JP4161363B2 - 接触検知装置及びその検知方法並びに該接触検知装置を適用した画像読取装置 - Google Patents

接触検知装置及びその検知方法並びに該接触検知装置を適用した画像読取装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接触検知装置及びその検知方法並びに該接触検知装置を適用した画像読取装置に関し、特に、人体等の特定の被検出体の接触状態を検知する接触検知装置及びその検知方法、並びに、該接触検知装置による接触検知出力に基づいて被検出体の画像パターン(2次元画像)を読み取る動作を実行する画像読取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷物や写真、あるいは、指紋等の微細な凹凸の形状等を読み取る2次元画像の読取装置として、例えば、光電変換素子(フォトセンサ)をマトリクス状に配列して構成されるフォトセンサアレイ上に設けられた検知面に被検出体を載置、接触させて、該被検出体の画像パターンを読み取る構造のものがある。
【0003】
そして、このような被検出体が検知面に直接接触する構造を有する画像読取装置においては、フォトセンサの素子特性の劣化を抑制しつつ、適切な画像読取動作を行うために、被検出体の検知面への接触(載置)状態を検出して、画像読取動作を開始(起動)する機能(以下、「接触検知機能」という)を備えたものが知られている。また、被検出体に帯電した静電気による素子破壊や誤動作の発生を抑制するために、静電気を放電、除去する機能(以下、「静電気除去機能」という)を備えたものも知られている。
【0004】
ここで、上述したような接触検知機能及び静電除去機能の双方を備えた画像読取装置について、図面を参照して簡単に説明する。なお、ここでは、画像読取装置の構成例として、指紋読取装置を示して説明する。
図18は、従来技術における画像読取装置の一構成例(抵抗検出方式の指紋読取装置)を示す概略構成図であり、図19は、従来技術における画像読取装置の他の構成例(容量検出方式の指紋読取装置)を示す概略構成図である。
【0005】
図18に示す抵抗検出方式の画像読取装置は、概略、透明な絶縁性基板の一面側に複数のフォトセンサ310がマトリクス状に配列されたフォトセンサアレイ300Apと、少なくとも複数のフォトセンサ310が配置されたアレイ領域上に形成され、該アレイ領域を2分し、わずかな間隙GPを介して互いに離間するように形成された透明電極層320x、320yと、透明電極層320x及び320yのいずれか一方の透明電極層(例えば、透明電極層320x)に引き出し配線PLxを介して直流電圧を印加するとともに、他方の透明電極層(例えば、透明電極層320y)に引き出し配線PLyを介して接地電位を印加して、透明電極層320x及び320y間に指FG等の被検出体が載置、接触されることによる特有の電圧変化を検出して、画像読取装置(フォトセンサシステム)における画像読取動作を開始する検出回路330aと、各引き出し配線PLx、PLyと接地電位との間に接続され、一対のダイオードを逆方向に並列に接続した逆並列ダイオード回路340x、340yと、フォトセンサアレイ300Aの背面側に配置された面光源(図示を省略)と、を有して構成されている。
【0006】
このような画像読取装置において、指FG等の被検出体が透明電極層320x、320yの双方にまたがって載置、接触されると、指(人体)FGに帯電していた電荷(静電気)が引き出し配線PLx、PLy及び逆並列ダイオード回路340x、340yを介して、接地電位に放電されるとともに、透明電極層320x、320y間が指FGを介して短絡することにより生じる電圧変化を観測することにより、フォトセンサアレイ100p上に指が載置されたことを検出して、図示を省略した各種ドライバや面光源を起動して、被検出体の画像パターン(指紋)を読み取る画像読取動作を自動的に実行する。
【0007】
また、図19に示す容量検出方式の画像読取装置は、概略、複数のフォトセンサ310がマトリクス状に配列されたフォトセンサアレイ300Bと、アレイ領域の全域を覆うように形成された透明電極層320zと、透明電極層320zに引き出し配線PLzを介して接続され、透明電極層320zに被検出体が載置、接触されることによる特有の容量変化を検出して、画像読取装置における画像読取動作を開始する検出回路330bと、引き出し配線PLzと接地電位との間に接続された逆並列ダイオード回路340zと、フォトセンサアレイ300Bの背面側に配置された面光源(図示を省略)と、を有して構成されている。
【0008】
このような画像読取装置において、指FG等の被検出体が透明電極層320zに載置、接触されると、指(人体)FGに帯電していた電荷(静電気)が引き出し配線PLz及び逆並列ダイオード回路340zを介して、接地電位に放電されるとともに、フォトセンサアレイ300B自体が本来有する容量に、誘電体としての指(人体)FGが接触、付加されることにより生じる容量変化を観測することにより、フォトセンサアレイ300B上に指が載置されたことを検出して、指紋を読み取る画像読取動作を自動的に実行する。
【0009】
ここで、上述した各構成のいずれにおいても、透明電極層と検出回路とを接続する引き出し配線に、他端が接地電位に接続された逆並列ダイオード回路が接続されれていることにより、指(人体)に帯電した静電気に起因する過大電流を接地電位に放電することができるので、フォトセンサや検出回路の静電気破壊を防止又は抑制することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の画像読取装置においては、次に示すような問題を有していた。
(1)図18に示したような抵抗検出方式の画像読取装置(指紋読取装置)においては、被検出体が間隙GPを介して離間した透明電極層320x、320yの双方に接触する際の抵抗値(具体的には、電圧変化)に基づいて、被検出体の接触状態を検出する手法が適用されているため、当該人物の体質やコンディション等の個人差、あるいは、気温や湿度等の外部環境に影響されて、被検出体(人体)固有の抵抗値が大きく変動することにより、被検出体の接触状態を正確に検出することができなくなり、画像読取動作の開始(起動)制御が不均一かつ不安定になるという問題を有していた。
【0011】
また、フォトセンサアレイ300A上に設けられている透明電極層320x、320yは、人体に帯電した静電気を除去する機能をも備えているため、透明電極層320x、320yの接地抵抗が低く設定されている方が静電気保護効果上、より好ましい。しかしながら、上述したように、透明電極層320x、320yが分割して形成されている場合、該透明電極層を分割することなくフォトセンサアレイ300Aの全域に単一の透明電極層を形成した場合に比較して、相対的に接地抵抗が高くなり、十分な静電気除去機能を実現することが困難になるという問題を有していた。
【0012】
(2)一方、図19に示したような容量検出方式の画像読取装置においては、被検出体の接触状態を正確に検出する手法の一例として、被検出体が有する容量成分に応じて変位する微弱な信号電圧の変化を読み取る方法があるが、このような微弱な電圧変化を判別するためには、透明電極層の容量、ひいてはフォトセンサと透明電極層との間に生成される寄生容量が極力小さい方が望ましい。しかしながら、フォトセンサ及び周辺回路の静電気耐性を向上させるためには、透明電極層が十分小さいシート抵抗を有するように透明電極層を比較的厚く形成する必要がある。ここで、透明電極層として一般的な金属酸化物を適用した場合、抵抗率が比較的高いという特性を有しているので、上述したようにシート抵抗を小さくするために透明電極層を厚く堆積すると、透明電極層自体の容量が急激に増大し、フォトセンサと透明電極層との間の寄生容量が増大して信号対雑音比(S/N)が小さくなり、検知面に被検出体(人体)が載置された際の容量変化を良好に検出することができなくなるという問題を有していた。
【0013】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、フォトセンサアレイ上の検知面に被検出体が載置、接触された場合に、その接触状態を良好に検出することができる接触検知装置及びその検知方法を提供するとともに、該接触検知装置を適用して、被検出体の接触状態に応じて適切に画像パターンの読取動作を開始(起動)することができる画像読取装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項に係る画像読取装置は、複数のフォトセンサからなるセンサアレイを備え、該センサアレイ上の検知面に載置された被検出体の画像を読み取る画像読取装置において、前記センサアレイ上の検知面に設けられた透明導電膜と、前記センサアレイに近接する任意位置に設けられ、かつ、前記透明導電膜に対して電気的に離間、絶縁して設けられた導電性部材と、絶縁膜を介して前記透明導電膜の下層に設けられ、かつ、前記フォトセンサの動作状態を制御する制御電極と、前記制御電極を介して前記透明導電膜に、所定の電圧振幅を有するパルス状の信号波形を励起するパルス信号印加手段と、前記被検出体が前記透明導電膜及び前記導電性部材の双方に共通に接触した場合に、前記導電性部材に現れる信号波形の変化に基づいて、前記透明導電膜への前記被検出体の接触状態を検出する接触検出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0021】
