JP4148366B2 - 新規なクロム(iii)アルファ・アミノ酸錯体 - Google Patents

新規なクロム(iii)アルファ・アミノ酸錯体 Download PDF

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Description

本発明は新規なクロム(III)アルファ・アミノ酸錯体に関する。
栄養におけるクロムの本質的な役割は1959年にシュヴァルツとメルツにより初めて認識された(非特許文献1を参照)。これらの研究者達はトルラ酵母を給餌されたラットがグルコース不耐性を発症することを観察した。しかしながら、ビール酵母を給餌されたラットはこの状態に罹らなかった。ビール酵母に存在するがトルラ酵母に存在しないある物質はグルコース耐性因子(GTF)と命名された。後に、GTFの活性成分はクロム(III)であることが証明された。これらの初期の観察以来、クロムの栄養上の役割をより良く理解するために多数の研究が着手された。現在、ヒト及び動物の栄養におけるクロムの役割について多くのことが知られているが、知られていない多くのことが存在し、ヒトの疾患におけるクロムの影響の多くは依然論争中であり十分に立証されていない。最近、栄養におけるクロムの役割に関する知識の現状をまとめた幾つかの総説が刊行された(非特許文献2、3、4、5を参照)。
元々1959年に提唱されたグルコース耐性因子の正確な性質は依然理解し難い。グルコース代謝を増強するクロム含有物質は酸で加水分解したビール酵母及びブタの腎臓から部分精製された。酵母から得られる物質はこの上ない注目を受け一般に酵母GTFと呼ばれた。酵母GTFのクロムは無機クロム源より迅速に吸収されることが報告された。更に、酵母GTFはクロム(III)イオン、ニコチン酸、グリシン、グルタミン酸及びシステインから構成されると提唱された(非特許文献6を参照)。提唱された酵母GTFの組成は依然論争中であり、その単離は他の実験室で再現できなかった。その上、単離された酵母GTFは特殊なクロム結合タンパク質の酸加水分解により人為的に生産されたものであろうと提唱された(非特許文献7を参照)。
最近、炭水化物代謝及び脂質代謝の調節におけるクロムの作用の分子的基礎の理解に向けて一定の進歩があった。低分子量クロム結合物質(LMWCr)として知られるペプチドが単離され、その受容体に対するインスリンの作用を調節する際に重要な役割を果たすと考えられる。このペプチドは哺乳動物の組織に広く分布しているようであり、幾つかの起源から単離された。LMWCrはグリシン、システイン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から構成される。グルタミン酸及びアスパラギン酸は該アミノ酸残基の半分以上を占める。このペプチドは1500ダルトンであり4個のクロムイオンと結合する。このペプチドは主として金属を持たない形態で組織に存在する。このタンパク質のアミノ酸配列及びそれとクロムとの錯体の結晶構造はまだ知られていない(非特許文献8を参照)。LMWCrに結合したクロムは主に陰イオンで架橋した多核クロム−カルボン酸塩の集合体の形態で存在するようである(非特許文献9を参照)。合成した多核クロム集合体はLMWCrで観察されるものと同様なインスリン受容体活性を活性化することが見出された(非特許文献10を参照)。
まだ同定されていないクロム(III)と有機配位子との錯体が炭水化物代謝及び脂質代謝の調節を担うという認識から、ヒト及び動物の栄養摂取に用いるための新規なクロム含有化合物を開発することに著しい関心が生じた。種々の配位子に結合したクロムを含む化合物を記載する多数の特許が発行された。1975年に1:1及び1:2のクロム・アルファ・アミノ酸錯体塩を開示する特許(特許文献1を参照)が本出願の発明者の一人に発行された。これらの錯体塩はイオン対として存在し、その陽イオンは一分子又は二分子のアルファ・アミノ酸とクロム(III)イオンの錯体から構成される。この陽イオンは該錯体を形成するアミノ酸分子の数に依存して1+又は2+のいずれかを持つ。その対イオン(陰イオン)は塩化物、硫酸塩又は酸硫酸塩であって良い。1:1のクロム−L−メチオニン錯体を含むL−メチオニンの必須の金属錯体が米国特許第5,278,329号(特許文献2)に開示されている。タンパク質の加水分解により得られるクロム−アミノ酸錯体を含むアミノ酸の金属錯体は米国特許第5,698,724号(特許文献3)に記載されている。
ビール酵母から濃縮されたグルコース耐性因子を得る方法は1982年に発行された米国特許第4,343,905号(特許文献4)に記載された。炭水化物代謝又は脂質代謝を調節する際に生物活性をもつ酵母又は酵母誘導体を得る方法を記載する他の特許、例えば米国特許第4,348,483号(特許文献5)、第6,140,107号(特許文献6)、第6,159,466号(特許文献7)及び第6,248,323号(特許文献8)がその後に発行された。
