JP4153642B2 - 高炉用コークス製造用の原料配合炭の評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉用コークスの品質管理及びコークス炉の操業管理を行ううえで、重要であるコークス製造用の原料配合炭を石炭乾留試験炉で評価する方法に関し、特に、石炭乾留試験炉で得られたコークスケーキの表面形状を測定してコークスケーキの亀裂状況を求め、この亀裂状況に基づいてコークスケーキの押し出し性及び高炉用コークスの粒径を推測する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にコークス製造用の原料炭は、入荷ロット毎に、実炉操業を行う前に石炭乾留試験炉で乾留をおこなった後、コークスの強度測定等のコークス性状を確認することにより原料炭の適性を評価するのが通例である。
代表的な乾留試験装置としては、乾留試験炉の石炭装入部(以下、炭化室と記す)の高さが0.4〜1.0m、幅が0.4〜0.45m、長さが0.5〜1.0mであり、乾留試験一回あたりに使用する石炭の重量は約60〜400kgのものが用いられている。
【0003】
加熱方式は、実コークス炉と同様の間接加熱方式であるが、加熱壁の材質としては、実コークス炉と同一の珪石れんがを用いる試験炉から、炭化珪素板を用いるものまでさまざまな形式がある。
乾留試験においては、あらかじめ粉砕調整された石炭を乾留炉の炭化室に装入し、加熱壁から加熱して乾留する。所定時間経過後、コークスを炭化室より排出し、窒素あるいは水によって冷却した後、コークス性状測定試験が実施される。
コークス性状の中でこれまで重要視されてきたのは、JIS K2151に記載のドラム強度試験法により測定されるドラム強度指数であったが、近年、高炉操業及びコークス炉の操業管理を行ううえで、コークス粒度およびコークスケーキの亀裂状況の確認の重要性が指摘されている。
【0004】
コークス粒度については、高炉で使用する場合に、その粒度が細かいと高炉内の通気性が悪化し、高炉の操業が不安定になるため、所定管理値以上のコークス粒径を維持することが重要となる。コークス粒度を測定する方法としては、従来、石炭乾留試験炉で乾留して得られたコークスケーキを解体した後、所定の高さから数回落下させて、あるいは落下処理を実施しないで、JIS K2151に記載のドラム回転機によって所定の衝撃を与えた後に、得られたコークス塊を作業者が手作業で粒度毎に篩分けて平均粒度を求める方法が行われていた。
従って、従来の石炭乾留試験炉でのコークス粒度を測定する方法は、人手および時間がかかることが問題であった。
【0005】
また、コークスケーキの亀裂状況については、石炭乾留後炭化室からコークスケーキを押し出す時のコークス押し出し性と関連があると考えられる。
一般に石炭乾留後のコークス排出時(押し出し時)に、コークスケーキが炭化室内で閉塞して押出が困難となる場合(押し止まり)、あるいは不可能となる場合(押詰り)においては、コークス炉の炉壁に過剰な負荷が作用し、コークス炉炉壁の損傷をひきおこす原因となる。
また日常操業においても、押し止まりや押詰りが発生すると、操業の中断や装入スケジュールの変更により炉団としてのコークス生産量が低下し、さらに押し出し可能になるまでの置時間増大により消費熱量も増大し、コークス生産コストの増加につながる。このため、コークスケーキを安定的に押出すことは、コークス炉炉壁の損傷防止および安定操業における極めて重要な課題である。
【0006】
コークスケーキの亀裂数とコークス押し出し性の関係は、コークスケーキの亀裂数が多いと、炭化室からコークスケーキを押出機により押出す際の炉長方向の力が、炉壁方向(炉長方向の力に対して垂直方向)に伝搬する割合が高くなると考えられる。しかしながら、コークスケーキの押出性と相関があるようなコークスケーキの亀裂数を測定する方法は、従来知られていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような従来法の問題に鑑みて、本発明は、石炭乾留試験炉でのコークス粒度及びコークスケーキの亀裂数の測定を、石炭乾留試験炉で乾留して得られたコークスケーキを解体せずに直接その表面形状を測定することによりコークスケーキの亀裂数を求め、さらにこの亀裂数からコークス粒径を求めるコークス粒度及びコークスケーキの亀裂数の簡易且つ効率的な測定方法を提供する。
