JP4161476B2 - 金型およびその製造方法並びに異方導電性シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型およびその製造方法並びに異方導電性シートの製造方法に関し、更に詳しくは、例えば電子部品などの回路装置相互間の電気的接続や、プリント回路基板、半導体集積回路などの回路装置の電気的検査に用いられるコネクターとして好適な異方導電性シートを成形するために好ましく用いられる金型およびその製造方法、並びにこの金型を用いた異方導電性シートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
異方導電性シートは、厚み方向にのみ導電性を示すもの、または厚み方向に加圧されたときに厚み方向にのみ導電性を示す加圧導電性導電部を有するものであり、ハンダ付けあるいは機械的嵌合などの手段を用いずにコンパクトな電気的接続を達成することが可能であること、機械的な衝撃やひずみを吸収してソフトな接続が可能であることなどの特長を有するため、このような特長を利用して、例えば電子計算機、電子式デジタル時計、電子カメラ、コンピューターキーボードなどの分野において、回路装置、例えばプリント回路基板とリードレスチップキャリアー、液晶パネルなどとの相互間の電気的な接続を達成するためのコネクターとして広く用いられている。
【0003】
また、プリント回路基板や半導体集積回路などの回路装置の電気的検査においては、検査対象である回路装置の一面に形成された被検査電極と、検査用回路基板の表面に形成された検査用電極との電気的な接続を達成するために、回路装置の被検査電極領域と検査用回路基板の検査用電極領域との間に異方導電性シートを介在させることが行われている。
【0004】
従来、このような異方導電性シートとしては、種々の構造のものが知られており、例えば特開昭51−93393号公報等には、金属粒子をエラストマー中に均一に分散して得られる異方導電性シート(以下、これを「分散型異方導電性シート」という。)が開示され、また、特開昭53−147772号公報等には、導電性磁性体粒子をエラストマー中に不均一に分布させることにより、厚み方向に伸びる多数の導電部と、これらを相互に絶縁する絶縁部とが形成されてなる異方導電性シート(以下、これを「偏在型異方導電性シート」という。)が開示され、更に、特開昭61−250906号公報等には、導電部の表面と絶縁部との間に段差が形成された偏在型異方導電性シートが開示されている。
そして、偏在型異方導電性シートは、接続すべき回路装置の電極パターンと対掌のパターンに従って導電部が形成されているため、分散型異方導電性エラストマーシートに比較して、接続すべき電極が小さいピッチで配置されている回路装置などに対しても電極間の電気的接続を高い信頼性で達成することができる点で、有利である。
【0005】
上記のような偏在型異方導電性シートを製造する方法としては、特殊な異方導電性シート成形金型を用い、この異方導電性シート成形金型の成形空間内に、硬化されて弾性高分子物質となる高分子物質用材料中に磁性を示す導電性粒子が含有されてなるシート成形材料層を形成し、このシート成形材料層に対してその厚み方向に強度分布を有する磁場を作用させ、その磁場の作用によって導電性粒子を移動させて導電部となる部分に集合させ、更には導電性粒子を厚み方向に並ぶよう配向させ、その状態で当該シート成形材料層を硬化する方法が知られている。
【0006】
図18は、従来の異方導電性シートの製造方法に用いられる異方導電性シート成形金型の一例における構成を示す説明用断面図である。この異方導電性シート成形金型は、それぞれ全体の形状が平板状であって互いに対応する上型80と下型85とにより構成されており、上型80および下型85の各々においては、鉄、ニッケル等の強磁性体からなる磁性基板81,86上に、金型内の磁場に強度分布を生じさせるための鉄、ニッケル等よりなる強磁性体部分82,87と、銅等の非磁性金属若しくは樹脂よりなる非磁性体部分83,88とをモザイク状に配列した層が形成されている。
このような異方導電性シート成形金型によれば、上型80の上面および下型85の下面に電磁石を配置してこれを作動させることにより、当該金型内に形成されたシート成形材料層に対して、磁性基板81,86および強磁性体部分82,87を介して強度分布を有する磁場を作用させることができる。
【0007】
しかしながら、上記の異方導電性シート成形金型においては、以下のような問題がある。
図19は、図18に示す異方導電性シート成形金型によって成形空間に作用する磁場の強度分布を示す説明図である。この図に示すように、成形空間Sにおける強磁性体部分82,87間の領域では、作用される磁場の強度は、中央域において最も小さく、周辺域に向かうに従って大きくなる。そのため、図20に示すように、シート成形材料層90中の導電性粒子Pは、強磁性体部分82,87間の導電部となる部分における周辺域に集合しやすくなる結果、所期の導電性を有する導電部を形成することが困難である。
【0008】
このような問題を解決するため、強磁性体よりなる半球状の磁性体部分が配列されてなる異方導電性シート成形金型および球状の磁性部材が配列されてなる異方導電性シート成形金型が提案されている(特開平10−134868号公報参照)。
このような異方導電性シート成形金型によれば、上型の磁性部材と下型の磁性部材との間の領域において、面方向に一様な強度を有する磁場を作用させることができるため、シート成形材料層中の導電性粒子を、磁性部材間に位置された導電部となる部分に面方向において均一に集合させることができ、その結果、所期の導電性を有する導電部を形成することができる。
【0009】
しかしながら、このような半球状の磁性体部分または球状の磁性部材を有する異方導電性シート成形金型において、強磁性体部分または磁性部材が、その配列ピッチが小さくて複雑なパターンのものである場合には、以下のような問題がある。
【0010】
(1)半球状の磁性体部分を有する異方導電性シート成形金型は、例えば次のようにして製造される。すなわち、強磁性体よりなる板状体を用意し、この板状体に対して、フォトリソグラフィーおよびエッチング処理を施して或いは切削加工を施して、当該板状体から非磁性体部分を構成すべき部分を除去することにより、強磁性体部分となる例えば四角柱状の突出部分を形成し、この突出部分の先端を例えば放電加工機によって半球状に加工し、その後、除去された非磁性体部分を構成すべき部分に樹脂を流し込むか若しくは銅等の非磁性金属をメッキすることによって非磁性体を充填する。
然るに、このような製造方法において、フォトリソグラフィーおよびエッチング処理によって、板状体から非磁性体部分を構成すべき部分を除去する場合には、サイドエッチングが生じるために、配列ピッチが小さい強磁性体部分を形成することは相当に困難である。
