JP4148732B2 - チップソー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋸歯板に形成される歯形部に刃体としてのチップを着脱可能に設けるチップソーに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
実開昭49−77591号
【特許文献2】
特開平7−68502号
従来、鋸歯板の側縁に形成される歯形部に、その切削方向前側の取付部に平面視でコの状に形成した超硬質合金製の刃体としてのチップ(以下超硬チップと言う)を嵌合し、これをろう付けによって固定するチップソーは、上記文献1,2に示されるように既に公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報で示される構成のチップソーは、超硬チップを歯形部に嵌合させた状態でろう付けをして固定していたので、該超硬チップが磨耗したり欠けたりした場合は、部分的な欠損に対しては個々のチップを加熱して取り外して交換ろう付した後に、他と歯形を揃えるための修正研磨を行い、損耗の場合は全体を均一に揃えるように研磨する必要があり、いずれの場合も鋸全体を目立専門工場や専門業者の下で行う必要があり、多くは外部業者に委託している。またチップを溶接したものも同様であり、この場合部分的なチップ交換は一層困難である。
【0004】
このため上記従来方法では、目立のための修理費が嵩むほか、加工場への往復の搬送費や搬送時間等が距離に応じて嵩むこととなり、予備のチップソーを準備する必要がある等の経済的ロスが大きいという欠点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明によるチップソーは、第1に、帯鋸の鋸歯板2に形成した歯形部3の取付部10にチップ5を取り付けたチップソー1において、刃面18を有する刃部13の両側に接合片15を一体的に設けて上記チップ5に嵌合溝16を形成し、該チップ5を取付ける歯形部3の取付部10に上記嵌合溝16の溝底面に接し、切削方向に対して掬い角を有する刃部受面9と、該刃部受面9の下方で刃部13の底部19面に接する底部受面6を形成し、上記チップ5の嵌合溝16を歯形部3に締まり嵌め嵌合することにより、チップ5に対し反嵌合方向に強制的な外力を加えることによりチップ5の取外しが可能に両側の接合片15で挟持し、ろう付け、溶接その他の固定手段を用いることなくチップ5を歯形部3に着脱交換可能に固定したことを特徴としている。
【0006】
第2に、刃部13の底部19面と底部受面6とを、チップ5の刃先17に切削圧を受けた際に当該切削圧によって生じる押圧力及び回転モーメントを受け止めて鋸歯板2に対するチップ5の固定を保持する構造にしたことを特徴としている。
【0007】
第3に、チップ5を側面視で、刃部13の刃先角を鋭角に形成したことを特徴としている。
【0008】
第4に、チップ5が熱処理可能な鋼材で形成されたものであることを特徴としている。
【0009】
第5に、チップ5が焼結成形されたものであることを特徴としてる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図面において符号1はチップソーの1例として示す製材用の帯鋸であり、このチップソー1は図1で示すように、この種バンドソーに使用されるものと同様に、スチール製の板帯部材を無端帯状に形成した鋸歯板2の一側縁に、所定の歯ピッチを有して形成される歯形部3の切削方向下手側(前方側)に、本発明に係わる固定構造によってチップ(刃体)5を圧入することにより製作され、図示しない駆動輪と従動輪間にチップソー1を巻き掛け、図1の矢印で示す切削方向に向けて回転駆動をすることにより、木材等の被切削材Wを切削する。
【0011】
このチップソー1は、鋸歯板2の歯形部3を図1,図3,図4で示すように形成している。即ち、歯形部3は後述する形状のチップ5の底部19を支持する底部受面6と、チップ5の背面7を所定の掬い角(前進角)を有して支持する刃部受面9とを、鋭角状に交差させて切欠したチップ取付部10を形成している。
【0012】
そして、歯形部3は刃部受面9の先端から切削方向上手側に徐々に低くなる逃がし面11と、該逃がし面11から底部受面6に凹状の湾曲面を有して連なる切削屑の排出面12を一連に形成した歯形にしている。
【0013】