既に知られた化合物であるクロム・アセチルアセトネートの食事用栄養補助食品及び医薬物質としての使用は米国特許第4,571,391号(特許文献9)に記載されている。この水に不溶性の化合物は熱に安定であり、酸及び弱塩基性pH溶液に非常に安定である。クロム・アセチルアセトネートは経口投与後胃腸管から急速に吸収されることが報告されており、グルコース代謝に及ぼすインスリンの効果を増強するのに有効である。
ピコリン酸クロムを含む主要な金属ピコリネートを用いた食事栄養補給はRe第33,988号として1992年7月7日に再発行された米国特許第4,315,927号(特許文献10)に初めて開示された。米国特許第4,315,927号(特許文献10)にピコリン酸クロムの調製が記載された(実施例4)。Re第33,988号(特許文献11)では、米国特許第4,315,927号で対象とされた亜鉛及び鉄に加えてクロム、コバルト、銅及びマンガンのピコリン酸塩錯体を網羅するために特定の請求項が設けられている。ピコリン酸クロム錯体を生産する方法は米国特許第5,677,461号(特許文献12)に記載されている。種々の疾患の治療及び予防におけるピコリン酸クロムの使用は米国特許第5,087,623号、第5,087,624号、第5,175,156号及び第6,329,361・B1号(特許文献13)を含む幾つかの特許に開示されている。ピコリン酸クロムを含む組成物及びこれらの組成物の用途は米国特許第5,614,553号、第5,929,066号、第6,093,711号、第6,136,317号、第6,1434,301号、第6,251,888・B1号及び第6,251,889・B1号(特許文献14)に記載されている。
「GTFクロム物質」として記載されるニコチン酸クロム及びその調製方法は米国特許第4,923,855号及び第5,194,615号(特許文献15)に開示された。血中脂質レベルを下げるためにニコチン酸クロムを使用することについては米国特許第4,954,492号(特許文献16)に記載されている。ニコチン酸クロムを含む組成物及びそれらの用途は米国特許第5,905,075号、第5,948,772号、第5,980,905号、第6,100,250号、第6,100,251号及び第6,323,192号(特許文献17)を含む幾つかの特許に開示されている。
GTF様活性を有する医薬のインスリン増強Cr(III)錯体は米国特許第5,266,560号(特許文献18)に開示されている。これらの錯体はクロム(III)、ニコチン酸又はその誘導体の一つ及びグルタチオン(L−グルタミン酸、L−システイン及びグリシンを含むペプチド)から構成される。単離された脂肪細胞のグルコース輸送に及ぼすこれらの錯体のインビトロでのインスリン増強活性が記載されており、文献で既に報告された同様な錯体の活性との比較がなされている。
クロム・プロプリオネートを含む金属プロプリオネートの用途は米国特許第5,707,679号及び第6,303,158・B1号(特許文献19)に開示されている。短鎖脂肪酸のクロム塩を含む組成物及び動物の栄養摂取におけるその使用は米国特許第5,846,581号(特許文献20)に記載されている。動物の栄養補助飼料として用いる金属カルボキシレートを製造する方法は米国特許第5,591,878号及び第5,795,615号(特許文献21)に記載されている。
クレアチンとクロムを含む必須金属との生体利用可能なキレートは米国特許第6,114,379号(特許文献22)に記載されている。この特許は各クロムイオンにつき1〜3価の配位子を含むクレアチン−クロム錯体を請求する。
既に知られている三核(tri-nuclear)クロム(III)錯体の栄養補助食品としての使用又は医学的状態の治療における使用は米国特許第6,149,948号及び第6,197,816・B1号(特許文献23)に記載されている。この錯体は化学式[Cr3O(O2CCH2CH36(H2O)3 ] +で表される。炭水化物代謝及び脂質代謝に関与する幾つかの酵素に及ぼす該錯体の生物学的効果はこれらの特許に記載されている。ウシの低分子量Cr結合物質の単離方法及びその使用は米国特許第5,872,102号(特許文献24)に記載されている。この物質はラットの脂肪細胞によるインスリンで活性化されたグルコースの摂取を増強し、ラットの脂肪細胞膜チロシンキナーゼ及びホスホチロシン・ホスファターゼの活性を活性化した。
これらの文献に記載された種々のクロム錯体の有効性を制限する幾つかの短所が確認された。ピコリン酸クロムは市販されているクロム錯体のうち最もよく知られている。しかしながら、この化合物は水溶性が限られており、幾つかの最近の研究はその安全性に疑問を呈した。塩化クロム及びピコリン酸クロムに毒性がないことはラットで証明された(非特許文献11を参照)が、最近の研究はピコリン酸クロムがチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞においてDNAを切断し染色体の損傷を生じることを報告した(非特許文献12、13を参照)。ラットにおけるピコリン酸クロム(III)のインビボ分布の研究は、この化合物のインビボでの短い寿命がこの栄養補助食品の潜在的な毒性作用を最小限にすると結論した(非特許文献14を参照)。これらの理由によって、可溶性で、生体利用可能で、有効で且つ安全な食品クロムの代替的供給源が必要であることは明白である。
