JP4161191B2 - 電界電子放出素子の製造方法 - Google Patents
電界電子放出素子の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4161191B2 JP4161191B2 JP2003003773A JP2003003773A JP4161191B2 JP 4161191 B2 JP4161191 B2 JP 4161191B2 JP 2003003773 A JP2003003773 A JP 2003003773A JP 2003003773 A JP2003003773 A JP 2003003773A JP 4161191 B2 JP4161191 B2 JP 4161191B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- substrate
- cathode
- electron emission
- field electron
- pattern
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Carbon And Carbon Compounds (AREA)
- Cold Cathode And The Manufacture (AREA)
- Electrodes For Cathode-Ray Tubes (AREA)
- Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はカーボンナノチューブ等の筒状炭素分子を用いた陰極を有する電界電子放出素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のナノテクノロジーの進歩は著しく,なかでもカーボンナノチューブ等の分子構造体は、熱伝導性,電気伝導性,機械的強度などで優れた特性を持つ安定した材料であることから、トランジスタ,メモリ,電界電子放出素子など幅広い用途への応用が期待されている。
【0003】
例えば、カーボンナノチューブの用途の1つとして、冷陰極電界電子放出(以下、「電界電子放出」という)を実現するのに好適であることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。電界電子放出とは、真空中に置かれた金属または半導体に所定のしきい値以上の大きさの電界を与えると、金属または半導体の表面近傍のエネルギー障壁を電子が量子トンネル効果により通過し、常温においても真空中に電子が放出されるようになる現象である。
【0004】
電界電子放出の原理を画像表示に応用したFED(Field Emission Display)は、高輝度、低消費電力、薄型などの特徴を有し、従来の陰極線管(Cathode Ray Tube;CRT)に代わる表示装置として開発が進められている(例えば、特許文献1ないし特許文献7参照。)。FEDは、電子を放出する陰極が形成されたカソードパネルと、放出された電子の衝突により励起されて発光する蛍光体層が塗布された陽極が形成されたアノードパネルとを対向配置して一体化し、内部を高真空状態としたものが一般的な構成である。ただし、この構成では、カソードパネルとアノードパネルとの距離を接近して設けることが困難であり、カソードパネルとアノードパネルとの間に高い電圧を印加する必要がある。そのため、カソードパネルとアノードパネルとの間に更に引き出し電極(ゲート電極)を設けることにより、陰極と引き出し電極との距離を接近させ、両電極の間に低い電圧を印加して電界電子放出を生じさせるようにしている。
【0005】
図58は、このような従来のFEDの一構成例を表す断面図である。なお、この例においては、陰極の構造の種類として、その形状が円錐形状であるスピント(Spindt:人名)型と呼ばれる構造のものを表している(例えば、非特許文献2および特許文献1参照)。
【0006】
このFEDは、カソードパネル1100と、このカソードパネル1100に対向配置されたアノードパネル1200とを備えている。カソードパネル1100は、カソード電極1110が形成された基板1120と、絶縁膜1130を介してカソード電極1110に対向配置された引き出し電極1140とを有している。カソード電極1110および引き出し電極1140は、それぞれ複数本ずつ形成されており、各引き出し電極1140は、カソード電極1110に直交するように対向配置されている。基板1120上において、引き出し電極1140に対向する側のカソード電極1110の表面には、複数の陰極1150が配置されている。
【0007】
各引き出し電極1140には、陰極1150から放出された電子e- が通過可能な大きさの開口部1160が、各陰極1150に対応して複数設けられている。また、各引き出し電極1140には、各引き出し電極1140に循環的に走査電圧を印加する図示しないスキャンドライバが電気的に接続されている。一方、各カソード電極1110には、画像信号に応じて各カソード電極1110に選択的に電圧を印加する図示しないデータドライバが電気的に接続されている。
【0008】
各陰極1150は、引き出し電極1140とカソード電極1110とが交叉する位置に対応してマトリクス状に配置されると共に、底面が対応するカソード電極1110に電気的に接続されている。陰極1150は、所定の電界を選択的に与えることによって、トンネル効果により先端部から電子放出が生じるようになっている。なお、通常、FEDでは、所定数(例えば、1000個)の陰極1150の集まりが1画素に対応している。
【0009】
アノードパネル1200は、ガラス材料等で構成される光学的に透明な透明基板1210と、この透明基板1210のカソードパネル1100に対向する面側に配置されたアノード電極1220とを備えている。アノード電極1220は、カソード電極1110に対応して複数本形成されている。また、アノード電極1220の透明基板1210側の表面には、電子e- の入射に応じて発光する蛍光体が塗布されることにより、蛍光体膜1230が形成されている。なお、アノード電極1220をITO(Indium-Tin Oxide)などの透明導電性材料により構成し、蛍光体膜1230をアノード電極1220のカソードパネル1100側の表面に形成することも可能である。
【0010】
このような構成のFEDにおいては、引き出し電極1140とカソード電極1110との間に選択的に電圧を印加すると、その交点に位置する陰極1150において電界電子放出が起こり、電子e- がアノード電極1220に向けて放出される。陰極1150から放出された電子e- は、アノード電極1220に設けられた図示しない微細な孔を通過して蛍光体膜1230に衝突し、蛍光体を発光させる。この蛍光体の発光により、所望の画像表示がなされる。
【0011】
ところで、FEDにおいては、更に低い電圧で電界電子放出を生じさせるため、陰極の先端を細く鋭く尖らせて局所的に電界強度を強める種々の試みがなされており、カーボンナノチューブはそのような試みにおいて盛んに利用されている(例えば、非特許文献1参照。)。例えば、熱CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法によりシリコン(Si)チップの先端に単層カーボンナノチューブを成長させたものを陰極として用いたFEDが提案されている(例えば、非特許文献3参照。)。また、従来の方法によりシリコンエミッタを形成したのち、カーボンナノチューブを形成するための金属触媒からなる膜を形成し、グリッド電極上の触媒の膜をエッチバック法で除去して、エミッタの先端部のみに熱CVD法でカーボンナノチューブを成長させた報告がある(非特許文献4参照。)。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−203473号公報
【特許文献2】
特開2002−197965号公報
【特許文献3】
特開2002−150922号公報
【特許文献4】
特開2001−23506号公報
【特許文献5】
特開2000−285795号公報
【特許文献6】
特開2000−123713号公報
【特許文献7】
特開2000−67736号公報
【非特許文献1】
斎藤弥八,表面化学,1998年,第19巻,第10号,p.680−686
【非特許文献2】
C.A.スピント(C. A. Spindt)、外3名,ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Journal of Applied Physics),(米国),1976年,第47巻,p5248−5263
【非特許文献3】
第49回応用物理学関係連合講演会,講演予稿集,29p−K−7
【非特許文献4】
日刊工業新聞,平成14年4月11日付記事,「CNTのフィールドエミッター4ボルト低電圧で電子放出」
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
FEDの陰極としてカーボンナノチューブを形成するには、遷移金属等からなる触媒の微細なパターンを形成し、それを用いてカーボンナノチューブを微細な間隔で規則正しく整列させる技術が必須とされる。しかしながら、従来では、ある程度の量産性を達成できる技術としてはフォトリソグラフィしかなかった。フォトリソグラフィにより金属触媒の微細なパターンを形成するには、エネルギービームの波長を短くするしか方法がなく、現在の技術ではこれ以上の短波長化は困難である。そのため、フォトリソグラフィにより遷移金属等のパターンを形成する場合には、遷移金属パターンの寸法およびその間隔は、エネルギービームの波長で定まり、現在の技術では0.05μm(50nm)以下にすることができず、また、パターンの間隔(ピッチ)は100nm以下にすることができない。すなわち、従来の手法では、金属触媒等のより微細なパターンを形成するには限界があるという問題があった。
【0014】
更に、従来のカーボンナノチューブを用いた陰極では多数のカーボンナノチューブが接近して配置されているので、各カーボンナノチューブの表面における電界強度が著しく低下してしまうという問題があった。そのため、カーボンナノチューブの表面の電界強度を高くするためにはカソード電極と引き出し電極またはアノード電極との間に高い電圧を印加する必要があり、低電圧化が困難であった。
【0015】
加えて、従来では、陰極を構成する多数のカーボンナノチューブの形状および成長方向が不均一であるので、放出される電子の量が不均一となり、輝度のばらつきが生じるという問題があった。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、筒状炭素分子をより微細な間隔で規則正しく配列させた陰極を有する電界電子放出素子を量産可能とする電界電子放出素子の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の電界電子放出素子の製造方法は、変調された熱分布による溶融を利用して、筒状炭素分子の触媒機能を有する金属を配置する触媒配置工程と、筒状炭素分子を成長させる成長工程とを含み、触媒配置工程は、第1の物質からなる素材基板の表面に対し、変調された熱分布を与え、素材基板の表面を溶融させる溶融工程と、素材基板の表面を放熱させることにより、熱分布に応じた位置に突起を形成する突起形成工程と、素材基板に形成された突起を筒状炭素分子の触媒機能を有する第2の物質からなる他の基板に接触させ、素材基板の突起の先端に第2の物質を付着させる工程とを含み、成長工程は、素材基板と電極とを対向配置して、素材基板と電極との間に電界を印加する工程を含むものである。
本発明による第2の電界電子放出素子の製造方法は、変調された熱分布による溶融を利用して、筒状炭素分子の触媒機能を有する金属を配置する触媒配置工程と、筒状炭素分子を成長させる成長工程とを含み、触媒配置工程は、平坦電極の表面に、所望のパターンに応じて変調された熱分布を用いて突起のパターンを形成する突起電極形成工程と、触媒機能を有する金属を含む触媒溶液の中において、突起電極と導電性の基板との間に電界を印加して金属を還元し析出させることにより、基板上に、触媒機能を有する金属よりなり突起電極に対応したパターンを形成する還元析出工程とを含むものである。
【0025】
本発明による第1および第2の電界電子放出素子の製造方法では、変調された熱分布による溶融を利用して、筒状炭素分子の触媒機能を有する金属が基板に配置される。そののち、筒状炭素分子が成長する。
【0026】
本発明による第1の電界電子放出素子の製造方法では、変調された熱分布による溶融および放熱により突起が形成され、この突起の先端に筒状炭素分子の触媒機能を有する第2の物質が付着される。
本発明による第2の電界電子放出素子の製造方法では、平坦電極の表面に所望のパターンに応じて変調された熱分布を用いて突起のパターンが形成され、次いで、触媒機能を有する金属を含む触媒溶液の中において、突起電極と導電性の基板との間に電界が印加される。これにより、触媒金属が還元され析出され、基板上に、触媒機能を有する金属よりなる突起電極に対応したパターンが形成される。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
まず、図1ないし図6を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る電界電子放出素子の製造方法および表示装置の製造方法について説明する。本実施の形態の方法は、カーボンナノチューブを用いた陰極を有する電界電子放出素子を形成するものであり、変調された熱分布による溶融を利用して、カーボンナノチューブの触媒機能を有する金属を配置する「触媒配置工程」と、カーボンナノチューブを成長させて陰極を形成する「陰極形成工程」とを含むものである。得られた電界電子放出素子は、更に、基板の表面に、触媒配置工程で配置された金属を回避して分離溝を形成する「分離溝形成工程」を経て、例えばFEDのカソードパネルとして利用される。
【0029】
更に、本実施の形態では、触媒配置工程は、素材基板10の表面に所望のパターンに応じて変調された熱分布11を与え、素材基板10の表面を溶融させる「溶融工程」と、素材基板10の表面を放熱させることにより、熱分布11に応じた位置に、すなわち所望のパターンで第2の物質を析出させる「析出工程」とを含んでいる。
【0030】
(溶融工程)
まず、図1を参照して溶融工程を説明する。ここで、素材基板10は第1の物質により構成され、この第1の物質中に析出材料として第2の物質が添加されたものである。なお、第2の物質は、偏析係数が正のもの、すなわち、第1の物質中に添加されることにより第1の物質の融点を低下させるもので、加熱により溶融されたのち冷却過程において凝固する際に溶融領域に残る性質を有するものである。本実施の形態では、第1の物質からなる素材基板10はシリコン(Si)基板であり、第2の物質として金属触媒としての鉄(Fe)を用いるものとする。
【0031】
素材基板10は、厚さが例えば40nmであり、例えばシリコンにより構成された支持体10Aにより保持されている。なお、素材基板10が十分な厚さを有している場合には、支持体10Aは不要である。
【0032】
第1の物質としては、上述のシリコンに限らず、その他の半導体材料、例えばゲルマニウム(Ge)などが挙げられるが、その他、金属材料でもよく、例えば、タンタル(Ta),タングステン(W)または白金(Pt)などの高融点金属や、それらの合金を用いてもよい。
