JP4150300B2 - 角度検出装置及びそれを備えたプロジェクタ - Google Patents

角度検出装置及びそれを備えたプロジェクタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ライン式測距装置を利用した角度検出装置及びそれを備えたプロジェクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶プロジェクタなどのプロジェクタを使用した場合、プロジェクタの投射光軸及びこのプロジェクタにより投影されるスクリーン平面の相対的な位置関係により、スクリーン上に投影された画像に台形歪みと呼ばれる歪みが生じる不具合がある。この台形歪みは、プロジェクタがスクリーン前方から画像を投射する際に、見る者の邪魔にならないようにプロジェクタの位置がスクリーンの中心からずらされるため、プロジェクタの投射光軸がスクリーン平面に対して垂直ではなく傾斜し、この結果、スクリーン上部がスクリーン下部よりもプロジェクタから遠く(又は近く)なることにより発生する。また、スクリーン右側がスクリーン左側よりもプロジェクタから遠く(又は近く)なることによっても発生する。
【0003】
従来より、この台形歪を自動的に補正するために、スクリーン平面がプロジェクタ投射光軸に対して垂直な状態からどれだけ傾斜しているかを示す傾斜角度を自動的に検出して、検出された傾斜角度に応じて、プロジェクタ内部の映像回路において投影画像とは逆の台形歪を持つ画像を生成してそれを投影する電気的補正方法や、プロジェクタの投射光学系の投射レンズ(コンデンサレンズ)の傾きを調整する光学的補正方法が用いられている(特許文献1)。
【0004】
プロジェクタの投射光軸がスクリーン平面に対して垂直な状態からどれだけ傾いているかの相対的な傾斜角度を自動的に検出するため、従来の角度検出装置としては、特許文献1に示されるものがある。この特許文献1に記載されているものは、プロジェクタ本体1の正面の上下に所定距離だけ離間して配置された2つのアクティブ測距センサにより、スクリーンとのそれぞれの距離を測定して、相対的な傾斜角度を求めるものである。
【0005】
【特許文献1】
特開平2000−122617号公報(段落0044及び図2参照)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載された従来技術の角度検出装置では、2つの距離をアクティブ測距センサで測定して、プロジェクタの投射光軸がスクリーン平面に対して垂直な方向から傾いた相対的な傾斜角度を求める構成であるため、2つの距離測定の内のいずれか一方又は両方がノイズ等のために正しく測定されないと、傾斜角度の検出精度が悪化してしまい、正しく台形歪の補正ができないという問題点があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、ノイズ等が存在していても傾斜角度をできるだけ正確に検出できるようにして、従来の問題点を解決したライン式測距装置を利用した角度検出装置及びそれを備えたプロジェクタを提供することである。
【0008】
なお、上記問題点を解決するために、本出願人は平成14年12月3日付けで特願2002−351004号を出願しているが、本発明はこの先願発明にも関連する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明によれば、同一平面上に基線長だけ離間して配置された一対のレンズと、該一対のレンズから所定距離だけ離間して上記基線長方向に延びるように配置されて上記一対のレンズを介して測定対象がその上に結像されるラインセンサと、該ラインセンサからの出力に基づいて上記基線長及び上記ラインセンサを含む平面上において複数の異なる測距方向上にある上記測定対象上の複数の異なる位置までの距離をそれぞれ演算する演算部とを備えたライン型測距装置と、上記演算部の演算結果である距離の信頼性の有無を、上記複数の位置の内からいくつかの上記位置を含む小グループを形成して、該小グループに含まれる上記位置までの上記距離の大小に応じて上記小グループ内の上記演算結果の相互関係に基づく判定値により判定する判定部と、上記判定部で信頼性有りと判定された演算結果に基づき、上記基線長及び上記ラインセンサを含む平面上で、上記の上記同一平面に対する傾斜角度を算出する傾斜角度算出部とを含むことを特徴とする角度検出装置が提供される。
【0010】
本発明のかかる構成によれば、ライン式測距装置により測定対象上に直線的に並んだ複数の位置までの距離を測定する際、測定距離が直線的に変化するという原理に基づいて、測定対象上のいくつかの位置からなる各小グループ毎に測定された距離の相互の信頼性の有無を距離の大小に応じて判定することが可能なので、測定対象上の1つの位置までの距離測定がたとえノイズ等又は製造誤差に起因して正しくできない場合でもその影響を少なくすることができる。例えば、距離が大きい場合は三角測距法による測定誤差も大きいから測定距離が直線的に変化するという原理に基づく判定基準を比較的緩やかにし、距離が小さい場合は三角測距法による測定誤差も小さいから測定距離が直線的に変化するという原理に基づく判定基準を比較的厳格にする。このように、信頼性の有る測距結果を距離の大小に応じた判定基準で判定して角度検出に使用することで、ノイズや製造誤差の影響を少なくして精度の高い角度検出ができる。さらに、1つのライン式測距装置を備えることにより、測定対象上の互いに異なる複数の位置までの距離を測定することが可能となるため、従来装置のように測定位置の増大に応じて測距装置を増やす必要が無く、角度検出装置の構成が簡略化できる。
【0011】
請求項2に記載された本発明によれば、請求項1に記載において、上記判定部は、上記演算結果が上記小グループ内の演算結果により決定されるべき所望の直線に対応しているか否かに基づいた判定値により、上記演算結果の信頼性の有無を判定することを特徴とする角度検出装置が提供される。
【0012】
本発明のかかる構成によれば、ライン式測距装置により測定対象上に直線的に並んだ複数の位置までの距離を測定する際、測定距離が直線的に変化するという原理に基づいて、いくつかの測距結果の小グループ内において、測定結果の距離が互いに直線的な関係を有するか否かにより、距離測定の演算結果の信頼性の有無を判定することで、測定対象上の1つの位置までの距離測定がノイズ等又は製造誤差に起因して正しくできない場合でもその影響を少なくすることができる。
【0013】
請求項3に記載された本発明によれば、請求項1に記載において、上記判定部は、上記演算結果が上記小グループ内の上記演算結果により決定されるべき所望の信頼性判定領域内に含まれるか否かに基づいた判定値により、上記演算結果の信頼性の有無を判定することを特徴とする角度検出装置が提供される。
【0014】
本発明のかかる構成によれば、ライン式測距装置により測定対象上に直線的に並んだ複数の位置までの距離を測定する際、測定距離が直線的に変化するという原理に基づいて、いくつかの測距結果の小グループ内において、測定結果の距離が互いに直線的な関係を有するか否かにより、距離測定の演算結果の信頼性の有無を判定することが可能となり、測定対象上の1つの位置までの距離測定がノイズ等又は製造誤差に起因して正しくできない場合でもその影響を少なくすることができる。
【0015】
請求項4に記載された本発明によれば、請求項2に記載において、上記小グループが互いに隣接した3つの位置を含み、上記判定部が、上記3つの位置の両端の2つの位置の演算結果により決定されるべき上記所望の直線に、真中の位置の演算結果が対応しているか又は含まれるかに基づいた判定値により判定することを特徴とする角度検出装置が提供される。
【0016】
請求項5に記載された本発明によれば、請求項3に記載において、上記小グループが互いに隣接した3つの位置を含み、上記判定部が、上記3つの位置の両端の2つの位置の演算結果により決定されるべき上記信頼性判定領域内に、真中の位置の演算結果が対応しているか又は含まれるかに基づいた判定値により判定することを特徴とする角度検出装置が提供される。
【0017】
本発明のかかる構成によれば、上記小グループが互いに隣接した3つの位置を含み、上記判定部が、測定対象である平面的物体上の位置の測定距離が直線的に変化するという相互関係に基づいているかどうかを判定可能なように、両端の2つの位置の測距結果により決定されるべき所望の直線又は信頼性判定領域内に、真中の位置の測距結果が対応しているか又は含まれるかを判定して、真中の位置の測距結果が上記相互的な関係から所定値以上逸脱している場合は信頼性無しと判定して以後の角度検出処理からは排除し、真中の位置の測距結果が上記相互的な関係から所定値内に留まっている場合は信頼性有りと判定して以後の角度検出処理に使用する。この結果、精度の高い角度検出装置が達成できる。
【0018】
請求項に記載された本発明によれば、請求項2又は3のいずれかにおいて、上記ラインセンサは、上記一対のレンズにより生成される上記測定対象の一対の像の一方が結像される第1受光領域及び上記一対の像の他方が結像される第2受光領域を有し、上記第1受光領域中に上記複数の測距方向に対応した複数の測距演算領域が設定され、上記演算部は上記第1受光領域中の上記測距演算領域からの出力及び上記第2受光領域からの出力に基づいて上記複数の測距方向について測距演算することを特徴とする角度検出装置が提供される。
【0019】
