JP4147718B2 - 撮影補助装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は撮影補助装置に係り、特に窓ガラスや水面で反射して撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を検出する撮影補助装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車窓の人物撮影や野外撮影では、窓ガラスや水面からの強い反射光が映像に写り込み、画質が劣化することがある。通常、これらの反射光は、ブリュースターの入射角をピークに強く偏光するため、撮影レンズの前面に偏光子(偏光フィルム、偏光板等)を設置することで除去することができる。
【0003】
ところで、上述のように反射光を偏光子で除去する場合、その反射光の偏光方向に対して偏光子の透過軸を垂直な方向に調整することが必要となる。従来は、撮影レンズに設置した偏光子を手動で回動操作して最適な方向に透過軸を調整するようにしていたが、これでは、調整に時間を要し、動く被写体を撮影する場合やカメラを移動させながら撮影する場合には適応できなかった。そこで、近年、偏光子の前面側に液晶素子(TN(twisted nematic)液晶セル)を配置し、この液晶素子で偏光方向(偏波面)を回転させることで、偏光子を回転させるのと同等の効果を得るようにした液晶偏光フィルタ装置が提案されている(映像情報メディア学会年次大会,14-3:「液晶偏光素子を用いた反射光抑制カメラ」,pp168-169(1997.7):藤掛英夫,滝沢國治,曾田田人,根岸俊裕,小林道夫)。
【0004】
例えば、固定した偏光子の前に、45°と90°の旋光が可能な2種類の液晶素子を配置する。これらの液晶素子は、液晶分子の配列が光の進行方向に沿って、それぞれ45°及び90°にねじれているため、電圧を印加しないオフ状態においては、入射光の偏波面をそれぞれのねじれ角に応じて回転させる。一方、液晶素子に所定の電圧を印加したオン状態においては、入射光の偏波面を回転させることなくそのまま通過させる。従って、これらの2種類の液晶素子のオン・オフ状態を組み合わせることで、入射光の偏波面を0°、45°、90°、135°回転させることができ、偏光子の透過軸を0°、45°、90°、135°に回転させたのと同等の効果を得ることができる。そして、このように配置した液晶素子のオン・オフ状態を映像信号のレベルが最小となるように制御することで反射光を映像信号から迅速かつ自動的に除去することができる。尚、偏光子の前に液晶素子を配置して構成した偏光素子を以下、液晶偏光フィルタといい、液晶偏光フィルタが透過させる入射光の偏光方向を液晶偏光フィルタの透過軸(又は透過軸方向)という。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように液晶偏光フィルタを撮影カメラの撮影レンズに設置し、窓ガラスや水面からの反射光を除去するように映像信号に基づいて液晶偏光フィルタの透過軸を好適な方向を切り換えるようにした場合には、液晶偏光フィルタの透過軸方向を0°、45°、90°、135°に順次切り換えて映像信号のレベルを比較し、映像信号が最小になる状態を検出する必要がある。このため、映像信号が最小となる状態を検出するまでの過程が映像に現れてしまい一瞬映像が乱れるという問題があった。特に除去する反射光の光源(自動車の窓ガラス等)が移動し、反射光の偏光方向が変動する場合には、液晶偏光フィルタの透過軸方向を逐次切り換えて映像信号が最小となる状態を検出しなければならないため、映像の乱れが無視できない状況になる。
【0006】
この問題を解消するために、除去すべき反射光(偏光)の偏光方向を検出する外部センサを撮影レンズ近傍に設置し、この外部センサによって検出した偏光方向に基づいて液晶偏光フィルタの透過軸方向を設定するといった方法が考えられる。しかしながら、この場合には、撮影レンズと外部センサの画角が一致していないと、撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を適切に検出できないという問題が生じる。