一方、切削加工によって、板状体から非磁性体部分を構成すべき部分を除去する場合には、目的とする強磁性体部分の配列パターンが複雑なものであるときには、手間や時間がかかりすぎ、従って、得られる異方導電性シート成形金型は、製造コストの高いものとなる。
更に、形成すべき強磁性体部分がその配列ピッチが小さくて複雑なパターンのものである場合には、半球状に加工することは極めて困難である。
【0011】
(2)球状の磁性体部分を有する異方導電性シート成形金型は、例えば次のようにして製造される。すなわち、例えばアルミニウムよりなる非磁性基板に、形成すべき強磁性体部分の配列パターンに対応するパターンに従って孔を形成し、この孔の開口に球状の磁性体を載置してこれをプレスすることにより、当該磁性体を当該孔内に圧入して固定し、その後、この非磁性基板に磁性基板を接着する。然るに、このような製造方法において、目的とする金型の磁性部材の配列ピッチが小さい場合には、当該強磁性体部分の配列パターンに対応するパターンの孔を非磁性基板に形成することが困難である。
また、多数の球状の磁性体の各々を、非磁性基板の孔の開口に載置する作業は極めて煩雑である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その第1の目的は、製造が容易であり、ピッチが小さくて複雑なパターンの導電部を有する異方導電性シートを成形することが可能で、しかも、シート成形材料層における特定の部分例えば導電部となる部分において、面方向に一様な磁場を作用させることができる金型を提供することにある。
本発明の第2の目的は、ピッチが小さくて複雑なパターンの導電部を有する異方導電性シートを成形することが可能で、しかも、シート成形材料層における特定の部分例えば導電部となる部分において、面方向に一様な磁場を作用させることができる金型を、容易に製造することができる方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、形成すべき導電部のピッチが小さくて複雑なパターンを有するものであっても、所期の導電性が得られる異方導電性シートを確実に製造することができる方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の金型は、成形面を形成する表面を有し、その裏面に複数の錐状の凹所が形成された非磁性基板と、
この非磁性基板の凹所の各々に保持された強磁性体よりなる球状の磁性部材とを具えてなることを特徴とする。
この金型においては、前記非磁性基板における凹所は、異方性エッチングによって形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の金型は、異方導電性シート成形するための金型として好ましく用いることができる。
本発明の金型においては、前記非磁性基板は、単結晶シリコンよりなるものであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の金型においては、非磁性基板の表面には、その裏面に形成された磁性部材を保持するための凹所に対応して、成形体に突出部を形成するための凹所が形成されており、当該凹所の形状が、当該非磁性基板の表面から裏面に向かうに従って断面積が小さくなる錐台状であることが好ましい。
【0016】
本発明の金型の製造方法は、上記の金型を製造する方法であって、
異方性エッチングが可能な板状の非磁性基板材料を用意し、この非磁性基板材料の一面に異方性エッチング処理を行うことにより、複数の錐状の凹所を形成し、これらの凹所の各々に球状の磁性部材を受容させて接着する工程を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の金型の製造方法においては、非磁性基板材料の他面から磁力を作用させた状態で、当該非磁性基板材料の凹所の各々に磁性部材を受容させることが好ましい。
【0018】
本発明の異方導電性シートの製造方法は、厚み方向に伸びる複数の導電部が絶縁部によって相互に絶縁された状態で配置されてなる異方導電性シートを製造する方法であって、
上記の金型を用い、
この金型内に、硬化されて弾性高分子物質となる弾性高分子用材料中に磁性を示す導電性粒子が含有されてなるシート成形材料を充填し、
このシート成形材料に前記金型における磁性部材を介して磁場を作用させると共に、当該シート成形材料を硬化処理する工程を有することを特徴とする。
【0019】
【作用】
(1)非磁性基板における磁性部材が保持された凹所は錐状であるため、当該凹所に球状の磁性部材を容易に受容させることができる。このような凹所は、結晶方位に沿ってエッチングされる異方性エッチングによって形成することができ、その形成が容易で、かつ、高い寸法精度を有するものである。従って、成形すべき異方導電性シートの導電部のピッチが小さくて複雑なパターンのものであっても、当該導電部のパターンに対応するパターンに従って磁性部材を配列することができる。
【0020】
(2)磁性部材は、球状の形状を有するため、シート成形材料層における特定の部分例えば導電部となる部分において、面方向に一様な磁場を作用させることができる。従って、このような金型により、異方導電性シートを製造する場合には、シート成形材料層中の導電性粒子を、当該シート成形材料層の導電部となる部分に面方向において均一に集合させることができ、その結果、所期の導電性を有する導電部を形成することができる。
【0021】
(3)非磁性基板の表面に、裏面に形成された磁性部材を保持するための凹所に対応して、異方導電性シートの突出部を形成するための凹所を形成し、その形状を錐台状とすることにより、当該凹所に適合する形状すなわち錐台状の突出部を有する異方導電性シートを成形することができる。そして、このような突出部を有する異方導電性シートによれば、当該突出部が加圧されたときに当該突出部の周辺に作用する応力を緩和することができるので、高い耐久性が得られる。
【0022】
(4)金型の製造方法において、非磁性基板材料の他面から磁力を作用させることにより、当該非磁性基板材料の凹所の各々に磁性部材を容易に受容させることができる。
また、磁力の作用によって、磁性部材の各々が非磁性基板材料の凹所の各々に一時的に固定されるため、例えば接着剤によって、非磁性基板材料の凹所の各々に磁性部材を接着する際に、当該凹所から磁性部材が離脱することが防止される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る異方導電性シート成形金型の一例における上型の具体的構成を示す説明用断面図である。この異方導電性シート成形金型における上型は、異方性エッチングが可能な材料よりなる非磁性基板10を有し、その表面(図1において下面)によって成形面が形成されている。この非磁性基板10における成形面である表面には、成形すべき異方導電性シートにおける突出部を形成するための突出部形成用凹所11が形成されている。この突出部形成用凹所11は、異方性エッチングによって形成されたものであり、当該突出部形成用凹所11の形状は、当該非磁性基板の表面側から裏面側に向かうに従って断面積が小さくなる四角錐台状である。
