目標車高とは異なる任意の高さに調整可能なマニュアル調整モードとで作動可能な車高調整装置において、
    当該車高調整装置が搭載された車両の停車中に前記マニュアル調整モードにされた後、車両の走行速度が始めてマニュアル状態許可速度以上になった場合に、実際の車高をその時点の実車高に応じた大きさに決定された車高に調整する手段と、
    その手段による車高調整の後、前記車両の走行速度が始めて前記マニュアル状態許可速度より大きい値に予め設定された設定速度以上となった場合に前記自動調整モードに自動で切り替える手段と
    を設けたことを特徴とする車高調整装置。
  2. 車両の走行速度が始めてマニュアル状態許可速度以上になった前記場合における目標車高を、前記停車中におけるマニュアル調整モードで調整された車高に応じて決定するマニュアル調整車高依拠目標車高決定手段を含む請求項1に記載の車高調整装置。
  3. 前記マニュアル調整モードにおいて車高が連続的に調整可能であり、前記マニュアル調整車高依拠目標車高決定手段が、車両の走行速度が始めてマニュアル状態許可速度以上になった前記場合における目標車高を、前記マニュアル調整モードにおける連続的な調整車高可能範囲を複数のしきい値により前記複数段階の目標車高の各々がそれぞれ属する複数の分割領域に分割した場合に、それら複数段階の目標車高のうち前記マニュアル調整モードで調整された車高と同じ分割領域に属するものに決定する段階割当手段を含む請求項2に記載の車高調整装置。
  4. 前記マニュアル調整モードにおいて車高が連続的に調整可能であり、前記マニュアル調整車高依拠目標車高決定手段が、車両の走行速度が始めてマニュアル状態許可速度以上になった前記場合における目標車高を、前記マニュアル調整モードにおいて調整された車高と前記複数段階のいずれかに予め設定されている目標車高との差に、0より大きく1より小さい範囲から選択された係数を掛けた大きさに決定する手段を含む請求項2に記載の車高調整装置。
  5. 前記車両の停車中は前記マニュアル調整モードの設定が可能であるが、車両の走行中は前記マニュアル調整モードの設定が不可能である請求項1ないしのいずれかに記載の車高調整装置。
  6. 前記設定速度が、前記車両が不整地内を走行している間にはそれ以上にはされず、通常の路面上を走行し始めればそれ以上にされる走行速度に設定された請求項1ないし5のいずれかに記載の車高調整装置。
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