しかしながら、液晶素子の応答速度Tは発生する位相差量の2乗に反比例するため、上述のように液晶素子のセル厚を大きくすることによって、液晶素子の応答速度(応答時間)が遅くなるという問題がある。例えば、1λ程度の位相差を発生させるための応答時間は、約0.1〜0.3秒程度必要になる。
このように、非特許文献1に記載の液晶素子は、位相分布の形状を滑らかな曲線状にすることができるという利点を有しているが、応答速度が遅いという問題点を有している。この他にも、透明電極そのものを同心円状の分割パターンとすることによって、位相差を発生させる方式の液晶素子が提案されているが、応答速度に関しては非特許文献1に記載の液晶素子と同様の問題を有している。
一方、液晶素子の見かけ上の応答速度を向上させる方法として、例えば特許文献1には、液晶素子と旋光素子とを組み合わせた収差補正ユニットが開示されている。
この特許文献1に開示されている収差補正ユニットは、収差発生素子として機能する上述のような液晶素子と、旋光素子として機能するツイストネマティックなどのねじれ配向を有する液晶モードで動作する液晶素子とから構成されている。
また、この収差補正ユニットにおいて、収差発生素子として機能する液晶素子は、配向方向が直交する2つの液晶素子を組み合わせて用いている。収差発生素子を構成する2つの液晶素子は、各々発生する収差量が異なっており、所定の位相差を発生するように最初に電極に電圧が印加される。次に、収差発生素子に入射する光束の偏光方向を旋光素子で切り替えることによって、何れか一方の液晶素子に起因する位相差が発生し、他方の液晶素子は光束の位相に影響しない構成となっている。
特許文献1に記載の収差補正ユニットによれば、旋光素子で偏光方向を切り替えることで、異なる収差量を発生させることが可能になる。旋光素子による偏光方向の切り替えは、数十msec程度以下の非常に短時間での動作が可能であることから、異なる収差量の切り替えに要する時間を短縮化することが可能となる。
しかしながら、特許文献1に記載の収差補正ユニットにおいては、収差発生素子を構成する2つの液晶素子自体には、所定の位相差を発生させるための時間を要する。この時間は、例え応答速度の速い強誘電性液晶を用いたとしても、応答速度を遅らせる要因となってしまう。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より高速に収差を発生させることのできる収差補正ユニット、この収差補正ユニットを搭載し、高速に収差を補正する光ピックアップ装置、および、この光ピックアップ装置を搭載した光記録再生装置を提供することにある。
本発明の収差補正ユニットは、上記の課題を解決するために、入射した光束の偏光方向に応じて決定される収差量を発生させる第1の収差発生部と、上記第1の収差発生部へ入射する光束の偏光方向を切り替える旋光素子とを備え、上記旋光素子によって光束の偏光方向が切り替えられることで、上記第1の収差発生部は異なる量の収差を発生させて、光学系の光束において生じた収差を補正することを特徴とするものである。
ここで、「入射した光束の偏光方向に応じて決定される収差量を発生させる第1の収差発生部」とは、入射した光束の偏光方向によって、光束に異なる位相変化が生じ、この異なる位相変化によって発生する収差量が異なるというものである。つまり、第1の収差発生部は、偏光方向に応じて異なる収差量の収差を発生させることができるもののことを意味する。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、上記第1の収差発生部は、互いに直交する第1の偏光方向および第2の偏光方向という2つの偏光方向の入射光束に対し、それぞれの偏光方向に対応する第1の位相変化および第2の位相変化を与える位相変化発生素子を含むことによって、入射光束に収差を発生させるものであってもよい。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、上記第1の位相変化によって得られる位相分布と、上記第2の位相変化によって得られる位相分布とにおいて、両者の位相分布の形状はほぼ等しく、極性は異なるものであってもよい。
「位相分布の形状がほぼ等しい」とは、その位相分布における最大位相差量が等しく、位相分布の見かけの形状に差がないことを意味する。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、上記位相変化発生素子は、光束の進む方向に対して垂直な面内に異方性を有する複屈折材料と、等方性材料とが積層されて構成されているものであってもよい。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、上記位相変化発生素子には、光束の出射する面上に同心円状の段差または傾斜が設けられているものであってもよい。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、上記位相変化発生素子は、偏光ホログラムレンズであってもよい。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、上記位相変化発生素子は、上記第1の位相変化を発生させる第1の位相変化発生素子と、上記第2の位相変化を発生させる第2の位相変化発生素子とを含むものであってもよい。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、上記複屈折材料における、上記第1の偏光方向の入射光束の屈折率をNxa、上記第2の偏光方向の入射光束の屈折率をNyaとし、上記等方性材料の屈折率をNaとすると、Nxa<Na<Nyaであり、かつ、Na=(Nxa+Nya)/2となるものであってもよい。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、上記旋光素子は、電圧の印加に応じて入射した光束の偏光方向をそのまま保持した出射光束とするか、直交する偏光方向の出射光束とするかを切り替える液晶素子からなるものであってもよい。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、互いに対向する2つの基板と、上記2つの基板間に設けられ、所定の配向方向を有する液晶層とで構成された液晶素子からなる第2の収差発生部をさらに備え、上記液晶素子は、上記基板に設けられた電極へ電圧を印加することによって、入射した光束に対して収差を発生させるものであってもよい。
本発明の収差補正ユニットは、上記の構成に加えて、上記第2の収差発生部は、上記第1の偏光方向あるいは上記第2の偏光方向の入射光束に対して位相差が最大となるような位相分布を発生させるものであってもよい。
また、上記の収差補正ユニットにおいて、上記第2の収差発生部は2つの収差発生素子からなり、当該2つの収差発生素子が光束に対して位相差が最大となるような位相分布を発生させる入射光束の偏光方向は、それぞれ上記第1の偏光方向と上記第2の偏光方向であってもよい。
また、上記の収差補正ユニットにおいては、上記第2の収差発生部が上記第1の偏光方向の入射光束に対して発生させる位相分布と、上記第2の偏光方向の入射光束に対して発生させる位相分布とは、その形状がほぼ等しく、極性も同じであってもよい。また、あるいは、上記それぞれの位相分布は、その形状がほぼ等しく、極性が異なるものであってもよい。
また、本発明の光ピックアップ装置は、上記の課題を解決するために、光束を発する光源と、上記光源からの光束を記録媒体に集光する対物レンズと、上記対物レンズを光軸方向および光軸と直交する方向に駆動する対物レンズ駆動機構と、上記記録媒体において反射または透過された光束を受光する受光素子とを備えた光ピックアップ装置であって、上記光源と上記対物レンズとの間には、記録媒体で集光される光束に発生する収差を補正する、上述の何れかの収差補正ユニットが設けられていることを特徴とするものである。
本発明の光ピックアップ装置は、上記の構成に加えて、上記収差補正ユニットと上記対物レンズとの間には、λ/4波長板が配置されているものであってもよい。
なお、本発明の光ピックアップ装置においては、上記収差補正ユニットで発生する収差によって、上記対物レンズで記録媒体に集光される光束に発生する収差は球面収差であってもよい。
また、本発明の光記録再生装置は、上述の何れかの光ピックアップ装置を備えた光記録再生装置であって、上記記録媒体からの読み取り信号に基づいて、上記旋光素子から出射される光束の偏光方向を第1あるいは第2の偏光方向に切り替える偏光制御信号を上記旋光素子へ送信する偏光制御部を備えることを特徴とするものである。
本発明の光記録再生装置において、上記光記録再生装置は、上記偏光制御信号の情報を記憶する偏光制御情報保持部を備えていてもよい。
本発明の光記録再生装置は、上記の構成に加えて、記録媒体に対応する上記偏光制御信号の情報を当該記録媒体へ記録するものであってもよい。
本発明の光記録再生装置は、上記の構成に加えて、収差補正ユニットに第2の収差発生部が備えられている場合には、当該光記録再生装置には、上記記録媒体からの読み取り信号に基づいて、上記第2の収差発生部で発生させる収差量を決定する収差制御信号を上記第2の収差発生部へ送信する収差制御部が備えられていてもよい。
本発明の光記録再生装置は、上記の構成に加えて、上記収差制御信号の情報を記憶する収差制御情報保持部を備えていてもよい。
本発明の光記録再生装置は、上記の構成に加えて、記録媒体に対応する上記収差制御信号の情報を当該記録媒体へ記録するものであってもよい。
また、上記記録媒体が、記録媒体ごとに異なるIDコードを有している場合には、本発明の光記録再生装置は、上記の構成に加えて、記録媒体のIDコードと、当該記録媒体の偏光制御情報あるいは収差制御情報とは、1対1に対応付けられ、上記偏光制御情報保持部あるいは上記収差制御情報保持部に記憶されるものであってもよい。
本発明の記録再生装置は、上記の構成に加えて、記録再生装置ごとに異なるIDコードを有している場合には、上記記録再生装置は、当該記録再生装置のIDコードを記録媒体へ記録するものであってもよい。
また、本発明の光記録再生装置において情報の記録および/または再生を行う記録媒体には、複数の記録層を有するものが含まれ、上記記録層のうち、上記光記録再生装置の対物レンズに最も近い側の記録層を第1層とし、対物レンズから最も遠い側の記録層を第n層(n≧2)とすると、上記対物レンズは、上記第1層と上記第n層のとの中間の位置に集光した光の収差が最も小さくなるように設定されていてもよい。
また、本発明の光記録再生装置において情報の記録および/または再生を行う記録媒体には、複数の記録層を有するものが含まれ、上記記録層のうち、上記光記録再生装置の対物レンズに最も近い側の記録層を第1層とし、対物レンズから最も遠い側の記録層を第n層(n≧2)とすると、上記対物レンズは、上記第1層または上記第n層に集光した光の収差が最も小さくなるように設定されていてもよい。
また、本発明の光記録再生装置において情報の記録および/または再生を行う記録媒体には、1つの記録層のみを有するものが含まれ、上記1つの記録層のみを有する記録媒体の当該記録層の厚みは、上記複数の記録層を有する記録媒体の上記第1層あるいは上記第n層と光学的に等化な厚みであってもよい。
以上のように、本発明の収差補正ユニットは、入射した光束の偏光方向に応じて決定される収差量を発生させる第1の収差発生部と、上記第1の収差発生部へ入射する光束の偏光方向を切り替える旋光素子とを備え、上記旋光素子によって光束の偏光方向が切り替えられることで、上記第1の収差発生部は異なる量の収差を発生させて、光学系の光束において生じた収差を補正することを特徴とするものである。
上記の構成によれば、収差を発生させるために要する時間は旋光素子の偏光切り替えにかかる時間のみであり、従来に比べ短時間で収差を発生させることが可能になる。つまり、本発明の収差補正ユニットに備えられた収差発生部は、電圧を印加することなく、位相差を発生させることができるため、応答速度を従来の収差補正ユニットと比べて速くすることができる。