また、この例においては、非磁性基板10の表面における突出部形成用凹所11以外の領域には、保護膜12が形成されている。この保護膜12は、突出部形成用凹所11を異方性エッチングによって形成するためのレジストとして利用されたものである。
【0024】
非磁性基板10における裏面には、その表面に形成された突出部形成用凹所11に対応する位置に、後述する磁性部材20を保持するための磁性部材保持用凹所15が形成されている。この磁性部材保持用凹所15は、異方性エッチングによって形成されたものであり、当該磁性部材保持用凹所15の形状は、当該非磁性基板の裏面側から表面側に向かうに従って断面積が小さくなる四角錐状である。
また、この例においては、非磁性基板10の裏面における磁性部材保持用凹所15以外の領域には、保護膜16が形成されている。この保護膜16は、磁性部材保持用凹所15を異方性エッチングによって形成するためのレジストとして利用されたものである。
【0025】
非磁性基板10の磁性部材保持用凹所15の各々には、強磁性体よりなる球状の磁性部材20が保持されている。具体的には、磁性部材20が非磁性基板10の磁性部材保持用凹所15に受容され、この状態で接着材21によって接着されている。
そして、非磁性基板10の裏面に形成された保護膜16および磁性部材20上には、例えば硬化性樹脂材料(硬化物)よりなる接着層25を介して、強磁性体よりなる磁性基板30が一体的に設けられている。
【0026】
非磁性基板10を構成する材料としては、異方性エッチングが可能なものであれば特に限定されず、例えば単結晶シリコン、ゲルマニウムなどを用いることができるが、異方性エッチングによって所期の寸法精度を有する突出部形成用凹所11および磁性部材保持用凹所15が確実に得られると共に、高い耐久性が得られる点で、単結晶シリコンを用いることが好ましく、さらに、異方性エッチングによって一層高い寸法精度を有する突出部形成用凹所11および磁性部材保持用凹所15が得られ、かつ面精度の高い成形面が得られる点で、純度の高いものを用いることが好ましく、特に、非磁性基板10としては、シリコンウエハを加工することにより得られるものを用いることが好ましい。
【0027】
非磁性基板10の厚み(突出部形成用凹所11および磁性部材保持用凹所15が形成されていない個所の厚み)は、例えば0.2〜1.0mm、好ましくは0.25〜0.5mmである。
また、非磁性基板10における磁性部材保持用凹所15が形成された個所の最小厚み(この例では、突出部形成用凹所11の底面と磁性部材保持用凹所15の底部との間の厚み)は、1mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mm以下、特に好ましくは0.2mm以下である。この最小厚みが1mmを超える場合には、当該金型内に形成されたシート成形材料層における導電部となる部分に、強度の大きい磁場を作用させることが困難となることがある。
突出部形成用凹所11の深さは、成形すべき異方導電性シートの突出部の突出高さに応じて適宜設定され、例えば0.05〜0.25mm、好ましくは0.075〜0.15mmである。
また、磁性部材保持用凹所11の深さは、用いられる磁性部材20の直径などを考慮して適宜設定される。
【0028】
保護膜12,16を構成する材料としては、成形時の耐久性、非磁性基板10との密着性および異方性エッチング処理に用いられるエッチング液に対する耐性の観点から、クロム、二酸化珪素などの非磁性無機材料を用いることが好ましい。また、保護膜12,16の厚みは、例えば0.1〜2μm、好ましくは0.2〜1μmである。
【0029】
磁性部材20を構成する強磁性体としては、ニッケル、鉄、コバルトまたはこれらの合金などを用いることができる。
磁性部材20の直径は、成形すべき異方導電性シートにおける導電部の径に応じて適宜選択されるが、例えば0.05〜0.8mm、好ましくは0.1〜0.4mmである。
【0030】
接着材21を形成するための材料としては、種々の熱硬化性または放射線硬化性の樹脂材料を用いることができ、その具体例としては、液状エポキシ樹脂材料、液状ポリイミド樹脂材料、液状ビスマレイミドトリアジン樹脂材料などが挙げられる。
接着層25を構成する硬化性樹脂材料としては、種々の熱硬化性または放射線硬化性の樹脂材料を用いることができるが、高い耐熱性を有するものを用いることが好ましく、その具体例としては、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂、ガラス繊維補強型ポリイミド樹脂、ガラス繊維補強型ビスマレイミドトリアジン樹脂などが挙げられる。また、接着層25の厚み(磁性部材20が配置されていない部分の厚み)は、例えば0.1〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.3mmである。
磁性基板30を構成する強磁性体としては、鉄、ニッケル、コバルトまたはこれらの合金などを用いることができる。また、磁性基板30の厚みは、例えば0.5〜10mm、好ましくは1〜8mm、さらに好ましくは2〜6mmである。
【0031】
また、この実施の形態に係る異方導電性シート成形金型は、上記の上型と、これと対となる下型とによって構成される。この下型は、基本的に上型と同様の構成であるため図示しないが、この例においては、下型の非磁性基板の表面には凹所が形成されておらず、従って、当該下型の表面は平坦面とされている。
【0032】
上記の異方導電性シート成形金型によれば、非磁性基板10における磁性部材保持用凹所15が四角錐状であるため、当該磁性部材保持用凹所15に球状の磁性部材20を容易に受容させることができる。そして、この磁性部材保持用凹所15は、例えば単結晶シリコンの結晶方位に沿ってエッチングされる異方性エッチングによって形成されているため、当該磁性部材保持用凹所15のピッチが小さくて複雑なパターンのものであっても、その形成が容易であり、しかも、高い寸法精度を有するものとなるので、磁性部材20を小さいピッチで複雑なパターンに配列することができる。従って、当該異方導電性シート成形金型内に形成されるシート成形材料層に、磁性基板30および磁性部材20を介して磁場を作用させることにより、ピッチが小さくて複雑なパターンの導電部を有する異方導電性シートを成形することができる。
【0033】
また、磁性部材20は、球状の形状を有するため、当該異方導電性シート成形金型内に形成されたシート成形材料における導電部となる部分に、その面方向にわたって一様な強度の磁場を作用させることができ、これにより、シート成形材料層中の導電性粒子を、当該シート成形材料層の導電部となる部分に面方向において均一に集合させることができ、その結果、所期の導電性を有する導電部を形成することができる。