チップ5は図2〜図5で示すように、鋸歯板2の歯形部3に形成される底部受面6と刃部受面9に接合する厚さと高さを有する刃部13とし、該刃部13の両側から後方側に向け、舌片状の接合片(挟持片)15を平面視でコの字状となるように一体的に延設することにより、後方側を開放した凹溝状の嵌合溝16を形成し、且つ側面視の形状を刃部13の刃先角を鋭角状となすように菱形状に形成している。
【0014】
これによりチップ5は、刃先17を刃部13前面の平坦な刃面18の上部で先鋭に形成する一方、刃部13の下部に底部19を斜面状に形成して底部受面6に当接させ、また接合片15を刃先17の対角線方向で後方下方に向けて長く形成し鋸歯板2を広い接触面で両側より押圧挟持する。
【0015】
この際図示例のチップ5は、刃巾Lを2.1mm程度とし刃厚Hを1mm程度にし、且つ接合片15の後方への突出長さを2mm程度、刃面18の上下高さを5.0mm位にすると共に、前記嵌合溝16の巾は板厚が略1ミリの歯形部3に対し、圧入可能な締まり嵌め嵌合をする公差を有して形成している。
【0016】
また接合片15は後端部の厚さlを肉薄にすることにより、刃側面に逃げ角θを形成することにより、切削時のチップ5の両側面における摩擦を防止するための歯振(あさり)を形成している。尚、上記寸法はこれに限定されるものでなく、木材等の被切削材W毎に求められる刃巾Lで設定される切削巾、或いは鋸歯板2の厚さ等によって強度及び耐久性を有して効率よく切削するように定められる。
【0017】
そして鋸歯板2の材質は、通常用いられるスチールベルトと同様のものを用いることが可能である。またチップ5を構成する材料は、例えば熱処理可能な鋼材として適当なSUS420J2鋼材を用い、先ずこれを圧延又は引き抜き加工或いは鍛造等の手段によって、上記のような断面形状のチップ母材を形成し、これを任意な長さの棒状に形成して形成することができる。
【0018】
次いで、このチップ母材を所定の刃面長さ毎に連続的に切断し、得られた切断チップを焼入れ等の熱処理を行って硬質化する。従って、上記のように製作されるチップ5は多数のものを簡単且つ廉価に量産できる。
【0019】
またチップ製作手段において、チップ5を側面視で刃部13の刃先角が鋭角状となる菱形形状に切断形成するので、刃角を切断時に簡単に定めることができると共に、刃先13の対角線方向に接合片15を長く形成することができ、歯形部3を両側の下方側から安定的に挟持固定することができる。
【0020】
また底部19から接合片15の下縁に至る長い斜面が、発生させた切削屑を下方に向けて強制的に排出する屑排出面を形成するので、排出面12及び接合片15によって排出が促進され、切削屑を刃部13の付近に停滞させることなく切削性能を上げることができる。
【0021】
以上のように構成されるチップソー1は、鋸歯板2の歯形部3にチップ5の嵌合溝16を位置決めした状態で、適宜な治具又は専用機器等を用いた押し込み或いは叩き込み又は震動等を与える等の圧入手段によって、図4で示す矢印方向に差し込むと、刃部13の背面7を刃部受面9に沿わせた状態で、底部19を底部受面6に当接させて圧入嵌合することができ、この状態で接合片15は歯形部3の側面を締まり嵌め嵌合によって挟持固定される。
【0022】
従って、チップ5は鋸歯板2に対し従来のもののようにろう付けや溶接等の固定手段で固定することなく、チップ5を歯形部3に差込嵌合することによって挟持固定するので、例えば上記のようなチップソー1の歯形部3にチップ5を溶接やろう付によって2時間程度の取付時間を要するケースでは、本発明の圧入嵌合による固定構造では40分程度に短縮することができ、チップ5の取り付けコスト及び製造コストを低減することができた。
【0023】
また図5で示すように、チップソー1は切削方向の回転によって、鋸歯板2に固定された複数のチップ5は被切削材Wを刃巾Lで切削し、製材作業等をスムースに行うことができる。
【0024】
このとき図3で示されるように、チップ5は切削に伴い刃先17に切削抵抗を受けると、刃部受面9の掬い角方向に沿った下方分力が底部19の底部受面6に加わり、チップ5と鋸歯板2との結合をより確実にしながら切削をスムースに行う。またチップ5に切削時に図3の上部の矢印で示される切削圧が加わると、歯形部3には刃部受面9の上部を支点とした回転モーメントが発生するが、チップ5の下端側では、底部受面6において上記回転モーメントを受け止めるので、例え刃先17に大きな切削負荷が掛かったとしてもチップ5が外れることはない。
【0025】