請求項に係る画像読取装置は、請求項記載の画像読取装置において、前記接触検出手段は、前記被検出体特有の容量成分及び抵抗成分に基づいて、前記導電性部材に現れる前記信号波形の電圧振幅及び振幅中心電圧の変化を検出することを特徴としている。
請求項に係る画像読取装置は、請求項又は記載の画像読取装置において、前記接触検出手段は、前記特定の被検出体が前記透明導電膜及び前記導電性部材の双方に共通に接触した状態における電圧範囲を規定するために予め設定されたしきい値電圧と、前記導電性部材に現れる前記信号波形との比較により、前記被検出体の接触状態を検出することを特徴としている。
請求項に係る画像読取装置は、請求項記載の画像読取装置において、前記接触検出手段は、前記導電性部材に現れる前記信号波形の電圧振幅の範囲内に、前記しきい値電圧が含まれている場合に、前記被検出体が前記透明導電膜に正常に接触したものと判定して、前記被検出体の画像を読み取る動作を開始することを特徴としている。
【0022】
請求項に係る画像読取装置は、請求項乃至のいずれかに記載の画像読取装置において、前記センサは、半導体層からなるチャネル領域を挟んで形成されたソース電極及びドレイン電極と、少なくとも前記チャネル領域の上方及び下方に各々絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、を有し、前記第1のゲート電極にリセットパルスを印加して前記センサを初期化し、前記ドレイン電極にプリチャージパルスを印加した後、前記第2のゲート電極に読み出しパルスを印加することにより、前記初期化終了から前記読み出しパルスの印加までの電荷蓄積期間に、前記チャネル領域に蓄積された電荷の量に対応する電圧を出力電圧として出力し、前記プリチャージパルスに係る信号電圧と前記出力電圧との差分に基づいて、前記被写体の画像が生成されることを特徴としている。
請求項に係る画像読取装置は、請求項記載の画像読取装置において、前記制御電極は、前記複数のフォトセンサを構成する前記ドレイン電極であり、前記パルス信号印加手段は、前記複数のフォトセンサを構成する前記ドレイン電極にプリチャージパルスを一括して印加する駆動制御手段であることを特徴としている。
【0025】
本発明に係る画像読取装置は、複数のフォトセンサからなるセンサアレイを備え、該センサアレイ上の検知面に載置された指等の被検出体の画像(例えば、指紋)を読み取る画像読取装置であって、接触検知装置による被検出体の接触状態を検知して、該検知出力に基づいて、上記画像読取動作を開始する画像読取装置において、被写体が載置、接触される検知面に設けられた透明電極層(透明導電膜)と、該透明電極層に対して電気的に絶縁され、かつ、上記センサアレイを電気的な外乱要素や物理的な衝撃等から保護するケース部材(導電性部材)と、を備え、フォトセンサの制御電極を介して上記透明電極層に所定の信号波形(電圧振幅及び振幅中心電圧)を有するパルス信号を励起し、ケース部材に現れる信号波形の変化を検出することにより、透明電極層への被検出体の接触状態を検出して、画像読取動作の開始タイミングを制御する。
【0026】
ここで、ケース部材に現れる信号波形は、上記被検出体固有の複数のパラメータ(容量成分及び抵抗成分)に基づいて、電圧振幅及び振幅中心電圧が変化するので、このような信号波形の変化を観測し、該信号波形と予め設定した基準電圧(しきい値電圧)とを比較することにより、特定の被検出体の接触状態を判別することができる。したがって、被検出体固有の抵抗成分及び容量成分の2つのパラメータに基づいて、その双方に関連して変化する信号波形が所定の条件を満たしたときにのみ、正規の被検出体が接触したものと判断することができるので、検出対象である被検出体とそれ以外の異物とを良好かつ均一に判別することができるとともに、ゴミ等の異物による誤検出を抑制して、画像読取装置の誤動作を防止することができ、画像読取動作の開始タイミングの制御を均一かつ安定化させることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る接触検知装置及びその検知方法並びに接触検知装置を適用した画像読取装置について、詳しく説明する。
<接触検知装置>
まず、本発明に係る接触検知装置及びその検知方法について、実施の形態を示して説明する。
図1は、本発明に係る接触検知装置の一実施形態を示す概略ブロック図であり、図2は、本実施形態に係る接触検知装置に適用される検知回路の構成例を示す概略回路図である。
【0028】
本実施形態に係る接触検知装置は、図1に示すように、概略、互いに離間して設けられ、かつ、被検出体OBJが双方にまたがって接触するように構成された第1接触電極(第1の接触電極)10及び第2接触電極(第2の接触電極)20と、第1接触電極10に図示を省略した絶縁層を介して対向するように設けられた対向電極30と、該対向電極30に所定の信号波形を有する信号電圧を印加するパルス発生回路(電圧印加手段)40と、第1接触電極10に励起される信号成分の電圧振幅を所定の電圧範囲に制限する振幅制限回路(振幅制限手段)50と、第2接触電極20に現れる信号成分の変化を検出して、上記第1接触電極10及び第2接触電極20への被検出体OBJの接触状態を判定する検出回路(接触検出手段)60と、を備えた構成を有している。
【0029】
第1接触電極30は、例えば、透明導電膜(酸化スズ(SnO2)膜やITO(Indium-Tin-Oxide:インジウム−スズ酸化物膜)等)のように比較的電気抵抗の高い導電材料からなる薄膜が適用され、接触対象となる被検出体OBJが載置、接触される領域の全域を被覆するように設けられる。また、第2接触電極20は、例えば、金属等の電気抵抗の低い導電材料からなる部材が適用され、上記第1接触電極10に対して、空気等の絶縁物を介して空間的に離間し、電気的に絶縁されるように設けられる。ここで、第2接触電極20は、被検出体OBJが上記第1接触電極10に載置、接触された状態で、同時に被検出体OBJが接触されるように、例えば、第1接触電極10に近接する領域に突出して設けられる。これにより、図1に示すように、第1接触電極10及び第2接触電極20間にまたがって被検出体OBJが載置、接触された場合にのみ、第1接触電極10及び第2接触電極20が電気的に接続された状態となる。
【0030】
対向電極30は、例えば、第1接触電極10に対して、誘電体となる絶縁層を介して対向するように設けられた導電性の薄膜が適用され、第1接触電極10、絶縁層及び対向電極30により所定の静電容量を有する寄生容量を構成しているものとする。ここで、対向電極30は、上述したように、被検出体OBJが載置、接触される領域の全域に形成された第1接触電極10に対して、例えば、同等の広がりを有する単一形状の薄膜層として設けられるものであってもよいし、上記第1接触電極10に対して、所定の配索経路を有するように帯状等に形成された薄膜層として設けられるものであってもよい。
【0031】
パルス発生回路40は、所定の電圧振幅ΔVp(例えば、0〜Vp)及び信号周期を有するパルス状の信号電圧(方形波)を生成して、対向電極30に印加するように構成されている。また、振幅制限回路50は、例えば、図1に示すように、第1接触電極10と接地電位間に、一対のダイオードを逆方向に並列に接続した逆並列ダイオード回路部50aと、該逆並列ダイオード回路部50aに並列に接続された抵抗素子50bと、を備えて構成されている。
【0032】
これにより、第1接触電極10には、パルス発生回路40により上記対向電極30(詳しくは、寄生容量)を介して、上記パルス状の信号電圧に対応した信号波形が励起され、振幅制限回路50の逆並列ダイオード回路部50aにより該励起された信号波形の電圧振幅ΔVa(振幅上限電圧及び振幅下限電圧)が、ダイオードの順方向電圧Vfに応じた電圧範囲+Vf〜−Vfに規定されるとともに、抵抗素子50bにより該励起された信号波形が交流電圧波形を有するように制御される。
ここで、第2接触電極は、第1接触電極10に対して、間隙を設けて相互に離間し、電気的に絶縁された構成を有していることから、第1接触電極10と第2接触電極20とにより形成される容量成分は極めて微小となり、実質的に、上記パルス発生回路40により第1接触電極10に励起された信号波形が第2接触電極20側に励起されて現れる(後述する検出回路60により観測される)ことはない。
【0033】
このような振幅制限回路50により電圧振幅ΔVaが制限された信号波形が第1接触電極10に励起され、その電圧振幅ΔVaにより電圧範囲が規定されることにより、該電圧範囲+Vf〜−Vf以外(振幅上限電圧+Vf以上の電圧、及び、振幅下限電圧−Vf以下の電圧)の電気的な外乱要素が第1接触電極10に印加された場合であっても、振幅制限回路50に接続された逆並列ダイオード50aにより電流が流下して、上記電圧振幅ΔVaにより規定される所定の電圧範囲+Vf〜−Vf内の電圧のみが第1接触電極10に印加される。したがって、例えば、上記振幅上限電圧+Vf以上の過大な電圧が絶縁層を介して対向電極30に印加されることを防止することができ、接触検知装置及び図示を省略した周辺回路の静電破壊を適切に防止することができる。
