JP4157391B2 - サーマルヘッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はワードプロセッサやファクシミリ等のプリンタ機構として組み込まれるサーマルヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ワードプロセッサ等のプリンタ機構として組み込まれるサーマルヘッドは、アルミナセラミックス等から成る絶縁基板上にガラスグレーズ層を介して複数個の発熱抵抗体及び電極層を設け、前記発熱抵抗体を厚み数μm程度の保護膜によって被覆した構造を有しており、かかるサーマルヘッドは、外部からの画像データに基づいて前記発熱抵抗体に電極層を介して所定の電力を印加し、発熱抵抗体を個々に選択的にジュール発熱させるとともに、該発熱した熱を感熱紙等の記録媒体に伝導させ、記録媒体に所定の印画を形成することによってサーマルヘッドとして機能するようになっている。
【0003】
尚、前記保護膜は記録媒体の摺接による磨耗や大気中に含まれる水分等の接触による腐食から発熱抵抗体等を保護するためのものであり、例えば窒化珪素(Si34)や炭化珪素(SiC),酸化タンタル(Ta25)等の耐磨耗性に優れた無機質材料により形成されていた。
【0004】
【特許文献1】
特開昭58−042472号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来のサーマルヘッドにおいては、保護膜が窒化珪素や酸化タンタルにより形成されている場合、これらの比抵抗が高い(窒化珪素の比抵抗:1×1012Ω・cm、酸化タンタルの比抵抗:1×1014Ω・cm)ことから、発熱抵抗体上の保護膜に記録媒体を摺接させて印画を行った際、保護膜表面には記録媒体の摺接に伴って静電気が蓄積され、これが所定量に達すると、保護膜表面と発熱抵抗体等との間で放電が起こり、保護膜が絶縁破壊されてしまう。この場合、保護膜としての機能が喪失されてしまう上に、上述の絶縁破壊に伴って発熱抵抗体に瞬間的に大電流が流され、発熱抵抗体が焼損するという欠点を有している。
【0006】
またサーマルヘッドの保護膜が、炭素50%、珪素50%の一般的な炭化珪素により形成されている場合、その比抵抗は8×107Ω・cmと前述の窒化珪素等に比べ小さいことから、保護膜表面に静電気が印加された際、これらの電荷はある程度、分散され、絶縁破壊は少なくなるものの、記録媒体が吸湿性の低いプラスチック等の材質から成っている場合、保護膜表面には極めて大きな静電気が印加され、その結果、前述した窒化珪素や酸化タンタルの場合と同様の絶縁破壊等を生じることがあった。
【0007】
そこで上記欠点を解消するために、前記保護膜上にクロム(Cr)等から成る導電層を被着させ、静電気による電荷を導電層全体にわたって良好に分散させることが提案されている。
【0008】
ところが、サーマルヘッドの保護膜上に導電層を被着させる場合、保護膜を形成する無機質材料と導電層を形成するクロム等の金属の熱膨張係数が大きく相違することに起因して、両者間に大きな熱応力が印加されるようになっており、それ故、導電層の表面に記録媒体を摺接させると、導電層が熱応力と記録媒体の摺接とによって保護膜表面より容易に剥離し、電荷の拡散機能が喪失される欠点が誘発される。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、本発明のサーマルヘッドは、絶縁基板上に発熱抵抗体を設けるとともに、該発熱抵抗体を炭素及び珪素を含む保護膜で被覆してなるサーマルヘッドであって、前記保護膜中の炭素含有比率が65atm%〜90atm%であり、かつこれら炭素同士の結合の95.0%以上がsp2混成軌道に係る共有結合であり、更に前記発熱抵抗体と保護膜との間に、窒化珪素、酸化珪素もしくはサイアロンから成る緻密層が介在されていることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明のサーマルヘッドは、前記発熱抵抗体及び緻密層中の珪素含有率が20atm%〜60atm%であることを特徴とするものである。
【0011】
更に本発明のサーマルヘッドは、前記緻密層の比抵抗が1×109Ω・cm〜1×1014Ω・cmであることを特徴とするものである。
【0012】
また更に本発明のサーマルヘッドは、前記保護膜の比抵抗が2×104Ω・cm〜1×107Ω・cmであることを特徴とするものである。
【0013】
更にまた本発明のサーマルヘッドは、前記保護膜の炭素含有比率が70atm%以上であることを特徴とするものである。