【0033】
第2の物質は、カーボンナノチューブを形成するための金属触媒としては、上述の鉄(Fe)の他、バナジウム(V),マンガン(Mn),コバルト(Co),ニッケル(Ni),モリブデン(Mo),タンタル(Ta),タングステン(W)または白金(Pt)が挙げられる。また、イットリウム(Y),ルテチウム(Lu),ホウ素(B),銅(Cu),リチウム(Li),シリコン(Si),クロム(Cr),亜鉛(Zn),パラジウム(Pd),銀(Ag),ルテニウム(Ru),チタン(Ti),ランタン(La),セリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),テルビウム(Tb),ジスプロシウム(Dy),ホルミウム(Ho)またはエルビウム(Er)を用いてもよい。なお、以上の物質は2種以上同時に使用してもよく、また、これら物質の2種以上からなる化合物を用いてもよい。また、金属フタロシアン化合物,メタセロン、金属塩を用いることも可能である。更に、酸化物あるいはシリサイドであってもよい。
【0034】
加えて、用途によっては、第2の物質は、アルミニウム(Al),シリコン(Si),タンタル(Ta),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ニオブ(Nb),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),亜鉛(Zn),鉛(Pb),カルシウム(Ca),ランタン(La),ゲルマニウム(Ge)などの金属および半金属などの元素の、窒化物,酸化物,炭化物,フッ化物,硫化物,窒酸化物,窒炭化物,または酸炭化物などからなる誘電体材料を用いることが可能である。具体的には、AlN,Al2 O3 ,Si3 N4 ,SiO2 ,MgO,Y2 O3 ,MgAl2 O4 ,TiO2 ,BaTiO3 ,SrTiO3 ,Ta2 O5 ,SiC,ZnS,PbS,Ge−N,Ge−N−O,Si−N−O,CaF2 ,LaF,MgF2 ,NaF,TiF4 などである。更にまた、これらの材料を主成分とする材料や、これらの材料の混合物、例えばAlN−SiO2 を用いることも可能である。加えてまた、鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),ガドリニウム(Gd)等の磁性体材料を用いることもできる。
【0035】
熱分布11は、素材基板10の表面温度がエネルギービーム12の照射により空間的に変調されて、高温領域11Hと低温領域11Lとが周期的に形成されたものである。エネルギービーム12は、波長および位相の揃った平行光であり、本実施の形態では、高出力を得るため、例えばXeClエキシマレーザを用いる。
【0036】
本実施の形態では、熱分布11は、エネルギービーム12を回折格子13で回折させることにより与えられる。回折格子13は、エネルギービーム12を回折させてエネルギー量を空間的に変調するものであり、例えば、光学ガラス板に、直線状の平行な溝13Aが一定の周期間隔Pで一次元方向に形成されたものである。本実施の形態では、例えば、石英材料よりなる板に直線状の平行な溝13Aが例えば1μmの周期間隔Pで一次元方向に配列され、エネルギービーム12のエネルギー量を、溝13Aが配列されている方向に沿って一次元方向に変調するようになっている。なお、回折格子13は必ずしも溝などの凹凸を形成したものに限られず、例えば、エネルギービーム12の透過部分と非透過部分とが印刷により形成されたものであってもよい。
【0037】
このような回折格子13を用いることにより、高温領域11Hは、溝13Aの延長方向に沿った直線状に形成されると共に、溝13Aの配列されている方向に沿って一次元方向に配列される。熱分布11の空間的周期T、すなわち高温領域11Hの間隔(ピッチ)は、回折格子13の周期間隔Pおよびエネルギービーム12の波長λに応じて定まる。波長λを小さくするほど、または、周期間隔Pを微細にするほど熱分布11の空間的周期Tを微細化することができる。
【0038】
エネルギービーム12のエネルギー量は、低温領域11Lにおいて素材基板10の表面が溶融する温度となるように設定される。これにより、素材基板10の表面の全体を溶融させることができる。このとき、エネルギービーム12としてエキシマレーザを用いると、パルス発光の照射回数によりエネルギー量の制御を行うことができる。本実施の形態では、例えば、エネルギービーム12のエネルギー量を350mJ/cm2 、パルス照射回数を10回とする。
【0039】
(析出工程)
次に、図2を参照して析出工程を説明する。すなわち、溶融工程において素材基板10の表面を溶融させたのち、エネルギービーム12の照射を止めると、素材基板10の表面の温度は徐々に低下して凝固するが、このとき、第2の物質(Fe)は、高温領域11Hに移動し、更に高温領域11Hの中で最後に凝固する部分に析出する。こうして、高温領域11Hに対応する位置に第2の物質が析出し、ほぼ平面状の析出領域14が形成される。以上により、析出領域14のパターンを有する基板15が得られる。
【0040】
ここで、「平面状」とは、その基板15の表面からの高さが、表面のラフネス程度、例えば1nm未満であり実質的に平坦な場合をいう。
【0041】
析出領域14は、高温領域11Hが溝13Aに対応して一次元方向に配列された直線状であるので、これに対応して、一次元方向に配列された直線状のパターンとして形成される。析出領域14の幅(線幅)W、すなわち熱分布11の変調方向における析出領域14の寸法は、素材基板10における第2の物質(鉄)の含有量により定まり、第2の物質の含有量が多いほど、析出領域14の幅Wは大きくなる。析出領域14の幅Wは、原理的には第2の物質の原子の大きさより大きい任意の値をとり得るものであり、素材基板10における第2の物質の含有量を制御することにより従来のフォトリソグラフィ技術では不可能であった50nm未満を実現することができる。
【0042】
析出領域14の幅Wの具体的な値は、第2の物質の材料および析出領域14の用途によって定められるが、例えば後述する図3に示したように析出領域14に析出した鉄を触媒として複数のカーボンナノチューブ16が直線状に配列された陰極17を形成する場合には、析出領域14の幅Wは、0.4nm以上50nm未満であることが好ましい。その理由は、カーボンナノチューブ16の直径が、最小で0.4nmであるからである。
【0043】
析出領域14の幅Wは、0.4nm以上30nm以下であればより好ましい。カーボンナノチューブ16は、直径が0.4nm以上30nm以下の範囲にあるものが多いからである。
【0044】
更に、析出領域14の幅Wは、0.4nm以上10nm以下であれば更に好ましい。なぜなら、析出領域14の幅方向に多数のカーボンナノチューブ16が接近して屹立する可能性が小さくなるので、陰極17を例えば電界電子放出素子(エミッタ)として使用する場合に、カーボンナノチューブ16の各々の表面における電界強度の低下を防止し、電界放出に必要な印加電圧を小さくすることができるからである。また、例えば直線状に配列されたカーボンナノチューブ16を記録装置(メモリ)として利用する場合には、一本の析出領域14には幅方向に1本のみのカーボンナノチューブ16を形成することが必要となる場合があるので、カーボンナノチューブ16の直径と析出領域14の幅Wとを一致させることが好ましいからである。
【0045】
また、析出領域14の間隔L、すなわち熱分布11の変調方向における析出領域14の間隔(ピッチ)は、熱分布11の空間的周期Tに応じて、すなわち回折格子13の周期間隔Pおよびエネルギービーム12の波長λに応じて定まる。波長λを小さくするほど、または、周期間隔Pを微細にするほど析出領域14の間隔Lを微細化することができ、従来のフォトリソグラフィでは不可能な微細な間隔Lで析出領域14を形成することが可能である。
【0046】
析出領域14の間隔Lは、例えば100nm以下であることが好ましい。従来のフォトリソグラフィでは解像限界が50nmであるため、従来のフォトリソグラフィで形成可能な最小のパターンは、例えば山50nm、谷50nm、および山50nmで、その間隔は解像限界の2倍すなわち100nmとなるからである。更に、析出領域14の間隔Lは、50nm以下とすればより好ましい。従来の電子ビームリソグラフィの解像限界が25nm程度であるため、従来の電子ビームリソグラフィで形成可能な最小のパターンの間隔は、同様に解像限界の2倍すなわち50nmとなるからである。
【0047】
以上により、触媒配置工程が完了し、素材基板10に析出領域14を有する基板15が形成される。
【0048】
(陰極形成工程)
続いて、図3を参照して陰極形成工程を説明する。基板15の上に、CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法により複数のカーボンナノチューブ16を成長させる。成長条件としては、例えば、カーボンナノチューブ16の原料となる炭素化合物としてメタン(CH4 )を用い、析出領域14に析出した鉄を触媒として、900℃、15分とすることができる。カーボンナノチューブ16は析出領域14にのみ成長するので、析出領域14のパターン通りにカーボンナノチューブ16が直線状に配列された陰極17が形成される。カーボンナノチューブ16の直径は、原料となる炭素化合物の種類と、成長条件の設定により定めることが可能である。1つの陰極17に含まれるカーボンナノチューブ16の数は、少なければ少ないほど望ましい。電界がより集中しやすくなるからである。
【0049】
(分離溝形成工程)
続いて、図4および図5を参照して分離溝形成工程を説明する。分離溝形成工程は、基板15の表面に分離溝を形成することによって、陰極17を互いに分離するものである。
【0050】
まず、図4に示したように、基板15の表面に対して、エネルギービーム12を回折格子13で回折させた熱分布11を、溶融工程とは180度異なる位相で与える。すなわち、基板15と回折格子13との相対的な位置を、溶融工程における位置よりも、カーボンナノチューブ16の列の間隔(ピッチ)の半分ずらすことによって、熱分布11の高温領域11Hが、カーボンナノチューブ16の列の中間の位置に形成されるようにする。
【0051】
エネルギービーム12のエネルギー量は、高温領域11Hにおいて基板15の表面が切削(アブレーション;ablation)されるように設定される。これにより、図5に示したように、平行線状の分離溝18が、カーボンナノチューブ16の形成されている位置を回避して、その中間の位置に形成される。このとき、カーボンナノチューブ16が形成されている位置は低温領域11Lに対応するので、エネルギービーム12のエネルギー量は低く、カーボンナノチューブ16の温度は例えば400℃以下に抑えられる。よって、カーボンナノチューブ16が熱分布11による悪影響を受けることはない。
【0052】
なお、支持体10Aを二酸化ケイ素(SiO2 ),酸化アルミニウム(Al2 O3 ),プラスチックあるいはガラスなどの絶縁体材料により構成すると共に分離溝18を形成する際に素材基板10を完全に切削するようにすれば、陰極17を分離溝18によって電気的に分離することができるので好ましい。更に、分離溝18を支持体10Aにも食い込むように形成すれば、陰極17をより確実に電気的に分離することができるので好ましい。
【0053】
以上により、直線状に配列されたカーボンナノチューブ16を各々一列ずつ有する複数の陰極17と、これらの陰極17を互いに分離する分離溝18とを備えた電界電子放出素子が得られる。
【0054】
(FED)
図6は、このような電界電子放出素子を用いたFEDの概略構成を表すものである。このFEDは、カソードパネル20とアノードパネル30とが対向配置されて一体化され、内部が高真空状態とされている。
【0055】
カソードパネル20は、上述した陰極17が形成された基板15により構成されている。カソードパネル20は、必要な画面の寸法および基板15の大きさに応じて、複数の基板15を複合したものを用いることも可能である。陰極17は、赤(R;Red )用のカソード電極21R,緑(G;Green )用のカソード電極21Gおよび青(B;Blue)用のカソード電極21Bを介して、データドライバ22に接続されている。カソード電極21R,21G,21Bとしては、分離溝18によって切断された素材基板10を利用してもよいし、別途配線を設けるようにしてもよい。
【0056】
アノードパネル30は、ガラス材料などよりなる透明基板31に、R用のアノード電極32R,G用のアノード電極32GおよびB用のアノード電極32Bが、1画素単位で交互に配列された構成を有している。アノード電極32R,32G,32Bは、各カソード電極21R,21G,21Bに対して直交配置されている。また、アノード電極32R,32G,32Bには、スキャンドライバ34が接続されている。アノード電極32R,32G,32Bの透明基板31側の表面には、R用の蛍光体膜33R,G用の蛍光体膜33GおよびB用の蛍光体膜33Bがそれぞれ形成されている。
【0057】
このFEDでは、例えばアノード電極32R,32G,32Bとカソード電極21R,21G,21Bとの間に選択的に電圧を印加すると、その交点に位置する陰極17において電界電子放出が起こり、電子e- がアノード電極32R,32G,32Bに向けて放出される。陰極17から放出された電子e- は、アノード電極32R,32G,32Bに設けられた図示しない微細な孔を通過して蛍光体膜33R,33G,33Bに衝突し、蛍光体を発光させる。この蛍光体の発光により、所望の画像表示がなされる。ここでは、陰極17のカーボンナノチューブ16が、従来のフォトリソグラフィでは不可能な微細な幅Wおよび間隔Lで析出した鉄よりなる析出領域14に形成されているので、より高精細な画像が鮮明に表示される。
【0058】
このように本実施の形態では、カーボンナノチューブ16を形成するための触媒機能を有する鉄よりなる析出領域14のパターンを、変調された熱分布11による溶融を利用して配置形成し、この析出領域14のパターンを用いてカーボンナノチューブ16を成長させて陰極17を形成するようにしたので、熱分布11を制御することにより、従来のフォトリソグラフィでは不可能であった微細な幅Wおよび間隔Lを有する析出領域14のパターンを形成し、この析出領域14のパターン通りにカーボンナノチューブ16が規則正しく配列された陰極17を得ることができる。よって、この陰極17を有する電界電子放出素子を用いて、より高精細な画像を鮮明に表示することのできるファインピッチのFEDを実現することができる。
【0059】
また、析出領域14のパターンを有する基板15をドライプロセスにより形成することができるので、従来のフォトリソグラフィを利用したプロセスに比べて生産が容易であり、再現性が良く、低コスト化が可能である等の利点を得ることができる。
【0060】
更に、本実施の形態では、添加材として鉄を含むシリコンからなる素材基板10の表面に対して熱分布11を与え、素材基板10の表面を溶融させたのち、素材基板10の表面を放熱させるようにしたので、熱分布11に応じた位置に選択的に鉄を析出させ、ほぼ平面状の析出領域14からなるパターンを形成することができる。
【0061】
加えて、本実施の形態では、エネルギービーム12を回折させることにより熱分布11を与えるようにしたので、回折格子13の周期間隔Pを微細化することにより熱分布11の空間的周期Tを容易に制御し、析出領域14の間隔Lを精度よく微細化することができる。
