JP4151528B2 - AlN単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、窒化アルミニウム (AlN) 単結晶の製造方法に関する。AlN単結晶は、青色や紫外領域の光を射出し得る窒化ガリウム等の化合物半導体発光素子用の基板や、高熱伝導性基板として好ましく用いられ得る。
化合物半導体であるAlNは6.2 eVの大きなバンドギャップを有するので、AlN半導体中にpn接合が実現されれば、紫外域の発光ダイオードやレーザなどの新しい発光素子を作製することが可能になる。また、大きなバンドギャップを有するAlN半導体は、放射線下や高温下で動作する高耐圧の電力素子への応用が可能である。さらに、AlN半導体は、負の電子親和力を示すことが知られており、高効率の電子放出素子への応用も期待される。さらにまた、AlNは約300 W/m・Kの良好な熱伝導性を有しているので、その多結晶体については、放熱性のセラミック基板としての実用化がすでに進んでいる。最近では、青色発光素子に利用されている窒化ガリウム (GaN) に対するAlNの結晶格子の整合性が良好であることから、AlN層はGaN層との界面におけるバッファ層として利用されており、発光素子の輝度向上に不可欠の材料となっている。
上記のように優れた特性を有するAlNを特に発光素子、電力素子、電子放出素子といった素子として利用する際には、半導体シリコンの場合と同様に、単結晶ウエハとして使用することが望ましいのは当然である。しかし、現在のところ、AlN単結晶ウエハの製造方法は未だ開発されていない。AlNの単結晶ウエハを得ることが困難であるのは、AlNが明確な融点を示さず、常圧下で2200〜2450℃もの高温で分解するため、単純な融液からの固化という手法を使用してバルク単結晶を晶出させることができないからである。
このような事情から、単純な融液からの凝固以外の手法として、昇華法や窒化処理などを利用する方法が検討されている。しかし、それらの検討は未だ基礎研究レベルであり、大型のAlN単結晶を得る方法は確立されていない。CVD (化学気相堆積)やMBE(分子線エピタキシ) などの手法を利用して、異種基板上にAlN薄膜を合成することは行われているが、それを厚膜化して自立結晶を作製するには至っていない。
本発明は、異種基板上にAlN単結晶を成長させる手法により、比較的大きなAlN単結晶を簡易かつ低コストで製造し得るAlN単結晶の製造方法を提供するものである。
本発明に係るAlN単結晶の製造方法においては、成分aがCr、Mn、Fe、Co、CuおよびNiから選択された1種以上の金属、成分bがSc、Ti、V、Y、ZrおよびNbから選択された1種以上の金属、成分cがAl、成分dがSiであるabcd系合金であって、成分aのモル濃度Ca、成分bのモル濃度Cb、成分cのモル濃度Ccおよび成分dのモル濃度Cdが、
0.01≦Cb/Ca≦0.1 、0.13≦Cd/Ca≦0.32、0.2 ≦Cc/(Ca+Cb)≦1
の関係を満たす組成を有するabcd系合金の融液を窒素雰囲気下で調製する。そして、窒素雰囲気下に保持したまま、このabcd系合金の融液を冷却するか、および/またはそれから前記成分aとbの少なくともいずれかを蒸発させることによって、AlN単結晶をSiC単結晶基板上に晶出させる。
AlN単結晶は、SiC基板上にエピタキシャルに晶出して、成長する。SiC基板上に成長したAlN単結晶は、SiC基板を研削等により除去または分離することにより、単結晶として取得することができる。
AlN単結晶の晶出時には、前記abcd系合金の融液中でAlNの過飽和状態が生じていることが好ましい。
前記abcd系合金の融液の調製は、予め窒素以外の不活性雰囲気下で溶製した合金塊を窒素雰囲気下で再溶解することにより行うことができる。
窒素雰囲気下で調製された前記abcd系合金の融液の温度は、好ましくはその合金の液相線以上かつ2000℃以下の温度である。その場合、この融液を窒素雰囲気を保持したまま、液相線と固相線との間の所定温度まで徐冷するか、またはこの所定温度まで冷却した後その温度に等温保持する、ことによりAlN単結晶の晶出を行うことが好ましい。
本発明の方法によれば、SiC基板上に、例えば、合金の再融解と冷却という簡便な手法により、比較的大きなAlN単結晶を低コストで安定して成長させることができるので、AlNバルク単結晶の工業的な生産を可能にする。
