JP4158433B2 - 糸条巻取機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、糸条処理用の回転部材を有する巻取ユニットを備えた糸条巻取機に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動ワインダー等の糸条巻取機は、単錘駆動される巻取ユニットの多数を機台上に列設したものである。一つの巻取ユニットは、リング精紡機で生産された給糸ボビンから解舒される糸を糸欠点を除去しつつ所定形状のパッケージに巻き上げる機能を有する。
【0003】
各巻取ユニットは、巻取パッケージに接触させて巻取ドラムを回転駆動させる直流ブラシレスモータと、この直流ブラシレスモータの回転駆動を制御するモータ制御部と、このモータ制御部を制御するユニット制御部とが設けられている。また、前記機台の一端には、列設された多数の巻取ユニットを制御する主制御部が設けられている。この主制御部にはシステム電源が配設され、このシステム電源から供給される電力で多数のユニット制御部やモータ制御部が作動するようになっている。
【0004】
このような自動ワインダー等の糸条巻取機で停電が発生した場合、システム電源からの電力の供給が絶たれるため多数の巻取ユニットがそれぞれ停止することになる。このとき、主制御部で停電を検出し、各ユニット制御部に専用信号線で停電を送信し、各巻取ユニットに於いて一斉に糸切断を行った後、前記直流ブラシレスモータをフリーランで停止させるものが提案されている(特許3006562号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、各巻取ユニットで糸切断を行った後、巻取ドラムと該ドラムに接触して回転しているパッケージをフリーランで停止させると、巻取ドラムとパッケージが擦れてすれ玉(糸切断後のパッケージセンターの棒巻部分の糸が擦られて捩れる現象)が発生する恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、停電検出時に糸条用の回転部材のモータを適切に減速制御できる糸条巻取機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する請求項1記載の本発明は、
糸条処理用の回転部材を有する巻取ユニットの多数を列設した糸条巻取機であって、
前記巻取ユニットは、前記回転部材を回転駆動するモータと、このモータの回転駆動を制御するモータ制御部と、このモータ制御部を制御するとともに前記巻取ユニットの動作を制御するユニット制御部とを備え、
前記モータ制御部に、このモータ制御部の電源を監視して停電を検出する停電発生検出部と、前記停電発生検出部の停電検出により、前記モータへの出力量をPI又はPID制御方式に基づいて算出して前記モータを減速停止制御させる減速停止制御部であって、前記減速停止制御に伴い前記モータで生じる回生電力をこの前記ユニット制御部に出力する減速停止制御部とを設け、
前記減速停止制御部には、複数の減速停止制御モードが備えられ、前記巻取ユニットの動作条件に応じて選択された制御モード指令に基づいて、前記複数の制御モードからいずれかを予め選択して減速停止を行うものであり、
前記複数の制御モードは、PI又はPID制御に沿ってデューティ比を算出しながら行う第1モードと、前記第1モードでは十分な回生電力が得られないため、回生エネルギーを多く且つ早く発生させる第2モードとを有することを特徴とするものである。
【0008】
上記構成によると、停電発生検出部が停電を検出すると、モータ制御部に設けられた減速停止制御部が、前記モータへの出力量をPI又はPID制御方式に基づいて算出して、前記モータを所定の減速比で停止させる。
上記構成によると、減速停止制御に伴い上記モータで生じる回生電力がユニット制御部に供給され、停止に至るまで巻取ユニットを制御する。
上記構成によると、モータ制御部が停電を検出し、停電検出と殆ど同時にモータ制御部で停止制御による回生電力を発生させることができる。