本発明のかかる構成によれば、ラインセンサが測定対象の一対の像をそれぞれ結像する第1及び第2受光領域を有し、第1受光領域内に複数の測距演算領域を設定して、各測距演算領域に結像された像と対応した像を第2受光領域内で検出することで、複数の測距演算領域に対応した複数の測距方向にある測定対象の平面的物体上の位置までの距離測定を簡潔な構成で達成できる。
【0020】
請求項に記載された本発明によれば、請求項において、上記小グループが互いに隣接した3つの測距方向に対応した位置を含み、上記判定部が、上記3つの測距方向の両端の測距方向に対応した位置の2つの演算結果により決定されるべき所望の直線的関係に、真中の測距方向に対応した位置の演算結果が対応しているか否かに基づいた判定値により判定することを特徴とする角度検出装置が提供される。
【0021】
本発明のかかる構成によれば、判定部が、測定対象上の位置の測定距離が直線的に変化するという相互関係に基づいているかどうかを判定するため、両端の2つの位置の測距結果により決定されるべき所望の直線関係に、真中の位置の測距結果が対応しているか又は含まれるかを判定して、真中の位置の測距結果が上記相互的な関係から所定値以上逸脱している場合は信頼性無しと判定して以後の角度検出処理からは排除し、真中の位置の測距結果が上記相互的な関係から所定値内に留まっている場合は信頼性有りと判定して以後の角度検出処理に使用する。この結果、精度の高い角度検出装置が達成できる。
【0022】
請求項に記載の本発明によれば、請求項1乃至のいずれかに記載において、上記測定対象が、画像が投影されるスクリーンであることを特徴とする角度検出装置が提供される。
【0023】
本発明のかかる構成によれば、測定対象が画像が投影されるスクリーンであるから、このスクリーンの傾斜角度を検出してスクリーン上の画像の歪みを補正するために使用できる。
【0024】
請求項に記載の本発明によれば、画像をスクリーンに投影するプロジェクタであって、請求項に記載の角度検出装置と、上記角度検出装置が算出した傾斜角度に基づいて上記スクリーン上の上記画像の歪みを補正する画像歪み補正部とを含むことを特徴とするプロジェクタが提供される。
【0025】
本発明のかかる構成によれば、プロジェクタとスクリーンの相対的な傾斜角度に起因する画像の歪みを簡単な構成で自動的に正確に補正することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態による角度検出装置を備え、検出したスクリーン1の傾斜角度に基づいてスクリーン1に投影される画像の台形歪を電気的に補正するプロジェクタ2の概略ブロック図を示す。本実施の形態による角度検出装置は、水平面内及び垂直面内において、スクリーン1に対するプロジェクタ2の傾斜角度を検出するため、プロジェクタ2からスクリーン1平面上の水平方向及び垂直方向に並んだ複数の位置までの距離を測定する第1パッシブ型ライン式測距装置3及び第2パッシブ型ライン式測距装置4を備える。パッシブ型測距装置は、自らが発光したり送信したりせずに、スクリーン1に投影された画像を受光して距離を測定する。ライン式測距装置は、複数の光検出器セルが直線状に配列されたラインセンサを有する。
【0028】
図2は、図1に示すプロジェクタ2の正面を示す平面図である。なお、本実施の形態の角度検出装置は、プロジェクタに設けられるものに限定されるものではなく、また、スクリーンとの傾斜角度を検出するものに限られるものでもなく、一般に、平面的物体との相対的な傾斜角度検出に適用できる。プロジェクタ2は本発明の角度検出装置が用いられる用途の一例である。
【0029】
図2に示すように、図1の第1パッシブ型ライン式測距装置3は、プロジェクタ2の正面を構成する平面上に、水平方向に延びた第1の基線長k(図4)だけ離間して配置された一対のレンズ31a及び31bを備えた撮像部31を有する。同じく第2パッシブ型ライン式測距装置4は、プロジェクタ2の正面を構成する同じ平面上に、撮像部31の水平方向と直交する垂直方向へ延びて第2の基線長k’(図示せず)だけ離間して配置された一対のレンズ41a及び41bを備えた撮像部41を有する。図2に示すように、プロジェクタ2の正面を構成する同じ平面上には、さらに投射光学系の投射レンズ(コンデンサレンズ等を含んでもよい。)8が設けられていて、スクリーン1上に画像を投射する光を照射する。投射レンズ8の光軸はプロジェクタ2の正面を構成する平面に対して垂直の関係にある。
【0030】
図1を再び参照する。投射レンズ8からスクリーン1へ照射される光軸がスクリーン1平面に対して垂直の位置関係にあれば、スクリーン1の上下(又は左右)は、投射レンズ8からの距離が等しく、スクリーン1上の画像には台形歪は発生しない。しかし、実際は、上述の通り、プロジェクタ2は、スクリーン1の前方から照射する際に見る者の邪魔にならないように、スクリーンの中心からは下又は上方に偏移されて置かれるため、プロジェクタ2の投射レンズ8からスクリーン1へ照射される投射光軸はスクリーン1平面に対して垂直の位置関係から傾斜している。
【0031】
このため、スクリーン1の上下は、投射レンズ8からの距離が異なり、よって、スクリーン1上に投影された画像に台形歪を生ずる。上述の通り、この台形歪を補正するためには、投射レンズ8の光軸の傾斜を光学的に補正するか、又は、台形歪で小さく(大きく)投射される部分を大きく拡大(小さく縮小)する画像処理を電気回路で行なう電気的補正が、特許文献1に記載されているように行なわれる。
【0032】
しかし、これらの補正を自動的に行なうためには、まず、投射レンズ8の光軸がスクリーン1の平面の垂直方向から傾斜した傾斜角度、すなわち、プロジェクタ2の正面を構成する平面に対するスクリーン1の平面の傾斜角度、を自動的に正確に測定することが必要である。
【0033】
本発明の角度検出装置は、以下に詳細に説明するように、第1及び第2パッシブ型ライン式測距装置3及び4を備えて、プロジェクタ2の正面からスクリーン1上の水平(第1パッシブ型ライン式測距装置3の基線長方向に対応)及び垂直(第2パッシブ型ライン式測距装置4の基線長方向に対応)方向に沿った複数の位置までの距離を測定することにより、プロジェクタ2の正面を構成する平面に対するスクリーン1の平面の傾斜角度を、水平面内及び垂直面内において正確に測定することができる。
【0034】
第1及び第2パッシブ型ライン式測距装置3及び4は、それぞれ演算部32及び42を有し、それぞれ撮像部31及び41からの出力信号が入力される。演算部32及び42からの出力信号は本発明の構成を含んだ制御回路5に入力される。制御回路5は、第1及び第2パッシブ型ライン式測距装置3及び4を制御すると共に、図示しないパーソナル・コンピュータ等の機器から入力画像を入力して画像情報を出力する投影画像生成部6及び投射レンズ8へ画像出力する表示駆動部7を制御する。制御回路5は、本発明に従って演算部32及び42からの出力に基づいてプロジェクタ2の正面を構成する平面に対するスクリーン1のそれぞれ水平方向及び垂直方向の相対的な傾斜角度を算出する。次ぎに、制御回路5は、算出された傾斜角度に基づいて、台形歪を補正するように投影画像生成部6及び/又は表示駆動部7を制御して、スクリーン1の上下及び/又は左右に投影される画像の拡大又は縮小をする。しかし、上述した通り、台形歪の光学的補正又は電気的補正自体は公知であるので(例えば、特許文献1を参照)、これ以上説明しない。制御回路5及び演算部32及び42は、1つのマイクロプロセッサ(CPU)9で構成することができる。
【0035】
プロジェクタ2は、メモリ部10を有し、本発明の構成に必要なデータや命令を記憶していて、制御回路5及び演算部32及び42等に随時にデータや命令を供給し又は制御回路5及び演算部32及び42等からデータを受取る。メモリ部10は、不揮発性のフラッシュメモリ等及び揮発性のRAM等の2つのタイプのメモリ装置を含み、本発明に必要な命令や長期的に使用されるデータは不揮発性のメモリ装置に記憶され、一時的にのみ使用されるデータは揮発性のメモリ装置に記憶される。
【0036】
次ぎに図3を参照して、本実施の形態によるプロジェクタ2の構成を機能ブロックを使用して説明する。なお、説明の簡潔にするために、第1パッシブ型ライン式測距装置3の構成についてのみ説明するが、第2パッシブ型ライン式測距装置4も同様に構成されている。プロジェクタ2の正面を構成する平面上に、水平方向に基線長k(図4)だけ離間された一対のレンズ31a及び31bの下には、これらのレンズ31a及び31bから焦点距離f(図4)だけ離間されて、ラインセンサ31c及び31dがそれぞれ基線長k(図4)方向に沿って配置されている。ラインセンサ31c及び31dは直線状に配列された所定数、例えば、104個、の光検出素子(画素)を有する一対のラインCCD又はその他のライン型撮像素子である。撮像部31から、出力部31eを介して、レンズ31a及び31bによりラインセンサ31c及び31dの各画素上に結像された画像の光量に対応した電気信号が直列的に出力される。
【0037】
A/D変換部32aは、撮像部31の出力部31eから出力されたアナログ電気信号をデジタル信号に変換する。ラインセンサ31c及び31dからのデジタル化された出力信号はそれぞれ映像データ信号列IL及びIRとして、メモリ領域32b内にその後の処理のために記憶される。従って、メモリ領域32b内にはそれぞれ104個のデータ列から成る一対の映像データ信号列IL及びIRが記憶される。メモリ領域32bはメモリ部10内に設けても良い。
【0038】