上記第1の収差発生部は、互いに直交する第1の偏光方向および第2の偏光方向という2つの偏光方向の入射光束に対し、それぞれの偏光方向に対応する第1の位相変化および第2の位相変化を与える位相変化発生素子を含むことによって、入射光束に収差を発生させるものであってもよい。
上記の構成によれば、第1の位相変化あるいは第2の位相変化に伴う2つの位相分布の形状を光束に与えることができる。そして、旋光素子によって2つの状態の位相分布を選択的に高速に切り替えることができる。
また、上記の収差補正ユニットにおいて、上記第1の位相変化によって得られる位相分布と、上記第2の位相変化によって得られる位相分布とにおいて、両者の位相分布の形状はほぼ等しく、極性は異なっていてもよい。
上記の構成によれば、光束に与える位相変化の幅(位相差の差)が最も大きくなるため、より広範囲な収差の補正が可能となる。
また、上記の収差補正ユニットにおいて、上記位相変化発生素子は、光束の進む方向に対して垂直な面内に異方性を有する複屈折材料と、等方性材料とが積層されて構成されていてもよい。上記の構成によれば、複屈折材料と等方性材料とを組み合わせて位相変化発生素子を作成することによって、光束に目的とする位相変化を容易に与えることができる。
なお、上記位相変化発生素子には、光束の出射する面上に同心円状の段差または傾斜が設けられていることが好ましい。上記の構成によれば、光束に目的とする位相分布の形状を与えることができ、良好な収差補正を実施することができる。
また、上記位相変化発生素子は、偏光ホログラムレンズであってもよい。上記の構成によれば、光束に目的とする位相分布の形状を与えることができ、良好な収差補正を実施することができる。
また、上記の収差補正ユニットにおいて、上記位相変化発生素子は、上記第1の位相変化を発生させる第1の位相変化発生素子と、上記第2の位相変化を発生させる第2の位相変化発生素子とを含むものであってもよい。
上記の構成によれば、第1の位相変化発生素子と第2の位相変化発生素子とによって、第1の位相変化あるいは第2の位相変化に伴う2つの位相分布の形状を光束に与えることができる。そして、旋光素子によって2つの状態の位相分布を選択的に高速に切り替えることができる。
また、上記の収差補正ユニットは、上記複屈折材料における、上記第1の偏光方向の入射光束の屈折率をNxa、上記第2の偏光方向の入射光束の屈折率をNyaとし、上記等方性材料の屈折率をNaとすると、Nxa<Na<Nyaであり、かつ、Na=(Nxa+Nya)/2となるように各屈折率が設定されることが好ましい。
上記の構成によれば、一つの位相変化発生素子のみで第1の位相変化および第2の位相変化を発生させることができるとともに、第1の位相変化および第2の位相変化によって発生するそれぞれの位相分布の形状は相似形(位相差の最大値も等しい)であり、極性の異なる位相変化を発生させることができる。
上記の収差補正ユニットにおいて、上記旋光素子は、電圧の印加に応じて入射した光束の偏光方向をそのまま保持した出射光束とするか、直交する偏光方向の出射光束とするかを切り替える液晶素子からなることが好ましい。
上記の構成によれば、高速に偏光方向を切り替えることができるため、結果として、より高速な収差の発生を可能にすることができる。
また、上記収差補正ユニットは、互いに対向する2つの基板と、上記2つの基板間に設けられ、所定の配向方向を有する液晶層とで構成された液晶素子からなる第2の収差発生部をさらに備え、上記液晶素子は、上記基板に設けられた電極へ電圧を印加することによって、入射した光束に対して収差を発生させることが好ましい。
上記の構成によれば、発生する収差量の微調整が可能となるため、高速かつ高精度な収差の補正が可能となる。
上記の収差補正ユニットにおいて、上記第2の収差発生部は、上記第1の偏光方向あるいは上記第2の偏光方向の入射光束に対して位相差が最大となるような位相分布を発生させることが好ましい。
上記の構成によれば、光ピックアップ装置などの光学系において収差の補正を行う場合に、波長板などの部材をさらに設ける必要がなくなり、装置の構成が複雑になることを防止することができる。
また、上記の収差補正ユニットにおいて、上記第2の収差発生部は2つの収差発生素子からなり、当該2つの収差発生素子が光束に対して位相差が最大となるような位相分布を発生させる入射光束の偏光方向は、それぞれ上記第1の偏光方向と上記第2の偏光方向であってもよい。上記の構成によれば、第1の収差発生部による収差に、第2の収差発生部による収差も加わるため、より広範囲な収差を補正することが可能となる。また、波長板などの部材をさらに設ける必要がなくなり、装置の構成が複雑になることを防止することができる。
また、上記の収差補正ユニットにおいて、上記第2の収差発生部が上記第1の偏光方向の入射光束に対して発生させる位相分布と、上記第2の偏光方向の入射光束に対して発生させる位相分布とは、その形状がほぼ等しく、極性も同じであってもよい。
上記の構成によれば、第2の収差発生部によって、2つの偏光によって発生する各収差量を同じにすることができる。その結果、第1の収差発生部において発生する収差に、その収差量と同じ位相差量のオフセットを与えることができる。また、さらに、収差補正ユニットの出射側にλ/4板と反射鏡を設置し、収差補正ユニットの出射光を反射鏡で反射させた場合には、液晶素子で発生させた収差を、他方の液晶素子で補正することも可能となる。
また、上記の収差補正ユニットにおいて、上記第2の収差発生部が上記第1の偏光方向の入射光束に対して発生させる位相分布と、上記第2の偏光方向の入射光束に対して発生させる位相分布とは、その形状がほぼ等しく、極性が異なるものであってもよい。
上記の構成によれば、第1の収差発生部で発生する収差に、第2の収差発生部で発生する収差を加えることができるため、より広範囲の収差を補正することが可能となる。
本発明の光ピックアップ装置は、光束を発する光源と、上記光源からの光束を記録媒体に集光する対物レンズと、上記対物レンズを光軸方向および光軸と直交する方向に駆動する対物レンズ駆動機構と、上記記録媒体において反射または透過された光束を受光する受光素子とを備えた光ピックアップ装置であって、上記光源と上記対物レンズとの間には、記録媒体で集光される光束に発生する収差を補正する上述の何れかの収差補正ユニットが設けられていることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、記録媒体の記録層に集光される光束の収差を高速に補正することが可能となる。
上記の光ピックアップ装置において、上記収差補正ユニットと上記対物レンズとの間には、λ/4波長板が配置されていることが好ましい。上記の構成によれば、記録媒体で反射された光束を受光素子に導く際の光結合効率を向上させることができる。
なお、本発明の光ピックアップ装置においては、上記収差補正ユニットで発生する収差によって、上記対物レンズで記録媒体に集光される光束に発生する収差は球面収差であってもよい。上記の構成によれば、広範囲な球面収差の補正を高速に行うことが可能となり、記録媒体の厚み誤差精度を緩和することや、複数の記録層を有する記録媒体の使用することが可能となる。
また、本発明の光記録再生装置は、上述の何れかの光ピックアップ装置を備えた光記録再生装置であって、上記記録媒体からの読み取り信号に基づいて、上記旋光素子から出射される光束の偏光方向を第1あるいは第2の偏光方向に切り替える偏光制御信号を上記旋光素子へ送信する偏光制御部を備えることを特徴とするものである。
上記の構成によれば、収差量が不明な記録媒体において発生する収差量を高速に補正することが可能となる。
上記光記録再生装置は、上記偏光制御信号の情報を記憶する偏光制御情報保持部を備えることが好ましい。上記の構成によれば、異なる記録層に対して記録再生を行う場合、または、フォーカスサーボが外れて再度引き込み動作を行う場合にかかる遅延時間を短縮することができる。
上記光記録再生装置は、記録媒体に対応する上記偏光制御信号の情報を当該記録媒体へ記録することが好ましい。上記の構成によれば、記録媒体ごとに偏光制御信号の情報を管理することができるため、より高精度な収差の補正が可能となる。また、光記録再生装置の保持部に揮発性メモリを用いることが可能となるため、装置の低コスト化を図ることができる。
また、上記の光記録再生装置において、収差補正ユニットに第2の収差発生部が備えられている場合には、上記光記録再生装置には、上記記録媒体からの読み取り信号に基づいて、上記第2の収差発生部で発生させる収差量を決定する収差制御信号を上記第2の収差発生部へ送信する収差制御部が備えられていることが好ましい。
上記の構成によれば、より高速に動作する第1の収差発生部による発生収差量が確定した後に、第2の収差発生部による収差量を決定する。従って、従来は第2の収差発生部のみのよって行われた収差量の決定が、高速な第1の収差発生部と、第2の収差発生部とに分担して行われるため、収差量の決定にかかる全体の時間を短縮することができる。
上記光記録再生装置は、上記収差制御信号の情報を記憶する収差制御情報保持部を備えることが好ましい。上記の構成によれば、異なる記録層に対して記録再生を行う場合、または、フォーカスサーボが外れて再度引き込み動作を行う場合にかかる遅延時間を短縮することができる。
上記光記録再生装置は、記録媒体に対応する上記収差制御信号の情報を当該記録媒体へ記録することが好ましい。上記の構成によれば、記録媒体ごとに偏光制御信号の情報を管理することができるため、より高精度な収差の補正が可能となる。また、光記録再生装置の保持部に揮発性メモリを用いることが可能となるため、装置の低コスト化を図ることができる。
また、上記記録媒体が、記録媒体ごとに異なるIDコードを有している場合には、本発明の光記録再生装置は、上記の構成に加えて、記録媒体のIDコードと、当該記録媒体の偏光制御情報あるいは収差制御情報とは、1対1に対応付けられ、上記偏光制御情報保持部あるいは上記収差制御情報保持部に記憶されるものであることが好ましい。
上記の構成によれば、記録媒体の交換の際に、光記録再生装置で記録媒体のIDコードを読み取ることによって、該当するIDコードの記録媒体が有する各制御信号の情報をそれぞれの保持部から読み出すことができる。
本発明の記録再生装置は、上記の構成に加えて、記録再生装置ごとに異なるIDコードを有している場合には、上記記録再生装置は、当該記録再生装置のIDコードを記録媒体へ記録するものであることが好ましい。
上記の構成によれば、光記録再生装置ごとに記録媒体の各制御信号の情報を管理することができるため、より高精度な収差の補正が可能となる。
また、本発明の光記録再生装置において情報の記録および/または再生を行う記録媒体には、複数の記録層を有するものが含まれ、上記記録層のうち、上記光記録再生装置の対物レンズに最も近い側の記録層を第1層とし、対物レンズから最も遠い側の記録層を第n層(n≧2)とすると、上記対物レンズは、上記第1層と上記第n層のとの中間の位置に集光した光の収差が最も小さくなるように設定されていてもよい。上記の構成によれば、複数の記録層を有する記録媒体の記録層に光束を集光する場合に、残存収差を低減することが可能となる。
また、本発明の光記録再生装置において情報の記録および/または再生を行う記録媒体には、複数の記録層を有するものが含まれ、上記記録層のうち、上記光記録再生装置の対物レンズに最も近い側の記録層を第1層とし、対物レンズから最も遠い側の記録層を第n層(n≧2)とすると、上記対物レンズは、上記第1層または上記第n層に集光した光の収差が最も小さくなるように設定されていてもよい。上記の構成によれば、複数の記録層を有する記録媒体の記録層に光束を集光する場合に、残存収差を低減することが可能となる。
また、本発明の光記録再生装置において情報の記録および/または再生を行う記録媒体には、1つの記録層のみを有するものが含まれ、上記1つの記録層のみを有する記録媒体の当該記録層の厚みは、上記複数の記録層を有する記録媒体の上記第1層あるいは上記第n層と光学的に等化な厚みであってもよい。上記の構成によれば、1つの記録層のみを有する記録媒体に光束を集光する場合に、残存収差を低減することが可能となる。
本発明の実施形態について図1ないし図21に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本発明はこの記載に限定されるものではない。