上記構成によると、記巻取ユニットの動作条件に応じて選択された制御モード指令に基づいて、前記複数の制御モードから複数の減速停止制御モードのいずれかを予め選択されるため、減速停止制御部は停電が発生する前から適切な減速停止制御モードを把握している。
【0011】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、前記複数の制御モードは、
PI又はPID制御に沿ってモータへの出力量としてのデューティ比の算出を行う高速回転時の第1モードと、
デューティ比が50%を超える時はデューティ比を50%にするとともにモータの相励磁パターンの順序を逆にして、PI又はPID制御に沿ってデューティ比の算出を行う中・低速回転時の第2モードとを有するものである。
上記構成によると、第1モードでは、高速回転時に、PI又はPID制御によって必要な回生エネルギーを発生させる。第2モードでは、中・低速回転時に、デューティ比を50%にするとともにモータの相励磁パターンの順序を逆にして、回生エネルギーを多く発生させる。
【0012】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または2において、前記動作条件に基づいて前記ユニット制御部から、前記複数の制御モードを選択する信号が前記減速停止制御部に送信されるようになっているものである。
上記構成によると、減速停止制御部は、停電発生検出部からの停電検出と同時に、制御モードを選択することができ、直ちに所定モードによる減速停止制御に入ることができる。
【0013】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記回転部材は、パッケージが接する巻取ドラムを含み、前記パッケージを前記巻取ドラムから離反させるリフトアップ機構が設けられ、前記ユニット制御部に出力された前記回生電力により、前記リフトアップ機能を作動させるものである。
【0014】
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記回転部材は、パッケージが接する巻取ドラムと、走行糸に対する毛羽伏せ回転部材とを含み、
前記モータは、前記巻取ドラム用の第1モータと、前記毛羽伏せ回転部材用の第2モータとを含み、
前記モータ制御部は、前記第1モータ用の第1モータ制御部と、前記第2モータ用の第2モータ制御部とを含み、
前記減速停止制御部は、前記第1モータ制御部と前記第2モータ制御部との各々に設けられているものである。
上記構成によると、巻取ドラムと毛羽伏せ回転部材の両方を、減速停止制御により、所定の減速比で停止させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の好適実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。図1は、糸条巻取機の巻取ユニットの機器配置図であり、図2は、毛羽伏せ装置の構造を示す正面図である。
【0016】
図1に示すように、糸条巻取機1の巻取ユニットUは、給糸ボビンBから解舒される紡績糸YをトラバースさせながらボビンBf上に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージPとするものである。このような巻取ユニットUの多数が図示されない機台上に列設されて糸条巻取機1が構成されている。
【0017】
この巻取ユニットUは、ボビンBfを把持するクレードル2と紡績糸Yをトラバースさせる綾振りドラム(回転部材)3とを備えている。クレードル2は、綾振りドラム3に向けて揺動自在であり、それによってボビンBfに巻き形成されたパッケージPが綾振りドラム3に対して接触又は離反される。また、クレードル2には、糸切れ時にクレードル2を上げて、パッケージPを綾振りドラム3から離反させるリフトアップ機構2aと、クレードル2を上げると同時に、クレードル2に把持されたパッケージPの回転を停止させるパッケージブレーキ機構2bが取り付けられている。このリフトアップ機構2aとパッケージブレーキ機構2bの作動は、ユニット制御部27により制御される。
【0018】