【0034】
検出回路60は、第2接触電極20に現れる信号波形を常時監視し、所定の信号波形が検出された場合に、第1接触電極10及び第2接触電極20の双方にまたがって、被検出体OBJが接触したと判定して、該判定結果を接触検知信号として出力するように構成されている。
具体的には、検出回路60は、図2に示すように、概略、第2接触接点に接続された接点N1と高電位電源Vdd間に接続された抵抗R11と、接点N1と接地電位間に接続された抵抗R12と、高電位電源Vddと接地電位間に、接点N2を介して直列に接続された抵抗R21、R22と、接点N1が非反転入力端子(+)に接続され、接点N2が反転入力端子(−)に接続されたコンパレータCMPと、を備えた構成を有している。
このような回路構成を有する検出回路においては、第2接触電極20に現れる信号波形の電圧成分(接点N1の信号電圧Vα)と、接点N2で分圧生成される基準電圧(しきい値電圧)VrefとがコンパレータCMPにより比較され、信号電圧Vαが基準電圧Vrefよりも大きい場合に、接触検知信号が出力される。
【0035】
<接触検知装置の検知方法>
次に、上述した構成を有する接触検知装置における被検出体の接触状態の検知動作(本発明に係る接触検知装置の検知方法)について、図面を参照して詳しく説明する。
図3は、本実施形態に係る接触検出装置の接触検知動作の一例を示す概念図である。
【0036】
まず、第1接触電極10及び第2接触電極20に被検出体OBJが接触されていない状態においては、第2接触電極20は第1接触電極10に励起された信号波形の影響をほとんど受けないので、コンパレータCMPの非反転入力端子(+)に入力される信号電圧Vαは、実質的に、接点N1に接続された抵抗素子R11、R12によって分圧生成される所定電圧Vr(例えば、抵抗素子R11、R12の各抵抗値が同等の場合には、Vdd/2)になる。ここで、反転入力端子(−)に入力される基準電圧Vrefを、上記信号電圧Vα(=Vr)よりも大きくなるように、抵抗素子R21、R22による分圧比を任意に設定しておくことにより、コンパレータCMPからは接触検知信号は出力されない。
【0037】
一方、第1接触電極10及び第2接触電極20にまたがって被検出体OBJが載置、接触された状態においては、図1、図2に示したように、被検出体OBJが有する固有の抵抗成分及び容量成分を介して、第1接触電極10及び第2接触電極20が電気的に接続される。これにより、第2接触電極20には、被検出体OBJの抵抗成分及び容量成分に基づいて、第1接触電極10に励起された信号波形に対応した信号波形が現れる。
【0038】
ここで、被検出体OBJの容量成分は、第2接触電極20に現れる信号波形の電圧振幅ΔVq(電圧範囲+Vmax〜−Vmin)に影響を及ぼし、前述のように被検出体OBJが接触していないときには第1接触電極10と第2接触電極20との間の容量成分は極めて微小であるため、電圧振幅ΔVqは極めて微小な値であるが、被検出体OBJが接触して、被検出体OBJの容量値が付加されると、第1接触電極10と第2接触電極20間で容量結合が生じて、電圧振幅ΔVqの幅が増大する。この電圧振幅ΔVqの幅は、被検出体OBJの容量値が大きいほど、より大きくなる。この場合、第2接触電極20に現れる信号波形の電圧振幅ΔVqの最大値(振幅上限電圧)+Vmaxは、第1接触電極10に励起される信号波形の電圧振幅ΔVa(すなわち、第1接触電極10に接続された振幅制限回路50に設けられた逆並列ダイオード50aの順方向電圧Vfにより規定される電圧範囲+Vf〜−Vf)に制限される。
また、被検出体OBJの抵抗成分は、前述の振幅制限回路50の抵抗素子50bを介して接地電位に接続されて、実質的に検出回路60の抵抗素子R12と並列に接続されることにより、接地電位との間の抵抗値が減少して、第2接触電極20に現れる信号波形の振幅中心電圧Vcを下げる方向に作用し、該抵抗値が小さくなればなるほど、振幅中心電圧Vcが低くなる。
【0039】
したがって、第2接触電極20に現れ、接点N1を介してコンパレータCMPの非反転入力端子(+)に入力される信号波形は、被検出体OBJの抵抗成分により規定される所定の振幅中心電圧Vcを有するとともに、被検出体OBJの容量成分により規定される所定の電圧振幅ΔVqを有している。このとき、予めコンパレータCMPの反転入力端子(−)に入力される基準電圧Vrefを適当に設定して、振幅中心電圧Vc及び電圧振幅ΔVqを有する信号波形と、基準電圧Vrefとの大小関係を比較することにより、被検出体OBJ固有の抵抗成分及び容量成分に基づく特有の信号波形の変化を検出して、被検出体OBJが載置接触された状態のみを検知することができる。
【0040】
具体的には、被検出体OBJの容量成分に着目した場合、被検出体OBJが第1接触電極10及び第2接触電極20に接触していない状態においては、図3(a)に示すように、予め基準電圧Vrefが第2接触電極20に現れる信号波形の最大値よりも高くなるように、抵抗素子R21、R22により分圧生成される基準電圧Vrefを設定しておく。一方、第2接触電極20に現れる信号波形は、上述したように、検出回路60に設けられた抵抗素子R11、R12により分圧生成される振幅中心電圧Vcを有し、且つ、微小な電圧振幅ΔVqaを有する。これにより、検出回路60に設けられたコンパレータCMPは、非反転入力端子(+)に入力される信号波形が、反転入力端子(−)に入力される基準電圧Vrefに比較して完全に小さく、その大小関係が逆転することが全くないと判断して、ローレベルの出力信号を出力する。
【0041】
次いで、被検出体OBJが第1接触電極10及び第2接触電極20にまたがって接触された場合、被検出体OBJ固有の容量成分により、図3(b)に示すように、上記コンパレータCMPの非反転入力端子(+)に入力される信号波形の電圧振幅ΔVqaが変化する(ΔVqa→ΔVqb)。このとき、上述したように、被検出体OBJの容量成分により、第1接触電極10に付加される容量値が大きく増加することにより、上記信号波形の電圧振幅ΔVqaが増大し、該最大値(振幅上限電圧)+Vmaxが基準電圧Vrefよりも大きくなった場合(換言すれば、上記信号波形と基準電圧Vrefが交差した場合)には、コンパレータCMPによりハイレベルの出力信号が出力される(すなわち、コンパレータCMPの出力が変化して接触状態が検知される)。
【0042】
ここで、上述したような信号波形の電圧振幅ΔVqaを増大させるような容量成分を有する被検出体OBJでありながら、その抵抗成分により、図3(c)、(d)に示すように、第1接触電極10に付加される抵抗値が実質的に減少して、上記信号波形の振幅中心電圧Vcが低下し(Vca→Vcb)、該電圧振幅ΔVqbの最大値(振幅上限電圧)+Vmaxが基準電圧Vrefよりも小さくなった場合(換言すれば、上記信号波形と基準電圧Vrefが交差しなくなった場合)には、コンパレータCMPによりローレベルの出力信号が出力される(すなわち、接触検知信号が出力されない)。
【0043】
すなわち、第1接触電極及び第2接触電極にまたがって被検出体が接触された場合であっても、予め接触検知の対象となっている物質固有の容量成分及び抵抗成分を有していない場合(例えば、所定の容量値を有しているものの、抵抗値が極端に低い場合等)には、接触検知装置が対象としている正規の被検出体の接触ではないと判断する。
このように、本実施形態に係る接触検知装置及びその検知方法によれば、被検出体の抵抗成分及び容量成分の2つの要素に着目して、その双方に関連して変化する信号波形が所定のしきい値を越えた場合のみ、検出対象となる正規の被検出体であると判断するので、従来技術に示した場合と異なり、被検出体の接触状態を検出する際に、被検出体の固有状態や外部環境等の影響を抑制して、比較的正確に検出、判断することができ、接触検知装置の信頼性を向上させることができる。
【0044】
次に、本発明に係る接触検知装置及びその検知方法の他の実施形態について、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る接触検出装置の接触検知動作の他の例を示す概念図である。ここで、接触検知装置の構成については、上述した実施形態と同等であるので、その説明を省略する。また、接触検知動作についても、上述した実施形態と同等の手法については、同一の符号を付してその説明を簡略化又は省略する。
【0045】
上述した実施形態に示した接触検知装置の検知方法においては、予め基準電圧Vrefを第2接触電極20に現れる信号波形に比較して大きくなるように設定した場合について示したが、本実施形態においては、例えば、予め基準電圧Vrefを第2接触電極20に現れる信号波形に比較して小さくなるように設定している。
具体的には、被検出体OBJが第1接触電極10及び第2接触電極20に接触していない状態において、図4(a)に示すように、予め基準電圧Vrefが第2接触電極20に現れる信号波形の最小値(振幅下限電圧)−Vminよりも低くなるように、基準電圧Vref、並びに、第2接触電極20に現れる信号波形の振幅中心電圧Vc及び電圧振幅ΔVqaを設定する。この状態においては、検出回路60に設けられたコンパレータCMPは、非反転入力端子(+)に入力される信号波形が、反転入力端子(−)に入力される基準電圧Vrefに比較して完全に大きく、その大小関係が逆転することが全くないと判断して、ハイレベルの出力信号を出力する。