撮影レンズがズームレンズの場合には、ズーム操作によって画角が変化するため、その画角の変化に応じて外部センサの画角も変化させなければならない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、窓ガラス等で反射して撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を撮影レンズの画角、即ち、撮影カメラの撮影範囲に対応させて外部センサで適切に検出することができる撮影補助装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、撮影カメラに入射される偏光の偏光方向を検出する撮影補助装置において、前記撮影カメラと撮影方向が同一方向に設置された撮影手段と、前記撮影手段の撮影光学系に挿入される偏光フィルタであって、偏光を透過させる透過軸方向が切換え可能な偏光フィルタと、前記偏光フィルタを駆動し、前記偏光フィルタの透過軸方向を切り換える偏光フィルタ切換手段と、前記撮影カメラの撮影範囲に応じた範囲の映像信号を前記撮影手段から取得する映像信号取得手段と、前記偏光フィルタ制御手段によって切り換えられる偏光フィルタの各透過軸方向ごとに前記映像信号取得手段によって映像信号を取得し、該取得した各透過軸方向ごとの映像信号に基づいて、前記撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を検出する偏光方向検出手段と、を備え、前記映像信号取得手段は、前記撮影手段から出力される映像信号から、前記撮影カメラの撮影範囲に一致する範囲の映像信号を、前記撮影カメラのズーム位置及びフォーカス位置に基づいて抽出することを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、外部センサとして、透過軸方向が切換可能な偏光フィルタを備えた撮影手段を用い、その偏光フィルタの透過軸方向を切り換えながら撮影手段から撮影カメラと例えば同一撮影範囲の映像信号を取得し、各透過軸方向で得られた映像信号に基づいて撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を検出するようにしたため、窓ガラス等で反射して撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を撮影カメラの撮影範囲に対応させて適切に検出することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係る撮影補助装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0011】
図1は、本発明に係る撮影補助装置が使用されたテレビカメラシステムの一実施の形態を示した構成図である。同図に示す撮影カメラ(テレビカメラ)10は、カメラ本体12と、このカメラ本体12に着脱可能に装着される撮影レンズ(ズームレンズ)14とから構成される。撮影レンズ14の撮影光学系の前面には、液晶偏光フィルタ18が配置される。また、撮影レンズ14の前端にはレンズフード16が配置されており、このレンズフード16の下端に本発明に係る撮影補助装置20が配置される。尚、撮影補助装置20の設置位置はこれに限らず撮影カメラ10のどの位置に設置してもよい。
【0012】
前記液晶偏光フィルタ18は、図2に示すように液晶ユニット22と水平方向を透過軸Pとする偏光フイルム26とから構成され、液晶ユニット22は、前方からみて、入射光を時計回りもしくは反時計回りに45°旋光させる液晶素子22Aと入射光を時計回りもしくは反時計回りに90°旋光させる液晶素子22Bとから構成される。
【0013】
液晶素子22A、22Bは、液晶分子の配列が光の進行方向に沿って、それぞれ45°及び90°にねじれたもので、液晶素子22A、22Bに電圧が印加されていないときには、それぞれのねじれ角に応じて入射光の偏波面がそれぞれ45°及び90°回転する(オフ状態)。一方、液晶素子22A、22Bに所定の電圧が印加されると、入射光の偏波面は回転することなくそのまま液晶素子22A、22Bを通過する(オン状態)。従って、これらの2種類の液晶素子22A、22Bのオン・オフ状態を組み合わせることで、入射光の偏波面が0°、45°、90°、又は、135°回転する。
【0014】
例えば、図1に示すように自動車28の車内に搭乗した人物を撮影する場合に、自動車の窓ガラス28Aで反射した光の偏波面をこれらの液晶素子22A、22Bによって0°、45°、90°、又は、135°回転させ、その反射光の偏光方向を偏光フイルム26の透過軸Pに対してほぼ直交方向とすることで、撮影カメラ10の映像から窓ガラス28Aの反射光を取り除くことができる。
【0015】
尚、液晶素子22A、22B及び偏光フイルム26を透過する入射光(偏光フイルム26で遮断されない入射光)の偏光方向と等しい方向を、以下、液晶偏光フィルタ18の透過軸(又は透過軸方向)という。液晶素子22A、22Bのオン・オフ状態の組み合わせによってこの液晶偏光フィルタ18の透過軸方向は水平方向を基準にして0°、45°、90°、135°に切り換えられることになる。
【0016】
