JP4148581B2 - 光学部品用ハードコート組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部品用のハードコート組成物に関する。特に高い屈折を有する有機ガラス光学部品に好適なものである。
【0002】
ここで光学部品とは、眼鏡レンズ、カメラ用・顕微鏡・望遠鏡・双眼鏡用レンズ、反射鏡、プリズム、等の本来の光学部品に限られず、フィルター、照明器具用カバー等も含む概念である。
【0003】
以下の説明は眼鏡用レンズ(光学レンズ)を主として例に採り説明するがこれに限られるものではない。
【0004】
【従来の技術】
光学レンズとして用いられる有機ガラスは従来の無機ガラスと比較して軽量かつ耐衝撃性に優れ可染性で加工も容易であるという特徴により一般に普及してきている。ただし、有機ガラスの状態では無機ガラスと比較して耐磨耗性が低く傷がつきやすいという欠点を有している。これに対して耐磨耗性を向上を目的として有機ガラス表面にハードコート(シリコーン系硬化塗膜)を施すことが一般的に行われている。
【0005】
そして、本願出願人は、先にエポキシ基含有シラン化合物、カルボン酸、硬化剤からなる可染性の塗料組成物を提案し一部実用化している(特公昭57−42665号公報、米国特許第4294950号)。
【0006】
従来、有機ガラスは無機ガラスと比較した場合、屈折率が低く光学レンズに用いた場合レンズ端面が厚くなってしまい強度の視力矯正用には適さないとされてきた。しかし、近年に至っては技術革新によって有機ガラスの屈折率も改善され屈折率1.60に近いものが市場に出回り、現在では、有機ガラス全体で、屈折率略1.60のものが、市場規模の数量ベースにて30%を占め、今後においても増加する傾向にある。
【0007】
このような高い屈折率を有する有機ガラスに対しても、本願出願人は、高屈折のハードコート組成物(光学プラスチック成形品用塗料組成物)を提案し一部実用化している(特許第2577670号)。
【0008】
さらに、近年の動向としてはファッション性がより重視され、よりレンズ端面のコバ厚を薄くしなければならないニーズが強まるにつれ、光学業界において更に高い屈折率を有する超高屈折有機ガラスレンズが市場に出回るようになってきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許第2577670号に係る塗料組成物では、上記のような1.70前後の超高屈折有機ガラスのレンズへの対応は困難であった。
【0010】
即ち、当該塗料組成物は、塗膜特性及び屈折率1.60前後までの屈折率を有する有機ガラスに対する光干渉抑制作用は有する。
【0011】
しかし、当該塗料組成物を、上記屈折率1.70前後超高屈折レンズに塗布した場合、光干渉を抑えることが困難であることが分かった。
【0012】
また、レンズ長期使用経過後には、塗膜部分が紫外線によって黒化現象を起こし美観を損ねることが分かった。そして、黒化現象は、塗膜成分として用いた酸化鉄/酸化チタン複合酸化微粒子中の酸化鉄に基づくと推定される。
【0013】
本発明の目的は、上記にかんがみて、超高屈折レンズに対しても、光干渉を抑えることができ、かつ、紫外線に対する黒化現象を発生せず光学部品を長期使用した場合も美観を損なわないハードコート組成物とこれを塗膜として有する1.66以上の屈折率を有する有機光学部品を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、下記構成の光学部品用ハードコート組成物及び有機ガラス光学部品に想到した。
【0015】
(1) 本発明の光学部品用ハードコート組成物は、モノエポキシ有機基含有アルコキシシランを主体とするアルコキシシランの加水分解物をマトリックス形成成分として、チタニア系酸化金属複合微粒子を光学的干渉抑制剤とする光学部品用ハードコート組成物において、チタニア系酸化金属複合微粒子が、TiO2 を主体としSiO2 を主副成分とし、更に、ZrO2 及びK2 Oを微量副成分とするものであることを特徴とする。
【0016】
上記チタニア系複合微粒子は、平均粒径を1〜50nmとし、組成をZrO2 /TiO2 =0.0015〜0.023 、SiO2 /TiO2 =0.1900〜0.2100、K2 O/TiO2 =0.0012〜0.012 の各重量比率を満足するものとし、含量を全アルコキシシラン100重量部に対して40〜100重量部とすることが望ましい。
【0017】
また、上記モノエポシキ基含有トリアルコキシシランは、
一般式▲1▼
【0018】
【化4】
【0019】
(ただし、R1 はHまたはCH3 、R2 は炭素数1〜4のアルキレン基、R3 は炭素数1〜4のアルキル基)で表される、又は、
一般式▲2▼
【0020】
【化5】
【0021】
(ただし R1 は炭素数1〜4のアルキレン基、R2 は炭素数1〜4のアルキル基)で示される
群から選択される1種又は2種以上からなるものを使用することが望ましい。
【0022】
更に、アルコキシシランの前記エポキシ含有トリアルコキシシラン以外のアルコキシシランとしては、
一般式▲3▼ Si(OR1 )4
(ただし、R1 は炭素数1〜4のアルキル基)
で示されるテトラアルコキシシランを使用し、該テトラアルコキシシランの含有量をアルコキシシラン全量中20wt%以下とすることが望ましい。
【0023】
また、マトリックス形成成分の硬化剤として有機金属化合物を使用し、該有機金属化合物は、エチレンジアミン四酢酸、ヘキサフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルから選ばれるキレート化剤が配位したCr(III )、Co(III )、Fe(III )、Zn(II)、In(III )、Zr(IV)、Y(III )、Sn、V、Al(III )、Ti(II)のキレート化合物の群から選択される1種又は2種以上からなるものを使用することが望ましい。
【0024】
(2) 有機ガラス光学部品は、上記ハードコート組成物で形成されてなるハードコート層を、屈折率1.66以上を示す有機ガラス基材上に備えていることを特徴とするものである。
【0025】
ここで、有機ガラスとしては、▲1▼ポリオール、ポリチオール、及び、メルカプト基を有するヒドロキシ化合物の群から選択される1種又は2種以上の活性水素化合物と、▲2▼ポリイソチオシアネート化合物又はイソシアネート基を有するイソチオシアネート化合物の群から選択される1種又は2種以上とを重合反応させて得られる有機ガラス、又は、
一般式▲4▼
【0026】
【化6】
【0027】
(ただし、XはSまたはOを表し、このSの個数は三員環を構成するSとOの合計に対して平均で50%以上である。)
で示される構造を2個以上有し環状骨格を有するエピスルフィド化合物を重合反応させて得られる有機ガラスを用いることが望ましい。
