JP4156237B2 - フィルタシガレットの通気特性安定化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チップペーパ片の微細な穿孔からフィルタに空気を導入して所望のダイリューション特性を得ているフィルタシガレットの製造技術に関し、特に、その穿孔からフィルタへの空気流入量の割合を安定化させるためのフィルタシガレットの通気特性安定化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のフィルタシガレットはその喫味に関し、特にフィルタ部分からの空気導入量に大きく依存してダイリューション特性が決定される。つまり、ダイリューションの度合が高いほどシガレットの喫味はより軽くなり、逆にダイリューションの度合が低いほどその喫味はより強調される。このため、フィルタシガレット製品の安定した品質管理を実現するためには、フィルタシガレット全体の通気量に占めるフィルタ部分からの空気流入量の割合(以下、「空気流入割合」と称する。)を安定化させることが求められる。
【0003】
この空気流入割合に製品毎の変動が生じる要因としては例えば、個々の製品でフィルタチップの外周とチップペーパ片との間隙(以下、「チップ円周差」と称する場合がある。)が異なっており、製造された全ての製品間では上記間隙に相当なばらつきがあるということが挙げられる。具体的には、ある製品につき、そのフィルタチップ外周へのチップペーパ片の巻き付け具合がより緊密であれば、フィルタチップ外周とチップペーパ片との間隙が縮小して穿孔での通気抵抗は大きくなり、その分、フィルタ部分の空気流入割合は低下することになる。これに対し、チップペーパ片の巻き付け具合がより緩やかであれば、フィルタチップ外周とチップペーパ片との間隙が拡大して穿孔での通気抵抗は小さくなり、その分、空気流入割合は増大する傾向にあるということができる。
【0004】
この点、従来からフィルタ装着機においてチップペーパ片をシガレット及びフィルタプラグに巻き付ける際、その過程でシガレット及びフィルタプラグの転動にチップペーパ片を安定して追従させることにより、チップペーパ片の巻き付け不良を防止する技術が例えば、特開平5−268928号公報や実公平7−45200号公報等に開示されている。これら公知の技術は何れも、チップペーパ片の巻き付けの前にチップペーパ片の糊を予備的に乾燥させておくことにより、糊の初期接着性を高めてチップペーパ片の安定した巻き付けを促進するものと認められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、チップペーパのような紙材料品はそれ自身の乾燥に伴い、水分の低下に応じて繊維を収縮させる材料特性を有しており、その特性は材料中の水分低下量が大きいほど繊維収縮量は増大する傾向を示す。このためフィルタシガレットの製造にあたり、材料品であるチップペーパのウェブの水分が不均一であると、そのウェブから切断したチップペーパ片をフィルタシガレットの半製品に巻き付けた後の糊を乾燥させる過程では、チップペーパ片の収縮する度合(収縮率)もまた製品毎に不均一となる。このようなチップペーパ片の収縮率のばらつきは、上述したチップ円周差を製品毎に不規則に変動させ、その穿孔における通気抵抗を不均一化させる。従って、単にフィルタシガレットの製造過程でチップペーパ片の巻き付け不良を防止しているだけでは、フィルタにおける空気流入割合の安定化を完全に達成することはできない。
【0006】
この点、フィルタシガレットの製造に関し、材料品であるチップペーパのウェブをロールの状態で全て同一の水分に一貫して維持管理しておき、上述した糊の乾燥段階での収縮率をある程度の範囲内に収めることも考えられる。しかしながら、チップペーパのウェブはその製紙工場や印刷工場及びたばこ製造工場毎に湿度や温度等の保存条件が異なるし、その水分は世界中の国や地域の違い、あるいは、各国や地域毎にその季節や天候の変化等の外的要因にも大きく影響を受けるため、既存設備における通常の環境条件の下で、全ての材料品をロールの状態から同一の水分条件に保持しておくことは技術的にも極めて困難である。
【0007】
本発明は多くの課題を解決するためになされた。そのうち一つの課題は、特に大規模な新しい設備を設けることなく、高品質なフィルタシガレットの製造を実現することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のフィルタシガレットの通気特性安定化装置は例えば、フィルタシガレットの製造設備を改作することによってその一態様を実現することができる。具体的には、チップペーパのウェブをフィルタ装着機の巻き付けセクションに供給する過程で、そのウェブを強制的に乾燥させておくことにより、シガレット及びフィルタプラグに巻き付けられるべきチップペーパ片の水分を絶対的な乾燥領域にて、即ち、フィルタシガレットの製造環境下にてウエブに含まれる通常領域内の水分よりも少なくして安定させるものである。ただし、本発明の態様はシガレット製造設備の改作によるものだけに限定されず、全ての構成が別途新規に製造される態様により実現されてもよい。
【0009】
上述のように、材料品のウェブはそのときの環境条件の違いによって水分が異なり、フィルタシガレットの製造を実施すべき国や地域毎にそれぞれの環境に適応して通常時の分布領域が決定される。例えば日本国内では通常、年間を通してウェブの水分は平均的に約4%よりも高い領域に分布しているといえる。その他の国や地域にあっても、例えば乾燥した気候のもとではウェブの水分の分布領域は相対的に低く、逆に多湿な気候のもとではその分布領域は相対的に高いといえるであろう。
【0010】
このように、ウェブ水分の分布領域にはその環境条件の差違によって相対的に高い低いの差はあるとしても、それぞれの国や地域の環境条件に応じて分布領域の下限はあるといえる。そこで本発明では材料品のウェブを予備乾燥させ、予めその水分の分布を絶対的な乾燥領域、つまり、通常よりも低い領域まで引き下げておくことにより、製造されたフィルタシガレット製品に対する材料水分のばらつきの影響を取り除くものである。