【0062】
加えて、本実施の形態では、基板15の表面に、カーボンナノチューブ16を回避して分離溝18を形成するようにしたので、分離溝18によって陰極17が互いに分離され、FEDのカソードパネル20として利用する際に、各陰極17にデータドライバ22を接続して選択的に電圧を印加することができる。
【0063】
更にまた、分離溝18を、エネルギービーム12を回折させることにより熱分布11を与えて形成するようにしたので、微細な間隔で形成されたカーボンナノチューブ16の列の中間の位置に、精度よく分離溝18を形成することができる。また、通常のレーザアブレーションよりも短時間に複数の分離溝18を形成することができ、カーボンナノチューブ16に熱による悪影響を及ぼすこともない。
【0064】
〔変形例1〕
次に、図7を参照して、上記第1の実施の形態の変形例1について説明する。本変形例は、分離溝18を、カーボンナノチューブ16の複数列毎、例えば2列毎に形成し、複数の陰極17が、カーボンナノチューブ16を各々2列ずつ有するようにしたものである。図示しないが、同様にしてカーボンナノチューブ16の3列毎、4列毎に分離溝18を形成することも可能であることは言うまでもない。
【0065】
このような複数列毎の分離溝18は、基板15の表面に与える熱分布41の空間的周期を、例えば溶融工程における熱分布11の空間的周期Tの整数倍(nT;nは正の整数かつn≧2)となるようにすることによって形成することができる。このように空間的周期を制御することは、例えば、分離溝形成工程において用いる回折格子43の周期間隔を、溶融工程における回折格子13の周期間隔Pの整数倍(nP;nは正の整数かつn≧2)に設定することによって可能である。また、エネルギービーム12の波長λあるいは入射角を制御することによっても可能である。
【0066】
基板15と回折格子43との相対的な位置は、第1の実施の形態と同様に、熱分布41の高温領域41Hが、カーボンナノチューブ16の列の中間の位置に形成されるように制御する。
【0067】
本変形例によれば、カーボンナノチューブ16の複数列毎に分離溝18を形成することができる。
【0068】
〔変形例2〕
次に、図8ないし図10を参照して、本発明の変形例2を説明する。本変形例は、析出領域14のパターンを形成した後、カーボンナノチューブ16を成長させて陰極17を形成する前に分離溝形成工程を行うようにしたものである。
【0069】
(溶融工程および析出工程)
まず、第1の実施の形態と同様にして溶融工程および析出工程を行い、析出領域14のパターンを有する基板15を形成する。
【0070】
(分離溝形成工程)
続いて、図8および図9を参照して分離溝形成工程を説明する。まず、図8に示したように、基板15の表面に対して、エネルギービーム12を回折格子13で回折させた熱分布11を、溶融工程とは180度異なる位相で与える。すなわち、基板15と回折格子13との相対的な位置を、溶融工程における位置よりも、析出領域14の間隔(ピッチ)Lの半分ずらすことによって、熱分布11の高温領域11Hが、析出領域14の中間の位置に形成されるようにする。
【0071】
エネルギービーム12のエネルギー量は、高温領域11Hにおいて基板15の表面が切削されるように設定される。これにより、図9に示したように、平行線状の分離溝18が、析出領域14のパターンを回避して、その中間の位置に形成される。
【0072】
(陰極形成工程)
続いて、図10に示したように、第1の実施の形態と同様にして析出領域14にカーボンナノチューブ16を成長させて陰極17を形成する。
【0073】
本変形例では、分離溝18を形成した後にカーボンナノチューブ16を成長させて陰極17を形成するので、カーボンナノチューブ16が熱分布11による悪影響を受けることを確実に防止することができる。
【0074】
〔変形例3〕
図11は、本発明の変形例3における分離溝形成工程を表している。本変形例では、上記変形例2において、変形例1に説明したのと同様にして析出領域14の複数本毎、例えば2本毎に分離溝18を形成するようにしたものである。
【0075】
〔第2の実施の形態〕
次に、図12ないし図18を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る電界電子放出素子の製造方法および表示装置の製造方法を説明する。本実施の形態は、素材基板10の表面を放熱させることにより素材基板10の表面に突起を形成し、第2の物質を突起の先端部に析出させ、少なくとも先端部が第2の物質により構成された突起のパターンを有する基板を形成するようにしたものである。また、本実施の形態は、陰極形成工程において、基板と電極とを対向配置して両者の間に電界を印加し、低電圧で垂直にカーボンナノチューブを成長させるようにしたものである。
【0076】
(溶融工程)
まず、例えば、上記第1の実施の形態における図1と同様にして溶融工程を行うが、そのときに、エネルギービーム12のエネルギー量を一定値を超えるように制御する。例えば、エネルギービーム12として、前述の第1の実施の形態と同様にエキシマレーザを用いる場合には、パルス発光の照射回数によりエネルギー量の制御を行うことができるが、本実施の形態では、例えばパルス照射回数を100回とする。
【0077】
(析出工程)
溶融工程において素材基板10の表面を溶融させたのち、エネルギービーム12の照射を止めると、溶融工程において照射されたエネルギービーム12のエネルギー量が一定値を超えている場合には、図12に示したように、高温領域11Hに対応する素材基板10の表面が隆起して、突起51が形成される。
【0078】
突起51は、高温領域11Hが溝13Aに対応して一次元方向に配列された直線状であるので、これに対応して、一次元方向に配列された直線状のリブ(突条)のパターンとして形成される。この突起51は、素材基板10の表面に近い部分から凝固していくので、最後に凝固する先端付近に第2の物質(鉄)が析出して、析出領域52が形成される。したがって、析出領域52は、突起51の先端部に形成される。ここで、先端部とは、突起51を素材基板10の表面に平行な水平面H(図13および図14参照)で切断した場合に、突起51の先端を含む部分をいう。例えば、析出領域52は、図12に示したように突起51の先端にのみ形成されていてもよいし、図13に示したように突起51全体が析出領域52となっていてもよい。あるいは図14に示したように突起51の先端および中腹にかけての部分に形成されていてもよい。
【0079】
これにより、少なくとも先端部に鉄よりなる析出領域52が形成された突起51のパターンを有する基板53が得られる。
【0080】
ここで、「突起」とは、基板53の表面から隆起し、その高さが第1の実施の形態における平面状の析出領域14の場合より高い1nm以上の場合をいう。
【0081】
析出領域52の幅(線幅)W、すなわち熱分布11の変調方向における析出領域52の寸法は、第1の実施の形態と同様に、素材基板10における第2の物質(鉄)の含有量により定まり、第2の物質(鉄)の含有量が大きいほど、析出領域52の幅Wは大きくなる。析出領域52の幅Wは、原理的には第2の物質の原子の大きさより大きい任意の値をとり得るものであり、素材基板10における第2の物質の含有量を制御することにより従来のフォトリソグラフィ技術では不可能であった50nm未満を実現することができる。
【0082】
本実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、析出領域52が突起51であり、先端になるに従って断面積が小さくなっているので、析出領域52の幅の微細化が容易である。
【0083】
析出領域52の幅Wの具体的な値については、第1の実施の形態において析出領域14の幅Wについて説明したのと同様に、第2の物質の材料および析出領域52の用途によって定められるが、例えば図16に示したように析出領域52に析出した鉄を触媒として、複数のカーボンナノチューブ54が直線状に配列された陰極55を形成する場合には、幅Wは、0.4nm以上50nm未満であることが好ましく、0.4nm以上30nm以下であればより好ましく、0.4nm以上10nm以下であれば更に好ましい。理由は第1の実施の形態において説明したのと同様である。
【0084】
また、突起51の間隔L、すなわち熱分布11の変調方向における析出領域52の間隔(ピッチ)は、熱分布11の空間的周期Tに応じて、すなわち回折格子13の周期間隔Pおよびエネルギービーム12の波長λに応じて定まる。波長λを小さくするほど、または、周期間隔Pを微細にするほど突起51の間隔Lを微細化することができ、従来のフォトリソグラフィでは不可能な微細な間隔Lで突起51および析出領域52を形成することが可能である。突起51の間隔Lは、例えば100nm以下であることが好ましく、更に、50nm以下とすればより好ましい。理由は第1の実施の形態において説明したのと同様である。
【0085】
以上により、触媒配置工程が完了する。
【0086】
(陰極形成工程)
続いて、図15および図16を参照して陰極形成工程を説明する。第1の実施の形態と同様にして、例えばCVD法あるいはプラズマ増速CVD(Plasma Enhanced CVD;PECVD)法などにより、基板53の上にカーボンナノチューブ54を成長させて陰極55(図16参照)を形成する。このとき、図15(A)に示したように、基板53と例えばカーボン(C)よりなる電極56とを対向配置して両者の間に電圧を印加する。基板53には突起51が形成されているので、突起51の位置で電界が強まり、図15(B)に示したように、カーボンナノチューブ54を垂直に成長させることができる。よって、低電圧でカーボンナノチューブ54の成長方向を一定方向に制御することができる。こうして得られた陰極55は、カーボンナノチューブ54の配向性が高いので、FEDの陰極として利用すれば電子放出特性を向上させることができる。
【0087】
なお、このように電界を印加しながらカーボンナノチューブ54を成長させる場合には、素材基板10を構成する第1の物質として、例えばリン(P)を添加したシリコンなどの導電性の良好なものを用いることが好ましい。
【0088】
(分離溝形成工程)
続いて、第1の実施の形態において説明したのと同様にして分離溝形成工程を行う。これにより、図17に示したように、カーボンナノチューブ54の列を回避して、その中間の位置に分離溝58が形成される。
【0089】
以上により、直線状に配列されたカーボンナノチューブ54を各々一列ずつ有する複数の陰極55と、これらの陰極55を互いに分離する分離溝58とを備えた電界電子放出素子が得られる。
【0090】
(FED)
図18は、このような電界電子放出素子を用いたFEDの概略構成を表すものである。このFEDは、カソードパネル60とアノードパネル30とが対向配置されて一体化され、内部が高真空状態とされている。
【0091】
カソードパネル60は、上述した陰極55が形成された基板53により構成されている。カソードパネル60は、必要な画面の寸法および基板53の大きさに応じて、複数の基板53を複合したものを用いることも可能である。陰極55は、R用のカソード電極61R,G用のカソード電極61GおよびB用のカソード電極61Bを介して、データドライバ62に接続されている。カソード電極61R,61G,61Bとしては、分離溝18によって切断された素材基板10を利用してもよいし、別途配線を設けるようにしてもよい。
【0092】
アノードパネル30は、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0093】
このFEDでは、例えばアノード電極32R,32G,32Bとカソード電極61R,61G,61Bとの間に選択的に電圧を印加すると、その交点に位置する陰極55において電界電子放出が起こり、蛍光体膜33R,33G,33Bの蛍光体の発光により、所望の画像表示がなされる。ここでは、陰極55のカーボンナノチューブ54の成長方向が垂直に揃っており、配向性が高いので、放出される電子の量が均一化され、電子放出特性が向上する。また、輝度のばらつきが防止される。
【0094】
このように本実施の形態では、素材基板10の所定の位置に、少なくとも先端部が第2の物質(鉄)により構成された突起51を形成するようにしたので、パターンを平面状にする場合に比べて析出領域52の幅をより微細にすることができ、第1の実施の形態に比べてより微細なパターンを形成することができる。
【0095】
また、本実施の形態では、基板53と電極56とを対向配置して両者の間に電圧を印加するようにしたので、低電圧でカーボンナノチューブ54の成長方向を一定方向に制御することができる。よって、陰極55のカーボンナノチューブ54の配向性を高め、FEDの陰極として利用すれば電子放出特性を向上させ、輝度のばらつきを防止することができる。
【0096】
〔変形例4〕
図19は、第2の実施の形態の陰極形成工程の変形例を表している。本変形例では、図19(A)に示したように、基板53を二枚対向配置し、突起51のパターンどうしを向かい合わせて、二枚の基板53の間に電界を印加するようにしたものである。本変形例でも、突起51の位置で電界が強まり、図19(B)に示したように、両方の基板53の突起51の先端部からカーボンナノチューブ54を垂直に成長させることができる。よって、上記第2の実施の形態の効果に加え、二枚の基板53に同時にカーボンナノチューブ54を垂直に形成することができるので、生産効率を更に向上させることができる。
【0097】
〔変形例5〕
続いて、図20および図21を参照して、第2の実施の形態の陰極形成工程の他の変形例を説明する。本変形例では、電極として、基板53の突起51のパターンに対応する突起のパターンが形成されたものを用い、基板53の突起51のパターンと電極の突起のパターンとを向かい合わせて対向配置するようにしたものである。
【0098】
まず、図20に示したように、第2の実施の形態と同一の電極56に、第2の実施の形態の溶融工程および析出工程と同様にして突起56Aのパターンを形成し、突起電極56Bとする。突起56Aは、先端部に析出領域が形成されていないことを除いては、形状、幅Wおよび間隔Lなどすべて突起51と同様に形成される。
【0099】
続いて、図21(A)に示したように、基板53の突起51のパターンと突起電極56Bの突起56Aのパターンとを向かい合わせて対向配置し、基板53と突起電極56Bとの間に電界を印加する。これにより、突起51,56Aの位置で電界が強まり、図21(B)に示したように、基板53の突起51の先端部からカーボンナノチューブ54を垂直に成長させることができる。
【0100】
〔変形例6〕
図22は、第2の実施の形態の陰極形成工程の更に他の変形例を表している。本変形例では、図22(A)に示したように、第1の実施の形態の平面状の析出領域14のパターンが形成された基板15と、変形例5の突起56Aのパターンが形成された突起電極56Bとを対向配置して電界を印加するようにしたものである。これにより、突起56Aの位置で電界が強まり、図22(B)に示したように、析出領域14の位置からカーボンナノチューブ16を垂直に成長させることができる。成長したカーボンナノチューブ16には、析出領域14に析出していた第2の物質57、すなわち本実施の形態では鉄が内包される。
【0101】
〔変形例7〕