【0028】
また、本発明の有機ガラス光学部品は、ハードコート層と有機ガラス基材との間に耐衝撃性、密着性向上を目的とするプライマー層を備えていることが望ましい。
【0029】
更に、有機ガラス光学部品は、前記ハードコート層の上に、更に、無機物質系の反射防止膜を積層することが望ましい。
【0030】
【構成の詳細な説明】
以下、本発明の各構成について、詳細に説明をする。以下の説明において、配合単位は、特に断らない限り重量単位とする。
【0031】
(A)本発明の光学部品用ハードコート組成物は、モノエポキシ有機基含有アルコキシシランを主体とするアルコキシシランの加水分解物をマトリックス形成成分として、チタニア系酸化金属複合微粒子を光学的干渉抑制剤とすることを前提的要件とする。
【0032】
(B)本発明の最大の特徴は、チタニア系酸化金属複合微粒子が、TiO2 を主体としSiO2 を主副成分とし、更に、ZrO2 及びK2 Oを微量副成分とするものある。
【0033】
具体的には、チタニア系複合微粒子の仕様は、高屈折率対応特性(屈折率向上作用)が得られ、かつ、上記光学的干渉抑制剤の作用を奏する範囲なら、特に限定されるものではない。
【0034】
(1) 複合微粒子の平均粒径を1〜100nm、望ましくは、2〜50nm、更に望ましくは、4〜25nmとする。複合微粒子の粒径が小さいと耐摩耗性が期待できないとともに、凝集が発生させやすく、塗膜の均一性が阻害されるおそれがある。逆に、複合微粒子の粒径が大きいと、塗膜が白化しやすく、外観性を損なうおそれがある。
【0035】
(2) 各金属酸化物の組成は
SiO2 /TiO2 =0.1900〜0.2100、望ましくは、0.1950〜0.2050
ZrO2 /TiO2 =0.0015〜0.023 、望ましくは、0.002 〜0.020
K2 O/TiO2 =0.0012〜0.012 、望ましくは、0.002 〜0.010
SiO2 /ZrO2 /K2 O=100/0.789 /0.632 〜100/10.953/5.714 、望ましくは、100/1.026 /1.026 〜100/9.756 /4.878
の各重量比率を満足するものとする。
【0036】
酸化金属複合微粒子はTiO2 に、SiO2 、ZrO2 及びK2 Oが一体的に結合されてなるものである。このときの望ましい形態は、TiO2 に対して各副成分が均一に溶け合っている置換形固溶体とする。
【0037】
ここで、主副成分あるSiO2 は、塗料調製に際してのシラン化合物(アルコキシシラン加水分解物)との混和性を増大させる作用とともに、塗膜の耐光性を向上させる作用も奏する。SiO2 の比率が大きいと、TiO2 の有する屈折率向上作用が阻害され、高屈折対応が困難となる。
【0038】
また、微量副成分であるZrO2 及びK2 Oは、相乗してTiO2 の有する屈折率向上作用を阻害せずにTiO2 の光学活性を抑制作用を奏する。ZrO2 及びK2 Oの一方が過多では、上記光学活性抑制の相乗作用を得難い。
従って塗膜及び被塗布物(有機ガラス)双方の近紫外線による劣化作用を低減させることができる。
【0039】
(3) 上記酸化金属複合微粒子の製造方法は例えば特開平2−178219号公報に記載されている方法と類似の方法で行う。即ち、TiO2 水和ゾル及びZrO2 ・K2 O水和ゾルを調製して解膠させた後、過酸化水素を加え溶解させ、さらにケイ酸分散液を添加して高温にて加水分解させる。上記ケイ酸分散液は例えばアルカリケイ酸水溶液を脱アルカリすることにより調製される。上記加水分解物は微粒子の分散液である。この微粒子分散液はイオン交換法・逆浸透法・限外濾過法・真空蒸着法により精製処理することが望ましい。
【0040】
なお、上記複合微粒子はシランカップリング剤で表面改質して用いることが望ましい。このように酸化金属複合微粒子を表面改質することによりシラン化合物との混和性がさらに向上し塗膜後の美観でクモリの軽減ができる。表面改質とは、TiO2 ・ZrO2 ・SiO2 ・K2 Oに残存している水酸基をシランカップリング剤でブロックすることにより複合微粒子の分散性を良好にする処理を言う。この表面改質方法として慣用の方法で行うことができる。例えば下記の有機シラン化合物を溶かしたアルコール溶液に浸漬して行う。
【0041】
シランカップリング剤(表面改質剤)としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等を、好適に使用できる。
【0042】
(4) この複合微粒子の配合量は、上記アルコキシシラン全量100部に対して10〜500部、望ましくは20〜200部、更に望ましくは40〜100部とする。
【0043】
当該酸化金属複合微粒子が少ないと十分な塗膜硬度が得られないとともに、高屈折率基材対応が困難となり、逆に、多いと、塗膜白化現象やハードコート塗膜の硬化(熱重合)時にクラックによる外観不良が発生しやすくなる。
【0044】
(C)本発明のハードコート組成物におけるマトリックス形成成分は、(1) アルコキシシランの加水分解物と(2) 硬化剤としての有機金属化合物を主成分とするものである。
【0045】
(1) 上記アルコキシシランは、モノエポシキ基含有トリアルコキシシランを主体とし、通常、テトラアルコキシシランを併用するものである。
【0046】
そして、上記トリアルコキシシランは、
一般式▲1▼
【0047】
【化7】
【0048】
(ただし、R1 はHまたはCH3 、R2 は炭素数1〜4のアルキレン基、R3 は炭素数1〜4のアルキル基)で表される、又は、
一般式▲2▼
【0049】
【化8】
【0050】
(ただし R1 は炭素数1〜4のアルキレン基、R2 は炭素数1〜4のアルキル基)で示される
群から選択される1種又は2種以上からなることが望ましい。
【0051】
上記一般式▲1▼の具体例としては、下記のものを挙げることができ、これらの化合物のなかで、特に、R2 が炭素数3〜4のものが望ましい。
【0052】
グリシドキシメチルトリメトキシシラン、
グリシドキシメチルトリエトキシシラン、
グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、
グリシドキシメチルトリブトキシシラン、
α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、
α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、
α−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、
α−グリシドキシエチルトリブトキシシラン、
β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、