フィルタ処理部32cは、ラインセンサ出力信号から直流成分を取除いて(フィルタリング)、画像に対応した空間周波数成分だけを含んだ有用な信号に映像データ信号列IL及びIRを変える。相関演算部32dは、後で図4及び図5を参照して説明するように、映像データ信号列IL及びIR内から空間的に近接した例えば26個の画素グループからなる部分映像データ群iLm(基準部)及びiRn(参照部)をそれぞれ選択的に取り出して、データの一致度を計算するために両部分映像データ群iLm及びiRnを互いに比較する。例えば、一方の部分映像データ群iLmを基準部として固定して、他方の部分映像データ群iRnを参照部としてIR内で画素を1つずつすらしながら、互いに比較を繰り返す。最大相関度検出部32eは、一対の映像データ信号列IL及びIR内で最もデータの一致度の高い2つの部分映像データ群iLm及びiRnを検出する。
【0039】
補間演算部32fは、最大相関度検出部32eで得られた最大の一致度の部分映像データ群iLm及びiRnの位置間隔を、既知の補間方法により画素ピッチ単位の位置間隔よりもより正確な位置間隔に補間する。この補間演算部32fにより補間された位置間隔に基づいて、位相差検出部32gは、一対のラインセンサ31c及び31d上に結像された同一の測距対象物体の一対の像の相対的なずれ量(位相差)を算定する。
【0040】
コントラスト重心演算部32hは、後で図12を参照して説明するように、ラインセンサ31c及び31d上に結像された画像のコントラスト重心を求める。信頼性判定部32iは、算定された両ラインセンサ31c及び31d上に結像された位置の相対的なずれ量(位相差)の信頼性を判定する。この信頼性の判定は、例えば、もし、距離測定対象の物体が両ラインセンサ31c及び31d上に正しく結像されているならば、最大相関度検出部32eにおいて得られる一致度が所定値以上となるはずである。従って、もし、最大相関度検出部32eにおいて得られる一致度がたとえ相対的に最高であったとしても、所定値未満の一致度であれば信頼性が低いとして、信頼性判定部32iでその測定結果を排除する。もし、最大相関度検出部32eにおいて得られる一致度が所定値以上であると、データの信頼性有りとして、CONF_FLG1=OKと設定する。以上の撮像部31及び演算部32の構成は周知であり、例えば、特許文献2及び特許文献3に記載されているため、これ以上の説明は省略する。
【0041】
【特許文献2】
特許第3230759号公報
【特許文献3】
特公平4−77289号公報
【0042】
プロジェクタ2は、さらに本発明の実施の形態による制御回路5を有し、後で詳細に説明するように、空間的に隣接したいくつかの測定位置の小グループの測距結果の信頼性を距離に応じて判定するための相互信頼性判定部51と、測距結果から傾斜角度を求めるための演算を行なう角度演算部53を含む。角度演算部53で算出されたスクリーン1の傾斜角度に基づいて、台形歪みを補正するための補正量が、投影画像生成部6及び/又は表示駆動部7に与えられる。これによりスクリーン1上の台形歪みが補正される。なお、メモリ部10がマイクロプロセッサ(CPU)9と接続されていて、本実施の形態に必要な命令コード及びデータの保存及び提供を行なう。
【0043】
次ぎに図4を参照して、パッシブ型ライン式測距装置3及び4の動作原理(外光三角測距方式)を説明する。第1パッシブ型ライン式測距装置3は、プロジェクタ2の正面を構成する平面上に水平方向へ延びて基線長kだけ離間された一対のレンズ31a及び31bと、この基線長kからレンズ31a及び31bの焦点距離fだけ離間して基線長k方向と同じ水平方向に沿って延びた一対のラインセンサ31c及び31dを含んでいる。第1パッシブ型ライン式測距装置3は、基線長kとラインセンサ31c及び31dを含んだ平面(水平面)内に位置するスクリーン1の平面上の複数の位置の距離を測定して、基線長kとラインセンサ31c及び31dを含んだ平面(水平面)内において、プロジェクタ2の正面とスクリーン1平面との間の相対的な傾斜角度を算出する。
【0044】
他方、第2パッシブ型ライン式測距装置4は、プロジェクタ2の正面を構成する平面上に垂直方向へ延びた基線長k’(図示せず)だけ離間された一対のレンズ41a及び41bと、この基線長k’(図示せず)からレンズ41a及び41bの焦点距離fだけ離間して基線長k’(図示せず)方向と同じ垂直方向に沿って延びた一対のラインセンサ41c(図示せず)及び41d(図示せず)を含んでいる。第2パッシブ型ライン式測距装置4は、基線長k’(図示せず)とラインセンサ41c(図示せず)及び41d(図示せず)を含んだ平面(垂直面)内に位置するスクリーン1の平面上の複数の位置の距離を測定して、基線長k’(図示せず)とラインセンサ41c(図示せず)及び41d(図示せず)を含んだ平面(垂直面)内において、プロジェクタ2の正面とスクリーン1平面との間の相対的な傾斜角度を算出する。
【0045】
説明を簡潔にするため、ここでは第1パッシブ型ライン式測距装置3についてのみ説明をして、第2パッシブ型ライン式測距装置4については説明を省略するが、動作原理が同じであるため同じ説明が第2ライン型パッシブ測距装置4についても、水平方向を垂直方向に置き換えるだけで適用される。
【0046】
図4(a)において、一対のレンズ31a及び31bが、プロジェクタ2の正面を構成する平面上に水平方向に延びた所定の基線長kだけ離間して配置されている。プロジェクタ2の正面を構成する平面の下には、これら一対のレンズ31a及び31bからそれらの焦点距離fだけそれぞれ離間され、基線長k方向(水平方向)に延びた一対のラインセンサ31c及び31dが配置されている。ラインセンサ31c及び31dは、その中央部分がそれぞれレンズ31a及び31bの光軸31ax及び31bx上にほぼ位置するように配置されていて、これらラインセンサ31c及び31d上に、それぞれ対応するレンズ31a及び31bにより距離測定対象のスクリーン1上のある位置の画像1Aが結像される。
【0047】
図4(a)においては、スクリーン1上の測定位置1Aが、異なる方向の光路A及びBを通って、それぞれのレンズ31a及び31bを介して、ラインセンサ31c及び31d上に結像されている。
【0048】
もし、測定位置1Aが無限遠の位置に存在すると仮定した場合、一対のレンズ31a及び31bから焦点距離fにあるラインセンサ31c及び31d上には、測定位置1Aがレンズ31a及び31bのそれぞれの光軸31ax及び31bxと交差する基準位置31cx及び31dxに結像される。
【0049】
次ぎに、測定位置1Aが無限遠位置からレンズ31aの光軸31ax上の方向Aに沿って近づき、図4(a)の位置、すなわち、距離LCに達すると、測定位置1Aはラインセンサ31c上においては、基準位置31cx上に結像されたままであるが、ラインセンサ31d上においては、レンズ31bにより基準位置31dxからずれ量αだけずれた位置に結像される。
【0050】
三角測距法の原理から、測定位置1Aまでの距離LCは、LC=kf/αで求められる。ここで、基線長kと焦点距離fは予め知られている既知の値であり、ラインセン31d上の基準位置31dxからのずれ量αを検出すれば、距離LCが測定できる。これが外光三角測距のパッシブ型ラインセンサ測距装置の動作原理である。ずれ量αの検出及びLC=kf/αの演算は、図1中の演算部32で実行される。
【0051】
すなわち、ラインセンサ31dの基準位置31dxからのずれ量αの検出は、一対のラインセンサ31c及び31dから出力される一対の映像データ信号列IL及びIRからそれぞれ抽出した部分映像データ群iLm及びiRnについて、演算部32が相関演算を行なうことにより検出する。この相関演算は周知である(例えば、特許文献2参照)。
【0052】
このため、相関演算については詳細な説明を省略して以下の概要的な説明に留める。図4(b)に示すように、相関演算は、部分映像データ群iLm及びiRnを互いに重ねた時に最も一致度が高くなる領域を、重ね合わせる部分映像データ群iLm及びiRnをラインセンサ31c及び31d上で相対的にずらしながら検出していく演算である。図4(b)においては、一方のラインセンサ31cからの部分映像データ群iLmを基準位置31cxに位置を固定して、基準部として使用する。他方のラインセンサ31dからの部分映像データ群iRnは参照部として位置を一画素ずつずらして行き、基準部と最も一致度の高い部分映像データ群iRnを探す。最も一致度の高い部分映像データ群iRnを発生するラインセンサ31d上の位置とそのラインセンサ31dの基準位置31dxと間の間隔がずれ量αである。
【0053】
ラインセンサ31c及び31dの各々は、後述するように所定数の光検出器セル(画素)を所定長の直線上に配列した一対のラインCCDで構成されているから、ずれ量αは、部分映像データ群iRnの映像データ信号列IR内の画素位置と画素ピッチから容易に求めることができる。このようにして、レンズ31aの光軸31axと同じ方向Aにある測定位置1Aまでの距離LCを、ずれ量αを検出することにより測定できる。
【0054】
次ぎに、図5を参照して、図4とは異なる方向にある測定位置1Bまでの距離LR’及びLRを測定する原理を説明する。図5(a)に示すように、測定位置1Bが、異なる方向の光路C及び光路Dを通って、それぞれのレンズ31a及び31bを介してラインセンサ31c及び31d上に結像されている。
【0055】
もし、測定したい方向Cの無限遠位置に測定位置1Bが存在すると仮定した場合、一対のレンズ31a及び31bにより一対のラインセンサ31c及び31d上に結像される測定位置1Bの像の中心を、互いに基線長kだけ離間した基準位置31cy及び31dyとする。次ぎに、この無限遠位置にある測定位置1Bが測距方向Cに沿って近づいて図5(a)の位置に来ると、レンズ31aにより結像される測定位置1Bの像のラインセンサ31c上の基準位置31cyには変化ないが、レンズ31bにより結像される測定位置1Bの像のラインセンサ3dc上の位置は基準位置31dyからずれ量α’だけずれる。