図23は、第1の実施の形態の触媒配置工程の変形例を表している。本変形例では、触媒配置工程は、平坦状の電極の表面に、所望のパターンに応じて変調された熱分布を用いて突起のパターンを形成する「突起電極形成工程」と、触媒機能を有する金属を含む触媒溶液の中において、突起電極と導電性の基板との間に電界を印加して金属を還元し析出させることにより、基板上に、触媒機能を有する金属よりなり突起電極に対応したパターンを形成する「還元析出工程」とを含んでいる。
【0102】
(突起電極形成工程)
まず、変形例5の図20に示したように、平坦面を有する電極56の表面に、突起56Aのパターンを形成して突起電極56Bとする。突起56Aのパターンの形成方法は、変形例5で説明したのと同様である。
【0103】
(還元析出工程)
そして、図23(A)に示したように、カーボンナノチューブを形成するための触媒機能を有する金属、例えば鉄を含む触媒溶液71の中において、突起電極56Bと導電性の基板72とを対向配置して電界を印加する。触媒機能を有する金属としては、鉄に限らず、第1の実施の形態において第2の物質として挙げたものを用いることができる。これにより、突起56Aの位置で電界が強まり、図23(B)に示したように、導電性の基板72に、突起56Aのパターンに対応して鉄を還元により析出させて析出領域73を形成することができる。こうして、析出領域73のパターンを有する基板72を得ることができ、触媒配置工程が終了する。
【0104】
本変形例では、平坦な電極56の表面に、熱分布を用いて突起56Aのパターンを形成し、このパターンに対応して導電性の基板72に触媒金属(鉄)の析出領域73を形成するようにしたので、析出領域73を、従来のフォトリソグラフィでは不可能な微細な幅および間隔で形成された突起56Aのパターンに対応して形成することができる。
【0105】
〔第3の実施の形態〕
次に、図24ないし図32を参照して、第3の実施の形態に係る電界電子放出素子の製造方法および表示装置の製造方法について説明する。本実施の形態は、溶融工程において、エネルギービームのエネルギー量を、二次元方向すなわちX方向およびY方向に変調させ、素材基板10の表面に対して、X方向熱分布81XおよびY方向熱分布81Yを与えるようにしたものである。
【0106】
(溶融工程)
まず、図24を参照して溶融工程を説明する。X方向熱分布81Xは、素材基板10の表面温度がX方向に変調されて、X方向高温領域81XHとX方向低温領域81XLとが周期的に形成されたものである。また、Y方向温度分布81Yは、素材基板10の表面温度がY方向に変調されて、Y方向高温領域81YHとY方向低温領域81YLとが周期的に形成されたものである。
【0107】
X方向熱分布81XおよびY方向熱分布81Yは、例えば、エネルギービーム12を、非透過部分82Aおよび透過部分82Bが二次元方向に配列された回折格子82で回折させることにより与えられる。回折格子82としては、例えば、非透過部分82Aにエネルギービーム12を透過させないマスクが印刷されたものなどを用いることができる。
【0108】
図25は、素材基板10の表面においてX方向温度分布81XとY方向温度分布81Yとが重畳されることにより、熱分布83が形成された状態を表している。図25に示したように、素材基板10の表面には、X方向高温領域81XHとY方向高温領域81YHとの重複する位置に高温領域83Hを有し、X方向低温領域81XLとY方向低温領域81YLとの重複する位置に低温領域83Lを有するような熱分布83が形成される。これにより、高温領域83Hは、非透過部分82Aおよび透過部分82Bの配列されている方向に沿って二次元方向に配列される。
【0109】
熱分布83のX方向における空間的周期TX、すなわち高温領域83HのX方向における間隔(ピッチ)は、回折格子82のX方向における周期間隔PXおよびエネルギービーム12の波長λに応じて定まる。また、熱分布83のY方向における空間的周期TY、すなわち高温領域83HのY方向における間隔(ピッチ)は、回折格子82のY方向における周期間隔PYおよびエネルギービーム12の波長λに応じて定まる。波長λを小さくするほど、または周期間隔PX,PYを微細にするほど熱分布83の空間的周期TX,TYを微細化することができる。ここで、本実施の形態では、回折格子82のX方向における周期間隔PXとは、一つの非透過部分82AのX方向における寸法と一つの透過部分82BのX方向における寸法との和をいい、回折格子82のY方向における周期間隔PYとは、一つの非透過部分82AのY方向における寸法と一つの透過部分82BのY方向における寸法との和をいう。
【0110】
回折格子82のX方向における周期間隔PXとY方向における周期間隔PYとは、互いに独立に設定することができる。したがって、図26に示したように、熱分布83のX方向における空間的周期TXとY方向における空間的周期TYとを、互いに独立に設定することも可能である。
【0111】
なお、回折格子82としては、マスク印刷により非透過部分82Aおよび透過部分82Bが形成されたものではなく、凹部または凸部が形成されたものを用いることも可能である。凹凸が形成された回折格子82の場合には、回折格子82のX方向における周期間隔PXとは、凹部(または凸部)のX方向における間隔(ピッチ)をいい、回折格子82のY方向における周期間隔PYとは、凹部(または凸部)のY方向における間隔(ピッチ)をいう。
【0112】
エネルギービーム12のエネルギー量は、低温領域83Lにおいて素材基板10の表面が溶融する温度となるように設定される。これにより、素材基板10の表面の全体を溶融させることができる。このとき、エネルギービーム12としてエキシマレーザを用いると、パルス発光の照射回数によりエネルギー量の制御を行うことができる。
【0113】
(析出工程)
次に、図27および図28を参照して、析出工程を説明する。溶融工程において素材基板10の表面の全体を溶融させたのち、エネルギービーム12の照射を止めて素材基板10の表面を放熱させ、熱分布83に応じた位置すなわち高温領域83Hに対応する位置に第2の物質を析出させ、析出領域84を形成する。これにより、析出領域84のパターンを有する基板85が得られる。
【0114】
析出領域84は、高温領域83Hが素材基板10の表面に二次元方向に配列されているので、これに対応して、素材基板10の表面に二次元方向に配列された点状のパターンとして形成される。析出領域84のX方向における寸法(直径)DXおよびY方向における寸法(直径)DYは、素材基板10における第2の物質の含有量により定まり、第2の物質の含有量が大きいほど、析出領域84の寸法DX,DYは大きくなる。析出領域84の寸法DX,DYは、原理的には第2の物質の原子の大きさより大きい任意の値をとり得るものであり、素材基板10における第2の物質の含有量を制御することにより従来のフォトリソグラフィ技術では不可能であった50nm未満を実現することができる。
【0115】
析出領域84の寸法DX,DYの具体的な値は、第2の物質の材料および析出領域84の用途によって定められるが、例えば図29に示したように析出領域84に析出した鉄を触媒として、複数のカーボンナノチューブ86が二次元に配列された陰極87を形成する場合には、析出領域84の寸法DX,DYはそれぞれ、0.4nm以上50nm未満であることが好ましい。カーボンナノチューブ86の直径が最小で0.4nmであるからである。
【0116】
析出領域84の寸法DX,DYはそれぞれ、0.4nm以上30nm以下であればより好ましい。カーボンナノチューブ86は、直径が3nm以上30nm以下の範囲にあるものが多いからである。
【0117】
更に、析出領域84の寸法DX,DYは、3nm以上10nm以下であれば更に更に好ましい。析出領域84のX方向またはY方向に多数のカーボンナノチューブ86が接近して屹立する可能性が小さくなるので、陰極87を例えば電界電子放出素子として使用する場合に、カーボンナノチューブ86の各々の表面における電界強度の低下を防止し、電界放出に必要な印加電圧を小さくすることができるからである。また、例えば二次元に配列されたカーボンナノチューブ86を記録装置(メモリ)として利用する場合には、一箇所の析出領域84には1本のみのカーボンナノチューブ86を形成することが必要となる場合があるので、カーボンナノチューブ86の直径と析出領域84の寸法DX,DYとを一致させることが好ましいからである。
【0118】
また、析出領域84のX方向における間隔LX、およびY方向における間隔LYは、熱分布83の空間的周期TX,TYに応じて、すなわち回折格子82の周期間隔PX,PYおよびエネルギービーム12の波長λに応じて定まる。波長λを小さくするほど、または、回折格子82の周期間隔PX,PYを微細にするほど析出領域84の間隔LX,LYを微細化することができ、従来のフォトリソグラフィでは不可能な微細な間隔LX,LYで析出領域84を形成することも可能である。
【0119】
析出領域84の間隔LX,LYは、例えば100nm以下であることが好ましい。前述のように、従来のフォトリソグラフィでは解像限界が50nmであるため、従来のフォトリソグラフィで形成可能な最小のパターンは、例えば山50nm、谷50nm、および山50nmで、その間隔は解像限界の2倍すなわち100nmとなるからである。更に、析出領域84の間隔LX,LYは、50nm以下とすればより好ましい。従来の電子ビームリソグラフィの解像限界が25nm程度であるため、従来の電子ビームリソグラフィで形成可能な最小のパターンの間隔は、同様に解像限界の2倍すなわち50nmとなるからである。
【0120】
なお、図26に示したように熱分布83のX方向における空間的周期TXとY方向における空間的周期TYとを、互いに独立に設定した場合には、これに対応して、図30に示したように析出領域84が楕円形に形成される。
【0121】
以上により、触媒配置工程が完了する。
【0122】
(陰極形成工程)
次に、図29に示したように、第1の実施の形態と同様にして、例えばCVD法により基板85の上にカーボンナノチューブ86を成長させて陰極87を形成する。カーボンナノチューブ84は析出領域84にのみ成長するので、カーボンナノチューブ86が二次元方向に配列された陰極87が形成される。1つの陰極87に含まれるカーボンナノチューブ86の数は、少なければ少ないほど望ましい。電界がより集中しやすくなるからである。
【0123】
なお、陰極形成工程において、第2の実施の形態のように基板85と図示しない電極とを対向配置して両者の間に電圧を印加するようにしてもよい。
【0124】
(分離溝形成工程)
続いて、第1の実施の形態において説明したのと同様にして分離溝形成工程を行う。これにより、図31に示したように、二次元方向に配列されたカーボンナノチューブ86を回避して、その中間の位置に平行線状の分離溝88が形成される。
【0125】
以上により、間隔をあけて配列されたカーボンナノチューブ86を各々一列ずつ有する複数の陰極87と、これらの陰極87を互いに分離する分離溝88とを備えた電界電子放出素子が得られる。
【0126】
(FED)
図32は、このような電界電子放出素子を用いたFEDの概略構成を表すものである。このFEDは、カソードパネル90とアノードパネル30とが対向配置されて一体化され、内部が高真空状態とされている。
【0127】
カソードパネル90は、上述した陰極87が形成された基板85により構成されている。カソードパネル90は、必要な画面の寸法および基板85の大きさに応じて、複数の基板85を複合したものを用いることも可能である。陰極87は、R用のカソード電極91R,G用のカソード電極91GおよびB用のカソード電極91Bを介して、データドライバ92に接続されている。カソード電極91R,91G,91Bとしては、分離溝88によって切断された素材基板10を利用してもよいし、別途配線を設けるようにしてもよい。
【0128】
アノードパネル30は、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0129】
このFEDでは、例えばアノード電極32R,32G,32Bとカソード電極91R,91G,91Bとの間に選択的に電圧を印加すると、その交点に位置する陰極55において電界電子放出が起こり、蛍光体膜33R,33G,33Bの蛍光体の発光により、所望の画像表示がなされる。ここでは、陰極87のカーボンナノチューブ86が間隔をあけて二次元に配列されているので、各カーボンナノチューブ86の表面における電界強度が大きくなり、電子放出特性が向上する。
【0130】
このように本実施の形態では、エネルギービーム12のエネルギー量を二次元方向に変調させることにより熱分布83を形成するようにしたので、素材基板10の表面に二次元方向に配列された析出領域84のパターンを形成することが可能となる。
【0131】
また、回折格子82を用いてエネルギービーム12を回折させることにより熱分布83を形成するようにしたので、回折格子82の周期間隔PX,PYを微細化することにより熱分布83の空間的周期TX,TYを容易に制御し、析出領域84の間隔LX,LYを微細化することができる。
【0132】
〔変形例8〕
図33は、第3の実施の形態における分離溝形成工程の変形例を表している。本変形例では、図33に示したように、分離溝88を格子状に形成するようにしている。この場合には、分離溝88のX方向における間隔とY方向における間隔とは独立に設定することができる。
【0133】
このように分離溝88を格子状に形成した場合には、FEDのカソードパネルとして利用するためのカソード電極は、例えば、基板85の裏側から穴を開けて配線を行うことなどが可能である。
【0134】
なお、第3の実施の形態の分離溝形成工程は、図33の他にも様々な変形が可能である。例えば、分離溝形成工程は、析出領域84を形成した後、カーボンナノチューブ86を成長させて陰極87を形成する前に行っても良い。また、分離溝88は、カーボンナノチューブ86の複数列、例えば2列毎に形成することもできる。
【0135】
〔変形例9〕
次に、図34ないし図36を参照して、第3の実施の形態の析出工程の変形例を説明する。本変形例は、素材基板10の表面に二次元方向に配列された突起を形成し、この突起の先端部に第2の物質を析出させるようにしたものである。
【0136】
(溶融工程)
まず、例えば、第3の実施の形態における図24および図25と同様にして溶融工程を行うが、そのときに、第2の実施の形態と同様に、エネルギービーム12のエネルギー量を一定値を超えるように制御する。
【0137】
(析出工程)
溶融工程において素材基板10の表面を溶融させたのち、エネルギービーム12の照射を止めると、溶融工程において照射されたエネルギービーム12のエネルギー量が一定値を超えている場合には、図34および図35に示したように、高温領域83Hに対応する素材基板10の表面が隆起して、突起101が形成される。
【0138】
突起101は、高温領域83Hが素材基板10の表面に二次元方向に配列されているので、これに対応して、素材基板10の表面に二次元方向に配列された錘体のパターンとして形成される。突起101は、素材基板10の表面に近い部分から凝固していくので、最後に凝固する先端付近に第2の物質が析出して、析出領域102が形成される。したがって、析出領域102は、突起101の先端部に形成される。ここで、先端部の意味およびその具体例については、第2の実施の形態において図13および図14を参照して説明したのと同様である。