【0034】
また、非磁性基板10の成形面である表面には、磁性部材保持用凹所15に対応する位置に、異方導電性シートの突出部を形成するための突出部形成用凹所11が形成されており、その形状は、異方性エッチングによって形成されることにより四角錐台状とされているため、当該突出部形成用凹所11に適合する形状すなわち四角錐台状の突出部を有する異方導電性シートを成形することができる。そして、このような突出部を有する異方導電性シートによれば、当該突出部が加圧されたときに当該突出部の周辺に作用する応力を緩和することができるので、高い耐久性が得られる。
【0035】
上記の異方導電性シート成形金型は、以下のようにして製造することができる。
先ず、図2に示すように、表面および裏面に二酸化珪素よりなる保護膜12,16が形成された、例えば単結晶シリコンよりなる板状の非磁性基板材料10Aを用意し、図3に示すように、この非磁性基板材料10Aの表面および裏面に形成された保護膜12,16の各々の表面に、フォトリソグラフィーの手法により、当該保護膜16をエッチング処理するためのレジスト膜17,18を形成する。ここで、非磁性基板材料10Aの裏面(図3において上面)側に形成されたレジスト膜18には、製造すべき異方導電性シート成形金型における磁性部材20の配置パターンに対応するパターンに従って複数の矩形の開口18Kが形成されている。
【0036】
次いで、図4に示すように、保護膜16に対して、レジスト膜18の開口18Kを介してエッチング処理を行うことにより、非磁性基板材料10Aの裏面に形成された保護膜16に、レジスト膜18の開口18Kに連通する矩形の開口16Kを形成する。
そして、図5に示すように、保護膜12,16からレジスト膜17,18を除去した後、非磁性基板材料10Aの裏面に対して、保護膜12,16をレジストとして利用し、当該保護膜16の開口16Kを介して異方性エッチング処理を行うことにより、図6に示すように、非磁性基板材料10Aの裏面に、四角錐状の磁性部材保持用凹所15を形成する。
【0037】
以上において、非磁性基板材料10Aとしては、シリコンウエハをそのままの状態で或いは適宜の形状に加工した状態で用いることが好ましい。
保護膜16をエッチング処理するためのエッチング液としては、フッ酸などを用いることができる。
非磁性基板材料10Aを異方性エッチング処理するためのエッチング液としては、水酸化カリウム水溶液、エチレンジアミンなどを用いることができる。
また、非磁性基板材料10Aの異方性エッチング処理の条件、例えば処理温度、処理時間は、エッチング液の種類、形成すべき磁性部材保持用凹所15の深さなどに応じて適宜設定されるが、例えば処理温度は60〜85℃である。
【0038】
次いで、図7に示すように、非磁性基板材料10Aの表面側の保護膜12上に磁石40を配置して当該非磁性基板材料10Aの表面から磁力を作用させた状態で、当該非磁性基板材料10Aの磁性部材保持用凹所15の各々に球状の磁性部材20を受容させる。ここで、磁性部材20の各々は、磁石40からの磁力によって、非磁性基板材料10Aの磁性部材保持用凹所15に一時的に固定された状態である。
そして、図8に示すように、非磁性基板材料10Aの磁性部材保持用凹所15と磁性部材20との間の空隙に接着材21を形成することにより、非磁性基板材料10Aの磁性部材保持用凹所15に磁性部材20を接着し。その後、図9に示すように、非磁性基板材料10Aの表面側の保護膜12から磁石40を取り外す。
【0039】
次いで、図10に示すように、磁性部材20上に熱硬化性樹脂プリプレグシートよりなる接着層用材料25Aおよび磁性基板30をこの順で配置し、この状態で熱圧着処理することにより、図11に示すように、保護膜16および磁性部材20上に、接着層25を介して磁性基板30が一体的に被着される。
以上において、熱圧着処理の条件は、熱硬化性樹脂プリプレグシートの種類に応じて適宜設定されるが、例えば処理温度が130〜170℃、処理圧力が3〜10kg/cm2 である。
【0040】
その後、図12に示すように、フォトリソグラフィーの手法により、非磁性基板材料10Aの表面側の保護膜12上に、レジスト膜19を形成する。ここで、レジスト膜19には、形成すべき突出部形成用凹所11に対応して複数の開口19Kが形成されている。
次いで、保護膜12に対して、レジスト膜19の開口19Kを介してエッチング処理を行うことにより、図13に示すように、当該保護膜12にレジスト膜19の開口19Kに連通する開口12Kが形成される。そして、図14に示すように、レジスト膜19を除去した後、非磁性基板材料10Aの表面に対して、保護膜12をレジストとして利用し、当該保護膜12の開口12Kを介して異方性エッチング処理を行うことにより、四角錐台状の突出部形成用凹所11が形成された非磁性基板10が形成される。
以上において、保護膜16をエッチング処理するためのエッチング液としては、フッ酸などを用いることができる。
非磁性基板材料10Aを異方性エッチング処理するためのエッチング液としては、水酸化カリウム水溶液、エチレンジアミンなどを用いることができる。
また、非磁性基板材料10Aの異方性エッチング処理の条件、例えば処理温度、処理時間は、エッチング液の種類、形成すべき突出部形成用凹所11の深さなどに応じて適宜設定されるが、例えば処理温度は60〜85℃である。
【0041】
このようにして、図1に示す構成の異方導電性シート成形金型における上型が得られる。
そして、上記の上型の製造と基本的に同様にして下型が製造され、以て、目的とする異方導電性シート成形金型が製造される。
【0042】
このような製造方法によれば、非磁性基板材料10Aの裏面に対して、単結晶シリコンの結晶方位に沿ってエッチングされる異方性エッチング処理を行うことにより、高い寸法精度を有する磁性部材保持用凹所15を容易に形成することができ、この磁性部材保持用凹所15に球状の磁性部材20を保持させることにより、目的とする磁性部材20の配列ピッチが小さくて複雑なパターンであっても、磁性部材20の各々を非磁性基板10に所期の配列パターンに従って配置することができる。
また、磁性部材20として球状のものを用いるため、シート成形材料層における導電部となる部分にその面方向にわたって一様な強度の磁場を作用させることができる異方導電性シート成形金型が得られる。
また、非磁性基板材料10Aの表面に対して、異方性エッチング処理を行うことにより、高い寸法精度を有する四角錐台状の突出部形成用凹所11を容易に形成することができる。
【0043】
また、非磁性基板材料10Aの表面側の保護膜12上に磁石40を配置し、この磁石40によって非磁性基板材料10Aの表面から磁力を作用させることにより、当該非磁性基板材料10Aの磁性部材保持用凹所15の各々に磁性部材20を容易に受容させることができる。従って、磁性部材20の配列を極めて容易に達成することができる。