綾振りドラム3は、その表面に紡績糸をトラバースさせる螺旋状の綾振り溝3aが形成されている。この綾振りドラム3は、直流ブラシレスモータ(第1モータ)21により回転駆動させられる。綾振りドラム3と直流ブラシレスモータ21の駆動軸とは、直結、カップリングを介して連結、又はプーリとベルトを介しての連結のいずれかで接続される。この直流ブラシレスモータ21の回転駆動は、モータ制御部25により制御される。
【0019】
この巻取ユニットUは、給糸ボビンBと綾振りドラム3との間の糸走行経路中に、給糸ボビンBから順に、解舒補助装置4、テンション付与装置5、毛羽伏せ装置6、糸継ぎ装置7、クリアラー(糸太さ検出器)8を配設している。
【0020】
解舒補助装置4は、給糸ボビンBの解舒と共に芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸の解舒を補助するものである。
テンション付与装置5は、走行する紡績糸Yに所定のテンションを付与するものである。図示例では、固定の櫛歯5aに対して可動の櫛歯5bを配置するゲート式のものが用いられている。櫛歯5aに対して櫛歯5bが噛み合わせ状態又は解放状態になるように旋回自在になっており、その旋回はロータリー式のソレノイド5cにより行われる。このテンション付与装置5は、固定の櫛歯5aに対して可動の櫛歯5bを噛み合わせることにより、毛羽伏せ装置6の撚り止め装置としても機能する。
【0021】
毛羽伏せ装置6は、紡績糸Yに仮撚を施すことにより、紡績糸Yを構成する繊維群の毛羽を撚り込ませて、給糸ボビンBから解舒される紡績糸Yの毛羽を抑制するものである。図示例では、複数のディスク6aを軸方向に重ねるディスク式の毛羽伏せ回転部材を用いるものが用いられている。
【0022】
図2に示すように、糸道に平行な、第1駆動軸6b、第2駆動軸6c、第3駆動軸6dが、上方から見て正三角形の各頂点a,b,cに位置するように配設されている。各駆動軸6b,6c,6dの各々には、複数枚(図示例では二枚)のディスク(毛羽伏せ回転部材)6aが、ディスク6a同士が径方向で部分的に重なり合うような大きさを有して取り付けられている。また、各ディスク6aは、下から順に第3駆動軸6d、第2駆動軸6c、第1駆動軸6b、第3駆動軸6d、第2駆動軸6c、第1駆動軸6bの順に、軸方向交互にずらされて配置されている。
各駆動軸6b,6c,6dは、直流ブラシレスモータ(第2モータ)22(図1参照)によって、同一方向に回転させられる。直流ブラシレスモータ22の回転駆動は、モータ制御部26(図1参照)により制御される。図2(b)のように、ディスク6aの重なった中心部Aに紡績糸Yが通され、各ディスク5aとの接触でジグザグ状に屈曲された紡績糸Yに仮撚が施されることにより、毛羽が抑制される。
【0023】
図1に示すように、この毛羽伏せ装置6の下流(上側)には、紡績糸Yに対するクランプ6gが設けられている。糸切断時又は糸切れ時に、クランプ6gを作動させて、毛羽伏せ装置6への糸の巻き付けを防止する。このクランプ6gはソレノイド6fによって作動し、ソレノイド6fの作動はユニット制御部27により制御される。
【0024】
糸継ぎ装置7は、糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は解舒中の糸切れ時に、給糸ボビンB側の下糸と、パッケージP側の上糸とを糸継ぎするものである。
クリアラー8は、紡績糸Yの太さ欠陥を検出するためのものである。クリアラー8からの紡績糸Yの太さに応じた信号がアナライザー8bで処理され、スラブ等の糸欠陥を検出する。
また、このクリアラー8には、糸欠陥を検出した時の糸切断用のカッター8aが付設されている。このカッター8aの作動は、アナライザー8b又はユニット制御部27により制御される。
【0025】
糸継ぎ装置7の上下には、給糸ボビンB側の下糸を捕捉して案内する下糸捕捉案内手段11と、パッケージP側の上糸を捕捉して案内する上糸捕捉案内手段12が設けられている。
糸切断時又は糸切れ時に、下糸捕捉案内手段11の吸引口11aが図示の位置で下糸を捕捉し、軸11bを中心にして下から上へと旋回して、糸継ぎ装置7に下糸を案内する。同時に、上糸捕捉案内手段12のマウス12aが図示の位置から軸12bを中心にして下から上へと旋回し、逆転させられるパッケージPから上糸を捕捉し、更に軸12bを中心にして上から下へと旋回し、糸継ぎ装置7に上糸を案内する。糸継ぎ装置7で引き揃えられた下糸と上糸とは旋回空気流を用いて糸継ぎされる。