本発明者らは、AlまたはAlNを含む種々の合金融液からのAlN結晶の生成挙動を冶金学的に調査し、またAl−N−X (Xは各種金属元素) の3元系状態図の計算による予測に基づき、最終的にAlNが特定の合金融液から単結晶として得られることを見出した。まず、そのような特定の合金融液からAlN結晶が得られる原理について、金属元素XがCuまたはNiである場合を例として説明する。
図3と図4は、温度1800Kの断面におけるAl−N−CuとAl−N− Ni の3元系状態図をそれぞれ示している。これらの状態図における数値は原子%を表している。図3と図4において、AlN+Lで示された領域は固相のAlNと合金融液Lとの共存領域を表し、Lで示された領域は合金融液のみが存在する領域を表している。これらの状態図から、AlN結晶は合金融液Lから直接に晶出してくることがわかる。図3の直線PQと図4の直線RSは、それぞれCu−AlN間とNi−AlN間のタイライン (連結線) を表している。そして、図5と図6は、それぞれタイラインPQとRSに沿ったCu−AlNとNi−AlNの擬似二元系状態図の一部を示している。
これらの図3〜図6から、合金融液からAlNが初晶として現れはじめる上限温度を表す液相線が存在することが理解される。すなわち、適当な濃度のAlNを含むCu−AlNまたはNi−AlNの合金融液をその液相線の温度より高温に保持しておき、十分にAlNを溶解させたのちに液相線温度以下に冷却すると、液相からAlNが初晶として現れるのである。また、AlNの代わりに、Alを含むCu合金またはNi合金を溶融し、その融液中に雰囲気からNを供給することによっても、まったく同様な効果が得られる。ただし、その場合には、後述するようにNを合金融液中に十分に取り込むための異種の金属の添加が必要となる。なぜなら、雰囲気中のNと反応してAlNを生成する場合、合金融液表面に緻密なAlN膜が生成する傾向があり、それにより合金融液内へのNの侵入が阻害されるからである。
本発明者らは、Al−N−X合金融液からのAlN晶出挙動を明らかにするために、種々の出発組成の合金融液を種々の初期温度から種々の冷却速度で冷却し、室温まで冷却後にその合金のミクロ組織を観察した。その結果、まずNとの反応を十分に促進させ得るまでにAl原子を均質に分散させて溶解させるには、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、およびNiの各金属 (成分aと称す) またはそれらの合金の融液を用いることが最適であることを見いだした。さらに窒素を合金融液中に十分に取り込むための第4元素の添加を試みた結果、Sc、Ti、V、Y、Zr、およびNbの各元素 (成分bと称す) を添加することによって、常圧下でも雰囲気のNを合金融液中に十分に取り込み得ることが見出された。
ここで、成分aの金属融液は、Al原子を十分に均一に分散させて溶解し、AlとNとの反応を十分に促進させるように作用すると考えられる。このことは、成分aとAlとの2元系状態図から推定することができる。たとえば、図7に示したAl−Cr状態図では、Crが固相線直下においてAlに対して非常に広い一次固溶限を有しているのが特徴である。このことは、その一次固溶限領域の上方における融液状態においても、Al原子が均質に分散して溶解しており、凝固の際には、そのまま均質な一次固溶体を形成する傾向があることを示している。
すなわち、固相線直下においてAlに対して非常に広い一次固溶限を有していることが、Cr−Al合金融液においてAl原子が均質に分散した溶解状態を生じる指標になると考えられる。さらなる状態図の提示は省略するが、Crと同様に、Mn、Fe、Co、Cu、およびNiの各金属も固相線直下においてAlに対して広い一次固溶限を有しているので、Al原子を均一に分散して溶解させるための成分aとして利用することができる。
次に、Alおよび/またはAlNを溶解した成分aの金属融液中にN原子を取り込み得る濃度を高めるように作用する成分bの選定基準としては、Nとの親和力が重要なファクタとなり得ると考えられる。そこで、各種金属元素の窒化物生成自由エネルギ (ΔGN : ギブスの窒化物生成自由エネルギ) について検討すると、成分aの融液中にN原子を取り込む濃度を高める効果のみの観点からは、絶対値が大きくかつ負のΔGN を有する金属が好ましいと考えられる。しかし、AlのΔGN に比べてはるかに絶対値が大きく、かつ負のΔGN を有する金属は、確かに成分aの融液中にN原子を取り込む濃度を著しく高める効果を期待し得るが、逆に、その金属の窒化が優先して、Alの窒化を阻害する作用をも生じると考えられる。