〔実施の形態1〕
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図7に基づいて説明すると以下の通りである。本実施の形態では、光記録再生装置に備えられた光ピックアップ装置内部に設けられ、記録媒体に集光される光束に発生する球面収差を補正するための収差補正ユニットについて説明する。
図1(a)、図1(b)には、実施の形態1にかかる収差補正ユニット5の概略構成を示す。収差補正ユニット5は、入射した光束の偏光方向に応じて決まる収差量を発生させる収差発生素子(第1の収差発生部)4と、収差発生素子4へ入射する光束の偏光方向を切り替える旋光素子1から構成されている。なお、図1(a)、(b)において、光束はRとし、収差発生素子から出射する光束の位相分布の形状についてはPとしている。
旋光素子1は、ツイストネマティックなどのねじれ配向の液晶モードで動作する液晶素子で形成されている。印加する電圧のON/OFFによって、出射する光束の偏光方向を切り替えることができる。つまり、上記旋光素子4へ電圧を印加するか否かによって、当該旋光素子1に入射した光束の偏光方向をそのまま保持した出射光束とするか、直交する偏光方向の出射光束とするかを適宜変更することができる。
これによって、旋光素子1に入射する光束Rが直線偏光であれば、例えば、旋光素子1に電圧を印加すること(電圧ON)で、該旋光素子1を出射した光束は、入射した方向の直線偏光(X方向とする)のまま収差発生素子4へ入射する。一方、旋光素子1に電圧を印加しないこと(電圧OFF)で偏光は回転し、該旋光素子1を出射した光束は、入射した方向に直交する直線偏光(Y方向とする)となって、収差発生素子4へ入射する。
収差発生素子4は、第1の位相変化を発生させる第1の位相変化素子2と、上記第1の位相変化とは異なる第2の位相変化を発生させる第2の位相変化素子3という、2つの位相変化素子から構成されている。第1の位相変化素子2は、X方向(第1の偏光方向)の直線偏光が入射した場合には、入射した光束に第1の位相変化を与えることができるが、Y方向(第2の偏光方向)の直線偏光が入射した場合には、入射した光束に位相変化を与えないようになっている。一方、第2の位相変化素子3は、X方向(第1の偏光方向)の直線偏光が入射した場合には、入射した光束に第1の位相変化を与えず、Y方向(第2の偏光方向)の直線偏光が入射した場合には、入射した光束に位相変化を与えることができるようになっている。
収差発生素子4は、X方向の直線偏光が入射した場合には、図1(a)に示すように、第1の位相変化発生素子2の作用によって光束に第1の位相変化を与えるが、第2の位相変化発生素子3は位相変化を与えない。一方、Y方向の直線偏光が入射した場合には、図1(b)に示すように、第2の位相変化発生素子3の作用によって光束に第2の位相変化を与えるが、第2の位相変化発生素子2は位相変化を与えない。つまり、2つの位相変化発生素子2・3からなる収差発生素子4は、入射する光束の偏光方向が旋光素子1によって切り替えられることで、出射する光束について図1(a)、(b)に示すように異なる位相分布の形状を与えることができる。これによって、収差発生素子4は、異なる量の収差を発生させることができる。
続いて、収差発生素子4の詳細な構成について図2、3を用いて説明する。
図2は、第1の位相変化発生素子2の構成を示す模式図である。第1の位相変化発生素子2は、対向する2つのガラス基板20a・20bと、複屈折性を有する高分子液晶材料(複屈折材料)21と、等方性材料からなる充填剤(等方性材料)22とによって構成されている。高分子液晶材料21と充填剤22とは、2つのガラス基板20a・20bの間に積層されている。
より具体的には、高分子液晶材料21は、光束の出射する面(充填剤22との接触面)上に、同心円状かつ階段状の段差を有している。そして、充填剤22は、高分子液晶材料21とガラス基板22bとの隙間を埋めるように充填されている。図2には、この段差が形成された高分子液晶材料21の断面形状を示している。
高分子液晶材料21は、X方向とY方向で屈折率が異なり、屈折率はそれぞれ、Nx1、Ny1(Nx1<Ny1)である。また、充填剤22には、屈折率N1の等方性の材料が充填されている。ここで、充填剤22の屈折率N1は、高分子液晶材料21のY方向の屈折率とほぼ等しく、
N1=Ny
となっている。これによって、Y方向の直線偏光が入射した際には、第1の位相変化発生素子2は出射する光束に位相変化を発生させない。一方、X方向の直線偏光が入射した際には、第1の位相変化を発生させる。
また、高分子液晶材料21に設けられた段差は、光軸中心から数えてn番目の、位相素子の階段状の段差の厚みをhnとした場合、発生させる位相差(位相変化の量)に応じて設定される。光束の波長をλ、発生させる位相差をΔPn、段差の厚みをhnとすると
ΔPn=2π×hn(N1−Nx1)/λ
であることから、
hn=(ΔPn×λ)/{2π×(N1−Nx1)}
となる。
従って、階段状の段差ならびにピッチ(ピッチとは同心円状の段差間の距離をいう)を適宜設定することにより、所望の位相差を有する位相分布の形状を発生させることができる。本実施の形態の第1の位相変化発生素子2では、図2に示す位相分布の形状Pを発生させることができる。この位相分布の形状Pは、3次の球面収差を近似した形状となっている。
図3は、収差発生素子4に設けられたもう一つの第2の位相変化発生素子3の構成を示す模式図である。第2の位相変化発生素子3は、第1の位相変化発生素子2と同様に、対向する2つのガラス基板30a・30bと、複屈折性を有する高分子液晶材料31と、等方性材料からなる充填剤32とによって構成されている。
より具体的には、高分子液晶材料31は、光束の出射する面(充填剤32との接触面)上に、同心円状かつ階段状の段差を有している。そして、充填剤32は、高分子液晶材料31とガラス基板32bとの隙間を埋めるように充填されている。図3には、この段差が形成された高分子液晶材料31の断面形状を示している。
ここで用いる高分子液晶材料31は、第1の位相変化発生素子2と同じものを使用している。第1の位相変化発生素子2と異なる点は、充填剤32であり、その屈折率はN2である。ここで、屈折率N2は高分子液晶材料のX方向の屈折率とほぼ等しく、
N2=Nx
である。これによって、X方向の直線偏光が入射した際には、第2の位相変化発生素子3は出射する光束に位相変化を発生させない。一方、Y方向の直線偏光が入射した際には、第2の位相変化を発生させる。
また、光束に与える第2の位相変化によって得られる位相分布の形状は、図3においてPで示すように、3次の球面収差を近似した階段状の分布である。この位相分布の形状は、第1の位相変化発生素子2によって発生する第1の位相変化によって得られる位相分布の形状と相似形であり、かつ、位相差の最大量も同じであるが、位相分布の極性が異なっている。すなわち、光束の中心付近に対し、周辺部(入射像高をr(光束径で規格化したr)とするとr=0.7あたり)の位相が遅れるような位相分布の形状となっている。
第1の位相変化によって得られる位相分布の形状と、第2の位相変化によって得られる位相分布の形状とが、上記のように設定されることによって、旋光素子1で偏光方向を切り替えることで、発生する位相分布の形状の差を大きくすることができる。
このように、直交する2つの偏光方向の入射光束に対して異なる位相変化を発生させる収差発生素子4を、旋光素子1に対して光軸方向の後方に配置し、旋光素子1により入射する光束の偏光方向を切り替えることにより、異なる状態の位相差を光束に対して与えることができる。つまり、異なる量の収差を与えることができる。さらに、旋光素子1は通常数十msecという速い応答速度を有するため、光束に与える収差量の大小に拘わらず、収差の発生量を高速に切り替えることができる。
本実施の形態においては、光束に与える位相分布の形状は、3次の球面収差を近似した階段状の分布であり、かつ、2つの位相変化発生素子で発生させる位相変化の大きさは等しく、極性の異なるものについて説明した。しかしながら、本発明の収差補正ユニットでは、その他の分布の形状の構成も可能である。
その一例として、図4(a)、(b)には、上記収差補正ユニット5とは位相分布の形状が異なる収差補正ユニット501の構成を示す。収差補正ユニット501は、入射した光束の偏光方向に応じて決まる収差量を発生させる収差発生素子(第1の収差発生部)401と、収差発生素子401へ入射する光束の偏光方向を切り替える旋光素子101から構成されている。この収差補正ユニット501で発生する位相分布は、3次の球面収差を近似した階段状の分布であることは前述の収差補正ユニットと同じであるが、位相変化の量が異なっている。また、さらに高次の球面収差を近似した階段状の分布であってもかまわない。
また、他の例として、図5(a)、(b)には、収差補正ユニット502の構成を示す。収差補正ユニット502は、入射した光束の偏光方向に応じて決まる収差量を発生させる収差発生素子(第1の収差発生部)402と、収差発生素子402へ入射する光束の偏光方向を切り替える旋光素子102から構成されている。図5(a)、図5(b)に示すように、倍率変化の収差(入射像高をr(光束径で規格化したr)とするとr^2に比例するような収差)を近似した階段状の分布のものであっても構わない。
また、本発明にかかる収差補正ユニットは、図6(a)、(b)に示すように、位相変化発生素子がひとつだけ備えられた第1収差発生部203であってもよい。この場合、例えば、X方向の直線偏光の光束が入射した場合には球面収差が発生し(図6(a)参照)、Y方向の直線偏光が入射した場合には収差が発生しない(図6(b)参照)ようにすることができる。
また、図7には、収差補正ユニット5の光束の出射側に、集光レンズ6を配置した構成を示す。このような構成によれば、旋光素子1で偏光方向を切り替え、集光レンズ6に対し球面収差、あるいは、倍率変化の収差をもった光束を入射させることにより、集光レンズ6の像点では球面収差あるいは像点位置ずれの収差が変化することになる。この作用を利用すれば、像点における球面収差、デフォーカス収差、色収差の発生、あるいは、補正が可能となる。
以上で説明した各位相変化発生素子は、光束の進む方向に対し垂直な面内に異方性を有する複屈折材料としての高分子液晶材料と、等方性の充填剤と、2つのガラス基板から構成されている。ここで、上記複屈折材料としては、液晶の他に水晶などの結晶性材料やポリカーボネートなどの高分子材料を一方向に延伸させて複屈折性をもたせたものも利用可能であり、この場合、ガラス基板をなくすことができる。また、高分子液晶材料は、ガラス基板の内側に施された配向膜の作用により一方向に液晶分子の方向が揃えられている。
上記位相変化発生素子を作製する際には、ガラス基板の上に、上記の複屈折材料を所定の階段状に形成すればよい。この形成方法については、材料そのものを切削、あるいは、フォトリソグライフィやエッチング、あるいは、成型などを利用することで実施できる。続いて、紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂、あるいは、熱可塑性樹脂などを充填剤として充填するか、階段状に形成された複屈折材料と相似形に加工した階段状の樹脂等を貼り合わせることによって等方性材料の層を形成すればよい。
本実施の形態では、収差発生素子4を2つの位相変化発生素子2・3で構成した場合、当該2つの位相変化発生素子2・3においては、高分子液晶材料21・31は同じものを使用し、充填剤22・32の屈折率が異なるものを使用した。しかし、本発明はこれに限定されることなく、充填剤22・32は屈折率の同じものを使用し、高分子液晶材料21・31は屈折率の異なるものを使用してもよい。
また、本実施の形態では、光束の入射側が高分子液晶材料21・31である位相変化発生素子2・3について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、充填剤22・32が入射側に配置されていてもよい。また、2つの位相変化発生素子2・3において、入射側の材料にそれぞれ異なるものを用いてもよい。
また、階段状の段差のピッチを細かくすることで、所望の位相分布の形状により近いものが得られる。
