JP4153848B2 - 航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法 - Google Patents

航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法 Download PDF

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本発明は、高耐摩耗性、潤滑性および高疲労強度を有する航空宇宙機器用チタン合金部材に関し、さらに詳しくは、従来材料に比較して、良好な耐摩耗性を有し、しかも高い引張疲労強度を有する航空宇宙機器用チタン材料部材に関するものである。
図5(a)に示すような航空機の翼等には、離着陸時に使用されるフラップ、スラット等の摺動負荷される部材が多く用いられ、航空機という特性上、極めて高い信頼性が要求されている。従来、各種の耐摩耗部材としては、安価で加工性に優れ複雑形状品を経済的に製造できる鉄鋼材料が主体に用いられてきた。しかし、近年、更なる軽量化の要求に基づき、チタンが摺動部材に用いられ始めた。チタンは比強度に優れるため、部材の軽量化を図ることが出来るが、耐摩耗性や摺動性に劣るため、Crメッキ、WC-Co溶射等の表面コーティングを施して耐摩耗性や摺動性を向上させて用いられている。また、最近、プラズマ浸炭技術も開発されてきている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、CrメッキやWC-Co溶射を施したTi材料は、高い耐摩耗性を示すものの、疲労強度が無処理材に比べて低下する問題があった。また、基材の外面へ別の物質を付加するコーティングであるため、コーティングの剥離が発生する問題もあった。一方、プラズマ浸炭処理は耐摩耗性に加え、摺動性にも優れるが、疲労強度が大きく低下する問題点があった。
すなわち、疲労強度が重要な航空機部材であるにも拘わらず、表面処理を施すことにより疲労強度が低下するのが大きな課題となっており、耐摩耗性や摺動性を向上させ、さらに疲労強度も向上する表面処理方法の開発が強く望まれていた。
特開2002−371348号公報
本発明者らは、上記問題点に鑑み、良好な耐摩耗性を有し、しかも高い引張疲労強度を有する航空宇宙機器用チタン材料を開発すべく、鋭意検討した。
その結果、チタン材料の表面に酸素拡散処理を行った後、微粉末を用いて高速度でショットピーニング処理を施すことによって、耐摩耗性に優れ、しかも未処理材よりも引張疲労強度に優れたチタン材料が得られることを見出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
すなわち、本発明は、高耐摩耗性、潤滑性および高疲労強度を有する航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法であって、酸素を含むガス雰囲気下、チタン合金部材の表面に酸素を固溶状態で拡散浸透させる、酸素拡散処理工程と、粒子を含む気流を該チタン合金部材の表面に投射する、粒子投射処理工程と、を含むことを特徴とする航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法を提供するものである。
前記酸素拡散処理工程は、減圧プラズマを用いた工程とすることができる。また、前記粒子投射処理工程は、少なくとも2以上の処理工程とすることができ、具体的には、例えば硬質粒子を用いる第1の粒子投射処理工程と、潤滑性を有する粒子を用いる第2の粒子投射処理工程と、からなる工程とすることができる。この際、前記硬質粒子をセラミックス、前記潤滑性を有する粒子を金属硫化物もしくは軟質金属又はその両方からなる混合粒子とすることが好ましい。ここで、前記粒子投射処理工程は、通常、3〜500μmの微粒子を噴射圧力0.2〜1MPaの高圧(高速)で投射する工程である。
上記表面処理方法によって処理されたチタン合金は、各種航空宇宙機器の摺動部材として用いられ、中でも航空機用レール部材、例えば航空機のフラップレール部材あるいはスラットレール部材として最適である。その他、摺動部が多いドア回りの部材への適用にも好適である。
本発明の処理方法によれば、酸素拡散処理と粒子投射処理を組み合わせることにより、高硬度で高い圧縮残留応力を示す表面層を得ることができる。そして、耐摩耗性とともに疲労強度をも両立したチタン合金部材を得ることができる。また、表面の凹凸に潤滑性のある物質をコーティングすることにより、摺動性をさらに向上させることができる。
