JP4157462B2 - 内装用モケット - Google Patents
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Description
このようなモケット等のパイルを有する表皮材は、曲面に貼り込む際に、又は縫製部分にグリニングと呼ばれる毛割れ等の異常が発生する場合がある。
すなわち、図5(b)に示す通り、外側に力Fがかかった場合は、縫製部分104に異常が発生してしまう。
そこで、このようなグリニング(毛割れ)を防止するため、パイル密度を増加させることが考えられる。しかしながら、パイル密度を単に増加させた場合、地糸に絡んでいるパイル糸が伸びを抑制してしまう。そのため、布地が厚くなり曲面への追従性が悪くなるという欠点があった、
そこで、特許文献1では、モケットにおけるパイル間の地糸が見えてしまうグリニング(毛割れ・地割れ)を防止する技術として、図6(a)に示すように地糸部102、103を薄くし、その分パイルを多く(高密度化)する技術が開示されている。図6(b)に示すように、この技術によると、曲面に貼り込む際の毛割れをある程度防止することが可能である。
また、単にパイル糸を変更するだけでは、モケットの特徴であるデザイン性、触感、外観性が損なわれることがあった。特に、座席カバー等の立体的に縫製された湾曲箇所で縫い目が剥き出しとなって現れてしまうことがあった。
更に、特許文献4〜7に記載のように伸縮差のある数種類の繊維によってパイルを構成する方法では、パイル層が低収縮性繊維による高パイルと高収縮繊維による低パイルとに分かれた二層構造となってしまい、モケットの表面のパイル毛羽の密度が粗くなって手触りがよくなるものの、表面に突出しているパイル毛羽に腰がなく傾倒し易くなり、パイル層を所定の厚さに維持することが困難となる(パイルがヘタリ易くなる傾向にある)。
前記パイル層を構成する各パイル列が、少なくとも、レギュラ糸又は捲縮糸から成る群から選択された第一の糸と、前記第一の糸よりも捲縮度の高い捲縮糸から成る第二の糸と、から構成された複合糸のパイル糸を使用し、前記第二の糸の周りに前記第一の糸を巻きつけて合撚することで形成されており、
前記第二の糸の前記基布からの長さの実測値として規定される見かけの糸長さ(糸足)が、前記第一の糸の前記基布からの長さの実測値として規定される見かけの糸長さよりも、15%〜25%短く、
前記パイル層の厚みが0.5〜5mmであり、
前記第一の糸の単糸繊度が0.025〜6.6dtexであり、前記第一の糸の総繊度が25〜330dtexであり、
前記第二の糸の単糸繊度が0.5〜8.8dtexであり、前記第二の糸の総繊度が50〜220dtexであり、
前記複合糸の全体の総繊度が300〜770dtexであり、
前記複合糸に占める第一の糸の割合が50〜75質量%であり、前記複合糸に占める第二の糸の割合が25〜50質量%であることを特徴とするものである(請求項1)。
また、本発明の内装用モケットを例えば座席カバー等の立体的に縫製した場合、湾曲箇所で縫い目が剥き出しとなって現れてしまうことがない。
図1は、本発明の一実施形態に係るモケットを示す略式断面図であって、図1(a)は通常の状態を示し、図1(b)は、モケットを曲面に貼り合わせた状態を示し、そして図1(c)は、モケットを縫製する際の状態を示す。図2は、本発明の一実施形態に係るモケットにおけるパイル糸の構造例を示す断面図である。図3(a)は、本発明のモケットの断面状態の一例を示すモケットの断面写真であり、そして図3(b)は比較用モケットの断面状態の一例を示すモケットの断面写真である。図4は、本発明の一実施形態おけるモケットの製造方法を示す図面である。
図1に示す通り、本実施形態のモケットは、パイル糸1から構成される複数のパイル列がタテ糸21及びヨコ糸22から構成された基布2の表面に形成された構成を有している。各パイル列は、基布2上でパイル層を形成するが、本実施形態において、従来技術と同様にして、このパイル層の厚み(h)は、所望とするモケットに応じて0.5〜5mm、好ましくは1〜5mm、より好ましくは1〜3mmに設定する。パイル層の厚み(h)が0.5mm未満であると、モケットとしての風合いに問題があり、また十分なグリニング効果を発揮できない場合がある。逆に、パイル層の厚み(h)が5mmを超えるものは、パイル毛羽に腰がなくなり車両等の内装にはそぐわないものとなる場合がある。なお、図中、符号3は、縫製部である。