【0026】
綾振りドラム3用直流ブラシレスモータ(第1モータ)21の第1モータ制御部25と、毛羽伏せ装置6用直流ブラシレスモータ(第2モータ)22の第2モータ制御部26と、リフトアップ機構2a及びパッケージブレーキ機構2b、カッター8a用のアナライザー8b、クランプ6g用のソレノイド6f、テンション付与装置5のソレノイド5cの制御は、ユニット制御部27により行われる。
また、各巻取ユニットUに対応するユニット制御部27は、主制御部28により制御される。この主制御部28には、システム電源31が設けられている。各巻取ユニットUのユニット制御部27はシステム電源31に接続されており、更に各モータ制御部25,26等はユニット制御部27に接続されることにより、各機器が作動する。
【0027】
つぎに、上述した糸条巻取機1の停電処理システムを説明する。図3は、停電処理のシステムの機能ブロック図である。
【0028】
図3において、糸条巻取機の停電処理システムSは、綾振りドラム3用直流ブラシレスモータ(第1モータ)21と、モータ21の第1モータ制御部25と、毛羽伏せ装置6用直流ブラシレスモータ(第2モータ)22と、モータ22の第2モータ制御部26と、ユニット制御部27とを備えて構成される。
【0029】
ユニット制御部27は、アナライザー8bを介してカッター8aを制御し、リフトアップ機構2aとパッケージブレーキ機構2bを制御し、ソレノイド6fを介してクランプ6gを制御する。
【0030】
第1モータ制御部25は、速度制御部35と、停電制御部36と、出力部(PWM出力部)37と、パワー回路(スイッチング回路)38の直列的な接続部分と、パワー回路38に接続されるDC電源39に対する母線電圧検出回路40と、母線電圧検出回路40と停電制御部36との間に接続される母線電圧監視部41と、速度制御部35と並列的に配置される停電制御コマンド42とから構成される。なお、以下に説明するような第1モータ制御部25の各機能は、主としてCPU等の中央演算装置により実現される。また、母線電圧検出回路40と、母線電圧監視部41などが、モータ制御部25に設けられた停電発生検出部29を形成する。さらに、停電制御部36と、出力部37などが減速停止制御部(回生電力発生部)30を形成する。
第2モータ制御部26も、第1モータ制御部25と同様に構成されており、停電発生検出部32と、減速停止制御部(回生電力発生手段)33とを有している。
【0031】
出力部37は、磁極位置検出センサ43から出力されたロータ位置検出信号に基づいて電機子巻線の通電を切り替え、かつPWM信号を生成し、駆動信号をパワー回路38に出力する。このようにしてスイッチング素子をPWM制御することにより、直流ブラシレスモータ21が回転駆動される。
【0032】
速度制御部35は、主制御部28からユニット制御部27を介して速度制御部35に入力される目標速度と、図示されない回転速度検出器から入力され信号を基に算出された回転速度(現在速度)との偏差に基づいて、直流ブラシレスモータ21に供給する電力(トルク)を調整するためのデューティ比(出力量)を算出し、出力部37に対してデューティ指令を出力する。
【0033】
停電制御部36は、瞬停を含む停電が検出されると、目標速度と現在速度との偏差に基づく速度制御(ブレーキ制御を含む)を行い、直流ブラシレスモータ21から回生電力を生じさせる。この所定の速度制御には、二つの減速モード▲1▼▲2▼がある。二つの減速モードのいずれが採用されるかは、主制御部28からユニット制御部27を介して停電制御部36に出力される停電制御コマンド42で決まる。速度制御部35、停電制御部36に出力される運転指令コマンドは、種々の運転条件(巻取ユニットの動作)の他、停電制御コマンド42として停電制御モード指令を含んでいる。この停電制御モード指令には、停電制御で切り換えられる複数の停電制御モード指令があり減速モード指令▲1▼又は減速モード指令▲2▼のいずれかが含まれる。また、上記減速モード指令▲1▼、▲2▼は、種々の運転条件に応じて運転開始時にユニット制御部27にて予め適宜選択、設定され停電制御コマンド42として出力されるようになっている。
