以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明にかかる実施の形態1における光源装置を示す概略構成図である。
図1に示す様に、本実施の形態1における光源装置は、後述する制御部分の構成を除けば発光ダイオード及びペルチェ素子の構成は従来例と同様であり、図8と同一の符号を附し、詳細な説明は省略する。本実施の形態は、周期的なパルス電流からなる発光ダイオード駆動電流を発光ダイオード110に供給する発光ダイオード駆動電源201と、発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりよりも早く立ち上がる周期的なパルス電流からなるペルチェ素子駆動電流をペルチェ素子130に供給するペルチェ素子駆動電源202とを備える。また、本実施の形態は、ペルチェ素子駆動電流の電流波形及び発光ダイオード駆動電流の電流波形を制御するパルス制御手段203をさらに備える。パルス制御手段203は、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりのタイミングに対する発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりのタイミングの遅延時間を調整することができる。
なお、上記の構成において、発光ダイオード110の発光部101は本発明の光源に、ペルチェ素子130は本発明の熱電変換素子に、発光ダイオード駆動電源201及びペルチェ素子駆動電源202は本発明の電源に、発光ダイオード駆動電流は本発明の光源駆動電流に、ペルチェ素子駆動電流は本発明の熱電変換素子駆動電流にそれぞれ相当する。また、以下の説明においては光源として発光ダイオード110を用いるが、本発明の光源は、半導体レーザ等の固体光源や、レーザ等、電気信号によって高速のパルス駆動を可能とする光源であれば良い。
以下、上記のような構成を有する本発明の実施の形態1による光源装置の動作の説明を行うと共に、これにより、本発明の光源の冷却方法の一実施の形態について説明を行う。
図2は本実施の形態の光源装置の動作を説明するタイムチャートを示す図である。図2(a)は、ペルチェ素子駆動電流の電流値の時間変化を示す。図2(b)は、発光ダイオード駆動電流の電流値の時間変化を示す。図2(c)は、ペルチェ素子130の単位時間当たりの吸熱量の時間変化を示す。図2(d)は、ペルチェ素子130によって発光ダイオード110から吸熱される単位時間当たりの熱量の時間変化を示す。図2(e)は、発光ダイオード110の単位時間当たりの発熱量の時間変化を示す。図2(f)は、発光ダイオード110の発光と、ペルチェ素子130の駆動による吸熱とによって生ずる、発光部101の温度変化を示す。
はじめに、発光ダイオード110に対しては、発光ダイオード駆動電源201から電極104を介して発光ダイオード駆動電流を供給する(図2(b))。発光ダイオード駆動電流は、周期的なパルス電流からなる。発光部101は発光ダイオード駆動電流の周期的なパルス電流に同期して点灯する。このときの供給電流に対する発光応答時間は、駆動回路やシステム構成によっても大きく変化するが、立ち上がり、立ち下がり時間ともに1μs以下も可能と非常に高速であり、点灯、消灯などの光量制御が、制御電源によって可能である。
この点灯に同期して、発光部101で熱が発生する(図2(e))。発光部101で発生した熱は、第1の接着層102、発光部の保持のための台座103、第2の接着層105、そして台座103より断面積が大きく熱伝導率の高い金属基板106へと伝わっていき、第3の接着層107を介してペルチェ素子130の冷却面側のセラミック120へと拡散する。
発光ダイオード110のような固体光源では、適切な冷却が行われない場合、発光部101の温度が固有の許容温度を越え、発光ダイオード110自身が破壊されるおそれがある。また、発光部101の温度が許容範囲内であっても、温度が高くなるほど、発光効率の低下や、光の波長シフトが発生したり、さらに寿命が短くなったりという問題がある。
本実施の形態では、ペルチェ素子130により、発光ダイオード110の適切な冷却を行う。ペルチェ素子130に対しては、ペルチェ素子駆動電源202からペルチェ素子駆動電流を供給する(図2(a))。ペルチェ素子駆動電流は、周期的なパルス電流からなる。また、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりは発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりよりも時間T1だけ早く立ち上がる。ペルチェ素子130は発光ダイオード駆動電流の周期的なパルス電流に同期して冷却面側の電極121の熱を吸熱する(図2(c))。