【0011】
例えば高速運転に適したフィルタ装着機では、たばこ巻上機から受け取った倍長シガレットを二分し、その間にフィルタチップ2本分の長さを有するフィルタプラグを直列に連ねてダブルフィルタシガレットの半製品とし、この半製品を巻き付けセクションのローリングドラムに供給する。ローリングドラムでは、半製品を一体的に転動させる過程でその外周にチップペーパ片を巻き付け、ダブルフィルタシガレットに加工する。チップペーパのウェブはロールから連続的に繰り出されており、このウェブは供給経路を通じて案内される過程で、その一方の面に所定のパターンで糊を塗布される。この後、ウェブはチップペーパ片毎に切断されて巻き付けセクションに供給され、フィルタプラグ及びその両側のシガレットの一端部を包み込むようにして巻き付けられ、そして更に糊の乾燥処理を受ける。
【0012】
本発明では予め、チップペーパ片の水分を絶対的な乾燥領域、つまり、その通常水分の分布領域よりも低い領域にて安定させているので、チップペーパ片を巻き付けた後に糊を乾燥させるとき、製品毎のチップペーパ片の水分変化量は安定する。このためチップペーパ片の収縮率が一定の範囲内で安定化し、製品毎にフィルタチップの外周とチップペーパ片との間隙が不規則に変動することはない。このような製品におけるチップ円周差の均一化は、その穿孔での通気抵抗のばらつきを抑え、フィルタへの空気流入割合を安定化させる。
【0013】
本発明において、ウェブの乾燥手段としての具体的な構成には、ウェブの供給経路の途中に配置されてウェブを加熱するヒータと、このヒータの加熱温度を制御する制御ユニットとを含むことができる。この場合、ヒータはウェブの繰り出しに伴い、その加熱面に接触して通過するウェブを加熱し、ウェブの水分を絶対的な乾燥領域まで低下させる。また制御ユニットは、走行するウェブとヒータの加熱面との接触だけでウェブの水分を絶対的な乾燥領域まで低下させるのに必要な加熱量を設定し、ヒータの加熱温度を制御する。ただし、ヒータは一つの例であり、乾燥手段がヒータに限定されるものではない。
【0014】
絶対的な乾燥領域までウェブの水分を低下させるためには、ヒータの加熱温度は200℃以上の温度域にて制御されていることが好ましい。この場合、実際のフィルタ装着機上でのウェブの繰り出しに伴い、その予備乾燥のために充分な熱量がヒータから与えられる。
ただし、ヒータの加熱温度はチップペーパの走行速度との関係でその設定を変えることができる。具体的には、チップペーパの走行速度がより低速であればヒータの加熱温度を相対的に低く設定し、逆により高速であれば加熱温度を相対的に高く設定する。つまり、走行しているウェブに対して、その水分を絶対的な乾燥領域まで低下させるのに必要な熱量がヒータから伝達されればよいのであり、常にヒータの加熱温度が200℃以上である必要はない。
【0015】
更に、本発明はウェブに対してヒータを相対的に近接及び遠離方向に移動させる手段を備えることにより、ウェブの繰り出し停止に伴い、ヒータの加熱面とウェブとの間に間隔を確保してウェブの過熱による損傷を未然に防止することができる。
本発明の好ましい一態様では、上述した乾燥手段の構成には少なくともヒータの手前及びヒータより先方の何れか一方の位置でウェブの水分を検出して検出信号を出力する水分センサを更に含む。また上述の制御ユニットは、水分センサからの検出信号に基づいてヒータの加熱温度を制御する。この場合、検出したウェブの水分条件に応じて加熱温度が動的に制御されることにより、乾燥後の水分がより安定する。
【0016】
上述の水分センサによりヒータよりも手前の位置でウェブの水分を検出する場合、その検出信号に基づくヒータ加熱温度の制御は比例制御(オープンループ)となる。この場合、制御ユニットは検出した水分に基づいてウェブを乾燥させるのに必要な加熱量を比例的に算出し、そのヒータ加熱温度を決定する。
一方、ヒータよりも先方の位置でウェブの水分を検出する場合は、その検出信号に基づいてヒータ加熱温度がフィードバック制御される。この場合、制御ユニットは検出した水分が乾燥領域に保持されるべくヒータ加熱温度を増減補正する。また、ヒータの手前及び先方の両方の位置で水分を検出していれば、制御ユニットはこれら2つの検出信号に基づいて比例及びフィードバック制御の何れをも実行することができる。ただし、本発明ではこれら水分センサおよび制御ユニットを常に使用する必要はない。
【0017】
例えば、ある国又は地域の環境条件に応じて、絶対的な乾燥領域はチップペーパ片の水分でみて4%以下に設定される場合がある。すなわち、本発明の通気特性安定化装置によってウェブの予備乾燥を行うと、乾燥前において相対的に高い水分を有していたウェブほど大幅に水分が低下し、一方、乾燥前において低い水分を有していたウェブほど水分の低下は少ない。このため、ウェブが予備乾燥されてその水分が4%以下の領域まで低下すると、ウェブ全体でみた水分の分布領域は乾燥前よりも圧縮されて狭くなり、ウェブの水分は4%以下の領域内で安定した値になる。また、予備乾燥ではなくフィルタ装着機においてチップペーパ片の巻き付け後に糊を乾燥させるとき、チップペーパ片の水分量の変化がその収縮率に与える影響は、その乾燥前おいて高い水分であったときほど大きく、一方、低い水分であったときほど小さい。このためチップペーパ片の巻き付け前において、ウェブの水分を4%以下の低い水分領域まで引き下げておけば、巻き付け後におけるチップペーパ片の収縮率のばらつき範囲が縮小されて狭くなり、製品毎のチップ円周差が安定化する。ただし、ウェブの水分が全ての国や地域において4%以下の領域にまで引き下げられる必要はなく、本発明が実施される国や地域毎にその環境条件に合わせて絶対的な乾燥領域を設定するものとする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のフィルタシガレットの通気特性安定化装置は例えば、たばこ巻上機に接続されるフィルタアタッチメントを改作することにより最良の形態を実現することができる。ただし、本発明の全ての構成要素を新規に製造することも可能である。