β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、
β−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、
β−グリシドキシエチルトリブトキシシラン、
α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
α−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、
α−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、
β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
β−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、
β−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、
α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
α−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、
α−グリシドキシブチルトリブトキシシラン、
β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
β−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、
β−グリシドキシブチルトリブトキシシラン、
γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
γ−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、
γ−グリシドキシブチルトリブトキシシラン、
δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
δ−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、
δ−グリシドキシブチルトリブトキシシラン、
β−メチルグリシドキシメチルトリメトキシシラン、
β−メチルグリシドキシメチルトリエトキシシラン、
β−メチルグリシドキシメチルトリプロポキシシラン、
β−メチルグリシドキシメチルトリブトキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシエチルトリブトキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシエチルトリブトキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、
β−メチル−γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
β−メチル−γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
β−メチル−γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、
β−メチル−γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、
β−メチル−α−グリシドキシブチルトリブトキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、
β−メチル−β−グリシドキシブチルトリブトキシシラン、
β−メチル−γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
β−メチル−γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
β−メチル−γ−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、
β−メチル−γ−グリシドキシブチルトリブトキシシラン、
β−メチル−δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
β−メチル−δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
β−メチル−δ−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、
β−メチル−δ−グリシドキシブチルトリブトキシシラン。
【0053】
上記一般式▲2▼の具体例としては、下記のものを挙げることができ、これらの化合物のなかで、特に、R1 の炭素数2〜4のものが望ましい。
【0054】
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリブトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリプロポキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリブトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリプロポキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリブトキシシラン。
【0055】
上記トリアルコキシシランと併用するテトラアルコキシシランとしては、
一般式▲3▼ Si(OR1 )4
(ただし、R1 は炭素数1〜4のアルキル基)
で示されるものの中から1種又は2種以上選択して使用することが望ましい。
【0056】
より具体的にはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。
【0057】
上記アルコキシシランの加水分解物は、アルコキシシランをメタノールやエタノール等の低級アルコールの存在下で0.01〜0.1Nの希酸を滴下し加水分解を行って調製する。希酸としては具体的には塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、スルホン酸等を用いることが可能である。
【0058】
そして上記エポキシ含有トリアルコキシシランに対する上記テトラアルコキシシランの配合割合はトリアルコキシシラン100部に対してテトラアルコキシシランを5.3〜25重量部とする。この配合割合を外れると十分な塗膜硬度と良好な外観を得難い。即ちテトラアルコキシシランが過多では有機レンズ塗膜後熱重合時にクラックによる外観不良が発生し、過少では十分な塗膜硬度が得難い。
【0059】