【0046】
一方、被検出体OBJが第1接触電極10及び第2接触電極20にまたがって接触された場合には、被検出体OBJ固有の容量成分により、図4(b)に示すように、上記コンパレータCMPの非反転入力端子(+)に入力される信号波形の電圧振幅ΔVqaが変化する(ΔVqa→ΔVqb)。このとき、被検出体OBJの容量成分により増大した信号波形の電圧振幅ΔVqbの最小値(振幅下限電圧)−Vminが基準電圧Vrefよりも小さくなった場合(換言すれば、上記信号波形と基準電圧Vrefが交差した場合)には、コンパレータCMPによりローレベルの出力信号が出力される(すなわち、コンパレータCMPの出力が変化して接触状態が検知される)。
【0047】
また、被検出体OBJ固有の容量成分が小さく、実質的に、上述したような信号波形の電圧振幅ΔVqaを増大させる程度の容量成分を有しない被検出体OBJであっても、その抵抗成分により、図4(c)、(d)に示すように、第1接触電極10に付加される抵抗値が実質的に減少して、上記信号波形の振幅中心電圧Vcが低下し(Vca→Vcb)、該電圧振幅ΔVqaの最小値(振幅下限電圧)−Vminが基準電圧Vrefよりも小さくなった場合(換言すれば、上記信号波形と基準電圧Vrefが交差した場合)には、コンパレータCMPによりローレベルの出力信号が出力される(すなわち、コンパレータCMPの出力が変化して接触状態が検知される)。
【0048】
すなわち、第1接触電極及び第2接触電極にまたがって被検出体が接触された場合、予め接触検知の対象となっている物質固有の容量成分及び抵抗成分(特に、所定の範囲の抵抗成分)を有している場合には、接触検知装置が対象としている正規の被検出体の接触であると判断する。これは、換言すれば、被検出体の容量成分が、予め接触検知の対象となっている物質固有の容量成分と同等の値を有している場合であっても、抵抗成分が該対象物質固有の抵抗成分に比較して極端に高い場合や低い場合には、第2接触電極に現れる信号波形が基準電圧Vrefと交差しないので、コンパレータCMPの出力は変化せず、正規の被検出体の接触とは判断しない。
このような接触検知方法によれば、上述した実施形態と同様に、被検出体の固有状態や外部環境等の影響を抑制することができるとともに、接触検知の対象となっている被検出体の接触判断の条件をより厳格に設定することができるので、より正確に正規の被検出体の接触状態を検出、判断することができる。
【0049】
次に、本発明に係る接触検知装置及びその検知方法のさらに他の実施形態について、図面を参照して説明する。
図5は、本発明に係る接触検知装置の他の実施形態を示す概略ブロック図であり、図6は、本実施形態に係る接触検出装置の接触検知動作の一例を示す概念図である。ここで、接触検知装置及び接触検知動作について、上述した各実施形態と同等の構成及び手法については、同一の符号を付してその説明を簡略化又は省略する。
【0050】
本実施形態に係る接触検知装置は、図5に示すように、図1及び図2に示した接触検知装置に設けられた検出回路60の出力部に接触判定回路70を備えた構成を有している。
ここで、接触判定回路70は、第1接触電極及び第2接触電極に被検出体が接触された場合に、検出回路から出力される特定の信号レベルの出力信号をカウントして、所定のしきい値以上の回数、該出力信号が出力された場合に接触検知信号を出力する。
【0051】
具体的には、例えば、図3に示した場合と同様に、検出回路60において、予め基準電圧Vrefを第2接触電極20に現れる信号波形(振幅中心電圧Vc、電圧振幅ΔVqa)に比較して大きくなるように設定することにより、第1接触電極10及び第2接触電極20にまたがって被検出体OBJが接触され、該被検出体OBJ固有の容量成分及び抵抗成分により、上記信号波形の電圧振幅ΔVqaや振幅中心電圧Vcが変化して、図6に示すように、検出回路60に設けられたコンパレータCMPにより信号波形と基準電圧Vrefとの大小関係が逆転した(信号波形と基準電圧Vrefが交差した)状態が検出される。このとき、検出回路60(コンパレータCMP)から出力される接触検知信号の回数を接触判定回路70によりカウントし、当該カウント値が予め設定されたしきい値(例えば、連続して5回)を超えた場合に、正規の被検出体が接触したものと判定する。
【0052】
このような接触検知装置及びその検知方法によれば、被検出体の固有状態や外部環境等の影響を抑制することができるとともに、特定の容量成分及び抵抗成分を有する被検出体が継続的かつ安定的に接触された場合にのみ、正規の被検出体であると判定し、一方、第1接触電極及び第2接触電極間に導電性又は容量性の異物が接触した場合には、正規の被検出体と異物とを良好に判別して接触検知動作の対象から除外することができるので、極めて信頼性の高い接触検知装置を実現することができる。
【0053】
<画像読取装置>
次に、本発明に係る接触検知装置を適用した画像読取装置について、実施の形態を示して説明する。
まず、本発明に係る画像読取装置に適用可能なセンサの構成について説明する。
本発明に係る画像読取装置に適用可能なセンサとしては、CCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像デバイスを良好に用いることができる。
【0054】
CCDは、周知の通り、フォトダイオードや薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等のフォトセンサをマトリクス状に配列した構成を有し、各フォトセンサの受光部に照射された光量に対応して発生する電子−正孔対の量(電荷量)を、水平走査回路及び垂直走査回路により検出し、照射光の輝度を検知するものである。
ところで、このようなCCDを用いたフォトセンサシステムにおいては、走査された各フォトセンサを選択状態にするための選択トランジスタを個別に設ける必要があるため、検出画素数が増大するにしたがってシステム自体が大型化するという問題を有している。
【0055】
そこで、近年、このような問題を解決するための構成として、フォトセンサ自体にフォトセンス機能と選択トランジスタ機能とを持たせた、いわゆる、ダブルゲート構造を有する薄膜トランジスタ(以下、「ダブルゲート型トランジスタ」と記す)が開発され、システムの小型化、及び、画素の高密度化を図る試みがなされている。そのため、本発明における画像読取装置においても、このダブルゲート型トランジスタを良好に適用することができる。
ここで、本発明に係る画像読取装置に適用可能なダブルゲート型トランジスタによるフォトセンサ(以下、「ダブルゲート型フォトセンサ」と記す)について、図面を参照して詳しく説明する。
【0056】
<ダブルゲート型フォトセンサ>
図7は、ダブルゲート型フォトセンサの概略構成を示す断面構造図である。
図7(a)に示すように、ダブルゲート型フォトセンサ110は、励起光(ここでは、可視光)が入射されると電子−正孔対が生成されるアモルファスシリコン等の半導体層(チャネル層)111と、半導体層111の両端にそれぞれ設けられたnシリコンからなる不純物層117、118と、不純物層117、118上に形成されたクロム、クロム合金、アルミ、アルミ合金等から選択され、可視光に対して不透明のドレイン電極112及びソース電極113と、半導体層111の上方(図面上方)にブロック絶縁膜114及び上部(トップ)ゲート絶縁膜115を介して形成されたITO等の透明電極層からなり、可視光に対して透過性を示すトップゲート電極(第1のゲート電極)121と、半導体層111の下方(図面下方)に下部(ボトム)ゲート絶縁膜116を介して形成されたクロム、クロム合金、アルミ、アルミ合金等から選択され、可視光に対して不透明なボトムゲート電極(第2のゲート電極)122と、を有して構成されている。そして、このような構成を有するダブルゲート型フォトセンサ110は、ガラス基板等の透明な絶縁性基板119上に形成されている。
【0057】
ここで、図7(a)において、トップゲート絶縁膜115、ブロック絶縁膜114、ボトムゲート絶縁膜116、トップゲート電極121上に設けられる保護絶縁膜(誘導体)120及び最上層の透明電極層130は、いずれも半導体層111を励起する可視光に対して高い透過率を有する材質、例えば、窒化シリコンや酸化シリコン、ITO等により構成されることにより、図面上方から入射する光のみを検知する構造を有している。
【0058】
なお、このようなダブルゲート型フォトセンサ110は、一般に、図7(b)に示すような等価回路により表される。ここで、TGはトップゲート電極121に電気的に接続されたトップゲート端子、BGはボトムゲート電極122に電気的に接続されたボトムゲート端子、Sはソース電極113に電気的に接続されたソース端子、Dはドレイン電極112に電気的に接続されたドレイン端子である。
【0059】
次いで、上述したダブルゲート型フォトセンサの駆動制御方法について、図面を参照して説明する。