【0008】
本発明の要旨とするところは、
(1)石炭乾留試験炉によるコークス製造用の原料配合炭の評価方法において、前記石炭乾留試験炉に前記原料配合炭を装入して乾留することにより得られたコークスケーキの表面形状を測定し、前記コークスケーキ表面に存在する亀裂の幅及び深さの測定値に基づいて、該亀裂の幅が0.5mm以上3mm未満かつ深さが5mm以上20mm未満のものを二次亀裂とし、それ以外のものを主亀裂として主亀裂及び二次亀裂を判別後、主亀裂によって分断されるコークスの平均面積SA及び、主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数NBを測定し、これらSA及びNBに基づいて下記(1)式によってコークスの平均粒径を求めることを特徴とする石炭乾留試験炉によるコークス製造用の原料配合炭の評価方法。
コークスの平均粒度=a×(SA)1/2 +b×(SA/NB)1/2 +c ・・・・・(1)
ここで、
SA:主亀裂によって分断されるコークスの平均面積(cm2 )
NB:主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数(個/塊)
a,b,c:実験的に求められる係数
【0010】
(2)前記コークスケーキの表面形状の測定は、自動二軸ステージに移動可能なように設置されたレーザー式変位計からなる3次元形状測定装置によって自動的に測定されることを特徴とする上記(1)に記載の石炭乾留試験炉によるコークス製造用の原料配合炭の評価方法、である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
石炭乾留後、炉壁に対面するコークスケーキの表面には多くの亀裂が観察される。本発明者は、石炭乾留試験炉で乾留して得られたコークスケーキを解体せずに直接その表面形状を測定することによりコークスケーキの亀裂状況を把握し、さらにこの亀裂状況からコークス粒径を求められる簡易且つ効率的な方法について鋭意検討した。
その結果、亀裂の幅と深さにより、主亀裂(炭化室幅方向中心部まで到達してコークス塊を分断する亀裂)と、二次亀裂(コークス塊の途中でとまっている亀裂)の2種類に分け、単位面積あたりの主亀裂による平均コークス分断数と主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数を求めることにより、コークスの粒度およびコークス押出性を推定することが可能であることを見出した。本発明は、これらの知見により完成された。
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
コークスケーキの表面形状、特に亀裂の深さおよび幅を測定する方法としては、例えば図1に示すように、炉壁に対面するコークスケーキの表面1をレーザー式変位計3および自動二軸ステージ2、変位計3の自動二軸ステージ2上の位置を制御及び記憶するための自動二軸ステージコントローラー4、変位計3の測定値を記録するための変位記録計5、データ処理装置6から構成される3次元形状測定装置により自動的に測定する方法がある。
【0013】
コークスケーキ表面の凹凸はコークスケーキの表面に対して平行に設置した自動二軸ステージ上にレーザー式変位計を移動可能なように設置し、レーザー式変位計を自動二軸ステージコントローラーによって移動させながら変位を測定するとともに、その移動量及び変位測定値をデータ処理装置に記録することにより、コークスケーキ表面全域の三次元形状を計測することができる。なお、レーザー式変位計の測定値は、変位記録計でも記録する。
【0014】
図2は、コークスケーキとレーザー式変位計の位置関係を炭化室の炉幅方向断面(炉壁に対して垂直な断面)から見た模式図である。
図2に示すようにレーザー式変位計1で測定されたコークスケーキ表面1の3次元形状情報(凹凸情報)をデータ処理することによって亀裂の幅及び亀裂の深さを求め、それらにより主亀裂7及び二次亀裂8を判別することが可能である。
【0015】
また、図3に示すようにさらにこれらの測定データを画像解析処理し、主亀裂7によって分断された各部分の面積の平均値を求めることにより、主亀裂7によって分断されるコークスの平均面積SA(cm2)を求めることができる。