【0019】
第1図を参照すると、フィルタアタッチメントはその巻き付けセクションにローリング(ヒータ)ドラム2を有し、このローリングドラム2に隣接して搬送ドラム4が配置されている。搬送ドラム4はその外周にシガレット及びフィルタプラグを直列に連ねた状態で保持している。この例ではフィルタチップの2本分の長さを有した1本のフィルタプラグの両側にそれぞれ1本ずつシガレットが連なった状態にあり、これらシガレット及びフィルタプラグからなるダブルフィルタシガレットの半製品が形成されている。
【0020】
搬送ドラム4の下方にはコークドラム6が隣接して配置されており、このコークドラム6はその外周面にチップペーパ片Cを吸引保持したまま回転し、個々のチップペーパ片Cを搬送ドラム4上のシガレット及びフィルタプラグに供給する。
チップペーパ片Cは長尺なチップペーパのウェブWを所定長さ毎に切断して得られる。具体的には、コークドラム6に近接して刃付きドラム8が配置されており、コークドラム6の外周面上に吸引保持されたウェブWは、回転するコークナイフ(図示されていない)により個々のチップペーパ片C毎に切断される。
【0021】
チップペーパのウェブWには、コークドラム6の手前でその一方の面に糊が塗布される。糊ローラ10はその下部分を糊液中に浸した状態で回転しており、その外周面に付着した糊は、相接して回転するトランスミッションローラ12の外周面に所定の層厚で移し変えられる。トランスミッションローラ12はウェブWの通過に伴いその一方の面に接触しながら回転し、所定の塗布パターンに従って糊を塗布する。具体的には、後述するチップペーパの穿孔を糊で塞がないようにその穿孔の周囲を避けて糊が塗布される。一方、各チップペーパ片Cのラップ代に相当する部分には糊が塗布される。
【0022】
ウェブWの供給経路は、図示しないウェブロールから巻き付けセクションまでの間に確保されている。供給経路にはウェブWの繰り出しローラ14が設置されており、ウェブWは多数のガイドローラ16等により案内されて供給経路を通じて繰り出され、更に上述したコークドラム6に向けて供給される。
ここで、供給経路の途中には、例えば繰り出しローラ14の手前の位置に乾燥ユニット20が配置されている。乾燥ユニット20はヒータブロック22を有しており、このヒータブロック22は供給経路に沿って所定の区間を延びている。また、ヒータブロック22はウェブWの幅方向に奥行きを有し、その加熱面をウェブWの幅全域に亘って接触させている。
【0023】
ヒータブロック22はその上面を支持プレート24により支持されており、この支持プレート24はヒータブロック22から突出し、供給経路に沿ってその先方に向けて延びている。支持プレート24の突出端部にはブラケット26を介してガイドローラ28が取り付けられており、このガイドローラ28はヒータブロック22の先方の位置でウェブWを案内している。更に支持プレート24は、ヒータブロック22とガイドローラ28との間の部位にて図示しない機体フレームに支持されている。具体的には、支持プレート24はこの部位にシャフト30を有し、このシャフト30は供給経路の横断方向に延びている。また、シャフト30は図示しない軸受を介して機体フレームに支持されており、それ故、支持プレート24はシャフト30を中心として、機体フレームに対して回動自在となっている。
【0024】
支持プレート24は更に、上述した部位から下方に延びるレバー32を有しており、このレバー32はその基端がシャフト30に固着して取り付けられている。ウェブWの供給経路を挟んでヒータブロック22の下方にはエアシリンダ34が水平姿勢で配置されており、そのピストンロッドは上述したレバー32の下端部にピン接合されている。エアシリンダ34は図中に実線で示される状態でピストンロッドを収縮させており、この状態で、ヒータブロック22を上述したウェブWとの接触位置に保持している。一方、エアシリンダ34はそのピストンロッドを伸長させたとき、シャフト30を中心としてレバー32を供給経路の上流側に旋回させ、図中に二点鎖線で示したように支持プレート24をウェブWに対して傾斜した姿勢に変位させることができる。これにより、ヒータブロック22は供給経路に対して上方に遠離する。一方、ウェブWは直前のガイドローラ16と支持プレート24のガイドローラ28との間にて下方に変位し、ヒータブロック22から離れる。
【0025】
乾燥ユニット20には、ヒータブロック22の加熱温度を制御するための制御ユニット、つまり、コントローラ40が接続されている。この一形態を例えば日本国内で実施する場合、材料品の状態でウェブWの元の水分が通常の分布領域にあれば、ヒータブロック22の加熱温度を200℃以上の高温域に設定することにより、その水分を4%以下にまで充分に低下させることができる。ただし、ウェブWの走行速度はフィルタアタッチメントの運転速度によって異なるため、ヒータブロック22の加熱温度はウェブWの走行速度との関係に基づいて適切に設定することが好ましい。
【0026】
なお、本発明が実施される国や地域、また、ヒータブロック22の加熱温度や具体的な水分の値は特に限定されるものではない。また、日本国外において同一の加熱温度を設定してもウェブWの水分を4%以下、あるいは、これよりも低い領域にまで低下させることは可能である。
更に、この一形態ではウェブWの水分をより安定させるため、上述したコントローラ40に対してウェブWの目標水分を任意に入力可能としており、コントローラ40はその目標水分に応じてヒータブロック22の加熱温度を制御するための制御システムをも有している。すなわち、供給経路のヒータブロック22よりも手前の位置と先方の位置にはそれぞれ、水分センサ42,44が配置されており、これら水分センサ42,44は繰り出されるウェブWの水分を検出し、その検出信号をコントローラ40に対して出力する。