図11(a)〜(f)を参照して述べたように、ペルチェ素子130に電流を供給し冷却を開始しても、ペルチェ素子130の冷却側の電極121と発光部101の発光部との間には、上述したセラミック120、金属基板106等の複数の部材から構成された中間層が存在する。中間層には熱伝導性が高い金属も有れば、絶縁体であるセラミック120や、加工しやすい樹脂のように、熱伝導性が金属よりも劣る材料が用いられることも有るため、ペルチェ素子130の電極121で生じた吸熱効果は、発光部101まで瞬時に伝わらない。したがって、発光部101がペルチェ素子130によって受ける吸熱開始は、ペルチェ素子130の吸熱開始から時間T2だけ遅れることになる(図2(d))。ペルチェ素子130によって発光ダイオード110から吸熱される単位時間当たりの熱量の時間変化(図2(d))は、ペルチェ素子130の単位時間当たりの吸熱量の時間変化(図2(c))を上記時間T2だけ遅延させた形状となる。
本実施の形態では、発光部101が発光を開始する発光開始時よりも前に、ペルチェ素子130へ電流供給を開始する電力供給開始時を配置することで、発光部101に対して、その点灯開始時から、ペルチェ素子130による冷却効果が現れ、発光部101の温度が到達する温度最高点が下がるという効果が見込める。
具体的には、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりと発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりの時間差T1が、ペルチェ素子130から発光ダイオード110への熱伝達に要する時間T2と実質的に同一となるように構成されている。ペルチェ素子130から発光ダイオード110への熱伝達に要する時間T2は、ペルチェ素子130の吸熱効果が発光ダイオード110へ及ぶまでに要する時間と言い換えることもできる。
これは、以下の方法により実現される。まず、ペルチェ素子130から発光ダイオード110への熱伝達に要する時間T2は、ペルチェ素子の能力、ペルチェ素子、発光ダイオードの各構成の形状、材料等から、計算により、又は、実験により求める。そして、求めた時間T2が、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりと発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりの時間差T1と実質的に等しくなるように、発光ダイオード駆動電源201及びペルチェ素子駆動電源202を設定する。これにより、ペルチェ素子130の吸熱に伴う温度低下が中間層を経て発光部101に達する時と、発光ダイオードの駆動始期とが同一となる。
さらに、本実施の形態では、発光ダイオード駆動電流及びペルチェ素子駆動電流は互いに同期し、パルス幅及び周期は一致している。また、発光部101の発光期間において、発光部101にて生ずる単位時間当たりの発熱量Q2と、ペルチェ素子130により吸熱される単位時間当たりの吸熱量Q1とは実質的に等しい。これは、発光ダイオード駆動電流及びペルチェ素子駆動電流のそれぞれ電流値の設定により実現される。したがって、発光部101における実際の温度変化は、図2(f)に示すように、両者の熱の移動量が相殺されることにより実質上生じることがない。すなわち、発光部101の発光期間において、点灯前の温度が維持されることになる。
また、発光ダイオード駆動電流の1周期における発光ダイオードの発熱量と、ペルチェ素子駆動電流の1周期におけるペルチェ素子による吸熱量とが実質的に同一である。これは、発光ダイオード駆動電流及びペルチェ素子駆動電流は互いにパルス幅及び周期が等しく、発光部101の発光期間において、発光部101にて生ずる単位時間当たりの発熱量Q2と、ペルチェ素子130により吸熱される単位時間当たりの吸熱量Q1とは実質的に等しいためである。したがって、発光期間、消灯期間の全期間において温度が維持されることになる。
また、同様に、発光部101の発熱量と、発光部101がペルチェ素子130から受ける吸熱量とは、発光部101の1回のパルス電流による発光期間において実質的に等しくなる。
また、ペルチェ素子駆動電流の波形(図2(a))と、発光ダイオード駆動電流の波形(図2(b))とは、電流値方向について相似関係であり、周期及びパルス幅が同一であり、なおかつ、発光部101の1回のパルス電流による発光期間における、発光部101の発熱量とペルチェ素子130によって発光部101から吸収される吸熱量とが実質的に等しい。したがって、発光部101の発光期間において、発光部101にて生ずる単位時間当たりの発熱量Q2と、ペルチェ素子130により吸熱される単位時間当たりの吸熱量Q1と同量となる。