米国特許第3,925,433号。 米国特許第5,278,329号。 米国特許第5,698,724号。 米国特許第4,343,905号 米国特許第4,348,483号。 米国特許第6,140,107号。 米国特許第6,159,466号。 米国特許第6,248,323号。 米国特許第4,571,391号。 米国特許第4,315,927号。 米国特許Re第33,988号。 米国特許第5,677,461号。 米国特許第第5,087,623号、第5,087,624号、第5,175,156号及び第6,329,361・B1号。 米国特許第5,614,553号、第5,929,066号、第6,093,711号、第6,136,317号、第6,143,301号、第6,251,888・B1号及び第6,251,889・B1号。 米国特許第4,923,855号及び第5,194,615号。 米国特許第4,954,492号。 米国特許第5,905,075号、第5,948,772号、第5,980,905号、第6,100,250号、第6,100,251号及び第6,323,192号。 米国特許第5,266,560号。 米国特許第5,707,679号及び第6,303,158・B1号。 米国特許第5,846,581号。 米国特許第5,591,878号及び第5,795,615号。 米国特許第6,114,379号。 米国特許第6,149,948号及び第6,197,816・B1号。 米国特許第5,872,102号。 シュヴァルツ,ケイ.とメルツ,ダブリュ.、「クロム(III)及びグルコース耐性因子」,Archs Biochem. Biophys. 85: 292 (1959)。 ヘンリー・シイ.ルカスキ、「補給剤としてのクロム」,Ann Rev Nutr. 19: 279 (1999)。 リチャード・エイ.アンダーソン、「クロム、グルコース不耐性及び糖尿病」,Journal of the American College of Nutrition, 17, 548 (1998) 。 ジョン・ビイ.ビンセント、「クロムの生化学」,J. Nutr. 130: 715 (2000) 。 ジョン・ビイ.ビンセント、「クロムの作用の分子機構及びそれと糖尿病との関係についての探究」,Nutrition Reviews, 58: 67 (2000) 。 イー.ダブリュ.トエプフェル、ダブリュ.メルツ、エム.エム.ポランスキーら、「ビール酵母抽出物から及び合成によるグルコース耐性因子活性を持つクロム含有物質の調製」,J Agric Food Chem 25: 162 (1977)。 ケイ.エイチ.サムラルとジェイ.ビイ.ビンセント、「グルコース耐性因子は低分子量クロム結合物質の酸加水分解により生産される人工物であろうか」,Polyhedron, 16: 4171 (1997) 。 ジェイ.ビイ.ビンセント、「クロムの生化学」,J. Nutr. 130: 715 (2000)。 トルイット・エリスら、「低分子量クロム結合物質についての合成モデル:オキソ架橋した四核クロム(III)集合体の合成及び特性決定」,Inorg. Chem., 33: 5522 (1994) 。 シイ.エム.デイビスら、「合成の多核クロム集合体はインスリン受容体キナーゼ活性を活性化する:低分子量クロム結合物質についての機能モデル」,Inorg. Chem., 36: 5316 (1997) 。 アンダーソンら、「ラットにおける塩化クロム及びクロム・ピコリネートの毒性の欠如」,J. Amer. Coll. Nutr. 16: 273 (1997) 。 ジェイ.ケイ.スピージェンスら、「栄養補助食品のクロム(III)トリス(ピコリネート)がDNAを切断する」,Chem. Res. Toxicol. 12: 483 (1999)。 ディ.エム.スティエルンス、「クロム(III)ピコリネートはチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞で染色体の損傷を生じる」,FASEB J., 9: 1643 (1995)。 ディ.ディ.ディ.ヘップバーンとジェイ.ビイ.ビンセント、「ラットにおけるクロム・ピコリネート由来のクロムのインビボ分布及び栄養補助食品の安全性についての暗示」,Chem. Res. Toxicol., 15: 93 (2002) 。
上に述べた必要性を満たすことが本発明の第一目的である。
ヒト及び家畜用の栄養補助食品として用いるために新規なクロム(III)とアルファ・アミノ酸の1:3錯体を提供することが本発明の別の一目的である。
本発明の更なる目的はこれらの新規な錯体の調製方法を提供することである。
更なる他の目的は動物の動作に及ぼすこれらの錯体の望ましい効果を提供し説明することである。