一方、図1に示した撮影補助装置20は、上記撮影カメラ10に入射する偏光の偏光方向を別カメラで検出し、これに基づいてその偏光を除去する方向に上記液晶偏光フィルタ18の透過軸方向を制御する装置である。図3に撮影補助装置20の概略構成図を示す。撮影補助装置20には、上記撮影カメラ10と撮影方向が同一の超小型のCCDボードカメラ(センサーカメラ)30が搭載されており、また、このセンサーカメラ30の撮影光学系(センサーレンズ32)の前面には図2で示した液晶偏光フィルタ18と同様に構成された液晶偏光フィルタ34が配置されている。尚、センサーレンズ32は、所定位置に固定された固定焦点レンズであり、近距離から遠距離までのピントが固定のままで合うようにしたものである。
【0017】
液晶偏光フィルタ34は、CPU36の指令に基づき電圧制御回路38の電圧制御によって、撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18と同様にその透過軸方向が水平方向を基準に0°、45°、90°、135°に切り替えられるようになっている。液晶偏光フィルタ34に入射した光のうち、それぞれの透過軸方向において液晶偏光フィルタ34を透過した光のみがセンサーカメラ30で撮影される。
【0018】
センサーカメラ30で撮影された映像は、NTSC方式の映像信号によりセンサーカメラ30から出力され、信号処理回路40に与えられる。信号処理回路40は、センサーカメラ30から出力された映像信号の出力レベル(積分値)を導出し、その出力レベルをCPU36に与える。尚、映像信号の出力レベルは例えば1フィールド分の映像信号を積分した値であるが、この映像信号の出力レベルを導出する際に信号処理回路40は、後述のように1フィールド分の映像信号のうち、撮影カメラ10の撮影範囲に一致する範囲の映像信号のみを積分する。
【0019】
CPU36は、電圧制御回路38に指令を送り、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を0°、45°、90°、135°に順に切り換えながら、各透過軸方向において信号処理回路40から与えられる映像信号の出力レベルを比較し、出力レベルが最小となる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を検出する。これにより、センサーカメラ30に入射する偏光を最も効果的に除去できる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を検出する。
【0020】
そして、CPU36は、電圧制御回路42に指令を与えて上記撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18の透過軸方向を制御し、液晶偏光フィルタ18の透過軸方向を、映像信号の出力レベルが最小となったときの液晶偏光フィルタ34の透過軸方向に一致させる。これにより、撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18の透過軸方向が撮影カメラ10に入射する偏光を最適に除去できる方向に設定される。
【0021】
以上の撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18の制御は、撮影カメラ10での撮影中に随時繰り返し行われ、被写体が動き、撮影カメラ10に入射する偏光の偏光方向が変動している場合でも、液晶偏光フィルタ18の透過軸方向を試行錯誤的に切り換えて最良の透過軸方向を検出するといった操作を行うことなく、撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18の透過軸方向を瞬時に最適な方向に切り換えることができる。これにより、撮影カメラ10で撮影される映像が偏光の変動に起因して乱れるといった従来の不具合は全く生じなくなる。
【0022】
尚、上述の場合、センサーカメラ30から出力される映像信号の出力レベルにより出力レベルが最小となる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を検出するようにしたが、これに限らず、出力レベルが最大となる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を検出するようにし、その透過軸方向に垂直な方向に撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18の透過軸方向を設定するようにしてもよい。出力レベルが最小又は最大となる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向の検出はいずれも入射する偏光の偏光方向の検出に相当する。
【0023】