【0056】
三角測距の原理から、測定位置1Bまでの距離LRは、LR=kf/(α’cosβ)となる。なお、角度βは、基線長kの垂直線、すなわち、レンズ31aの光軸31ax、に対する測距方向Cの傾き角であり、測定方向Cを決定することにより確定される角度である。基線長k、焦点距離f及びcosβは既知の値なので、ずれ量α’を検出すれば、距離LRを測定できる。
【0057】
レンズ31a及び31bが配置されたプロジェクタ2の正面を構成する同一平面(基線長k方向)から測定位置1Bまでの距離LR’は、LR’=LRcosβ=kf/α’で求められる。すなわち、距離LR’は、ずれ量α’を検出すれば、既知の値である基線長k及び焦点距離fから求めることができる。すなわち、距離LR’を測定するためには、角度βは不要である。
【0058】
ずれ量α’を検出するためには、上述した相関演算を行なう。図5(b)に示すように、一方のラインセンサ31cからの基準位置31cyに対応する部分映像データ群iLmを基準部として位置を固定し、他方のラインセンサ31dからの部分映像データ群iRnを参照部として位置を1画素づつずらして互いに重ね合せて行くことにより、最も基準部iLmのデータと最も一致度の高いデータを持つ参照部iRmを見つける。
【0059】
ラインセンサ31c及び31dの各々は、後述するように所定数の光検出器セル(画素)を直線上に所定長に配列した一対のラインCCDで構成されているから、ずれ量α’は、部分映像データ群iRnの映像データ信号列IR内の位置(画素番号)及び部分映像データ群iLmの映像データ信号列IL内の位置(画素番号)と画素ピッチから容易に求めることができる。
【0060】
なお、上述した相関演算の方法において、一方のラインセンサ31cからの部分映像データ群iLmを基準部として固定し、他方のラインセンサ31dからの部分映像データ群iRnを参照部としてその位置を1画素ずつずらして互いの一致度の高さを検査するとした。しかし、測距方向を両レンズ31a及び31bの中間位置からの方向とする場合は、ラインセンサ31c及び31d上で部分映像データ群iLm及びiRnの位置を共に反対方向に移動させながら、部分映像データ群iLm及びiRm間で互いの一致度の高さを検査するようにしてもよい。
【0061】
次ぎに図6を参照して、一対のラインセンサ31c及び31dの内、1方のラインセンサ31cを詳細に説明する。他方のラインセンサ31dはラインセンサ31cと同様に構成されている。図6に示すように、ラインセンサ31cは多数、例えば、104個の光検出器セル(画素)が直線的に配列されたリニアCCD(電荷結合素子)又はその他の線形の撮像素子で構成されている。104個の光検出器セル(画素)は、図6中左端から右端へ順に画素番号が付けられている。これらの光検出器セル(画素)は、隣接する26個単位のグループにより7つの測距演算領域を31c1(1〜26)、31c2(13〜38)、31c3(27〜52)、31c4(39〜64)、31c5(53〜78)、31c6(65〜90)及び31c7(79〜104)を構成している。但し、括弧内の数は光検出器セル(画素)番号である。各測距演算領域31c1乃至31c7は、その26個の光検出器セル内、前半が前隣りの測距演算領域に含まれ且つ後半が後隣りの測距演算領域に含まれていて、各測距演算領域31c1乃至31c7は両隣の測距演算領域と互いに半分ずつ重複している。
【0062】
各測距演算領域31c1乃至31c7内の光検出器セル(画素)からの信号は、図4及び図5中のラインセンサ31cの映像データ信号列ILの各部分映像データ群iLmに対応する。各測距演算領域31c1乃至31c7の中心位置a(13)、b(26)、c(38)、d(52)、e(64)、f(78)及びg(90)の各々は(但し、括弧内は画素番号である)、測距方向を定める基準位置となる。この結果、本実施の形態のラインセンサ31c及び31dを使用した測距装置3は、基準線kと同じ平面(水平面)内にあるスクリーン1上の7つの離間した位置までの距離を測定することができる。ただし、実際の測距方向は、図3のコントラスト重心演算部32hにより後述する通り、測距演算領域内でのコントラスト重心位置により補正され得る。図6には、他方のラインセンサ31dに対応する基準位置a’、b’、c’、d’、e’、f’及びg’が示されていて、参照部としてラインセンサ31c中の測距演算領域と相関演算する際のずれ量を求める際に使用される。
【0063】
本発明により距離測定するスクリーン1上の複数の異なる位置は、7つに限る必要はなく、適宜、適当な数、例えば11とすることも、ラインセンサ31c及び31dの画素数又は測距演算領域の数を適当に選択することで可能である。
【0064】
例えば、162個の光検出器セル(画素)数のラインCCDを用いて27個の光検出器セル(画素)グループ単位で11の測距演算領域を設けていも良い。各領域は27個の画素数の内、13乃至14個の画素が隣接する測距演算領域と重複して使用される。この例では、スクリーン1上の基準線方向(水平方向)に沿った11の複数の位置の内の1つを選択することができる。
【0065】
次ぎに図7を参照して説明する。図7は、ライン型測距装置3及び4の初期調節をするため、プロジェクタ2のスクリーン1の相互の位置関係を所定の位置関係にした様子を示す。すなわち、プロジェクタ2からの投射光軸がスクリーン1に垂直になるように、スクリーン1を予め基線長k及びk’に対して平行にして、プロジェクタ2からライン式測距装置3及び4の初期調節に適した画像を投射する。初期調節とは、例えば、レンズ31a及び31bは収差を持つ。このため、スクリーン1上の基線長k方向に沿った異なる測定位置がラインセンサ31c及び31dに結像する際、直線上に結像されるのでなく、実際は、歪む。初期調節はこのレンズ収差による歪みを補正するための補正係数を計算して、メモリ部10に記憶して、以後の演算部32及び42により使用する。ライン式測距装置3は、ラインセンサ31c上の7つの測距演算領域31c1乃至31c7を使用して、7つの測距方向のスクリーン1上の距離を測定する。簡潔にするため、図7中においては7つの方向の内、ラインセンサ31c上の3つの測距演算領域31c3、31c5、31c7に対応した3つの測距方向のスクリーン1上の1C、1E、1Gの位置のみを図示している。
【0066】
ライン式測距装置3は水平面においてスクリーン1平面の基線長k方向に対する傾斜角度を測定し、ライン式測距装置4は垂直面内においてスクリーン1平面の基線長k’(図示しない)方向の傾斜角度を測定する。説明の簡潔のためにライン式測距装置3による水平面においてスクリーン1平面の基線長k方向に対する傾斜角度の測定についてのみ説明する。しかし、本実施の形態の説明はライン式測距装置4によるスクリーン1の垂直面内の傾斜角度の測定にも同様に適用される。
【0067】
次ぎに図8乃至図11を参照して、パッシブ型ライン式測距装置3を用いて、スクリーン1の傾斜角度を測定する方法を説明する。説明の簡略のために、ラインセンサ31cの2つの測距演算領域31c3及び31c7の2つの測距方向C及びGを用いて、これら2つの測距方向C及びGにあるスクリーン1平面上の2つの測定位置1C及び1Gまでの2つの距離LR’及びLL’を、図5で説明した方法で測定する。本実施の形態では2つの距離LR’及びLL’しか測定しないが、実際は、7つ(又は11)の測距方向にあるスクリーン1上の7個(又は11個)の測定位置までの距離が測定される。
【0068】
スクリーン1上の測定位置1Cや1Gは、パッシブ型ライン式距離測定に適した画像であるならば、プロジェクタ2の電源が投入された時に投射レンズ8を介してスクリーン1に最初に投影される製造メーカーのロゴマーク等を含んだ画像でもよく、また、プロジェクタ2の動作中に定期的に角度検出操作する際には、スクリーン1上の測定位置1C及び1Gは、スクリーン1上に投射されている任意の画像であってもよい。
【0069】
ラインセンサ31cの2つの測距演算領域31c3及び31c7のそれぞれの測距方向C及びGの基準位置c(38)及びg(90)間の距離Lは、その括弧内の画素番号及び画素ピッチより予め知られている値である。
【0070】
基線長kに平行な直線k2上にある測定位置1Cから測定位置1Gを通る基線長kに平行な直線k1上に垂直に下ろした点をC’とした場合、測定位置1C〜点C’間の距離は、LR’−LL’に等しい。このLR’−LL’の大きさは、スクリーン1の傾斜角度θ1があまり大きくない場合、直線k1上で測定位置1Gから距離(LL’*L/f)にある点をC”として、点C”からの直線k1と直交する線とスクリーン1との交点1C’とした場合の、距離1C’−C”と近似できる。通常は、予め人手等によりスクリーン1とプロジェクタ2の相対的な位置関係は調整されていることが多いから傾斜角度θ1はあまり大きくならず、多くの場合にこの近似は妥当である。測定位置1Gと点C”とレンズ31aの中心とで構成される三角形と基準位置cとgおよびレンズ31aの中心とで構成される三角形とは相似の関係にあり、ラインセンサ31c上の2つの測距演算領域31c3及び31c7の2つの基準位置c(38)及びg(90)間の距離Lは、測定位置1G〜点C”間の距離に対応しているから、この傾斜角度θ1の値は、相似形の関係と三角関数を使用して、
θ1=arctan{(LR’−LL’)/(LL’*L/f)}
