JP2022126263A - 繊維捕集体 - Google Patents

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Tatsuya Kido
康晴 村上
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卓充 谷口
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Abstract

【課題】衣類洗濯時における脱落繊維屑を捕集し、マイクロプラスチックの海洋流出を抑制する、繊維屑の捕集性と強度、取り扱い性に優れた繊維捕集体を提供する。【解決手段】少なくとも繊維織編物または不織布よりなる生地、少なくとも二重に重ね合わされた前記生地同士を接合させた接合部および開口部から構成される繊維捕集体であって、1)前記生地を構成する繊維間距離が50nm~150μm、2)JIS L 1096:2010に基づいて求められる前記生地のかさ高性が3~20cm3/g、3)前記生地の厚さが0.15~1.10mm、4)JIS L 1096に基づいて求められる前記生地の引張強度がタテ方向およびヨコ方向ともに20N/5cm以上であることを特徴とする、繊維捕集体。【選択図】図1

Description

本発明は、衣類洗濯時における脱落繊維屑を捕集し、マイクロプラスチックの海洋流出を抑制する繊維捕集体に関する。
従来、排水を伴う衣類洗濯において、洗濯時に衣類の繊維屑が脱落し、排水時に脱落した繊維屑が排水と一緒に海洋流出する、いわゆるマイクロプラスチックの海洋流出問題があった。これらの問題を解決するため、繊維屑の脱落しにくい構造糸を用いた織編物や、これら織編物を用いた衣服、洗濯ネットが多く出てきた。一方、従来の技術として、スパンボンドあるいはサーマルボンド等の不織布を用いた通気度20~60cm/cm.secの透水性バック(特許文献1)、親油性繊維で作製された通水性を有する収容袋内に、汚れ吸着用の無機材料片を充填した浄化装置(特許文献2)、網目の大きさが10~100μmの衣類収納体を備えた洗濯機(特許文献3)、約80μmの組織厚かつ5μmないし200μmの範囲の平均メッシュ幅を有する洗濯袋を内蔵した衣料品(特許文献4)、網目幅5μm~200μmのスクリーンクロスから形成する洗濯袋(特許文献5)などが開示されている。
特開2011-156243 特開2001-000774 特開平10-272295 特表2020-526683 特表2019-505351
しかしながら、特許文献1、特許文献3、特許文献5で開示された収納体は、繊維屑の繊維長に対して厚さ方向の長さが短く、捕集性と強度に劣るものであった。また、特許文献2で開示された、親油性繊維で作製された通水性を有する収容袋内に汚れ吸着用の無機材料片を充填した浄化装置は、油脂汚れ等の汚れ吸着には有効であるものの、繊維屑の捕集性は有さないものであった。特許文献4で開示された洗濯袋を内蔵した衣料品は、一体となった衣料の繊維屑捕集に対して有効であるものの、その他の衣料を任意に選択できない、すなわち取り扱い性などに劣るものであった。また、市場で販売されている繊維屑の脱落しにくい構造糸を用いた織編物や、これら織編物を用いた衣服は、当該織編物および衣服を用いた場合は有効であるものの、既保有の構成の異なる衣服については抑制手段を有さないという欠点があった。そこで、本発明の目的はかかる従来技術の欠点を改良し、繊維屑の捕集性と強度、取り扱い性に優れた繊維捕集体を提供することにある。
前記課題を解決するため本発明の繊維捕集体は、以下の構成からなる。すなわち、
少なくとも繊維織編物または不織布よりなる生地、少なくとも二重に重ね合わされた前記生地同士を接合させた接合部および開口部から構成される繊維捕集体であって、1)前記生地を構成する繊維間距離が50nm~150μm、2)JIS L 1096:2010に基づいて求められる前記生地のかさ高性が3~20cm/g、3)前記生地の厚さが0.15~1.10mm、4)JIS L 1096に基づいて求められる前記生地の引張強度がタテ方向およびヨコ方向ともに20N/5cm以上であることを特徴とする繊維捕集体、である。
本発明の繊維捕集体は、JIS L 1913:2010(6.6.1)記載のテーバ形法に基づいて求められる前記生地の耐摩耗性が3級以上であることが好ましい。
本発明の繊維捕集体は、前記生地を構成する繊維の平均繊維径が100nm~70μmであることが好ましい。