図8は、ダブルゲート型フォトセンサの基本的な駆動制御方法の一例を示すタイミングチャートである。ここでは、上述したダブルゲート型フォトセンサの構成(図7)を適宜参照しながら説明する。
【0060】
図8に示すように、まず、リセット動作(初期化動作)においては、ダブルゲート型フォトセンサ110のトップゲート端子TGにパルス電圧(以下、「リセットパルス」と記す;例えば、Vtg=+15Vのハイレベル)φTiを印加して、半導体層111、及び、ブロック絶縁膜114における半導体層111との界面近傍に蓄積されているキャリヤ(ここでは、正孔)を放出する(リセット期間Trst)。
【0061】
次いで、電荷蓄積動作(光蓄積動作)においては、トップゲート端子TGにローレベル(例えば、Vtg=−15V)のバイアス電圧φTiを印加することにより、リセット動作を終了し、キャリヤ蓄積動作による電荷蓄積期間Taがスタートする。電荷蓄積期間Taにおいては、トップゲート電極121側から入射した光量に応じて半導体層111の入射有効領域、すなわち、キャリヤ発生領域で電子−正孔対が生成され、半導体層111、及び、ブロック絶縁膜114における半導体層111との界面近傍、すなわち、チャネル領域周辺に正孔が蓄積される。
【0062】
そして、プリチャージ動作においては、電荷蓄積期間Taに並行して、プリチャージ信号φpgに基づいてドレイン端子Dに所定の電圧(プリチャージ電圧)Vpgを印加し、ドレイン電極112に電荷を保持させる(プリチャージ期間Tprch)。
次いで、読み出し動作においては、プリチャージ期間Tprchを経過した後、ボトムゲート端子BGにハイレベル(例えば、Vbg=+10V)のバイアス電圧(読み出し選択信号;以下、「読み出しパルス」と記す)φBiを印加すること(選択状態)により、ダブルゲート型フォトセンサ110をON状態にする(読み出し期間Tread)。
【0063】
ここで、読み出し期間Treadにおいては、チャネル領域に蓄積されたキャリヤ(正孔)が逆極性のトップゲート端子TGに印加されたVtg(−15V)を緩和する方向に働くため、ボトムゲート端子BGのVbg(+15V)によりnチャネルが形成され、ドレイン電流に応じてドレイン端子Dの電圧(ドレイン電圧)VDは、プリチャージ電圧Vpgから時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0064】
すなわち、電荷蓄積期間Taにおける光蓄積状態が明状態の場合には、チャネル領域に入射光量に応じたキャリヤ(正孔)が捕獲されているため、トップゲート端子TGの負バイアスを打ち消すように作用し、この打ち消された分だけボトムゲート端子BGの正バイアスによって、ダブルゲート型フォトセンサ110はON状態となる。そして、この入射光量に応じたON抵抗に従って、ドレイン電圧VDは、低下することになる。
一方、光蓄積状態が暗状態で、チャネル領域にキャリヤ(正孔)が蓄積されていない場合には、トップゲート端子TGに負バイアスをかけることによって、ボトムゲート端子BGの正バイアスが打ち消され、ダブルゲート型フォトセンサ110はOFF状態となり、ドレイン電圧VDが、ほぼそのまま保持されることになる。
【0065】
したがって、ドレイン電圧VDの変化傾向は、トップゲート端子TGへのリセットパルスφTiの印加によるリセット動作の終了時点から、ボトムゲート端子BGに読み出しパルスφBiが印加されるまでの時間(電荷蓄積期間Ta)に受光した光量に深く関連し、蓄積されたキャリヤが多い場合(明状態)には急峻に低下する傾向を示し、また、蓄積されたキャリヤが少ない場合(暗状態)には緩やかに低下する傾向を示す。そのため、読み出し期間Treadがスタートして、所定の時間経過後のドレイン電圧VD(=Vrd)を検出することにより、あるいは、所定のしきい値電圧を基準にして、その電圧に至るまでの時間を検出することにより、ダブルゲート型フォトセンサ110に入射した光(照射光)の光量が換算される。
上述した一連の画像読取動作を1サイクルとして、i+1番目の行のダブルゲート型フォトセンサ110にも同等の処理手順を繰り返すことにより、ダブルゲート型フォトセンサを2次元のセンサシステムとして動作させることができる。
【0066】
<フォトセンサシステム>
次いで、上述したダブルゲート型フォトセンサを所定の形式で配列して構成されるフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステムについて、図面を参照して説明する。ここでは、複数のダブルゲート型フォトセンサを2次元配列して構成されるフォトセンサアレイを示して説明するが、複数のダブルゲート型フォトセンサをX方向に1次元配列してラインセンサアレイを構成し、該ラインセンサアレイをX方向に直交するY方向に移動させて2次元領域を走査(スキャン)するものであってもよいことは言うまでもない。
【0067】
図9は、ダブルゲート型フォトセンサを2次元配列して構成されるフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステムの概略構成図である。
図9に示すように、フォトセンサシステムは、大別して、多数のダブルゲート型フォトセンサ110を、例えば、n行×m列(n、mは任意の自然数)のマトリクス状に配列したフォトセンサアレイ100と、各ダブルゲート型フォトセンサ110のトップゲート端子TG(トップゲート電極121)及びボトムゲート端子BG(ボトムゲート電極122)を各々行方向に接続して伸延するトップゲートライン101及びボトムゲートライン102と、各ダブルゲート型フォトセンサ110のドレイン端子D(ドレイン電極12)を列方向に接続したドレインライン(データライン)103と、ソース端子S(ソース電極13)を列方向に接続するとともに、接地電位に接続されたソースライン(コモンライン)104と、トップゲートライン101に接続されたトップゲートドライバ210と、ボトムゲートライン102に接続されたボトムゲートドライバ220と、ドレインライン103に接続され、図示を省略したコラムスイッチ、プリチャージスイッチ、出力アンプ等を備えてなるドレインドライバ230と、を有して構成されている。
【0068】
ここで、トップゲートライン101は、図7に示したトップゲート電極121とともに、ITO等の透明電極層で一体的に形成され、ボトムゲートライン102、ドレインライン103並びにソースライン104は、それぞれボトムゲート電極122、ドレイン電極112、ソース電極113と同一の励起光に不透明な材料で一体的に形成されている。また、ソースライン104には、後述するプリチャージ電圧Vpgに応じて設定される定電圧Vssが印加されるが、接地電位(GND)であってもよい。
【0069】
なお、図9において、φtgは、リセット電圧及び光キャリア蓄積電圧のいずれかとして選択的に出力される信号φT1、φT2、…φTi、…φTnを生成するための制御信号であり、φbgは、読み出し電圧及び非読み出し電圧のいずれかとして選択的に出力される信号φB1、φB2、…φBi、…φBnを生成するための制御信号、φpgは、プリチャージ電圧Vpgを印加するタイミングを制御するプリチャージ信号である。また、本実施形態に適用可能なドレインドライバ230の構成については、詳しく後述する。
【0070】
このような構成において、トップゲートドライバ210からトップゲートライン101を介して、トップゲート端子TGに信号φTi(iは任意の自然数;i=1、2、・・・n)を印加することにより、フォトセンス機能が実現され、ボトムゲートドライバ220からボトムゲートライン102を介して、ボトムゲート端子BGに信号φBiを印加し、ドレインライン103を介して検出信号をドレインドライバ230に取り込んで、シリアルデータ又はパラレルデータの出力電圧Voutとして出力することにより、選択読み出し機能が実現される。
【0071】
図10は、上述したようなフォトセンサシステムを適用した画像読取装置(指紋読取装置)の要部断面図である。なお、ここでは、説明及び図示の都合上、フォトセンサシステムの断面部分を表すハッチングの一部を省略する。
図10に示すように、指紋等の画像パターンを読み取る画像読取装置においては、ダブルゲート型フォトセンサ110が形成されたガラス基板等の絶縁性基板119下方側に設けられたバックライト(面光源)BLから照射光Laを入射させ、この照射光Laがダブルゲート型フォトセンサ110(詳しくは、ボトムゲート電極122、ドレイン電極112、ソース電極113)の形成領域を除く、透明な絶縁性基板119と絶縁膜115、116、120を透過して、透明電極層130上の指紋検出面(検知面)130aに載置された指(被検出体)FGに照射される。
【0072】
そして、指紋読取装置による指紋の検出時においては、指FGの皮膚表層FGsの半透明層が、フォトセンサアレイ100の最上層に形成された透明電極層130に接触することにより、透明電極層130と皮膚表層FGsとの間の界面に屈折率の低い空気層がなくなる。ここで、皮膚表層FGsの厚さは、650nmより厚いため、指紋FPの凸部FPaにおいて内部に入射された光Laは、皮膚表層FGs内を散乱、反射しながら伝搬する。伝搬された光Lbの一部は、透明な電極層130、透明な絶縁膜120、115、114及びトップゲート電極121を透過してダブルゲート型フォトセンサ110の半導体層111に励起光として入射される。このように、指FGの凸部FPaに対応する位置に配置されたダブルゲート型フォトセンサ110の半導体層111に光が入射されて生成されるキャリヤ(正孔)が蓄積されることにより、上述した一連の駆動制御方法にしたがって、指FGの画像パターンを明暗情報として読み取ることができる。