したがって、Alおよび/またはAlNを溶解した成分aの金属融液中にN原子を取り込み得る濃度を高めるように作用する成分bとしては、AlのΔGN と同程度のΔGN を有する金属が好ましいと考えられる。そのような金属について本発明者らが調査した結果が、図8に示されている。
図8のグラフに示されているように、そこにリストされたV、 Nb、Y、Sc 、Ti、およびZrは、いずれも2000℃近傍まで絶対値の大きな負のΔGN を示し、それらのΔGN の値はAlNの生成エネルギと同程度であり、Nに対して大きな親和力を有していることがわかる。ここで、後述の実施例からわかるように、TiはAlに比べても絶対値が大きくかつ負のΔGN を有しているが、Ti濃度が高すぎない限り、Alの窒化を阻害することはない。さらに、ZrはAlに比べてかなり大きく、Tiよりも大きな絶対値で、かつ負のΔGN を有しているが、Zrを成分bとして利用する場合も、Alの窒化を阻害しないようにその濃度を限定すればよい。
これらの成分a(Cr 、Mn、Fe、Co、Cu、Ni) 、成分b(Sc 、Ti、V、Y、Zr、Nb) 、およびAlを含有する合金融液を窒素雰囲気下で調製し、冷却するか、および/または成分aとbの少なくともいずれかを蒸発させることによって、その合金を液相線と固相線の間の状態にもたらすと、AlN単結晶が晶出し得る。このAlN単結晶の晶出時には、合金融液中でAlNが実質的に過飽和状態になっていることが好ましい。
上記のように窒素雰囲気中で調製することによりNを取り込んだabc系合金の融液からAlN単結晶を晶出させる際、基板を用いたエピタキシャル成長とすると、所定方位のAlN単結晶を確実に成長させることができる。基板が存在しないと、成長条件や融液組成に依存して、AlN単結晶は針状結晶となったり、板状結晶となったりする。
AlN単結晶のエピタキシャル成長は、AlN単結晶基板が利用できないため、異種基板を利用したヘテロエピタキシとなる。AlN単結晶ヘテロエピタキシに適した基板として、SiC基板、例えば、6H−SiCや4H−SiC等のSiC基板が挙げられる。
しかし、前述した成分a、成分b、成分cのabc系合金の融液を窒素雰囲気下で調製し、この融液にSiC基板を接触させた状態で、AlNの晶出温度に冷却して、AlNのヘテロエピタキシによる晶出実験を行ったところ、厚膜化を図るために接触時間を長くすると、SiC基板が融液中に溶解し、AlNの厚膜化が阻害されることが判明した。つまり、窒素を取り込んだabc系合金の融液からのSiC基板上へのAlNのヘテロエピタキシャル成長では、薄膜形成は可能であるが、バルク単結晶 (ウェハ) の製造に必要な厚膜の結晶成長は困難であった。
そこでさらに検討した結果、合金原料に成分dとしてSiを加えたabcd系の合金を用いることにより、SiC基板の溶解を抑制しつつ、SiC基板上にAlN単結晶を厚膜にエピタキシャル成長させることに成功した。こうして、AlNの結晶成長を長時間または繰り返し行うことにより十分な厚さのAlN単結晶層を形成した後、研削などでSiC基板を除去することによって、AlN単結晶ウェハを得ることができる。
窒素雰囲気下でのabcd系合金の融液の調製は、予め窒素以外の不活性雰囲気下で溶融し、凝固させることにより得た合金塊を、窒素雰囲気下で再溶解することにより行うことができる。別の方法として、成分a、成分b、成分c、成分dの各粉末を所定割合で配合し、それを窒素雰囲気下で溶解することによっても合金融液を調製することができる。
合金融液の組成は、融液中の成分aのモル濃度Ca、成分bのモル濃度Cb、成分c(Al)のモル濃度Cc、および成分d(Si)のモル濃度Cdが下記の不等式で示される関係を満たすようにする:
0.01≦Cb/Ca≦0.1 、0.13≦Cd/Ca≦0.32、0.2 ≦Cc/(Ca+Cb)≦1。
Alのモル濃度であるCcについては、Cc/(Ca+Cb) のモル比が0.2 より小さいと、Al量が不足して微細なAlNしか得られない。逆に、このモル比が1より大きいと、Al濃度が高すぎて、Al原子が合金融液中で均質に分散溶解しないため、AlN単結晶が得られなくなる。成分aと成分bとのモル比であるCb/Caが0.01より小さいと、合金融液中のN濃度が不足して、微細なAlN結晶しか得られず、逆に0.1 より大きいと、成分bが窒化物を形成するなどして、AlN単結晶の晶出を阻害する。Siのモル濃度であるCdについては、Cd/Caのモル比がが0.13より小さいと、SiC基板溶解の抑制が充分でなく、逆に0.32を超えると、AlN晶出が阻害される。