本発明によれば、従来法に比較し、同等以上の耐摩耗性(無処理材の1/200の摩耗量)を有し、しかも無処理材以上の疲労強度(無処理材の10倍)を示す航空宇宙機器用チタン材料を提供することができる。
本発明の航空宇宙用チタン合金部材の表面処理方法は、酸素拡散処理工程と粒子投射処理工程とを含むものである。
先ず、酸素拡散処理工程は、酸素を含むガス雰囲気下、チタン合金部材の表面に酸素を固溶状態で拡散浸透させる工程である。この酸素拡散処理工程としては、具体的には、例えば減圧プラズマを用いた工程や加熱による酸素拡散工程などが挙げられる。
図4(a)に、酸素とチタンの状態図(O-Ti)を示す。この状態図から分かるように、酸素はTiに固溶し易く、Tiとの量比において34%以下では大部分が固溶状態を形成するものである。本発明の酸素拡散工程によって、酸素はTiに固溶し、主にαの固溶状態を形成する。酸素の含有量は限定されるものではないが、Tiとの量比において通常25%以下、好ましくは15%以下である。参考のために、図4(b)には、炭素とチタンの状態図(C-Ti)を示す。この状態図から分かるように、炭素はTiに固溶する量が極めて少なく、その大部分がTiCからなる化合物を形成することがわかる。すなわち、プラズマ浸炭を含む浸炭処理においては、チタン基材の表面に薄いTiC化合物を形成するのみであることになる。
酸素拡散処理工程によるチタン合金部材の表面への拡散浸透は、表面から100μm程度の深さまで行なわれ、好ましくは50μm程度が適当であるが、例えば10μm程度の深さでも効果がある。
上記のような酸素拡散処理工程により、チタン合金は耐摩耗性に加え、摺動性にも優れた表面を形成する。
次いで、粒子投射処理工程では、酸素拡散処理工程を経たチタン合金部材の表面に粒子を含む気流を投射する。この工程によって、酸素拡散処理により低下したチタン合金の疲労強度は大幅に向上して、酸素拡散処理を行わない無処理の合金の疲労強度よりも一層優れるチタン合金が得られる。
本発明の粒子投射処理工程では、通常3〜500μm、好ましくは10〜100μm程度の微粒子を高速で加工物表面へショットすることにより、表面粗さ等の表面特性への悪影響が少なく、疲労強度、耐食性等が向上する。なお、酸素拡散処理工程を経たチタン合金部材の表面に、約1mm程度の通常の粒子によるショットピーニングを施すと、表層が破壊され易いので好ましくない。
本発明の表面処理方法により得られた部材は、航空宇宙機器用の構造用チタン材料として好適に用いることができる。具体的には、例えば飛行機の構造上重要なフラップレール、スラットレールを構成する部材として利用できる。スラット(前縁隙間翼)とは、主翼の揚力を増加させるために、前縁に隙間を設け、空気の流れを変化させて揚力を増加させる機構である。フラップ(後縁下げ翼)とは、主翼の揚力を増加させるために、後縁を移動して、翼面積を増加させて揚力を増加させる機構である。そして、スラットレール、フラップレールは、スラットやフラップを動かす主要な機構の一つであり、レール(トラック)の上をローラが回転して移動することにより、スラットやフラップを前後あるいは上下等に動かす機構を有するものである。例えば図5(a)に示す飛行機の翼21では、図5(b)が前縁スラットの機構を示す断面図である。図5(c)は、後縁フラップ機構を示す断面図である。(b)の24が繰出トラック(レール)であり、(c)の28が主フラップのトラック(レール)である。なお、22はエンジン、23は角度規正用トラック、25はセクタ歯車、26は繰出用ピニオン、27は支持部材、29は主フラップ、30は子フラップ、31はトラックレールカバー作動リンク、32は主フラップキャリッジ、33は作動用スクリュジャッキ、34はトラック(レール)取付金具である。
以下、本発明を実施の形態によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施の形態によって何ら限定されるものではない。
実施の形態(その1)
本実施の形態では、酸素拡散処理工程として、酸素を含むガス雰囲気下、減圧プラズマを用いた処理を行うが、処理物であるチタン合金等の材料は通常前処理を行う。