なお、本実施の形態で示す単位時間当たりの熱量とは、ある時間における発熱又は吸熱される熱の強度を示している。これは以下の実施の形態でも同様である。なお、「ある時間」とは、任意の地点における微少時間を意味し、発光ダイオード110点灯中でもよいし、消灯中でもよいし、ペルチェ素子130のパルス駆動の初期又は終期における時間でもいい。以下において同様とする。
以後の駆動周期においてもペルチェ素子130と発光部101との熱量の移動は上記と同様のタイミングで生ずるので、発光部101の温度は初期状態で保持されることになる。
このように、本実施の形態によれば、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりを、発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりよりも先に行わせるようにしたことにより、発光ダイオード110が発光部101を含めてペルチェ素子130の吸熱の影響下におかれる時期に合わせて、発光部101が点灯、発熱を行うので、発光部101の発光部の発熱をペルチェ素子130の吸熱作用で相殺することができ、発光時に到達する温度最高点が抑えられ、発光ダイオード110の長寿命化の効果が見込める。
また、発光部101の発光期間において、発光部101にて生ずる単位時間当たりの発熱量Q2と、ペルチェ素子130により吸熱される単位時間当たりの吸熱量Q1とは同量であるので、発光期間中の温度上昇もないことから、発光期間中の発光効率の低下による発光量の低下や、波長シフトが防止でき、さらに発光ダイオード110の長寿命化の効果が見込める。
またさらに、発光ダイオード駆動電流の1周期における発光ダイオードの発熱量と、ペルチェ素子駆動電流の1周期におけるペルチェ素子による吸熱量とが実質的に同一であるため、点灯、消灯の全駆動期間にわたり温度上昇を抑制することができ、発光効率の低下による発光量の低下や、波長シフトが防止でき、さらに発光ダイオード110の長寿命化の効果が見込める。
なお、図1に示す発光ダイオード及びペルチェ素子の構成は一例であり、発光ダイオード110の構成部品や、ペルチェ素子130の構成部品の位置や形状が変化したり、また機能を省略、又は他の部品と統合しても良い。
また、本実施の形態は、パルス制御手段203により、ペルチェ素子駆動電流の電流波形及び発光ダイオード駆動電流の電流波形が制御され、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりのタイミングに対する発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりのタイミングの遅延時間を調整することができるとしたが、パルス制御手段203を省略してもよい。この場合、電源としての発光ダイオード駆動電源201及びペルチェ素子駆動電源202は、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりのタイミングに対する発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりのタイミングの遅延時間が所定の時間となるように、ペルチェ素子駆動電流及び発光ダイオード駆動電流の供給を行う。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による光源装置の構成は、実施の形態1と同様なので説明には図1を用い、詳細な説明は省略する。
本実施の形態2による光源装置は、実施の形態1におけるペルチェ素子駆動電流の波形を所定量オフセットしたものであり、その他は実施の形態と同様である。言い換えると、実施の形態1におけるペルチェ素子駆動電流に全期間に渡って所定量の電流を加算したものである。
以下、図3のタイムチャートを参照して説明を行う。図3(a)は、ペルチェ素子駆動電流の電流値の時間変化を示す。また図3(b)は、発光ダイオード駆動電流の電流値の時間変化を示す。また図3(c)は、ペルチェ素子130の単位時間当たりの吸熱量の時間変化を示す。また図3(d)は、ペルチェ素子130によって発光ダイオード110から吸熱される単位時間当たりの熱量の時間変化を示す。また図3(e)は、発光ダイオード110の単位時間当たりの発熱量の時間変化を示す。また図3(f)は、発光部101が、ペルチェ素子130の駆動による吸熱以外に受ける単位時間当たりの熱量の時間変化を示す。また図3(g)は、発光部101の温度変化を示す。