【0014】
また更に本発明のサーマルヘッドは、前記保護膜のビッカース硬度Hvが1700〜2300であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明のサーマルヘッドによれば、炭素及び珪素を含む保護膜で発熱抵抗体を被覆するとともに、該保護膜中の炭素含有比率を65atm%〜90atm%とし、かつこれら炭素同士の結合(C−C結合)の95.0%以上をsp2結合になしておくことにより、保護膜に、適度な導電性と、電極層間の短絡を防止するのに十分な電気絶縁性とが付与されることから、プラスチック等のような吸湿性の低い記録媒体を使って印画を行う際、保護膜の表面に記録媒体の摺接に伴う極めて大きな静電気が印加されても、該静電気の電荷は保護膜の全体にわたって良好に拡散され、保護膜の絶縁破壊が有効に防止される。従って、保護膜を長期にわたり良好に機能させて、保護膜の絶縁破壊に起因する発熱抵抗体の焼損を皆無となすことができる。
【0016】
また本発明のサーマルヘッドによれば、発熱抵抗体と保護膜との間に、窒化珪素、酸化珪素もしくはサイアロンから成る緻密層を介在させたことから、保護膜に比し極めて高い比抵抗を付与することができ、保護膜の表面に記録媒体の摺接に伴う極めて大きな静電気が印加された際に電荷の一部が発熱抵抗体に流れ込んで発熱抵抗体への通電量が変動するといった不都合を有効に防止することができる上に、発熱抵抗体を大気から良好に遮蔽して、大気中の酸素や水分等の接触による腐食からより確実に防止し、耐腐食性をより一層、向上させることもできる。
【0017】
更に本発明のサーマルヘッドによれば、発熱抵抗体及び前記緻密層中の珪素含有率を20atm%〜60atm%に設定することにより、発熱抵抗体、緻密層及び保護膜にほぼ等量の珪素が含有されることとなるため、発熱抵抗体−緻密層間、緻密層−保護膜間の馴染みがそれぞれ良好となり、下地に対する緻密層や保護膜の密着性が向上する利点もある。
【0018】
また更に本発明のサーマルヘッドによれば、保護膜中の炭素含有比率を70atm%以上になしておくことにより、保護膜の熱化学的安定性を向上させることができ、サーマルヘッドの使用時などに保護膜の温度がある程度、高温になっても、保護膜中の珪素が記録媒体中の水酸基(OH基)と化学反応を起こして保護膜の一部が消失するのを有効に防止することができる。従って、発熱抵抗体を保護膜でもって長期にわたり良好に被覆しておくことが可能である。
【0019】
更にまた本発明のサーマルヘッドによれば、保護膜のビッカース硬度Hvを1700〜2300の範囲になしておくことにより、保護膜を長期にわたり良好に機能させることができ、またこの場合、保護膜はそれ自体が静電気の電荷を拡散するものであることから、保護膜が存在している限り、記録媒体の摺接による静電気の電荷を拡散することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のサーマルヘッドの一実施形態を示す断面図であり、1は絶縁基板、3は発熱抵抗体、4は電極層、5は保護膜、6は緻密層である。
【0021】
前記絶縁基板1はアルミナセラミックスやガラス等の電気絶縁性材料から成り、その上面でグレーズ層2や発熱抵抗体3,電極層4,保護膜5等を支持するための支持母材として機能する。
【0022】
尚、前記絶縁基板1は、アルミナセラミックスから成る場合、まずアルミナ、シリカ、マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状と成すとともにこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによってセラミックグリーンシートを形成し、しかる後、前記セラミックグリーンシートを所定形状に打ち抜いた上、高温で焼成することによって製作される。
【0023】
また前記絶縁基板1の上面にはグレーズ層2が20μm〜60μmの厚みに被着・形成されている。
【0024】
前記グレーズ層2はガラスやポリイミド樹脂等の低熱伝導性材料により形成されており、発熱抵抗体3の発する熱が適当な温度となるようにその内部で熱を蓄積し、これによってサーマルヘッドの熱応答特性を良好に維持する作用を為す。
【0025】
尚、前記グレーズ層2は、ガラスにより形成する場合、ガラス粉末に適当な有機溶媒、溶剤を添加混合して得たガラスペーストを絶縁基板上面の全体もしくは所定領域に従来周知のスクリーン印刷法を採用することによって所定厚みに印刷・塗布し、しかる後、これを高温(約900℃)で焼成することによって絶縁基板1の上面に被着・形成される。