本発明の他の目的は実験動物で新規な錯体に毒性がないことを証明することである。
本発明の構造はクロム(III)とアルファ・アミノ酸の1:3錯体である。利用可能で且つ栄養上適切なクロム錯体の構造及び性質は既に殆ど研究された。例えば、ピコリン酸クロム(III)の単核及び二核の錯体が合成され、それらの構造はX線結晶学により決定された。pH<4.0の水中でのピコリン酸と塩化クロム(III)の反応は金属対アミノ酸の比率が1:3である単核錯体(三ピコリン酸クロム)を生じた。しかしながら、その溶液のpHが>4.0である場合、二核錯体が形成された。二核錯体のクロム対アミノ酸の比率は1:2である(「単核及び二核のピコリン酸クロム(III)錯体」、ディ.エム.スティエルンスとダブリュー.エイチ.アームストロング、Inorg. Chem., 31: 5178 (1992))。
ピコリン酸及びニコチン酸のクロム錯体の組成及び生物活性も研究されてきた。これらのピリジン・カルボン酸で形成されたクロム錯体はこれら二化合物の構造の差異のため異なっている。ニコチン酸はアルファ・アミノ酸でないため、単座(mono-dentate)配位子として働く。これは該カルボキシレート陰イオンを介してクロムと結合し三核錯体を形成する。クロムとニコチン酸との間で1:1及び1:2の二つの錯体が形成された。ジニコチン酸クロムがラットで単離された脂肪組織においてインスリンの活性を増強したことを除いて、いずれの錯体もこの研究で用いられた一連の試験で生物活性を有さなかった。他方でピコリン酸はアルファ・アミノ酸であり、二座(di-dentate) 配位子として役立つ。これはピリジンの窒素及びカルボキシルの酸素を介してクロム・イオンと結合し、安定な5員環を形成する。塩化クロム溶液をピコリン酸で処理すると、反応混合物中のクロムに対するピコリン酸の比率に応じて、三つの異なる錯体が得られた。塩化クロム溶液に1又は2モル当量のピコリン酸を添加するとこの溶液の色が変化した。この溶液を水酸化ナトリウムでpHを7.4に調整すると錯体の沈殿を得た。これらの錯体は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により均質であることが見出された。1モル当量のピコリン酸が用いられた場合、その産物はCrPic(H2O)2(OH)2の構造を有していた。2モル当量が用いられた場合に得られる沈殿はCr(Pic)2(H2O)(OH).(H2O)の構造を有していた。これらの錯体がpH>4で形成されたため、これらは殆ど二核の錯体である。これらの二つの錯体はいずれも生物活性を有さなかった。塩化クロム水溶液に3モル当量のピコリン酸を添加すると、溶液から沈殿した赤色固体が生成した。この沈殿はHPLCにより均質であることが見出された。該沈殿の分析により、それは三ピコリン酸クロム一水和物、Cr(Pic)3.2Oであることが示された。この物質は殆ど単核錯体である。この錯体はインビトロでラットの骨格筋培養物によるグルコース摂取を増大させた。ラットの餌に該錯体を添加すると、血漿グルコースが有意に減少しヘモグロビンのグリケーションを防止した。ヒトでの三ピコリン酸クロムの栄養補給は男女ともに除脂肪体重を有意に増加させた(「クロム−ピリジン・カルボキシレート錯体の組成及び生物活性」、ジイ・ダブリュ・エバンスとディ・ジェイ・パウチニック、J. Inorg. Biochem., 49: 177 (1993))。
従って、現在入手できる全ての構造は、実験式が異なり且つ立体化学が異なる本発明のクロム化合物とは異なると考えられ得る。
発明の概要
本発明は新規な1:3クロム(III)錯体の調製に関する。これらの錯体は酸化状態がプラス3のクロムを含む。この錯体のクロムは3分子のアルファ・アミノ酸と結合している。極性溶媒中に実際上溶解しない既知の中性クロム錯体とは対照的に、本特許に記載される新規な錯体は水やメタノールなどの極性溶媒に容易に溶解する。この錯体は酸性溶液及び塩基性溶液中で安定である。これらの水溶性の錯体は、食物に添加した場合、容易に生体利用できるクロムの有用な供給源である。動物の栄養物における飼料添加物としてのこれらの錯体の使用は動物の能力を向上させる。これらの錯体は実験用ラットに高用量で給餌した際に毒性を生じなかった。
好ましい実施態様の詳細な説明
クロムは幾つかの酸化状態で存在するが、最も安定で且つ重要な状態はCr(III)である。その最も安定な状態において、三価のクロムは六(6)の配位数を有する。6配位三価クロムは種々の配位子と8面体錯体を形成する。これらの錯体は水溶液中におけるそれらの相対的な動的不活性(relative kinetic inertness)により特徴付けられる。これら錯体の多数の配位子置換反応の半減期は数時間である。この動的不活性のため、多数の錯体は、熱力学的に不安定な条件の下でさえ、固体として単離でき、比較的長時間水溶液中で安定である。
