JP4159423B2 - ポリカーボネートジオールから誘導した微細な水性ポリウレタン分散液の製造方法 - Google Patents
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低VOCのポリウレタン塗料の中では、水性ポリウレタン分散液が重要なシステムである。実際、溶媒放出のレベルを減少させる環境規制の趨勢のために、種々の塗料、塗料の改質剤、光沢剤、レザー、接着剤、紙サイジング剤、織物サイジング剤などにおいて水性ポリウレタン分散液の応用が拡大している。
ポリウレタンへのイオン基の導入は、水性ポリウレタン分散液を得る実際的方法である。種々のポリウレタンイオノマーは、文献に記載されている(例えば、非特許文献1参照)。原料のコストおよび分散技術が、ポリウレタン分散液の実用の可能性を決定する2つの重要な因子である。したがって、可能性の高い一つのシステムは、ジイソシアネート、市販ポリオールおよびカルボン酸化ジオール(第三級アミンで中和した後にイオン基を供給することができる)から誘導したポリウレタン分散液である。イオン基の存在は、水分散性を与えるだけでなく、他のイオノマーのように、分子間力を上げて強度を高めもする。分散方法を含む調製法は、水性ポリウレタン分散液を得るための基本的な技術である。
さらに実用的な方法では、まず、イソシアネート(NCO)末端のプレポリマーイオノマーを極性溶媒中で調製する。得られたプレポリマーイオノマー溶液は水に容易に分散する。分散の後、ジアミンのような鎖延長剤を添加してNCO基をカップルさせ、分子量を上げる。その後、溶媒を除去して、望ましい水性ポリウレタン分散液を得る。
それらの分子量は十分に高くはなく、そのような水性ポリウレタン分散液から得られたフィルムの力学特性は時には不満足である。
すなわち、本発明の第1は、揮発性の極性溶媒中触媒の存在下で、ジイソシアネート、ポリカーボネートジオール、カルボン酸化ポリカプロラクトンジオールおよび第三級アミンを反応させることによりポリウレタンプレポリマー溶液を調製し、そのポリウレタンプレポリマー溶液に、水性ポリウレタン分散液で用いる水の総量に対し総量で0.1〜3質量%の水を3〜10回に分けて混合し、ついで十分な量の水(例えば、上記ポリウレタンプレポリマー溶液中のポリウレタンプレポリマーの質量の好ましくは0.6〜9倍量の水、より好ましくは1〜4倍量の水)に分散し、続いてジアミンで鎖延長し、揮発性の極性溶媒を除去して水性ポリウレタン分散液を得ることを特徴とする、水性ポリウレタン分散液の製造方法である。
本発明の第3は、ジイソシアネートがイソホロンジイソシアネート、ジ(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン(HTDI)またはそれらの混合物であることを特徴とする、本発明の第1又は第2の水性ポリウレタン分散液の製造方法である。
本発明において、まず、揮発性の極性溶媒中で触媒の存在下で、ジイソシアネート、ポリカーボネートジオール、カルボン酸化ポリカプロラクトンジオールおよび中和剤としての第三級アミンを反応させることによってポリウレタンプレポリマー溶液を調製する。分散の前に、ポリウレタンプレポリマー溶液に、水性ポリウレタン分散液で用いる水の総量に対し少量、即ち総量で0.1〜3質量%、好ましくは0.1〜1質量%の水を3〜10回に分けて混合する。ついで、十分量の水を添加してプレポリマー分散液を得る。水性ジアミン溶液でプレポリマー分散液を鎖延長する。ついで、揮発性の極性溶媒を除去し、水性ポリウレタン分散液を得る。本法によって調製された水性ポリウレタン分散液は、従来法によって調製されたものに比較して、より高い分子量と引張強さを示す。特に、カルボン酸基のソースとしてカルボン酸化ポリカプロラクトンジオールを用いて、本方法によって調製した水性ポリウレタン分散液は、カルボン酸基のソースとしてジヒドロキシメチルアルカン酸を用いて調製したものと比較して、より微細な粒子の存在を示す。
従来法でのプレポリマーのNCO基の過度の消費は、IR分析によって確認することができる。一般的に、従来法において、分散過程の終わりに残っているNCO基は、少量(元の量の約15モル%)である。本発明では、大量の水への分散の前に、ウレタンプレポリマー溶液に、水性ポリウレタン分散液で用いる水の総量に対し少量、即ち総量で0.1〜3質量%の水を3〜10回に分けて混合する。この方法によって、NCO基の加水分解によって作られたアミン基には、反応媒体の粘度上昇によって示されるように、残存NCO基と結合するのに十分な時間がある。反応媒体の粘度が安定した後に、十分な水を添加する。一般的に、新規な本方法によって得られたプレポリマー分散液は、高含量(元の量の約半分)のNCO基が残っていることを示す。したがって、プレポリマー分散液は、より効果的にジアミンで鎖延長され、より高い分子量のポリウレタン分散液が得られ、従来法によって調製されたポリウレタン分散液と比較して、その引張強さは非常に高い。
本発明では、ポリウレタン用に一般的に使用される触媒が反応速度を上げるために適当である。触媒の例は、ジラウリン酸ジブチルスズのようなジアルカン酸ジブチルスズ、オクチル酸スズのようなアルカン酸スズなどである。