【0026】
また前記グレーズ層2の上面には、複数個の発熱抵抗体3が例えば300dpi(dot per inch)の密度で直線状に被着・配列されており、該各発熱抵抗体3の両端には一対の電極層4,4が電気的に接続されている。
【0027】
前記発熱抵抗体3は、TaSiOやTaSiNO,TiSiO,TiSiCO,NbSiO,TiSiNi等の電気抵抗材料から成り、それ自体が所定の電気抵抗率を有しているため、一対の電極層4,4を介して電源電力が印加されると、ジュール発熱を起こし、記録媒体に印画を形成するのに必要な所定温度、例えば250℃〜400℃の温度となる。
【0028】
また一方、前記発熱抵抗体3の両端に接続されている一対の電極層4,4はアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属から成り、前記発熱抵抗体3にジュール発熱を起こさせるのに必要な所定の電力を印加する作用を為す。
【0029】
尚、前記複数個の発熱抵抗体3及び一対の電極層4,4は、従来周知の薄膜手法、具体的にはスパッタリング法やフォトリソグラフィー技術,エッチング技術等を採用し、例えばTaSiO及びAlをグレーズ層2の上面に所定厚み、所定パターンに被着させることにより形成される。
【0030】
そして前記発熱抵抗体3及び一対の電極層4,4の上面には保護膜5が被着されている。
【0031】
前記保護膜5は発熱抵抗体3や一対の電極層4,4を大気中に含まれている水分等の接触による腐食や記録媒体の摺接による磨耗から保護するためのものであり、該保護膜5は例えば1.5μm〜4.0μmの厚みをもって発熱抵抗体3や一対の電極層4,4を被覆するようにして形成されている。
【0032】
また前記保護膜5は、炭素(C)及び珪素(Si)を含む無機質材料から成り、その炭素含有比率は65atm%〜90atm%に設定され、かつこれら炭素同士の結合(以下、C−C結合と略記する)の大部分、具体的には全てのC−C結合のうち、95.0%以上がsp2混成軌道に係る共有結合(以下、sp2結合と略記する)となっており、このように殆どのC−C結合をsp2結合で結合させておくことにより、保護膜5の比抵抗を2×104Ω・cm〜1×107Ω・cmの小さな値に設定している。
【0033】
これにより、保護膜5には、適度な導電性と、電極層4,4間の短絡を防止するのに十分な電気絶縁性とが付与されることとなり、プラスチック等のような吸湿性の低い記録媒体を使って印画を行う際、保護膜5の表面に記録媒体の摺接に伴う極めて大きな静電気が印加されても、その電荷は保護膜5の全体にわたって良好に拡散され、保護膜5の絶縁破壊を有効に防止することができる。従って、保護膜5を長期にわたり良好に機能させて、保護膜5の絶縁破壊に起因する発熱抵抗体3の焼損を皆無となすことができる。
【0034】
またこの場合、前記保護膜5の硬度はビッカース硬度Hvで1700〜2300と極めて高く、耐磨耗性にも優れているため、サーマルヘッドの保護膜として長期にわたり良好に機能させることができ、また保護膜5はそれ自体が静電気の電荷を拡散するものであることから、保護膜5が存在している限り、記録媒体の摺接による静電気の電荷を拡散することができる。
【0035】
更に前記保護膜5の炭素含有比率を70atm%以上に設定することで、保護膜5の熱化学的安定性を飛躍的に向上させることができる。即ち、サーマルヘッドの使用時などに保護膜5の温度が例えば300℃以上の高温になっても、保護膜5中の珪素が記録媒体中に含まれている水酸基(OH基)と化学反応を起こすことによって多くの珪素が保護膜5中より消失し、保護膜5の厚みが比較的短時間で薄くなるといった不具合は殆ど発生することがなく、発熱抵抗体3等を保護膜5でもって長期にわたり良好に被覆しておくことができる。従って保護膜5中の炭素含有比率を70atm%以上に設定しておくことが好ましい。
【0036】
また更に本実施形態のサーマルヘッドにおいては、前記保護膜5と発熱抵抗体3等との間に窒化珪素(Si34)や酸化珪素(SiO2),サイアロン(Si−Al−O−N)等から成る緻密層6が3.0μm〜8.0μm程度の厚みに介在されている。
【0037】
このような緻密層6は、その外周が保護膜5の被着領域の外側まで延在され、保護膜5に比し極めて高い比抵抗(1×109Ω・cm〜1×1014Ω・cm)を有しているため、保護膜5の表面に記録媒体の摺接に伴う極めて大きな静電気が印加された際に電荷の一部が発熱抵抗体3や電極層4,4に流れ込んで発熱抵抗体3への通電量が変動するといった不都合を確実に防止することができる上に、発熱抵抗体3や電極層4を大気から良好に遮蔽して、これらを大気中の酸素や水分等の接触による腐食からより確実に防止し、サーマルヘッドの耐腐食性をより一層、向上させることもできる。