また、旋光素子1としては上述のもの以外に、強誘電液晶からなる旋光素子を用いてもよい。その場合、異なる位相差の発生の切り替えに要する時間をさらに短縮することができる。
以上のように本実施の形態の収差補正ユニットは、2つの位相変化発生素子(図6に示すような1つの位相変化発生素子であってもよい)を有する収差発生素子と、旋光素子とからなる収差補正ユニットである。この収差補正ユニットにおいて、旋光素子は入射する光束の偏光方向を切り替え、それぞれ直交する2つの方向の直線偏光を収差発生素子に入射させることができる。収差発生素子は、各偏光方向の光束が入射した場合に、時間的に変化をしない、あらかじめ設定された相異なる2つの位相分布の形状を光束に与えることにより、光束に異なる収差を与えるものである。
従来の収差補正ユニットは、収差発生素子である液晶素子に電圧を印加することによって位相分布の形状を発生させている。そのため、光束に対して与える位相変化量が大きい場合には、所望の位相分布の光束をえるためには、電圧を印加してから液晶素子が所望の配向状態となるまでにある程度の時間を要してしまい、応答速度が低下してしまう。一方、本発明の収差補正ユニットは、時間的に変化をしない、あらかじめ設定された収差量を発生させるものであるため、所望とする収差量の位相分布を形成するために要する時間を必要としない。また、その収差量は収差発生素子の作成の際に、収差補正ユニットを使用する目的に応じて設定されたものであるため、収差発生素子に入射した光束の偏光方向によって決まる収差量の収差を発生させることができる。それゆえ、所望とする収差量の補正を行うことができる。
〔実施の形態2〕
本発明の実施の形態2について図8に基づいて以下に説明する。
図8には、実施の形態2にかかる収差補正ユニット504の構成を示す。収差補正ユニット504は、入射した光束の偏光方向に応じて決まる収差量を発生させる収差発生素子(第1の収差発生部)204と、収差発生素子204へ入射する光束の偏光方向を切り替える旋光素子104から構成されている。なお、図8(a)、(b)において、光束はRとし、収差発生素子から出射する光束の位相分布の形状についてはPとしている。
本実施の形態にかかる収差補正ユニット504は、収差発生素子204が一つの位相変化発生素子204から構成されている点、および、複屈折材料と充填剤の屈折率の関係が実施の形態1において説明した収差補正ユニットとは異なる。なお、位相変化発生素子204は、実施の形態1にかかる収差補正ユニットと同様に、対向する2つのガラス基板と、複屈折性を有する高分子液晶材料(複屈折材料)と、等方性材料からなる充填剤(等方性材料)とによって構成されている。
図8(a)、あるいは、図8(b)では、入射したX方向の偏光方向をもつ光束は旋光素子104で偏光方向を切り替えられ、それぞれの偏光方向に対応した位相分布の形状が収差発生素子204によって光束に与えられる。
収差発生素子204に用いる複屈折材料としては、実施の形態1において説明したものが使用可能であり、その屈折率をX方向、Y方向それぞれNx3(Nxa)、Ny3(Nya)とする。また、充填剤の屈折率をN3(Na)とする。ここで、屈折率N3は実施の形態1の場合とは異なり、いずれの屈折率Nx3、Ny3とも異なるものを用いる。例えば、
Nx3<Ny3
とすると、
N3<Nx3<Ny3
Nx3<N3<Ny3
Nx3<Ny3<N3
のいずれかのものが考えられる。
このような屈折率の関係の材料のものを用いた場合、1つの収差発生素子204のみで、X方向、Y方向のそれぞれの偏光方向の入射光束に対し、異なる位相分布の形状を発生させることが可能となる。
上記において、例えば、Nx3<N3<Ny3であり、
N3=(Nx3+Ny3)/2
のような屈折率を有する材料をそれぞれ使用した場合、収差発生素子204への入射偏光方向の切り替えによって発生する位相分布の形状は、相似形であり、かつ、位相変化の最大値も等しいが、極性は異なる位相差の分布を発生させることが可能となる。
図8はこのような屈折率の関係の材料を使用した場合の一例である。図8(a)は、旋光素子104の作用によって、X方向の直線偏光が収差発生素子104へ入射した場合であり、図8(b)は、旋光素子104の作用によって、Y方向の直線偏光が収差発生素子104へ入射した場合を示す。
なお、実施の形態1、実施の形態2では、同心円状の階段状の段差が形成された複屈折材料を有する位相変化発生素子からなる収差補正ユニットについて説明したが、本発明はこれに限定されることなく、滑らかな曲面をもつ位相変化発生素子からなる収差発生素子であってもよい。図9には、3次の球面収差の位相差の分布の形状を発生させる収差発生素子205(第1の収差発生部)の構成を示す。
収差発生素子205も収差発生素子204と同様に、対向する2つのガラス基板2050a・2050bと、複屈折性を有する高分子液晶材料(複屈折材料)2051と、等方性材料からなる充填剤(等方性材料)2052とによって構成されている。このような収差発生素子は、上述のような複屈折材料を滑らかな曲面の有するように加工する点以外は、上述の加工方法によって作製することができる。
〔実施の形態3〕
本発明の実施の形態3について、図10ないし図12に基づいて以下に説明する。
図10(a)、(b)には、実施の形態3にかかる収差補正ユニット506の概略構成を示す。収差補正ユニット506は、入射した光束の偏光方向に応じて決まる収差量を発生させる収差発生素子(第1の収差発生部)406と、収差発生素子406へ入射する光束の偏光方向を切り替える旋光素子106から構成されている。なお、図10(a)、(b)において、光束はRとし、収差発生素子から出射する光束の位相分布の形状についてはPとしている。
本実施の形態にかかる収差補正ユニット506において、収差発生素子406は、実施の形態1にかかる収差補正ユニット5と同様に、第1の位相変化を発生させる第1の位相変化素子206と、上記第1の位相変化とは異なる第2の位相変化を発生させる第2の位相変化素子306という、2つの位相変化素子から構成されている。しかしながら、各位相変化発生素子206・306を構成する複屈折材料(実施の形態1では高分子液晶材料21・31に相当するもの)が、偏光ホログラムレンズであるという点が、実施の形態1とは異なっている。
旋光素子106については、実施の形態1と同様に液晶素子を用いている。旋光素子106に入射する光束は直線偏光であり、該旋光素子106を出射した光束は入射した方向の直線偏光(X方向とする)か、あるいは、直交する直線偏光(Y方向とする)となって、収差発生素子406に入射する。図10(a)は、旋光素子106を出射した光束がX方向の直線偏光の場合を示し、図10(b)は、旋光素子106を出射した光束がY方向の直線偏光の場合を示している。
収差発生素子406は2つの位相変化発生素子(第1の位相変化発生素子206、第2の位相変化発生素子306)構成されており、X方向の直線偏光が入射した場合には第1の位相変化発生素子206の作用により光束に位相変化が発生し、第2の位相変化発生素子306は位相変化を与えない(図10(a)参照)。一方、Y方向の直線偏光が入射した場合は第2の位相変化発生素子306の作用により光束に位相変化が発生し、位相変化発生素子206は位相変化を与えない(図10(b)参照)。
続いて、収差発生素子406の詳細な構成について図11(a)、(b)を用いて説明する。
図11(a)は、第1の位相変化発生素子206の断面の構成を示す模式図である。第1の位相変化発生素子206は、対向する2つのガラス基板2060a・2060bと、複屈折性を有する高分子液晶材料からなる偏光ホログラムレンズ(複屈折材料)2061と、等方性材料からなる充填剤(等方性材料)2062とによって構成されている。偏光ホログラムレンズ2061と充填剤2062とは、2つのガラス基板2060a・2060bの間に積層されている。そして、偏光ホログラムレンズ2061は、光束の出射面上に同心円状の鋸歯状の段差を有する、いわゆるブレーズホログラムと呼ばれるものである。
第1の位相差発生素子206は、X方向とY方向で屈折率が各々異なり、それぞれ、Nx4、Ny4(Nx4<Ny4)である。また、偏光ホログラムレンズ2061の段差の部分に充填されている充填剤2062は、屈折率N4の等方性の材料が用いられている。ここで、充填剤2062の屈折率は高分子液晶材料のY方向の屈折率とほぼ等しく
N4=Ny4
となっている。
このように屈折率をほぼ等しくすることにより、Y方向の直線偏光が入射した際には、第1の位相変化発生素子206は出射する光束に位相変化を発生させず、X方向の直線偏光が入射した際には、所望とする位相変化(第1の位相変化)を発生させる。
第1の位相変化発生素子206の鋸歯状の段差の高さとピッチは、以下のようにして決定される。
第1の位相変化発生素子206によって発生される位相分布は、図10(a)の収差補正ユニット506から出射されるような3次の球面収差の位相分布の形状Pであるとする。この位相分布を波長λの高さごとに輪切りにし、光軸中心に対し同心円状の複数の輪帯とする。複数の輪帯のピッチは以上のように、位相分布を波長λの高さごとに輪切りにすることによって、おのずと決定される。さらに、この輪帯の断面形状は鋸歯状となっている。光軸の中心から数えてn番目の輪帯の高さをh4nとすると、この高さh4nの材料中を透過したX方向の直線偏光を有する光束の位相差ΔP4nは、2πとなればよい。すなわち、
ΔP4n=2π×(N4−Nx4)×h4n/λ
より、輪帯の高さh4nは
h4n=(ΔP4n×λ)/(2π×(N4−Nx4))
となる。
また、各輪帯のピッチは先の位相分布を輪切りにしたものに対応する輪帯のピッチと同じピッチである。
図11(b)は、収差発生素子406を構成するもう一つの収差発生素子306の構成を示す模式図である。第2の位相変化発生素子306は、対向する2つのガラス基板3060a・3060bと、複屈折性を有する高分子液晶材料からなる偏光ホログラムレンズ(複屈折材料)3061と、等方性材料からなる充填剤(等方性材料)3062とによって構成されている。偏光ホログラムレンズ3061と充填剤3062とは、2つのガラス基板3060a・3060bの間に積層されている。そして、偏光ホログラムレンズ3061は、光束の出射面上に同心円状の鋸歯状の段差を有する、いわゆるブレーズホログラムと呼ばれるものである。
偏光ホログラムレンズ3061は、図11(a)に示す第1の位相変化発生素子206と同じものを使用している。一方、充填剤3062は、第1の位相変化発生素子206とは異なるものを使用しており、その屈折率はN5である。ここで、屈折率N6は偏光ホログラムレンズ3061に用いられている高分子液晶材料のX方向の屈折率とほぼ等しく、
N5=Nx4
である。
このように屈折率をほぼ等しくすることにより、X方向の直線偏光が入射した際には、第2の位相変化発生素子306は出射する光束に位相変化を発生させず、Y方向の直線偏光が入射した際には、所望とする位相変化(第2の位相変化)を発生させる。
また、光束に与える位相分布の形状として、3次の球面収差の分布である。この位相分布は、第1の位相変化発生素子206で発生させる位相分布の形状と相似形であり、かつ、位相差の最大量も同じであるが、位相分布の極性が異なっている。すなわち、光束の中心付近に対し、周辺部(入射像高をr(光束径で規格化したr)とするとr=0.7あたり)の位相が遅れるような位相差の分布としている。
第1の位相変化によって得られる位相分布の形状と、第2の位相変化によって得られる位相分布の形状とが、上記のように設定されることによって、旋光素子1で偏光方向を切り替えることで、発生する位相分布の形状の差を大きくすることができる。
ここで、偏光ホログラムレンズ2061・3061の断面の形状は鋸歯状であるとしたが、作製プロセスの簡略化のため、図12に示すような階段状のものであってもよい。
図12において、上部の実線は収差発生素子506で発生させたい位相分布の形状Pであり、下部の一点鎖線は鋸歯状の理想的な偏光ホログラムレンズの形状である。この理想的な偏光ホログラムレンズの形状を段差で近似した階段状の形状を実線Aで示している。ここで、一般的には1つの段差ごとの高さの差を同じものとして近似すればよい。また、階段状の段差の数が多いほど回折効率は向上する。