本発明は新規で安全且つ有効なクロム−アミノ酸錯体の設計、合成及び評価を含む。金属−アミノ酸錯体に生物活性を与える特性には水溶性、GI含量のpHでの錯体の安定性、錯体の吸収性及び生化学反応に錯体が関与する能力が含まれる。金属−アミノ酸錯体の安全性は、動物の栄養所要量を満たすために飼料に添加される金属量を最小限にするために、天然アミノ酸の使用によりそしてその生体利用性を向上させることにより強化される。
米国特許第3,925,433号には、1:1及び1:2のクロム−アルファ・アミノ酸錯体塩が記載されている。これらの錯体はクロムの無機供給源より重要な栄養上の進歩を提供するが、幾つかの短所を有する。1、2又は3モル当量のアルファ・アミノ酸と塩化クロム溶液を混合すると透明な緑色溶液を形成する。これらの溶液のpHはそれぞれ0.932、1.324及び1.627であった。水酸化ナトリウム溶液又は炭酸ナトリウム溶液を慎重に添加することによりこれらの溶液をpH7に調整すると、クロム化合物が沈殿した。このことは、これらの錯体が胃腸管のpH値の範囲では十分に安定ではないかも知れないことを示している。クロム−アルファ・アミノ酸錯体(1:3)の溶液は3当量の水酸化ナトリウムで処理すると、紫色の沈殿が形成された。この沈殿は実際に水、希酸及び希塩基、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール及び酢酸エチルに不溶性であった。元素分析及びそのFTIRの試験は、これがクロム−アミノ酸(1:3)の中性錯体と幾つかの多核クロム−アミノ酸錯体との混合物であることを示した。この錯体の溶解性の欠如及びその不確定な組成により、それが栄養価を持つことはありそうにないことが示唆された。
Figure 0004148366
構造1
本発明に記載される新規な錯体は構造1により表され、1:3のクロム−アミノ酸錯体の塩である。これらの錯体は、一価の陽イオンが三分子のアルファ・アミノ酸と錯体形成した三価のクロムから構成されるイオン対として存在する。アミノ酸分子の一つはその両性イオン特性を保持し該錯体に正味の正電荷を与える。このアミノ酸のカルボキシレート基は該クロム(III)イオンと二つの結合を形成して該クロム6配位部位の二つを満足する歪んだ4員環を形成する。他の二つのアルファ・アミノ酸分子はアルファ・アミノ基及びカルボキシル基を介してクロムと結合し5員環を形成する。これはクロム(III)の6配位結合を全て満足する。本明細書で「X」と呼ばれるイオン対の陰イオンは塩化物などの一価の陰イオンであっても硫酸塩などの二価の陰イオンであっても良い。「R」はアルファ・アミノ酸の有機部分である。これはアルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、グリシン、アラニン、チロシン、システイン、セリン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、及びアスパラギンに由来し得る。グリシンは必須アミノ酸としてではないが、簡単に入手でき且つ本発明の錯体塩の合成に容易に利用できるという点で好ましいアルファ・アミノ酸でもある。最も好ましい二つの天然アルファ・アミノ酸はグリシン及びメチオニンである。グリシンについてRは水素を表し、メチオニンについてRは次のもの、CH 3 −SCH 2 −CH 2 を表す。
これらの錯体は単純且つ実用的な方法を用いて調製できる。塩化クロム水溶液は90〜95℃まで加熱する。この溶液は通常暗緑色である。該アミノ酸(3モル当量)を慎重に添加し、加熱を継続する。溶液の色は徐々に暗青緑色に変化する。この溶液を約40℃まで冷却し、水酸化ナトリウム溶液を徐々に且つ慎重に添加し、該溶液をpH3.9〜4.0に調整する。2モル当量の水酸化ナトリウムがpH調整に必要である。該溶液の色は暗紫色に変わる。液体を蒸発すると、所望の産物と塩化ナトリウムから成る固体を得る。該産物はメタノール又はエタノールで抽出することにより塩化ナトリウムから分離できる。或いは、産物は適切なサイズ排除樹脂のクロマトグラフィーにより塩化ナトリウムから分離されうる。
上述した方法を用いて得られた産物は幾つかの固有な性質を有する。これは安定な固体として存在する。暗紫色である。該産物は水及びメタノールに容易に溶解し、エタノールに溶解し、イソプロピルアルコールにやや溶解しにくく、酢酸エチルに溶解しない。該産物の0.1モル水溶液は4.078のpHを有する。該溶液のUV/可視スペクトルは400nm(モル吸光係数、44.08)及び541nm(モル吸光係数、50.60)に吸収極大を有する。対照的に、塩化クロムのUV/可視スペクトルは429nm(モル吸光係数、18.10)及び608nm(モル吸光係数、14.43)に吸収極大を有する。20モル当量もの0.1モル重炭酸ナトリウム溶液を添加すると、該溶液のpHは8.097まで変化したが、沈殿は形成されなかった。一つの実験において、80モル当量もの0.1モル重炭酸ナトリウム水溶液が添加された。この混合物のpHは8.354であったが、クロム化合物の沈殿は形成されなかった。対照的に、2当量をやや上回る0.1モル重炭酸ナトリウムを0.1Mの塩化クロム溶液に添加すると多量の沈殿を形成したが、該混合物のpHは僅か4.356であった。この溶液のUV/可視スペクトルの無変化により明らかなように、20モル当量の塩酸を添加することにより0.1モルの該錯体溶液を約pH1.0に調整しても該錯体は分解されなかった。