【0038】
特に、発熱抵抗体3及び緻密層6を珪素含有率が20atm%〜60atm%の化合物、例えば発熱抵抗体3をTaSiOやTaSiNO,TiSiO,TiSiCO,NbSiO,TiSiNiで、緻密層6を窒化珪素やサイアロンでそれぞれ形成しておけば、発熱抵抗体3、緻密層6及び保護膜5にはほぼ等量の珪素が含有されることとなるため、発熱抵抗体3−緻密層6間、緻密層6−保護膜5間の馴染みがそれぞれ良好となり、下地に対する緻密層6や保護膜5の密着性が飛躍的に向上される。従って前記保護膜5と発熱抵抗体3等との間には、窒化珪素や酸化珪素,サイアロン等から成る緻密層6を介在させておくことが好ましく、更には発熱抵抗体3及び緻密層6を珪素含有率が20atm%〜60atm%の化合物で形成することが好ましい。
【0039】
尚、前記保護膜5の炭素含有比率を65atm%〜90atm%に設定するのは、保護膜5中の炭素含有比率が65atm%よりも小さくなると、保護膜5中のsp2結合したC−C結合が少なくなって保護膜5の導電性を十分なレベルまで低下させることができなくなり、また保護膜5中の炭素含有比率が90atm%よりも大きくなると、保護膜5中のsp2結合したC−C結合が過度に多くなって保護膜5の導電性が極めて高くなり、印画時、隣合う電極層間4−4などで短絡することによって発熱抵抗体3が不要な発熱を起こし、“印画つぶれ”を発生する恐れがあるからである。従って保護膜5の炭素含有比率は65〜90atm%の範囲内に設定しておく必要がある。
【0040】
また前記保護膜5中のC−C結合の95.0%以上をsp2結合になしておくのは、sp2結合が95%未満になると、それ以外のC−C結合であるsp3混成軌道に係る共有結合(以下、sp3結合と略記する)が多くなることに起因して、保護膜5の比抵抗が高くなり、保護膜5に適度な導電性を付与することが不可となるからであり、保護膜5に適度な導電性を付与するにはC−C結合の殆ど、即ち、95.0%以上をsp2結合になしておく必要がある。尚、前述したsp2結合の割合は高ければ高いほど良く、できれば保護膜5中のC−C結合の99.0%以上をsp2結合になしておくことが好ましい。
【0041】
かかる保護膜5は、まずスパッタリング装置のチャンバー内に、炭素(C)及び珪素(Si)が例えば80:20の比率で混在する焼結体から成るターゲット材と、発熱抵抗体3及び電極層4,4が被着された絶縁基板1とをそれぞれ配置させ、前記チャンバー内にアルゴンガスを導入しながら前記ターゲット材と絶縁基板1との間に所定の電力を印加し、ターゲット材の構成材料をスパッタリングすることによって形成される。このとき、アルゴンガスの流量は100SCCMに、チャンバー内の圧力は5mTorrに設定される。尚、上述のようにしてスパッタリングする場合、珪素のスパッタ率は炭素に比べて低いことから、形成された保護膜5の珪素含有比率は30atm%程度になる。またこのような製法により保護膜5を形成する場合、保護膜5中に存在するC−C結合の95%以上をsp2結合となすには、成膜時の絶縁基板1の温度を常に120℃〜200℃の範囲内に保つことが重要である。
【0042】
かくして上述したサーマルヘッドは、一対の電極層間4−4に外部からの画像データに基づいて所定の電力を印加し、発熱抵抗体3を個々に選択的にジュール発熱させるとともに、該発熱した熱を感熱紙等の記録媒体に伝導させ、記録媒体に所定の印画を形成することによってサーマルヘッドとして機能する。
【0043】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0044】
例えば上述の実施形態では保護膜5を形成するのに炭素(C)及び珪素(Si)が混在する単一のターゲット材を用いてスパッタリングしたが、これに代えて炭素(C)のみで形成されたターゲット材と珪素(Si)のみで形成されたターゲット材を用いて2元スパッタリングすることにより保護膜5を形成するようにしても構わない。
【0045】
また上述の実施形態においてはグレーズ層2を絶縁基板1の上面全体にわたってほぼ一定の厚みに形成するようにしたが、これに代えて図2に示す如く、グレーズ層2aを断面円弧状になし、これを絶縁基板1の上面に部分的に形成するようにしても構わない。
【0046】