(2) 上記有機金属化合物(金属キレート)としては、エチレンジアミン四酢酸、ヘキサフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルから選ばれるキレート化剤が配位したCr(III )、Co(III )、Fe(III )、Zn(II)、In(III )、Zr(IV)、Y(III )、Al(III )、Sn、V、Ti(II)のいずれかから1種または2種以上選択して使用できる。
【0060】
これらの内で、アセチルアセトン鉄(III )、ヘキサフルオロアセチルアセトン鉄(III )、アセチルアセトン錫、アセチルアセトンバナジル、アセチルアセトンインジウム(III )、アセチルアセトンジルコニウム(IV)、アセチルアセトン第二コバルト(III )、アセチルアセトンチタン(II)、アセチルアセトンアルミニウム(III )が望ましい。
【0061】
この有機金属化合物の添加量はアルコキシシラン加水分解物合計量(固形分)100部に対して0.1〜10部(望ましくは0.3〜5部)とする。
【0062】
なお、アルコキシシラン化合物は、加水分解物とすると、通常、重量にして25〜35%が減少する。
【0063】
さらに本発明のハードコート組成物は塗膜性及び外観性能を改良するため必要に応じて微量の紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散染料、帯電防止剤、界面活性剤を添加することは可能である。
【0064】
具体的には紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系とベンゾフェノン系等を用いることが可能で、ヒンダードアミン系は酸化防止剤との併用が有効である。分散染料として水分散染料を用いる。
【0065】
界面活性剤としては、疎水基がジメチルシリコーンオイル、親水基がポリエーテルから構成されるノニオン型の界面活性剤は平滑性と帯電防止性を向上させる目的で使用することが望ましい。これらの特性はフッ素系界面活性剤等によっても得られるが、フッ素系界面活性剤のうち、特に高分子のものでは(C)成分であるTiO2 /SiO2 /ZrO2 /K2 O酸化金属複合微粒子と組み合わさって使用した場合、該酸化金属複合微粒子を凝集させやすくする特性もあるため使用時は注意が必要である。また界面活性剤の使用量として、ハードコート組成物(マトリックス形成成分と酸化金属複合微粒子の合計量)100部に対して0.01〜0.5部(望ましくは0.03〜0.3部)で用いる。0.01部未満では十分な平滑性と帯電防止性が得難く、0.5部を超えるとシリコーン系界面活性剤を用いても成膜時にクモリが発生し易い。
(D)本発明の有機ガラス光学部品は、上記構成のハードコート組成物で形成されてなるハードコート層を、屈折率1.66以上を示す有機ガラス基材上に備えているものである。
【0066】
ここで、有機ガラスとしては、例えば、▲1▼ポリオール、ポリチオール及びメルカプト基を有するヒドロキシ化合物からなる活性水素化合物と、▲2▼ポリイソチオシアナート化合物、イソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物の群から選択される1種又は2種以上とを重合反応させて得られる有機ガラスを好適に使用できる(例えば、特開平2−167330号公報等参照)。 このイソチオシアナート化合物には、イソチオシアナート基の他に1以上の硫黄原子を有したものも用いられる。
【0067】
上記ポリイソチオシアナートとは、1分子中に−NCS基を2つ以上含有する化合物を意味し、イソチオシアナート基の他に1個以上の硫黄原子を有したものでもよい。
【0068】
例えば、1,2−ジイソチオシアナートエタン、1,3−ジイソチオシアナートプロパン、1,4−ジイソチオシアナートブタン、1,6−ジイソチオシアナートヘキサン、p−フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアナート等の脂肪族イソチオシアナート、
シクロヘキサンジイソチオシアナート等の脂環族イソチオシアナート、
1,2−ジイソチオシアナートベンゼン、1,4−ジイソチオシアナートベンゼン、2,4−ジイソチオシアナートトルエン、2,5−ジイソチオシアナート−m−キシレン、4,4−ジイソチオシアナート−1,1−ビフェニル、1,1−メチレンビス(4−イソチオシアナートベンゼン)、1,1−メチレンビス(4−イソチオシアナート−2−メチルベンゼン)、1,1−メチレンビス(4−イソチオシアナート−3−メチルベンゼン)等の複素環含有イソチオシアナート
更には、ヘキサンジオイルジイソチオシアナート、ノナンジオイルジイソチオシアナート、カルボニックジイソチオシアナート等のカルボニルイソチオシアナート等を好適に使用できる。
【0069】
イソチオシアナート基の他に1つ以上の硫黄原子を含有するポリイソチオシアナートとしては、
チオビス(3−イソチオシアナートプロパン)、チオビス(2−イソチオシアナートエタン)、ジチオビス(2−イソチオシアナートエタン)等の含硫脂肪族イソチオシアナート;
1−イソチオシアナート−4−((2−イソチオシアナートエチル)スルホニル)ベンゼン、チオビス(4−イソチオシアナートベンゼン)等の含硫芳香族イソチオシアナート;
チオフェン−2,5−ジイソチオシアナート、1,4−ジチアン−2,5−ジイソチオシアナート等の含硫複素環化合物等を好適に使用できる。
【0070】
前記イソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物としては、例えば、1−イソシアナート−3−イソチオシアナートプロパン、1−イソシアナート−5−イソチオシアナートペンタン、1−イソシアナート−6−イソチオシアナートヘキサン、1−イソシアナート−4−イソチオシアナートシクロヘキサン等の脂肪族あるいは脂環式化合物;
1−イソシアナート−4−イソチオシアナートベンゼン等の芳香族化合物等を好適に使用できる。
【0071】
上記活性水素化合物は、ポリオール、ポリチオール、メルカプト基を有するヒドロキシ化合物より1種又は2種以上を選択することができる。
【0072】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコシド、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ソルビトール、エリトリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロース、ジグリペロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、ビシクロ(4,3,0)−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ(5,3,1,1)ドデカンジオール、ビシクロ(4,3,0)ノナンジメタノール、トリシクロ(5,3,1,1)ドデカンジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ(5,3,1,1)ドデカノール、スピロ(3,4)オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトール等の脂肪族ポリオール;
ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ポリオール;
ジブロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオール;
エポキシ樹脂等の高分子ポリオール;
更には、シュウ酸、グルタミン酸、アジピン酸、酢酸、プロピオン酸、シクロヘキサンカルボン酸、β−オキソシクロヘキサンプロピオン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモグリコール、ジカルボキシシクロヘキサン、ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、ブロモフタル酸等の有機酸と、前記ポリオールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等アルキレンオキサイトとの付加反応生成物;
アルキレンポリアミンとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等、アルキレンオキサイドとの付加反応生成物;
ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルフィド、ビス−(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)スルフィド及びプロピレンオキシドが付加された化合物、ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド)、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、1,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン等の硫黄原子を含有したポリオール等を好適に使用できる。
【0073】
またポリチオールとしては、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、2,2−シクロヘキサンジチオール、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)等の脂肪族ポリチオール;
1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1,4−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール等の芳香族ポリチオール;
2,5−ジクロロベンゼン−1,3−ジチオール、3,4,5−トリブロム−1,2−ジメルカプトベンゼン等の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換芳香族ポリチオール;
2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym-トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジチオール−sym-トリアジン等の複素環を含有したポリチオール;
1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン等の核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール;
ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン等、またこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、チオグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール;
3,4−チオフェンジチオール等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物等を好適に使用できる。
【0074】
また、メルカプト基(チオール基)を有するヒドロキシ化合物としては、
2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、3,4−ジメルカプト−2−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリトリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールトリス(チオグリコール)、ペンタエリトリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4−メルカプトジフェニルスルホン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロキシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチルトリス(メルカプトエチルチオ)メタン等が挙げられる。
【0075】
さらに、これら活性水素化合物の塩素置換体、臭素置換体のハロゲン置換体も使用は可能である。これらは単独で用いることも、また2種以上を混合して用いることも可能である。
【0076】
そして、本発明の光学部品に使用する有機ガラスは、上記イソチオシアナート化合物及び活性水素化合物とを、(NCO+NCS)/(OH+SH)の官能基モル比が、通常0.5〜3.0、望ましくは0.5〜1.5、更に望ましくは0.8〜1.2の範囲内となるように重合反応させて得る
別の高屈折率を示す有機ガラスとしては、
下記一般式▲4▼
【0077】
【化9】
【0078】
(ただし、XはSまたはOを表し、このSの個数は三員環を構成するSとOの合計に対して平均で50%以上である。)
で表される構造を2個以上有し、環状骨格を有するエピスルフィド化合物を重合硬化して得られる有機ガラスを好適に使用できる(例えば、特開平9−71580号公報参照)。
【0079】
具体的には一般式▲5▼
【0080】
【化10】
【0081】
で構造で表されるものを好適に使用できる。
【0082】
(ただし、
【化11】
【0083】
a,b,c,d,e:a+b+c+d=4,a,b=0又は1、c,d=0、1、2、3又は4、e=0、1、2又は3を満足する整数)