以上のような偏光ホログラムレンズは実施の形態1あるいは2で示した収差発生素子と同様に、研削加工、フォトリソグラフィとエッチング加工、あるいは、成型加工等により加工可能である。
本実施の形態における収差発生素子406で発生させる位相分布の形状は、実施の形態の1で示したように、3次の球面収差の位相分布の形状、あるいは、倍率変化の位相分布の形状であってもよい。また、高次の球面収差の位相分布の形状であってもよい。また、収差発生素子406が2つの位相変化発生素子206・306で構成されている場合、それぞれで発生させる位相分布の形状の関係も、上述のように様々な形態の構成がありうる。
また、本実施の形態にかかる収差補正ユニットにおいては、収差発生素子を1つの収差発生素子で構成することも可能である。例えば、偏光ホログラムレンズの材料である複屈折材料の屈折率をNx6(Nxa)、Ny6(Nya)とし、充填剤の屈折率をN6(Na)とし、
Nx6<Ny6
である場合、
N6<Nx6<Ny6
Nx6<N6<Ny6
Nx6<Ny6<N6
のいずれかのような屈折率の充填剤を選択することにより、1つの位相変化発生素子で収差発生素子を構成することも可能である。
また、上記において、例えば、Nx6<N6<Ny6であり、
N6=(Nx6+Ny6)/2
のような屈折率を有する材料をそれぞれ使用した場合、収差発生素子406への入射偏光方向の切り替えによって発生する位相分布の形状は、相似形であり、かつ、位相変化の最大値も等しいが、極性は異なる位相差の分布を発生させることが可能となる。
〔実施の形態4〕
本発明の実施の形態4について、図13ないし図15に基づいて以下に説明する。
図13には、実施の形態4にかかる収差補正ユニット507の構成を示す。本実施の形態にかかる収差補正ユニット507には、上述の各実施の形態で説明した各構成部材に加えて、第2の収差発生素子(第2の収差発生部)907が設けられている。
図13に示すように、収差補正ユニット507は、旋光素子107、第1の収差発生素子407、第2の収差発生素子907からなる。ここで、旋光素子107は実施の形態1の旋光素子1と同様のものであり、第1の収差発生素子407は実施の形態1の収差発生素子406と同様のものである。そして、本実施の形態4にかかる収差補正ユニット507には、第2の収差発生素子907がさらに設けられている。
旋光素子107および第1の収差発生素子407については、上述の実施の形態において説明したものを同様に用いることが可能であるので、その説明を省略する。以下には、第2の収差発生素子907について説明する。
図13に示すように、第2の収差発生素子907は1つの液晶素子717からなる。液晶素子717において、液晶層707が対向する2つのガラス基板7070・7070(基板)の間に封入されている。2つのガラス基板7070・7070には、その内面(液晶層707が設けられている側の面)にそれぞれ透明電極(図示せず)が蒸着されている。さらに、一方のガラス基板の透明電極上には同心円状の電極パターン7071が形成されており、この電極パターン他方の透明電極とには各々独立に電圧を印加することができる。ガラス基板7070に設けられた透明電極7070上の電極パターン7071の一例を図14に示す。この電極パターンは、例えば、非特許文献1に記載されているような従来公知の電極パターンを用いればよい。
この透明電極のさらに内面(液晶層707が設けられている側の面)には、配向膜が形成され、ネマティック液晶などの複屈折性を有する液晶分子からなる液晶層707が封入されている。
上記の構成を有する第2の収差発生素子907は、透明電極に電圧を印加することにより、液晶層707における液晶分子の向きを基板に水平な方向と垂直な方向に任意に変化することができるというものである。なお、この液晶層707は、液晶分子の長軸が基板面に平行は水平配向である。各電極(透明電極・電極パターン)に対し、電圧が印加されていない状態で、液晶分子の配向方向と同じ方向の偏光が入射した場合、液晶分子の屈折率異方性により、液晶素子717を透過した光束には位相変化が生ずる。液晶素子717において発生する位相分布の形状Pを図15に示す。実際には電極の数が少ないことにより図15のように滑らかな位相分布の形状にはならないが、ここでは理想形として示す。
この位相分布の形状の最大位相差量(図15のPmaxで示す)は、液晶素子717の液晶層707に含まれる液晶分子の複屈折量をΔnとし、液晶層707を挟み込んでいるガラス基板7070・7070の間の間隔(セル厚)をdとすると、Δn×dとなる。あるいは、液晶素子717に与える電圧と発生する位相変化との関係が線形となる電圧の範囲のみを使用するとした場合には、上記セル厚dよりも厚いセル厚d’とすることで、所望の最大位相差量を得ることができる。
本実施の形態4では、同心円状の電極パターンを用いることによって位相分布の形状がなめらかな曲線状の分布としているが、その他にも、透明電極そのものを同心円状の分割パターンとすることによって、位相変化を発生させてもよい。
第2の収差発生素子907に電圧を印加して、液晶素子717内の液晶分子が傾く方向(液晶分子の配向方向)をX方向とする。ここで、X方向の直線偏光が入射した場合には位相変化が発生するが、Y方向の直線偏光が入射した場合には位変化は発生しない。
また、印加する電圧の大きさを変化させることにより、位相分布の形状は相似形のままで、位相差量(位相変化の大きさ)を変化させるることが可能である。すなわち、前述した最大位相差量の範囲内で任意の位相差量を発生させることが可能である。また、2つのガラス基板に設けられた透明電極と、電極パターンに印加する電圧の大小関係を変えることにより、発生する位相分布の極性を変えることも可能である。
以上では1つの液晶素子717からなる第2の収差発生素子907を用いた構成について説明したが、本発明の収差補正ユニットは、2つの液晶素子を用いた構成であってもよい。この場合、液晶分子の配向方向が直交する2つの液晶素子を用いてもよいし、液晶分子の配向方向が同じ方向の2つの液晶素子を用いてもよい。
また、第1の収差発生素子で発生させる位相分布の形状と、第2の収差発生素子で発生させる位相分布の形状とは、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。例えば、第1の収差発生素子で発生させる位相分布の形状は、倍率変化の位相分布の形状で、第2の収差発生素子で発生させる位相分布の形状は、3次の球面収差の位相分布の形状であってもよい。また、位相分布の形状の極性は同じであってもよいし、異なる極性であってもよい。
例えば、上記の2つの液晶素子において、発生させる位相分布の形状をほぼ等しいものとし、かつ、極性が異なる位相分布の形状を発生させた場合、旋光素子で第2の収差発生素子に入射する光束の偏光方向を切り替えることにより、発生する収差量の差を大きくすることができる。なお、同じ極性の位相分布の形状であっても、発生する収差量の差を大きくすることができるが、液晶素子で発生させる位相差の量を大きくする必要があり、液晶素子において所望とする収差量の位相分布の形状となるまでの応答時間が長くなる。
また、例えば、2つの液晶素子を有する第2の収差発生素子において、当該2つの液晶素子で発生させる位相分布の形状をほぼ等しいものとし、かつ、極性も同じものを使用した場合、それぞれ直交する偏光方向の光束により第1の収差発生素子によって発生する収差において同じ位相差量のオフセットを与えることができる。また、さらに、収差補正ユニットの出射側にλ/4波長板と反射鏡を設置し、収差補正ユニットの出射光を反射鏡で反射させた場合、液晶素子で発生させた収差を、他方の液晶素子で補正することが可能となる。
このようにあらかじめ設定された最大位相差量の範囲内において、任意の位相差量の位相差を発生させることができる液晶素子を有する第2の収差発生素子と、実施の形態1ないし3で説明した、入射した光束の偏光方向によって決まった量の収差を発生させる第1の収差発生素子とを組み合わせることにより、次のような効果がある。
先ず一つ目の効果は、より大きな位相差量の発生を第1の収差発生素子で行い、相対的に少ない位相差量の発生を第2の収差発生素子で発生させることにより、収差の発生に要する時間を短縮することができるというものである。この点について、以下により詳しく説明する。
例えば、全体として最大位相差量が±10λの位相差量を発生させるとした場合に、従来のように、液晶素子(本発明では、第2の収差発生素子に相当するもの)のみで±10λの位相差量を発生させると、+10λと−10λの位相差の切り替え時間は、旋光素子を駆動するのに必要な時間だけであり、数十msecと短いものの、位相差を発生させるまでに10秒以上の時間を要してしまう。
一方、本実施の形態の収差補正ユニットでは、例えば、第1の収差発生素子により±5λ、第2の収差発生素子により±5λの位相差を発生させるように配分することにより、切り替えにかかる時間は同じままで、位相差を発生させるのに要する時間を約1/4に短縮することが可能となる。
これは、収差発生素子の応答時間は発生させる位相差量の比の2乗に反比例することによるものである。つまり、本願発明では第2の収差発生素子により、発生させる位相差量は5λであるため、位相差量を10λとする従来技術の場合に対し、応答時間は、(5λ/10λ)^2=1/4となる。さらに、本実施の形態によれば、上記のような応答時間の短縮に加えて、第1の収差発生素子と第2の収差発生素子で発生させる最大位相差量を同じものとしたので、0〜±10λの位相差の発生も可能である。
ここで、第1の収差発生素子と第2の収差発生素子において発生させる位相差量の配分比率には特に制限はない。例えば、第1の収差発生素子で±9λ、第2の収差発生素子で±1λとしてもよい。この場合、第2の収差発生素子で1λの位相差を発生させるのに要する時間は、従来のように10λの位相差を発生させる場合と比較すると約1/100となる。その上、第2の収差発生素子を駆動することにより、±1λの範囲で位相差量を変化させることも可能である。
また、本実施の形態においては第1の収差発生素子で位相変化が発生する直線偏光の方向をX方向、あるいはY方向とし、第2の収差発生素子で位相変化が発生する方向も、少なくともいずれか一方の方向と平行とした。第1の収差発生素子と第2の収差発生素子との間に波長板などを用いることで、第1の収差発生素子と第2の収差発生素子とにおいて、位相変化が発生する偏光の方向をずれた方向とすることも可能である。
〔実施の形態5〕
本発明の実施の形態5について、図16、図17に基づいて以下に説明する。
本実施の形態では、本発明の光ピックアップ装置の一例について説明する。本実施の形態にかかる光ピックアップ装置は、第1の実施の形態から第3の実施の形態で説明した収差補正ユニットのうちの何れか(第2の収差発生素子を有していないもの)を備えた光ピックアップ装置である。図16には、その一例として、収差補正ユニット5を備えた光ピックアップ装置の構成を図16に示す。
本実施の形態にかかる光ピックアップ装置において、半導体レーザである光源51から出射された光はコリメートレンズ52により平行光とされる。ここで、光源51から出射される偏光はX方向の直線偏光である。コリメートレンズ52を出射した光は1/2波長板53に入射し、その偏光方向をわずかに回転され、偏光ビームスプリッタ54に入射する。偏光ビームスプリッタ54でY方向の直線偏光(S偏光)の成分は反射され、集光レンズ55を通じて、APC(Auto Power Control)用のモニタPD56へ入射する。このモニタPD56は光源51の制御のために使用する。
偏光ビームスプリッタ54を出射したX方向の直線偏光は、収差補正ユニット5に入射する。ここで、収差補正ユニット5は、実施の形態1で説明したように、旋光素子1、2つの位相変化発生素子2・3からなる収差発生素子4から構成されている。旋光素子1に入射した光束は、旋光素子1に電圧が印加されている場合(ON状態)、偏光方向はそのままでありX方向の直線偏光が出射され、旋光素子1に電圧が印加されていない場合(OFF状態)、偏光方向は直交方向に回転され、Y方向の直線偏光が旋光素子1から出射される。