合金融液は、好ましくは、その合金の液相線以上、2000℃以下の範囲の温度となるように窒素雰囲気下で加熱することにより調製する。これは、a〜dの各金属を含む合金の均一な融液を得るためである。合金融液を2000℃より高温に加熱すると、一部の金属元素の合金融液からの蒸発が甚だしくなって合金組成が変動する可能性があり、安定したAlN単結晶の成長が困難となる上、経済的にも好ましくない。
その後、窒素雰囲気を維持したまま、合金融液をその合金の液相線と固相線との間の温度範囲の所定温度まで徐冷するか、或いはこの所定温度まで冷却した後、その温度に保持する。この徐冷または温度保持の間に、雰囲気ガス中から窒素 (N) が融液中に取り込まれ、そのNがAlと次々に反応して、AlN単結晶が晶出し、成長する。合金の固相線より低温になると、固相反応となるので、AlN単結晶の成長はほとんど見られなくなる。従って、固相線温度より低温になった後は、必ずしも窒素雰囲気とする必要はない。
AlN結晶の晶出を、窒素雰囲気下に保持した合金融液からの成分aまたは成分bの蒸発により行う場合には、合金の液相線と固相線との間の温度範囲で蒸発しうる金属を部分的に蒸発させる。そのような蒸発が可能な成分aまたはbとして、成分aではFe、Co、Cuの各金属が、成分bではYが挙げられる。この場合も、液相線と固相線との温度範囲で、金属の蒸発と同時に、雰囲気からのNの取り込みが起こって、AlNが晶出する。
上述した方法により、窒素雰囲気下に保持した合金融液から直接、この融液と接触するように配置したSiC基板上にAlN単結晶を晶出させることができる。本発明では、合金融液に適切な量のSiを含有させることによって、SiC基板の溶解とそれによるAlN単結晶の厚膜化の阻害とが避けられる。そのため、AlN単結晶の晶出を長時間続けるか、および/または晶出操作を反復する (例えば、いずれも窒素雰囲気下での、液相線温度〜2000℃の温度範囲への加熱と、液相線〜固相線の温度範囲への徐冷または冷却と温度保持、を反復する) ことにより、AlN単結晶を厚膜化することが可能となる。その結果、例えば、従来より大型のAlNウイスカまたは厚みの大きなAlN板状単結晶を得ることができる。
なお、晶出の反復は、得られたAlN単結晶を取り出し、それを再度合金融液中に投入することによっても行うことができ、この過程を繰り返すことによって、ウェハとして使用できる大きな単結晶を得ることも可能である。
また、本発明に係るAlN単結晶の製造には、温度勾配下での一方向からの固化による単結晶育成法であるブリッジマン成長法の適用も可能である。
ブリッジマン法は、静置温度変化型と移動型に大別できる。静置温度変化型では、下部が比較的低温にされた温度勾配を有する炉中に下部の細くなった成長容器を固定し、その容器を静置したままで炉全体の温度をある速度で低下させることにより、容器下端部を過飽和または過冷却状態にしてAlN単結晶を晶出させる。このとき、容器下端部を先鋭化することにより、その下端部で最初に晶出した特定方位の結晶を大型化させて単結晶化する。他方、移動型ブリッジマン法では、温度勾配を有する炉の中でまず容器下端が合金の液相線以上の温度になるように保持しておき、その炉内の温度分布を保ったままで容器を降下させることによって容器下端部が冷却され、その下端部でAlNが過飽和となるようにするのが特徴である。
ブリッジマン法におけるこれらの静置温度変化型と移動型の両者は、まったく同等な効果を有すると考えられる。すなわち、ブリッジマン法においては、合金融液中からAlNが初晶として晶出し、その結晶化が始まる容器先端部の形状を尖らせておけば、特定方位の結晶粒のみが成長し単結晶化するのである。本発明の場合、例えば、6H−SiC基板を種結晶として容器先端部に固定しておく。そうすると、この基板上に同じ六方晶構造を有するAlN結晶がエピタキシャルに成長するので、後でその基板を除去すれば、AlNのバルク単結晶が得られる。
なお、実施例に示すように、室温まで冷却した後、凝固した合金を弗硝酸を用いて溶解させると、晶出したAlN単結晶とSiC基板を取り出すことができる。その後、SiC基板を研削により除去すると、AlN単結晶が回収される。
(1) 図1に示す黒鉛坩堝1の底面中央に6H−SiC基板2を設置した。このSiC基板の上に黒鉛坩堝の内径と同じ寸法の黒鉛製円板3を載せた。この円板3の中央には、図示のように、SiC基板2より小さいな開口部が設けてあり、その開口部からSiC基板2が露出するようにした。
この黒鉛坩堝1に、Ar雰囲気中のアーク溶解によって作製した、表1に示す組成のCu−Ti−Al−Si合金の凝固物を投入した後、黒鉛坩堝を密閉型均熱炉 (富士電波工業社製、ハイマルチ炉) に封入し、常圧の純N2 ガス中で加熱して融解させ、その温度に保持して合金融液4を調製した後、徐冷を行った。温度パターンは図2に示すように、1600℃まで10℃/minの昇温速度で昇温し、1600℃に10時間保持した後、800 ℃まで1℃/minの冷却速度で徐冷した。なお、本例で試験した合金の液相線/固相線温度は 623〜1400℃の範囲であった。
800 ℃から室温までの冷却もN2 雰囲気を保持したまま行ったが、放冷とした。黒鉛坩堝から取り出した凝固塊を弗硝酸で処理して、凝固した合金を溶解除去することによって、SiC基板とその上に成長したAlN単結晶とを回収した。回収物の断面をSEMで観察して、SiC基板の溶解の有無と、AlN結晶の晶出の有無、および晶出したAlN結晶が単結晶であるか、多結晶であるかの判定を行った。
それらの結果を表1に示す。表1のAlN晶出において、「あり」はSiC基板の表面全体にAlNが晶出していることを、「一部あり」はSiC基板の表面の一部にAlNが晶出していることを、「なし」はSiC基板の表面のどこにもAlNが晶出していないことを、それぞれ示す。
Figure 0004151528
表1の結果から、6H−SiC基板溶解の抑制にはSi濃度が高いほど効果があるが、Si濃度が高すぎるとAlNの晶出が阻害される (AlNが初晶で晶出しない) ことが分かる。Si濃度をCd/Caのモル比が0.13〜0.32の範囲となるようにすることによって、SiC基板の溶解を抑制し、かつAlNが初晶として晶出するようになり、AlN単結晶の製造が可能となる。
実施例においてAlN単結晶の製造に用いた黒鉛ルツボを示す模式的断面図である。 実施例でAlNの晶出に採用した温度パターンを示す。 1800K断面におけるCu−Al−N三元系合金の状態図である。 1800K断面におけるNi−Al−N三元系合金の状態図である。 図3中の直線PQに沿った断面に対応する疑似二元系状態図である。 図4中の直線RSに沿った断面に対応する疑似二元系状態図である。 Cr−Al二元系状態図である。 Alと同程度の窒化物生成エネルギを有する他の金属元素に関する窒化物生成エネルギを示すグラフである。
符号の説明
1:黒鉛坩堝、2:6H−SiC基板、3:黒鉛製円板、4:合金融液

Claims (4)

  1. 成分aがCr、Mn、Fe、Co、CuおよびNiから選択された1種以上の金属、成分bがSc、Ti、V、Y、ZrおよびNbから選択された1種以上の金属、成分cがAl、成分dがSiであるabcd系合金であって、成分aのモル濃度Ca、成分bのモル濃度Cb、成分cのモル濃度Ccおよび成分dのモル濃度Cdが、
    0.01≦Cb/Ca≦0.1 、0.13≦Cd/Ca≦0.32、0.2 ≦Cc/(Ca+Cb)≦1
    の関係を満たす組成を有するabcd系合金の融液を窒素雰囲気下で調製し、窒素雰囲気を保持したまま、前記abcd系合金の融液を冷却するか、および/またはそれから前記成分aとbの少なくともいずれかを蒸発させることによって、AlN単結晶をSiC単結晶基板上にエピタキシャルに晶出させることを特徴とする、AlN単結晶の製造方法。
  2. 前記AlN単結晶が晶出するときに前記abcd系合金の融液中でAlNの過飽和状態が生じている、請求項1記載のAlN単結晶の製造方法。
  3. 前記abcd系合金の融液の調製を、予め窒素以外の不活性雰囲気下で溶製した合金塊を窒素雰囲気下で再溶解することにより行う、請求項1または2に記載のAlN単結晶の製造方法。
  4. 窒素雰囲気下で調製された前記abcd系合金の融液の温度が、その合金の液相線以上かつ2000℃以下の温度であり、この融液を窒素雰囲気を保持したまま、該合金の液相線と固相線との間の所定温度まで徐冷するか、またはこの所定温度まで冷却した後その温度に等温保持する、ことによりAlN単結晶の晶出を行う、請求項1〜3のいずれかに記載のAlN単結晶の製造方法。
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