JP4157172B2 - 充填式表層仕上げ工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は充填式表層仕上げ工法に関し、道路、空港、広場等の舗装やダム、堤防、水路等の水利構造物の舗装に適する充填式表層仕上げ工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐流動性を目指して空隙率の大きな開粒度アスファルト混合物の空隙にポリマーセメントミルク等のグラウトを浸透させる半たわみ性舗装の施工は従来から行われている。
この半たわみ性舗装には母体アスファルト混合物の全層に浸透用セメントミルクを浸透させた全浸透型、半分程度浸透させた半浸透型がある。
通常、半たわみ性舗装を舗装の明色化やカラー化を目的として用いる場合には半浸透型でもよい。しかし、この半浸透型の場合、内部の状況が全く分からず充填量の管理が難しい欠点があった。そこで、全浸透型の方がより確実に施工ができるが、全浸透型は母体アスファルト混合物の層厚3〜7cmの全断面に浸透用ミルクを用いるため、多量のセメントミルクが必要であった。
また、半たわみ性舗装を車道等の重交通道路に適用する場合は盤として機能させるため全浸透型が用いられるが、母体アスファルト混合物を薄くすることは、ひきずりなどを生じる為難しく、3〜7cmで施工せざるをえなかった。このため厚層で施工する時には、母体の開粒度アスファルト混合物が冷えるまでかなりの時間がかかり、浸透用セメントミルクの充填を遅らせなければならなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は充填材を充填した開粒度タイプのアスファルト混合物からなる超薄層の舗装体を、比較的少量の充填材の使用で、経済的に、しかも優れた補強効果と機能性をもつよう施工しうる充填式表層仕上げ工法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、路面上に液状の接着材を蒸発残留分で0.3〜1.2kg/m散布して接着材層を形成し、その上に舗装材を敷き均し、表面仕上げ層の施工を行うに際し、これら一連の作業を舗装材の敷設装置の進行方向前方に接着材の散布装置を一体的に配置した装置を用いて連続的に行うとともに、前記接着材として軟化点が50℃以上のアスファルト乳剤を用い、前記舗装材として5〜20mmの範囲に最大粒径をもつ骨材を含有し仕上がり時の空隙率が15%以上の開粒度タイプの加熱アスファルト混合物を用い、この混合物が軟化状態にあるうちにこれを前記接着材が液状ないし軟化状態を維持している間に敷き均し、かつその表面仕上げ層の仕上がり厚さが3cm未満で前記舗装材を構成する前記骨材の最大粒径の2.5倍以内となるように敷き均しを制御し、次いでかくして仕上げた薄層のアスファルト表面仕上げ層の空隙に、注入時に液状を呈する充填材を表面から注入し接着材層まで充填し固化せしめることを特徴とする充填式表層仕上げ工法である。
【0005】
本発明による接着材としては、従来舗装用に知られた接着材料であれば本質的にはいずれも使用でき、アスファルトを界面活性剤を含む水中に乳化、分散させたアスファルト乳剤が好ましく用いられる。
アスファルト乳剤は、接着力などを高めるため、ゴムやエラストマーを添加して改質してもよく、たとえば少なくとも3%のラテックスまたはSBSコポリマーで改質した改質アスファルト乳剤は特に好ましく用いられる。
アスファルト乳剤は、乳剤中の水分を蒸発して得られる蒸発残留分を60%以上とすることが好ましい。高濃度のアスファルト乳剤は、散布された乳剤の水分蒸発と分解を促進することができる。極端に高濃度とすると作業性に支障を生じることから、60〜70%の範囲で使用することが好ましい。
【0006】