【0034】
母線電圧監視部41は、母線電圧検出回路40で検出されたDC電源39の電圧をA/D変換し、所定の基準値を所定時間だけ下回ると、瞬停を含む停電と判断し、停電信号を停電制御部36に出力する。
【0035】
以上の構成であるため、綾振りドラム3用直流ブラシレスモータ(第1モータ)21の第1モータ制御部25が瞬停を含む停電を検出すると、検出時の停電制御コマンド42に従って、ユニット制御部27からの指令を待つことなく直ちに運転条件の違いに応じた適切な減速制御を行う。それにより直流ブラシレスモータ21で回生電力を発生させ、この発生した回生電力をユニット制御部27に供給する。
同様に、毛羽伏せ装置6用直流ブラシレスモータ(第2モータ)22の第2モータ制御部26が停電を検出すると、停電制御コマンド42に従って、ユニット制御部27からの指令を待つことなく直ちに運転条件の違いに応じた適切な減速制御を行い、それにより直流ブラシレスモータ22で回生電力を発生させ、この回生電力をユニット制御部27に供給する。
【0036】
停電制御部36で切り換えられる減速モード▲1▼又は減速モード▲2▼は、以下のものであり、糸条巻取(運転)条件、例えば綾振りドラム3の回転速度によって使い分けられる。
【0037】
減速モード▲1▼は、高速回転時、例えば綾振りドラム3の回転速度が4000rpmを超える場合に選択される。この減速モード▲1▼は、PI又はPID制御に沿って、デューティ比を算出しながら行う減速制御である。例えば8000rpmから0.8秒で停止させる場合、10msec毎に100rpmを目標速度を引きていき、0.8秒後に、速度ゼロとする制御である。図5(a)の上段に示されるように、定格電圧280Vを上回る回生電力が生じ、過電流になる二点鎖線部分は放電回路で放出し、上限を超えないように回生電力を一定に保持する。
【0038】
減速モード▲2▼は、中又は低速回転時、例えば綾振りドラム3の回転速度が4000rpm以下の場合に選択される。中又は低速回転時には、減速モード▲1▼では十分な回生電力が得られないため、特別に回生エネルギーが多く且つ早く発生するような減速パターンで減速停止させる。具体的には、デューティ比が50%を超える時は一旦デューティ比を50%に(オン時間とオフ時間とが1:1となること)し、そしてU,V,Wの三相の相励磁パターンの順を逆にする逆相励磁(逆にモータを止めようとする制御)にしてから、PI又はPID制御に沿ってデューティ比を算出しながら行う減速制御である。
【0039】
次に、上述した停電処理システムSの作動を説明する。図4は、停電処理のフローチャート図である。図3の機器ブロック図と共に、図4の停電処理のフローを説明する。
【0040】
図4のS1において、ユニット制御部27からスタート運転指令コマンドに停電制御選択コード、例えば1(減速モード▲2▼)又は0(減速モード▲1▼)のコードのいずれかを停電制御コマンド42としてを第1モータ制御部25に送信する。この第1モータ制御部25は停電制御コマンド42においてこのコードを保持する。
S2において、速度制御部36のPI又はPID制御により設定速度を維持するように直流ブラシレスモータ21の回転駆動が制御される。
S3において、第2モータ制御部25自身が保持する停電検出部29が停電を検出すると(S3,YES)、S4において、停電制御部36が減速停止制御を開始させる。
このとき、停電信号は、ユニット制御部27を経てアナライザ8bに送信される。巻取ユニットUが巻き取り中の場合、この停電信号により、カッター8aが作動し、巻き上げ中の糸を切断する。
【0041】
S5において、停電制御部36において、停電制御選択コードが0かどうか判断する。コードが0であると(S5,YES)、高速回転時の▲1▼減速モードが採用され、S6のPI又はPID制御に沿ってデューティ比を算出する通常制御が行われる。コードが0でないと(S5,NO)、中又は低速回転時の▲2▼減速モードが採用される。まずS7において、PI又はPID制御によりデューティ比を算出し、デューティ比が50%を超えるかどうか判断する。デューティ比が50%を下回り(逆相励磁になっている)場合(S7,NO)、S6のPI又はPID制御に沿ってデューティ比を算出する通常制御が行われる。デューティ比が50%を超える場合(S7,YES)、S8でデューティ比を50%に設定するとともに逆相励磁してから、PI又はPID制御が行われる。