【0027】
ここでコントローラ40は、その処理する検出信号の選択により、ヒータブロック22の加熱温度を比例制御(オープンループ)及びフィードバック制御の何れの形態でも制御することができる。具体的には、ヒータブロック22より手前の水分センサ42からの検出信号を選択すれば、コントローラ40は比例制御を実行する。この場合、予めコントローラ40に対して目標水分を設定しておけば、コントローラ40は検出した水分に基づき目標水分までウェブWを乾燥させるために必要な加熱量を比例的に算出し、この算出した加熱量に基づいてヒータブロック22の加熱温度を決定する。
【0028】
一方、ヒータブロック22より先方の水分センサ44からの検出信号を選択する場合、コントローラ40はフィードバック制御を実行する。この場合、コントローラ40は目標水分とフィードバック信号との間の偏差に基づいて制御量を決定し、ヒータブロック22の加熱温度を増減する。
また、コントローラ40は水分センサ42,44の両方の検出信号を選択することにより、上述した比例制御とフィードバック制御とを併せて実行することができる。なお、何れの形態においても、ウェブWの乾燥後における水分を所定の目標水分に安定させることができる。ただし、コントローラ40による制御手法は上記の比例制御やフィードバック制御だけに限定されるものではない。
【0029】
コントローラ40は更に、上述したエアシリンダ34の作動をも制御する機能を有している。すなわち、エアシリンダ34には図示しない空圧管路が接続されており、その圧空の給排方向はソレノイドバルブにより切り換え可能となっている。コントローラ40はソレノイドバルブに対する作動信号を出力することにより、上述したエアシリンダ34の作動、つまり、ヒータブロック22とウェブWの接近及び遠離の動作を制御することができる。
【0030】
具体的には、コントローラ40に対してたばこ巻上機やフィルタアタッチメントの運転停止信号が供給された場合、コントローラ40はエアシリンダ34を作動させてヒータブロック22とウェブWとを互いに引き離す。この場合、ウェブWの走行停止に伴うウェブWのヒータブロック22への焦げ付きや、それ自身の焼け焦げ等の過熱による損傷が未然に防止される。
【0031】
上述した巻き付けセクションでは、ウェブWの先頭から切り離されたチップペーパ片Cが搬送ドラム4上のダブルフィルタシガレットの半製品に最も接近する位置でこれに貼り付き、この状態で半製品とともにローリングドラム2まで搬送される。ローリングドラム2では、半製品のフィルタプラグ及びシガレットが転動部材46との接触により一体的に転動し、この転動の過程でチップペーパ片Cが巻き付けられてダブルフィルタシガレットが得られる。またチップペーパ片Cは、糊乾燥ヒータ48及びローリングドラム2からの加熱を受けてその糊を乾燥される。
【0032】
以下に、実際にシガレット製造設備を稼働させてフィルタシガレットの製造を行うにあたり、本発明の一形態を使用した場合の実施例をいくつか説明する。
以下に挙げる各実施例においては、既存のたばこ巻上機とともに第1図のフィルタアタッチメントを使用して、例えば毎分4,000本のフィルタシガレットを製造する。また各実施例では、第2図に示されているようにチップペーパのウェブWには予め、その長手方向に微細な穿孔Pの列が形成されているものを使用し、これによりチップペーパ片Cが巻き付けられたときは、フィルタプラグFPの外周にリング状の穿孔列が現れる。なお、予め穿孔Pが形成されていないウェブWを使用することも可能であり、この場合、例えばチップペーパ片Cの巻き付け後にレーザ穿孔装置等を用いて所望の位置に穿孔を形成したり、或いはウェブWの繰り出しの過程で穿孔を形成したりすることもできる。従って、ウェブWやチップペーパ片Cに穿孔を形成する方法は特に限定されていない。
【0033】
また、上述したウェブWへの糊の塗布は、切断するべきチップペーパ片C毎に所定のパターンで行われており、この際、前後端の巻き始め及びその巻き終まいのラップ領域を除き、穿孔Pの周囲を避けて糊が塗布されている。従って、後述する各実施例では、チップペーパ片Cにおいて穿孔Pの周囲における糊の水分の影響を考慮する必要はない。
:ウェブの予備乾燥
フィルタアタッチメントの稼働に伴い上述した乾燥ユニット20を使用し、ウェブに糊を塗布する前の段階でウェブを予備乾燥させる。このとき、ヒータブロック22の加熱温度を200℃以上の高温域に設定し、第1図に示されるように、走行するウェブWの一方の面に対してヒータブロック22の加熱面を接触させる。
【0034】
第3図は、ウェブの予備乾燥前の元水分Aq0と乾燥ユニット20による予備乾燥後の水分Aqdとの関係を示している。なお図中、二点鎖線で示されている分布はヒータブロック22を使用しない場合の水分を示し、それ故、この分布には乾燥の前後で水分の変化はない(Aqd=Aq0)。従って、予備乾燥によるウェブの水分の低下は、上述した二点鎖線で示される分布から実線で示される分布への変位により表される。
【0035】
第3図から明らかなように、ヒータブロック22からの加熱によりウェブが乾燥され、その水分は乾燥前の全ての分布領域について低下している。ここで、予備乾燥前の水分が高い領域にあるほど水分の変化量(=Aq0−Aqd)が大きく、低い領域にあるほど変化量が小さくなる(ΔAq1<ΔAq2)。このような水分の変化特性に基づき、ウェブの予備乾燥後における水分の分布領域は予備乾燥前に比べて圧縮されることが理解される。
【0036】
また、予備乾燥後にウェブの水分は、その通常水分よりも低い領域である4%以下の乾燥領域まで低下されており、この乾燥領域で水分の分布が安定していることが確認される。
:フィルタ空気流入割合の測定
第4図はフィルタシガレットの通気特性を示しており、その全通気量に占めるフィルタからの空気流入割合Vfは、シガレット部分の先端開口からの流入量をIt、シガレット部分の巻紙を通じて巻内部に導入される流入量をIp及びチップペーパ片Cの穿孔Pを通じてフィルタ部分に導入される流入量をIfとすると、