第三級アミンは、カルボン酸基を中和するために使用される。第三級アミンの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどおよびそれらの混合物である。
本発明では、分散の前にポリウレタンプレポリマー溶液に、水性ポリウレタン分散液で用いる水の総量に対し総量で0.1〜3質量%の水を3〜10回に分けて混合し、ついで十分量の水を加えて混合し、プレポリマー分散液を作る。水性のジアミン溶液でプレポリマー分散液を鎖延長させ、ついで、揮発性の極性溶媒を除去して水性のポリウレタン分散液を得る。NCO基の鎖延長剤との反応性は、加水分解反応を減少させるために、水との反応性よりも大きいことが望ましい。したがって、アミンタイプ鎖延長剤が本発明において使用される。ジアミン鎖延長剤の例は、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ジ(2−アミノエチル)エーテル、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミンなどおよびそれらの混合物である。
各特性は次のようにして求めた。
(1)粒子径
水性ポリウレタン分散液の粒子径はPhotal Par IIIs 光相関器(大塚電子製)を用いて測定した。
(2)分子量、分子量分布
水性ポリウレタン分散液の分子量および分子量分布はゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により求めた。GPC装置は東ソー製HLC−8220 GPC装置にTSK gel Super HM−Hを4本用い、RI検出器で検出した。展開溶媒ジメチルホルムアミド(DMF)、流速0.5mL/min、操作温度40℃、ポリスチレン換算で求めた。
(3)IRスペクトル
ポリウレタンポリマー溶液のIRスペクトルは、パーキンエルマー社製1600シリーズFTIRを用いた。
(4)成膜方法
フィルムサンプルは30%ポリウレタンポリマー溶液をガラス板上にキャスト成膜し、60℃で24時間、80℃で24時間、100℃で24時間乾燥した。(5)引張強度試験
引張強度試験はダンベル状試料を用い、インストロン4469万能試験機で測定した。ゲージ長25mm、23℃、引張り速度100mm/minで測定した。
(6)イソシアネートの当量測定
イソシアネートの当量測定はジ−n−ブチルアミン逆滴定法により求めた。(詳細:Oertel,G. Polyurethane Handbook; Hanser Publishers: New York,1985)。
比較のために、水性ポリウレタン分散液を従来法によって調製した。窒素雰囲気下、イソホロンジイソシアネート(IPDI)33.3g(0.15モル)、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオール(モル比、70:30)から誘導された分子量2,000のポリカーボネートジオール(旭化成(株))100g(0.05モル)、分子量500のカルボン酸化ポリカプロラクトンジオール25.0g(0.05モル)(ダイセル工業(株)のPlaccel 205BA)およびトリエチルアミン(TEA)6.1g(0.05モル)を、メチルエチルケトン(MEK)30ml中80℃で2.5時間反応させてNCO末端のプレポリマー溶液を得た。そのNCO含量は、滴定による測定で、2.16%であると判明した。乾燥プレポリマーのIRスペクトルを測定した。ついで、脱イオン水385.2gを添加し、35℃でプレポリマー分散液と混合して、プレポリマー溶液を得た。乾燥プレポリマー分散液のIRスペクトルを測定した。脱イオン水2.0g中にエチレンジアミン(EDA)1.5g(0.0025モル)を含む溶液をプレポリマー分散液に添加して、30℃で1時間撹拌した。ついで、混合物を80℃に加熱してMEKを除去して、固形分30%の水性ポリウレタン分散液を得た。
水に分散する前のプレポリマー溶液に高含量のNCO基が存在したことは、IRデータから確認することができる。大量の水と混合した後に、NCO基の含量は急激に減少し、分散過程の終わりには、少量(元の量の約15%)のNCO基が残っていた。したがって、更なる鎖延長のためのNCO基が十分には存在しなかった。この水性ポリウレタン分散液のポリマーのMnは、GPCによって測定して8,770であると判明した。また、この水性ポリウレタン分散液から成形したフィルムの引張強さは19.8MPaであった。この水性ポリウレタン溶液をガラス板上に均一に塗布した後風乾しキャストフィルムを得た。キャストフィルムの特性を表1に要約する。
比較例1と同じ方法を用いて、NCO末端のプレポリマー溶液を調製した。NCO含量は2.16%であった。プレポリマー溶液に、少量(0.5g)の脱イオン水を4回混合した。この過程の間に、反応液の粘度は上昇した。このように総量で水2.0gを添加した後、反応液の粘度は横ばいになった。ついで、十分な量(381.2g)の水を添加した。乾燥したプレポリマー分散液のIRスペクトルを測定した。他の過程は、比較例1の場合と同じ操作に従った。