旋光素子1がON状態の場合、X方向の直線偏光が旋光素子1から出射され、収差発生素子4に入射する。ここで、第1の位相変化発生素子2はX方向の偏光方向の光束に対して位相変化を発生するように設定されており、一方、第2の位相変化発生素子3はY方向の偏光方向の光束に対して位相変化を発生するように設定されている。また、2つの位相変化発生素子2・3はともに3次の球面収差を近似した位相変化を光束に与えるが、2つの収差発生素子は、その位相変化の大きさ(位相差)は同じで極性が異なる位相分布の形状を発生するように設定されている。よって、第1の位相変化発生素子2によって3次の球面収差を近似するような位相変化が与えられ、第1の位相変化発生素子2を透過した光束はλ/4波長板57により円偏光となって、対物レンズ59に入射する。
対物レンズ59は、対物レンズホルダー58に保持されている。対物レンズ59は、対物レンズ駆動機構(図示せず)によって駆動され、記録媒体へのフォーカス調整、および、ラジアル方向への移動が行われる。
対物レンズ59に入射した光束は、対物レンズ59によって記録媒体100の記録層に集光される。ここで、記録媒体100は、光軸方向にn層の記録層が積層された多層記録媒体(複数の記録層を有する記録媒体)である。本実施の形態ではn=2の2層記録媒体について説明する。この記録媒体100は、対物レンズ側から順に、光透過層100a、第1の記録層100b(第1層)、光透過層100c、第2の記録層100d(第n層に相当)、基板100eの順に配列されている。また、対物レンズ59は、2つの記録層100b・100dの中間において球面収差が最小となるように設定された対物レンズである。ここで、中間とは第1の記録層100bと第2の記録層100dの間の光透過層100cの厚みの中間位置であるとする。
上記のような対物レンズ59および記録媒体100に対して、第1の位相変化発生素子2により発生した3次の球面収差の位相分布の形状を有する光束を入射させた場合、その位相分布の形状は第1の記録層100bに集光された光束において収差が小さくなるように設定されている。
第1の記録層100bで反射された光束は、対物レンズ59を透過し、λ/4波長板57を透過し、Y方向の直線偏光となり、第2の位相差発生素子3で位相変化を与えられ、旋光素子1を透過し、偏光ビームスプリッタ54で信号検出用のPD62の方向に反射される。
信号検出用のPD62と偏光ビームスプリッタ54との間には、集光レンズ60とシリンドリカルレンズ61が配置され、RF信号、フォーカス・ラジアル信号の検出が行われる。
記録媒体100の記録層のうち第2の記録層100dに信号を記録する、あるいは、再生する場合には、旋光素子1をOFF状態とする。その場合、旋光素子1からはY方向の直線偏光が出射されるため、第2の位相変化発生素子3で前述とは逆の極性を持った球面収差を与えられた光束が対物レンズ59に入射する。従って、対物レンズ59によって集光された光束は、第2の記録層100dに集光した場合に収差が最小となる。
第2の記録層100dで反射された光束は、再び、第1の位相変化発生素子2により収差が与えられ、旋光素子1で偏光方向が直交する方向(Y方向)に変換されて、偏光ビームスプリッタ54により信号検出用のPD62の方向に反射され、前述と同様にRF信号、フォーカス・ラジアル信号の検出が行われる。ここで、λ/4波長板57を使用していることにより、記録媒体100で反射された光束を効率よ信号検出用のPD62に導くことができる。
また、収差補正ユニット5は、対物レンズ駆動機構の周波数特性をより良くするために、対物レンズ駆動機構とは別体としたが、対物レンズホルダー58に対物レンズ59と一体に保持させることも可能である。
また、収差補正ユニット5の一部を、対物レンズホルダー58と一体としても良い。その一例として図17には、収差発生素子4とλ/4波長板57とを対物レンズホルダー58と一体としたものを示す。この場合、旋光素子1に給電する電極が対物レンズ駆動機構の周波数特性に与える影響をなくすことができる。また、収差発生素子4に対し、対物レンズ59がラジアル方向に駆動されることにより発生するコマ収差の影響を低減することができる。
また、収差発生素子4としては、実施の形態の1ないし3に記載の収差発生素子、すなわち、階段状の面を有する高分子液晶材料、偏光ホログラムレンズ、あるいは、位相変化発生素子が1つのもの、または、2つのものが利用可能である。
位相変化発生素子が1つのものを使用する場合、本実施の形態においては、対物レンズは2つの記録層の中間において球面収差が最小となるように設定された対物レンズである。そのため、複屈折材料(偏光ホログラムレンズを含む)のX方向の屈折率をNx(Nxa)、Y方向の屈折率をNy(Nya)とし、充填剤の屈折率をN(Na)とすると、
N=(Nx+Ny)/2
のものを使用する。このような位相変化発生素子を用いることにより、2つの記録層において発生される残存収差を低減し、かつ、位相変化発生素子を1つにすることができる。
また、発生させる位相分布の形状としては、倍率変化の収差を近似したものであってもよいが、後述の収差を近似したものであれば、フォーカスエラー信号において発生するオフセットを低減することができる。この点について以下に説明する。
本実施の形態においては、上述したように、2つの位相変化発生素子2・3はともに3次の球面収差を近似した位相変化を光束に与えている。その結果、記録媒体100の2つの記録層100b・100dのそれぞれにおいて、旋光素子1で偏光方向を切り替えることにより収差を小さくすることができる。
しかし、本実施の形態のように、収差補正ユニット5と記録媒体100の間にλ/4波長板57を使用した場合には、復路の偏光方向が往路の偏光方向と異なっているため、いずれの位相分布の形状においても、記録層で反射し、対物レンズ59を通過した光束中には、往路で光束に与えた収差に加えて、他方の位相変化発生素子で発生した収差が光束に与えられてしまう。
フォーカスエラー信号とは、像面において発生しているデフォーカスの収差を検出するものであるが、このように復路で収差が発生している場合には、像面においてデフォーカスが発生していないにもかかわらずデフォーカスとして検出する(フォーカスオフセット)恐れがある。しかし、3次の球面収差が近似した位相変化を与えた場合には、倍率変化の収差を与える場合に比べて大幅にフォーカスオフセットを低減できる。
例えば、対物レンズの有効径をφ1.5、NAを0.85、記録媒体の対物レンズ側の表面から第1の記録層までの間の光透過層の厚みを75μm、第1の記録層と第2の記録層の間の光透過層の厚みを25μm、倍率は約5倍の光学系でシミュレーションした結果、倍率変化の収差を近似した位相分布を与えた場合では、約2μmのフォーカスオフセットが発生するのに対し、3次の球面収差を近似した位相分布を与えた場合では約0.05μmのフォーカスオフセットに低減される。
この効果は3次の球面収差を近似した位相分布の場合に限定されるものではなく、さらに高次の球面収差を含むような位相分布の場合でも同様に効果があり、その効果は位相分布の形状において、有効径の半径のr=0.5〜0.9(有効径の半径は1で規格化している)の付近に変極点を持つような位相分布の形状であればよい。これは、復路の光束を変極点に対し光軸側と外側の2つの光束だと考えた場合に、フォーカスエラー信号において光軸側の光束により発生するデフォーカス量と外側の光束により発生するデフォーカス量の極性が異なることから、バランスするためである。
また、本実施の形態では、対物レンズ59としては2つの記録層100b・100dの中間の位置(すなわち、光透過層100cの厚みの中間に相当する位置)において球面収差が最も小さくなるように設定されたものを使用している。このような対物レンズを使用することにより、収差発生素子4により、2つの記録層のどちらに集光させた場合においても、残存する収差量を低減させることができる。これは、一般的に対物レンズに入射する光束に収差を与えることによって前述のような球面収差を補正する場合には、補正する球面収差量が小さいほど残存収差も小さいからである。そして、2つの記録層を有する場合には、2つの記録層の中間の位置で球面収差が小さくなるように対物レンズを設定しておけば、2つの記録層で発生する球面収差量はほぼ等しくなるためである。
また、本発明の光ピックアップ装置に用いる対物レンズ59としては、上記のものに限定することなく、第1の記録層100bあるいは第2の記録層100dに対し、球面収差が最も小さくなるように設定したものを使用してもよい。その場合、収差補正ユニットとして1つの位相変化発生素子を使用し、対物レンズが最適化されていない側の記録層の記録あるいは再生時には、位相変化発生素子で収差を発生させ、記録層に集光した光束において収差が小さくなるようにしてもよい。
このような構成にすれば、位相変化発生素子を一つにすることができる。また、第2の記録層100dに対し、球面収差が最も小さくなるように設定した対物レンズを使用した場合、一般的には対物レンズ側の記録層(第1の記録層100b)に集光した場合の残存収差は大きくなるが、逆に、記録媒体が傾いた場合に発生するコマ収差の量が、相対的に低減され、収差全体で考えた場合に、第1の記録層100bと第2の記録層100dで発生する収差のバランスがとれるという効果がある。この効果は開口数の大きな対物レンズを使用する場合や、記録層間の厚みが厚い記録媒体を用いる時に顕著である。
また、本発明においては、上記のいずれかの場合(2つの記録層100b・100dの中間の位置において球面収差が最も小さくなるように対物レンズを設定した場合、あるいは、第1の記録層100bあるいは第2の記録層100dに対して球面収差が最も小さくなるように対物レンズ59設定した場合)だけではなく、対物レンズを2つの記録層100b・100dの間のいずれかの位置で球面収差が小さくなるように設定されたものを用いることもできる。上記のような構成によれば、記録媒体表面から第1層の間、あるいは、第n層よりもさらに奥に最適化したものに比べて、補正する球面収差量が少なくなるため、発生する残存収差を低減することが可能である。なお、上記「2つの記録層100b・100dの間のいずれかの位置」とは、2つの記録層の中間の位置という1点のみではなく、2つの記録層の間の領域の何れかを意味する。また、これは一般的には、入射光束にあらかじめ収差を与えて補正する場合、その補正量が小さいほど残存収差が小さくなるからである。残存収差とは、補正に必要な収差の成分と、実際に補正するための収差の成分の差であり、より大きな収差を補正する場合、より大きな収差の補正誤差、すなわち、残存収差が発生する。
また、本実施の形態では2つの記録層を有する記録媒体の場合について説明したが、さらに多くの記録層を有する多層記録媒体であってもよい。また、単層の記録媒体であってもよい。
また、単層の記録媒体であっても、その記録媒体表面から記録層にいたる光透過層の厚みが記録媒体ごとに異なるものも存在する。そのような場合に、本実施の形態のような光ピックアップ装置を用いることにより、記録層において発生する収差量を低減することが可能である。
また、単層の記録媒体(1つの記録層のみを有する記録媒体)と多層(2層以上)の記録媒体の双方の記録あるいは再生を行う光ピックアップ装置の場合、単層の記録媒体の記録層は、多層の記録媒体において対物レンズに最も近い側の記録層(第1層)、あるいは、最も遠い側の記録層(第n層)と光学的に等化な厚みを有する記録媒体であることが望ましい。これによれば、単層の記録媒体の記録層において発生する収差量を低減することができる。
なお、ここで「光学的に等化な厚み」とは、異なる屈折率、厚み、層構造(層構造とは記録層を構成する複数の層や光透過層を構成する複数の層をいう)であっても、対物レンズにより集光された収差が同様に小さくなるような厚みであることを意味する。
この場合、対物レンズの設定は、多層の記録媒体において好適に設定されたもの(第1層と第n層との中間の位置において球面収差が最も小さくなるように設定されたもの、あるいは、第1層あるいは第n層に対して球面収差が最も小さくなるように設定されたもの)を用いる。そして、単層の記録媒体の記録媒体から記録層までの厚みを、多層の記録媒体の第1層、あるいは、第n層と一致するように設定することで、単層の記録層で発生する収差を小さくすることができる。