【0042】
S6又はS8の減速停止制御により、巻取ドラム又は綾振りドラム3は減速停止に向かい、回生電力が発生し、その回生電力はモータ制御部25のDC電源39からユニット制御部27に供給され、これを作動させる。
【0043】
S10において、リフトアップ機構2aとパッケージブレーキ機構2bにより、巻取ドラム又は綾振りドラム3からパッケージPを離反させるクレードルリフトアップと、巻取ドラム又は綾振りドラム3から離反したパッケージPの回転を停止させるパッケージブレーキが作動する。
このS10と同時に、S11において、糸伏せ装置6の下流のクランプ6gをオンさせ、糸伏せ装置6出口の紡績糸Yを把持する。
S12において、この減速停止制御は、モータが停止するまで(S12,NO)続行され、モータが停止すると(S12,YES)、回生電力も発生しなくなる。
すると、S13及びS14のように、リフトアップ機構2a、パッケージブレーキ機構2b、クランプ用のソレノイド6fが作動しなくなり、パッケージブレーキがオフになり、クレードルリフトもダウンし、クランプ6gも糸を解放する。しかし、このとき、巻取ユニットUは停止状態となっているため、支障が生じることはない。
【0044】
この減速停止の状態が図5に示される。図5(a)は、高速回転時の通常のPI又はPID制御による減速制御状態を示す。過電流による綾振りドラム又は巻取ドラム3の高速回転により、十分な回生電力が生じ、第1モータ制御部25の損傷もない。図5(b)は、低速回転時の逆相に於けるPI又はPID制御による減速制御状態を示す。綾振りドラム又は巻取ドラム3が低速回転であっても、クレードルリフトアップに必要な回生電力が生じる。
【0045】
なお、毛羽伏せ装置6の第2モータ制御部26においても、毛羽伏せドラム3の第1モータ制御部25と同様の制御が行われる。ただし、毛羽伏せ装置6の毛羽伏せ回転部材の慣性力は、巻取ドラム3のそれに比べて少ないため、回転電力の供給も第1モータ制御部25に対する補足的なものとして行われる。特に低速回転時に、回生電力が不足しないように、第2モータ制御部26からも回生電力が供給できる。
【0046】
上述した実施形態が奏する効果を以下に説明する。
(1)停電時にユニット制御部27への電力供給が停止し、巻取ユニットUが運転を継続できなくなっても、まず、クリアラー8による糸切断が行われる。その後、巻取ドラム3用の直流ブラシレスモータ21の減速停止制御及び毛羽伏せ装置6の直流ブラシレスモータ22の減速停止制御によって生成される回生電力でよって、リフトアップ機構2aとパッケージブレーキ機構2bが作動する。そのため、減速停止に至るまで、パッケージPは綾振りドラム3から離れており、糸切断後の棒巻き部分が綾振りドラム3で擦られるすれ玉の発生がなくなり、停電停止がパッケージ品質に影響を与えなくなる。
【0047】
(2)停電検出が、回生電力を生み出す第1モータ制御部25及び第2モータ制御部26内の電源の監視により行われるため、第1モータ制御部25及び第2モータ制御部26は、ユニット制御部27からの停止指令を待つことなく、第1モータ制御部25及び第2モータ制御部26自体が即減速停止の制御を行う。そのため、ユニット制御部27からの減速停止指令を受ける迄の通信に時間を費やし、十分な回生電力を得られなくなるという現象が起こりにくい。
【0048】
(3)ディスク6aで紡績糸に仮撚を施す毛羽伏せ装置6を用いた場合、停電時のディスク6aの回転停止迄に、糸切断後の下糸がディスク6aに巻き付く恐れがあるが、停電時に回生電力により、毛羽伏せ装置6の下流のクランプ6gを作動させるため、毛羽伏せ装置6に下糸が巻き付くことがない。また、毛羽伏せ装置6の回転ディスク(回転部材)6aも減速停止するため、回生電力がなくなってクランプ6gの作動がオフになるまでに、毛羽伏せ装置6を停止させることができる。