そして、切削時に発生する切削屑は、刃面18から排出面12を経て接合片15の下端に沿って下方に向けて強制的に排出する。
【0026】
尚、刃部13に形成する接合片15は、その大きさ或いは形状によって歯形部3に対しチップ5の固定が充分である場合に、図3の2点鎖線で示すように接合片15を底部19から下方の部分を除去した形状にすると、チップソー1の軽量化と回転抵抗の軽減を図ることができる。
【0027】
図6は切削屑をさらに効率的に案内排出させるための鋸歯板2とチップ5との嵌合構造の他の例を示している。即ちこの例ではチップ5の刃面18の下端をチップソー作動方向に向かってアールを形成させて湾曲する案内面18aにするとともに、排出面12の後方端も刃面18に向かってアールを形成させて湾曲させた案内面12aとしている。
【0028】
そして両案内面18a,12aは互いに連続したアール面を形成させ、チップ5による切削屑が刃面18から案内面18a,12a,排出面12に沿って案内されながら排出される構造になっている。この時案内面12aは同18aに対してより深いアール面を形成するような段差を形成させることもできる。またこの例では案内面18a,12aの境界部であるチップ5側の刃部13の底部19は、図6に示すように刃面18と直交方向の面19bと、刃面18と平行な又は延長線上に重なる面19aとのアングル状の交差面として突設形成されている。
【0029】
これに対し、鋸歯板2例の底受面6も、チップ5の差込時に上記刃部13の底部19(19a,19b)と適合して接触する2つの交差する面6a,6bとして突設形成されており、その結果刃部受面9と底受面6aとの下端はチャンネル状の凹部9aを形成し、チップ5の差込時には刃部13の下端を嵌合させる構造となっている。但し、この例ではチャンネル状凹部9aの底面と刃部13の底面とは接触しない構造に形成されている。上記構成により、チップ5と歯形部3はより強固に嵌合し合うとともに、切削屑の排出をよりスムースに行うことができる。
【0030】
またチップソー1は従来のように、ろう付け等の固定手段によることなく、チップ5を歯形部3に圧入嵌合することにより着脱可能に固定するので、例えばチップ5が磨耗したり欠けたりした場合に、チップソー全体の補修や交換を必要としないで、損耗したチップ5のみを鋸歯板2から外し、新たなチップ5だけを付け替えることにより、使用を可能な状態に復元できる。
【0031】
さらに、チップソー1の使用に伴い全チップ5の刃面18の研ぎ直し、或いは切削巾の変更等を要するような場合には、既設のものを外した鋸歯板2に対し、全チップ5を新たなもの、或いは別の大きさや形状のチップ5と交換することにより、付け替えればよいから、例えば鋸歯板2を使用者側の手元に残した状態で、チップ5を消耗品として研ぎ直し依頼又は新たに購入依頼をしたり、又は交換用のチップ5又は別サイズのチップ5を予め準備しておくことにより、使用者側でも鋸歯板2に対し、新たなチップ5の取付固定を簡単に行うことができる。
【0032】
従って、従来のもののようにチップソー1を製造メーカー又は修理メーカーに送料と時間を掛けてメンテナンス作業依頼をする等の、無駄を解消することができる。
【0033】
また熱処理可能な鋼材として既存のSUS420J2鋸材等を用い、焼入れ等の硬化手段によって硬質化させたチップ5は、交換だけでなく取り付けたままでの目立て研磨も可能であり、刃部13及び接合片15に超硬チップの様な脆さを伴うことなく靱性を有するので、チップ5の圧入嵌合及び着脱可能な固定を簡単に行うことができる。また従来のスチール製の帯鋸の場合に比較し、目立て回数を大きく低減することができ、例えばチップ5をSKH51鋼材のような耐摩耗材で製作した場合には、目立て研磨回数を従来のSKS51鋼材等に比し略4分の1程度に少なくすることができる。
【0034】
尚、本実施形態では上記のような熱処理可能な鋼材でチップ5を製作したが、鋼材は上記のものに特定することなく、例えば耐摩耗性と拡張力を備えた粉末材YAP10を焼結手段によって成形させてチップ5を製造することもでき、この方法により、量産化及びコスト低減を図ることができる。
【0035】
本発明によるチップソー1は、嵌合溝16を形成したチップ5を鋸歯板2に圧入嵌合させ、両側の接合片15で歯形部3を挟持固定することにより、ろう付け固定を省き着脱可能に固定するが、反圧入嵌合方向に強制的な外力を加えて取り外すことを可能とするような耐熱性、耐水性を備えた接着剤を、必要によりチップ5と鋸歯板2に用いることは差し支えない。