加工する対象である航空宇宙機器用チタン合金としては、具体的には、例えば純チタン、α+β型チタン合金:Ti-6Al-4V、Ti-8Mn、Ti-6Al-6V-2Sn、Ti-10V-2Fe-3Al、α型チタン合金:Ti-5Al-2.5Sn、β型チタン合金:Ti-13V-11Cr-3Al、Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-15V-3Cr-3Al-3Snなどが挙げられる。前処理としてのチタン材料の熱処理は特に限定されるものではなく、アニール処理や溶体化時効などを用いることができる。洗浄処理としては、一般に真空を利用する処理の前に行われている洗浄で十分であり、例えば有機溶剤を用いた超音波洗浄によって実施することができる。
図1に、減圧プラズマによる処理装置の概略図を示す。
真空炉1の内部には、断熱材2で覆われた空間の更に内部に、陰極に通じる炉床6が設けられ、加工物をその上に設置する。断熱材2内部には、上部にヒータ5およびプロセスガス等を流すガスマニホールド7が設けられている。真空炉1は外部の真空ポンプ9に接続されている。また、ヒータ5は加熱電源4に接続され、断熱材2と真空炉体1はアース極で陽極となり、プラズマ電源3を介して陰極8と接続されている。
処理する部材は真空炉1内の炉床6上に設置し、真空引き後にヒータ5による加熱を開始する。炉1内(炉壁、部材等)に吸着した水分や酸素、窒素等のガスは離脱し、酸素を含むガスにより真空度が低下し、圧力が若干上昇する。これにより、適切な量の酸素が炉1内に存在する状態とすることが可能であり、減圧プラズマ処理により適切な量の酸素をチタン部材内部に拡散浸透させることができる。なお、その際の真空炉1内の酸素分圧は、質量分析計等を用いて計測することが出来る。
一方、装置が極めて高真空度となる真空炉であったり、あるいは装置に対して挿入したチタン部材の量が多い場合には、表面処理が必要なチタン部材の単位表面積あたりに拡散浸透する酸素量が少なくなり、酸素の拡散浸透が十分に起こらなくなる。そのような場合には、加熱時に積極的に空気を導入することにより、適切な酸素量を補い、酸素の拡散浸透を起こさせる。具体的には、容易で安価な手段として空気を導入し、例えば圧力0.1〜1Torr、時間5〜60分程度保持することにより、実施可能である。
プロセスガスとしては例えば炭素を含むガスを用い、C(炭素)を含む雰囲気中でプラズマを発生させ、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間程度の減圧プラズマ処理を行う。拡散処理用のガスとしては、CO、CO2、プロパンガスなどを挙げることができるが、空気なども適宜利用できる。圧力は通常10〜1000Paの範囲、温度は通常300〜1000℃の範囲である。加熱により表面に吸着した酸素およびグロー放電によりイオン化した酸素が、処理物であるチタン合金の表面に衝突、吸着して拡散する。
この減圧プラズマ処理は、最表面に濃縮された酸素を更に深部にまで拡散浸透することを促し、連続的な酸素の濃度分布の組成とすることができる。かかる酸素拡散処理によって、酸素はチタン合金内部に拡散浸透して固溶状態を形成する。なお、最外表面では、わずかにTiC層の形成および遊離炭素によるカーボン膜の形成が起こる場合がある。
次いで、粒子投射処理工程では、粒子を含む気流を該チタン合金部材の表面に投射する。
図2に、微粒子ショットピーニングを行う装置の概略図を示す。チャンバ11には加工物12を載置する回転テーブル13が備えられ、その側面には加工物12に向けて微粒子を投射するエアノズル15が設けられている。微粒子はホッパ16に充填されており、下部の切替弁17を介してエアライン18に接続する。このエアライン18はエア切替弁19を介して高圧のエアが導かれ、エアノズル15にエアとともに微粒子を圧送する。なお、通常ホッパ16の上部には、チャンバ11の底部に開口する循環ライン14が接続し、微粒子を回収して循環使用する。
本実施の形態では、粒子投射処理工程は、硬質粒子を用いる第1の粒子投射処理工程と、潤滑性を有する粒子を用いる第2の粒子投射処理工程とからなる。硬質粒子を用いる第1の粒子投射処理工程は必須の工程であるが、第2の粒子投射処理工程は加工物表面の摩擦係数を下げるために任意に行われる工程である。
第1の粒子投射処理では、粒子材料はチタンの良好な耐食性を保持するために、鉄系粒子などは使用せず、例えばセラミックス粒子やガラス粒子を用いることが望ましい。より具体的には、Al2O3-SiO2等が好適に挙げられる。粒子の粒径は通常3〜500μm、好ましくは10〜100μm、特に好ましくは20〜80μmである。粒子投射する際の投射速度は圧力で表され、通常0.2〜1MPa程度(直径50μm程度の粒子の場合、噴射速度は約150〜400m/sに相当する高速投射)であり、投射時間は被処理面積により変化する。カバレッジはフルカバレージが基本である。なお、第1の粒子投射処理で鉄系粒子を用いる場合には、粒子投射処理後に適切な溶液を用いて化学的に表面に付着残存した鉄分を除去することにより、チタンの耐食性を保持して、本技術を適用することが出来る。