前記第一の糸11は、捲縮されていないレギュラ糸又は前記第二の糸12よりも捲縮度の低い捲縮糸から構成されている。以下の説明では、代表して第一の糸を低捲縮糸11と言うことがある。そして、第二の糸12を以下高捲縮糸12と言う。
すなわち、本実施形態において、ちぢれた糸である高捲縮糸12が基布2の根元側に位置し、一方、(比較的)ちぢれていない低捲縮糸11がパイル層全体の厚みを規定している。
このように本実施形態において、パイル層は、低捲縮糸11と高捲縮糸12とが渾然一体となって構成されているので、パイル層が二層構造となることはない。しかも、さらに、高捲縮糸12は、パイル層の厚さを規定する低捲縮糸11を高さ方向に支持しているのでパイル層が傾倒することを回避できる。
このような捲縮糸は熱可塑性の糸を加熱することによって製造する。また、加熱の回数により捲縮度をコントロールしている。なお、加工速度、加熱温度、仮撚り回数や後加工あるいはこれらの組み合わせ等によっても捲縮度をコントロールすることができる。
なお、パイル層が傾倒することを回避するためには、例えば図2に示す通り高捲縮糸12の周りに低捲縮糸11を巻きつけるように合撚して合成糸を形成することによって達成される。なお、複数本の低捲縮糸11を巻きつける場合には、片撚り、壁撚り、シングルカバーリング、ダブルカバーリング等の方法で行うことができる。
本実施形態において第一の糸(低捲縮糸)11として使用可能なレギュラ糸とは、捲縮されていない糸、又は低捲縮の糸を意味し、従来モケットに使用されているものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル系、ナイロン系の糸等を使用することができる。本発明に適用可能な低捲縮糸11は、当該技術分野に公知のものであれば特に限定されるものではないが、例えば壁糸(強い下撚りを掛けた糸と、撚りのない糸を引き揃えて、下撚りと反対方向に上撚りをかけた糸)やカバーリング糸(芯糸に撚りを掛けずにその周りにカバーリング糸を巻きつけた糸)が好ましい。低捲縮糸11は、単糸繊度0.025〜6.6dtex、好ましくは0.1〜6.6dtexを有しており、総繊度(太さ)は、25〜330dtexとする。
すなわち、低捲縮糸11の単糸繊度を0.025dtexが略作製限界であり、またパイルとしてのいわゆる「立ち」が悪くなり柄がぼやけてしまう場合もある。逆に、低捲縮糸11の単糸繊度が6.6dtexを超えると、高捲縮糸12による広がり効果が充分に発揮できない場合があり、さらにザラついた感じの硬い風合いとなる場合があり、更にモケット上に柄を表現してもぼやけてしまう傾向にある。
このように構成することによって、パイル自体に広がりを持たせることができ、縫製により引き込まれてしまったパイルの隣もパイルで地糸部をカバーすることができる。
低捲縮糸11が50質量%未満の場合(高捲縮糸12が50質量%を超える場合)、デザイン性や触感等が低下する場合があるので好ましくなく、逆に低捲縮糸11が75質量%を超える場合(高捲縮糸12が25質量%未満の場合)、グリニング防止効果が十分でない場合があるので好ましくない。
そのため、図1(b)に示すように、基布2の表面側に捲縮糸12を形成した本実施形態のモケットは、例えば車両の座席等の曲面に貼り込む等のモケットの基布2に逆の力F1、F2が加わった際に、基布2の表面に存在する高捲縮糸12の力により長い実長さ(見かけの糸長さ)h1を有する低捲縮糸11が開くのでパイル全体が拡がり、グリニングを防止することが可能となる(図3(a)も参照)。
本発明の内装用モケットは、従来公知のモケットの製造方法と同様にして、図4に示す通り、上下に基布2、2’を織成しつつ、その上基布2と下基布2’をパイル糸1によって連結した二重織物として織成され、その織成後において上基布2と下基布2’の間で連結しているパイル糸1をカッタ等の切断手段によってX−X方向にセンタカットして上下二重に二枚同時に製造される。
本実施形態のモケットにおいて、パイル1の根元側に高捲縮糸12を密集して形成するためには、例えば図2に示す通り、高捲縮糸12の周囲に低捲縮糸11を配置したパイル糸1を使用することができる。
すなわち、先ず高捲縮糸12を用意して、高捲縮糸12の所定箇所に低捲縮糸11を巻きつけることによって、本実施形態のモケットに使用するパイル糸1を形成する。例えば、高捲縮糸12を、従来公知のダブルカバリングツイスタにセットし、2本の低捲縮糸11を、捲縮糸12を芯糸として、1本はS撚り、もう1本はZ撚りに撚ることによって製造することができるが、本発明はこのような方法に限定されるものではない。