【0073】
また、指紋FGの凹部FPbにおいては、照射された光Laは、透明電極層130の指紋検出面130aと空気層との間の界面を通過し、空気層の先の指FGに到達して皮膚表層FGs内で散乱するが、皮膚表層FGsは空気より屈折率が高いため、ある角度で界面に入射された皮膚表層FGs内の光Lcは空気層に抜けにくく、凹部FPbに対応する位置に配置されたダブルゲート型フォトセンサ110の半導体層111への入射が抑制される。
【0074】
このように、透明電極層130としてITO等の透明な導電性材料を適用していることにより、透明電極層130上に載置された指FGに照射され、散乱、反射した光が良好に各ダブルゲート型フォトセンサ110の半導体層111に入射されることになるので、指(被検出体)FGの読取動作における読取感度特性が悪化することがなく、被検出体の画像パターン(指紋)の読み取りが良好に行われる。
【0075】
次に、本発明に係る画像読取装置を指紋読取装置に適用した具体的な構成について説明する。なお、以下に示す実施形態においては、センサとして、上述したダブルゲート型フォトセンサを適用した場合について説明する。
図11は、本発明に係る画像読取装置を指紋読取装置に適用した場合の一実施形態を示す概略構成図であり、図12は、本実施形態に係る指紋読取装置に指を載置した状態を示す概略図である。なお、ここでは、上述したフォトセンサ及びフォトセンサシステムの構成(図7、図9)を適宜参照しながら説明する。また、図7、図9に示した構成と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
【0076】
図11(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る指紋読取装置は、上述した構成を有するダブルゲート型フォトセンサ110を、絶縁性基板119の一面側にマトリクス状に配列して形成されたフォトセンサアレイ100、及び、ダブルゲート型フォトセンサ110が配列されたアレイ領域の全域に、保護絶縁膜120を介して形成された透明電極層(透明導電膜;上述した第1接触電極に相当する)130からなるセンサデバイスPDと、センサデバイスPDの他面側に配置され、センサデバイスPDの上面(指紋検出面130a)に接触される被検出体(指FG)に均一な光を照射する面光源BLと、センサデバイスPDとは電気的に絶縁するように設けられ、かつ、該センサデバイスPDの周囲を取り囲むように設けられた導電性のケース部材(導電性部材;上述した第2接触電極に相当する)240と、上述した実施形態に示したように透明電極層130に励起される信号波形の電圧振幅を所定の電圧範囲を制限する振幅制限回路(振幅制限手段)250と、ケース部材240に現れる信号波形の変化を検出して、透明電極層130及びケース部材240の双方へ被検出体(指FG)が共通に接触した状態を判定する検出回路(接触検出手段)260と、を有して構成されている。
【0077】
ここで、ケース部材240は、図11(a)、(b)に示すように、センサデバイスPDに対して、所定の間隙を有して(すなわち、空気等の絶縁物を介して)空間的に離間して配置することにより電気的に絶縁されている。また、ケース部材240は、センサデバイスPDの周囲を取り囲むとともに、センサデバイスPD(透明電極層130)上の指紋検出面130aを露出する所定の形状の開口部240aを備えて構成されている。ケース部材240は、透明電極層130を構成するITO等の透明な導電性材料に比較して低抵抗率を有する材料、例えば、クロム、アルミニウム、タングステン等から選択され材料の単層又は複数層の導電体で構成される。これにより、薄い板厚又は膜厚で十分なシート抵抗を実現することができるので、信号対雑音比(S/N)を十分に大きくすることができる。
【0078】
具体的には、図12(a)、(b)に示すように、ケース部材240の開口部240aは、センサデバイスPD上の指紋検出面130aに指FGを載置した状態で、該指FGが開口部240aの端部近傍のケース部材240にも同時に接触する形状を有するように構成されている。すなわち、指FGが透明電極層130及びケース部材240の双方に接触するために適した形状を有している。
なお、ケース部材240は、後述するように、指FGの指紋検出面130aへの接触状態を検知するための構成として機能するばかりではなく、センサデバイスPDを電気的な外乱要素や物理的な衝撃等から保護するためのシールドケースとしての機能を有しているものであってもよいし、被検出体である指をセンサデバイスPD上の指紋検出面130aに良好に接触するように誘導又は案内するためのガイド部材としての機能を有しているものであってもよい。
【0079】
また、検出回路260は、ケース部材240に現れる信号波形の変化を常時監視し、透明電極層130及びケース部材240の双方にまたがって指FGが接触されることにより、指FG固有の容量成分及び抵抗成分に基づいて、上記信号波形に所定の変化が検出された場合に、センサデバイスPD上の指紋検出面30aに指FGが載置されたものと判定し、該判定結果を接触検知信号として、例えば、指紋読取装置の動作制御を行うコントローラ(図示を省略)に出力することにより、指紋の読取動作の開始タイミングを制御する。
具体的には、検出回路260は、上述した接触検知装置(図2参照)に示したように、予め被検出体である指FGの容量成分及び抵抗成分に基づいて設定された基準電圧Vrefと、ケース部材240に現れる信号波形の電圧振幅及び振幅中心電圧との大小関係を比較し、基準電圧Vrefとの大小関係が変化(逆転)した場合に、接触検知信号を出力する(図3、図4、図6参照)。
【0080】
次いで、本実施形態に係る指紋読取装置(図9参照)に適用可能なドレインドライバについて、図面を参照して詳しく後述する。
図13は、本実施形態に係る指紋読取装置に適用可能なドレインドライバの一構成例を示す概略構成図である。なお、ここでは、上述したフォトセンサシステムの構成(図9)を適宜参照しながら説明する。また、図9に示した構成と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
【0081】
上述した実施形態(図9参照)に示したように、本発明に係る接触検知装置においては、被検出体が接触される第1接触電極(本実施形態における透明電極層130に相当する)に対して所定の信号波形を励起するための対向電極及びパルス発生回路を備えた構成を有している。このような構成を有する接触検知装置を、ダブルゲート型フォトセンサを備えた画像読取装置(指紋読取装置)に適用する場合にあっては、例えば、図7及び図9に示したダブルゲート型フォトセンサにおいてドレイン電極(制御電極)相互を接続するドレインラインを対向電極として適用するとともに、ドレインドライバをパルス発生回路(パルス信号印加手段)として適用することができる。
【0082】
本実施形態に係る指紋読取装置は、図13に示すように、概略、図7に示した構成と同等のフォトセンサアレイ100と、トップゲートドライバ210と、ボトムゲートドライバ220に加え、ドレインライン103に接続されたコラムスイッチ231と、コラムスイッチ231の出力端に設けられた出力アンプ232と、各ドレインライン103に一端側が接続されたスイッチ群233と、該スイッチ群233の他端側に共通に接続された単一のスイッチ234と、該スイッチ234に並列的に接続された複数の電源電圧Vpg、Vgndと、を備えたドレインドライバ230が設けられた構成を有している。
【0083】
ここで、ドレインドライバ230を構成するコラムスイッチ231及び出力アンプ232は、上述したダブルゲート型フォトセンサ110の動作制御手順に基づいて、被検出体の画像パターンに対応して各ダブルゲート型フォトセンサ110に蓄積された電荷量(キャリヤ)を、ドレインインライン103を介してドレイン電圧の変化としてコラムスイッチ231により各行ごとに一括して読み込み、出力アンプ232により所定の信号電圧に増幅して、出力端子Voutからシリアルデータ又はパラレルデータとして周辺回路(例えば、指紋照合装置等の画像処理装置)に出力する。
【0084】
また、スイッチ群233は、フォトセンサアレイ100を構成する各ドレインラインに一端側が個別に接続され、単一のスイッチ234に他端側が接続されるとともに、図示を省略したコントローラから供給されるプリチャージ信号φpgに基づいてオン/オフ状態が制御される。一方、スイッチ234は、複数の電源電圧Vpg、Vgndに接続され、図示を省略したコントローラから供給される切換制御信号φswに基づいて、電源電圧Vpg、Vgndのうちのいずれかが選択的に接続されるように制御される。
【0085】