第2の粒子投射処理では、粒子材料は表面の摩擦係数を下げる観点から潤滑性を有する粒子として金属硫化物もしくは軟質金属又はその両方からなる混合粒子、例えばSn粒子とMoS2粒子を混合した微粒子群を用いることができ、MoS2粒子は10〜30容量%程度混合することが好適である。粒子の粒径は通常3〜500μmの範囲で任意に組み合わせて用いることができるが、混合粒子を用いる場合、Sn粒子が約100〜300μm、MoS2粒子が約3〜5μmの範囲であることが好ましい。粒子投射する際の投射速度は圧力で表され、通常0.2〜1MPa程度(直径200μm程度の粒子の場合、噴射速度は約80〜250m/sに相当する高速投射)であり、投射時間は被処理面積により変化する。カバレッジはフルカバレージが基本である。
実施の形態(その2)
本実施の形態では、酸素拡散処理工程として、酸素を含むガス雰囲気下、加熱による酸素拡散処理を行う。処理物であるチタン合金等の材料は、通常の前処理を行う。
チタン又はチタン合金の加熱による酸化処理は、通常の大気炉内で加熱すればよい簡便な方法である。酸素の固溶した層は、窒化処理等に比較して低温で厚く形成し得るものであるが、表面に同時に形成する酸化物層(Ti0)が剥離し易いため、この酸化物層を形成しないように処理する必要がある。よって、本実施の形態では、酸素分圧を1Torr以下10-4Torr以上に制御した雰囲気中に、400〜900℃に加熱して、酸化物を形成させることなく酸素の固溶した層を形成させる。酸素拡散処理において、酸素以外のガス成分として、水は酸素と同じように作用するので酸素分圧に含めることが可能である。窒素は存在していても酸素固溶層の形成に対して影響は少なく、Arやヘリウム等の不活性ガスも同様である。
次いで、粒子投射処理工程では、実施の形態(その1)と同様に、粒子を含む気流を該チタン合金部材の表面に投射する。図2の装置を用いて、微粒子ショットピーニングを行うことができる。また、実施の形態(その1)と同じく、粒子投射処理工程は、硬質粒子を用いる第1の粒子投射処理工程と、潤滑性を有する粒子を用いる第2の粒子投射処理工程とすることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものでない。
本実施例は、実施の形態(その1)における処理を行った合金の実施例であり、母材の合金組成はTi-6Al-4Vであった。
まず、前処理として、有機溶剤を用いた超音波洗浄を行い、チタン合金表面を洗浄した。次いで、図1に示す減圧プラズマ装置を用いて、酸素拡散処理を行った。この際、酸素は積極的には導入しなかったが、真空排気装置による減圧後の加熱昇温処理中に真空炉内に酸素分圧約0.2Torr程度で酸素が存在していた。850℃で30分の加熱保持後に、プロパンガスを1Torr導入し、850℃の加熱保持をしながら、プラズマ処理を2時間行った。
次に、第1の粒子投射処理として、Al2O3-SiO2の50μm粒子を用い、投射速度が圧力0.45MPaにて略同じ箇所に約1秒間微粒子ショットを行った。最後に、第2の粒子投射処理として、Sn粒子にMoS2粒子を20容量%混合したものを投射圧力0.45MPaにて実施した。
得られたチタン合金表面付近の組成構成を調べるために、EPMA分析装置(日本電子社製)を用いて表面から一定深度までの組成を測定した。
図3に、その結果を示す。Xはチタン合金の最外表面であり、Yは酸素(O)のベースラインである。グラフのX点より右側の合金深部の組成は、Tiに対して炭素(C)は存在しないが、約30〜40μm程度の深度まで酸素(O)が拡散浸透していることが確認できた。
上記の本発明の処理を行ったチタン合金材料について、耐摩耗性評価試験を行った。試験は、ASTM D2714 ファレックスブロックオンリング摩擦摩耗試験とした。この試験は、表面処理したブロックを荷重(15lb)をかけて無潤滑で回転する鋼リングに押し付けるものであり、摩耗した領域の幅と深さによって評価する。比較として、従来のTi-6Al-4Vアニール材および硬質Crメッキ材並びにWC-Co溶射についても同様の試験を行った。
その結果、Ti-6Al-4Vアニール材は摩耗幅5mm、摩耗深さ210μm、硬質Crメッキ材は摩耗幅1mm、摩耗深さ8μm、WC-Co溶射材は摩耗幅0.9mm、摩耗深さ7μmであったのに対して、本発明の処理を行ったチタン合金材料は摩耗幅1mm、摩耗深さ6μmであり、従来のコーティング材と比較して同等レベル以上に摩耗し難いことが分かった。