〔実施の形態6〕
本発明の実施の形態6について、図18に基づいて以下に説明する。
本実施の形態にかかるピックアップ装置は、第5の実施の形態の光ピックアップ装置に対し、第2の収差発生素子9を備えたものである。つまり、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置は、実施の形態4で説明したような構成を有する収差補正ユニットを備えたものであってもよい。図18には、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置の構成図を示す。
図18において第2の収差発生素子以外の構成は第5の実施の形態のものと同じであるため、第2の収差発生素子以外の構成については説明を簡略化する。
第2の収差発生素子9は、旋光素子1と第1の収差発生素子4との間に、対物レンズホルダー58とは別体として配置されている。また、第2の収差発生素子9は、倍率変化の収差を発生させる2つの液晶素子(第1の液晶素子7、第2の液晶素子8)から構成されている。
2つの液晶素子はそれぞれ、X方向、Y方向の直線偏7光が入射した場合に位相変化を発生するように、液晶分子の配向方向が設定されている。また、上記液晶素子はそれぞれ倍率変化の位相分布の形状を発生させるように、電極あるいは透明電極のパターンが構成された液晶素子であり、位相分布の形状の極性は同じものとなっている。
本実施の形態における光ピックアップ装置において、半導体レーザである光源51から出射された光はコリメートレンズ52により平行光とされる。ここで、光源51から出射される偏光はX方向の直線偏光である。コリメートレンズ52を出射した光は、1/2波長板53に入射し、その偏光方向をわずかに回転され、偏光ビームスプリッタ54に入射する。偏光ビームスプリッタ54でY方向の直線偏光(S偏光)の成分は反射され、集光レンズ55を通じて、APC(Auto Power Control)用のモニタPD56へ入射する。このモニタPD56は光源51の制御のために使用される。
偏光ビームスプリッタ54を出射したX方向の直線偏光は、旋光素子1に入射する。ここで、旋光素子1に電圧が印加されている場合(ON状態)、偏光方向はそのままで、旋光素子1に電圧が印加されていない場合(OFF状態)、偏光方向は直交方向に回転され、Y方向の直線偏光が旋光素子1から出射される。
旋光素子1がON状態の場合、X方向の直線偏光が旋光素子から出射され、第2の収差発生素子9に入射する。第2の収差発生素子に入射した光束は、第2の収差発生素子9のうち、X方向の偏光方向の光束に対して位相変化を発生するように設定されている第1の液晶素子7によって、倍率変化の収差が与えられる。一方、第2の液晶素子8は、Y方向の偏光方向の光束に対して位相変化を発生するように設定されているため、光束に位相変化を発生させることなく透過させる。
次に、光束は第1の収差発生素子4に入射する。第1の位相変化発生素子2は、X方向の偏光方向の光束に対して位相変化(第1の位相変化)を発生するように設定されており、一方、第2の位相変化発生素子3は、Y方向の偏光方向の光束に対して位相変化(第2の位相変化)を発生するように設定されている。また、2つの位相変化発生素子2・3はともに3次の球面収差を近似した位相差を光束に与えるが、2つの位相変化発生素2・3子は、その位相変化の大きさは同じで、極性が異なる位相分布の形状を発生するように設定されている。よって、第1の位相変化発生素子2によって、3次の球面収差を近似するような位相変化を与えられ、第2の位相変化発生素子3を透過した光束は、λ/4波長板57により円偏光となって、対物レンズ59に入射する。
対物レンズ59は、対物レンズホルダー58に保持されている。対物レンズ59は、対物レンズ駆動機構(図示せず)によって駆動され、記録媒体へのフォーカス調整、および、ラジアル方向への移動が行われる。
対物レンズ59に入射した光束は、対物レンズ59により、記録媒体100の記録層に集光される。ここで、記録媒体100は、光軸方向に2つの記録層が積層された多層記録媒体である。この記録媒体100は、対物レンズ側から順に、光透過層100a、第1の記録層100b(第1層)、光透過層100c、第2の記録層100d(第n層に相当する)、基板100eの順に配列されている。つまり、対物レンズ59側の記録層が第1の記録層100bであり、遠い側の記録層が第2の記録層100dとする。
また、対物レンズ59は、2つの記録層100b・100dの中間に存在する光透過層100cにおいて球面収差が最小となるように設定された対物レンズである。この対物レンズ59に対し、第1の収差発生素子4の第1の位相変化発生素子2と、第2の収差発生素子9の第1の液晶素子7によって収差が与えられることによって、第1の記録層100bに集光される光束の収差が小さくなる。
第1の記録層100bで反射された光束は、対物レンズ59を透過し、λ/4波長板57を透過し、Y方向の直線偏光となり、第1の位相変化発生素子3で位相変化が与えられる。そして、第2の収差発生素子9に入射するが、第2の収差発生素子9のうちY方向の偏光に対し位相変化を付与する第2の液晶素子8は、X方向の偏光に対し位相変化を付与する第1の液晶素子7とは相似形の位相分布の形状と位相差量とを光束に対して付与する収差発生素子である。また、位相分布の形状の極性も同じものとなっている。従って、記録層で反射し、復路で発生した球面収差の一部が補正される。なお、一部とは往路において第2の収差発生素子9が光束に付与した収差と同じ位相差量の収差である。
続いて、光束は旋光素子1を透過し、偏光ビームスプリッタ54で信号検出用のPD62の方向に反射される。
信号検出用のPD62と偏光ビームスプリッタ54との間には、集光レンズ60とシリンドリカルレンズ61が配置され、RF信号、フォーカス・ラジアル信号の検出が行われる。
記録媒体100の記録層のうち第2の記録層100dに信号を記録する、あるいは、再生する場合には、旋光素子1をOFF状態とするとともに、第2の収差発生素子9を制御することにより、前述の場合と逆の極性を持った倍率変化の収差を発生するようにする。その結果、前述とは逆の極性を持った球面収差あるいはデフォーカスの収差が光束に付与され、対物レンズ59に入射する。従って、対物レンズ59によって集光された光束は第2の記録層100dに集光した場合に収差が最小となる。
第2の記録層100dで反射された光束は、第1の記録層100bで反射した光束と同様の経路を経て信号検出用のPD62で検出される。
本実施の形態においても、λ/4波長板57を使用していることにより、記録媒体で反射された光束を効率よ信号検出用のPD62に導くことができる。
本実施の形態においては、第2の収差発生素子9を構成する位相変化発生素子として2つの液晶素子7・8を使用した。従って、第1の収差発生素子4による収差の補正のみでは残存する収差も、第2の収差発生素子9を用いることにより補正可能である。しかも、大部分の収差、すなわち、第1の記録層100bと第2の記録層100dで発生する球面収差を第1の収差発生素子9で補正していることから、第2の収差発生素子4で補正する収差量は各記録層の厚み誤差などのわずかな量となるため、第2の収差発生素子9の位相変化発生素子の液晶層を薄くすることができる。従って、応答速度を速くすることもできる。
例えば、第1の記録層100bと第2の記録層100dとのの標準的な厚みの差を25μm、各記録層の厚み誤差を±5μmとすると、第1の収差発生素子により±12.5μm、第2の収差発生素子により±5μmの光透過層の光学的厚みに相当する収差を発生させればよい。このようにすることにより、従来技術のように液晶素子のみを用いる場合には、液晶素子で発生させる位相差量として±17.5μmの光透過層の光学的厚みに相当する収差を発生させる必要があったものを、±5μmに低減できる。
従って、第2の収差発生素子9の応答速度を約1/12にすることができる。また、例えば、単層の記録媒体のみに対応した光ピックアップ装置の場合、単層の記録媒体の記録層が存在する記録媒体表面から記録層までの光透過層の厚みの範囲が100μm±10μmとする場合、第1の収差発生素子4により光透過層の厚みが95μm、105μmに対応するように設定しておけば、第2の収差発生素子9で発生させる収差量±5μmの光透過層の厚みの範囲を補正するだけですむため、従来技術のように液晶素子のみを用いる場合と比較すると、第2の収差発生素子9を構成する液晶素子の応答速度を約1/4とすることができる。
また、第2の収差発生素子9により発生させる位相分布の形状としては、倍率変化の収差のものとした。これにより、第2の収差発生素子9を対物レンズ駆動機構と別体で設けているにもかかわらず、対物レンズがラジアル方向にシフトすることにより発生するコマ収差の量を低減することができる。また、第2の収差発生素子9を対物レンズ駆動機構と別体で設けたことにより、収差発生素子に対して制御信号を送るための配線などによる対物レンズ駆動機構の帯域の低下をなくすことができる。なお、対物レンズ59がラジアル方向にシフトすることにより発生するコマ収差が問題とならない場合には、3次の球面収差の波面やあるいはさらに高次の球面収差の波面としても良い。また、対物レンズ駆動機構の帯域の低下が問題とならない場合には、第2の収差発生素子9を対物レンズ駆動機構と一体に設けてもよい。その場合は、対物レンズ59のシフトによるコマ収差の問題が小さくなるのでいずれの波面であっても構わない。
また、本実施の形態においては、第1の収差発生素子で発生する収差として3次の球面収差発生素子を近似した波面の収差を発生するものを使用し、対物レンズホルダーと一体で保持されるようにした。3次の球面収差発生素子を近似した波面の収差を発生するものを使用したことにより、復路の収差によるフォーカスオフセットを低減することができ、また、対物レンズホルダーと一体としたことにより、対物レンズのラジアル方向への移動により発生する、第1の収差発生素子4との位置ずれによるコマ収差の発生を低減することができる。但し、第1の収差発生素子4としてはこれらの形態のものだけでなく、例えば、第1の収差発生素子4で発生する位相分布の形状としては倍率変化の収差のもの、また、さらに、高次の球面収差のものも使用可能である。また、対物レンズホルダーと別体で使用することも可能であり、その場合、倍率変化の収差を発生させるようにすることにより、対物レンズのラジアル方向への移動により発生する、第1の収差発生素子4との位置ずれによるコマ収差の発生を低減することができる。
また、第2の収差発生素子9には、それぞれ作用する偏光方向が直交する2つの液晶素子7・8を用いた。また、発生する位相分布の形状は同じものとした。これは、記録媒体で反射した光束において発生する収差の一部を補正するためある。ここで一部とは、往路において第2の収差発生素子9で発生させた収差に相当する量のことである。第2の収差発生素子9の位相分布の形状は倍率変化の収差の波面としたため、前述のように、復路において収差が残存した場合、フォーカスオフセットとなる恐れがあるが、本構成としたことによりフォーカスオフセットを低減することができる。なお、本実施の形態においては、光の利用効率を向上と記録媒体に対し円偏光で入射させるために、λ/4波長板を使用したが、λ/4波長板を使用しない場合、往路と復路で第2の収差発生素子9に入射する偏光方向は同一であるため、往路・復路とも同一の位相変化発生素子(液晶素子)を透過することから、おのずと、復路の収差の補正はなされる。
なお、第2の収差発生素子9を構成する2つの液晶素子で発生される位相分布の形状は上記のものに限定されない。例えば、位相分布の形状は同じであるが、極性が異なるものであっても良い。また、2つの記録層の各々の厚み誤差を補正する位相分布の形状としてもよい。その場合、記録層の切り替え時間は旋光素子による偏光方向の切り替え時間となるため、高速な切り替えが可能となる。
〔実施の形態7〕
本発明の実施の形態7について、図19ないし図21に基づいて以下に説明する。