と求めることができる。
【0071】
従って、プロジェクタ2の制御回路5により、上式の演算をすることにより、水平面内におけるスクリーン1とプロジェクタ2の基線長k方向の傾斜角度θ1を算出できる。この傾斜角度θ1の大きさに基づいて、図1の制御回路1が投影画像生成部6及び/又は表示駆動部7に、画像の台形歪みを補正する指示を与えることができる。しかし、上式から求められる傾斜角度θ1は、測定位置1G及び1Cまでの距離測定結果LR’及びLL’の精度に依存する。本発明は、この測距結果の精度及び信頼性を距離の大小に応じた判定基準を使用することで高めて、正確な角度検出を行なうことができるようにする。これは、三角測距法では、遠距離では近距離に較べて実距離への誤差量が大きく、もし、遠距離も近距離も同じ判定基準を使用すると、遠距離では判定基準が常に厳しすぎるか、近距離では判定基準が常に緩すぎるかのどちらかになる問題を解決するためである。
【0072】
例えば、基線長k=6.45mm、焦点距離f=13.2mm、画素ピッチが0.015mmのラインセンサ31cと31dを使用した場合に、位相差検出方式により算出されたシフト(ずれ)量αの誤差が0.04シフト(画素数)であったとする。この時、距離1mでのシフト(ずれ)量αが5.676シフト(画素数)であると、+0.04シフト(画素数)ずれた場合、実距離換算で0.993mとなり、実距離誤差は0.007mとなる。しかし、これを距離10m相当で考えた場合、シフト(ずれ)量αが0.5676シフト(画素数)、よって、+0.04シフト(画素数)ずれた場合、9.342mとなり、実距離誤差は0.658mとなる。
【0073】
このため、本発明では、後で図18を参照して詳述するように、測距結果の信頼性を判定するために、隣接する3つの位置の距離が直線上にある相互関係を有するかどうかの判定基準を、距離の大小に応じて、近距離の場合は厳しくし、遠距離の場合は緩やかにしている。
【0074】
なお、図8において、測定距離を、各測定位置1C及び1Gから基線長k方向に下ろした垂直線LR’及びLL’の長さに代えて、レンズ31aから各測距方向D及びGに沿った各測定位置1C及び1Gまでの長さとしてもよい。この場合については図13において説明する。
【0075】
もし、角度検出に高い精度が求められる場合には、角度検出に用いる2つの測距演算領域31c3及び31c7の基準値c(38)及びg(90)間の距離Lに代えて、各々の測距演算領域31c3及び31c7中のコントラスト重心位置の距離を使用しても良い。
【0076】
図12を参照して、図3のコントラスト重心演算部32hによるコントラスト重心位置を用いた距離測定を説明する。周知のように、パッシブ式測距は、2つのラインセンサ上に結像される一対の映像を重ね合せた時に最も一致度が高くなる場所を検出する動作を含むが、この一致度は一対の映像のコントラスト状態が一致しているか否かを検出するものである。
【0077】
従って、パッシブ式測距は、図12に示すようにある1つの測距演算領域31cnの設計上の測距方向が矢印J方向である場合、もし、測距演算領域31cn上に結像される測距対象の像が矢印K方向のみにコントラスト位置1Kが存在する像である場合、実際の測距方向は矢印J方向から矢印K方向にずれる。もし、測距演算領域31cn上に結像される測距対象の像が矢印M方向のみにコントラスト位置1Mが存在する像である場合、実際の測距方向は矢印J方向から矢印M方向にずれる。さらに、測距演算領域31cn上に結像される測距対象の像が矢印K方向及び矢印M方向にコントラスト位置1K及び1Mが存在する像である場合、実際の測距方向は矢印J方向から測定演算領域31cn上に結像された画像のコントラスト重心位置にずれる。
【0078】
従って、角度検出に使用する2つの測距演算領域間の距離に対応した値として、各測距演算領域中のコントラスト重心位置の距離を用いれば、精度の高い距離Lを使用することができ、角度検出精度が向上する。なお、コントラスト重心位置の求め方は、特許文献4に記載されており、公知である。
【0079】
【特許文献4】
特開平8−75985号公報
参考までに、本実施の形態においてコントラスト重心位置を求める数式1を以下に示す。
【0080】
【数1】
Figure 0004150300
ここで、L():基準部31c側センサーデータ
Sa :基準部31c側受光素子最小No.
Wn :部分群の受光素子数
t ;整数(一般的に1〜4)
ノイズの影響を解除するためには、差分の絶対値が所定値(ノイズキャンセルレベル)以下の場合は、総和に加えない。
なお、ラインセンサ31cの一列に配列された受光素子(画素)にはそれぞれ一連の通し番号(画素番号)がふってある。
【0081】
次ぎに図13を参照して、別の方法によるパッシブ型ライン式測距装置3を用いて傾斜角度θ1の計算方法を説明する。図13に示すように、パッシブ型ライン式測距装置3の基線長方向(プロジェクタ2の水平方向)に対するスクリーン1の傾斜角度をθ1とし、図5で説明した方法により、ラインセンサ31cの測距演算領域31c7の測距方向に沿って測距演算して算出されたスクリーン1までの距離がL1、測距演算領域31c3の測距方向に沿って測距演算して算出されたスクリーン1までの距離がL2とする。予め知られている測距演算領域31c3の測距方向と基線長方向に垂直な方向とがなす角度をβとし、同じく予め知られている測距演算領域31c7の測距方向と基線長方向に垂直な方向とがなす角度をγとする。傾斜角度θ1は、次式で計算される。
【0082】
θ1=arctan(L2cosβ−L1cosγ)/(L1sinγ+L2sinβ)
【0083】
次ぎに、図14を参照して説明する。本実施の形態によるパッシブ型ライン式測距装置3により距離が測定される測距方向は、ラインセンサ31cが例えば104画素列を有するラインCCDの場合は例えば7つであり(162画素列を有する場合は例えば11)、従って、7つの測距方向にある測定対象のスクリーン1上の7つの位置1A、1B、1C、1D、1E、1F、1Gまでの距離が測定される。本実施の形態のライン式測距装置3が測定する距離、すなわち、測距結果は、スクリーン1平面上の基線長k方向(水平方向)に沿った7つの測定位置1A、1B、1C、1D、1E、1F及び1Gからそれぞれ、基線長kを含む平面に下ろした垂線の長さである(例えば、図5のLR’又は図8のLL’、LR’に対応する長さ)。このパッシブ型ライン式測距装置3により測定された測距結果に基づいて、プロジェクタ2は上記されたθ1を求めるための2つの式の内の前者を使用して、スクリーン1の傾斜角度θ1を算出する。
【0084】
しかしながら、パッシブ型ライン式測距装置3により、複数の測定位置1A、1B、1C、1D、1E、1F及び1Gから基線長k方向に下ろした垂線の長さ(例えば、図5のLR’又は図8のLL’、LR’の距離)を測定した場合、測定対象のスクリーン1平面上の7つの位置1A、1B、1C、1D、1E、1F及び1Gまでの距離は、信頼性判定等のさまざまな手段により正確な測定値が得られるように補正しても、なお、図15(a)に示されるように、測距離演算領域31c1、31c2、31c3、31c4、31c5、31c6及び31c7(各領域の下の括弧内の数字は、図3のコントラスト重心演算部32hにより計算された各領域のコントラスト重心位置画素の番号)を横軸として、測定された距離(測距結果)を縦軸に取って示される、丸点の位置にある距離として測定される。
【0085】
測距結果が、スクリーン1平面上の複数の測定位置1A、1B、1C、1D、1E、1F及び1Gから基線長k方向に下ろした垂線の長さである場合(図5のLR’又は図8のLL’、LR’の場合)、本来ならば直線的に変化するはずであるが、現実の測距結果は、図15(a)の丸点に示すように必ずしも直線的に変化しない。このような直線関係からの逸脱は製造誤差や測定時のノイズ等に起因する。
【0086】
スクリーン1平面上の複数の測距結果は、本来はほぼ直線的に変化する関係にあり、この直線的変化から1つの傾斜角度θ1が一義的に算出されるべきである。しかし、実際は、ノイズ及び製造誤差等のさまざまな原因により、直線関係から逸脱した測距結果が図15(a)に示すように発生する。このため、複数の測距結果からスクリーン1の正確な傾斜角度θ1を一義的に算出することが困難となる。本発明はこの問題点を解決するため、測距結果が直線的に変化するという上記原理を用いて、測定対象の平面的物体上に直線的に並んだ複数の位置までの距離を測定する場合、直線的関係から逸脱した測距結果をデータの信頼性が無いとして排除して、直線関係を有する測距結果だけを使用して精度の高い角度検出を行なう。この際、前述したように三角測距法による測距結果は遠距離ほど測定誤差が大きくなるから、信頼性の有無の判定は、位置が近距離にある場合は比較的厳しい判定基準を使用し、位置が遠距離にある場合は比較的緩い判定基準を使用する。
【0087】
図16に、本発明の原理を説明するため、図6に示されたパッシブ型ライン式測距装置3のラインセンサ31c内の距離を測定するために使用される測距演算領域31c1乃至31c7を、模式的に示す。本実施の形態のラインセンサ31c内の各演算領域31c1乃至31c7は、隣りの演算領域と互いに半分の画素数を共有する関係になっている。例えば、領域31c1と領域31c2は半分の画素数を互いに共有し、領域31c2と領域31c3は互いに半分の画素数を共有している。図16は、このような本実施の形態で使用される図6のラインセンサ31c内の測距演算領域31c1乃至31c7間の画素の重複関係を、重複した部分を上側に配した模式図で示す。