上記被塗布物(有機ガラス)への塗布方法としては刷毛塗り塗装、浸漬塗装、ローラ塗装、スプレー塗装、スピン塗装等を挙げることができる。また乾燥硬化条件の例としては、60℃〜150℃で、特に好ましくは、80〜120℃×1〜5時間として挙げられ、硬化後得られる塗膜としては0.5μm〜20μmである。
【0084】
被塗布物の本発明の組成物を、塗布する前に、酸アルカリ洗浄溶剤による脱脂洗浄、プラズマ処理、超音波洗浄等を行うことが望ましい。
【0085】
(E)本発明の有機ガラス光学部品は、前記ハードコート層と前記有機ガラス基材との間に耐衝撃性、密着性向上を目的とするプライマー層を形成することが望ましい。
【0086】
具体的なプライマーとして、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)にオルガノアルコキシシランの加水分解物で表面処理を施した金属酸化物無機微粒子を添加したTPUプライマー組成物と、塗膜形成ポリマーの全部または主体がエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)に上記と同様の金属酸化物無機微粒子を添加したTPEEプライマー組成物を用いる。
【0087】
TPUは、長鎖ポリオールとポリイソシアナートからなるソフトセグメントと短鎖ポリオールとポリイソシアナートからなるハードセグメントとで構成されるもので、水性エマルションの形態で添加されることが望ましい。
【0088】
オルガノアルコキシシランの加水分解物で表面処理を施した金属酸化物無機微粒子としては、R1 aR2 bSi(OR3 )4(a+b)(但しR1 は炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリルオキシ基、フェニル基であり、R2 は炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン化アルキル基であり、R3 は炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基であり、a及びbは0、1、2であって、a+b=0、1、2、3のいずれかである。)式で表されるオルガノアルコキシシランの加水分解物を、旧族IVA、VIII、IVB族に属する金属元素酸化物の2種以上に表面処理を施して用いる。
【0089】
TPEEは、ハードセグメントにポリエステル、ソフトセグメントにポリエーテル又はポリエステルを使用したマルチブロック共重合体で、このハードセグメントとソフトセグメントとの重量比率は、通常、前者/後者=30/70〜10/90とする。
【0090】
また、ウレタン系プライマーと同様のオルガノアルコキシシランの加水分解物で表面処理を施した金属酸化物無機微粒子を屈折率調整用として用いる。
【0091】
(F)前記ハードコート層の上に、更に、無機物質からなる反射防止膜を積層することが望ましい。
【0092】
硬化塗膜上に形成することが可能な反射防止膜に関しては金属、金属酸化物、金属フッ化物等の無機粉体を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法による形成が可能で、酸化物としてはSiO2 、TiO2 、Ta2 O5 、Sb2 O3 、ZrO2 、酸化アルミニウムがあり、金属フッ化物としてはフッ化マグネシウム等を挙げることができる。
【0093】
より具体的な反射防止膜の構成としては、下記に示す構成等で用いることができる。
【0094】
(α)SiO2 /ZrO2 :1/4λ、ZrO2 :1/2λ、SiO2 :1/4λ
(β)SiO2 /TiO2 :1/4λ、TiO2 :1/2λ、SiO2 :1/4λ
【0095】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例・比較例について、説明をする。
【0096】
(A)各実施例・比較例のハードコート組成物は、それぞれ下記の如く調製した。なお、表1に各主成分の配合割合を示す(複合微粒子の配合量は固形分換算である。)とともに、ハードコートの屈折率も示す。
【0097】
【表1】
【0098】
▲1▼SiO2 /TiO2 =0.1986、ZrO2 /TiO2 =0.0024
K2 O/TiO2 =0.0024、粒子径:8nm、
改質剤:テトラエトキシシラン
▲2▼SiO2 /TiO2 =0.2049、ZrO2 /TiO2 =0.0198
K2 O/TiO2 =0.0099、粒子径:8nm、
改質剤:テトラエトキシシラン
▲3▼SiO2 /TiO2 =0.2351、Fe2 O3 /TiO2 =0.0075
粒子径:11nm、改質剤:テトラエトキシシラン
i)アセチルアセトン鉄(III )
ii) アセチルアセトンアルミニウム(III )
iii)イタコン酸12部+ジシアンジアミド5部
iv) イタコン酸67部+ジシアンジアミド17部
<実施例1>
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン136部、ケイ酸エチル10部、メチルアルコール60部を加え、攪拌しながら0.01N塩酸47部を滴下して一昼夜加水分解を行って、オルガノアルコキシシランの加水分解物を調製した。
【0099】
該加水分解物に、メタノール分散TiO2 /SiO2 /ZrO2 /K2 O(「オプトレイク1130Z▲1▼」触媒化成工業株式会社製、不揮発分25%、テトラエトキシシラン表面処理品)525部、2−エトキシエタノール69部、界面活性剤として(商品名「L−7001」日本ユニカー株式会社製)0.3部と、触媒としてアセチルアセトンアルミニウム(III )を2.2部加え、一昼夜攪拌し、濾過してハードコート組成物を調製した。
【0100】
<実施例2>
実施例1において、メタノール分散TiO2 /SiO2 /ZrO2 /K2 O(「オプトレイク1130Z▲2▼」(触媒化成工業株式会社製、不揮発分30%、テトラエトキシシラン表面処理品)438部に変更した以外は、同様にしてハードコート組成物を調製した。
【0101】
<実施例3>
実施例1において、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン136部、ケイ酸エチル14部、メチルアルコール60部、メタノール分散TiO2 /SiO2 /ZrO2 /K2 Oゾル(「オプトレイク1130Z▲1▼」触媒化成工業株式会社製、不揮発分25%、テトラエトキシシラン表面処理品)488部、触媒としてアセチルアセトン鉄(III )2部に変更して調製した。
【0102】
<実施例4>
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン171部、ケイ酸エチル20部、メチルアルコール100部を加え、攪拌しながら0.01N塩酸70部を滴下して一昼夜加水分解を行って加水分解物を調製した。