この水性ポリウレタン分散液のポリマーのMnは、39,800であり、平均粒子径は61nmであった。また、この水性ポリウレタン分散液から成形したフィルムの引張強さは40.1MPaであると判明した。特性を表1に要約する。IRスペクトルのデータから、得られたプレポリマー分散液は、高含量(元の量の約50%)のNCO基の存在を示した。したがって、更なる有効な鎖延長のために十分な量のNCO基が存在した。それ故、表1に示すように、実施例1のプレポリマー分散液のポリマーの分子量およびキャストフィルムの引張強さは、比較例1のそれらよりはるかに大きい。
実施例1と同じ方法で水性ポリウレタン分散液を調製した。ただし、Placcel 205BAの代わりにジメチロールプロピオン酸(DMPA)6.7g(0.05モル)を使用し、水は、387.2mLの代わりに総量344.4mLを使用した。その特性を表1に要約する。この水性ポリウレタン分散液のポリマーのMnは、33,300、平均粒子径は153nmであった。また、この水性ポリウレタン分散液から成形したフィルムの引張強さは54.8MPaであると判明した。
表1に示した粒子径のデータは、カルボン酸基のソースとしてカルボン酸化ポリカプロラクトンジオールを用いての、本発明の方法によって調製された水性ポリウレタン分散液が、カルボン酸基のソースとしてジヒドロキシメチルアルカン酸を用いる方法によって調製したものと比較して、より微細な粒子の存在を表していることを示す。
水性ポリウレタン分散液を実施例1と同じ方法で調製した。ただし、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオール(モル比、70:30)から誘導された分子量2,000のポリカーボネートジオールの代わりに、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオール(モル比、5:95)から誘導された分子量2,000のポリカーボネートジオール(旭化成(株))100g(0.05モル)を使用し、MEKの代わりにN−メチルピロリドン(NMP)30mLを使用した。その特性を表2に要約する。この水性ポリウレタン分散液のポリマーのMnは33,900、平均粒子径は77nmであった。また、この水性ポリウレタン分散液から成形したフィルムの引張強さは45.2MPaであると判明した。
実施例1と同じ方法で水性ポリウレタン分散液を調製した。ただし、IPDIの代わりに、ジ(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)19.65g(0.15モル)を使用し、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオール(モル比、70:30)から誘導された分子量2,000のポリカーボネートジオールの代わりに、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオール(モル比、5:95)から誘導された分子量2,000のポリカーボネートジオール(旭化成(株))を100g(0.05モル)使用した。その特性を表2に要約する。この水性ポリウレタン分散液のMnは14,000、Mwは37,200であり、平均粒子径は39nmであった。また、この水性ポリウレタン分散液から成形したフィルムの引張強さ35.4MPaであると判明した。 表1と表2を比較して、本発明の方法によって調製された水性ポリウレタン分散液の特性が改良されていることが確認される。一般的に、その特性は、比較例1よりはるかに大きい30MPa以上の引張強さを示す。また、その粒子径は比較例2の場合より小さく、さらに得られるポリウレタンフィルムの破断時の伸びに優れることを示している。
Claims (3)
- 揮発性の極性溶媒中触媒の存在下で、ジイソシアネート、ポリカーボネートジオール、カルボン酸化ポリカプロラクトンジオールおよび第三級アミンを反応させることによりポリウレタンプレポリマー溶液を調製し、そのポリウレタンプレポリマー溶液に、水性ポリウレタン分散液で用いる水の総量に対し総量で0.1〜3質量%の水を3〜10回に分けて混合し、ついで十分な量の水に分散し、続いてジアミンで鎖延長し、揮発性の極性溶媒を除去して水性ポリウレタン分散液を得ることを特徴とする、水性ポリウレタン分散液の製造方法。
- ポリカーボネートジオールが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオールまたはそれらの混合物から誘導したホモポリカーボネートジオールまたは共重合ポリカーボネートジオールであることを特徴とする、請求項1記載の水性ポリウレタン分散液の製造方法。
- ジイソシアネートがイソホロンジイソシアネート、ジ(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン(HTDI)またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の水性ポリウレタン分散液の製造方法。
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