本発明においてアスファルト乳剤は、一般的にアスファルト乳剤が接着材として用いられる場合よりも多量に、たとえば倍量程度以上用いることが好ましい。用いるアスファルト乳剤の軟化点は50℃以上、特に60℃以上であることが好ましい。これは一般的に用いられるアスファルト乳剤の軟化点よりも高い。本発明では上記したように多量のアスファルト乳剤を散布するため、路面温度が50℃を超えた場合、特に夏期に60℃となるようなときに、軟化点を高くすることによって、散布した乳剤の軟化、流出を防止することができる。またアスファルト乳剤を加温して用いる場合、軟化点が高い方が、貯蔵をはじめノズルやパイプといった散布装置内において、分散しているアスファルト粒子の相互接着や変形などに対する安定性に優れる。
アスファルト乳剤は、加熱して用いることが望ましく、加熱温度は50℃以上とすることが好ましく、70〜85℃とすることがより好ましい。加熱することによって、散布されたアスファルト乳剤の水分蒸発と分解を促進し、既設路面と舗装材との接着性を高めることができる。また加熱によって乳剤の粘性が低下し、散布し易くなるとともに、路面の加温あるいは舗装材の温度降下の抑制によって接着力が向上する。一方、加熱温度が85℃以上となると、乳剤の種類によっては、貯蔵中に一部分解して変質したり、アスファルトの塊が発生してパイプなどの散布装置内で目詰まりを生じることがある。
【0007】
アスファルト乳剤の散布量は、散布した乳剤の蒸発残留分と敷設した舗装材の結合材との比が10〜60%で、かつ乳剤の蒸発残留分が0.3〜1.2kg/mの範囲であり、0.4〜0.7kg/mの範囲とすることがより好ましい。散布量は、舗装材の種別や路面の状態によって異なり、この範囲より少ない量では所期の効果が得られず、多すぎても流出などの問題が生じることになる。たとえば、路面が平滑な場合は散布量を低くし、粗面の場合は撒布量を増やすなどの調整を行う。
【0008】
本発明で舗装材として用いる開粒度タイプのアスファルト混合物は、仕上がり時の空隙率が15%以上のものである。この混合物は少なくとも骨材、結合材を含有する混合物であり、しかも結合材が軟化状態を維持していることを要する。これらの要件を満足しない舗装材では、接着材として用いるアスファルト乳剤との強固な付着をはじめ、本発明の優れた効果を奏し得ない。
開粒度タイプのアスファルト混合物に用いる骨材は、砕石や砂利などが粗骨材、天然砂やスクリーニングスなどの細骨材とで通常構成される。骨材の最大粒径は5〜20mmの範囲とすることが好ましく、13mm以下とすることがより望ましい。
【0009】
開粒度タイプのアスファルト混合物の結合材としては、日本道路協会発行のアスファルト舗装要綱に記載されているような舗装用アスファルトが使用される。たとえばストレートアスファルトの他、混合物の飛散や流動の防止、結合材のダレ防止のため、ゴムやエラストマーで改質した改質I型、改質II型、あるいは60℃粘度、タフネス・テナシティなどを改良した高粘度改質アスファルトなどが用いられる。結合材の添加量は、骨材および充填材の重量に対して、3.0〜6.0wt%程度の割合で配合される。
【0010】
本発明の目的を達成するためには、開粒度タイプのアスファルト混合物を締固めて得られる舗装体の空隙率が15%以上、より好ましくは20%以上とすることを要する。したがって、開粒度タイプのアスファルト混合物の骨材配合は、充填材を含めた合成粒度における2.36mmふるい通過分を35wt%以下、好ましくは25wt%以下、より好ましくは10〜20wt%の範囲とすることが望ましい。
【0011】
表面仕上げ層の厚さは、本発明の目的を達成するため、舗装材を構成する骨材の最大粒径の2.5倍以下となるように敷き均しを制御する。
従来技術においては、薄層で開粒度アスファルト混合物を敷き均すとひきずりを生じ、施工が極めて困難であるとともに、たとえ敷き均しても路面との接着力が弱く、施工後の骨材の飛散など供用性に著しく劣っていた。
本発明によれば、接着材を多量に散布直後に、舗装材である開粒度アスファルト混合物を敷き均す構成であるため、路面と舗装材の付着力に優れ、薄層での施工を可能としている。しかもアスファルト乳剤の濃度を高め、加熱することで、乳剤の分解を促進でき、舗装材の定着性を向上している。さらに液状状態のアスファルト乳剤は乳剤中の水分が舗装材との接触によって沸騰し、その際乳剤中のアスファルトが上昇して、混合物内に浸透し、舗装材中の骨材を被覆し液状状態にあるアスファルトと一体的に付着する結果、路面と舗装材中の骨材の付着面積が増大し、強固な付着力が得られる。