【0139】
これにより、少なくとも先端部に鉄よりなる析出領域102が形成された突起101のパターンを有する基板103が得られる。
【0140】
析出領域102のX方向における寸法(直径)DXおよびY方向における寸法(直径)DYは、素材基板10における第2の物質(鉄)の含有量により定まり、第2の物質(鉄)の含有量が大きいほど、析出領域102の寸法DX,DYは大きくなる。析出領域102の寸法DX,DYは、原理的には第2の物質の原子の大きさより大きい任意の値をとり得るものであり、素材基板10における第2の物質の含有量を制御することにより従来のフォトリソグラフィ技術では不可能であった50nm未満を実現することができる。
【0141】
析出領域102の寸法DX,DYの具体的な値については、第3の実施の形態において析出領域84の寸法DX,DYについて説明したのと同様に、第2の物質の材料および析出領域102の用途によって定められるが、例えば図36に示したように析出領域102に析出した鉄を触媒として、複数のカーボンナノチューブ104が二次元方向に配列された陰極105を形成する場合には、析出領域102の寸法DX,DYはそれぞれ、0.4nm以上50nm未満であることが好ましく、0.4nm以上30nm以下であればより好ましく、0.4nm以上10nm以下であれば更に好ましい。理由は、第3の実施の形態において説明したのと同様である。
【0142】
また、突起101のX方向における間隔LX、およびY方向における間隔LYは、熱分布83の空間的周期TX,TYに応じて、すなわち回折格子82の周期間隔PX,PYおよびエネルギービーム12の波長λに応じて定まる。波長λを小さくするほど、または、回折格子82の周期間隔PX,PYを微細にするほど突起101および析出領域102の間隔LX,LYを微細化することができ、従来のフォトリソグラフィでは不可能な微細な間隔LX,LYで突起101および析出領域102を形成することも可能である。突起101および析出領域102の間隔LX,LYは、100nm以下であることが好ましく、更に、50nm以下であればより好ましい。理由は、第3の実施の形態において説明したのと同様である。
【0143】
以上により、触媒配置工程が完了する。
【0144】
(陰極形成工程)
次に、図36に示したように、第3の実施の形態と同様にして、例えばCVD法により基板103の上にカーボンナノチューブ104を成長させて陰極105を形成する。カーボンナノチューブ104は析出領域102にのみ成長するので、カーボンナノチューブ104が二次元方向に配列された陰極105が形成される。
【0145】
このように本変形例では、素材基板10の所定の位置に、高さ方向の少なくとも一部が第2の物質により構成された突起101のパターンを二次元方向に配列するようにしたので、第1,第3の実施の形態の平面状の析出領域14,84に比べてより微細な寸法の析出領域102を形成することができる。
【0146】
〔第4の実施の形態〕
次に、図37ないし図39を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る電界電子放出素子の製造方法および表示装置の製造方法を説明する。本実施の形態は、陰極に対応して引き出し電極を形成する引き出し電極形成工程を更に含むものである。すなわち、本実施の形態は、上記変形例2において分離溝形成工程を行った後に、引き出し電極を形成し、続いてカーボンナノチューブを成長させて陰極を形成するようにしたものである。
【0147】
(溶融工程および析出工程)
まず、図37(A)に示したように、第1の実施の形態と同様にして溶融工程および析出工程を行い、析出領域14のパターンを有する基板15を形成する。なお、析出領域14は前述のようにほぼ平面状となっているが、図37ではわかりやすくするため基板15の表面から突出して表している。
【0148】
(分離溝形成工程)
続いて、図37(B)に示したように、分離溝18を、析出領域14のパターンを回避して、その中間の位置に形成する。分離溝18の形成方法は、変形例2で図8および図9を参照して説明したのと同様である。
【0149】
(引き出し電極形成工程)
分離溝18を形成したのち、引き出し電極形成工程を行う。まず、図38(A)に示したように、基板15の上に、例えばスパッタリングまたは化学蒸着法により、例えば二酸化ケイ素(SiO2 )などよりなる絶縁膜111を形成する。
【0150】
続いて、図38(B)に示したように、絶縁膜111の上に、例えばスパッタリングまたは化学蒸着法により、例えばニオブ(Nb)またはモリブデン(Mo)などよりなる導電性膜112を形成する。
【0151】
導電性膜112を形成したのち、図38(C)に示したように、例えばフォトリソグラフィおよび反応性イオンエッチングにより、絶縁膜111および導電性膜112に、析出領域14各々に対向して開口部113を形成する。これにより、基板15の上に、絶縁膜111を介してニオブまたはモリブデンよりなる引き出し電極114が形成される。
【0152】
(陰極形成工程)
続いて、図39に示したように、第1の実施の形態と同様にして析出領域14にカーボンナノチューブ16を成長させて陰極17を形成する。これにより陰極17に対応して引き出し電極114を有する電界電子放出素子が得られる。
【0153】
(FED)
図40は、このような電界電子放出素子を用いたFEDの概略構成を表すものである。このFEDは、カソードパネル120とアノードパネル30とが対向配置されて一体化され、内部が高真空状態とされている。
【0154】
カソードパネル120は、上述した陰極17およびこの陰極17に対応して引き出し電極114が形成された基板15により構成されている。カソードパネル120は、必要な画面の寸法および基板15の大きさに応じて、複数の基板15を複合したものを用いることも可能である。陰極17は、R用のカソード電極121R,G用のカソード電極121GおよびB用のカソード電極121Bを介して、図示しないデータドライバに接続されている。カソード電極121R,121G,121Bとしては、分離溝18によって切断された素材基板10を利用してもよいし、別途配線を設けるようにしてもよい。また、引き出し電極114は、カソード電極121R,121G,121Bに対応してR用の引き出し電極114R,G用の引き出し電極114GおよびB用の引き出し電極114Bが含まれている。R用の引き出し電極114R,G用の引き出し電極114GおよびB用の引き出し電極114Bは、図示しないスキャンドライバに接続されている。
【0155】
アノードパネル30は、アノード電極32R,32G,32Bに所定の直流電圧が固定的に印加されることを除いては、第1の実施の形態と同様に構成されている。なお、図40では、アノード電極32Rおよび蛍光体膜33Rのみが示されている。
【0156】
このFEDでは、例えば引き出し電極114R,114G,114Bとカソード電極121R,121G,121Bとの間に選択的に電圧を印加すると、その交点に位置する陰極17において電界電子放出が起こり、蛍光体膜33R,33G,33B(図6参照)の蛍光体の発光により、所望の画像表示がなされる。ここでは、陰極17に対応して引き出し電極114が形成されているので、低い電圧で電界電子放出が発生する。
【0157】
このように本実施の形態では、陰極17に対応して引き出し電極114を設けたので、低い電圧で電界電子放出を発生させることができる。
【0158】
〔変形例10〕
続いて、図41ないし図43を参照して、第4の実施の形態の変形例を説明する。本変形例は、金属触媒としての鉄(Fe)により構成された素材基板10の表面に、第2の実施の形態と同様にして突起のパターンを形成したのち、この突起の最先端部分以外の表面に、カーボンナノチューブの成長を抑制する抑制層を形成するようにしたものである。
【0159】
すなわち、本変形例は、触媒配置工程として、素材基板10の表面に所望のパターンに応じて変調された熱分布11を与え、素材基板10の表面を溶融させる「溶融工程」と、素材基板10の表面を放熱させることにより、熱分布11に応じた位置に、すなわち所望のパターンで突起を形成する「突起形成工程」と、突起の最先端部分以外の表面に、カーボンナノチューブの成長を抑制する抑制層を形成する「抑制層形成工程」とを含むものである。そののち、分離溝を形成する「分離溝形成工程」を行ったのち、抑制層で覆われていない突起の最先端部分にカーボンナノチューブを成長させて陰極を形成する「陰極形成工程」を行う。
【0160】
(溶融工程)
まず、第2の実施の形態と同様にして溶融工程を行う。このとき、素材基板10は、本実施の形態では金属触媒としての鉄(Fe)により構成されている。
【0161】
素材基板10の材料は、例えばカーボンナノチューブを形成するための金属触媒としての機能を有するものであればよく、その具体例は、上記第1の実施の形態において第2の物質として例示したものと同様である。
【0162】
(突起形成工程)
次に、図41(A)を参照して突起形成工程を説明する。すなわち、溶融工程において素材基板10の表面を溶融させたのち、エネルギービーム12の照射を止めると、素材基板10の表面の温度は徐々に低下して凝固するが、このとき、溶融工程において照射されたエネルギービーム12のエネルギー量が一定値を超えている場合には、高温領域11Hに対応する位置に、素材基板10の表面から隆起した突起134が形成される。突起134は、先端部に析出領域が形成されていないことを除いては、形状、幅Wおよび間隔Lなどすべて第2の実施の形態の突起51と同様に形成される。
【0163】
(分離溝形成工程)
そののち、図41(B)に示したように、分離溝135を形成する。分離溝135の形成は、例えば変形例2と同様に行うことができる。
【0164】
(抑制層形成工程)
次に、図41(C)に示したように、突起134の最先端部分134A以外の表面に、抑制層136を形成する。この抑制層136は、後述する陰極形成工程において突起134の側面からカーボンナノチューブが成長することを抑制し、カーボンナノチューブの成長する領域を限定するものであり、例えば二酸化ケイ素を、SOG(Spin On Glass )により塗布することにより、またはCVD法などにより形成される。なお、抑制層136の材料は、上述の二酸化ケイ素の他、窒化ケイ素(SiN),ポリイミド,ポリメチルメタクリレート(Poly Methyl Methacrylate;PMMA),金属酸化膜などの絶縁体材料、あるいはシリコン,ゲルマニウムなどの半導体材料を用いてもよい。特に、抑制層136の材料として絶縁体材料を用いた場合には、突起134の最先端部分134Aの周辺が絶縁体材料よりなる抑制層136で満たされるので、カーボンナノチューブ145の周辺に絶縁物が存在しない場合に比べて、より高い電界をカーボンナノチューブ145に集中させることができる。
【0165】
以上により、触媒配置工程が完了し、突起134の最先端部分134A以外の表面に抑制層136が形成された基板137が形成される。
【0166】
(引き出し電極形成工程)
基板137を形成したのち、引き出し電極形成工程を行う。まず、図42(A)に示したように、基板137の上に、例えばスパッタリングまたは化学蒸着法により、例えば二酸化ケイ素などよりなる絶縁膜141を形成する。
【0167】
続いて、図42(B)に示したように、絶縁膜141の上に、例えばスパッタリングまたは化学蒸着法により、例えばニオブ(Nb)またはモリブデン(Mo)などよりなる導電性膜142を形成する。
【0168】
導電性膜142を形成したのち、図42(C)に示したように、例えばフォトリソグラフィおよび反応性イオンエッチングにより、絶縁膜141および導電性膜142に、突起134の最先端部分134Aの各々に対向して開口部143を形成する。これにより、基板137の上に、絶縁膜141を介してニオブまたはモリブデンよりなる引き出し電極144が形成される。
【0169】
(陰極形成工程)
続いて、図43に示したように、第1の実施の形態と同様にして突起134の最先端部分134Aからカーボンナノチューブ145を成長させて陰極146を形成する。これにより、陰極146に対応して引き出し電極144を有する電界電子放出素子が得られる。
【0170】
このように本変形例では、上記第4の実施の形態の効果に加えて、突起134の最先端部分134A以外の表面に抑制層136を形成するようにしたので、突起134の最先端部分134Aのみにカーボンナノチューブ145を成長させることができる。
【0171】
特に、抑制層136の材料として絶縁体材料を用いた場合には、突起134の最先端部分134Aの周辺が絶縁体材料よりなる抑制層136で満たされるので、カーボンナノチューブ145の周辺に絶縁物が存在しない場合に比べて、より高い電界をカーボンナノチューブ145に集中させることができる。
【0172】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記第1の実施の形態によって陰極17を形成した後、カーボンナノチューブ16の先端を所定の平面内に形成すると共にその先端を開放端(オープンエンド)とする高さ均一化工程を更に含むようにしたものである。
【0173】
なお、ここで、「高さ」とは、カーボンナノチューブ16の先端の位置、すなわち素材基板10の表面とカーボンナノチューブ16の先端との距離をいう。よって、カーボンナノチューブ16の高さは、カーボンナノチューブ16の長さすなわち延長方向における実際の寸法とは異なる場合もありうる。
【0174】
(高さ均一化工程)
以下、図44を参照して、高さ均一化工程を説明する。まず、図44(A)に示したように、カーボンナノチューブ16の周囲の空間に固定層151を充填し、カーボンナノチューブ16を固定層151により固定する。固定層151の材料としては、例えば、二酸化ケイ素,窒化ケイ素,ポリイミド,PMMA,金属酸化膜などの絶縁体材料、あるいはシリコン,ゲルマニウムなどの半導体材料などが用いられる。固定層151の形成方法としては、例えば、PECVD法、PVD(Physical Vapor Deposition )法、SOGなどが挙げられる。固定層151の厚さは、特に限定されない。
【0175】
次に、図44(B)に示したように、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing ;化学機械研磨)により、固定層151と共にカーボンナノチューブ16を研磨する。これにより、カーボンナノチューブ16の先端が同一平面PL内に揃えられると共に、研磨により先端が開放されて開放端16Aとなる。よって、陰極17のカーボンナノチューブ16の高さを均一化することができる。
【0176】
この場合、素材基板10の表面に対して傾いた角度で成長したカーボンナノチューブ16があっても、すべてのカーボンナノチューブ16の先端が同一平面PL内に揃うので、すべてのカーボンナノチューブ16からの電界放射を行うことが可能となる。
【0177】
このように本実施の形態では、カーボンナノチューブ16の高さが均一化されるので、例えばFEDとして用いる際に均一な放射特性が得られる。また、先端は開放端16Aとなっているので電界放出特性が良好となり、低い電圧で電界放射を行うことができる。
【0178】
また、第2の実施の形態と本実施の形態とを組み合わせて、基板と電極との間に電界を印加させることにより垂直方向に揃えて成長させたカーボンナノチューブの高さを均一化するようにすれば、カーボンナノチューブの形状および成長方向を均一化することができ、更に電界放出特性を高めることができる。