本実施の形態では、本発明の光記録再生装置の一例として、上述の実施の形態5あるいは実施の形態6の光ピックアップ装置を備えた光記録再生装置について説明する。しかしながら、本発明はこの記載に限定されるものではない。図19には、本実施の形態にかかる光記録再生装置の構成を示す。図19に示す光記録再生装置は、実施の形態6の光ピックアップ装置を光記録再生装置に適用したもの、すなわち、第2の収差発生素子9を有するものである。
本光記録再生装置には、実施の形態6で説明した図18に示す光ピックアップ装置と、該光ピックアップ装置を制御するための制御部80とが含まれている。本光記録再生装置の光ピックアップ装置およびその制御部80以外の構成については、従来公知の光記録再生装置と同様の構成を適用することが可能であるため、ここではその説明を省略する。
図19に示すように、制御部80には、光ピックアップ装置によって記録媒体100から読み取られた読み取り信号の一つであるRF信号を検出するRF信号検出部70、該RF信号検出部70で検出されたRF信号に基づいて、旋光素子1から出射される光束の偏光方向の切り替えを制御する偏光制御信号を旋光素子1へ送信する偏光制御部71、上記偏光制御信号の情報を記憶する偏光制御情報保持部72、上記RF信号検出部70で検出されたRF信号に基づいて、光ピックアップ装置の第2の収差発生素子9で発生させる収差量を決定する収差制御信号を収差発生素子9へ送信する収差制御部73、上記収差制御信号の情報を記憶する収差制御情報保持部74が含まれている。
偏光制御部71内には、記録媒体100から読み取ったRF信号に基づいて、旋光素子1から出射される光束の偏光方向を、第1あるいは第2の偏光方向の何れに切り替えるかを決定する偏光判断部71aが設けられている。また、収差制御部73内には、記録媒体100から読み取ったRF信号に基づいて収差制御部73で決定された第2の収差発生素子9で発生させる収差量に相当する電圧の大きさを判断する電圧判断部73aが設けられている。
図20には、上記偏光制御部71などを用いて本光記録再生装置で実行される収差補正制御の手順を示す。先ず、偏光判断部71aは、RF信号検出部70によって検出されたRF信号について、偏光制御情報保持部72に記憶されている情報に基づいて、情報の記録再生を行う記録媒体100の記録層に対する偏光方向の情報が既知であるか否か(すなわち、第1あるいは第2の何れの偏光方向が良いか)を判定する(S1)。ここで、当該記録層に対する偏光方向の情報が既知の場合(S1においてYES)には、偏光制御部71は、旋光素子1の偏光方向の設定を行う(S4)。
また、S1において、当該記録層に対する偏光方向の情報が既知ではない場合(S1においてNO)には、偏光制御部71は、旋光素子1の偏光方向の切り替えを行う(S2)。そして、偏光判断部71aは、第1の偏光方向および第2の偏光方向それぞれの場合の光束から読み取られたRF信号の品質を判断し、何れの偏光方向の場合の方が、より良い品質であるかを判定する(S3)。その後、偏光制御部71は、S3での判定結果に基づいて旋光素子1の偏光方向の設定を行い(S4)、収差補正制御は終了する。
このような構成とすることにより、例えば、いずれの偏光方向の光束を発生させて収差を補正すればよいか、あらかじめわかっていない単層の記録媒体に記録あるいは再生する際、偏光方向の切り替えを行うことによって、異なる位相差量の収差を発生させ、記録媒体100からの各読み取り信号により、どちらの偏光方向の場合においてより良い品質の信号が得られているかを判断し、偏光方向を決定することができる。
なお、図20を用いて説明した上述の収差補正制御の手順は、第2の収差発生素子9が設けられていない場合、あるいは、第2の収差発生素子9を使用しない場合の光記録再生装置において実行される収差補正制御の手順である。
ここで、記録媒体の読み取り信号とは、RF信号振幅、RF信号振幅のエンベローブ、ジッター、エラーレート、または、エラーレートの指標値となるものなどがある。ここで、エラーレートの指標値とは、エラーレートに対応する信号品質の評価値のことである。例えばビット検出方式としてPRML(Partial Response Maximum Likelihood)を用いる場合、SAM(Sequenced Amplitude Margin)と呼ばれる評価方法が提案されている。SAMに基づいた評価値はエラーレートとの対応性が非常に良いため、より正確に信号品質を判断することが可能となる。
続いて、光記録再生装置に第2の収差発生素子9が備えられている場合の収差補正制御の手順について図21に基づいて以下に説明する。
図21において、ステップ11(S11)からステップ14(S14)については、第2の収差発生素子9が備えられていない場合(図20S1〜S4)と同様であるため、その説明を省略し、ここではステップ15(S15)以降の手順について説明する。
S14において、旋光素子1の偏光方向が設定された後、第2の収差発生素子9を構成する各液晶素子のうち、旋光素子1を制御することによって決定した偏光方向の光束に対して位相変化を発生させる液晶素子に対し、収差制御部73により各液晶素子に収差制御信号を与え、光束に収差を発生させる。ここで、電圧を変化させることによって、光束に与える位相を変化させ(S15)、その都度、電圧判断部73aは、読み取り信号(RF信号)を確認し、最も良い品質の信号が得られる位相差量を決定する(S16)。そして、ここで決定された位相差量を与えるような電圧を、第2の収差発生素子の液晶素子に印加させるための収差制御信号を第2の収差発生素子へ印加する(S17)。この収差補正制御によって、所望とする収差を光束に対して与えることができる。
なお、この位相差量の決定の際には、例えば、位相差量、あるいは、液晶素子に与える印加電圧を変化させ、その都度得られる、RF信号振幅、RF信号振幅のエンベローブ、ジッター、エラーレート、または、エラーレートの指標値の関係から適当な関数、例えば、2次関数を導出することで、その2次関数の変極点となる位相差量、あるいは、液晶素子に与える印加電圧を決定することも可能である。
また、位相差量を変化させる際には、2つの液晶素子にともに同じ位相差量を発生させることにより、復路の収差によるフォーカスオフセットの発生を抑制できることから、より、精度の高い位相差の決定が可能である。なお、いずれの偏光方向の光束を発生させて収差を補正すれば良いか、あらかじめわかっている単層の記録媒体に記録あるいは再生する際は、偏光方向の切り替えのみを行い、信号品質の判断の手順を省略し、第2の収差発生素子の制御を行えば良い。
ここで、偏光の切り替えの動作を第2の収差発生素子9の動作より先に行う理由は、第1の収差発生素子4により発生される収差量を、第2の収差発生素子9で発生される収差量より大きく設定しているためである。また、ここでいう収差量が大きいとは、対物レンズ59により記録層に集光された光束の球面収差量の大きさである。例えば、第2の収差発生素子9で発生される位相分布の形状が倍率変化の収差の場合、対物レンズ59で集光された光束にはいわゆるデフォーカスと球面収差が発生するが、光記録再生装置の場合、デフォーカスはフォーカス制御により補正されるため、問題となるのは球面収差の大きさであるからである。
また、異なる記録媒体の記録または再生を行う場合に同様の手順をとることができる。例えば、各記録層において、いずれの偏光方向の光束を発生させて収差を補正すれば良いか、あらかじめわかっていない多層の記録媒体に記録あるいは再生する際、各々の記録層に対し、偏光方向を切り替えることによって、異なる位相差量の収差を発生させ、記録媒体の読取信号により、どちらの偏光方向の場合においてより良い品質の信号が得られているかを判断し、偏光方向を決定する。また、第2の収差発生素子9を備えた光記録再生装置においては、次に、第2の収差発生素子9を構成する液晶素子の収差制御部73により各液晶素子に収差制御信号を与え、光束に収差を発生させる。この光束与える位相差量を変化させ、その都度、読も取り信号を確認し、最も良い品質の信号が得られる位相差量を決定する。
また、例えば、各記録層に関し、第1の収差発生素子に対し、いずれの偏光方向の光束を発生させて収差を補正すれば良いか、あらかじめわかっている場合には、偏光方向の切り替えのみを行い、信号品質の判断の手順を省略し、第2の収差発生素子9の制御を行えば良い。
また、本実施の形態の光記録再生装置は少なくとも、各記録層に対する収差発生素子の各制御信号の情報を記憶する保持部(収差制御情報保持部74、偏光制御情報保持部72)を備えている。ここで、各制御信号の情報とは、旋光素子1についてはON、OFFの情報である偏光制御信号の情報であり、第2の収差発生素子9については液晶素子に与える印加電圧の情報、すなわち、収差制御信号の情報である。これらの情報の保持部を有していることにより、例えば、異なる記録層を記録再生する場合、や、フォーカスサーボが外れて再度引き込み動作を行う場合、その都度、偏光方向の決定や位相差量の決定を行う必要がなくなるので、動作を高速化することができる。また、各制御信号の情報を光記録再生装置の各保持部(収差制御情報保持部74、偏光制御情報保持部72)にディスクのIDと1対1に対応付けて記憶しておけば、ディスクを交換した場合の動作も高速化することができる。
ここで、ディスクのIDとは個々の記録媒体ごとに設定されたIDコード(以下ディスクID)のことであり、ディスクIDはあらかじめ記録媒体、あるいは、記録媒体を内蔵したカートリッジに記録されているものか、あるいは、光記録再生装置により個々の記録媒体に記録したものなどが利用できる。
また、上記の各制御信号の情報を記憶する保持部として、記録媒体を利用してもよい。つまり、上記光記録再生装置は、記録媒体に対応する上記偏光制御信号の情報を当該記録媒体へ記録したり、記録媒体に対応する上記収差制御信号の情報を当該記録媒体へ記録したりしてもよい。
以上のように、各制御信号の情報を記録媒体に記録することにより、別途光記録再生装置に保持部用のメモリを備える必要がなくなる。また、ディスクを交換した場合の動作を高速化することもできる。また、記録媒体の保持部と光記録再生装置の保持部とを併設してもよい。その場合、ディスク交換の際、記録媒体に保持されている情報を光記録再生装置側の保持部にコピーすることにより、記録再生する記録層を頻繁に切り替える際には、動作を高速化することができる。
また、本発明の光記録再生装置は、記録再生装置ごとに異なるIDコードを有しているような構成であってもよい。この場合、光記録再生装置ごとのIDコード(以下ドライブID)を記録媒体、あるいは、カートリッジに設けられた記録部に記録しておくことが好ましい。これにより、各制御信号の情報を光記録再生装置ごとに管理できるため、光記録再生装置ごとに光学系の特性などが異なる場合においても、高精度な収差の制御が可能となる。
記録媒体に、各制御信号の情報とドライブIDとが記録されている場合、光記録再生装置に記録媒体が挿入された時の動作手順としては次のようなものが考えられる。
挿入されたディスクのディスクIDと各制御信号(偏光制御信号、収差制御信号)の情報を読み取る。ディスクIDが該光記録再生装置に記録されているディスクIDと一致しない場合、あるいは、ディスクIDが記録されていない場合、前述の手順で偏光方向の決定、あるいは、発生収差量の決定を行い、各情報を保持部に格納するか、あるいは、記録媒体に記録する。記録媒体に記録する際にはドライブIDも記録する。
また、記録媒体に各制御信号(偏光制御信号、収差制御信号)の情報を記録する場合、記録層のリードインエリアに記録することが好ましい。通常、記録媒体の情報を光記録再生装置で読み込む際には、リードインエリアの情報を最初に読み込むことから、リードインエリアに上述の情報を記録しておくことにより、さらに動作時間の短縮化が可能となる。また、多層の記録層を有する記録媒体の場合、各記録層のリードインエリアに情報を記録しておくことにより、例えば、各記録層に関する情報の読み込みを高速化することができる。
上述の各実施の形態で説明した本発明にかかる収差補正ユニット、光ピックアップ装置、光記録再生装置は、あくまでも本発明の一例であり、本発明は、特許請求の範囲内で種々に変更することが可能である。また、各実施の形態で説明した各構成を、適宜置換したり、変更したり、組み合わせたりして本発明を実施することも可能である。