【0088】
図16に示すような測距演算領域31c1乃至31c7を有するラインセンサ31cにより、スクリーン1のような平面上の直線的に並んだ複数の位置を測距する場合、領域31c1により測定された距離、領域31c2により測定された距離、及び領域31c3により測定された距離の3者の関係は、領域31c1と領域31c3により測定された距離の平均値が、領域31c2により測定された距離に等しくなる。何故ならば、測定対象は平面的物体であるため、その上に直線的に並んだ位置までの測距結果は直線的関係を有するからである。すなわち、測距結果同士は相互関係を有する。この相互関係は測定対象が平面的物体であることから起因する。一般的に、このようなラインセンサのN番目の測距演算領域とN+1番目の測距演算領域とN+2番目の測距演算領域でもって、スクリーン1のような平面物体上のある直線に沿った複数の位置を距離を測定した場合、N番目の領域による測定距離とN+2番目の領域による測定距離の平均値Sは、その中間のN+1番目の領域による測定距離Tとほぼ等しくなるはずである。
【0089】
本発明は、上記原理を用いて、複数の隣接した測距演算領域の測距結果から、中間の測距演算領域の測距結果Tが両隣の測距演算領域の平均値Sと所定の判定値以上離間している場合は、これらの測距演算領域の測距結果は信頼性が無いと判定して、以後の演算処理から排除する。すなわち、以下の(1)若しくは(2)により、測距結果の相互関係に基づく信頼性を判定する。
(1)|T−S|<判定値の時は信頼性有り、|T−S|≧判定値の時は信頼性無し。又は、
(2)|T/S−1|<判定値の時は信頼性有り、|T/S−1|≧判定値の時は信頼性無し。
【0090】
但し、判定値の大きさは、前述したように三角測距法による測距結果は遠距離ほど測定誤差が大きくなるから、位置が近距離にある場合は比較的厳しい判定値を使用し、位置が遠距離にある場合は比較的緩い判定値を使用する。すなわち、距離が設定値よりも大きい場合は、比較的大きい値の判定値を使用し、距離が設定値以下の場合は、比較的小さな判定値を使用する。
【0091】
図15(a)に示すように、上記相互関係(1)又は(2)に基づく信頼性判定を、N、N+1、N+2(但し、図15(a)においてはN=1〜5の自然数)の各3つの測距演算領域を含む5つの小グループ毎について行なう。そうすると、測距演算領域31c4の測距結果の値が両隣の測距演算領域31c3及び31c5の測距結果と直線関係に無いことが判明する。直線関係の有無は、小グループの両端の測距結果の平均値を真中の測距結果と比較してみれば容易に判定できる。すなわち、小グループ内の測距結果が直線関係にあれば、両端の測距結果の平均値Sと真中の測距結果Tとの差は所定の範囲内にあるはずである。このようにして、小グループ毎に両端の測距結果の平均値Sと真中の測距結果Tとの差が所定の範囲内にある場合は、CONF_FIG2=OKと設定し、所定範囲外である場合は、CONF_FIG2=NGと設定した例が、図15(b)の表に示されている。CONF_FIG2=NGと設定された測距結果を以後の角度検出処理から排除すれば、より精度の高い角度検出ができる。
【0092】
もし、図15(b)において、CONF_FIG2=OKと設定された測距結果が2つ以上なければ、上記の角度検出はできなくなってしまうので、CONF_FIG2=OKと設定された測距結果が1つ以下の場合は、CONF_FIG1=OKと設定された測距結果が2つ以上あれば、これらCONF_FIG1=OKと設定された測距結果を使用して、角度検出を行なうことになる。
【0093】
さらに、小グループ毎に平均化された測距結果の値を使用すれば、より精度の高い角度検出ができる。例えば、図15(b)に示されるCONF_FLG1=OK及びCONF_FLG2=OKの5つの測距結果から、互いに隣接した3つの測距演算領域31c2、31c3、31c4及び31c3、31c4、31c5同士等の2つの小グループ毎の平均化された値を使用して、上述した式から傾斜角度θ1を求める。もし、傾斜角度θ1が複数求められれば、そのうち最大値と最小値を除いた中央値又はその平均値を傾斜角度θ1として、傾斜角度を決定することができる。
【0094】
なお、プロジェクタ2の投射レンズ8を含む投射光学系が自動焦点機構を有していて、スクリーン1までの距離を自動的に検出して、スクリーン1上に投射された画像の自動焦点を行なう場合、スクリーン1までの距離としては、図15(b)に示されるCONF_FLG2=OKの4つ測距結果内の最大値及び最小値を除いた中央値又はそれらの平均値を選ぶことができる。もし、CONF_FLG2=OKの測距結果の数が少ない場合には、図15(b)に示されるCONF_FLG1=OKの測距結果から、最大値及び最小値を除いた中央値又はそれらの平均値の距離を選ぶこともできる。代替的に、測距結果の平均値、又は、ラインセンサ31cの中央の測距演算領域31c4の測距結果がCONF_FLG2=OKの場合(図15(b)の場合は異なる)は、それを使用してもよい。このようにして、精度の高い距離検出ができる。
【0095】
次ぎに、図17及び図18に示されるフローチャートを参照して、本発明の角度検出器の動作を説明する。
【0096】
まず、図17を図1と併せて参照しながら説明する。プロジェクタ2に電源が投入されると、又は、プロジェクタ2の動作中において定期的な角度検出動作が開始されると、制御回路5は外部の図示しないパーソナルコンピュータ等から入力画像データが入力されているかどうかを判断して、外部からの入力画像データがあれば、投影画像生成部6にその画像データに応じた表示データを出力させて、表示駆動部7及び投射レンズ8を介して画像をスクリーン1に投射する。もし、入力画像データがなければ、制御回路5はプロジェクタ2内に予め記憶された調整用コントラスト画像データ(例えば、ロゴマーク等を含んだ適当な画像データ)を投影画像生成部6に出力し、表示駆動部7及び投射レンズ8を介してその画像をスクリーン1に投射する(ブロック101)。
【0097】
上記の動作は、プロジェクタ2が持つ本来の画像投影機能により投射された画像を使用して角度を検出をするための動作であり、このようにパッシブ型ライン式測距装置3及び4は調整用コントラスト画像の投影専用の投光部が不要である。
【0098】
続いて、制御回路5は、パッシブ型ライン式測距装置3及び4の撮像部31及び41を動作させて(ブロック102)、スクリーン1上の水平面内及び垂直面内にある複数の位置までの距離を測定して、水平面内及び垂直面内のスクリーン1のプロジェクタ2に対する傾斜角度を検出する。なお、上述の通り角度検出操作スタート(ブロック101)は、プロジェクタ2の電源投入時に限らず、プロジェクタ2の動作中に随時に行なうことができる。この際には、スクリーン1上に投射されている任意の画像が角度検出のための測距に使用される。撮像部31及び41を動作させて、ラインセンサからデータを読出してA/D変換(図3中の32a)をする(ブロック103)。ラインセンサのセンサデータから直流成分を除去するためのフィルタ(図3中の32c)処理がされ(ブロック104)、その後に、各測距演算領域31c1乃至31c7に関して、相関演算(図3中の32d、32e)、補間演算(図3中の32f)、コントラスト重心演算(図3中の32h)、そして信頼性判定(図3中の通常の信頼性判定部32iによる、最大相関度検出部32eにおいて得られる一致度が所定値以上かの判定)を行い、この信頼性判定が合格すれば、CONF_FLG1=OKをセットする(ブロック105)。もし、2つ以上の測距演算領域でデータ信頼性判定(CONF_FLG1=OK)に合格していなければ(ブロック106)、以後の角度検出は不可能であるから(ブロック111)、動作を終了する(ブロック112)。
【0099】
2つ以上の測距演算領域でデータ信頼性に合格していれば(ブロック106)、図5を参照して説明した方法により距離を算出する(ブロック107)。距離を算出する際にはレンズ収差による補正や温度補正等の既知の補正をする。そして、3つ以上の測距演算領域でデータ信頼性判定(CONF_FLG1=OK)に合格しているかを見る(ブロック108)。もし、3つ以上の測距演算領域でのデータ信頼性(CONF_FLG1=OK)が合格していなければ(ブロック108)、本発明の相互信頼性判定は使用できないから、従来の傾斜角度θ1を求めるための上述した2つの式のいずれかを使用して角度演算をして(ブロック110)、終了する(ブロック112)。角度演算は、図3中の角度演算部53により処理される。
【0100】
もし、3つ以上の測距演算領域でのデータ信頼性判定(CONF_FLG1=OK)が合格していれば(ブロック108)、図18のサブルーチン処理による本発明の相互信頼性判定が適用される(ブロック109)。図18のサブルーチン処理で実行される相互信頼性判定を適用した後(ブロック109)、相互信頼性の有る2つ以上の距離測定結果が得られればそれらを用いて、傾斜角度θ1を求めるために上述した2つの式の前者を使用して角度演算がされて(ブロック110)、終了する(ブロック112)。
【0101】
このようにして、検出された傾斜角度θ1が制御部5により表示駆動部7又は投影画像生成部6に供給されて、スクリーン1上の画像の台形歪みを補正するため、上述したような電気的な又は光学的な補正動作を行なう。
【0102】
図18は、図17中のブロック109において実行される本発明の相互信頼性判定を行なうためのサブルーチンを示すフローチャートである。これらのサブルーチンは、図3に示される相互信頼性判定部51において実行される。