【0103】
上記加水分解物にメタノール分散TiO2 /SiO2 /ZrO2 /K2 Oゾル(「オプトレイク1130Z▲1▼」触媒化成工業株式会社製、不揮発分25%、テトラエトキシシラン表面処理品)450部、2−エトキシエタノール70部、界面活性剤として(商品名「L−7002」日本ユニカー株式会社製)0.3部と触媒としてアセチルアセトン鉄(III )を3部加え、一昼夜攪拌し濾過してハードコート組成物を調製した。
【0104】
<実施例5>
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン171部、ケイ酸エチル28部、メチルアルコール100部を加え、攪拌しながら0.01N塩酸70部を滴下して一昼夜加水分解を行って加水分解物を調製した。
【0105】
上記加水分解物にメタノール分散TiO2 /SiO2 /ZrO2 /K2 Oゾル(「オプトレイク1130Z▲2▼」触媒化成工業株式会社製、不揮発分30%、テトラエトキシシラン表面処理品)430部、2−エトキシエタノール70部、界面活性剤として(商品名「L−7002」日本ユニカー株式会社製)0.3部と触媒としてアセチルアセトンアルミニウム(III )を3部加え、一昼夜攪拌し濾過してハードコート組成物を調製した。
【0106】
<比較例1>
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン125部、ケイ酸エチル110部、メチルアルコール92部、メチルエチルケトン200部を加え攪拌しながら0.01N塩酸54部を滴下して一昼夜加水分解を行って加水分解物を調製した。
【0107】
上記加水分解物290部にメタノール分散TiO2 /SiO2 /Fe2 O3 ゾル(「オプトレイク1130FII」触媒化成工業株式会社製、不揮発分30%、テトラエトキシシラン表面処理品)90部、界面活性剤として(商品名「FC430」住友3M社製)0.5部と触媒としてイタコン酸12部、ジシアンジアミド5部を加え一昼夜攪拌し濾過してハードコート組成物を調製した。
【0108】
<比較例2>
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン382部、ケイ酸エチル56部、メチルアルコール350部を加え攪拌しながら0.02規定の塩酸111部を滴下して一昼夜加水分解を行って加水分解物を調製した。該加水分解物に界面活性剤としてフッ素アルキルエステル(商品名「フロラードFC430」住友3M社製)0.12部と触媒としてイタコン酸67部とジシアンジアミドを17部加え、一昼夜攪拌し濾過してハードコート組成物を調製した。
【0109】
(B)有機ガラスレンズの調製
各実施例・比較例に使用した各有機ガラスレンズは、それぞれ下記の如く調製した又は市販品である。
【0110】
そして各レンズは、それぞれ45℃の10%NaOH水溶液に10分間浸漬後、洗浄乾燥しプラズマ処理を施した。
【0111】
レンズ(a):屈折率1.74
ポリイソチオシアナート化合物として、1−イソチオシアナート−4−((2−イソチオシアナートエチル)スルホニル)ベンゼン[
【化12】
]11.4部、活性水素化合物として、1,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン[
【化13】
]を5.9部、離型剤としてダイキン工業株式会社製「ユニダインDS−403」を500ppm割合で混合しガラスモールド中に注入し、室温から120℃まで48時間かけて昇温し、同温度にて48時間加熱し重合させた。
【0112】
レンズ(b):屈折率1.74
ポリイソチオシアナート化合物として、ジチオビス(2−イソチオシアナートエタン)ベンゼン[−(SCH2 CH2 NCS)2 ] 14.2部、活性水素化合物として、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド[
【化14】
]13.1部、離型剤としてトリエチルオクチルアンモニウムクロライドを500ppm割合で混合しガラスモールド中に注入し、室温から120℃まで48時間かけて昇温し、同温度にて48時間加熱し重合させた。
【0113】
レンズ(c):屈折率1.69
2−(2−β−エピチオプロピルチオエチルチオ)−1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン[
【化15】
]20部をガラスモールド中に注入し、室温から80℃まで5時間かけて加熱し重合させた。
【0114】
レンズ(d):屈折率1.70
1,2−ビス[(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ]−3−(β−エピチオプロピルチオ)プロパン[
【化16】
]20部をガラスモールド中に注入し、室温から80℃まで5時間かけて加熱し重合させた。
【0115】
レンズ(e):屈折率1.60
「MR−6」
(C)試験片の調製
試験片は、ハードコート単層被膜品(HD)、ハードコート層及び反射防止膜との二層被膜品(HD+AR)、プライマー層、ハードコート層及び反射防止膜の三層被膜品(PR+HD+AR)を、下記各塗膜の形成方法にしたがって調製した。
【0116】
(1) 表示の各レンズを、下記組成の各プライマー組成物にプライマー浸漬後160mm/min で引き上げて浸漬塗布後、各レンズは110℃で20分間予備乾燥してプライマー層を形成した。
【0117】
<TPUプライマー組成物>
不揮発分33%水分散型ポリウレタン(「スーパーフレックス190」第一工業製薬株式会社製)200部、メチルアルコール600部を混合後、攪拌しつつTiO2 系複合微粒子(「オプトレイク1130FII」触媒化成工業株式会社製、不揮発分30%、Fe2 O3 /TiO2 =0.02、SiO2 /TiO2 =0.11、分散溶媒:メチルアルコール、表面処理:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)170部、及び、レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(商品名「L7001」日本ユニカー株式会社製)0.5部を添加し、2時間攪拌後、濾過してプライマー組成物塗料を調製した。
【0118】
<TPEEプライマー組成物>
市販のTPEE(「ベスレジンA−160P」高松油脂株式会社製水分散エマルション、不揮発分27%)100部に、メタノール分散酸化チタン系複合微粒子ゾル(「オプトレイク1130Z−▲2▼」触媒化成工業株式会社製、不揮発分20%、ZrO2 /TiO2 =0.0198、SiO2 /TiO2 =0.2049、K2 O/TiO2 =0.0099、粒子径:8nm、表面処理:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)57部、メチルアルコール640部、及び、レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(「L−77」日本ユニカー株式会社製)1部を添加し、2時間攪拌後、濾過してプライマー組成物塗料を調製した。