更に上述した図1の実施形態や図2の実施形態において、保護膜表面のうち、一対の電極層4,4の先端部に対応する箇所に出来る角部を、粒径0.5μmのダイヤモンド微粒子が多数被着されているラッピングフィルムを用いた研磨等によって削り取り、この部分から段差をなくすようにすれば、記録媒体の摺接によって発生する“紙カス”が発熱抵抗体4の外周部付近に付着しようとするのを有効に防止し、記録媒体を発熱抵抗体4上の保護膜表面に常に良好に密着せしめて、鮮明な印画を形成することができるようになる。尚、この研磨は、少なくとも記録媒体の搬送方向下流側で行っておけば良く、上述の効果をより確実に得るには、発熱抵抗体4のエッジから100μm〜200μm外側までの広い領域を研磨しておくことが好ましい。
【0047】
【実験例】
次に本発明の作用効果を実験例に基づき説明する。下記の表1は、保護膜5中の炭素含有比率を少しずつ異ならせた8個のサーマルヘッドサンプル(サンプルNo.1〜No.8)につき、各サンプルの保護膜5の比抵抗を測定し、これらのサンプルを用いてテストパターンの印画を伴う走行試験(プラスチック製のA4用紙10万枚に対する連続印字)を実施した結果について示すものである。
【0048】
この実験に用いた全てのサーマルヘッドサンプルは、保護膜5の厚みが5.0μm(±0.5μm)で、かつ保護膜5が炭素と珪素と若干量の不純物(1atm%以下)とで構成されており、各々のサンプルに形成された保護膜5中のC−C結合はその99.0%以上がsp2結合であることをX線光電子分光分析により確認した。
【0049】
【表1】
Figure 0004157391
【0050】
この表1によれば、保護膜5中の炭素含有比率を65atm%〜90atm%に設定したサンプルNo.3〜No.6では、保護膜5の比抵抗が2×104Ω・cm〜1×107Ω・cmとなっており、プラスチック製のメディアを用いた走行試験の結果、保護膜5の絶縁破壊は一切起こらず、また電極層間4−4の短絡に起因した“印画つぶれ”も全く見られなかった。
【0051】
一方、保護膜5中の炭素含有比率を50atm%〜60atm%に設定したサンプルNo.1,No.2では、保護膜5の比抵抗が5×107Ω・cm〜8×107Ω・cmと大きすぎることから、保護膜5の導電性が低く、プラスチック製のメディアを用いた走行試験の結果、静電気の電荷を良好に拡散させることができずに保護膜5の絶縁破壊が発生した。
【0052】
また保護膜5中の炭素含有比率を95atm%〜99atm%に設定したサンプルNo.7,No.8では、保護膜5の比抵抗が1×103Ω・cm〜8×103Ω・cmと小さすぎることから、保護膜5の導電性が極めて高く、走行試験の際、電極層間4−4の短絡に起因する“印画つぶれ”が見られた。
【0053】
また、保護膜5の厚み変化については、保護膜5中の炭素含有比率を70atm%以上に設定したサンプルNo.4〜No.8では、プラスチック製のメディアを用いた走行試験を行った際、保護膜5の厚み減少量が100Å〜10000Åと極めて少ないのに対し、炭素含有比率を65atm%以下に設定したサンプルNo.1〜No.3では、保護膜5の厚みが30000Å〜50000Åと大幅に減少していることが判る。この結果を、別途行った印画を伴わない走行試験の結果と比較したところ、印画を伴う走行試験においてのみ、このような差異を生じていることが確認され、このようなことからサンプルNo.1〜No.3の保護膜5の厚みが減少した要因は、保護膜5が印画動作時に高温となることで保護膜5中の珪素が記録媒体中の水酸基(OH基)と化学反応を起こすことにより保護膜5の一部が消失したことによるものと考えられる。
【0054】
従って、上述した実験結果によれば、電極層間4−4の短絡を防止するのに十分な電気絶縁性と電荷拡散特性とを備えた保護膜5を得るには、保護膜5中の炭素含有比率を65atm%〜90atm%の範囲内に設定し、かつこれら炭素同士の結合の殆どをsp2結合になしておかなければならず、また熱化学的安定性が良好な保護膜5を得るには、保護膜5中の炭素含有比率を70atm%以上に設定しなければならないことが判る。
【0055】
尚、以上の実験においては、保護膜5中のC−C結合の99.0%がsp2結合であるサンプルを用いて作用効果を確認したが、C−C結合は95.0%以上であれば、上述の実験と略同様の結果が得られることを他の実験により確認した。
【0056】
【発明の効果】