上述の方法を用いて得られる固体の錯体は高速液体クロマトグラフィーにより均質である。サイズ排除カラムを用いたメタノール溶液の分析は単一の成分の存在を示した。二つの異なる波長、一つはクロムを検出するため、もう一つはアミノ酸を検出するため、でのピークの検出は、両方共唯一つのピークで溶出することを示した。塩化クロムのメタノール溶液の分析は幾つかのピークとして溶出することを示し、いずれも該錯体のそれと同様でなかった。更に、塩化クロムの主要ピークは該錯体より短い保持時間を有しており、これは該錯体がより大きな分子サイズであることを示す。
同様な物理化学的性質をもつ錯体が異なるアルファ・アミノ酸を用いて得られた。これらの錯体の元素分析は提唱された構造と一致する結果を与えた。該錯体のFTIRスペクトルは該錯体を形成するために用いたアミノ酸のそれと異なり、他金属のアミノ酸錯体のそれと類似している。
クロム(III)とL−メチオニンの間で形成される錯体を乳牛のクロムの栄養源として試験し、この錯体が能力を向上させることが見出された。該食餌をクロム・トリ−L−メチオニン・ハイドロクロライドで補うことは、ウシの乾物の摂取に影響を及ぼさなかったが、牛乳の生産を増大させた。該錯体の毒性をラットで試験し、使用用量において無毒性であることが見出された。
クロム(III)・トリメチオネート塩酸塩の調製
2000mLのビーカーに水(550mL)を入れた。塩化クロム・六水和物(79.959g、0.3モル)を添加した。この混合物を攪拌しながら沸騰するまで加熱した。L−メチオニン(134.306g、0.9モル)を添加した。この混合物を固形物が完全に溶解するまで攪拌しながら加熱した。攪拌しながら更に30分間加熱を継続した。この溶液は暗緑色から暗青緑色になった。該溶液を30℃まで冷却した。水酸化ナトリウム(23.316g、0.5829モル)を100mLの水に溶解し、この溶液を30℃まで冷却した。水酸化ナトリウム溶液を攪拌しながらクロム−メチオニン溶液に滴加した。この溶液は暗青緑色から暗紫色になった。この溶液を減圧下で蒸発乾固した。残留物をメタノールで抽出すると白色の結晶固体が残った。メタノール抽出物を蒸発乾固させて暗紫色の結晶固体を得た(161.352g、収率100.91%)。
臭化カリウム・ペレットでの産物のFTIRは、3421.5(s)、2916.2(s)、1635.5(s)、1508.2(m)、1438.8(m)、1338.8(m)、1338.5(s)、1272.9(w)、1242.1(w)及び1145.6(m)cm-1で吸収を示した(s=強、m=中、w=弱)。
0.01M水溶液の可視スペクトルは400nm(モル吸光係数、44.08)及び541nm(モル吸光係数、50.60)で二つの極大を有した。
0.1モル水溶液のpHは4.078であった。その10mLを200mLの0.1モル重炭酸ナトリウム溶液で希釈した。沈殿は形成しなかった。その溶液のpHは8.097であった。更に600mLの0.1モル重炭酸ナトリウム溶液を添加した。沈殿は形成されず、溶液のpHは8.354であった。
0.9555mg/mL当量のクロムを含む錯体のメタノール溶液を、0.5mL/分の速度の移動相としてメタノールを用いた60AマクロスフェアGPCカラム(オールテック・アソシエート社)のHPLC及び407nmでUV/可視検出器により分析した。6.48分の保持時間を持つ一つのピークが得られた。0.4666mg/mL当量のクロムを含む塩化クロム・六水和物溶液を同条件下で分析し、6.67分の保持時間をもつピークが溶出した。より長い保持時間は、該クロム錯体が塩化クロムより大きな分子サイズを有することを示している。
該検出器を210nmに設定することを除いて該HPLC分析を反復し該アミノ酸を検出した。検出の感度は405nmでのそれより100倍以上高く、該試料を0.009555mg/mLのクロムを含有するよう希釈する必要があった。この希釈した試料から407nmで6.19分の保持時間をもつ一つのピークを得た。6.19分の保持時間を有する主要ピークとともに210nmに複数の小さなピークが観察された。検出器を210nmに設定した同条件下でL−メチオニン塩酸塩試料の分析は7.6分の主要ピークに加えて幾つかの小さなピークの存在を示した。これらの結果は、該錯体が損なわれずに該カラムを移動し且つその分子サイズが塩化クロム及びL−メチオニン塩酸塩のそれより大きいことを示している。
クロム(III)トリロイシネート塩酸塩の調製