図3(a)に示すように、ペルチェ素子駆動電流は、パルス電流の立ち下がりにおいても電流値が0より大きい。つまり、パルス電流の立ち下がりにおいても低出力の吸熱を行っている。そして、発光ダイオード110の点灯と同期して、ペルチェ素子130の吸熱に伴う温度低下が中間層を経て発光部101に達する時と、発光ダイオードの駆動始期とが同一となるようなタイミングとなるような立ち上がりで、高出力の吸熱動作を行う。したがって、ペルチェ素子130は低出力と高出力とで周期的に吸熱動作することになる。一方、図3(b)に示す発光ダイオード駆動電流の波形は実施の形態1の図2(b)の場合と同様である。
このとき、ペルチェ素子130の吸熱動作の高出力時におけるパルス電流の振幅は、オフセット分だけ上乗せされているため、図3(c)に示すように、ペルチェ素子130の吸熱量もこれに応じて大きくなり、また時間的にも連続して作用する。すなわち1周期当たりのペルチェ素子130の吸熱量は1周期当たりの発光部101の発熱量よりも大きくなる。
以上の制御によって、図3(d)(e)に示すように、発光部101における発熱と、発光部101におけるペルチェ素子130の高出力の吸熱作用とが同時に生ずることになり、また発光部101にて生ずる単位時間当たりの発熱量Q2と、ペルチェ素子130により発光部101から吸熱される単位時間当たりの吸熱量(Q3+Q1)からオフセット部による単位時間当たりの熱量Q3を除いた単位時間当たりの吸熱量Q1とは実質的に等しくなっており、実施の形態1の場合と同様、発光部101の点灯期間中に生ずる発熱はペルチェ素子130への熱の移動により相殺される。
また、本実施の形態の光源装置は、発光ダイオード110の発光部101がペルチェ素子130以外から単位時間当たりの熱量Q4を受けている(図3(f))。一方、ペルチェ素子130の吸熱量のオフセット分、すなわち低出力時の単位時間当たりの熱量Q3の吸熱によって、この一定の熱も相殺されることとなる。本実施の形態では、低出力時の単位時間当たりの熱量Q3と発光ダイオード110の発光部101がペルチェ素子130以外から単位時間当たりの熱量Q4とを実質的に等しくしている。
したがって、発光部101の発光期間において、発光部101にて生ずる単位時間当たりの発熱量Q2及び発光部101がペルチェ素子130以外から受ける単位時間当たりの熱量Q4の総和(Q2+Q4)と、ペルチェ素子130により吸熱される単位時間当たりの吸熱量(Q1+Q3)とは同量であるので、発光部101における実際の温度変化は、図3(g)に示すように、両者の熱の移動量が相殺されることにより実質上生じることがない。すなわち、発光部101の発光期間において、点灯前の温度が維持されることになる。
またさらに、ペルチェ素子駆動電流の波形(図3(a))と、発光ダイオード駆動電流の波形(図3(b))とは、周期及びパルス幅が同一である。このため、ペルチェ素子駆動電流の1周期におけるペルチェ素子による吸熱量が、発光ダイオード駆動電流の1周期における発光ダイオードの発熱量と発光ダイオードがペルチェ素子以外から受ける熱量との総和と実質的に同一である。
また、ペルチェ素子駆動電流の波形(図3(a))と、発光ダイオード駆動電流の波形(図3(b))とは、電流値方向について相似であり、かつペルチェ素子駆動電流の波形がオフセットされている関係となる。
以上の構成により、発光部101は、図3(g)に示すように、温度変化することなく恒常的に動作することになる。
このように、本実施の形態によれば、実施の形態1に記載の効果に加えて、ペルチェ素子130の駆動期間全体にわたってオフセットをかけるようにしたことにより、発光ダイオードがペルチェ素子以外から熱を受ける場合にもさらに発光部101の状態を良好な状態に維持することができる。
なお、ペルチェ素子駆動電流におけるオフセットの大きさは任意としてよいが、1周期における吸熱量が発熱量全体と等しいことから、ペルチェ素子130による吸熱、発光部101による発熱作用によるもの以外に、発光ダイオード110がペルチェ素子130以外から受ける熱量や、ペルチェ素子130側以外の外部へ放出する熱量をあらかじめ算出又は見積もって設定することが、省電力の点から望ましい。
また、図4にタイムチャートの変形例を示す。図3(a)と同様、図4(a)に示すように、本実施の形態のペルチェ素子駆動電流の波形は、実施の形態1におけるペルチェ素子駆動電流の波形を所定量オフセットしたものである。言い換えると、実施の形態1におけるペルチェ素子駆動電流に全期間に渡って所定量の電流を加算したものである。ペルチェ素子130は、低出力と高出力とで周期的に吸熱動作する点で実施の形態2と同様であり、従って図4(c)に示すようにペルチェ素子130に発生する熱の移動量も同一である。さらに、発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりに対しペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりを所定時間T1だけ早くしているという点で実施の形態1、2と同じである。