【0036】
またチップ5の嵌合溝16内面は必ずしも平行又は平面である必要はなく、着脱嵌合可能な範囲で、緩やかな傾斜面、湾曲面、屈曲した面にし、或いは内面に係止用の僅かな凹凸を設ける等の加工を施して、チップの固定力を高めることも可能である。
【0037】
さらに、上記固定力を高めるために、チップ5の材質を鋸歯板2の材質より熱膨張率の小さい材質で形成することにより、切削時の発熱により両者の嵌合が締まる方向に作用させることができるほか、チップ5を加熱状態で嵌合する所謂「焼き嵌め」による取付けも可能となる。
【0038】
【発明の効果】
本発明は以上説明したようにチップソーを構成したことにより、以下に記載するような効果を奏する。
【0039】
刃面を有する刃部の両側に鋸身を押圧挟持するための接合片を設けて形成した嵌合溝を歯形部に差し込んで圧入状態で嵌合することにより、チップは刃部の背面と底部を刃部受面と底部受面にそれぞれ支持された状態で、両側の接合片によって歯形部を挟持するので、鋸歯板に対するチップの固定を簡単にすることができる。
【0040】
また被切削材を切削するとき、刃部受面の上部を支点として刃部の底部側に生ずる回転モーメントを底部受面で受け止めるので、チップの外れを防止すると共にチップの固定を簡単にすることができる。
【0041】
チップは、従来のもののようにろう付け固定をすることなく、鋸歯板に圧入嵌合し接合片で歯形部を挟持固定するので、チップの固定を簡単に行うことができる。またチップは反圧入嵌合方向に外せるから、損耗したチップのみの付け替えも簡単にでき、チップソー全体の交換を必要としないから切削コストを低減できる。
【0042】
チップを側面視において刃部の刃先角を鋭角状にする菱形形状にしたことにより、刃先の対角側に接合片を長く形成し歯形部を安定よく挟持固定できる。
【0043】
チップを熱処理可能な鋼材で形成し焼入れによって硬質化することにより、刃部及び接合片に靱性を有して、チップの圧入嵌合及び着脱可能な固定を破損なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わるチップソーの要部を示す側面図である。
【図2】 図1のA・A線断面図である。
【図3】 図1の歯形部にチップを固定した構成を示す側断面図である。
【図4】 図3の分解斜視図である。
【図5】 図3の背面図である。
【図6】 (A),(B)はこの発明の他の実施形態を示すチップ取付構造の組立及び分解組立状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 チップソー
2 鋸歯板
3 歯形部
5 チップ
6 底部受面
7 背面
9 刃部受面
10 取付部
13 刃部
15 接合片
16 嵌合溝
17 刃先
18 刃面
19 底部
W 被切削材
Claims (5)
- 帯鋸の鋸歯板(2)に形成した歯形部(3)の取付部(10)にチップ(5)を取り付けたチップソー(1)において、刃面(18)を有する刃部(13)の両側に接合片(15)を一体的に設けて上記チップ(5)に嵌合溝(16)を形成し、該チップ(5)を取付ける歯形部(3)の取付部(10)に上記嵌合溝(16)の溝底面に接し、切削方向に対して掬い角を有する刃部受面(9)と、該刃部受面(9)の下方で刃部(13)の底部(19)面に接する底部受面(6)を形成し、上記チップ(5)の嵌合溝(16)を歯形部(3)に締まり嵌め嵌合することにより、チップ(5)に対し反嵌合方向に強制的な外力を加えることによりチップ(5)の取外しが可能に両側の接合片(15)で挟持し、ろう付け、溶接その他の固定手段を用いることなくチップ(5)を歯形部(3)に着脱交換可能に固定したチップソー。
- 刃部(13)の底部(19)面と底部受面(6)とを、チップ(5)の刃先(17)に切削圧を受けた際に当該切削圧によって生じる押圧力及び回転モーメントを受け止めて鋸歯板(2)に対するチップ(5)の固定を保持する構造にした請求項1のチップソー。
- チップ(5)を側面視で、刃部(13)の刃先角を鋭角に形成した請求項1又は2のチップソー。
- チップ(5)が熱処理可能な鋼材で形成されたものである請求項1,2又は3のチップソー。
- チップ(5)が焼結成形されたものである請求項1,2,3又は4のチップソー。
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