このような構成を有するドレインドライバ230において、まず、上述した画像読取動作を実行する場合について説明すると、ダブルゲート型フォトセンサの電荷蓄積期間内に実行されるプリチャージ動作においては、切換制御信号φswによりスイッチ234をプリチャージ電圧Vpg側に切り換えた後、プリチャージ信号φpgにより所定のタイミングでスイッチ群233を一斉にオン動作させることにより、プリチャージ電圧Vpgをスイッチ群233及びドレインライン103を介して各ダブルゲート型フォトセンサに印加する。
【0086】
また、ダブルゲート型フォトセンサの読み出し動作においては、プリチャージ信号φpgによりスイッチ群233を一斉にオフ動作させることにより、電荷蓄積期間に被検出体(指FG)の画像パターンに基づいて各ダブルゲート型フォトセンサに蓄積された電荷(キャリヤ)の量に応じたドレイン電圧を、各ドレインライン103を介して一括してコラムスイッチ231に取り込んで、シリアルデータ又はパラレルデータとして出力アンプ232を介して出力端子から出力する。
【0087】
一方、上記画像読取動作に先立って実行される接触検知動作においては、まず、プリチャージ信号φpgにより所定のタイミングでスイッチ群233を一斉にオン動作させ、さらに、切換制御信号φswによりスイッチ234を所定のタイミングで繰り返し切り換え制御することにより、スイッチ234をプリチャージ電圧Vpg側及び接地電位Vgnd側に周期的かつ選択的に接続して、下限振幅電圧が0V、上限振幅電圧がプリチャージ電圧Vpg(例えば、3.3V)に規定された電圧振幅を有するパルス信号が各ドレインライン103を介して、フォトセンサアレイ100を構成する全てのダブルゲート型フォトセンサのドレイン電極に印加される。
【0088】
なお、本実施形態においては、各ドレインライン103へのパルス信号の印加方法として、切換制御信号φswにより切り換え制御されるスイッチ234により、プリチャージ電圧Vpg及び接地電位Vgndに周期的かつ選択して、0V〜Vpgの電圧振幅を有するパルス信号を生成して供給する構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、別個にパルス発生源を備え、接触検知動作時にのみ、スイッチ234を切り換え制御してパルス発生源から出力されるパルス信号を各ドレインライン103に供給するように構成してもよい。
【0089】
次いで、本実施形態に係る指紋読取装置における接触検知動作について、図面を参照して詳しく説明する。
図14は、本実施形態に係る指紋読取装置における接触検知動作を説明するための概略図であり、図15は、接触検知動作時におけるフォトセンサアレイの等価回路を示す図である。
上述したように、本実施形態に係る指紋読取装置においては、接触検知動作の際に、ドレインドライバ230が上述した実施形態(図1参照)に示した接触検知装置におけるパルス発生回路40として機能するとともに、ドレインライン103及びドレイン電極112が対向電極30として機能することにより、図14に示すように、ドレインライン103及びドレイン電極112に印加されたパルス信号に応じた信号波形が、上部ゲート絶縁膜115及び保護絶縁膜120を介して、アレイ領域の全域を被覆するように形成された透明電極層130に励起される。
【0090】
具体的には、図15に示すように、フォトセンサアレイ100は、最上層を構成する透明電極層130と、該透明電極層130に対して、保護絶縁膜120や上部ゲート絶縁膜115、下部ゲート絶縁膜116等を介して形成されたトップゲートライン101、ボトムゲートライン102、ドレインライン103及びソースライン104との間に各々寄生容量が形成された構成を有し、また、トップゲートライン101、ボトムゲートライン102、ドレインライン103及びソースライン104も相互に寄生容量が形成された構成を有している。
【0091】
一方、図14、図15に示すように、透明電極層130には、接地電位との間に振幅制限回路250が設けられているので、透明電極層130に励起される信号波形(交流電圧波形)の電圧振幅は、図14に示すように、振幅制限回路250に設けられた逆並列ダイオード回路における順方向電圧Vfに基づいて制限される(−Vf〜+Vf)。また、図15に示すように、トップゲートドライバ210に接続されたトップゲートライン101及びボトムゲートドライバ220に接続されたボトムゲートライン102は、各ドライバ210、220の出力抵抗Rt、Rbを介して接地電位に接続され、ソースライン104も接地電位に接続された構成を有している。
そのため、このような等価回路において、ドレインドライバ230によりドレインライン103を介して所定の電圧振幅を有するパルス信号を印加すると、トップゲートライン101、ボトムゲートライン102及びソースライン104には電位が励起されることなく、透明電極層130にのみ振幅制限回路250により電圧振幅が規定された所定の信号波形が励起されることになる。
【0092】
これにより、振幅制限回路250により規定された電圧振幅の範囲以外(振幅上限電圧+Vf以上の電圧、及び、振幅下限電圧−Vf以下の電圧)の電気的な外乱要素が透明電極層130に印加された場合であっても、過大な電圧が保護絶縁膜120を介してトップゲートライン101やボトムゲートライン102等に印加されることを抑制することができるので、フォトセンサアレイ100や各ドライバ210、220、230の静電破壊を適切に防止することができる。
【0093】
そして、上述したように透明電極層130に所定の信号波形を励起させた状態で、図14に示すように、透明電極層130及びケース部材240の双方に指FGが共通に接触すると、透明電極層130とケース部材240が指FG固有の容量成分及び抵抗成分を介して電気的に接続される。これにより、上述した接触検知装置の検知方法と同様に、指FG固有の容量成分及び抵抗成分によりケース部材に現れる信号波形が変化し、検出回路260に設けられたコンパレータ(図示を省略;図2参照)により予め設定された基準電圧との比較処理が行われて、上記信号波形の電圧成分と基準電圧が交差した場合には、検出対象としている正規の被写体(指FG)が透明電極層130に載置、接触されたものと判断して、図示を省略した指紋読取装置のコントローラに接触検知信号を出力する。コントローラは、該接触検知信号に基づいて、上述した一連の画像読取動作を実行して、透明電極層130(フォトセンサアレイ100)上に載置された指FGの画像パターン(指紋)を読み取る動作を開始する。
【0094】
ここで、本発明に係る接触検知装置及びその検知方法並びに接触検知装置を適用した画像読取装置の有効性について、他の構成と比較して具体的に説明する。図16は、本実施形態に係る画像読取装置の比較対象となる指紋読取装置の一例を示す概略構成図であり、図17は、比較対象となる指紋読取装置に適用される検知回路の一例を示す概略回路図である。ここで、上述した実施形態と同等の構成については、同等の符号を付してその説明を簡略化又は省略する。
【0095】
本実施形態に係る画像読取装置の比較対象となる指紋読取装置は、例えば、図16に示すように、上述した実施形態と同様に、最上面に透明電極層30が形成されたフォトセンサアレイ100を備えたセンサデバイスPDと、センサデバイスPDの背面側に配置された面光源BLと、センサデバイスPDの周囲に、電気的に絶縁するように設けられた導電性のケース部材240と、を備え、さらに、透明電極層130に検知回路260´が接続されるとともに、ケース部材240に接地電位が接続された構成を有している。ここで、少なくとも透明電極層130とケース部材240とは、空気等を介して電気的に絶縁されている。
【0096】
検知回路260´は、図17に示すように、概略、透明電極層30に接続された接点Naと接地電位との間に並列接続された入力保護ダイオード261及び抵抗素子262と、一接点Naと電源電圧Vddとの間に接続された抵抗素子263と、接点Naの電位を増幅率1で増幅するボルテージフォロワ264と、電源電圧Vddと接地電位との間に接続された可変抵抗素子265と、可変抵抗素子265により生成された電圧Vrとボルテージフォロワ264の出力電位Voとを比較して、その比較結果に応じた二値論理信号を接触検知信号として出力するコンパレータ266と、コンパレータ266の出力端と電源電圧Vddとの間に接続されたプルアップ抵抗267と、を備えて構成されている。
【0097】
このような構成を有する指紋読取装置において、透明電極層130及びケース部材240に指FGが共通に接触していない場合には、透明電極層130とケース部材240との間の抵抗値は、ほぼ無限大相当の高い値を示す。
一方、透明電極層130及びケース部材240に指FGが共通に接触した場合には、透明電極層130とケース部材240との間の抵抗値は、指FG固有の抵抗成分に基づく値(すなわち、指FGの皮膚抵抗相当の低い抵抗値)を示す。
【0098】
これにより、このような構成を有する画像読取装置においては、透明電極層130及びケース部材240への指FGの接触状態に応じて、接点Naの電位が変化することになるので、コンパレータ266に入力される基準電圧Vrを可変抵抗により適当に設定することにより、指FGの接触状態を二値論理信号からなる接触検知信号として出力することができる。そして、指紋読取装置は、該接触検知信号に基づいて、透明電極層130(フォトセンサアレイ100)上に載置された指FGの画像パターン(指紋)を読み取る動作を開始することができる。