【0119】
(2) 上記プライマー層を形成後の又は形成しない各レンズに上記(A)で調製した表示の各ハードコート組成物に浸漬後130mm/min で引き上げて浸漬塗布し、更に、各レンズは95℃で20分間予備乾燥、続いて110℃で4時間加熱処理してハードコート層を形成した。
【0120】
(3) 反射防止膜の形成
上記ハードコート層を形成後の各レンズに無機物質を以下に示す構成にて真空蒸着法により形成させた。
【0121】
反射防止膜の下記(α)、(β)のいずれかの構成でそれぞれ実施した。
【0122】
(α)SiO2 /ZrO2 :1/4λ、ZrO2 :1/2λ、SiO2 :1/4λ
(β)SiO2 /TiO2 :1/4λ、TiO2 :1/2λ、SiO2 :1/4λ
(D)評価試験
このようにして単層膜又は複合膜を形成した各レンズについて、下記に示す評価方法にて判定を行った。
【0123】
(1) 密着性
塗膜面に1mmの基材に達するゴバン目を塗膜の上から鋼ナイフで100個入れてセロハン粘着テープ(ニチバン製)を強く貼り付け90度方向に急速にはがし、下記の基準にて評価を行う。
【0124】
3A:10回以上剥離無し 2A:5〜9回の剥離無し
A:1〜4回の剥離無し AB:キザミ線に沿い点状もしくは線状剥離
B:キザミ線に沿い面状剥離(20%以下)但し1升目の剥離面積1/2以下
C:キザミ線に沿い面状剥離(20%以上)但し1升目の剥離面積1/2以下
D:キザミ線に沿い面状剥離、但し1升目の剥離面積全面
二次密着性に関しては、80℃の温水に10分間浸漬後、上記と同様の方法で判定を行う。
【0125】
(2) 擦傷性
蒸着膜加工まで行ったものに関しては#0000のスチールウールを用い、600g荷重にて硬化塗膜の上を擦り、その結果を肉眼により判定評価を行う。ハード膜加工までのものにはJIS#502の砂消しゴムに200g荷重にて判定する。
【0126】
3A:キズの面積が0% 2A:キズの面積が1%を超え2%未満
A:キズの面積が3%を超え10%未満
AB:キズの面積が10%を超え30%未満
B:キズの面積が30%を超え60%未満
C:キズの面積が60%以上
D:キズの面積が全面
塗膜無しの状態で擦った判定はCであった。
【0127】
(3) 耐候性試験
促進耐候性試験(スガ試験機株式会社製「サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター」)で200時間暴露して、▲1▼での一次密着性試験と同様の方法にて剥離状況を判定する。
【0128】
また暴露後の透明度、着色、表面状態を調査する。
【0129】
(4) 外観
肉眼観察により透明度、着色、表面状態を調査する。
【0130】
(5) 耐衝撃性
16.2gの鋼球を1.27mの高さより試験サンプルの中心部に落下させ、貫通するか否か判定を行う。
【0131】
○:貫通なし、Χ:貫通
試験レンズサンプルとして中心厚:2mm、コバ厚:8mmの球面のものを用い、室温25℃、湿度45%の条件下で試験を実施した。
【0132】
プラスチックレンズに得られたシリコーン硬化塗料に浸漬後105mm/min で引き上げコーティングを施す。塗布したプラスチックレンズは110℃で20分間予備乾燥後、100℃で4時間加熱処理してハードコート組成物を硬化させた。
【0133】
(E)試験結果及び評価
上記試験結果を表2〜7に示すが、各実施例はいずれも塗膜物性が優れているとともに、比較例におけるような、光干渉に起因する干渉縞やクモリの発生がなく(特に反射防止膜を形成した場合)、更には、紫外線に起因する黒化・黄変現象も発生しないことがわかる。
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
【表6】
【0139】
【表7】
Claims (9)
- モノエポキシ有機基含有トリアルコキシシランを主体とするアルコキシシランの加水分解物をマトリックス形成成分として、チタニア系酸化金属複合微粒子を光学的干渉抑制剤とする光学部品用ハードコート組成物において、
前記チタニア系酸化金属複合微粒子が、TiO2 を主体としSiO2 を主副成分とし、更に、ZrO2 及びK2 Oを微量副成分とするものあることを特徴とする光学部品用ハードコート組成物。 - 前記チタニア系酸化金属複合微粒子が、平均粒径を1〜50nmとし、組成をSiO2 /TiO2 =0.1900〜0.2100、ZrO2 /TiO2 =0.0015〜0.023 、K2 O/TiO2 =0.0012〜0.012 の各重量比率を満足するものとし、含量を全アルコキシシラン100重量部に対して40〜100重量部であることを特徴とする請求項1記載の光学部品用ハードコート組成物。
- 前記エポキシ含有トリアルコキシシラン以外のアルコキシシランが、
一般式▲3▼ Si(OR1 )4
(ただし、R1 は炭素数1〜4のアルキル基)
で示されるテトラアルコキシシランであり、該テトラアルコキシシランの含有量が前記アルコキシシラン全量中20wt%以下であることを特徴とする請求項3記載の光学部品用ハードコート組成物。 - マトリックス形成成分の硬化剤として有機金属化合物を含有し、該有機金属化合物が、エチレンジアミン四酢酸、ヘキサフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルから選ばれるキレート化剤が配位したCr(III )、Co(III )、Fe(III )、Zn(II)、In(III )、Zr(IV)、Y(III )、Sn、V、Al(III )、Ti(II)のキレート化合物の群から選択される1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項4記載の光学部品用ハードコート組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート組成物で形成されてなるハードコート層を、屈折率1.66以上を示す有機ガラス基材上に備えていることを特徴とする有機ガラス光学部品。
- 前記ハードコート層と前記有機ガラス基材との間に耐衝撃性、密着性向上を目的とするプライマー層を備えていることを特徴とする請求項6又は7記載の有機ガラス光学部品。
- 前記ハードコート層の上に、更に、無機物質系の反射防止膜層が積層されていることを特徴とする請求項8記載の有機ガラス光学部品。
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