Vf=If/(It+Ip+If)
又はVf=If/(It+Ip+If)×100 (%)
で表される。この空気流入割合Vfの測定は例えば、フィルタアタッチメントにおいてフィルタシガレットの通気検査を行うインスペクションドラムにて、個々の製品毎に行うことができる。
【0037】
第5図は、測定により得られた空気流入割合Vfとウェブの水分との関係を示している。第5図から明らかなように、フィルタシガレットの製品において、そのフィルタ空気流入割合Vfは材料品であるウェブの水分に依存して高くなったり低くなったりして変動する特性を示し、具体的には、空気流入割合Vfはウェブの水分が高い領域ほど低くなるといえる。更に、水分の変化に対する空気流入割合Vfの変化の絶対値(=|ΔVf/ΔAq|)は高水分域で大きく、一方、低水分域では小さくなる。
【0038】
日本国内における実施例の場合、この種のウェブの吸湿特性上、その水分は通常の環境条件で約4%よりも高い領域に分布している。例えばウェブのロールでは、その内周から外周に向かうほど水分が高くなり、ロール1つあたりのウェブの水分は約4%〜7%の範囲内での分布を示す。
これに対して本実施例では、乾燥ユニット20の使用によりウェブが予備乾燥されることにより、水分の分布が通常の領域Nから強制的に引き下げられ、絶対的な乾燥領域D内で安定した分布を示すものとなる。この場合、ウェブにおける水分の低下に応じて空気流入割合Vfは高くなる。ウェブの予備乾燥は、その水分の分布を乾燥領域Dの範囲内に圧縮することにより、上述した水分の変化に対する空気流入割合Vfの変動幅を縮小する。更に、乾燥領域Dでは通常の領域Nに比較して、水分の変化に対する空気流入割合Vfの変化が少ない(ΔVfd<ΔVfn)ことから、この乾燥領域Dでは空気流入割合Vfに対するウェブの水分の影響が極めて小さくなる。
:実施例と比較例との対比
上述した予備乾燥による効果は、以下に示す実施例と比較例との具体的な対比によって一層明らかとなる。
【0039】
第6図では、ウェブを予備乾燥する前の元水分とフィルタ空気流入割合Vfとの関係を実施例と比較例との対比により示している。具体的には、ウェブの元水分を同一の条件としたとき、予備乾燥の有無により実施例と比較例とを区別すると、それぞれ複数の水分条件(A1〜A3)について空気流入割合Vfを測定した結果から第6図の関係を得ることができる。
【0040】
実施例の結果に基づく元水分と空気流入割合Vfとの関係は、第6図中に実線で表され、一方、比較例の結果に基づく関係は二点鎖線で表される。これら実施例と比較例との対比から明らかなように、実施例ではウェブの予備乾燥により空気流入割合Vfの平均値が高くなるとともに、水分のばらつき(A1〜A3)に対する空気流入割合Vfの変動が所定の範囲ΔVfd内(例えば3%以内)に抑えられている。これに対して比較例では、空気流入割合Vfの変動範囲ΔVfn(例えば10%以上)が実施例の場合よりも大きい。
【0041】
次に、1つのロール内でみたウェブの水分のばらつきが空気流入割合Vfに及ぼす影響について、実施例と比較例との対比を行う。
第7図では、1つのロール内での水分のばらつきをロール中心からの径との関係により示し、更に、空気流入割合Vfの変動とロール中心からの径との関係を実施例と比較例との対比により示している。図中、ロール中心からの径はウェブの繰り出し方向でみて、その先頭から最後尾までの間における途中の位置に相当している。具体的には、ロール中心からの径が小さいほどその位置はロールの内周、つまり、ウェブの繰り出し方向でみて後尾に近づき、一方、ロール中心からの径が大きいほどその位置は先頭に近づく。また上述のように、ウェブの水分(一点鎖線で示す)はロールの外周では高く、内周に向かうほど低下する傾向にある。
【0042】
ここで、ロール中心からの径の条件を同一として、予備乾燥の有無により実施例と比較例とを区別すると、それぞれ複数のロール中心からの径(R1〜R6)について空気流入割合Vfを測定した結果から第7図の関係を得ることができる。
第7図中、実施例の結果に基づくロール中心からの径と空気流入割合Vfとの関係は実線で表され、一方、比較例の結果に基づく関係は二点鎖線で表されている。これら実施例と比較例との対比から明らかなように、実施例ではウェブの予備乾燥により空気流入割合Vfの平均値が大きくなるとともに、1つのロール内ではウェブの全長に亘って(R1〜R6)空気流入割合Vfの変動が抑えられ、その値が安定していることが理解される。これに対し、比較例では1つのロール内で空気流入割合Vfが大きく変動しており、その値はウェブの先頭(外周位置)では低く、後尾では高くなる。
【0043】
更に、シガレット製造設備の連続運転を通じて、製品の小売り単位(1パック分)である20本のグループ毎にこれらの空気流入割合Vfの平均値を抽出し、その変動から実施例と比較例との対比を行う。ただし、フィルタシガレットは常に20本毎のグループで包装されるものではなく、また、フィルタシガレットの小売り単位が常に1パックであるとは限らない。
【0044】
第8図及び第9図では、実施例及び比較例についてそれぞれ抽出した空気流入割合Vfの平均値を発生率の分布により示している。これまでと同様に、実施例ではウェブの予備乾燥を行っており、比較例ではその予備乾燥を行っていない。なお図中に区分けした領域は、上述したウェブのロール中心からの径の違いにより4つに区分したものである。
【0045】
第8図に示す実施例の場合、連続運転を通じて抽出した値の相加平均は49.5%であり、標準偏差σは1.47%であった。一方、第9図に示す比較例では相加平均が49.9%であり、標準偏差σは2.37%であった。
以上の結果から、製品20本毎の空気流入割合Vfの平均値の変動について実施例と比較例とを対比すると、実施例では標準偏差σで約38%の改善効果がみられる。これにより、実際の小売り製品のグループを互いに比較してみても空気流入割合Vfの平均値が安定していることが確認される。