【0099】
しかしながら、上述したように、センサデバイスPDの周囲に、電気的に絶縁するように設けられた導電性のケース部材240を備えた構成を有する画像読取装置(指紋読取装置)において、透明電極層130とケース部材240との間に接触した指FG特有の抵抗成分にのみ基づいて変化する電位を、検出回路260´により検出して指FGの接触状態を検出する方式を適用した場合には、指固有の抵抗成分に基づいて検出される抵抗値の変化が比較的小さいうえ、指の状態(肌の状態や個人差、外部環境等)により抵抗値のばらつきが比較的大きくなるという特性を有しているため、これに伴う広い範囲の電圧変化を検出して、均一接触検知を実現することは困難であるという問題を有しているとともに、被検出体(指)固有の抵抗成分に近似した抵抗値を有する導電性の異物(ゴミ等)を正規の被検出体として誤検出してしまうという問題を有している。
【0100】
これに対して、本発明に係る接触検知装置及びその検知方法並びに画像読取装置においては、被検出体(指)固有の容量成分及び抵抗成分の双方に基づいて、変化する信号波形と予め設定した基準電圧との比較処理を行うことにより、透明電極層への被検出体の接触状態を検知、判断するようにしているので、検出対象である被検出体とそれ以外の導電性又は容量性の異物とを良好かつ均一に判別することができるとともに、該異物による誤検出を抑制して、画像読取装置の誤動作を抑制することができ、信頼性の高い接触検知装置及び画像読取装置を提供することができる。
【0101】
なお、上述した実施形態においては、フォトセンサシステムに適用するセンサとしてダブルゲート型フォトセンサを適用した場合について示したが、本発明に適用されるセンサは、これに限定されるものではなく、フォトダイオードやTFT等、他の構成のフォトセンサを用いたフォトセンサシステムに対しても同様に適用することができる。
また、以上の説明では被検出体として「指」を例に示し、読取対象となる画像として「指紋」を例に示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述したような特有の抵抗成分及び容量成分を有する被検出体であれば、指以外の人体の特定の部位や他の物体を検出対象とするものであってもよい。
【0102】
【発明の効果】
【0103】
以上説明したように、本発明に係る画像読取装置によれば、複数のフォトセンサからなるセンサアレイを備え、該センサアレイ上の検知面に載置された指等の被検出体の画像(例えば、指紋)を読み取る画像読取装置であって、接触検知装置による被検出体の接触検知出力に基づいて、上記画像読取動作を開始する画像読取装置において、被写体が載置、接触される検知面に設けられた透明電極層(透明導電膜)と、該透明電極層に対して電気的に絶縁され、かつ、上記センサアレイを電気的な外乱要素や物理的な衝撃等から保護するケース部材(導電性部材)と、を備え、フォトセンサの制御電極を介して上記透明電極層に所定の信号波形(電圧振幅及び振幅中心電圧)を有するパルス信号を励起し、被検出体が透明電極層及びケース部材にまたがって接触された際に、被検出体固有の複数のパラメータ(容量成分及び抵抗成分)に基づいて、ケース部材に現れる信号波形の変化を検出することにより、透明電極層への被検出体の接触状態を検出する構成及び手法を有しているので、検出対象である被検出体とそれ以外の導電性又は容量性の異物とを良好かつ均一に判別することができるとともに、該異物による画像読取装置の誤動作を防止して、画像読取動作の開始タイミングの制御を均一かつ安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る接触検知装置の一実施形態を示す概略ブロック図である。
【図2】本実施形態に係る接触検知装置に適用される検知回路の構成例を示す概略回路図である。
【図3】本実施形態に係る接触検出装置の接触検知動作の一例を示す概念図である。
【図4】本実施形態に係る接触検出装置の接触検知動作の他の例を示す概念図である。
【図5】本発明に係る接触検知装置の他の実施形態を示す概略ブロック図である。
【図6】本実施形態に係る接触検出装置の接触検知動作の一例を示す概念図である。
【図7】ダブルゲート型フォトセンサの概略構成を示す断面構造図である。
【図8】ダブルゲート型フォトセンサの基本的な駆動制御方法の一例を示すタイミングチャートである。
【図9】ダブルゲート型フォトセンサを2次元配列して構成されるフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステムの概略構成図である。
【図10】フォトセンサシステムを適用した画像読取装置(指紋読取装置)の要部断面図である。
【図11】本発明に係る画像読取装置を指紋読取装置に適用した場合の一実施形態を示す概略構成図である。
【図12】本実施形態に係る指紋読取装置に指を載置した状態を示す概略図である。
【図13】本実施形態に係る指紋読取装置に適用可能なドレインドライバの一構成例を示す概略構成図である。
【図14】本実施形態に係る指紋読取装置における接触検知動作を説明するための概略図である。
【図15】接触検知動作時におけるフォトセンサアレイの等価回路を示す図である。
【図16】本実施形態に係る画像読取装置の比較対象となる指紋読取装置の一例を示す概略構成図である。
【図17】比較対象となる指紋読取装置に適用される検知回路の一例を示す概略回路図である。
【図18】従来技術における画像読取装置の一構成例(抵抗検出方式の指紋読取装置)を示す概略構成図である。
【図19】従来技術における画像読取装置の他の構成例(容量検出方式の指紋読取装置)を示す概略構成図である。
【符号の説明】
OBJ 被検出体
FG 指
10 第1接触電極
20 第2接触電極
30 対向電極
40 パルス発生回路
50、250 振幅制限回路
60、260 検出回路
110 ダブルゲート型フォトセンサ
100 フォトセンサアレイ
130 透明電極層
240 ケース部材

Claims (6)

  1. 複数のフォトセンサからなるセンサアレイを備え、該センサアレイ上の検知面に載置された被検出体の画像を読み取る画像読取装置において、
    前記センサアレイ上の検知面に設けられた透明導電膜と、
    前記センサアレイに近接する任意位置に設けられ、かつ、前記透明導電膜に対して電気的に離間、絶縁して設けられた導電性部材と、
    絶縁膜を介して前記透明導電膜の下層に設けられ、かつ、前記フォトセンサの動作状態を制御する制御電極と、
    前記制御電極を介して前記透明導電膜に、所定の電圧振幅を有するパルス状の信号波形を励起するパルス信号印加手段と、
    前記被検出体が前記透明導電膜及び前記導電性部材の双方に共通に接触した場合に、前記導電性部材に現れる信号波形の変化に基づいて、前記透明導電膜への前記被検出体の接触状態を検出する接触検出手段と、
    を備えたことを特徴とする画像読取装置。
  2. 前記接触検出手段は、前記被検出体特有の容量成分及び抵抗成分に基づいて、前記導電性部材に現れる前記信号波形の電圧振幅及び振幅中心電圧の変化を検出することを特徴とする請求項記載の画像読取装置。
  3. 前記接触検出手段は、前記特定の被検出体が前記透明導電膜及び前記導電性部材の双方に共通に接触した状態における電圧範囲を規定するために予め設定されたしきい値電圧と、前記導電性部材に現れる前記信号波形との比較により、前記被検出体の接触状態を検出することを特徴とする請求項又は記載の画像読取装置。
  4. 前記接触検出手段は、前記導電性部材に現れる前記信号波形の電圧振幅の範囲内に、前記しきい値電圧が含まれている場合に、前記被検出体が前記透明導電膜に正常に接触したものと判定して、前記被検出体の画像を読み取る動作を開始することを特徴とする請求項記載の画像読取装置。
  5. 前記センサは、半導体層からなるチャネル領域を挟んで形成されたソース電極及びドレイン電極と、少なくとも前記チャネル領域の上方及び下方に各々絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、を有し、
    前記第1のゲート電極にリセットパルスを印加して前記センサを初期化し、前記ドレイン電極にプリチャージパルスを印加した後、前記第2のゲート電極に読み出しパルスを印加することにより、前記初期化終了から前記読み出しパルスの印加までの電荷蓄積期間に、前記チャネル領域に蓄積された電荷の量に対応する電圧を出力電圧として出力し、
    前記プリチャージパルスに係る信号電圧と前記出力電圧との差分に基づいて、前記被写体の画像が生成されることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の画像読取装置。
  6. 前記制御電極は、前記複数のフォトセンサを構成する前記ドレイン電極であり、
    前記パルス信号印加手段は、前記複数のフォトセンサを構成する前記ドレイン電極にプリチャージパルスを一括して印加する駆動制御手段であることを特徴とする請求項記載の画像読取装置。
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