一方、発光ダイオード110の発光部101がペルチェ素子130以外から受ける単位時間当たりの熱量Q4が無いという点、及び、発光部101にて生ずる単位時間当たりの発熱量Q2(図4(e)参照)が、ペルチェ素子130により吸熱される単位時間当たりの吸熱量Q1(図4(d)参照)より大きい、すなわち、単位時間当たりの熱量がQ2>Q1である点と、1周期全体での発光部101にて生ずる発熱量と、ペルチェ素子130により吸熱量が同量となっている点で異なっている。
このような場合、図4(f)に示すように、発光部101の発光時の温度上昇が急峻にならず緩やかになり、到達する温度最高点が抑えられていることや、さらに発光期間中の温度上昇も少ないことから、発光期間中の発光効率の低下による発光量の低下や、波長シフトも抑えることができる。
さらに、この場合、以下のような効果も得られる。すなわち、発光ダイオード110が最大出力で点灯すると、ペルチェ素子130への供給電力も最大となるON状態となり、発光ダイオード110が消灯すると、ペルチェ素子130への供給電力も無くなるOFF状態となるように設定すると、ペルチェ素子130へ供給される電流の振幅が大きくなり、ペルチェ素子130の温度変化が大きくなる。一方、ペルチェ素子130は、実際に電気的な制御で冷却される電極121と、電極部を絶縁するためのセラミック120を、はんだ等を用いた接着層190(図10(b)を参照)で接合されており、温度変化時に電極121とセラミック120の熱膨張により接着層190に応力が生じる。上記のように、ペルチェ素子130の温度変化が大きくなると、接着層に生じる応力変化が増すため、接着層の劣化を早め、ペルチェ素子全体としての寿命を短くしてしまっていた。
これに対し、本実施の形態によれば、ペルチェ素子130へ供給される電流の振幅を小さくすることができ、ペルチェ素子130の、電極121と、電極部を絶縁するためのセラミック120間の接着層190に生じる応力が小さくでき、劣化を早めることがなく、ペルチェ素子全体としての寿命を短くすることなく、効率よく発光部101を冷却できるといった効果が得られる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3による光源装置の構成は、実施の形態1と同様なので説明には図1を用い、詳細な説明は省略する。
本実施の形態3による光源装置はペルチェ素子130のパルス吸熱動作の時間幅をより大きくとった点が実施の形態1と異なる。
以下、図5のタイムチャートを参照して説明を行う。図5(a)は、ペルチェ素子駆動電流の電流値の時間変化を示す。また図5(b)は、発光ダイオード駆動電流の電流値の時間変化を示す。また図5(c)は、ペルチェ素子130の単位時間当たりの吸熱量の時間変化を示す。また図5(d)は、ペルチェ素子130によって発光ダイオード110から吸熱される単位時間当たりの熱量の時間変化を示す。また図5(e)は、発光ダイオード110の単位時間当たりの発熱量の時間変化を示す。また図5(f)は、発光部101が、ペルチェ素子130の駆動による吸熱以外に受ける単位時間当たりの熱量の時間変化を示す。また図5(g)は、発光部101の温度変化を示す。
図5(a)に示すペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりと、図5(b)に示す発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりの時間差は、ペルチェ素子130の吸熱に伴う温度低下が中間層を経て発光部101に達するのに要する時間に相当する点で実施の形態1の場合と同じである。一方、本実施の形態では、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流のパルス幅は、発光ダイオード駆動電流のパルス電流のパルス幅よりも大きい。また、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち下がりが発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち下がりと時間的に一致する。すなわち、立ち上がりの時間差分だけパルス幅を大きくとるように設定している。なお、図5(b)に示す発光ダイオード駆動電流の各パラメータは実施の形態1の図2(b)の場合と同様である。