また、磁石40からの磁力の作用によって、磁性部材20の各々を非磁性基板材料10Aの磁性部材保持用凹所15の各々に一時的に固定することができるため、接着材16によって磁性部材20の各々を非磁性基板材料10Aの磁性部材保持用凹所15の各々に接着する際に、磁性部材保持用凹所15から磁性部材20が離脱することを防止することができる。
【0044】
本発明の異方導電性シート成形金型によれば、例えば以下のようにして異方導電性シートを製造することができる。
先ず、硬化されて弾性高分子物質となる高分子物質用材料中に磁性を示す導電性粒子が分散されてなるシート成形材料を調製し、図15に示すように、シート成形材料を異方導電性シート成形金型の成形空間内に注入してシート成形材料層1Aを形成する。
【0045】
シート成形材料の調製に用いられる硬化性の高分子物質用材料としては、種々のものを用いることができ、その具体例としては、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムなどの共役ジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物、スチレン−ブタジエン−ジエンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体ゴムおよびこれらの水素添加物、クロロプレン、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。
以上において、得られる異方導電性シートに耐候性が要求される場合には、共役ジエン系ゴム以外のものを用いることが好ましく、特に、成形加工性および電気特性の観点から、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0046】
シリコーンゴムとしては、液状シリコーンゴムを架橋または縮合したものが好ましい。液状シリコーンゴムは、その粘度が歪速度10-1secで105 ポアズ以下のものが好ましく、縮合型のもの、付加型のもの、ビニル基やヒドロキシル基を含有するものなどのいずれであってもよい。具体的には、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム、メチルフェニルビニルシリコーン生ゴムなどを挙げることができる。
【0047】
これらの中で、ビニル基を含有する液状シリコーンゴム(ビニル基含有ポリジメチルシロキサン)は、通常、ジメチルジクロロシランまたはジメチルジアルコキシシランを、ジメチルビニルクロロシランまたはジメチルビニルアルコキシシランの存在下において、加水分解および縮合反応させ、例えば引続き溶解−沈殿の繰り返しによる分別を行うことにより得られる。
また、ビニル基を両末端に含有する液状シリコーンゴムは、オクタメチルシクロテトラシロキサンのような環状シロキサンを触媒の存在下においてアニオン重合し、重合停止剤として例えばジメチルジビニルシロキサンを用い、その他の反応条件(例えば、環状シロキサンの量および重合停止剤の量)を適宜選択することにより得られる。ここで、アニオン重合の触媒としては、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化n−ブチルホスホニウムなどのアルカリまたはこれらのシラノレート溶液などを用いることができ、反応温度は、例えば80〜130℃である。
このようなビニル基含有ポリジメチルシロキサンは、その分子量Mw(標準ポリスチレン換算重量平均分子量をいう。以下同じ。)が10000〜40000のものであることが好ましい。また、得られる異方導電性シートの耐熱性の観点から、分子量分布指数(標準ポリスチレン換算重量平均分子量Mwと標準ポリスチレン換算数平均分子量Mnとの比Mw/Mnの値をいう。以下同じ。)が2.0以下のものが好ましい。
【0048】
一方、ヒドロキシル基を含有する液状シリコーンゴム(ヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン)は、通常、ジメチルジクロロシランまたはジメチルジアルコキシシランを、ジメチルヒドロクロロシランまたはジメチルヒドロアルコキシシランの存在下において、加水分解および縮合反応させ、例えば引続き溶解−沈殿の繰り返しによる分別を行うことにより得られる。
また、環状シロキサンを触媒の存在下においてアニオン重合し、重合停止剤として、例えばジメチルヒドロクロロシラン、メチルジヒドロクロロシランまたはジメチルヒドロアルコキシシランなどを用い、その他の反応条件(例えば、環状シロキサンの量および重合停止剤の量)を適宜選択することによっても得られる。ここで、アニオン重合の触媒としては、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化n−ブチルホスホニウムなどのアルカリまたはこれらのシラノレート溶液などを用いることができ、反応温度は、例えば80〜130℃である。
このようなヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンは、その分子量Mwが10000〜40000のものであることが好ましい。また、得られる導電路素子の耐熱性の観点から、分子量分布指数が2.0以下のものが好ましい。
本発明においては、上記のビニル基含有ポリジメチルシロキサンおよびヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンのいずれか一方を用いることもでき、両者を併用することもできる。
【0049】
シート成形材料の調製に用いられる導電性粒子としては、ニッケル、鉄、コバルトなどの磁性を示す金属の粒子若しくはこれらの合金の粒子またはこれらの金属を含有する粒子、またはこれらの粒子を芯粒子とし、当該芯粒子の表面に金、銀、パラジウム、ロジウムなどの導電性の良好な金属のメッキを施したもの、あるいは非磁性金属粒子若しくはガラスビーズなどの無機物質粒子またはポリマー粒子を芯粒子とし、当該芯粒子の表面に、ニッケル、コバルトなどの導電性磁性体のメッキを施したもの、あるいは芯粒子に、導電性磁性体および導電性の良好な金属の両方を被覆したものなどが挙げられる。
これらの中では、ニッケル粒子を芯粒子とし、その表面に金や銀などの導電性の良好な金属のメッキを施したものを用いることが好ましい。
芯粒子の表面に導電性金属を被覆する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば化学メッキまたは電解メッキにより行うことができる。
【0050】
導電性粒子として、芯粒子の表面に導電性金属が被覆されてなるものを用いる場合には、良好な導電性が得られる観点から、粒子表面における導電性金属の被覆率(芯粒子の表面積に対する導電性金属の被覆面積の割合)が40%以上であることが好ましく、さらに好ましくは45%以上、特に好ましくは47〜95%である。