次いで、本発明の処理を行ったTi-6Al-4Vアニール材について、引張疲労強度の評価を行った。試験は、評点部の直径が6.35mmの切欠のない平滑丸棒供試体を用い、応力比0.1、速度10Hzで行った。比較として、チタン合金の無処理材および微粒子ショットのみを行った材料についても同様の試験を行った。
図6に、その結果を示す。無処理材と微粒子ショットのみを行った部材の結果から、微粒子ショットによる疲労強度向上の効果が確認できる。本発明の処理を行った場合、減圧プラズマによる酸素拡散処理(i)によって疲労強度は一旦低下する。しかし、当該処理(i)工程を経た部材に、微粒子による粒子投射処理(ii)を施すことにより、疲労強度は著しく回復する。例えば、引張応力60kgf/mm2の場合、未処理材は1.4×105回で破断したのに対し、本発明の処理材は、2.2×106程度まで破断せず、10倍以上の寿命を示すことが分かる。図6の結果からも明らかなように、無処理材に微粒子ショットを行った部材よりも(i)工程と(ii)工程を組み合わせた処理を行った部材の方が疲労強度に優れることが分かった。
本発明の表面処理方法により得られた部材は、航空宇宙機器用の構造用チタン材料として好適に用いることができる。具体的には、例えば飛行機の構造上重要なフラップレール、スラットレールを構成する部材として利用できる。
本発明の酸素拡散処理工程において、一例である減圧プラズマ処理に用いる装置の構成を示す図である。 本発明の粒子投射処理工程において、微粒子ショットピーニングを行う装置の一例を示す図である。 実施例1において、本発明の処理を行ったチタン合金表面付近の組成を測定した際のチャート図である。 (a)は、酸素とチタンの状態図(O-Ti)であり、(b)は、炭素とチタンの状態図(C-Ti)である。 航空機の翼構造を示す構造図であり、(a)は全体図、(b)は(a)で示す翼の前縁スラット機構を示すA-Aの断面図、(c)は後縁フラップ機構の断面図である。 実施例1において、疲労強度を測定した結果を示すグラフである。
符号の説明
1 真空炉
2 断熱材
3 プラズマ
4 加熱電源
5 ヒータ
6 炉床
7 ガスマニホールド
8 陰極
9 真空ポンプ
11 チャンバ
12 加工物
13 テーブル
14 循環ライン
15 ノズル
16 ホッパ
17、19 切替弁
18 エアライン

Claims (6)

  1. 高耐摩耗性、潤滑性および高疲労強度を有する航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法であって、
    酸素を含むガス雰囲気下、チタン合金部材の表面に酸素を固溶状態で拡散浸透させる、酸素拡散処理工程と、
    3〜500μmの微粒子を含む気流を噴射圧力0.2〜1MPaの高圧で該チタン合金部材の表面に投射する、粒子投射処理工程と、
    を含むことを特徴とする航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法。
  2. 前記酸素拡散処理工程が、減圧プラズマを用いた工程であることを特徴とする請求項1記載の航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法。
  3. 前記粒子投射処理工程が、少なくとも2以上の粒子投射処理工程からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法。
  4. 前記粒子投射処理工程が、硬質粒子を用いる第1の粒子投射処理工程と、潤滑性を有する粒子を用いる第2の粒子投射処理工程と、からなることを特徴とする請求項3に記載の航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法。
  5. 前記硬質粒子がセラミックス粒子であり、前記潤滑性を有する粒子が金属硫化物もしくは軟質金属又はその両方からなる混合粒子であることを特徴とする請求項記載の航空宇宙機器用チタン合金部材の表面処理方法。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の表面処理方法によって処理されたチタン合金からなることを特徴とする航空機用レール部材。
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