600mLのビーカーに水(150mL)を入れた。塩化クロム・六水和物(13.325g、0.05モル)を添加した。この混合物を攪拌しながら沸騰するまで加熱した。L−ロイシン(19.685g、0.15モル)を添加した。この混合物を固形物が完全に溶解するまで攪拌しながら加熱した。攪拌しながら更に30分間加熱を継続した。その溶液は暗緑色から暗青緑色になった。この溶液を30℃まで冷却した。水酸化ナトリウム(4.014g、0.10モル)を20mLの水に溶解し、この溶液を30℃まで冷却した。水酸化ナトリウム溶液を攪拌しながらクロム−ロイシン溶液に滴加した。該溶液は暗青緑色から暗紫色になった。この溶液を減圧下で蒸発乾固した。その残留物をメタノールで抽出すると白色の結晶固体が残った。該メタノール抽出物を蒸発乾固させ暗紫色の結晶固体を得た(28.363g、理論値23.948、収率118.44%、これは該産物が塩化ナトリウムの残渣を含むことを示している)。
臭化カリウム・ペレットでの産物のFTIRは、3425.3(m)、2916.2(s)、1635.5(s)、1508.2(m)、1438.8(m)、1384.8.8(m)、1338.5(s)、1272.9(w)、1242.1(w)及び1141.8(m)cm-1で吸収を示した(s=強、m=中、w=弱)。
0.01M水溶液の可視スペクトルは406nm(モル吸光係数、38.79)及び545nm(モル吸光係数、42.81)に二つの極大を有していた。
0.1モル水溶液のpHは3.996であった。その10mLを200mLの0.1モル重炭酸ナトリウム溶液で希釈した。沈殿は形成しなかった。その溶液のpHは7.987であった。該溶液の可視スペクトルは409nm(モル吸光係数、47.46)及び558nm(モル吸光係数、47.67)に二つの極大を有していた。
クロム・トリメチオネート塩酸塩予混合物(Premix) (0.1%クロム)の調製
100mLの蒸留水を計測して400mLのビーカーに入れた。塩化クロム・六水和物(6.672g、0.0251モル)を添加し、その混合物を固形物が完全に溶解するまで攪拌しながら加熱した。L−メチオニン(11.201g、0.0751モル)を添加し、その混合物を攪拌しながら加熱した。この溶液の色は暗緑色から青緑色に変化した。90〜95℃の加熱を更に60分間継続した。この溶液を30℃まで冷却した。冷却した50mLの水酸化ナトリウム水溶液(1.967g、0.0492モル)を攪拌しながら滴加した。溶液の色は暗紫色に変化した。この溶液を減圧下で蒸発させた。その残留物を100mLのメタノールに溶解し、この溶液を1000gの担体に添加した。この混合物を24時間60℃のオーブンに入れた。乾燥した予混合物の試料を実施例1に記載したようにUV/可視、比色分析及びHPLCにより分析した。該予混合物はブタの給餌試験で用いた。
クロム・トリメチオネート溶液(1.75%クロム)の調製
1500mLの水を計測して4Lのビーカーに入れた。塩化クロム・六水和物(390.993g、1.4675モル)を添加し、この混合物を固形物が完全に溶解するまで攪拌しながら加熱した。攪拌加熱を更に1時間継続し該クロム塩を完全に水和させた。L−メチオニン(1094.845g、7.338モル)を添加し、その混合物を固形物が全て溶解するまで攪拌しながら加熱した。1時間攪拌加熱を継続した。溶液の色は暗紫色に変化した。この溶液を蒸留水で4リットルにした。
該溶液のpHは2.336であった。それは25.61%のメチオニン及び1.86%のクロムを含んでいた。
0.01M水溶液の可視スペクトルは416nm(モル吸光係数、102.5)及び579.5nm(モル吸光係数、101.9)に二つの極大を有していた。
0.1モル水溶液のpHは2.285であった。その10mLを200mLの0.1モル重炭酸ナトリウム溶液で希釈した。沈殿は形成しなかった。この溶液のpHは7.546であった。この溶液の可視スペクトルは409.5nm(モル吸光係数、43.89)及び558nm(モル吸光係数、46.83)に二つの極大を有していた。
乳牛の能力に及ぼすクロム・トリ−L−メチオネート塩酸塩の効果
臨月間近の乳牛の能力に及ぼすクロム・トリ−L−メチオニン塩酸塩の形態のクロムを補給した場合の効果が研究された。牛乳の生産及び乾物の摂取が臨月間近の期間に食餌のクロム・トリ−L−メチオニン塩酸塩の補給により影響されるか否かを決定するために72頭のウシが用いられた。ウシには、予想分娩の21日前から分娩まで非飼料(nonforage)繊維源の多い食餌又は無繊維炭水化物の多い食餌のいずれかを給餌した後、一般的な授乳中の食餌を給餌した。クロム・トリ−L−メチオニン塩酸塩は0、0.03又は0.06mg・Cr/kgの代謝体重の用量でゲルキャップにより一日一回補給した。クロムの補給は予想分娩の21日前に開始し分娩28日後まで継続した。ウシは確立された手法に従って分娩後に搾乳した。該実験を通して各ウシの飼料摂取を毎日記録した。食餌の試料は毎週入手し乾物の含量は測定した。個々の牛乳の重量は実験の授乳期間中の搾乳毎に記録した。牛乳の試料は毎週24時間の一周期中に全ての搾乳から採取し、各搾乳で生産された牛乳量に基づいて混合し、そして脂肪、タンパク質、ラクトース、及び全固形物について分析した。