また、導電性金属の被覆量は、芯粒子の0.5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは3〜25重量%、特に好ましくは4〜20重量%である。被覆される導電性金属が金である場合には、その被覆量は、芯粒子の2.5〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは3.5〜15重量%、特に好ましくは4〜10重量%である。また、被覆される導電性金属が銀である場合には、その被覆量は、芯粒子の3〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは4〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは6〜20重量%である。
【0051】
また、導電性粒子の粒子径は、1〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは2〜500μm、さらに好ましくは5〜300μm、特に好ましくは10〜200μmである。
また、導電性粒子の粒子径分布(Dw/Dn)は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1.01〜7、さらに好ましくは1.05〜5、特に好ましくは1.1〜4である。
このような条件を満足する導電性粒子を用いることにより、得られる異方導電性シートの導電部は、加圧変形が容易なものとなり、また、当該導電部において導電性粒子間に十分な電気的接触が得られる。
また、導電性粒子の形状は、特に限定されるものではないが、高分子物質用材料中に容易に分散させることができる点で、球状のもの、星形状のものあるいはこれらが凝集した2次粒子による塊状のものであることが好ましい。
【0052】
また、導電性粒子の含水率は、5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、とくに好ましくは1%以下である。このような条件を満足する導電性粒子を用いることにより、後述する製造方法において、高分子物質用材料層を硬化処理する際に、当該高分子物質用材料層内に気泡が生ずることが防止または抑制される。
【0053】
また、導電性粒子として、その表面がシランカップリング剤などのカップリング剤で処理されたものを適宜用いることができる。導電性粒子の表面がカップリング剤で処理されることにより、当該導電性粒子と弾性高分子物質との接着性が高くなり、その結果、得られる異方導電性シートの導電部は、繰り返しの使用における耐久性が高いものとなる。
カップリング剤の使用量は、導電性粒子の導電性に影響を与えない範囲で適宜選択されるが、導電性粒子表面におけるカップリング剤の被覆率(導電性芯粒子の表面積に対するカップリング剤の被覆面積の割合)が5%以上となる量であることが好ましく、より好ましくは上記被覆率が7〜100%、さらに好ましくは10〜100%、特に好ましくは20〜100%となる量である。
【0054】
このような導電性粒子は、得られる異方導電性シートの導電部における導電性粒子の割合が体積分率で30〜60%、好ましくは35〜50%となる割合で用いられることが好ましい。この割合が30%未満の場合には、十分に電気抵抗値の小さい導電部が得られないことがある。一方、この割合が60%を超える場合には、得られる異方導電性シートの導電部は脆弱なものとなりやすく、導電部として必要な弾性が得られないことがある。
【0055】
シート成形材料中には、高分子物質用材料を硬化させるための硬化触媒を含有させることができる。このような硬化触媒としては、有機過酸化物、脂肪酸アゾ化合物、ヒドロシリル化触媒などを用いることができる。
硬化触媒として用いられる有機過酸化物の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ビスジシクロベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジターシャリーブチルなどが挙げられる。 硬化触媒として用いられる脂肪酸アゾ化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
ヒドロシリル化反応の触媒として使用し得るものの具体例としては、塩化白金酸およびその塩、白金−不飽和基含有シロキサンコンプレックス、ビニルシロキサンと白金とのコンプレックス、白金と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとのコンプレックス、トリオルガノホスフィンあるいはホスファイトと白金とのコンプレックス、アセチルアセテート白金キレート、環状ジエンと白金とのコンプレックスなどの公知のものが挙げられる。
硬化触媒の使用量は、高分子物質用材料の種類、硬化触媒の種類、その他の硬化処理条件を考慮して適宜選択されるが、通常、高分子物質用材料100重量部に対して3〜15重量部である。
【0056】
また、シート成形材料中には、必要に応じて、通常のシリカ粉、コロイダルシリカ、エアロゲルシリカ、アルミナなどの無機充填材を含有させることができる。このような無機充填材を含有させることにより、当該シート成形材料のチクソトロピー性が確保され、その粘度が高くなり、しかも、導電性粒子の分散安定性が向上すると共に、得られる異方導電性シートの強度が高くなる。
このような無機充填材の使用量は、特に限定されるものではないが、多量に使用すると、磁場による導電性粒子の配向を十分に達成することができなくなるため、好ましくない。
また、シート成形材料の粘度は、温度25℃において10000〜1000000cpの範囲内であることが好ましい。
【0057】
そして、異方導電性シート成形金型の上型および下型に電磁石を配置してこれを作動させることにより、磁性基板30および磁性部材20を介して、シート成形材料層1Aの厚み方向に平行磁場を作用させる。その結果、シート成形材料層1Aにおいては、当該シート成形材料層1A中に分散されていた導電性粒子が、異方導電性シート成形金型の磁性部材20の下方位置に集合し、更に好ましくは当該シート成形材料層1Aの厚み方向に配向する。
そして、この状態において、シート成形材料層1Aを硬化処理することにより、図16に示すように、異方導電性シート成形金型の磁性部材20の下方位置に配置された、導電性粒子が密に充填された導電部2と、導電性粒子が全くあるいは殆ど存在しない絶縁部3が形成される。そして、異方導電性シート成形金型から離型させることにより、図17に示すように、厚み方向に伸びる複数の導電部2が絶縁部3によって相互に絶縁されてなり、当該導電部2が絶縁部の表面から突出する突出部2Aを有する異方導電性シート1が得られる。
【0058】
以上において、シート成形材料層1Aの硬化処理は、平行磁場を作用させたままの状態で行うこともできるが、平行磁場の作用を停止させた後に行うこともできる。