【0179】
なお、本実施の形態においては、固定層151を、図44(B)に示した研磨の際の平坦化層として用いた場合について説明したが、研磨せずに図44(A)に示した状態で、例えばFEDなどに利用することも可能である。この場合には、固定層151によってカーボンナノチューブ16が固定されるのでカーボンナノチューブ16を堅牢化することができると共に、陰極17の取扱いを容易にすることができる。
【0180】
更に、固定層151を絶縁性材料により構成し、固定層の上にニオブまたはモリブデンよりなる引き出し電極を形成するようにしてもよい。
【0181】
〔変形例11〕
次に、図45ないし図49を参照して変形例11を説明する。本変形例は、第1の実施の形態の触媒配置工程の変形例であり、転写物質(ここでは、触媒金属)からなる素材基板10の表面に、転写物質の突起のパターンを形成し、これを転写用原盤として、この転写用原盤のパターンを被転写基板に転写させて基板を得、この基板にカーボンナノチューブを成長させて陰極を形成するものである。
【0182】
具体的には、本変形例は、触媒配置工程として、素材基板10の表面に所望のパターンに応じて変調された熱分布11を与え、素材基板10の表面を溶融させる「溶融工程」と、素材基板10の表面を放熱させることにより、熱分布11に応じた位置に、すなわち、所望のパターンで突起を形成する「突起形成工程」と、転写用原盤のパターンを被転写基板に転写させて基板を作製する「転写工程」とを含むものである。
【0183】
(溶融工程)
まず、第2の実施の形態と同様にして溶融工程を行う。このとき、素材基板10は、本実施の形態では金属触媒としての鉄により構成されている。
【0184】
素材基板10の材料は、例えばカーボンナノチューブを形成するための金属触媒としての機能を有するものであればよく、その具体例は、上記第1の実施の形態において第2の物質として例示したものと同様である。
【0185】
(突起形成工程,原盤作製工程)
次に、図45を参照して突起形成工程を説明する。すなわち、溶融工程において素材基板10の表面を溶融させたのち、エネルギービーム12の照射を止めると、素材基板10の表面の温度は徐々に低下して凝固するが、このとき、溶融工程において照射されたエネルギービーム12のエネルギー量が一定値を超えている場合には、高温領域11Hに対応する位置に、素材基板10の表面から隆起した突起164が形成され、素材基板10の表面に突起164を有する転写用原盤(以下,原盤という)165が形成される。
【0186】
突起164は、高温領域11Hが溝13Aに対応して一次元方向に配列された直線状であるので、これに対応して、一次元方向に配列された直線状のリブ(突条)のパターンとして形成される。突起164の幅(線幅)W、すなわち熱分布11の変調方向における突起164の下端部の寸法は、溶融温度および冷却速度により定まる。溶融温度は、エネルギービーム12のエネルギー量、すなわちエキシマレーザの場合にはパルス照射回数によって制御することができ、溶融温度が高いほど、突起164の幅Wは大きくなる。冷却速度は、素材基板10または素材基板10のホルダーを真空中またはガス雰囲気中に配置する方法、ガスフローによる方法、水または液体窒素中で冷却する方法、あるいは加熱しながらゆっくり冷却する方法などによって制御することができ、冷却速度が速いほど突起164の幅Wは大きくなる。突起164の幅Wは、原理的には素材基板10の構成物質の原子の大きさより大きい任意の値をとり得るものであり、溶融温度および冷却速度を制御することにより従来のフォトリソグラフィ技術では不可能であった50nm未満を実現することができる。
【0187】
突起164の幅Wの具体的な値は、後述する基板の用途によって定められるが、例えばカーボンナノチューブ構造体を形成する場合には、突起164の幅Wは、0.4nm以上50nm未満であることが好ましく、0.4nm以上30nm以下であればより好ましく、0.4nm以上10nm以下であれば更に好ましい。理由は第1の実施の形態において説明したのと同様である。
【0188】
また、突起164の間隔L、すなわち熱分布11の変調方向における突起164の間隔(ピッチ)は、熱分布11の空間的周期Tに応じて、すなわち回折格子13の周期間隔Pおよびエネルギービーム12の波長λに応じて定まる。波長λを小さくするほど、または、周期間隔Pを微細にするほど突起164の間隔Lを微細化することができ、従来のフォトリソグラフィでは不可能な微細な間隔Lで突起164を形成することが可能である。突起164の間隔Lは、例えば100nm以下であることが好ましく、更に、50nm以下とすればより好ましい。理由は第1の実施の形態において説明したのと同様である。
【0189】
(転写工程)
次に、図46を参照して転写工程を説明する。まず、図46(A)に示したように、例えば、導電性膜172の配線パターンが予め形成された被転写基板171を用意する。
【0190】
続いて、図46(B)に示したように、原盤165の突起164と被転写基板171の導電性膜172とを対向させて密接させる。このとき、転写特性向上のため、必要に応じて加圧することが好ましい。更に、加熱処理を行うようにすれば、転写特性をいっそう良好にすることができるので、より好ましい。
【0191】
そののち、原盤165を被転写基板171から引き離すと、図46(C)に示したように、突起164の先端部が、被転写基板171に転写される。こうして、被転写基板271の上に、触媒金属(鉄)よりなる転写パターン173が形成された基板174が形成される。よって、一枚の原盤165から多数の被転写基板171に突起164のパターンを転写して基板174を大量に製造することができる。なお、転写を繰り返すことにより突起164が磨耗した場合には、再び溶融工程および突起形成工程を繰り返して突起164の形状を回復させることなどが可能である。
【0192】
ここで、「突起164の先端部」とは、突起164を素材基板10の表面に平行な水平面H(図47および図48参照)で切断した場合に、突起164の先端を含む部分をいう。したがって、例えば、図46(C)に示したように突起164の先端のみを被転写基板171に転写してもよいし、図47に示したように突起164全体を被転写基板171に転写するようにしてもよい。あるいは図48に示したように突起164の先端および中腹にかけての部分を被転写基板171に転写するようにしてもよい。
【0193】
以上により、触媒配置工程が完了する。
【0194】
(陰極形成工程)
被転写基板171に転写パターン173を形成して基板174を作製したのち、例えば、図49に示したように、この転写パターン173を触媒として基板174上にカーボンナノチューブ175を成長させ、複数のカーボンナノチューブ175が直線状に配列された陰極176を形成することができる。このように導電性膜172上に形成された陰極176は、電界電子放出素子として利用することができる。
【0195】
このように本変形例では、触媒金属からなる素材基板10の表面に対して熱分布11を与え、素材基板10の表面を溶融させたのち、素材基板10の表面を放熱させるようにしたので、所望の位置に触媒金属からなる微細な突起164のパターンを有する原盤165を作製することができる。突起164の幅Wは、溶融温度および冷却速度を制御することによって従来のフォトリソグラフィ技術では不可能であった50nm未満とすることが可能である。また、熱分布11の空間的周期Tを制御することにより突起164を従来のフォトリソグラフィ技術では不可能であった微細な間隔Lで形成することが可能になる。
【0196】
また、突起164のパターンを有する原盤165をドライプロセスにより形成することができるので、従来のフォトリソグラフィを利用したプロセスに比べて生産が容易であり、再現性が良く、低コスト化が可能である等の利点を得ることができる。
【0197】
また、エネルギービーム12を回折させることにより熱分布11を与えるようにしたので、回折格子13の周期間隔Pを微細化することにより熱分布11の空間的周期Tを容易に制御し、突起164の間隔Lを微細化することができる。
【0198】
更に、本変形例では、突起164の高さ方向における一部を被転写基板71に転写することにより、一枚の原盤165から多数の被転写基板171に突起164を転写して基板174を大量に作製することが可能になる。
【0199】
〔変形例12〕
次に、図50ないし図55を参照して変形例12を説明する。本変形例は、溶融工程において、第3の実施の形態のようにエネルギービームのエネルギー量を二次元方向すなわちX方向およびY方向に変調させるようにしたことを除いては、変形例11と同様である。したがって、以下の説明を簡略化する。
【0200】
(溶融工程)
まず、第3の実施の形態のようにエネルギービームのエネルギー量を二次元方向すなわちX方向およびY方向に変調させることを除き、変形例11と同様にして溶融工程を行う。ここで、素材基板10は、本変形例では金属触媒としての鉄(Fe)により構成されている。
【0201】
素材基板10の材料は、カーボンナノチューブを形成するための金属触媒としての機能を有するものであればよく、その具体例は、第1の実施の形態において第2の物質として例示したものと同様である。
【0202】
(突起形成工程,原盤作製工程)
次に、変形例11と同様にして突起形成工程および原盤作製工程を行う。これにより、図50に示したように、素材基板10の表面に二次元方向に配列された突起181のパターンを有する原盤182を形成する。
【0203】
(転写工程)
続いて、変形例11と同様にして転写工程を行い、図51に示したように、被転写基板171の上に触媒金属(鉄)よりなる転写パターン183が二次元方向に配列された基板184を形成する。以上により、触媒配置工程が終了する。
【0204】
(成長工程)
次に、変形例11と同様にして成長工程を行い、図52に示したように、転写パターン183を触媒として、基板184上にカーボンナノチューブ185を成長させ、複数のカーボンナノチューブ185が二次元方向に配列された陰極186を形成する。
【0205】
図53は、このようにして基板184上に形成された陰極186を表す顕微鏡写真(37.5倍)であり、二次元方向に配列された点状の白い部分は、原盤182の突起181から転写された転写パターン183を触媒として、基板184上に成長したカーボンナノチューブ185に対応している。
【0206】
図54は、図53の白い部分の中央付近を拡大して表すSEM(Scanning Electron Microscope;走査型電子顕微鏡)写真(5万倍)である。図54から分かるように、白い部分にはカーボンナノチューブが成長していることが確認できる。また、図55は、図53において白く見える部分と周囲の黒く見える部分との境界付近を拡大して表すSEM写真(5万倍)である。図55から分かるように、白い部分にはカーボンナノチューブが成長していることが確認できるが、黒い部分にはカーボンナノチューブの存在は認められない。
【0207】
このように本変形例では、エネルギービーム12のエネルギー量を二次元方向に変調させることにより熱分布33を形成するようにしたので、二次元方向に配列された突起181のパターンを有する原盤182を作製することができる。
【0208】
更に、本変形例においても、突起181の先端部を被転写基板171に転写するようにすれば、一枚の原盤182から多数の被転写基板171に突起181を転写して基板184を大量に作製することが可能になる。
【0209】
〔変形例13〕
次に、図56および図57を参照して変形例13を説明する。本変形例は、第1の実施の形態の触媒配置工程の変形例であり、任意の材質により構成された素材基板に対して変形例11と同様の方法で形成した突起に、触媒金属等からなる金属基板を押し当てて、突起の先端に触媒金属を付着させるようにしたものである。
【0210】
(溶融工程および突起形成工程)
まず、例えばシリコンよりなる素材基板190を用意し、上記変形例11と同様にして溶融工程および突起形成工程を行い、図56(A)に示したように、素材基板190の表面に突起191のパターンを形成する。
【0211】
(付着工程)
続いて、図56(B)に示したように、素材基板190の突起191と、金属触媒としての鉄により形成された金属基板200とを対向させて密接させる。これにより、図56(C)に示したように、金属基板200を構成する鉄が、突起191の先端部に付着し、金属基板200と同一の材料よりなる付着パターン192を有する基板193が形成される。このとき、付着特性向上のため、加圧あるいは加熱処理を行うことが好ましいことは、前述の変形例11と同様である。
【0212】
金属基板200の材料は、カーボンナノチューブを形成するための金属触媒としての機能を有するものであればよく、その具体例は、上記第1の実施の形態において第2の物質として例示したものと同様である。
【0213】
以上により、触媒配置工程が完了する。
【0214】
(陰極形成工程)
付着パターン192を有する基板193を形成したのち、例えば、図57に示したように、この付着パターン192を触媒として、基板193上にカーボンナノチューブ194を成長させ、カーボンナノチューブ194が直線状に配列された陰極195を形成することができる。
【0215】
このように本変形例では、突起191と金属基板200とを対向させて密接させ、突起191の先端部に金属基板200と同一の材料よりなる付着パターン192を形成するようにしたので、金属触媒からなる付着パターン192を容易に形成することができる。また、素材基板190の材料は任意であり、用途に応じて選択の範囲を広げることができる。
【0216】
更に、本変形例でも、付着パターン192が形成された基板193を原盤として、突起191の先端部に付着した付着パターン192を被転写基板171に転写することにより、一枚の原盤から多数の被転写基板171に付着パターン192を転写して基板を大量に製造することができる。
【0217】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および変形例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、パルスの照射回数によりエネルギービーム12のエネルギー量を調整するようにしたが、パルスの照射回数、照射強度およびパルス幅のそれぞれを調整することが可能である。
【0218】
また、上記実施の形態および変形例では、熱分布11,41を回折格子13,32,43を用いて形成するようにしたが、ビームスプリッタおよびミラーを用いて形成してもよい。
【0219】
更に、上記実施の形態および変形例では、XeClエキシマレーザを用いてエネルギービーム12を照射するようにしたが、XeClエキシマレーザ以外のレーザを用いるようにしてもよく、更に、加熱手段として、変調により熱分布を形成できるものであれば、一般的な汎用の電気加熱炉(拡散炉)もしくはランプなどの他の方法により加熱するようにしてもよい。
【0220】
加えて、上記各実施の形態および上記変形例では、析出工程または突起形成工程での放熱を溶融工程を終了したのちの常温による自然冷却としたが、常温未満の温度により強制的に冷却して析出工程または突起形成工程を短縮することも可能である。
【0221】