本実施の形態では、実施の形態1、2と比べ、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流のパルス幅が大きくなっているため、図5(c)に示すように、ペルチェ素子130の吸熱量もこれに応じた熱量q3だけ大きくなる。なお、単位時間当たりの発光ダイオード110の発熱量とペルチェ素子130の吸熱作用による吸熱量は実質的に同一であり、この関係は、実施の形態1(図2)、実施の形態2(図3)の場合と同様である。また、一周期当たりの発光ダイオード110の発熱量と、ペルチェ素子130の吸熱作用による吸熱量及び発光ダイオード110がペルチェ素子130以外から受ける熱量は実質的に同一であり、この関係は実施の形態2(図3)の場合と同様である。
すなわち、図5(d)(e)に示すように、発光部101における発熱と、発光部101におけるペルチェ素子130の吸熱作用とが同時に生じる。また図5(d)に示すように、発光部101の点灯期間をΔtとした場合、発光部101の点灯期間(Δt)中における、発光部101の単位時間当たりの発熱量Q2と、発光部101がペルチェ素子130から吸熱される単位時間当たりの吸熱量Q1とは、実質上等しくなっている。
また、発光部101の点灯期間(Δt)中における、発光部101の発熱量、つまりQ2とΔtの積(Q2・Δt)よりも、発光部101がペルチェ素子130から吸熱される吸熱量、つまりQ1とΔtの積(Q1・Δt)とq3の和(Q1・Δt+q3)の方がパルス幅の拡張分に相当する移動量q3だけ大きくなるが、本実施の形態では、パルス幅の拡張分に相当する移動熱量q3を、発光部101が1周期当たりにペルチェ素子130以外から受ける熱量と等しくなるように構成している。
図5(f)に示すように、本実施の形態では、発光部101がペルチェ素子130以外から単位時間当たり一定の熱量を受けており、1周期における受熱量の総量はq4となっている。この熱量q4と上述の熱量q3が等しくなるように設定することで(q3=q4)、1周期におけるペルチェ素子130の吸熱量(Q1・Δt+q3)と、発光部101の発熱量(Q2・Δt)及び発光部101がペルチェ素子130以外から受ける熱量(q4)の総和(Q2・Δt+q4)が実質的に等しくなっている。
これにより、図5(d)に示すように、発光部101は、消灯後も立ち上がりの差分期間に相当する熱量q3によりペルチェ素子130からの冷却を受けることになり、結果として、図5(g)に示すように、急峻に温度低下した後、次のペルチェ素子130のパルス吸熱動作の周期まで緩やかに温度上昇することになる。すなわち、発光部101はノコギリ波的に周期的な温度変化を行うことになる。なお、図5(g)において、1周期におけるペルチェ素子130の吸熱量(Q1・Δt+q3)と、発光部101の発熱量(Q2・Δt)及び発光部101がペルチェ素子130以外から受ける熱量(q4)の総和(Q2・Δt+q4)が実質的に等しくなっているため、発光部101の温度変化において、平均温度は一定温度(図中基準線上)となり、常に微少な温度変化の範囲内で温度状態が確保されていることになる。
このように、本実施の形態によれば、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流のパルス幅は、発光ダイオード駆動電流のパルス電流のパルス幅よりも大きいため、さらに発光部101の状態を良好な状態に維持することができる。また、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流のパルス幅を大きくすることで発光部101の1周期当たりの熱収支が0となるため、発光効率の低下や、波長シフトをより確実に防止でき、さらに発光ダイオード110の長寿命化の効果が見込める。
なお、上記の説明においては、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流のパルス幅の大きさは、発光ダイオード駆動電流のパルス電流の立ち上がりとペルチェ素子駆動電流のパルス電流の立ち上がりとの差分だけ大きくとるものとして説明を行ったが、これに限定されるものではなく、任意の時間長をとるようにしてもよい。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4による光源装置の構成は、実施の形態1と同様なので説明には図1を用い、詳細な説明は省略する。
本実施の形態による光源装置は、実施の形態2と同様、実施の形態1におけるペルチェ素子駆動電流の波形を所定量オフセットしたものである。言い換えると、実施の形態1におけるペルチェ素子駆動電流に全期間に渡って所定量の電流を加算したものである。さらに、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の大きさを実施の形態1に比べ大きくしたものである。