【0012】
上記の一連の作業は、舗装材の敷設装置の進行方向前方に接着材の散布装置を一体的に配置した装置を用いその上に舗装材を連続的に敷いて、接着材を散布しつつ均すことによって行われる。
本発明ではかくして施工された極めて薄い舗装体の空隙に充填材を注入固化させる。充填材としては注入時液状で固化して舗装体に機能性を付与しうる適宜の充填材を用いることができる。具体例としてはセメント、イオウ、エポキシ樹脂等の剛性材料やウレタン、シリコン、アクリル、ゴム、スポンジ、クレイ等の弾性材料がある
充填材の充填方法は上記した剛性材料や弾性材料等を適宜セメントスラリー、アスファルト乳剤スラリー、樹脂スラリー等の形で充填するのが一般的だが、粉状体を水で流し込む方法等も用いうる。流し込む材料の粘度はフロー値(Pロート法)で10〜30秒が好ましい。
【0013】
本発明の開粒度タイプの舗装体は舗装体下部路面上に接着材の層ができており、注入したポリマーセメントミルク等の流し込み分が下層にまで浸透することがなく、浸透量の把握が容易である。この接着材は高付着性であるため、母体アスファルト混合物を薄層で敷設でき従来の全浸透型のように厚層にする必要がない。従来は厚層でしか施工できなかったため、充填材を注入するのに開粒度アスファルト混合物が冷却するまで待たなければならなかったが、本発明の開粒度タイプのアスファルト混合物は薄層であるため冷却が早く、温度に敏感な充填材でも注入できる。
また、薄層であるため、粘度が高い充填材でも充填が可能である。
薄層での施工が可能なことから、ウレタン等の高価な弾性樹脂を使用する場合でも充填量も少なくて済み、高付着性と併せて、経済的に凍結抑制効果、低騒音効果等の充填材の特性に準じた表面機能が得られる。
例えば、本発明の開粒度タイプの舗装体の空隙にクレイ系の材料を注入充填したものは適度なクッション性をもった自然な感触の舗装が得られる。
【0014】
【実施例】
舗装材の敷設装置の進行方向前方に接着材の散布装置を一体的に配置した自走式舗装装置を用い、約70℃に加熱したエラストマー改質アスファルト乳剤を0.7リットル/m2 散布すると共に、連続的にその上に表1に示す開粒度タイプのアスファルト混合物を加熱下に敷き均した。
Figure 0004157172
得られた厚さ25mm、空隙率20%の開粒度アスファルト混合物に、弾性材料のウレタン樹脂スラリーを注入充填した。
このウレタン樹脂注入充填により仕上がった薄層の舗装体は冬期、舗装体表面にアイスバーンが形成しても、氷とウレタン樹脂の付着力が弱いこと、また骨材と充填材であるウレタンの弾性の違いにより氷が割れやすく、走行車両により、氷が舗装面から容易に剥離し、良好な凍結抑制効果が得られた。

Claims (3)

  1. 路面上に液状の接着材を蒸発残留分で0.3〜1.2kg/m散布して接着材層を形成し、その上に舗装材を敷き均し、表面仕上げ層の施工を行うに際し、これら一連の作業を舗装材の敷設装置の進行方向前方に接着材の散布装置を一体的に配置した装置を用いて連続的に行うとともに、前記接着材として軟化点が50℃以上のアスファルト乳剤を用い、前記舗装材として5〜20mmの範囲に最大粒径をもつ骨材を含有し仕上がり時の空隙率が15%以上の開粒度タイプの加熱アスファルト混合物を用い、この混合物が軟化状態にあるうちにこれを前記接着材が液状ないし軟化状態を維持している間に敷き均し、かつその表面仕上げ層の仕上がり厚さが3cm未満で前記舗装材を構成する前記骨材の最大粒径の2.5倍以内となるように敷き均しを制御し、次いでかくして仕上げた薄層のアスファルト表面仕上げ層の空隙に、注入時に液状を呈する充填材を表面から注入し接着材層まで充填し固化せしめることを特徴とする充填式表層仕上げ工法。
  2. 前記充填材として、剛性材料を用いる請求項1記載の方法。
  3. 前記充填材として、弾性材料を用いる請求項1記載の方法。
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