また、同様の方法で主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数NB(個/塊)を求めることができる。
【0016】
本発明者の用いたコークスケーキでは、幅が0.5mm以上、あるいは深さが5mm以上のものを亀裂と判定し、その中でも幅が0.5mm以上3mm未満かつ深さが5mm以上20mm未満のものを二次亀裂とし、それ以外のものを主亀裂とした。
【0017】
上記のレーザー式変位計による3次元形状測定法よりも簡易的な測定方法としては、コークスケーキ表面をデジタルカメラ等で撮影した画像を画像処理することにより、亀裂幅を求めることができる。本発明者によれば、亀裂の幅が3mm以上の亀裂を主亀裂、亀裂の幅が0.5mm〜3mm未満幅の亀裂を二次亀裂として評価することにより、ある程度両者を判別することが可能であった。
しかしながら、この方法は、先に述べたレーザー式変位計による3次元形状測定法よりも簡易な方法ではあるが、コークス表面の2次元情報しか得られないから、亀裂の深さによる主亀裂と二次亀裂の判別はできず、レーザー式変位計による3次元形状測定法よりも判別精度が低下する。具体的な問題としては、本来主亀裂と判定されるべき、亀裂幅0.5mm以上3mm未満かつ亀裂深さ20mm以上の亀裂が二次亀裂と判定されてしまう。
【0018】
本発明において、以上のようなコークスケーキ表面形状の測定方法によって、主亀裂によって分断されるコークスの平均面積SA(cm2)、および主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数NB(個/塊)を求めることができる。
【0019】
また、本発明において、コークスの粒径は、下記(1)式によって主亀裂によって分断されるコークスの平均面積SAと主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数NB(個/塊)の関数として表す。
ここで、
SA:主亀裂によって分断されるコークスの平均面積(cm2 )
NB:主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数(個/塊)
a,b,c:実験的に求められる係数
【0020】
本発明により主亀裂及び二次亀裂を基に上記(1)式によって求めたコークス平均粒度は、従来法により石炭乾留試験炉で得られたコークスケーキを解体し、直接篩い分けで測定したコークス平均粒度とよく一致するものである。
【0021】
また本発明では、コークスの押出抵抗は、下記(2)式によって主亀裂によって分断されるコークスの平均面積SAの逆数NAと主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数NB(個/塊)の関数として表す。
コークスの押出抵抗=d×NA+e×NB+f ・・・・・(2)
ここで、
NA:単位面積あたりの主亀裂による平均コークス分断数(個/cm2 )
NB:主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数(個/塊)
d,e,f:実験的に求められる係数
【0022】
本発明により主亀裂及び二次亀裂を基に上記(2)式によって求めたコークスの押出抵抗は、実測値とよく一致するものである。
したがって、本発明により、石炭乾留試験炉で得られるコークスを用いて従来法よりも簡便かつ迅速に高炉用コークスの粒度の測定およびコークス押し出し性の評価を実施することが可能である。
【0023】
【実施例】
次に、本発明による乾留試験コークス評価の実施例を示す。
ここでは、炭化室の高さ1100mm、幅450mm、長さ1050mmの可動壁型乾留試験装置に、粉砕粒度3mmアンダー80%、水分5%の石炭を炉の上部より装入して乾留した。石炭の装入密度は、0.75t/m3 であった。
試験に使用した石炭の性状は、Ash 8.7%、VM 26.9%、全膨張率60%であった。ここで全膨張率は、JIS M8801に規定されたジラトメーター法による膨脹性試験において測定される値である。
【0024】
また乾留試験は、炉温を1100℃から1300℃、置時間を0時間から6時間の範囲で変更したいくつかの条件で行った。