以下、図6のタイムチャートを参照して説明を行う。図6(a)は、ペルチェ素子駆動電流の電流値の時間変化を示す。また図6(b)は、発光ダイオード駆動電流の電流値の時間変化を示す。また図6(c)は、ペルチェ素子130の単位時間当たりの吸熱量の時間変化を示す。また図6(d)は、ペルチェ素子130によって発光ダイオード110から吸熱される単位時間当たりの熱量の時間変化を示す。また図6(e)は、発光ダイオード110の単位時間当たりの発熱量の時間変化を示す。また図6(f)は、発光部101が、ペルチェ素子130の駆動による吸熱以外に受ける単位時間当たりの熱量の時間変化を示す。また図6(g)は、発光部101の温度変化を示す。
図6(a)に示すように、ペルチェ素子駆動電流は、パルス電流の立ち下がりにおいても電流値が0より大きい。つまり、パルス電流の立ち下がりにおいても低出力の吸熱を行っている。そして、ペルチェ素子130の吸熱に伴う温度低下が中間層を経て発光部101に達する時と、発光ダイオードの駆動始期とが同一タイミングとなるような立ち上がりで、高出力の吸熱動作を行う。したがって、ペルチェ素子130は低出力と高出力とで周期的に吸熱動作することになる。一方、図6(b)に示す発光ダイオード駆動電流の電流値の時間変化は実施の形態1の図2(b)の場合と同様である。
このとき、図6(a)に示すように、ペルチェ素子130の吸熱動作の高出力時における供給電流の振幅、すなわち、ペルチェ素子駆動電流のパルス電流の電流値は、オフセット分だけ上乗せされるとともに、パルス電流の振幅自体も実施の形態2の場合よりも大きくとっている。したがって、図6(c)(d)に示すように、ペルチェ素子130の単位時間当たりの吸熱量もこれに応じて大きくなる。
以上の制御によって、図6(d)(e)に示すように、駆動信号の振幅の違いにより、発光部101の点灯期間中に生ずる単位時間当たりの発熱量Q2よりも、ペルチェ素子130により生ずる単位時間当たりの吸熱量Q1の方が大きくなる。
さらに、実施の形態2の場合と同様、図6(f)に示すように、発光部101は常に単位時間当たり、ペルチェ素子130以外から一定の熱量Q4受熱された状態が維持されている。ペルチェ素子130の全時間帯におけるオフセット分により生ずる単位時間当たりの熱量Q3の移動によって、この一定の熱の一部が吸熱されることとなる。なお、ペルチェ素子130の全時間帯におけるオフセット分により生ずる単位時間当たりの熱量Q3は、発光部101が常にペルチェ素子130以外から受ける単位時間当たりの熱量Q4よりも小さい。そして、1周期におけるペルチェ素子130の吸熱量は、発光部101に生ずる発熱量及び発光部101がペルチェ素子130以外から受ける熱量の総和と実質的に等しくなっている。
したがって、図6(g)に示すように、発光部101においては、光源装置が駆動開始すると、ペルチェ素子130以外から受ける単位時間当たりの熱の移動量Q4により温度上昇が始まり、点灯による発熱が生じても、これと同一タイミングで生ずるペルチェ素子130による吸熱量が発光部101の発熱量を上回るため、温度降下へ切り替わる。発光部101の点灯及びペルチェ素子130の吸熱動作が終了すると、発光部101が受けるペルチェ以外からの単位時間当たりの発熱Q4によって温度上昇しようとするが、この間もペルチェ素子130は低出力動作しているため、温度上昇は抑制され、次のパルス点灯の立ち上がりまで、緩やかに温度上昇する程度にとどまる。
すなわち、実施の形態3同様、発光部101はノコギリ波的に周期的な温度変化を行うことになるが、その変化は微少な温度変化の範囲内で生ずるため、発光ダイオード110の動作に大きな影響を与えない。
このように、本実施の形態によれば、実施の形態2の低出力オフセットの駆動制御と比べて、ペルチェ素子の高出力の吸熱動作時における駆動信号の振幅を大きくして、低出力時の電力を抑えながら、発光部の到達する温度最高点を低減させることができるので、発光期間中の発光効率の低下による発光量の低下や、波長シフトが防止でき、さらに発光ダイオード110の長寿命化の効果が見込める。
なお、ペルチェ素子130の駆動時におけるオフセットの大きさは任意としてよいが、1周期における吸熱量が発熱量全体と等しくなるようにしている。ペルチェ素子130による吸熱、発光部101による発熱作用によるもの以外に、発光ダイオード110がペルチェ素子130以外から受ける熱量や、ペルチェ素子130側以外の外部へ放出する熱量をあらかじめ算出又は見積もって設定することが、省電力の点から望ましい。