更にまた、触媒機能を有する金属をを基板に配置する方法は、上記各実施の形態および上記変形例に限られない。例えば、触媒金属よりなる基板に突起を形成し、この突起の上面を平坦化するようにしてもよい。
【0222】
加えてまた、上記各実施の形態および上記変形例では、筒状炭素分子としてカーボンナノチューブを形成する場合について説明したが、本発明は、カーボンナノチューブに限らず、カーボンナノホーンあるいはカーボンナノファイバー等を形成する場合にも適用可能である。
【0223】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の第1および第2の電界電子放出素子の製造方法によれば、変調された熱分布による溶融を利用して、筒状炭素分子の触媒機能を有する金属を配置する触媒配置工程と、筒状炭素分子を成長させる成長工程とを含むようにしたので、熱分布を制御することにより、従来のフォトリソグラフィでは不可能であった微細な幅および間隔のパターンで触媒金属を配置し、このパターン通りに筒状炭素分子が規則正しく配列された陰極を得ることができる。
【0224】
本発明の第1の電界電子放出素子の製造方法によれば、素材基板に形成された突起と、筒状炭素分子の触媒機能を有する第2の物質からなる他の基板とを対向させて密接させ、素材基板の突起の先端部に第2の物質を付着させるようにしているので、触媒機能を有する物質のパターンを容易に形成することができる。また、素材基板の材料は任意であり、用途に応じて選択の範囲を広げることができる。更に、本発明による第2の電界電子放出素子の製造方法によれば、触媒機能を有する金属よりなり突起電極に対応したパターンを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電界電子放出素子の製造方法およびFEDの製造方法における溶融工程を模式的に表す斜視図である。
【図2】図1に続く工程(析出工程)を模式的に表す斜視図である。
【図3】図2に続く工程(陰極形成工程)を模式的に表す斜視図である。
【図4】図3に続く工程(分離溝形成工程)を模式的に表す平面図である。
【図5】図4に続く工程(分離溝形成工程)を模式的に表す平面図である。
【図6】図5に示した陰極を有する電界電子放出素子を用いたFEDの概略構成を表す斜視図である。
【図7】本発明の変形例1に係る分離溝形成工程を模式的に表す平面図である。
【図8】本発明の変形例2に係る電界電子放出素子の製造方法における分離溝形成工程を模式的に表す斜視図である。
【図9】図8に続く工程(分離溝形成工程)を模式的に表す斜視図である。
【図10】図9に続く工程(陰極形成工程)を模式的に表す斜視図である。
【図11】本発明の変形例3に係る分離溝形成工程を模式的に表す斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る電界電子放出素子の製造方法およびFEDの製造方法における析出工程を模式的に表す斜視図である。
【図13】図12に示した析出領域の変形例を表す断面図である。
【図14】図12に示した析出領域の他の変形例を表す断面図である。
【図15】図12に続く工程(陰極形成工程)を模式的に表す断面図である。
【図16】図15に続く工程(陰極形成工程)を模式的に表す斜視図である。
【図17】図16に続く工程(分離溝形成工程)を模式的に表す斜視図である。
【図18】図17に示した陰極を有する電界電子放出素子を用いたFEDの概略構成を表す斜視図である。
【図19】本発明の変形例4に係る陰極形成工程を模式的に表す断面図である。
【図20】本発明の変形例5に係る陰極形成工程を模式的に表す斜視図である。
【図21】図20に続く工程(陰極形成工程)を模式的に表す断面図である。
【図22】本発明の変形例6に係る陰極形成工程を模式的に表す断面図である。
【図23】本発明の変形例7に係る触媒配置工程における還元析出工程を模式的に表す断面図である。
【図24】本発明の第3の実施の形態に係る電界電子放出素子の製造方法およびFEDの製造方法における溶融工程を模式的に表す斜視図である。
【図25】図24に示した素材基板の表面に形成されている熱分布の一例を模式的に表す平面図である。
【図26】図25に示した熱分布の他の例を表す平面図である。
【図27】図24に続く工程(析出工程)を模式的に表す斜視図である。
【図28】図27に示した基板の表面の一部を拡大して表す平面図である。
【図29】図27に続く工程(陰極形成工程)を模式的に表す斜視図である。
【図30】図26に示した熱分布を形成したのちに析出工程を行った場合における基板の表面の一部を拡大して表す平面図である。
【図31】図29に続く工程(分離溝形成工程)を模式的に表す斜視図である。
【図32】図31に示した陰極を有する電界電子放出素子を用いたFEDの概略構成を表す斜視図である。
【図33】本発明の変形例8に係る分離溝形成工程を模式的に表す斜視図である。
【図34】本発明の変形例9に係る析出工程を模式的に表す斜視図である。
【図35】図34に示した基板の表面の一部を拡大して表す平面図である。
【図36】図34に続く工程(陰極形成工程)を模式的に表す斜視図である。
【図37】本発明の第4の実施の形態に係る電界電子放出素子の製造方法およびFEDの製造方法における析出工程および分離溝形成工程を模式的に表す断面図である。
【図38】図37に続く工程(引き出し電極形成工程)を模式的に表す断面図である。
【図39】図38に続く工程(陰極形成工程)を模式的に表す断面図である。
【図40】図39に示した陰極を有する電界電子放出素子を用いたFEDの概略構成を表す断面図である。
【図41】本発明の変形例10に係る触媒配置工程における突起形成工程、分離溝形成工程および抑制層形成工程を模式的に表す断面図である。
【図42】図41に続く工程(引き出し電極形成工程)を模式的に表す断面図である。
【図43】図42に続く工程(陰極形成工程)を模式的に表す断面図である。
【図44】本発明の第5の実施の形態に係る電界電子放出素子の製造方法における高さ均一化工程を模式的に表す断面図である。
【図45】本発明の変形例11に係る触媒配置工程における突起形成工程を模式的に表す斜視図である。
【図46】図45に続く工程(転写工程)を模式的に表す断面図である。
【図47】図46に示した転写パターンの変形例を表す断面図である。
【図48】図46に示した転写パターンの他の変形例を表す断面図である。
【図49】図46に続く工程(成長工程)を模式的に表す断面図である。
【図50】本発明の変形例12に係る触媒配置工程における突起形成工程を模式的に表す斜視図である。
【図51】図50に続く工程(転写工程)を模式的に表す斜視図である。
【図52】図51に続く工程(成長工程)を模式的に表す斜視図である。
【図53】図52に示した陰極の顕微鏡写真である。
【図54】図53に示した白い部分の中央付近を拡大して表すSEM写真である。
【図55】図53に示した白い部分と黒い部分との境界付近を拡大して表すSEM写真である。
【図56】本発明の変形例13に係る触媒配置工程を模式的に表す断面図である。
【図57】図56に続く工程(成長工程)を模式的に表す断面図である。
【図58】従来のFEDの構造を模式的に表す断面図である。
【符号の説明】
10,190…素材基板、11,41,83…熱分布、11H,41H,83H…高温領域、11L,83L…低温領域、12…エネルギービーム、13,43,82…回折格子、13A…溝、14,52,73,84,102…析出領域、15,53,72,85,103,137,174,184,193…基板、16,54,86,104,145,175,185,194…カーボンナノチューブ、16A…開放端、17,55,87,105,146,176,186,195…陰極、18,58,88,135…分離溝、20,60,90,120…カソードパネル、21R,21G,21B,61R,61G,61B,91R,91G,91B,121R,121G,121B…カソード電極、22,62,92…データドライバ、30…アノードパネル、31…透明基板、32R,32G,32B…アノード電極、33R,33G,33B…蛍光体膜、34…スキャンドライバ、51,56A,101,134,164,181,191…突起、56…電極、56B…突起電極、57…第2の物質、71…触媒溶液、81X…X方向熱分布、81XH…X方向高温領域、81XL…X方向低温領域、81Y…Y方向熱分布、81YH…Y方向高温領域、81YL…Y方向低温領域、82A…非透過部分、82B…透過部分、111,141…絶縁膜、112,142,172…導電性膜、113,143…開口部、114,114R,114G,114B,144…引き出し電極、134A…最先端部分、136…抑制層、151…固定層、165,182…原盤、171…被転写基板、173,183…転写パターン、192…付着パターン、200…金属基板、H…水平面、L…間隔(ピッチ)、P,PX,PY…周期間隔、T…空間的周期、W…幅
Claims (17)
- 変調された熱分布による溶融を利用して、筒状炭素分子の触媒機能を有する金属を配置する触媒配置工程と、
筒状炭素分子を成長させる成長工程と
を含み、
前記触媒配置工程は、
第1の物質からなる素材基板の表面に対し、変調された熱分布を与え、前記素材基板の表面を溶融させる溶融工程と、
前記素材基板の表面を放熱させることにより、前記熱分布に応じた位置に突起を形成する突起形成工程と、
前記素材基板に形成された突起を、筒状炭素分子の触媒機能を有する第2の物質からなる他の基板に接触させ、前記素材基板の突起の先端に前記第2の物質を付着させる工程とを含み、
前記成長工程は、
前記素材基板と電極とを対向配置して、前記素材基板と前記電極との間に電界を印加する工程を含む
ことを特徴とする電界電子放出素子の製造方法。 - 前記素材基板は、少なくとも先端部が前記金属よりなる突起のパターンを有する
ことを特徴とする請求項1記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記成長工程において、前記素材基板を二枚対向配置し、前記突起のパターンどうしを向かい合わせて、前記二枚の素材基板の間に電界を印加する
ことを特徴とする請求項2記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記電極として、前記基板のパターンに対応する突起のパターンが形成されたものを用い、前記基板のパターンと前記電極の突起のパターンとを向かい合わせて対向配置する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記金属の配置される間隔は100nm以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記金属の配置される間隔は50nm以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 変調された熱分布による溶融を利用して、筒状炭素分子の触媒機能を有する金属を配置する触媒配置工程と、
筒状炭素分子を成長させる成長工程と
を含み、
前記触媒配置工程は、
平坦電極の表面に、所望のパターンに応じて変調された熱分布を用いて突起のパターンを形成する突起電極形成工程と、
触媒機能を有する金属を含む触媒溶液の中において、前記突起電極と導電性の基板との間に電界を印加して前記金属を還元し析出させることにより、前記基板上に、触媒機能を有する金属よりなり前記突起電極に対応したパターンを形成する還元析出工程と
を含むことを特徴とする電界電子放出素子の製造方法。 - 前記素材基板の表面に、前記金属を回避して分離溝を形成する分離溝形成工程を更に含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記分離溝を、エネルギービームの照射により形成する
ことを特徴とする請求項8記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記分離溝を、前記エネルギービームを一次元方向または二次元方向に回折させることにより形成する
ことを特徴とする請求項9記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記分離溝を、平行線状または格子状に形成する
ことを特徴とする請求項8記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記筒状炭素分子に対応して引き出し電極を形成する引き出し電極形成工程を更に含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記引き出し電極形成工程を、前記触媒配置工程と前記成長工程との間に行う
ことを特徴とする請求項12記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記引き出し電極形成工程は、
前記基板の上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜の上に導電性膜を形成する導電性膜形成工程と、
前記絶縁膜および前記導電性膜に前記陰極各々に対向して開口部を形成する開口部形成工程と
を含むことを特徴とする請求項12記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記筒状炭素分子の先端を所定の平面内に形成すると共に前記先端を開放端とする高さ均一化工程を更に含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記高さ均一化工程において、少なくとも前記筒状炭素分子の周囲に固定層を形成して前記筒状炭素分子を固定したのち、前記固定層と共に前記筒状炭素分子を研磨する
ことを特徴とする請求項15記載の電界電子放出素子の製造方法。 - 前記研磨を、化学機械研磨により行う
ことを特徴とする請求項16記載の電界電子放出素子の製造方法。
Priority Applications (8)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003003773A JP4161191B2 (ja) | 2003-01-09 | 2003-01-09 | 電界電子放出素子の製造方法 |
KR1020057011770A KR20050093796A (ko) | 2003-01-09 | 2004-01-08 | 통 형상 탄소 분자의 제조 방법 및 통 형상 탄소 분자,기록 장치의 제조 방법 및 기록 장치, 전계 전자방출소자의 제조 방법 및 전계 전자 방출소자와,표시장치의 제조 방법 및 표시장치 |
CN200480001829.8A CN1723171B (zh) | 2003-01-09 | 2004-01-08 | 制造管状碳分子的方法 |
EP04700779A EP1582501A4 (en) | 2003-01-09 | 2004-01-08 | PROCESS FOR TUBE-LIKE CARBON MOLECULAR AND TUBE SHAPED CARBON MOLECULE, METHOD FOR RECORDING DEVICE AND RECORDING DEVICE, METHOD FOR FIELD ELECTRON EMISSION ELEMENT AND FIELD ELECTRON EMISSION ELEMENT AND METHOD FOR DISPLAY UNIT AND DISPLAY UNIT |