【0103】
図17のブロック109に入ると、図18のサブルーチン測距結果処理が開始されて(ブロック201)、N=1にセットされる(ブロック202)。そして、N、N+1、N+2の測距演算領域のデータ信頼性(CONF_FLG1=OK)がすべて合格しているかを検査する(ブロック203)。もし、連続した3つの測距演算領域のデータ信頼性(CONF_FLG1=OK)が合格していなければ、Nに1を加算して(ブロック212)、加算後のNが最終値(本実施の形態では、7)から1を引いた値であれば(ブロック213)、図17のブロック110に戻る。加算後のNが、最終値から1を引いた値でなければ(ブロック213)、ブロック203に戻る。もし、連続した3つの測距演算領域のデータ信頼性(CONF_FLG1=OK)が合格していれば(ブロック203)、領域Nの測距結果と領域N+2の測距結果の平均値Sを求める(ブロック204)。そして、領域N+1の測距結果をTとして(ブロック205)、SとTの差の絶対値Uを求める(ブロック206)。
【0104】
そして、領域N+1の測距結果の値T、すなわち、距離が設定値よりも大きいかどうかを判定し(ブロック207)、もし、大きければ、判定値1を使用する。もし、領域N+1の測距結果の値Tの距離が設定値以下であれば、判定値1よりも小さい値の判定値2を使用する。判定値1、2の大きさは、前述したように三角測距法による測距結果は遠距離ほど測定誤差が大きくなるから、領域N+1の測距結果の値Tが設定値よりも近距離にある場合は比較的厳しい判定値2を使用し、設定値よりも遠距離にある場合は比較的緩い判定値1を使用する。
【0105】
もし、領域N+1の測距結果の値Tが設定値よりも大きい遠距離にある場合でSとTの差の絶対値Uが所定の判定値1以上であれば(ブロック208)、この隣接する3領域の測定データの信頼性がないと判定されて、CONF_FLG2=NGと設定され(ブロック211)、ブロック212に行く。もし、SとTの差の絶対値Uが所定の判定値1未満であれば(ブロック208)、N+1の測距演算領域の測距結果は、両隣りの測距演算領域による測距結果と直線関係を有するため信頼性が有ると判定され(ブロック210)、CONF_FLG2=OKと設定される。そして。ブロック212、213へと進む。
【0106】
もし、領域N+1の測距結果の値Tが設定値以下の近距離にある場合でSとTの差の絶対値Uが所定の判定値2以上であれば(ブロック209)、この隣接する3領域の測定データの信頼性がないと判定されて、CONF_FLG2=NGと設定され(ブロック211)、ブロック212に行く。もし、SとTの差の絶対値Uが所定の判定値2未満であれば(ブロック209)、N+1の測距演算領域の測距結果は、両隣りの測距演算領域による測距結果と直線関係を有するため信頼性が有ると判定され(ブロック210)、CONF_FLG2=OKと設定される。そして。ブロック212、213へと進む。
【0107】
このようにして、図18での信頼性有りとして判定されて、CONF_FIG2=OKと設定された測距結果が図17のブロック110における角度演算に使用される。しかし、CONF_FIG2=OKと設定された測距結果が2つ以上なければ、角度演算に必要なだけの測距結果がないから、図17でCONF_FIG1=OKと設定された測距結果が2つ以上あれば、それらを使用して角度演算を行なうことになる(ブロック110)。このようして計算で求められた傾斜角度θ1が複数存在する場合は、その内の最大値と最小値を除いた中央値又はそれらの平均値を傾斜角度θ1とする。このようにして、精度の高い角度検出ができる。
【0108】
図18のフローチャートに示すように本発明の角度検出装置は、ラインセンサを用いて測定対象の平面的物体上の直線的に並んで隣接した3つの位置の距離を測定した測距結果については、中間の位置の測距結果が両端の位置の測距結果の平均値とほぼ等しくなるはずだから、もし、中間の位置の測距結果が両端の測距結果の平均値と所定値以上離間しているならば、測距結果の直線性が無く、よって測距結果の信頼性が無いと判定して、以降の処理には使用しない。もし、中間の位置の測距結果が両端の測距結果の平均値と所定値未満内にあれば、測距結果は直線性を有しよって信頼性が有るとして、以降の処理に使用する。この所定値の大きさは、前述したように三角測距法による測距結果は遠距離ほど測定誤差が大きくなるから、中間の位置の測距結果の値が設定値よりも近距離にある場合は比較的厳しい、すなわち、比較的小さい所定値(判定値2)を使用し、設定値よりも遠距離にある場合は比較的緩い、すなわち、比較的大きい所定値(判定値1)を使用する。なお、本発明の相互信頼性判定方法は、上記(1)に代えて(2)でも行なうことができる。
【0109】
なお、本発明の角度検出装置は、ラインセンサを用いて測定対象の平面的物体上の直線的に並んだ複数の位置の距離を測定した結果から、隣接した3つの位置からなる小グループを複数個作成して、各小グループ毎に測距結果の平均値及びコントラスト分布の重心位置の平均値を求めて、これら平均値に基づいて角度演算をして、測定対象の平面的物体の相対的な傾斜角度を検出するようにしてもよい。
【0110】
上述の本発明の実施の形態の説明は、水平方向の基線長kを有するライン型測距装置3による水平面内のスクリーン1と基線長k方向との傾斜角度θ1の角度検出について述べたが、垂直方向の基線長k’(図示せず)を有するライン型測距装置4による垂直面内のスクリーン1と基線長k’(図示せず)方向との傾斜角度の角度検出についても同様であることは容易に理解できるであろう。
【0111】
以上説明した本発明の実施の形態において、距離を測定する測距部としてはパッシブ型ライン式測距装置を用いたが、ライン式であれば良く、パッシブ型でなくアクティブ型であっても良く、また、光学式でなくても良い。例えば、超音波を出力して、その反射が検出されるまでの時間を計測してその時間に基づいて距離を測定する測距装置であっても良い。上述した本実施の形態においては、水平方向と垂直方向の一対のライン型測距装置を使用したが、水平方向と垂直方向の直交関係にある必要は無く、また、1つのライン式測距装置のみでもよい。また、測定対象としてスクリーン平面を用いたが、スクリーンに限らず、どんな平面的物体の測定対象についても本発明の角度検出装置は適用できる。例えば、測定対象の平面的物体としては、工作機械により加工される被加工物であって良く、これら被加工物に対して加工道具を正対させるため、被加工物と加工道具の相対的な傾斜角度を検出するためにも、本発明の角度検出器は適用できる。
【0112】
さらに、上述した本発明の実施の形態による相互信頼性判定のための2つの測距演算領域の平均値を中間の測距演算領域の値と比較する手法にそれぞれ使用された測定距離、すなわち、測距結果は、基線長k方向に沿った測定対象の平面的物体1の複数の測定位置1A〜1Gから基線長k方向に下ろした垂線の長さ(例えば、図5のLR’又は図8のLL’、LR’)であるが、レンズ31aから測距方向A〜Gに沿った複数の測定位置1A〜1Gまでの距離(例えば、図5のLR又は図13のL1、L2)を使用しても、本発明の原理は適用できる。後者の複数の測距結果は前者の直線的な関係ではなく、三角関数的な関係を有する。従って、三角関数を使用して信頼性判定と平均化処理を行なうことになるであろう。
【0113】
【発明の効果】
本発明の請求項1によれば、三角測距法によるライン式測距装置を用いて測定対象上の複数の位置までの距離測定をする場合、距離の大小に応じて測距結果間の相互関係に基づいて信頼性を判定するため、ノイズ等又は製造誤差に起因して正しくできない場合でもその影響を少なくすることができる。また、少なくとも1つの位置の距離測定が正常に行なわれない場合でもその影響を少なくすることができる。さらに、1つのライン式測距装置を備えることにより、測定対象上の互いに異なる複数の位置までの距離を測定することが可能となるため、従来装置のように測定位置の増大に応じて測距装置を増やす必要が無く、角度検出装置の構成が簡略化できる。
【0114】
請求項2に記載された本発明によれば、ライン式測距装置により測定対象上に直線的に並んだ複数の位置までの距離を測定する際、測定距離が直線的に変化するという原理に基づいて、いくつかの測距結果の小グループ内において、測定結果の距離が互いに直線的な関係を有するか否かにより、距離測定の演算結果の信頼性の有無を判定することで、測定対象の平面的物体上の1つの位置までの距離測定がノイズ等又は製造誤差に起因して正しくできない場合でもその影響を少なくすることができる。
【0115】
請求項3に記載された本発明によれば、ライン式測距装置により測定対象上に直線的に並んだ複数の位置までの距離を測定する際、測定距離が直線的に変化するという原理に基づいて、いくつかの測距結果の小グループ内において、測定結果の距離が互いに直線的な関係を有するか否かにより、距離測定の演算結果の信頼性の有無を判定することで、測定対象上の1つの位置までの距離測定がノイズ等又は製造誤差に起因して正しくできない場合でもその影響を少なくすることができる。
【0116】
請求項4に記載された本発明によれば、互いに隣接した3つの位置の測距結果を含む小グループについて、判定部が、測距結果が直線的に変化するという相互関係に基づいているかどうかを判定するため、両端の2つの位置の測距結果により決定されるべき所望の直線に、真中の位置の測距結果が対応しているか又は含まれるかを判定して、真中の位置の測距結果が上記した相互的な関係から所定値以上逸脱している場合は信頼性無しと判定して以後の角度検出処理からは排除し、真中の位置の測距結果が上記相互的な関係から所定値内に留まっている場合は信頼性有りと判定して以後の角度検出処理に使用する。この結果、精度の高い角度検出装置が達成できる。