【0049】
(4)綾振りドラム3の回転速度に応じて、回生電力が十分得られる高速回転時には、普通のPI又はPID制御による減速制御を行い、回生電力が不足する中、低速回転時には、逆相にしてPI又はPID制御による減速制御により必要な回生電力を生じるようにしている。そのため、過電流による第1モータ制御部25の損傷や、回生電力不足によりパッケージがリフトアップさせられないという状態を回避することができる。また、毛羽伏せ装置6に対しても同様の減速制御を行っているため、回生電力を補充することができる。
【0050】
上述した実施形態は以下のように変更して実施することができる。
(1)毛羽伏せ装置6を用いる場合、その第2モータ制御部26についても、第1モータ制御部25と同様の減速停止制御を行うことが好ましいが、毛羽伏せ装置6のディスク6aの慣性力が少ない場合、第2モータ制御部26の減速停止制御を省くことが出来る。
【0051】
(2)毛羽伏せ装置6は、ディスク式に限らず、二本のローラを交差させるニップ式であってもよい。また、この毛羽伏せ装置6を用いない巻取ユニットUであってもよい。この場合、毛羽伏せ装置6に付属する機器がなくなる。
【0052】
(3)クレードル2に対するリフトアップ機構2aとパッケージブレーキ機構2bのうち、パッケージブレーキ機構2bは停電により自然とブレーキが掛かるロジックを採用することにより、回生電力で作動させるのは、リフトアップ機構2aだけとすることができる。
【0053】
(4)停電検出部29は、第1モータ制御部25及び第2モータ制御部26に設けるものに限らず、主制御部28がシステム電源31の停電を検出し、専用高速通信線でモータ制御部25に送信するものであってもよい。
【0054】
(5)糸条巻取機1は、綾振り溝を有する綾振りドラムを用いるものに限られず、別途のトラバース装置で綾振りされる走行糸を巻取ドラムに接して回転するパッケージに巻き取る形式の糸巻取機構であってもよい。また、テンション付与装置5、糸継ぎ装置7、クリアラー8以外の機器の設置は自在であって、付けたり付けなかったりするものがある。
【0055】
(6)綾振りドラム及び毛羽伏せ装置の回転駆動源であるモータは、直流ブラシレスモータ(同期ACモータ)に限らず、減速停止制御により回生電力を生じさせる形式のモータ、例えばDCサーボモータであってもよい。
【0056】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を奏する。
請求項1に記載の発明によると、停電発生検出部が瞬停を含む停電を検出すると、モータ制御部に設けられた減速停止制御部が、PI又はPID制御に沿って出力量を算出して、前記モータを所定の減速比で停止させるという効果を奏する。請求項6に記載の本発明によると、モータ制御部が停電を検出し、停電検出と殆ど同時にモータ制御部で停止制御による回生電力を発生させることができるという効果を奏する。
また、請求項1に記載の発明によると、減速停止制御でモータに生じる回生電力がユニット制御部に供給され、停止に至るまで巻取ユニットを制御するという効果を奏する。
また、請求項1に記載の本発明によると、モータ制御部が停電を検出し、停電検出と殆ど同時にモータ制御部で停止制御による回生電力を発生させることができるという効果を奏する。
また、請求項1に記載の本発明によると、減速停止制御部が、巻取ユニットの動作条件に応じて選択された制御モード指令に基づいて、複数の制御モードのいずれかを予め選択して減速停止を行うため、停電が検出されると直ちに運転条件の違いに応じた適切な減速制御を行うことができるという効果を奏する。
また、請求項1に記載の本発明によると、第1モードでは、PI又はPID制御に沿ってデューティ比を算出しながら必要な回生エネルギーを発生させ、第2モードでは、前記第1モードでは十分な回生電力が得られないため、回生エネルギーを多く且つ早く発生させるという効果を奏する。
請求項2に記載の本発明によると、第1モードでは,高速回転時に、PI又はPID制御によって必要な回生エネルギーを発生させ、第2モードでは、中・低速回転時に、モータの相励磁パターンの順序を逆にしてPI又はPID制御によってより多くの回生エネルギーを発生させるという効果を奏する。