本発明の繊維捕集体は、前記生地の端部が、溶着、融着および被覆のいずれか一以上の手段で構成されることが好ましい。
本発明の繊維捕集体は、前記生地の通気性が30cm/cm/sec~300cm/cm/secであることが好ましい。
本発明により、洗濯時における洗濯物から発生する繊維屑を捕集可能かつ強度と取り扱い性に優れた繊維捕集体を得ることができる。
図1は、本発明の繊維捕集体の斜視図である。 図2は、他の好ましい態様の繊維捕集体の斜視図である。 図3は、図1に示した繊維捕集体を構成する接合部の一態様の断面図である。 図4は、図1に示した繊維捕集体を構成する生地の部分拡大図である。 図5は、図4に示した繊維捕集体を構成する生地の繊維の拡大図である。
以下、図面を用いて本発明の繊維捕集体を詳細に説明する。本発明の繊維捕集体1は、図1から図3に示すとおり、生地2、接合部6および開口部7とから構成される。
<生地の形態>
生地2は図4に示すとおり、少なくとも繊維を用いた繊維織編物または不織布が用いられる。より好ましくは不織布を用いてなることが、生産性とコストに優れ好ましい。不織布を用いる場合、抄紙方、化学的接着法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法などが使用され、より好ましくはメルトブロー法またはスパンボンド法を単一あるいは積層したものが好適に使用される。
織物を用いる場合、一般的に平織や、綾織、朱子織およびこれらの変化織、多軸織などが好適に使用される。編物を用いる場合、平編、ゴム編、パール編、トリコット、ラッシェルなどが好適に使用される。前記生地2の原料は合成繊維、半合成繊維、天然繊維、動物繊維いずれであっても良いが、より好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイト、フッ素系樹脂の群より選ばれた単一あるいは複数の混合物よりなることが、生産性とコストに優れ好ましい。
<生地を構成する繊維径>
生地を構成する繊維3は所定の太さ、すなわち繊維径3bを有し、生地2を構成する繊維間には空隙、すなわち繊維間距離3aを有する。本発明の繊維捕集体1を構成する生地2を構成する繊維径3bは、100nm以上70μm以下であることが、微細孔の大きさを適度に保ち、圧力損失を抑えることができることから、繊維屑の捕集性および耐久性の観点からも好ましい。
かかる生地2を構成する繊維径3bとは、図4および図5に示すとおり、生地2を構成する繊維の単糸直径を表すものである。
生地2を構成する繊維径3bが100nm未満であると水流圧により生地2自体が変形しやすく圧損が生じやすいという問題があり、反対に70μm以上あると、剛性および圧力損失が大きくなり洗濯における洗浄性に劣る。より好適には1μm~30μmの範囲である。
なお、かかる生地2を構成する繊維径3bは生地2の断面を切り出して、その断面に白金-パラジウム合金を蒸着し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立社製 S-4000型)による撮影画像から繊維の単糸直径を測定し、単純平均値を求めたものである。
<生地を構成する繊維間距離>
本発明の繊維捕集体1を構成する生地2を構成する繊維間距離3aは、50nm以上150μm以下であることが、圧力損失を抑えつつ、かつ繊維屑を係止できる適度な大きさを有し、繊維屑の捕集性および耐久性の観点からも好ましい。
かかる生地2を構成する繊維間距離3aとは、図4および図5に示すとおり、隣接する繊維間の距離の平均値を表すものである。
生地2を構成する繊維間距離3aが50nm未満であると圧力損失が大きく洗濯における洗浄性に劣るという問題があり、反対に150μm以上あると、繊維屑が貫通しやすく捕集性に劣る。より好適には100nm~50μmの範囲である。
なお、かかる生地2を構成する繊維間距離3aは生地2表面に白金-パラジウム合金を蒸着し、走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立製作所製S-4000型)による撮影画像から繊維間の距離を測定し、単純平均値を求めたものである。
生地2を構成する繊維間距離3aの付与手段としては、繊維径の調整、あるいは織編物の密度調整、あるいは不織布のポリマー吐出量、ノズル温度、エア圧力など紡糸条件の調整などがあるが、いずれの方法を用いても差し支え無い。
<繊維への加工>
かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤を含んでもよい。たとえば熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤、抗菌剤、蓄熱剤、撥水剤、吸水剤などを含有せしめることができる。
<生地の厚さ>
本発明の繊維捕集体1を構成する生地2にはタテ方向2aとヨコ方向2bがあり、各方向に繊維自体および繊維が積層されることによる厚さを有する。本発明の繊維捕集体1を構成する生地2の厚さ4は、0.15mm以上1.10mm以下であることが、繊維屑が繊維捕集体1の生地2と直交し貫通する方向、すなわち厚み方向に繊維屑を係止できる適度な長さを有し、繊維屑の捕集性の観点からも好ましい。
生地2の厚さ4が0.15mm未満であると繊維屑が繊維捕集体1の生地2を貫通する際の抵抗となる空間が不足し、繊維屑が生地2を通過しやすく捕集性に劣るという問題があり、反対に1.10mm以上あると、繊維捕集体1の剛性が増し、取り扱い性および洗濯における洗浄性に劣る。より好適には0.2mm~0.6mmの範囲である。
なお、かかる生地2の厚さ4はJIS L 1096(2010)8.4-A法に基づき測定した値であり、圧力条件は不織布の場合0.5kPa、編物の場合0.7kPa、織物の場合23.5kPaとしてそれぞれ測定したものである。
生地2の厚さ4の付与手段としては、繊維径の調整、あるいは繊維へのかさ高加工、繊維の複合紡糸や部分溶出による倦縮発現などがあるが、いずれの方法を用いても差し支え無い。
<かさ高性>
本発明の繊維捕集体1は、生地2の単位重量あたりの体積、すなわちかさ高性を付与することが、繊維屑を繊維捕集体1の生地2内部に捕集するための適度な捕集空間を有し、繊維屑の捕集効率をより高めるために好ましい。生地2のかさ高性の好ましい範囲は3cm/g以上20cm/g以下である。
かさ高性が3cm/g未満であると繊維屑の体積すなわち繊維屑の長さおよび直径からなる空間体積に対し、繊維捕集体1の生地2の空間体積が不足し、繊維屑が生地2を通過しやすく捕集性に劣るという問題があり、反対に20cm/g以上あると、剛性および圧力損失が大きくなり洗濯における洗浄性に劣る。より好適には6cm/g~15cm/gの範囲である。
ここでいうかさ高性とは、下記式により、生地2の単位重量あたりの体積を求めたものである。
かさ高性〔cm/g〕=生地の厚さ〔cm〕/生地の目付〔g/cm
生地の厚さ:JIS L 1096(2010)8.4-A法に基づき測定した時の厚さをcmで求めた値。圧力条件は不織布の場合0.5kPa、編物の場合0.7kPa、織物の場合23.5kPaとする。
生地の目付:JIS L 1096(2010)8.3.2-A法に基づき測定した時の単位面積当たりの重量をg/cmで求めた値
<目付>
前記好ましいかさ高性を達成する手段として、生地2の目付を低くする、および/または厚さを低減させることが、単位重量あたりの体積が大きくなる、すなわちかさ高性が大きくなるので好ましい。
生地2の目付が20g/m未満であると水流圧により生地2自体が変形しやすく圧損が生じやすい他、強度や耐摩耗性が低下しやすいという問題があり、反対に150g/m以上あると、繊維捕集体1の重量が増し、取り扱い性に劣る。より好適には40g/m~100g/mの範囲である。
かかる目付は、JIS L 1096(2010)8.3.2-A法に基づき測定し、標準状態における1m当たりの質量(g/m)を求めたものである。
<繊維の形態>
前記好ましいかさ高性を達成する他の手段として、生地2を構成する繊維織編物または不織布を構成する繊維が、少なくとも分割型繊維、加工糸、複合繊維のいずれかを少なくとも一部用いてなることが好ましい。これにより、繊維自体に空隙があるため単位体積あたりの重量減少によりかさ高性が所望の範囲となりやすい。また、繊維屑を捕集する際、生地を構成する繊維3同士間の空隙のみならず、繊維内部の空隙にも繊維屑が係止しやすいため、捕集性の面からも好ましい。繊維に分割型繊維、加工糸、複合繊維のいずれかを少なくとも一部用いるには次の方法がある。例えば、生地2が繊維織物の場合、タテ方向の繊維すなわちタテ糸に分割型繊維、加工糸、複合繊維のいずれかを用いて製織する方法。あるいは、ヨコ方向の繊維すなわちヨコ糸に用いて製織する方法。あるいは繊維のタテ糸、ヨコ糸両方に用いて製織する方法がある。