また、図6(a)に示すペルチェ素子130の高出力のパルス吸熱動作の駆動信号の振幅は、図6(e)に示す発光部101のパルス点灯により生ずる単位時間当たりの発熱量Q2よりも、図6(d)に示すペルチェ素子130のパルス吸熱動作により生ずる単位時間当たりの吸熱量Q1のほうが大きくなるような振幅であれば任意の大きさとしてよい。
なお、上記の各実施の形態において、発光部101からペルチェ素子130への熱の移動する時間は、発光部101とペルチェ素子130の間に介在する材料のばらつきや、周囲の温度によっても変化するため、パルス制御手段203において、光源装置の動作時間、配置環境、等に併せて、適宜パルス吸熱動作の遅延時間、振幅、及びパルス幅を再調整することができれば、さらに効果は高くなる。
また、図7(a)に示すように、発光部101から放射される光量を検知する光出力センサ301や、図7(b)に示す発光部101の近傍の温度を検知できるように温度センサ302を備え、これらセンサの検出値に基づき、パルス制御手段203によって、ペルチェ素子駆動電流の電流波形、又は/及び、発光ダイオード駆動電流の電流波形を調整するようにしても良い。具体的には、ペルチェ素子駆動電流及び発光ダイオード駆動電流のパルス電流の時間差、振幅、及びパルス幅の各パラメータを調整するようにしても良い。なお、光出力センサ301は、発光部101から図示しない対物レンズ等の光学系への光路を遮らないような箇所に設けることが望ましい。図7(a)は発光部101の側面に配置し、横からの漏洩光を検知する構成とした。また、温度センサ302は、図7(b)に示す例では金属基板106上に設けることとしたが、樹脂レンズ108に隣接させる等、発光部101の温度変化を受けやすい箇所に配置させるようにすることが望ましい。
また、これらセンサを用いたパルス制御手段203の動作は、所定時間毎に適宜検知を行い、その際の検出値に基づき制御の各パラメータを再調整するようにしてもよいし、リアルタイムで検知を行い、逐次パラメータの調整を行いながら、遅延等を制御するようにしてもよい。
また、赤、緑、青色の光源装置の少なくとも1つ以上に本発明の光源装置を用い、さらに透過型画像表示素子を用いた直視型画像表示装置において、フィールドシーケンシャル方式で駆動されている場合に、少ない電力で光源を冷却でき、より明るく、色再現範囲の変化が小さく、光源を長寿命することができるといった効果が得られる。
さらに、少なくとも1つ以上の赤、緑、青色の光源装置として本発明の光源装置を用い、さらに画像表示素子と投写手段を用いた投写型表示装置において、フィールドシーケンシャル方式で駆動されている場合に、少ない電力で光源を冷却でき、より明るく、色再現範囲の変化が小さく、光源を長寿命することができるといった効果が得られる。
なお、本発明にかかるプログラムは、上述した本発明の光源装置の全部又は一部の手段の機能をコンピュータにより実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムであってもよい。
また、本発明は、上述した本発明の光源装置の全部又は一部の手段の全部又は一部の機能をコンピュータにより実行させるためのプログラムを担持した媒体であり、コンピュータにより読み取り可能且つ、読み取られた前記プログラムが前記コンピュータと協動して前記機能を実行する媒体であってもよい。
なお、本発明の上記「一部の手段」とは、それらの複数の手段の内の幾つかの手段を意味し、あるいは、一つの手段の内の一部の機能を意味するものである。
また、本発明の一部の装置とは、それらの複数の装置の内の、幾つかの装置を意味し、あるいは、一つの装置の内の、一部の手段を意味し、あるいは、一つの手段の内の、一部の機能を意味するものである。
また、本発明のプログラムを記録した、コンピュータに読みとり可能な記録媒体も本発明に含まれる。
また、本発明のプログラムの一利用形態は、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
また、本発明のプログラムの一利用形態は、伝送媒体中を伝送し、コンピュータにより読みとられ、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
また、記録媒体としては、ROM等も含まれる。
また、上述した本発明のコンピュータは、CPU等の純然たるハードウェアに限らず、ファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであっても良い。
なお、以上説明した様に、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現しても良いし、ハードウェア的に実現しても良い。