【0046】
第10図では、実施例及び比較例毎に製品20本毎の空気流入割合Vfの平均値の変動を時系列で示している。また、この間に抽出したデータには、それぞれ時系列に沿ってデータ番号が付されている。この連続運転の間に、例えば12個のロールが順次接続されてフィルタシガレットの製造に使用されており、図中のデータ番号の奇数は、1つのロールとその次のロールとの間でウェブが相互に接続された直後の値を示している。
【0047】
第10図中、実施例についてのデータは実線で示され、比較例についてのデータは二点鎖線で示されている。なお、第10図ではこれらデータ間の異同をより明らかにするため、実施例と比較例とでは空気流入割合Vfのスケールを互いにずらして示している。
上述したように1つのロール内でみたウェブの水分は、その外周に向かうほど高い傾向にある(第7図参照)。このため比較例の場合は、図中に楕円でマーキングした例のように、ウェブを接続した直後に空気流入割合Vfの平均値が大きく落ち込むことがあり、また全てのデータを通して空気流入割合Vfの平均値の高低変動が大きい(σ=2.4)。これに対して実施例では、比較例のようなウェブを接続した直後に空気流入割合Vfの平均値の落ち込みがなく、また全てのデータを通して高低変動が小さく抑えられている(σ=1.5)。
【0048】
以上は、20本毎の製品グループ間でみて、実施例と比較例とで空気流入割合Vfの平均値の変動を比較した結果であるが、更に、個々の製品グループ内(製品20本中)における空気流入割合Vfのばらつきσwについての比較を行う。
第11図では、実施例及び比較例についてそれぞれ、製品20本中の空気流入割合Vfの値とそのばらつきσwを示している。ばらつきのデータを比較例についての線形回帰(二点鎖線)と実施例についての線形回帰(実線)とで比較した場合、実施例の方が全ての空気流入割合Vfについて20本中のばらつきσwが小さいといえる。なお、フィルタシガレットの製造にあたり、空気流入割合Vfの目標値として設定されている規格値VfSでみれば、比較例のばらつきσwが3.40であるのに対して実施例のばらつきσwは3.04であり、その差(=0.36)分だけ実施例の方に改善の効果がみられる。従って、実際の小売り製品グループ内でみても空気流入割合Vfが安定していることが確認される。
:実施例による効果のまとめ
以上の説明から、乾燥ユニット20を用いて予備乾燥を行った実施例では、空気流入割合Vfの平均値が相対的に高くなるとともに、その値が安定化される。具体的には、空気流入割合Vfに対するウェブの元水分の影響が比較例に比べて大幅に抑制される。また、シガレット製造機の連続運転を通じて、20本毎の空気流入割合Vfの平均値の変動や、その20本中の空気流入割合Vfのばらつきσwが何れも抑えられることが確認される。
:ウェブの予備乾燥による空気流入割合の安定化の検証
既に述べたように、製品において生じるチップ円周差、つまり、フィルタチップ外周とチップペーパ片との間隙の違いがフィルタからの空気流入割合に影響を与えることは知られている。
【0049】
一方、材料品の段階で生じるウェブの水分変動が製品における空気流入割合に影響を及ぼすメカニズムとしては、その水分変動がチップペーパ片の糊付け乾燥時の収縮特性にばらつきを生じる結果、製品毎のチップ円周差の変動を招いているものと考えられる。
本発明の発明者は、上述した水分変動が空気流入割合に影響を及ぼすメカニズムに着眼する一方、その糊付け乾燥の過程でチップペーパ片に一様な収縮特性を与えることにより、チップ円周差の変動を技術的に抑制可能であることを確認している。このような発明者の知見に立脚すれば、予備乾燥による空気流入割合の安定化のメカニズムは以下のように検証される。
【0050】
すなわち、チップペーパ片のもつ収縮特性が、その水分との関係において明らかなものとなれば、ウェブの予備乾燥による水分の安定化がチップペーパ片の収縮特性の安定化に繋がるものと認められる。更に、チップペーパ片の収縮特性と空気流入割合との間に明らかな相関を見出すことができれば、上述した収縮特性の安定化によりチップ円周差の変動を技術的に抑制することで、製品における空気流入割合の安定化を実現するメカニズムもまた立証される。
【0051】
以下に、具体的な検証データの例を挙げて説明する。
先ず第12図は、異なる水分のウェブを実際のフィルタシガレット製造設備においてチップペーパ片毎に切断し、それぞれ同一の条件で糊付け乾燥した場合の収縮率と製品の空気流入割合Vfとをそれぞれ測定した結果を示している。この結果からウェブ又はチップペーパ片の水分とその収縮率との関係及び水分と空気流入割合Vfとの関係を求めると、これら収縮率及び空気流入割合Vfは何れも、ウェブ又はチップペーパ片の水分に対して同様の依存性を有していることが明らかである。
【0052】
更に第13図は、上述の測定結果に基づく収縮率と空気流入割合Vfとの対応を示しており、この対応から収縮率と空気流入割合Vfとの間に明確な相関関係を認めることができる。
以上の検証例から明らかなように、ウェブの水分とチップペーパ片の収縮率との間、また、収縮率と空気流入割合との間には何れも相関があり、この相関関係からウェブの水分が空気流入割合に影響を及ぼすメカニズムが明らかとなった。
【0053】
次に、予備乾燥による空気流入割合の変動抑制効果について説明する。
第14図は、ウェブ又はチップペーパ片の水分とその糊付け乾燥時の収縮率との関係を示している。第14図から明らかなように、水分が高くなるとチップペーパ片の収縮率は増大しており、このとき水分の収縮率に対する影響は、高い水分域ほど大きく、低い水分域では小さいことがわかる。
【0054】