シート成形材料層1Aに作用される平行磁場の強度は、平均で200〜10000ガウスとなる大きさが好ましい。
また、平行磁場を作用させる手段としては、電磁石の代わりに永久磁石を用いることもできる。このような永久磁石としては、上記の範囲の平行磁場の強度が得られる点で、アルニコ(Fe−Al−Ni−Co系合金)、フェライトなどよりなるものが好ましい。
このようにして得られる導電部2は、導電性粒子が異方導電性シート1の厚み方向に並ぶよう配向しているため、導電性粒子の割合が小さくても良好な導電性が得られる。
【0059】
シート成形材料層1Aの硬化処理は、使用される材料によって適宜選定されるが、通常、加熱処理によって行われる。加熱によりシート成形材料層1Aの硬化処理を行う場合において、具体的な加熱温度および加熱時間は、シート成形材料層1Aを構成する高分子物質用材料などの種類、導電性粒子の移動に要する時間などを考慮して適宜選定される。
【0060】
このような製造方法によれば、小さいピッチで複雑なパターンに配列された磁性部材20を有する異方導電性シート成形金型を用い、この異方導電性シート成形金型の磁性部材20を介してシート成形材料層1Aに磁場を作用させるため、ピッチが小さくて複雑なパターンの導電部2を有する異方導電性シート1を製造することができる。
【0061】
また、異方導電性シート成形金型に設けられた磁性部材20は、球状の形状を有するため、シート成形材料層1Aにおける導電部2となる部分に対して、面方向に一様な強度を有する磁場を作用させることができ、これにより、シート成形材料層1A中の導電性粒子を、導電部2となる部分に面方向において均一に集合させることができるので、所期の導電性を有する導電部2を確実に形成することができる。
【0062】
また、非磁性基板10における成形面である表面には、磁性部材保持用凹所15に対応する位置に、四角錐台状の突出部形成用凹所11が形成されているため、当該突出部形成用凹所11に適合する形状すなわち四角錐台状の突出部2Aを有する異方導電性シートを成形することができる。そして、このような突出部2Aを有する異方導電性シートによれば、当該突出部2Aが加圧されたときに当該突出部の周辺に作用する応力を緩和することができるので、高い耐久性が得られる。
【0063】
本発明は、上記の実施の形態に限定されず種々の変更を加えることが可能である。
例えば、非磁性基板10の表面は平坦面であってもよい。
また、非磁性基板10の表面および裏面に形成された保護層12,16は、当該非磁性基板10に突出部形成用凹所11および磁性部材保持用凹所15を形成するためのものであるので、最終的に得られる異方導電性シート成形金型において必須のものではなく、その製造工程において、非磁性基板10に突出部形成用凹所11および磁性部材保持用凹所15を形成した後、当該非磁性基板10から除去されてもよい。
また、金型の製造方法において、非磁性基板材料10Aとして、形成すべき非磁性基板10の厚みより大きい厚みを有するものを用い、その表面を研磨することにより所要の厚みすなわち形成すべき非磁性基板10の厚みとすることができる。ここで、非磁性基板材料10Aの表面を研磨処理する手段としては、ポリッシングあるいはCMP(Chemical Mechanical Polishing)などの手段を利用することができる。
【0064】
【発明の効果】
請求項1乃至請求項2に記載の金型によれば、非磁性基板における磁性部材を保持するための凹所が錐状の形状であるため、当該凹所に球状の磁性部材を容易に受容させることができる。このような凹所は、結晶方位に沿ってエッチングされる異方性エッチングによって形成することができ、これにより、当該凹所のピッチが小さくて複雑なパターンのものであっても、その形成が容易であり、しかも、高い寸法精度を有するものとなるので、磁性部材を小さいピッチで複雑なパターンに配列することができる。従って、当該金型内に形成されるシート成形材料層に、磁性部材を介して磁場を作用させることにより、ピッチが小さくて複雑なパターンの導電部を有する異方導電性シートを成形することができる。
【0065】
また、磁性部材は球状の形状を有するため、当該金型内に形成されたシート成形材料における特定の部分例えば導電部となる部分に、その面方向にわたって一様な強度の磁場を作用させることができる。従って、異方導電性シートを成形する場合には、シート成形材料層中の導電性粒子を、当該シート成形材料層の導電部となる部分に面方向において均一に集合させることができ、その結果、所期の導電性を有する導電部を形成することができる。
【0066】
請求項3に記載の金型によれば、非磁性基板として、単結晶シリコンよりなるものを用いるため、ピッチが小さくて複雑なパターンであっても所期の寸法精度を有する錐状の凹所が確実に得られる。
【0067】
請求項4に記載の金型によれば、非磁性基板における成形面である表面に、その裏面に形成された磁性部材を保持するための凹所に対応して、成形体例えば異方導電性シートに突出部を形成するための凹所が形成されており、当該凹所の形状は、異方性エッチングによって形成されることにより錐台状とされているため、この凹所に適合する形状すなわち錐台状の突出部を有する成形体例えば異方導電性シートを成形することができる。そして、このような突出部を有する異方導電性シートによれば、当該突出部が加圧されたときに当該突出部の周辺に作用する応力を緩和することができるので、高い耐久性が得られる。
【0068】
請求項5に記載の金型の製造方法によれば、非磁性基板材料の表面に対して、結晶方位に沿ってエッチングされる異方性エッチング処理を行うことにより、高い寸法精度を有する錐状の凹所を容易に形成することができ、この凹所に球状の磁性部材を保持させることにより、目的とする磁性部材の配列ピッチが小さくて複雑なパターンであっても、当該磁性部材の各々を非磁性基板に所期の配列パターンに従って配置することができる。
また、磁性部材として球状のものを用いるため、シート成形材料層における導電部となる部分にその面方向にわたって一様な強度の磁場を作用させることができる異方導電性シート成形金型が得られる。
【0069】
請求項6に記載の金型の製造方法によれば、非磁性基板材料の他面から磁力を作用させるため、当該非磁性基板材料の一面に形成された凹所の各々に磁性部材を容易に受容させることができる。
また、磁力の作用によって、磁性部材の各々を非磁性基板材料の凹所の各々に一時的に固定することができるため、磁性部材の各々を非磁性基板材料の凹所の各々に接着する際に、当該非磁性基板材料の凹所から磁性部材が離脱することを防止することができる。
【0070】
請求項7に記載の異方導電性シートの製造方法によれば、小さいピッチで複雑なパターンに配列された磁性部材を有する金型を用い、この金型の磁性部材を介してシート成形材料層に磁場を作用させるため、ピッチが小さくて複雑なパターンの導電部を有する異方導電性シートを製造することができる。