請求項3に記載の本発明によると、減速停止制御部は、停電検出部からの停電検出と同時に、制御モードを選択することができ、直ちに所定モードによる減速停止制御に入ることができるという効果を奏する。
請求項4に記載の本発明によると、クレードルリフトアップに必要な回生電力が生じるという効果を奏する。
請求項5に記載の本発明によると、巻取ドラムと毛羽伏せ回転部材の両方を、減速停止制御により、所定の減速比で停止させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】糸条巻取機の巻取ユニットの機器配置図である。
【図2】毛羽伏せ装置の構造を示す正面図である。
【図3】停電処理システムの機能ブロック図である。
【図4】停電処理のフローチャート図である。
【図5】停電処理時のモータ等の作動を示す図である。
【符号の説明】
1 糸条巻取機
2 クレードル
2a リフトアップ機構
2b パッケージブレーキ機構
3 綾振りドラム(回転部材)
6 毛羽伏せ装置
6a ディスク(毛羽伏せ回転部材)
21 直流ブラシレスモータ(第1モータ)
22 直流ブラシレスモータ(第2モータ)
25 第1モータ制御部
26 第2モータ制御部
29,32 停電検出部
30、33 減速停止制御部(回生電力発生部)
Claims (5)
- 糸条処理用の回転部材を有する巻取ユニットの多数を列設した糸条巻取機であって、
前記巻取ユニットは、前記回転部材を回転駆動するモータと、このモータの回転駆動を制御するモータ制御部と、このモータ制御部を制御するとともに前記巻取ユニットの動作を制御するユニット制御部とを備え、
前記モータ制御部に、このモータ制御部の電源を監視して停電を検出する停電発生検出部と、前記停電発生検出部の停電検出により、前記モータへの出力量をPI又はPID制御方式に基づいて算出して前記モータを減速停止制御させる減速停止制御部であって、前記減速停止制御に伴い前記モータで生じる回生電力をこの前記ユニット制御部に出力する減速停止制御部とを設け、
前記減速停止制御部には、複数の減速停止制御モードが備えられ、前記巻取ユニットの動作条件に応じて選択された制御モード指令に基づいて、前記複数の制御モードからいずれかを予め選択して減速停止を行うものであり、
前記複数の制御モードは、PI又はPID制御に沿ってデューティ比を算出しながら行う第1モードと、前記第1モードでは十分な回生電力が得られないため、回生エネルギーを多く且つ早く発生させる第2モードとを有する糸条巻取機。 - 前記複数の制御モードは、
PI又はPID制御に沿ってモータへの出力量としてのデューティ比の算出を行う高速回転時の第1モードと、
デューティ比が50%を超える時はデューティ比を50%にするとともにモータの相励磁パターンの順序を逆にして、PI又はPID制御に沿ってデューティ比の算出を行う中・低速回転時の第2モードとを有する請求項1記載の糸条巻取機。 - 前記動作条件に基づいて前記ユニット制御部から、前記複数の制御モードを選択する信号が前記減速停止制御部に送信されるようになっている請求項1または2に記載の糸条巻取機。
- 前記回転部材は、パッケージが接する巻取ドラムを含み、前記パッケージを前記巻取ドラムから離反させるリフトアップ機構が設けられ、前記ユニット制御部に出力された前記回生電力により、前記リフトアップ機能を作動させる請求項1〜3のいずれかに記載の糸条巻取機。
- 前記回転部材は、パッケージが接する巻取ドラムと、走行糸に対する毛羽伏せ回転部材とを含み、
前記モータは、前記巻取ドラム用の第1モータと、前記毛羽伏せ回転部材用の第2モータとを含み、
前記モータ制御部は、前記第1モータ用の第1モータ制御部と、前記第2モータ用の第2モータ制御部とを含み、
前記減速停止制御部は、前記第1モータ制御部と前記第2モータ制御部との各々に設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の糸条巻取機。
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