一方、乾燥ユニット20によるウェブの予備乾燥は、その水分を絶対的な乾燥領域にまで引き下げるとともに、この乾燥領域内に分布を圧縮することは上述したとおりである(第3図参照)。第14図でみれば、チップペーパ片の水分が通常の分布領域Nにあるとき、その収縮率は水分との関係から所定の範囲Sn内に規定されている。これに対し、ウェブの予備乾燥によりチップペーパ片の水分が乾燥領域Dまで引き下げられていると、その収縮率は範囲Sd内に規定されることになる。これら収縮率の範囲Sn,Sdを比較した場合、予備乾燥後は水分の分布が圧縮されていること、及び、低水分域では収縮率に対する水分の影響が小さいことが相俟って、予備乾燥後の範囲Sdは予備乾燥前の範囲Snに比較して大幅に縮小されたものとなる。このようなウェブの予備乾燥による収縮率範囲の縮小は、チップペーパ片の巻き付け及び糊付け乾燥の過程でチップペーパ片に一様な収縮特性を与え、製品毎のチップ円周差の変動を抑制するものと認められる。
【0055】
以上の検証データをまとめると、予備乾燥によるウェブの水分の安定化は、その分布を圧縮して空気流入割合に対する影響を抑制する効果と、通常水分よりも低い絶対的な乾燥領域で水分の影響を縮小する効果とを合わせ持ち、これらの相乗効果によって空気流入割合の変動を大幅(従来の1/2以下)に抑制する効果を生じるものと考えられる。
【0056】
なお、上述した各実施例では、水分センサ42,44からの検出信号に基づきヒータブロック22の加熱温度を比例制御又はフィードバック制御、あるいは、これら2つの制御を併用することにより、何れの場合もウェブ又はチップペーパ片の水分を4%以下の乾燥領域にて安定させることができた。ただし、これら水分センサ42,44からの検出信号を用いた比例制御又はフィードバック制御によることなく、単にヒータブロック22の加熱温度を200℃以上の高温域に設定しておくだけで、チップペーパ片Cの水分を4%以下の乾燥領域まで低下させることが可能である。この場合でも、上述したように予備乾燥により水分の分布が圧縮されるので、その水分が乾燥領域にて安定することはいうまでもない。
【0057】
本発明の通気特性安定化装置は、上述した一形態についても変形が可能である。例えば、ウェブの予備乾燥にはヒータブロック22を用いるほか、温風乾燥器や熱線放射器、高周波加熱器等を使用してもよい。また、乾燥ユニット20の配置は、ウェブに糊を塗布する前の繰り出し過程で任意に変更可能である。
ヒータブロック22とウェブとを近接及び遠離方向に移動させる機構は、単にその何れか一方のみを変位させるものでもよいし、この機構の具体的な要素は種々に変形可能である。
【0058】
また、何らかの事情によりシガレット包装機の停止を伴う状況にあっては、フィルタアタッチメントの可変速運転を行う場合がある。この場合、ウェブの走行速度の変化に合わせてヒータブロック22の加熱温度を変更するようにしてもよいし、ウェブの走行速度が極端に低い場合は、ヒータブロック22をウェブから遠離させることもできる。なお、このような制御はヒータブロック22の加熱温度が高温であるため、ウェブの過熱による損傷を防止するために特に有効な手法である。
【0059】
巻き付けセクションの形態は、上述したローリングドラム2と転動部材46とを用いるものだけに限られない。上述したフィルタアタッチメントとは異なるタイプのフィルタアタッチメントは、コークドラムの外周に沿って配置されたローリングプレートを有しており、このローリングプレートの転動ガイド面とコークドラムの外周面との間にダブルフィルタシガレットの半製品のための転動通路が形成される。この場合、巻き付けセクションにおいてローリングドラムは使用されず、チップペーパ片はコークドラムの外周面から剥がれながら半製品に巻き付けられる。
【0060】
また、実施例ではフィルタシガレットの製造速度を毎分4,000本としているが、より高速な運転条件、例えば毎分8,000本又はそれ以上の製造速度での実施についても本発明を適用可能であることはいうまでもない。この場合、製造速度がより高ければ、その分、ヒータブロック22の加熱温度を相対的に高く設定し、逆に製造速度がより低ければ、加熱温度を相対的に低く設定することが好ましい。
【0061】
その他、ウェブの絶対的な乾燥領域は、日本国内における通常の水分の分布領域を基準として設定したものであるが、本発明の実施において国や地域ごとにその環境条件が異なる場合は、その都度、水分の絶対的な乾燥領域を具体的に設定することが好ましい。
本発明のフィルタシガレットの通気特性安定化装置は、フィルタシガレットの製造を通じてフィルタ部分からの空気流入割合を安定化させ、その通気特性に基づく喫味品質が安定化された製品の提供を可能とする。
【0062】
特に、ある国や地域の環境条件に合わせて、ウェブの予備乾燥によりチップペーパ片の水分が4%以下の乾燥領域まで低下されていれば、そこでの通常水分の場合に比較して製品の空気流入割合に対する材料品の水分の影響が2分の1以下に抑制される。
また、本発明のフィルタシガレットの通気特性安定化装置は多くの利点を有する。その一つには、本発明ではウェブの予備乾燥のための構成にヒータ及びその制御ユニットを使用するだけの簡易な構成で空気流入割合の安定化を実現可能であり、大規模な設備を増設することなく既存のシガレット製造機の改作のみで容易に実施が可能であるということが挙げられる。
【0063】
また、予備乾燥のための構成に水分センサを用いてヒータの加熱温度を制御するシステムを更に含むことにより、取り扱うべきウェブの水分変化に応じて適切な作動を確保し、予備乾燥後の水分を確実に安定化させる。特に、比例制御を用いたシステムは、ヒータ加熱温度とウェブの乾燥特性との関係が明らかな場合に好適する。また、フィードバック制御を用いたシステムは、ウェブの乾燥特性が明らかでない場合であっても、その水分変化を動的に補償する。更に、これらを組み合わせたシステムは、取り扱うべきウェブの乾燥特性と実際の応答との誤差を補償する。
【0064】
また、ある国や地域の環境条件に合わせてヒータ加熱温度の設定が200℃以上の高温域にあれば、そこでの通常の水分にあるウェブの水分を絶対的な乾燥領域まで低下させるのに充分な加熱量が得られ、また、水分センサを用いた制御系においても安定した温度制御が実現可能となる。