また、金型に設けられた磁性部材は球状の形状を有するため、シート成形材料層における導電部となる部分に対して、面方向に一様な強度を有する磁場を作用させることができる、これにより、シート成形材料層中の導電性粒子を、導電部となる部分に面方向において均一に集合させることができ、その結果、所期の導電性を有する導電部を確実に形成することができる。
また、成形面である表面に錐台状の凹所が形成された金型を用いることにより、この凹所に適合する形状すなわち錐台状の突出部を有する異方導電性シートを成形することができる。そして、このような突出部を有する異方導電性シートによれば、当該突出部が加圧されたときに当該突出部の周辺に作用する応力を緩和することができるので、高い耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る異方導電性シート成形金型の一例における上型の具体的構成を示す説明用断面図である。
【図2】両面に保護膜が形成された非磁性基板材料の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図3】非磁性基板の裏面側の保護膜上にレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図4】非磁性基板の裏面側の保護膜に開口が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図5】非磁性基板の裏面側の保護膜上からレジスト膜が除去された状態を示す説明用断面図ある。
【図6】非磁性基板材料に磁性部材保持用凹所が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図7】非磁性基板材料の表面側の保護膜上に磁石が配置され、磁性部材保持用凹所に磁性部材が受容されて固定された状態を示す説明用断面図である。
【図8】接着材によって磁性部材が非磁性基板材料の磁性部材保持用凹所に接着された状態を示す説明用断面図である。
【図9】非磁性基板材料の表面側の保護膜上から磁石が取り外された状態を示す説明用断面図である。
【図10】磁性部材上に接着層形成材料および磁性基板がこの順で配置された状態を示す説明用断面図である。
【図11】保護膜および磁性部材上に接着層を介して磁性基板が一体的に被着された状態を示す説明用断面図である。
【図12】非磁性基板材料の表面側の保護膜上にレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図13】非磁性基板の表面側の保護膜に開口が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図14】非磁性基板の表面側の保護膜からレジスト膜が除去された状態を示す説明用断面図である。
【図15】図1に示す異方導電性シート成形金型内にシート成形材料層が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図16】シート成形材料層に磁場が作用されて硬化されることにより、導電部および絶縁部が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図17】本発明の製造方法によって得られる異方導電性シートの一例における構成を示す説明用断面図である。
【図18】従来の異方導電性シート成形金型の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図19】図18に示す異方導電性シート成形金型によって成形空間に作用する磁場の強度分布を示す説明図である。
【図20】図18に示す異方導電性シート成形金型によってシート成形材料層に磁場を作用させたときの導電性粒子の集合状態を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
1 異方導電性シート 1A シート成形材料層
2 導電部 2A 突出部
3 絶縁部 10 非磁性基板
10A 非磁性基板材料 11 突出部形成用凹所
12 保護膜 12K 開口
15 磁性部材保持用凹所
16 保護膜 16K 開口
17 レジスト膜 18 レジスト膜
18K 開口 19 レジスト膜
19K 開口 20 磁性部材
21 接着材 25 接着層
25A 接着層用材料 30 磁性基板
40 磁石 80 上型
81 磁性基板 82 強磁性体部分
83 非磁性体部分 85 下型
86 磁性基板 87 強磁性体部分
88 非磁性体部分 90 シート成形材料層
S 成形空間 P 導電性粒子
Claims (7)
- 成形面を形成する表面を有し、その裏面に複数の錐状の凹所が形成された非磁性基板と、
この非磁性基板の凹所の各々に保持された強磁性体よりなる球状の磁性部材とを具えてなることを特徴とする金型。 - 異方導電性シート成形用であることを特徴とする請求項1に記載の金型。
- 非磁性基板は、単結晶シリコンよりなるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金型。
- 非磁性基板の表面には、その裏面に形成された磁性部材を保持するための凹所に対応して、成形体に突出部を形成するための凹所が形成されており、当該凹所の形状が、当該非磁性基板の表面から裏面に向かうに従って断面積が小さくなる錐台状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の金型。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の金型を製造する方法であって、
異方性エッチングが可能な板状の非磁性基板材料を用意し、この非磁性基板材料の一面に異方性エッチング処理を行うことにより、複数の錐状の凹所を形成し、これらの凹所の各々に球状の磁性部材を受容させて接着する工程を有することを特徴とする金型の製造方法。 - 非磁性基板材料の他面から磁力を作用させた状態で、当該非磁性基板材料の凹所の各々に磁性部材を受容させることを特徴とする請求項5に記載の金型の製造方法。
- 厚み方向に伸びる複数の導電部が絶縁部によって相互に絶縁された状態で配置されてなる異方導電性シートを製造する方法であって、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の金型を用い、
この金型内に、硬化されて弾性高分子物質となる弾性高分子用材料中に磁性を示す導電性粒子が含有されてなるシート成形材料を充填し、
このシート成形材料に前記金型における磁性部材を介して磁場を作用させると共に、当該シート成形材料を硬化処理する工程を有することを特徴とする異方導電性シートの製造方法。
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