【0117】
請求項5に記載された本発明によれば、互いに隣接した3つの位置の測距結果を含む小グループについて、判定部が、測距結果が直線的に変化するという相互関係に基づいているかどうかを判定するため、両端の2つの位置の測距結果により決定されるべき信頼性判定領域に、真中の位置の測距結果が対応しているか又は含まれるかを判定して、真中の位置の測距結果が上記した相互的な関係から所定値以上逸脱している場合は信頼性無しと判定して以後の角度検出処理からは排除し、真中の位置の測距結果が上記相互的な関係から所定値内に留まっている場合は信頼性有りと判定して以後の角度検出処理に使用する。この結果、精度の高い角度検出装置が達成できる。
【0118】
請求項に記載された本発明によれば、ラインセンサが測定対象の一対の像をそれぞれ結像する第1及び第2受光領域を有し、第1受光領域内に複数の測距演算領域を設定して、各測距演算領域に結像された像と対応した像を第2受光領域内で検出することで、複数の測距演算領域に対応した複数の測距方向にある測定対象の平面的物体上の位置までの距離測定を簡潔な構成で達成できる。
【0119】
請求項に記載の本発明によれば、判定部が、測定対象上の位置の測定距離が直線的に変化するという相互関係に基づいているかどうかを判定するため、両端の2つの位置の測距結果により決定されるべき所望の直線関係に、真中の位置の測距結果が対応しているか又は含まれるかを判定して、真中の位置の測距結果が上記相互的な関係から所定値以上逸脱している場合は信頼性無しと判定して以後の角度検出処理からは排除し、真中の位置の測距結果が上記相互的な関係から所定値内に留まっている場合は信頼性有りと判定して以後の角度検出処理に使用する。この結果、精度の高い角度検出装置が達成できる。
【0120】
請求項に記載の本発明によれば、測定対象が画像の投影されるスクリーンであるから、このスクリーンの傾斜角度を検出してスクリーン上の画像の台形歪みの補正をするために使用できる。
【0121】
請求項に記載の本発明によれば、プロジェクタとスクリーンの相対的な傾斜角度に起因する画像の台形歪みを簡単な構成で自動的に正確に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器を有するプロジェクタの構成を示す概略ブロック図。
【図2】 図1に示したプロジェクタの概略正面図。
【図3】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器の機能ブロック図。
【図4】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置の測距操作を説明する図。
【図5】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置の測距操作を説明する別の図。
【図6】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置の一対のラインセンサの概略を示すブロック図。
【図7】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置による複数位置の距離測定を説明する別の図。
【図8】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置による角度検出方法を説明する図。
【図9】 図8による角度検出方法を説明する別の図。
【図10】 図8による角度検出方法を説明する別の図。
【図11】 図8による角度検出方法を説明する別の図。
【図12】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置の測距演算領域のコントラスト重心位置を求める方法を説明する別の図。
【図13】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置による角度検出方法を説明する別の図。
【図14】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置による複数位置の測距結果に基づく角度検出方法を説明する別の図。
【図15】 (a)本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置により測定された7つの測距方向の位置に対応した測距結果を縦軸に測定された距離と横軸にラインセンサ上の画素位置を示すグラフ、及び(b)それらの測距結果について本発明による信頼性の判定した結果(CONF_FLG2)を示す表。
【図16】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器に含まれる測距装置のラインセンサの測距演算領域の構成を概略的に示す模式図。
【図17】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器の動作を示すフローチャート図。
【図18】 本発明の1つの実施の形態による角度検出器の相互信頼性判定の動作を示すフローチャート図。
【符号の説明】
1 スクリーン
1A〜1G 測定位置
2 プロジェクタ
3 測距装置
4 測距装置
5 制御回路
31 撮像部
31a レンズ
31b レンズ
31c ラインセンサ
31d ラインセンサ
31c1〜31c7 測距演算領域
32 演算部
51 相互信頼性判定部
53 角度演算部
k 基線長
θ1 水平面内でスクリーン1が基線長k方向となす傾斜角度

Claims (9)

  1. 同一平面上に基線長だけ離間して配置された一対のレンズと、該一対のレンズから所定距離だけ離間して上記基線長方向に延びるように配置されて上記一対のレンズを介して測定対象がその上に結像されるラインセンサと、該ラインセンサからの出力に基づいて上記基線長及び上記ラインセンサを含む平面上において複数の異なる測距方向上にある上記測定対象上の複数の異なる位置までの距離をそれぞれ演算する演算部とを備えたライン式測距装置と、
    上記演算部の演算結果である距離の信頼性の有無を、上記複数の位置の内からいくつかの上記位置を含む小グループを形成し、該小グループに含まれる上記位置までの上記距離の大小に応じて上記小グループ内の上記演算結果の相互関係に基づいた判定値により判定する判定部と、
    上記判定部で信頼性有りと判定された演算結果に基づき、上記基線長及び上記ラインセンサを含む平面上で、上記測定対象の上記同一平面に対する傾斜角度を算出する傾斜角度算出部とを含むことを特徴とする角度検出装置。
  2. 上記判定部は、上記演算結果が上記小グループ内の演算結果により決定されるべき所望の直線に対応しているか否かに基づいた判定値により、上記演算結果の信頼性の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の角度検出装置。
  3. 上記判定部は、上記演算結果が上記小グループ内の上記演算結果により決定されるべき所望の信頼性判定領域内に含まれるか否かに基づいた判定値により、上記演算結果の信頼性の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の角度検出装置。
  4. 上記小グループが互いに隣接した3つの位置を含み、上記判定部が、上記3つの位置の両端の2つの位置の演算結果により決定されるべき上記所望の直線に、真中の位置の演算結果が対応しているか又は含まれるかに基づいた判定値により判定することを特徴とする請求項2に記載の角度検出装置。
  5. 上記小グループが互いに隣接した3つの位置を含み、上記判定部が、上記3つの位置の両端の2つの位置の演算結果により決定されるべき上記信頼性判定領域内に、真中の位置の演算結果が対応しているか又は含まれるかに基づいた判定値により判定することを特徴とする請求項3に記載の角度検出装置。
  6. 上記ラインセンサは、上記一対のレンズにより生成される上記測定対象の一対の像の一方が結像される第1受光領域及び上記一対の像の他方が結像される第2受光領域を有し、上記第1受光領域中に上記複数の測距方向に対応した複数の測距演算領域が設定され、上記演算部は上記第1受光領域中の上記測距演算領域からの出力及び上記第2受光領域からの出力に基づいて上記複数の測距方向について測距演算することを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の角度検出装置。
  7. 上記小グループが互いに隣接した3つの測距方向に対応した上記位置を含み、上記判定部が、上記3つの測距方向の両端の測距方向に対応した上記位置の2つの演算結果により決定されるべき所望の直線的関係に、真中の測距方向に対応した上記位置の演算結果が対応しているか否かに基づいた判定値により判定することを特徴とする請求項に記載の角度検出装置。
  8. 上記測定対象は、画像が投影されるスクリーンであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の角度検出装置。
  9. 画像をスクリーンに投影するプロジェクタであって、請求項に記載の角度検出装置と、上記角度検出装置が算出した傾斜角度に基づいて上記スクリーン上の上記画像の歪みを補正する画像歪み補正部とを含むことを特徴とするプロジェクタ。
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