更に、シガレット製造設備の運転停止時にウェブの過熱損傷を防止する機構を含むものであれば、その停止時にトラブルを生じることなく、スムーズに運転を再開してシガレットの製造を続行することができる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の通気特性安定化装置は、予め、チップペーパ片の水分を絶対的な乾燥領域、つまり、その通常水分の分布領域よりも低い領域にて安定させているので、チップペーパ片を巻き付けた後に糊を乾燥させるとき、製品毎のチップペーパ片の水分変化量は安定する。このためチップペーパ片の収縮率が一定の範囲内で安定化し、製品毎にフィルタチップの外周とチップペーパ片との間隙が不規則に変動することはない。このような製品におけるチップ円周差の均一化は、その穿孔での通気抵抗のばらつきを抑え、フィルタへの空気流入割合を安定化させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 通気特性安定化装置の一形態を概略的に示した図である。
【図2】 チップペーパ片の切断および巻き付けの過程を説明するための図である。
【図3】 予備乾燥の前後におけるウェブの水分変化を表すグラフである。
【図4】 フィルタシガレットの通気特性を説明するための断面図である。
【図5】 ウェブ水分と空気流入割合Vfとの関係を示すグラフである。
【図6】 ウェブの元水分に対する空気流入割合Vfの変動特性の違いを実施例と比較例との対比により示したグラフである。
【図7】 ウェブのロール中心からの径とその水分変化との関係から、1つのロール内での空気流入割合Vfの変動を実施例と比較例との対比により示したグラフである。
【図8】 実施例について製品20本分の空気流入割合Vfの平均値をその発生率の分布で示した図である。
【図9】 実施例と対比されるべき比較例について、製品20本分の空気流入割合Vfの平均値をその発生率の分布で示した図である。
【図10】 実施例及び比較例について、それぞれ製品20本分の空気流入割合Vfの平均値の変動を時系列で表したグラフである。
【図11】 実施例及び比較例について、それぞれ製品20本中の空気流入割合Vfとそのばらつきσwとの関係を示した図である。
【図12】 ウェブ又はチップペーパ片の水分と収縮率及び空気流入割合Vfとの関係を示したグラフである。
【図13】 収縮率と空気流入割合Vfとの相関を表すグラフである。
【図14】 ウェブの予備乾燥による水分変化とその収縮率に与える影響を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
2 ローリングドラム(巻き付けセクション)
6 コークドラム(供給手段)
8 刃付きドラム(供給手段)
10 糊ローラ(供給手段)
12 トランスミッションローラ(供給手段)
14 繰出しローラ(供給手段)
20 乾燥ユニット(乾燥手段)
22 ヒータブロック(ヒータ)
32 レバー(移動手段)
34 エアシリンダ(移動手段)
40 コントローラ(制御ユニット)
42,44 水分センサ
C チップペーパ片
W ウエブ
Claims (8)
- たばこ巻上機から供給されるシガレットにフィルタを装着するため、前記シガレットの一端に前記フィルタを連ねた状態でこれらにチップペーパ片が巻き付けられる巻き付けセクションまで延びる供給経路と、
前記供給経路を通じて長尺なチップペーパのウェブを繰り出しながらその一方の面に糊を塗布し、このウェブを前記チップペーパ片毎に切断して前記巻き付けセクションに供給する供給手段と、
前記供給経路の途中に設けられ、前記ウェブをその繰り出しの過程で乾燥させることにより、前記フィルタに巻き付けられるべきチップペーパ片の水分を絶対的な乾燥領域にて安定させ、この絶対的な乾燥領域での前記チップペーパ片の水分がフィルタシガレットの製造環境下にて前記ウエブに含まれる通常領域内の水分よりも少なく設定されている乾燥手段と
を具備したフィルタシガレットの通気特性安定化装置。 - 前記乾燥手段は、前記供給経路の途中に配置されて前記ウェブを加熱するヒータを含み、
前記ウェブに対して前記ヒータを相対的に近接及び遠離方向に移動させる移動手段を更に具備している、請求項1に記載のフィルタシガレットの通気特性安定化装置。 - 前記乾燥手段は、前記ヒータの加熱温度を200℃以上の温度域にて制御する制御ユニットを更に含む、請求項2に記載のフィルタシガレットの通気特性安定化装置。
- 前記乾燥手段は、前記供給経路における前記ウェブの繰り出し方向でみて少なくとも前記ヒータの手前及びその先方の何れか一方の位置で前記ウェブの水分を検出し、その検出信号を出力する水分センサを更に含み、
前記制御ユニットは、前記水分センサからの検出信号に基づいて前記ヒータの加熱温度を制御する、請求項3に記載のフィルタシガレットの通気特性安定化装置。 - 前記制御ユニットは、前記水分センサにより前記ヒータよりも手前の位置で検出された水分の検出信号に基づいて前記ヒータの加熱温度を比例制御する、請求項4に記載のフィルタシガレットの通気特性安定化装置。
- 前記制御ユニットは、前記水分センサにより前記ヒータよりも先方の位置で検出された水分の検出信号に基づいて前記ヒータの加熱温度をフィードバック制御する、請求項4に記載のフィルタシガレットの通気特性安定化装置。
- 前記制御ユニットは、前記水分センサにより前記ヒータよりも手前の位置で検出された水分の検出信号に基づいて前記ヒータの加熱温度を制御する比例制御と、前記ヒータよりも先方の位置で検出された水分の検出信号に基づいて前記ヒータの加熱温度を制御するフィードバック制御との何れをも実行する、請求項4に記載のフィルタシガレットの通気特性安定化装置。
- 前記乾燥領域は前記チップペーパ片の水分でみて4%以下に設定されている、請求項1に記載のフィルタシガレットの通気特性安定化装置。
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