なお、本実施形態では基布形成とパイル形成は同時に行われる。
図2に示す通り、本実施形態では高捲縮糸12の周囲に低捲縮糸11を配置したパイル糸1を使用しているので、基布2(及び2’)との節結部分は、高捲縮糸12から構成された毛羽が密集した状態となる。
なお、本実施形態では、図2に示す構成のパイル糸1を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、異なる捲縮度の糸から構成された複合糸を使用することによって同様な効果を奏することは明らかである。また、前記実施の形態では捲縮度の異なる二種類の糸から構成されたパイル糸を使用したが、三種類以上の糸から構成されたものを必要に応じて使用することが可能である。例えば、高捲縮糸に異なる総繊度の二種類の糸を使用することも本発明の範囲内である。
[比較例]
地タテ糸にポリエステル/レーヨン混紡糸(30/2番手)とポリウレタン弾性糸(44dtex)との合撚糸を使用し、地ヨコ糸にポリエステル捲縮糸(333dtex)を使用して、パイル糸に単糸繊度3.5dtexのポリエステル低捲縮糸(168dtex/48f、捲縮度10%)3本の撚糸を使用し、パイル密度を縦方向44.6本/2.54cm×横方向44.5本/2.54cmとして、パイル長さ1.9mmの比較用モケットを形成した。得られたモケットの断面写真を図3(b)に示す。
地タテ糸にポリエステル/レーヨン混紡糸(30/2番手)とポリウレタン弾性糸(44dtex)との合撚糸を使用し、地ヨコ糸にポリエステル捲縮糸(333dtex)を使用して、パイル糸に単糸繊度3.5dtexのポリエステル低捲縮糸(168dtex/48f、捲縮度10%)2本と単糸繊度2.3dtexのポリエステル高捲縮糸(168dtex/72f、捲縮度34%)1本との撚糸(見かけの糸長さ比は高捲縮糸1に対して低捲縮糸1.2)を使用し、パイル密度を縦方向44.6本/2.54cm×横方向44.5本/2.54cmとして、パイル長さ1.9mmの本発明のモケットを形成した。得られたモケットの断面写真を図3(a)に示す。
これらの座席カバーの湾曲箇所の縫い目部分の状態を目視検査したところ、図3(a)に示す通り、本発明のモケットを使用した座席カバーでは縫い目にグリニングが認められなかったが、図3(b)に示す通り比較用モケットを使用した座席カバーでは縫い目にグリニングが認められた。
このことより、本発明のモケットは、湾曲箇所の縫い目部分においてもグリニングが起こらない高い耐グリニング性を有していることが判る。
11 第一の糸(低捲縮糸)
12 第二の糸(高捲縮糸)
2 基布
Claims (3)
- 基布と、基布上に形成された複数のパイル列から構成されたパイル層と、からなる内装用モケットであって
前記パイル層を構成する各パイル列が、少なくとも、レギュラ糸又は捲縮糸から成る群から選択された第一の糸と、前記第一の糸よりも捲縮度の高い捲縮糸から成る第二の糸と、から構成された複合糸のパイル糸を使用し、前記第二の糸の周りに前記第一の糸を巻きつけて合撚することで形成されており、
前記第二の糸の前記基布からの長さの実測値として規定される見かけの糸長さが、前記第一の糸の前記基布からの長さの実測値として規定される見かけの糸長さよりも、15%〜25%短く、
前記パイル層の厚みが0.5〜5mmであり、
前記第一の糸の単糸繊度が0.025〜6.6dtexであり、前記第一の糸の総繊度が25〜330dtexであり、
前記第二の糸の単糸繊度が0.5〜8.8dtexであり、前記第二の糸の総繊度が50〜220dtexであり、
前記複合糸の全体の総繊度が300〜770dtexであり、
前記複合糸に占める第一の糸の割合が50〜75質量%であり、前記複合糸に占める第二の糸の割合が25〜50質量%である
ことを特徴とする内装用モケット。 - 前記第一の糸と第二の糸との単糸繊度の差(絶対値)が0.49〜4.4dtexであることを特徴とする請求項1に記載の内装用モケット。
- 前記第一の糸と第二の糸との捲縮度の差が20%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内装用モケット。
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