乾留終了後、コークスケーキを押し出す際の押出抵抗を測定した。ここで押出抵抗は、コークサイド側の炉蓋を閉めたまま押出ラムでコークスケーキを押した時の、炉壁に垂直に加わる圧力と、押出ラムで押す圧力(コークスケーキに対し炉壁に平行に作用する圧力)の比で評価した。この比が大きいほど、押出ラムの力がコークスケーキに伝わらずに壁側に逃げるため、押出抵抗が大きいことを意味している。
【0025】
また、コークスケーキは炉から排出された後冷却室において窒素ガスによって冷却し、冷却後のコークスケーキを崩す前に、前記したようなレーザー式変位計および自動二軸ステージから構成される装置を用いてコークス表面形状を自動測定し、主亀裂によって分断されるコークスの平均面積SA(cm2 )および主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数NB(個/塊)を求めた。その後、コークスケーキを解体し、手作業によりコークス平均粒度を測定した。
【0026】
図4に、本発明によって求めたコークス平均粒度と、手作業により求めたコークス平均粒度の関係を示す。両者は良好に一致していることがわかる。
また図5に、本発明によって求めたコークス押出抵抗と、実測した押出し抵抗の関係を示す。押出抵抗は、炉温1200℃、置時間3時間の乾留条件における押出抵抗を1とした時の相対値で表した。両者は良好に一致していることがわかる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明によりコークス製造用の原料配合炭を石炭乾留試験炉で評価する方法において、高炉用コークスの品質管理及びコークス炉の操業管理を行ううえで重要である高炉用コークスの粒径の測定及びコークス押し出し性の評価を石炭乾留試験炉で得られたコークスケーキの解体せずに、直接表面形状を測定することにより従来法に比べて簡易かつ効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す図であり、コークスケーキの表面(炉壁に平行な面)を測定するための装置構成を示す図である。
【図2】図1を炉幅方向断面(炉壁に対して垂直な断面)から見た模式図であり、炉壁に垂直なコークスケーキの断面を模式的に示す図である。
【図3】本発明により測定されたコークスケーキ表面上の主亀裂を示す図である。
【図4】本発明の方法によって求めたコークス平均粒度と、手作業により求めたコークス平均粒度の関係を示す図である。
【図5】本発明の方法によって求めたコークス押出抵抗と、実測された押出抵抗の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 コークスケーキ表面
2 自動二軸ステージ
3 レーザー式変位計
4 自動二軸ステージコントローラー
5 変位記録計
6 データ処理装置
7 主亀裂
8 二次亀裂
Claims (2)
- 石炭乾留試験炉によるコークス製造用の原料配合炭の評価方法において、前記石炭乾留試験炉に前記原料配合炭を装入して乾留することにより得られたコークスケーキの表面形状を測定し、前記コークスケーキ表面に存在する亀裂の幅及び深さの測定値に基づいて、該亀裂の幅が0.5mm以上3mm未満かつ深さが5mm以上20mm未満のものを二次亀裂とし、それ以外のものを主亀裂として主亀裂及び二次亀裂を判別後、主亀裂によって分断されるコークスの平均面積SA及び、主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数NBを測定し、これらSA及びNBに基づいて下記(1)式によってコークスの平均粒径を求めることを特徴とする石炭乾留試験炉によるコークス製造用の原料配合炭の評価方法。
コークスの平均粒度=a×(SA)1/2 +b×(SA/NB)1/2 +c ・・・・・(1)
ここで、
SA:主亀裂によって分断されるコークスの平均面積(cm2)
NB:主亀裂によって分断されるコークス塊内の二次亀裂の平均個数(個/塊)
a,b,c:実験的に求められる係数 - 前記コークスケーキの表面形状の測定は、自動二軸ステージに移動可能なように設置されたレーザー式変位計からなる3次元形状測定装置によって自動的に測定されることを特徴とする請求項1に記載の石炭乾留試験炉によるコークス製造用の原料配合炭の評価方法。
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