クロム・トリ−L−メチオニン塩酸塩で食餌を補給することはウシの乾物摂取に影響を及ぼさなかった。しかしながら、クロムの補給は牛乳の収率を増大する傾向があった(P<0.13、表1)。
Figure 0004148366
本実施例及び本発明のクロム(III)錯体は、蒸留所発酵可溶物(distillers fermentation solubles) 、飼料穀物、家禽類及び魚の副産物、食事、乳清、天然塩、挽いたトウモロコシの穂軸、フェザーミール (feathermeal)などの従来からの不活性栄養担体とともに用いられ得る。
ラットにおけるクロム・トリ−L−メチオニン塩酸塩の毒性
クロム−L−メチオニン塩酸塩の毒性は単回経口用量の投与の後にラットで研究された。56週齢のラットを該研究に用いた(25匹の雌及び25匹の雄)。それらの体重は、雄では130gから220g、雌では120g〜190gの範囲であった。該動物を5群に分け、ポリカーボネート製ケージ内の塵の無いおが屑のベッド上に収容した。該ケージは22℃及び相対湿度55%の空調室に置いた。ラットには小球の完全食を自由に給餌した。動物は投与前に一晩絶食させ、投与の3〜4時間後に給餌した。動物は水を自由に供給された。動物は5つの処置の内の1つに無作為に割り当てられた。それぞれ5匹の動物から成る2群、雄の1群及び雌の1群が各処置に割り当てられた。該処置は対照、250mg/kg、500mg/kg、1000mg/kg及び2000mg/kgの用量であった。該化合物の水溶液を胃管栄養法により単回経口用量で投与した。動物を該用量を服用した後14日の観察期間の間飼育した。生存動物は14日目に屠殺した。動物の重量は処置直前、研究期間中毎週2回及び死亡時に記録した。
動物は該研究中に死亡しなかった。該化合物をいずれの用量レベルで投与された動物においても処置に関連した臨床的兆候は見られなかった。更に、経口投与の14日後に検死された動物において巨視的異常は無かった。しかしながら、2000mg/kgの用量を投与された雄のラットにおいて体重増加の5%減少が観察された。この用量はブタの推奨用量の4000倍である。また、1000mg/kg及び2000mg/kgの用量で処置された群において対照と比較した食物消費の投与関連の減少が記録された。
これらの結果は、このような実験条件下で、ラットにおけるクロム・トリ−メチオニンの単回経口用量の投与がブタの推奨用量の1000倍の用量レベルでも何らの毒性も誘発しなかったことを示している。該推奨用量の2000倍の用量の投与は食物消費の減少を伴ったが、体重増加の減少とは関連しなかった。該推奨用量の4000倍である2000mg/kgの用量では、食物消費の減少は体重増加の僅かな減少と関連した。

Claims (9)

  1. 下記の式
    Figure 0004148366
    (式中、「R」が -CH 2 -CH 2 -S-CH 3 又は -CH 2 -CH(CH 3 ) 2 であり、「X」が、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン及びプロピオン酸イオンより成る群から選択される水溶性の陰イオンであるで表されるクロム錯体。
  2. 「X」が一価の陰イオンである請求項1記載のクロム錯体。
  3. 動物栄養担体と組み合わせて、請求項1又は2記載のクロム錯体を含む、生体利用性が増強された家畜用の栄養組成物。
  4. 担体が、天然塩、挽いたトウモロコシの穂軸、コーンミール及びフェザーミールの不活性な動物栄養担体群から選択されるものである、請求項3記載の栄養組成物。
  5. 請求項1又は2記載のクロム錯体を用いてブタの栄養を強化する方法であって、前記クロム錯体を、栄養強化を必要とするブタに、クロム 300 ppm 以下を提供する用量で投与する工程を含む、ブタの栄養の強化法。
  6. 請求項1又は2記載のクロム錯体を用いてウシの栄養を強化する方法であって、前記クロム錯体を、栄養強化を必要とするウシに、 0.03 0.06 mg/kg (体重)の用量で投与する工程を含む、ウシの栄養強化法。
  7. 請求項1又は2記載のクロム錯体を形成する方法であって、
    クロム( III )塩の水溶液を90〜95℃の範囲内の温度で加熱する工程;
    メチオニン及びロイシンの中から選ばれるアルファ・アミノ酸3当量を加熱混合物に添加する工程;
    その色が暗緑色から暗青緑色に変化するまで加熱を継続する工程;及び
    冷却し、 pH を3 . 9〜4 . 0の範囲内に調整して錯体を安定化させる工程
    を含む、クロム錯体の形成法。
  8. 家畜用に増強された生体利用性をもつ栄養組成物であって、請求項1又は2記載のクロム錯体を液体型の担体中に含んでなる、栄養組成物。
  9. 液体型の担体が、水、エタノール、糖蜜又は任意の他の適切な溶媒又は適切な溶媒の混合物から選択される溶媒である、請求項8記載の栄養組成物。
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