そして、例えば、生地2が繊維横編物の場合、コース毎に挿入する繊維を切り替え、分割型繊維、加工糸、複合繊維のいずれかを全コースに用いる、あるいは一定比率で混用する方法がある。また、例えば、生地2が不織布の場合、分割型繊維、加工糸、複合繊維いずれかの短繊維あるいは長繊維よりなる繊維を、全量あるいは一定比率で配合し形成する方法がある。いずれの方法も、好ましい混用比率あるいは配合比率としては10~100%の範囲であり、より好ましくは40~100%の範囲である。分割型繊維の好ましい形態としては、収縮率の異なる少なくとも2種類の成分を複合紡糸した後、加熱処理により各成分同士の間に収縮差による空隙を発生させ分割型繊維とする方法や、少なくとも2種類の成分を複合紡糸した後、一方の成分を溶出処理し、溶出による空隙を発生させ分割型繊維とする方法などあるが、いずれであっても良い。より好ましくは、収縮率の異なる少なくとも2種類の成分を複合紡糸した後、加熱処理により各成分同士の間に収縮差による空隙を発生させ分割型繊維とする方法が、生産性に優れ好適である。
分割型繊維の断面形態としては、芯部に第一成分が放射状に配置され、鞘部に第二成分が前記放射状の楔の部分に接合、配置されてなる形態を有する分割複合繊維が特に好ましい。中でも、1本の第一成分らなる星形断面、例えば頂点が6~12角形、を有する芯部と、その周囲の楔の部分に第二成分を例えば6~12本配した分割型繊維とした場合、芯部と周囲の楔との間の空隙がかさ高性を高めるうえに、前記空隙に繊維屑が入り込みやすく捕集性に優れる。その他、ソフトながら適度なハリ、コシを有するという特徴と、2種類の成分の光学特性の違いにより、ビロード状の上品な艶と色合いとが発揮できることから好適である。加工糸の好ましい形態としては、伸縮性かさ高加工法の仮撚り法、擦過法、押込み法や、非伸縮性加工法の空気噴射法などいずれであっても良く、より好ましくは伸縮性かさ高加工法がかさ高性に優れ、さらに好ましくは仮撚り法が、捕集性と生産性に優れ好適である。
加工糸の好ましい物理特性としては、嵩高度が5~50cm/g、または/あるいは撚数が200~1,000回/m、または/あるいは前記繊維束を構成する繊維の仮撚クリンプ数が30個/20cm以上であることが好ましい。
ここでいう嵩高度はJIS L 1013 8.16A法に基づいて測定したものであり、撚数はJIS L 1013 8.13.1に基づいて測定したものである。また、クリンプ数は1mあたりのクリンプ山数のことである。複合繊維の好ましい形態としては、収縮率の異なる少なくとも2種類の成分をバイメタル複合紡糸した後、加熱処理により各成分同士の間に収縮差によるクリンプ、倦縮を発生させる方法や、伸長率の異なる少なくとも2種類の成分をバイメタル複合紡糸した後、各成分同士の間に伸長応力差によるクリンプ、倦縮を発生させる方法や、少なくとも2種類の成分を海島形複合紡糸した後、一方の成分を溶出処理する方法などあるが、いずれであっても良い。より好ましくは、収縮率の異なる少なくとも2種類の成分をサイドバイサイド型に貼り合わせたバイメタル複合紡糸をした後、加熱処理により各成分同士の間に収縮差によるクリンプ、倦縮を発生させる方法が、倦縮によるかさ高性と捕集性に優れ好ましい。
複合繊維の好ましい物理特性としては、異形度、すなわち外接円直径を内接円直径で除した値、の平均値が1.0~6.0であることが、複合繊維を構成する単糸間でコイル捲縮の会合が生じにくく、各々独立して捲縮を発現せしめることにより、布帛において異形断面特有の膨らみ感すなわちかさ高性と捕集性を得ることができ好ましい。また製糸安定面を考慮すると、より好ましい異形度は1.5~3.0である。
ここでいう異形度とは、複合繊維を構成する各単糸の断面の外接円の直径をDとし、各単糸の断面の複合界面と繊維表面との交点の2点間の距離をDとした際、異形度=D/Dとして小数点1桁まで求めたものである。本発明の繊維捕集体1は、生地2を構成する繊維織編物または不織布に前記いずれかの繊維を少なくとも一部用いてなることにより、生地2表面への物理的処理や化学的処理を行うことなく生地2のかさ高性を好ましい範囲とすることができ、よって捕集性に優れ、かつ生産性、コストにも優れたものとなる。
<通気性>
本発明の繊維捕集体1を構成する生地2の通気性の好ましい範囲は30cm/cm/sec~300cm/cm/secの範囲である。
かかる通気性とは、生地2に対する空気の通りやすさを表すものである。
通気性が30cm/cm/sec未満であると水流圧による圧力損失が大きく、洗濯における洗浄性に劣るという問題があり、反対に300cm/cm/sec以上あると、繊維屑が生地2を通過しやすく捕集性に劣る。より好適には50cm/cm/sec~150cm/cm/secの範囲である。
なお、かかる通気性はJIS L 1096 8.26.1 A法(フラジール形法)に基づき測定し、単位をcc/cm/secで小数点第一桁まで求めたものである。
通気性の付与手段としては、織編物の密度、目付や平均繊維径、厚さの調整、あるいは不織布のポリマー吐出量、ノズル温度、エア圧力など紡糸条件の調整など、いずれの方法であっても差し支えない。
<引張強度>
本発明の繊維捕集体1は、洗濯時の機械力および摩耗や、取り扱い時の引張や衣類の荷重、摩耗が加わることから、繊維捕集体1を構成する生地2は、引張強度と耐摩耗性を有することが、洗濯時から取り扱い時における長期使用上の耐久性を高めるために好ましい。生地2の引張強度の好ましい範囲は、タテ方向およびヨコ方向において20N/5cm以上である。生地2の引張強度が20N/5cm未満であると、洗濯時の機械力や取り扱い時の引張および衣類の荷重に対して破断や破裂が起きやすい問題がある。
廃棄時の粉砕や分解作業の容易性を考慮すると、より好適には20N/5cm~300N/5cmの範囲である。
なお、かかる生地2の引張強度はJIS L 1096 8.14引張強さ及び伸び率のA法(ストリップ法)に基づき測定したものである。
生地2の引張強度の付与手段としては、引張強度の高い繊維の選定や繊維径の調整、あるいは織編物の密度調整、あるいは不織布のポリマー吐出量、ノズル温度、エア圧力など紡糸条件の調整などがあるが、いずれの方法を用いても差し支え無い。
<耐摩耗性>
生地2の耐摩耗性の好ましい範囲は、タテ方向およびヨコ方向ともに3級以上である。生地2の耐摩耗性が3級未満であると、洗濯時の摩耗や取り扱い時の摩耗に対して摩耗破壊やすり切れなどの損耗が起きやすい問題がある。
なお、かかる生地2の耐摩耗性はJIS L 1913:2010(6.6.1)記載のテーバ形法に基づき、荷重条件2.45Nで測定した値である。
生地2の耐摩耗性の付与手段としては、摩耗強度の高い繊維の選定や繊維径の調整、あるいは織編物の組織変更、あるいは不織布のポリマー吐出量、ノズル温度、エア圧力など紡糸条件の調整などがあるが、いずれの方法を用いても差し支え無い。
<耐水性>
なお、本発明の繊維捕集体1を構成する生地2は、洗濯時に繊維捕集体1内部に収納した衣類等を洗浄するため、水の入出を容易とする、すなわち水が通過しやすい圧力抵抗とすることが好ましく、生地2の耐水圧は1,000mmHO以下であることが好ましい。生地の耐水圧が1,000mmHOを超過した場合、生地2への水の通過が不足し繊維捕集体1内部に収納した衣類等の洗浄性に劣る。より好ましい範囲は300mmHO未満である。
なお、かかる生地2の耐水圧は、JIS L 1092-B法に基づいて測定した値である。
<生地端部の形態>
なお、本発明の繊維捕集体1は、所定寸法かつ所定形状の生地2を用いることから、本発明に使用する生地2は図3に示すとおり生地端部5があり、繊維捕集体1は生地端部5を内包した構造となる。本発明の繊維捕集体1は、洗濯時に繊維捕集体1の構成要素である生地端部5からの生地を構成する繊維3の脱落を抑止するため、生地端部5が溶着あるいは融着あるいは被覆されていることが、生地端部5における生地を構成する繊維3が露出せず、繊維屑の流出を抑制する観点から好ましい。例えば、図3に示すとおり、生地端部5をパイピングにより被覆し、かつミシン縫製で一体的に接合することで、生地端部5が露出せず生地を構成する繊維3を接合部6内に留めることができ、生地端部5から、生地を構成する繊維3の流出を抑制することが可能となる。
<接合部>
本発明の繊維捕集体1において、接合部6は図3に示すとおり、前記生地2同士を少なくとも二重に重ね合わせ、密着固定あるいは一体化させて構成される。接合部6の好ましい形態としては、融着、接着、ミシン縫製より選ばれるいずれかの加工により形成されてなる。融着加工方法としては、主に熱プレス法、高周波加熱法、超音波加工法が好適に用いられるが、いずれであってもよく、より好ましく超音波加工法がコストと生産性に優れる。接着加工方法としては、相対する生地2の間に接着樹脂を介在させ、主に熱プレス、高周波加熱、超音波を用いて接着する方法の他、相対する生地2をミシン縫製後に、縫目上にシームテープを接着する方法などが好適に用いられるが、いずれであってもよく、より好ましくは接着樹脂を介在させた熱プレス法がコストと生産性に優れる。ミシン縫製方法としては、縁かがり縫い、パイピング、本縫いなどの方法が好適に用いられるが、いずれであってもよく、より好ましくは図3に示すとおりパイピング縫製が生地端部5が露出せず生地の繊維3を接合部6内に留めることができ、生地端部5からの生地の繊維3流出を抑制することができ好ましい。
<開口部>
本発明の繊維捕集体1は、内部に衣類を出し入れ自在にするために開口された箇所、すなわち開口部7を有する。開口部7の好ましい態様としては、図2に示す生地端部5を解放した状態、あるいは図1に示す係止部材を生地と生地との間に介在させ開閉自在としたものなど、いずれであっても良い。より好ましくは、係止部材を生地と生地との間に介在させ開閉自在としたものが取り扱い性に優れる。なお、本発明の繊維捕集体1に用いる生地2は、複数の繊維層を積層させ1枚の生地2として形成したものであってもよく、それぞれの繊維層の構成、たとえば繊維径や孔径、あるいは原料や組織、あるいは厚さや目付が異なったものであってもよい。さらに、本発明の繊維捕集体1は、複数の異なる生地2を組み合わせて用いてもよい。例えば、図3の繊維捕集体1を構成する2枚の生地2において、1方をポリプロピレン製スパンボンド不織布とポリエチレン製メルトブロー不織布とポリプロピレン製スパンボンド不織布を積層させた三層不織布、もう1方をポリエステル製スパンボンド不織布とすることはなんら差し支えない。
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例および比較例において用いた繊維捕集体1の評価は次の方法で実施した。
[測定]
[生地2を構成する繊維径3b]
繊維捕集体1の生地2を構成する繊維径3bは、生地2の断面を切り出して、その断面に白金-パラジウム合金を蒸着し、走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立製作所製 S-4000型)による撮影画像から繊維の単糸直径を測定し、単純平均値を求めた。
[生地2を構成する繊維間距離3a]
繊維捕集体1の生地2を構成する繊維間距離3aは、生地2表面に白金-パラジウム合金を蒸着し、走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立製作所製 S-4000型)による撮影画像から繊維間の距離を測定し、単純平均値を求めた。
[生地2の厚さ4]
繊維捕集体1の生地2の厚さ4は、JIS L 1096(2010)8.4-A法に基づき測定した値であり、圧力条件は不織布の場合0.5kPa、編物の場合0.7kPa、織物の場合23.5kPaとしてそれぞれ測定した。
[かさ高性]
繊維捕集体1のかさ高性は、下記式により、生地2の単位重量あたりの体積を求めた。
かさ高性〔cm/g〕=生地2の厚さ4〔cm〕/生地2の目付〔g/cm
生地2の厚さ4:JIS L 1096(2010)8.4-A法に基づき測定した時の厚さをcmで求めた値。圧力条件は不織布の場合0.5kPa、編物の場合0.7kPa、織物の場合23.5kPaとする。
生地2の目付:JIS L 1096(2010)8.3.2-A法に基づき測定した時の単位面積当たりの重量をg/cmで求めた値。
[通気性]
繊維捕集体1の通気性は、JIS L 1096 8.26.1 A法(フラジール形法)に基づき測定し、単位をcc/cm/secで小数点第一桁まで求めた。
[生地2の引張強度]
繊維捕集体1の生地2の引張強度は、JIS L 1096 8.14引張強さ及び伸び率のA法(ストリップ法)に基づき測定した。
[生地2の耐摩耗性]
繊維捕集体1の生地2の耐摩耗性は、JIS L 1913:2010(6.6.1)記載のテーバー形法に基づき、荷重条件2.45Nで測定した。
[捕集率]
試験試料として繊維長5mm、繊度0.6dtex(繊維直径20μm)のポリエチレンテレフタレート(以下、PET)繊維と繊維長5mm、繊度2.2dtex(繊維直径71μm)のPET繊維とを1:1の比率で配合した原綿100gを使用し、本試料を繊維捕集体に収納し、JIS L 1930 C4N法で3回洗濯した後の捕集率を以下の式より求めた。
各重量はいずれも20℃65%環境下で24時間静置後に測定し、小数点第2桁まで求めた。
捕集率[%]={1+(B-B)/S}×100
:洗濯前の試料重量
:洗濯前の繊維捕集体と試料の合計重量
:洗濯後の繊維捕集体と試料の合計重量
[洗浄度]
JIS C 9606(2007) 8.14 洗濯性能試験-洗浄度 (DS)に基づき、人工汚染布を繊維捕集体に収納した状態でJIS L 1930 C4N法で1回洗濯した後の洗浄度を以下の式より求めた。なお、人工汚染布は財団法人洗濯科学協会より販売されている湿式汚染布を使用した。
洗浄度[%]={(R-R)/(R-R)}×100
:人工汚染布の洗浄後の反射率
:人工汚染布の洗浄前の反射率
:人工汚染布の汚染前の白布の反射率
[評価]
[繊維屑捕集性]
繊維捕集体1の洗濯における繊維屑捕集性を、表1の基準で評価した。パラメータ点数が高いほど繊維屑捕集性に優れている。
[耐久性]
繊維捕集体1の洗濯における耐久性を、表1の基準で評価した。パラメータ点数が高いほど耐久性に優れている。なお、表1の基準に示す引張強度と耐摩耗性のうち、評価点数の低い方を評価結果とした。
[洗濯洗浄性]
繊維捕集体1の洗濯における洗濯洗浄性を、表1の基準で評価した。パラメータ点数が高いほど洗濯洗浄性に優れている。
[総合評価]
評価項目の繊維屑捕集性、耐久性、洗濯洗浄性の評価点数の合計を求め、これを総合評価とした。評価点数が高いほど総合的に優れており、評価結果が4点以上の場合を良好な繊維捕集体とした。評価基準を表2に示す。
Figure 2022126263000002
Figure 2022126263000003
(実施例1)
図1、図3、図4、図5に示した繊維捕集体、すなわち生地構成としてポリプロピレン製のスパンボンド不織布(生地を構成する繊維径3b:3.2μm)を使用し、生地を構成する繊維間距離3aは16.3μm、厚さ4は0.21mm、かさ高性3.5cm/g、通気性100cm/cm/sec、引張強度126N/5cm、耐摩耗性4級、目付60g/mになるよう形成し、生地2を得た。
次に、得られた生地2を2枚重ね合わせ、生地端部5をパイピングによって被覆および接合し、被覆部8を有する接合部6を設けた。
次に、2枚重ね合わせた生地2のうち、一方の面を切り開き、切り開いた箇所の生地端部に開閉自在なファスナーを接合し、生地2同士が接合していない、開閉自在な開口部7を設けた。
これにより、二重に重ね合わされた生地2と、生地2同士を接合させた接合部6と、生地2同士を接合していない開口部7とにより構成される繊維捕集体1を得た。
得られた繊維捕集体の捕集率、洗浄度を測定した後、繊維屑捕集性、耐久性、洗濯洗浄性を表1に、総合評価を表2の評価基準により評価した。表3に各数値と評価結果を示す。
(実施例2)
実施例1の繊維捕集体において、生地2の構成としてポリプロピレン製のスパンボンド不織布(生地を構成する繊維径3b:3.2μm)の一方の面上に、ポリエチレン製のメルトブロー不織布(生地を構成する繊維径3b:0.15μm)を直接形成し積層させものを生地2として使用し、繊維間距離3aは14.2μm、厚さ4は0.15mm、かさ高性3.75cm/g、通気性10cm/cm/sec、引張強度98N/5cm、耐摩耗性4級、目付40g/mになるよう生地2を形成した後、生地端部5を超音波融着によって接合し接合部6を設けた。これら以外は実施例1と同一となるよう構成した。表3に各数値と評価結果を示す。
(実施例3)
実施例1の繊維捕集体において、生地2にタテ糸60dtex-96fナイロンフィラメント、ヨコ糸60dtex-96fナイロン仮撚加工糸を用いた平織物(生地を構成する繊維径3b:15μm)を使用し、繊維間距離3aは30μm、厚さ4は0.25mm、かさ高性4.2cm/g、通気性400cm/cm/sec、引張強度198N/5cm、耐摩耗性5級、目付60g/mになるよう生地2を形成した後、生地端部5をミシン縫製によって接合し接合部6を設けた。これら以外は実施例1と同一となるよう構成した。表3に各数値と評価結果を示す。
(実施例4)
実施例1の繊維捕集体において、生地2にポリエステル製のスパンボンド不織布(生地を構成する繊維径3b:80μm)を使用し、繊維間距離3aは145μm、厚さ4は0.75mm、かさ高性18.75cm/g、通気性350cm/cm/sec、引張強度23N/5cm、耐摩耗性3級、目付40g/mになるよう生地2を形成した後、生地端部5をミシン縫製によって接合し接合部6を設けた。これら以外は実施例1と同一となるよう構成した。表3に各数値と評価結果を示す。
(比較例1)
実施例1の繊維捕集体において、生地2にポリエチレン製の延伸フィルム(生地を構成する繊維径3b:0μm)を使用し、繊維間距離3aは0μm、厚さ4は0.07mm、かさ高性2.3cm/g、通気性0cm/cm/sec、引張強度8N/5cm、耐摩耗性1級、目付30g/mになるよう生地2を形成した後、生地端部5をミシン縫製によって接合し接合部6を設けた。これら以外は実施例1と同一となるよう構成した。表3に各数値と評価結果を示す。
(比較例2)
実施例1の繊維捕集体において、生地2にナイロン製の32G丸編物(生地を構成する繊維径3b:10μm)を使用し、繊維間距離3aは350μm、厚さ4は1.5mm、かさ高性30cm/g、通気性500cm/cm/sec、引張強度111N/5cm、耐摩耗性2級、目付50g/mになるよう生地2を形成した後、生地端部5をミシン縫製によって接合し接合部6を設けた。これら以外は実施例1と同一となるよう構成した。表3に各数値と評価結果を示す。
(比較例3)
比較例1の繊維捕集体において、生地2の構成としてポリエチレン製の延伸フィルムの一方の面上に、ポリエチレン製のメルトブロー不織布/フィルム積層(生地を構成する繊維径3b:3.2μm)を直接形成し積層させものを生地2として使用し、繊維間距離3aは不織布層16.3μm、フィルム層0μm、厚さ4は0.42mm、かさ高性5.25cm/g、通気性0cm/cm/sec、引張強度156N/5cm、耐摩耗性3級、目付80g/mになるよう形成し、これら以外は比較例1と同一となるよう構成した。表3に各数値と評価結果を示す。
Figure 2022126263000004
実施例1~4の繊維捕集体は、生地を構成する繊維間の孔径、厚さ、かさ高性を好ましい範囲とすることで、洗濯洗浄性に優れた繊維捕集体となった。実施例1~3の繊維捕集体は、さらに生地を構成する繊維径を好ましい範囲とすることで、より耐久性に優れた繊維捕集体となった。実施例1~2の繊維捕集体は、さらに生地端部を好ましい形態とすることで、より繊維屑捕集性に優れた繊維捕集体となった。比較例1の繊維捕集体は、生地を構成する繊維間距離と通気性を有さず、かつ厚さ、かさ高性および引張強度と耐摩耗性が低いため、洗濯時に繊維捕集体内部との水の出入りが生じず繊維屑も内部に留まり、捕集率は高い数値を示した反面、通水がないことから洗濯洗浄性に劣り、耐久性も有さない繊維捕集体となった。比較例2の繊維捕集体は、生地を構成する繊維間距離と厚さ、かさ高性が大きく、かつ耐摩耗性が低いことにより、繊維屑捕集性、耐久性に劣る繊維捕集体となった。比較例3の繊維捕集体は、比較例1同様、生地を構成する繊維間距離と通気性を有さないことから捕集率は高い数値を示した反面、通水がなく洗濯洗浄性に劣る繊維捕集体となった。すなわち、本発明の繊維捕集体は、発明の要件を多く満たすほど、より総合的に優れた繊維捕集体となった。
本発明は、衣服あるいは雑貨、寝具、産業資材の洗濯乾燥時における収納を伴う繊維捕集体として利用することができる。
1:繊維捕集体
2:生地
2a:生地のタテ方向
2b:生地のヨコ方向
3:生地を構成する繊維
3a:生地を構成する繊維間距離
3b:生地を構成する繊維径
4:生地の厚さ
5:生地端部
6:接合部
7:開口部
8:被覆部

Claims (5)

  1. 少なくとも繊維織編物または不織布よりなる生地、少なくとも二重に重ね合わされた前記生地同士を接合させた接合部および開口部から構成される繊維捕集体であって、1)前記生地を構成する繊維間距離が50nm~150μm、2)JIS L 1096:2010に基づいて求められる前記生地のかさ高性が3~20cm/g、3)前記生地の厚さが0.15~1.10mm、4)JIS L 1096に基づいて求められる前記生地の引張強度がタテ方向およびヨコ方向ともに20N/5cm以上であることを特徴とする繊維捕集体。
  2. JIS L 1913:2010(6.6.1)記載のテーバー形法に基づいて求められる前記生地の耐摩耗性が3級以上であることを特徴とする請求項1に記載の繊維捕集体。
  3. 前記生地を構成する繊維の平均繊維径が100nm~70μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維捕集体。
  4. 前記生地の端部が、溶着、融着および被覆のいずれか一以上の手段で構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の繊維捕集体。
  5. 前記生地の通気性が30~300cm/cm/secであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の繊維捕集体。
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