本発明のサーマルヘッドによれば、炭素及び珪素を含む保護膜で発熱抵抗体を被覆するとともに、該保護膜中の炭素含有比率を65atm%〜90atm%とし、かつこれら炭素同士の結合(C−C結合)の95.0%以上をsp2結合になしておくことにより、保護膜に、適度な導電性と、電極層間の短絡を防止するのに十分な電気絶縁性とが付与されることから、プラスチック等のような吸湿性の低い記録媒体を使って印画を行う際、保護膜の表面に記録媒体の摺接に伴う極めて大きな静電気が印加されても、該静電気の電荷は保護膜の全体にわたって良好に拡散され、保護膜の絶縁破壊が有効に防止される。従って、保護膜を長期にわたり良好に機能させて、保護膜の絶縁破壊に起因する発熱抵抗体の焼損を皆無となすことができる。
【0057】
また本発明のサーマルヘッドによれば、発熱抵抗体と保護膜との間に、窒化珪素、酸化珪素もしくはサイアロンから成る緻密層を介在させたことから、保護膜に比し極めて高い比抵抗を付与することができ、保護膜の表面に記録媒体の摺接に伴う極めて大きな静電気が印加された際に電荷の一部が発熱抵抗体に流れ込んで発熱抵抗体への通電量が変動するといった不都合を有効に防止することができる上に、発熱抵抗体を大気から良好に遮蔽して、大気中の酸素や水分等の接触による腐食からより確実に防止し、耐腐食性をより一層、向上させることもできる。
【0058】
更に本発明のサーマルヘッドによれば、発熱抵抗体及び前記緻密層中の珪素含有率を20atm%〜60atm%に設定することにより、発熱抵抗体、緻密層及び保護膜にほぼ等量の珪素が含有されることとなるため、発熱抵抗体−緻密層間、緻密層−保護膜間の馴染みがそれぞれ良好となり、下地に対する緻密層や保護膜の密着性が向上する利点もある。
【0059】
また更に本発明のサーマルヘッドによれば、保護膜中の炭素含有比率を70atm%以上になしておくことにより、保護膜の熱化学的安定性を向上させることができ、サーマルヘッドの使用時などに保護膜の温度がある程度、高温になっても、保護膜中の珪素が記録媒体中の水酸基(OH基)と化学反応を起こして保護膜の一部が消失するのを有効に防止することができる。従って、発熱抵抗体を保護膜でもって長期にわたり良好に被覆しておくことが可能である。
【0060】
更にまた本発明のサーマルヘッドによれば、保護膜のビッカース硬度Hvを1700〜2300の範囲になしておくことにより、保護膜を長期にわたり良好に機能させることができ、またこの場合、保護膜はそれ自体が静電気の電荷を拡散するものであることから、保護膜が存在している限り、記録媒体の摺接による静電気の電荷を拡散することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るサーマルヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1・・・絶縁基板
2,2a・・・グレーズ層
3・・・発熱抵抗体
4・・・電極層
5・・・保護膜
6・・・緻密層

Claims (6)

  1. 絶縁基板上に発熱抵抗体を設けるとともに、該発熱抵抗体を炭素及び珪素を含む保護膜で被覆してなるサーマルヘッドであって、
    前記保護膜中の炭素含有比率が65atm%〜90atm%であり、かつこれら炭素同士の結合の95.0%以上がsp2混成軌道に係る共有結合であり、
    更に前記発熱抵抗体と保護膜との間に、窒化珪素、酸化珪素もしくはサイアロンから成る緻密層が介在されていることを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 前記発熱抵抗体及び緻密層中の珪素含有率が20atm%〜60atm%であることを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
  3. 前記緻密層の比抵抗が1×109Ω・cm〜1×1014Ω・cmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーマルヘッド。
  4. 前記保護膜の比抵抗が2×104Ω・cm〜1×107Ω・cmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のサーマルヘッド。
  5. 前記保護膜の炭素含有比率が70atm%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のサーマルヘッド。
  6. 前記保護膜のビッカース硬度Hvが1700〜2300であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のサーマルヘッド。
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