PCT/JP2004/000080 WO2004063091A1 (ja) | 2003-01-09 | 2004-01-08 | 筒状炭素分子の製造方法および筒状炭素分子、記録装置の製造方法および記録装置、電界電子放出素子の製造方法および電界電子放出素子、ならびに表示装置の製造方法および表示装置 |
US10/541,936 US7828620B2 (en) | 2003-01-09 | 2004-01-08 | Method of manufacturing tubular carbon molecule and tubular carbon molecule, method of manufacturing field electron emission device and field electron emission device, and method of manufacturing display unit and display unit |
CN200910150450A CN101618855A (zh) | 2003-01-09 | 2004-01-08 | 制造管状碳分子的方法和制造记录设备的方法 |
US12/353,610 US7892063B2 (en) | 2003-01-09 | 2009-01-14 | Method of manufacturing tubular carbon molecule and tubular carbon molecule, method of manufacturing recording apparatus and recording apparatus, method of manufacturing field electron emission device and field electron emission device, and method of manufacturing display unit and display unit |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003003773A JP4161191B2 (ja) | 2003-01-09 | 2003-01-09 | 電界電子放出素子の製造方法 |
Publications (3)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004265600A JP2004265600A (ja) | 2004-09-24 |
JP2004265600A5 JP2004265600A5 (ja) | 2005-12-08 |
JP4161191B2 true JP4161191B2 (ja) | 2008-10-08 |
Family
ID=33111904
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003003773A Expired - Fee Related JP4161191B2 (ja) | 2003-01-09 | 2003-01-09 | 電界電子放出素子の製造方法 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4161191B2 (ja) |
CN (2) | CN1723171B (ja) |
Families Citing this family (11)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7687876B2 (en) * | 2005-04-25 | 2010-03-30 | Smoltek Ab | Controlled growth of a nanostructure on a substrate |
JP5063002B2 (ja) * | 2006-01-06 | 2012-10-31 | 株式会社ライフ技術研究所 | 電子エミッタ |
US8951632B2 (en) | 2007-01-03 | 2015-02-10 | Applied Nanostructured Solutions, Llc | CNT-infused carbon fiber materials and process therefor |
US8951631B2 (en) | 2007-01-03 | 2015-02-10 | Applied Nanostructured Solutions, Llc | CNT-infused metal fiber materials and process therefor |
US9005755B2 (en) | 2007-01-03 | 2015-04-14 | Applied Nanostructured Solutions, Llc | CNS-infused carbon nanomaterials and process therefor |
US20100227134A1 (en) | 2009-03-03 | 2010-09-09 | Lockheed Martin Corporation | Method for the prevention of nanoparticle agglomeration at high temperatures |
EP2429945A1 (en) * | 2009-04-30 | 2012-03-21 | Applied NanoStructured Solutions, LLC | Method and system for close proximity catalysis for carbon nanotube synthesis |
JP2011210439A (ja) * | 2010-03-29 | 2011-10-20 | Toppan Printing Co Ltd | 電子放出素子、その製造方法、電子放出素子を用いた面発光素子 |
CN101908494B (zh) * | 2010-06-12 | 2012-01-04 | 上海大学 | 用于微电子封装的碳纳米管凸点的低温转印方法 |
EP2892859A2 (en) | 2012-09-04 | 2015-07-15 | OCV Intellectual Capital, LLC | Dispersion of carbon enhanced reinforcement fibers in aqueous or non-aqueous media |
KR102187985B1 (ko) | 2012-11-09 | 2020-12-07 | 도판 인사츠 가부시키가이샤 | 바늘 형상 구조체 및 그 제조 방법 |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5072091A (en) * | 1989-04-03 | 1991-12-10 | The Local Government Of Osaka Prefecture | Method and apparatus for metal surface process by laser beam |
US6283812B1 (en) * | 1999-01-25 | 2001-09-04 | Agere Systems Guardian Corp. | Process for fabricating article comprising aligned truncated carbon nanotubes |
KR100480773B1 (ko) * | 2000-01-07 | 2005-04-06 | 삼성에스디아이 주식회사 | 카본 나노 튜브를 이용한 3극 전계방출소자의 제작방법 |
JP3859199B2 (ja) * | 2000-07-18 | 2006-12-20 | エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド | カーボンナノチューブの水平成長方法及びこれを利用した電界効果トランジスタ |
KR100382879B1 (ko) * | 2000-09-22 | 2003-05-09 | 일진나노텍 주식회사 | 탄소 나노튜브 합성 방법 및 이에 이용되는 탄소 나노튜브합성장치. |
JP2002289086A (ja) * | 2001-03-27 | 2002-10-04 | Canon Inc | 電子放出素子、電子源、画像形成装置、及び電子放出素子の製造方法 |
-
2003
- 2003-01-09 JP JP2003003773A patent/JP4161191B2/ja not_active Expired - Fee Related
-
2004
- 2004-01-08 CN CN200480001829.8A patent/CN1723171B/zh not_active Expired - Fee Related
- 2004-01-08 CN CN200910150450A patent/CN101618855A/zh active Pending
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004265600A (ja) | 2004-09-24 |
CN1723171A (zh) | 2006-01-18 |
CN101618855A (zh) | 2010-01-06 |
CN1723171B (zh) | 2010-10-06 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7892063B2 (en) | Method of manufacturing tubular carbon molecule and tubular carbon molecule, method of manufacturing recording apparatus and recording apparatus, method of manufacturing field electron emission device and field electron emission device, and method of manufacturing display unit and display unit | |
JP5698982B2 (ja) | 照明ランプ及びナノ炭素材料複合基板とその製造方法 | |
KR100362377B1 (ko) | 탄소 나노 튜브를 이용한 전계 방출 소자 및 그 제조 방법 | |
JP4161191B2 (ja) | 電界電子放出素子の製造方法 | |
US20140191650A1 (en) | Electric field emitting source, element using same, and production method therefor | |
JP4432478B2 (ja) | 筒状分子の製造方法および筒状分子構造、並びに表示装置および電子素子 | |
JP2006224296A (ja) | カーボンナノチューブ構造体及びその製造方法、並びにカーボンナノチューブ構造体を利用した電界放出素子及びその製造方法 | |
JP2010188493A (ja) | ナノ炭素材料複合基板、電子放出素子、ナノ炭素材料複合基板の製造方法 | |
Li et al. | Quasi-aligned MoO3 nanotubes grown on Ta substrate | |
JP5228986B2 (ja) | ナノ炭素材料複合基板製造方法 | |
JP4329014B2 (ja) | 微細構造体の製造方法および微細構造体、表示装置、ならびに記録装置の製造方法および記録装置 | |
TW200407933A (en) | Patterned granulized catalyst layer suitable for electron-emitting device, and associated fabrication method | |
US20110181170A1 (en) | Field emission lamp | |
KR101046977B1 (ko) | 카본나노튜브, 이를 포함한 전자 방출원 및 이를 구비한전자 방출 소자 | |
JP2004261875A (ja) | 転写用原盤の製造方法および転写用原盤、ならびに基板の製造方法および基板 | |
KR100668332B1 (ko) | 카바이드 및 나이트라이드 나노 전자 에미터를 구비한 소자의 제조방법 | |
JP4161192B2 (ja) | 筒状炭素分子の製造方法および記録装置の製造方法 | |
KR100688860B1 (ko) | 전계방출소자의 제조 방법 | |
JP3638264B2 (ja) | 冷陰極装置の作製方法及び冷陰極装置並びにそれを用いた表示装置 | |
JP2011210439A (ja) | 電子放出素子、その製造方法、電子放出素子を用いた面発光素子 | |
JP2002080211A (ja) | カーボンナノチューブの製造方法 | |
TW200425209A (en) | Field emsission-type electron sourse and method of producing the same | |
JP4028180B2 (ja) | 冷陰極装置及び冷陰極の作製方法 | |
JP2005183103A (ja) | 電子放出素子及び画像表示装置 | |
JP2004261876A (ja) | 基板の製造方法および基板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20051025 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051025 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070904 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20071102 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080131 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080331 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080625 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080708 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110801 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110801 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110801 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120801 Year of fee payment: 4 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |