JP4157397B2 - 移動体の速度計算回路および移動体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、GPSを用いて速度制御を行う移動体の速度計算回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
無人ヘリコプタの速度制御及び位置制御を行うために、GPSセンサからの速度信号及びジャイロセンサからの加速度信号とをハイブリッドフィルタ回路を通し無人ヘリコプタの現在位置を算出する速度計算回路が特許文献1に記載されている。
【0003】
しかしながら、このGPSセンサで得られるGPS信号のデータ受信間隔とジャイロセンサで得られる加速度信号のデータ受信間隔は異なり、ジャイロセンサからの受信回数が毎秒50回程度の加速度データの受信間隔に対し、GPSセンサからの受信回数が毎秒2回程度のGPS速度データの受信間隔は長くなる。
【0004】
このため速度計算を行う回路に入力される加速度データと同時点でのGPS速度データが得られない場合がある。このように加速度データとGPS速度データの受信間隔の相違によるGPS速度データが同時に得られない場合に対し上記特許文献1の回路使用構成では対処できない。
【0005】
また、GPS速度データは、GPSセンサがGPS信号を受信してから速度データとして発信するまでに時間遅れを生じる。したがって、加速度データとGPS速度データが計算回路側で同時に得られた場合であっても、実際にはGPS速度データの時間遅れのため、GPS速度データと加速度データは時間的にずれた時点でのデータであって、これらのデータをそのまま用いたのでは正確な速度計算ができない。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−325245号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術を考慮したものであって、GPS速度データ及び加速度データに基づいて速度を計算する場合に、受信データの時間間隔が異なる場合を考慮し、GPS速度データの時間遅れに対処して正確な速度を計算可能な移動体の速度計算回路の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明では、計算サイクルごとに同時にサンプリングした移動体の加速度データ及びGPS速度データに基づいて、この移動体の速度を算出する移動体の速度計算回路において、サンプリング時点でのGPS速度データの有無を判別し、加速度データと同時にGPS速度データがサンプリングできない場合に、加速度データのみから移動体の速度を算出することを特徴とする移動体の速度計算回路を提供する。
【0009】
この構成によれば、各計算サイクルでのデータのサンプリング時点でGPS速度データの有無を判別し、判別結果に応じて計算処理をするため、GPS速度データがないときには加速度データのみに基づいて速度計算を行うことにより、GPS速度データと加速度データの時間間隔の相違によりGPS速度データがない場合に対処して速度を計算することができる。
【0010】
好ましい構成例では、サンプリング時点でGPS速度データがある場合に、このGPS速度データ及びGPS速度データの時間遅れに対応したサイクルだけ前の計算サイクルでサンプリングした加速度データに基づいて、前の計算サイクル時の移動体の速度を算出することを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、GPS速度データの時間遅れに対応してその分前の時点での加速度データを用いて速度を計算するため、同一時点でのGPS速度データと加速度データに基づき正確な速度計算ができる。
【0012】
好ましい構成例では、前の計算サイクル時点から現時点までの加速度データの積分値を、前の計算サイクル時点での速度に加えることを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、GPS速度データの時間遅れに合せた分だけ前の計算サイクル時の加速度データを用いて算出した前の計算サイクル時の速度に対し、前の計算サイクルから現時点までの加速度データの積分値を現時点での速度の補正値として加えることにより現時点での正確な速度が計算できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係る無人ヘリコプタの構成図である。
【0015】
機体1は、メインロータ2及びラダーロータ3を有し、エンジン4及びその点火系5を搭載する。ラダーロータ3の近傍に受信アンテナ6が備わり、機体内の受信ボックス7内のプリント基板上に形成した受信機8に接続される。受信ボックス7内にはさらに別のプリント基板上に形成したコントローラ9が備わる。機体1の後部テール27の下側にはGPSセンサ10が備わる。GPSセンサ10は、GPSアンテナ13で受信したGPS信号から速度を測定する。GPSセンサ10の後端部に飛行中のGPSの作動状態や受信状態を表示するGPS表示灯11及び機体の異常を表示する警告灯26が備わる。GPS表示灯11及び警告灯26は、実際には左右に並列して配設されている。
【0016】
機体後部のテール27の上側の機体1には飛行前の機体の初期状態を表示するパネル表示部25が備わる。機体1の重心付近にジャイロからなる姿勢センサ12が備わる。14は地磁気を検出する方位センサ、15はエンジン回転センサである。
【0017】
機体1内には、コントローラ9により駆動制御される5つのサーボモータ16〜20が備わる。16は左エルロンサーボモータ、17は右エルロンサーボモータ、18はエレベータサーボモータ、19はスロットルサーボモータ、20はラダーサーボモータである。
【0018】
21は地上側の送信機を示す。送信機21は、スティック形状の第1操作子22と第2操作子23とを備える。
【0019】
第1操作子22はエレベータ操作及びラダー操作用である。この第1操作子22をab方向に操作することによりエレベータサーボモータ18が制御され、機首を下げて前進飛行(a方向操作)又は機首を上げて後進飛行(b方向操作)する。第1操作子22をcd方向に操作することにより、ラダーサーボモータ20を制御して、機体1前方に向かって左右方向の向きを調整し、機首を左(c方向操作)又は右に振る(d方向操作)。
【0020】
第2操作子23は、スロットル操作及びエルロン操作用であって、エンジン回転数及びメインロータ負荷を同時に調整するためのエンコン操作子である。この第2操作子23をef方向に操作することにより、機体が水平姿勢のまま上昇(e方向操作)又は下降(f方向操作)する。すなわち、第2操作子23のef方向の操作により、スロットルサーボモータ19が制御され、エンジンスロットル開度が調整されるとともに、左右のエルロンサーボモータ16,17及びエレベータサーボモータ18が同時に駆動される。これにより、機体が水平姿勢のまま上昇又は下降する。
【0021】
第2操作子23をgh方向に操作することにより、左右のエルロンサーボモータ16,17が制御され、機体1を左に傾けて左移動させ(g方向操作)又は右に傾けて右移動させる(h方向操作)。
【0022】
送信機21には第2操作子(エンコン操作子)23のef方向のエンコン操作位置を検出するためのエンコン位置センサ24が備わる。このエンコン位置センサ24は、エンジンスロットル開度に対応するメインロータ負荷に応じて目標エンジン回転数を制御するためのものである。
【0023】
図2は、本発明に係る無人ヘリコプタの制御系ブロック図である。また、図3は、コントローラによる制御演算処理のフローチャートである。
【0024】
地上側の送信機21の操作による操縦指令信号が機体側の受信機8で受信されコントローラ9に送られて信号処理される。コントローラ9は、内部の制御回路28内で予め設定された制御プログラムにしたがって、図3に示すフローの演算処理を行う。
【0025】
まず、運転状態のフラグ等を初期値にセットする(ステップA1)。続いて入力信号処理部29で入力信号処理を行う(ステップA2)。これは、指令信号や各種センサの検出信号等の入力信号に基づいて受信状態が正常かどうか及び各種センサ類が正常かどうかをチェックするものである。
【0026】
次にエンジン回転制御計算を行う(ステップA3)。これは、エンジン回転制御計算部30で、送信機21のエンコン操作子23(図1)によるエンコンサーボ指令に基づいてスロットル開度を制御し所定のエンジン回転数で飛行するように制御するものである。
【0027】
次に姿勢制御計算を行う(ステップA4)。これは姿勢制御計算部31で、姿勢センサ12からの信号に基づいて機体の前後及び左右方向の傾斜を制御するものである。
【0028】
次にGPS制御計算を行う(ステップA5)。これはGPS制御計算部32で、GPSセンサ10からの信号に基づいて飛行位置及び飛行速度を制御するものである。
【0029】
次にこれらの入力信号処理及び各制御計算処理を行った後、出力信号処理部33から処理結果を出力する(ステップA6)。この出力信号により、エンジンの点火系を駆動して指令されたエンジン回転数に基づいてエンジンを駆動するとともに、各サーボモータ16〜20を駆動して方向や姿勢を制御する。
【0030】
これらのステップA1〜A6のルーチンは、飛行中例えば20ms程度ごとに繰り返されてデータを更新しながら制御される。
【0031】
図4は、本発明に係る速度計算プログラムからなる速度計算回路の計算ルーチンのフローチャートである。このプログラムルーチンの計算サイクルは例えば数十ms程度で繰り返される。
【0032】
ステップP1:
計算サイクル番号kを前の計算サイクルから1繰上げる。
【0033】
ステップP2:
計算サイクル番号kがm以上か否かを判別する。mは、GPS速度データの時間遅れに対応する計算サイクル数である。本発明では、mサイクル前の加速度データを用いて現時点の速度を算出するため、計算プロセス開始後、計算サイクルがmサイクル以上繰り返されたか否か、すなわちmサイクル前のデータが取得可能か否かを判別するためである。kがm以上であればステップP4に進み、m未満であればステップP3に進む。
【0034】
ステップP3:
kがm未満でmサイクル前のデータが得られない場合、速度V(k)の初期値としてV(k)=0とする。
【0035】
ステップP4:
GPSセンサからの出力の有無を判別する。すなわち、GPSセンサからGPS速度データがこの計算回路に入力されたか否かを判別する。これは、本発明では、ジャイロセンサから出力される加速度データとこれより出力回数が少ないGPS速度データを用いて速度を算出するため、加速度データとともにこれと同時にGPS速度データが得られたか否かを判別するためである。GPS速度データがあればステップP6に進み、なければステップP5に進む。
【0036】
ステップP5:
GPS速度データがない場合、加速度データのみを用いて現時点の速度V(k)を算出する。これは、前回の計算サイクル(k−1)で算出した速度V(k−1)に加速度データの積分値を加えるものである(後述)。すなわち、
V(k)=V(k−1)+ΔT・agyro(k)
とする。
【0037】
ステップP6:
GPS速度データがある場合、mサイクル前の計算サイクル時での速度V(k−m)を算出する。これは、GPS速度データは時間遅れがあるため、現時点で取得したデータは、実際にはmサイクル前の時点でのGPS信号に基づく速度データであり、時系列的に加速度データをこれに合せるために、mサイクル前の加速度データを用いてmサイクル前の時点での速度V(k−m)を算出するものである。
【0038】
ステップP7:
m−1サイクル前から現時点までの加速度データの積分値をmサイクル前の速度に付加する。これにより、現時点での速度V(k)を算出する。
【0039】
図5〜図8は、本発明の速度計算回路で用いる計算ロジックの説明図である。
【0040】
図5は、速度計算の基本原理を示す。
ジャイロセンサからの加速度データagyro(t)を積分回路50を通して速度データVgyroに変換する。これをハイパスフィルタ51を通して高周波成分のみ取り出しノイズを除去する。GPSセンサからのGPS速度データVGPS(t)をローパスフィルタ52を通して低周波成分のみ取り出してノイズを除去する。各フィルタ51,52を通したこれら2つの加速度信号及びGPS速度信号を加算器53でミキシングして推定速度V(t)を算出する。
【0041】
この場合、微分写像を用いたz変換によりアナログフィルタを離散化する。すなわち、ラプラス変換子をS=(1−z-1)/ΔT、zをz変換素子、ΔTをサンプリングタイム、T1をフィルタの時定数として、以下のようにハイパスフィルタ51及びローパスフィルタ52の演算回路を作成する。
【0042】
ハイパスフィルタ51は、
H1(S)=T1S/(T1S+1)であり、z変換すると、
【数1】
となる。
【0043】
ローパスフィルタ52は、
H2(S)=1/(T1S+1)であり、z変換すると、
【数2】
となる。
【0044】
また、積分回路50は、
H0(S)=1/Sであり、z変換すると、
H0(z)=ΔT/(1−z-1)
となる。
【0045】
図6は、z変換後の計算回路の構成を示す。図7は図6の積分回路による加速度データから速度データへの変換ロジックを示す。
【0046】
図7のV(k)が、図4のフローチャートのステップP3のV(k)あるいはステップP5のv(k)である。
【0047】
図8は、加算器でミキシングして速度計算する場合の計算回路の構成を示す。GPSの出力にmサイクルの遅れがあるとすると、mサイクル前の加速度データとのミキシングを行い、mサイクル前の推定速度を算出する。
ローパスフィルタ52についてみると、
【数3】
となる。
【0048】
積分回路50及びハイパスフィルタ51を通した速度計算データはについてみると、
【数4】
となる。
【0049】
加算器53でVhigh(k−m)とVlow(k−m)を加算する。したがって、上記(数3)の式と(数4)の式を加算して、
【数5】
となる。この(数5)の値が前述の図4のフローチャートのステップP6の式である。これは、mサイクル前の時点での速度であり、現時点での速度は、図4のステップP7で説明したように、mサイクル前の時点から現時点までの加速度データの積分値を加算したものである。
【0050】
なお、本発明は無人ヘリコプタに限らず、他の飛行体、船舶、陸上乗物等の移動体に対して適用可能である。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、各計算サイクルでのデータのサンプリング時点でGPS速度データの有無を判別し、判別結果に応じて計算処理をするため、GPS速度データがないときには加速度データのみに基づいて速度計算を行うことにより、GPS速度データと加速度データの時間間隔の相違によりGPS速度データがない場合に対処して速度を計算することができる。
【0052】
また、サンプリング時点でGPS速度データがある場合に、このGPS速度データ及びGPS速度データの時間遅れに対応したサイクルだけ前の計算サイクルでサンプリングした加速度データに基づいて、前の計算サイクル時の移動体の速度を算出する構成によれば、GPS速度データの時間遅れに対応してその分前の時点での加速度データを用いて速度を計算するため、同一時点でのGPS速度データと加速度データに基づき正確な速度計算ができる。
【0053】
また、前の計算サイクル時点から現時点までの加速度データの積分値を、前の計算サイクル時点での速度に加える構成によれば、GPS速度データの時間遅れに合せた分だけ前の計算サイクル時の加速度データを用いて算出した前の計算サイクル時の速度に対し、前の計算サイクルから現時点までの加速度データの積分値を現時点での速度の補正値として加えることにより現時点での正確な速度が計算できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る無人ヘリコプタの構成図。
【図2】 本発明に係る無人ヘリコプタの制御系ブロック図。
【図3】 コントローラによる制御演算処理のフローチャート。
【図4】 本発明に係る速度計算回路のフローチャート。
【図5】 本発明に係る速度計算回路の基本原理説明図。
【図6】 本発明に係る図5の計算回路をz変換した場合の構成説明図。
【図7】 本発明に係る速度計算回路でのジャイロセンサからの加速度データ処理の説明図。
【図8】 本発明に係る速度計算回路での加算器のミキシングによるデータ処理の説明図。
【符号の説明】
1:機体、2:メインロータ、3:ラダー、4:エンジン、5:点火系、
6:受信アンテナ、7:受信ボックス、8:受信機、9:コントローラ、
10:GPSセンサ、11:GPS表示灯、12:姿勢センサ、
13:GPSアンテナ、14:方位センサ、15:エンジン回転センサ、
16:右エルロンサーボモータ、17:左エルロンサーボモータ、
18:エレベーションサーボモータ、19:エンコンサーボモータ、
20:ラダーサーボモータ、21:送信機、22:第1操作子、
23:第2操作子、24:操作位置センサ、25:パネル表示部、
26:警告灯、27:テール、28:制御回路、50:積分回路、
51:ハイパスフィルタ、52:ローパスフィルタ、53:加算器。
Claims (3)
- 計算サイクルごとに同時にサンプリングした移動体の加速度データ及びGPS速度データに基づいて、この移動体の速度を算出する移動体の速度計算回路において、
サンプリング時点でのGPS速度データの有無を判別し、加速度データと同時にGPS速度データがサンプリングできない場合に、加速度データのみから移動体の速度を算出し、
サンプリング時点でGPS速度データがある場合に、このGPS速度データ及びGPS速度データの時間遅れに対応したサイクルだけ前の計算サイクルでサンプリングした加速度データに基づいて、前の計算サイクル時の移動体の速度を算出する
ことを特徴とする移動体の速度計算回路。 - 前の計算サイクル時点から現時点までの加速度データの積分値を、前の計算サイクル時点での速度に加えることを特徴とする請求項1に記載の移動体の速度計算回路。
- GPS信号に基づいて移動体の速度を算出し、これをGPS速度データとして出力するGPSセンサと、
前記移動体の加速度を測定し、これを加速度データとして出力するジャイロセンサと、
前記GPSセンサから出力される前記GPS速度データと、前記ジャイロセンサから出力される前記加速度データとに基づいて前記移動体の速度を算出する速度計算回路と
を備えた移動体であって、
前記速度計算回路は、請求項1または請求項2に記載された移動体の速度計算回路からなる
ことを特徴とする移動体。
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