ところで、上記センサーカメラ30の撮影範囲が撮影カメラ10の撮影範囲に一致しない場合、撮影カメラ10とセンサーカメラ30のそれぞれで撮影する被写体が異なるため、センサーカメラ30の映像信号に基づいて検出した偏光の偏光方向(直接的には偏光を最適に除去できる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向)が撮影カメラ10に入射する偏光の偏光方向と一致しない場合がある。特に、撮影カメラ10の撮影レンズ14がズームレンズの場合のように撮影レンズ14のズーム位置によって撮影カメラ10の撮影範囲が変更される場合には、固定焦点レンズであるセンサーカメラ30のセンサーレンズ32では撮影範囲を一致させることはできない。
【0024】
そこで、センサーカメラ30のセンサーレンズ32にズームレンズを用い、撮影カメラ10の撮影レンズ14のズーム位置とセンサーレンズ32のズーム位置とを連動させることにより、センサーカメラ30の撮影範囲と撮影カメラ10の撮影範囲とを一致させる方法と、センサーレンズ32を上述のように固定焦点レンズとし(但し、ズームレンズであってもよい)、センサーカメラ30から出力された映像信号のうち、撮影カメラ10の撮影範囲に一致する範囲の映像信号を抽出することによって、センサーカメラ30の撮影範囲と撮影カメラ10の撮影範囲とを一致させるのと同等にする方法とが考えられる。前者の場合にはセンサーカメラ30のズームレンズを駆動する機構が必要である一方、後者の場合にそのような駆動機構を必要とせず、構成が簡単であるという点において有利である。本実施の形態においては後者の場合について詳説する。
【0025】
まず、センサーカメラ30の撮影範囲については、その撮影範囲の映像信号内から撮影カメラ10の撮影範囲の映像信号を抽出する関係上、撮影カメラ10の撮影範囲を含むように設定される。図4に示すように、撮影カメラ10の撮影範囲が撮影レンズ14のズーム機構によってワイド端におけるワイド画角PW からテレ端におけるテレ画角PT まで可変であるのに対して、センサーカメラ30の撮影範囲は固定のセンサーレンズ32により一定のワイド画角Lに固定される。そして、これらの撮影範囲の関係をセンサーカメラ30の出力映像の画面上で示すと図5のようにセンサーカメラ30の撮影範囲Lは、撮影カメラ10のワイド画角における撮影範囲PW を含む。撮影カメラ10のズーム位置がワイド端からテレ端まで変化したときには撮影カメラ10の撮影範囲は、撮影範囲PW の中心点(2本の対角線の交点)に向かって小さくなり、テレ端では同図に示す撮影範囲PT のようになる。
【0026】
尚、撮影カメラ10とセンサーカメラ30とは上下に配設され、光軸が相違するため、上記図4からも分かるように、パララックスによりフォーカス位置に応じて撮影カメラ10の撮影範囲とセンサーカメラ30の撮影範囲との位置関係が上下する。このため、フォーカス位置が近距離になると撮影カメラ10の撮影範囲の一部がセンサーカメラ30の撮影範囲外となる場合があるが、センサーカメラ30の撮影範囲内に撮影カメラ10の撮影範囲が略含まれているので余り問題ではなく、また、撮影カメラ10の全フォーカス範囲で、センサーカメラ30の撮影範囲内に撮影カメラ10の撮影範囲を含むようにすることは可能である。
【0027】
このように撮影範囲が設定されたセンサーカメラ30から出力された映像信号に対し、上記信号処理回路40は、撮影カメラ10の撮影範囲に一致する範囲の映像信号を抽出する。この映像信号の抽出範囲は、予め与えられた撮影カメラ10の所定のズーム位置及びワイド位置における映像信号の抽出範囲を基準にして、撮影カメラ10の撮影レンズ14から取得される撮影カメラ10の現在のズーム位置及びフォーカス位置に基づいてCPU36により以下のようにして求められる。
【0028】
ここで、基準となる映像信号の抽出範囲は、ズーム位置がワイド端でフォーカス位置が無限遠端に設定されているときの抽出範囲とし、以下、この抽出範囲をワイド時抽出範囲という。
【0029】
まず、映像信号の抽出範囲を表すパラメータについて図6を用いて説明すると、センサーカメラ30の映像信号は上述のようにNTSC方式であるため、1画面は525本の走査線により構成され、さらに1画面はインターレース方式により2フィールド分の映像信号(1フィールドは262.5本の走査線からなる)で生成される。そこで、図6に示すようにセンサーカメラ30の1フィールド分の映像信号の走査線により構成される画面において、垂直走査方向についての位置は、その位置に対応する走査線の番号(走査線の番号は同図に示すように上から順に1〜262を付している)により表すことができる。これによって表される上記ワイド時抽出範囲の上端と下端の位置を、同図に示すように以下、V1 、V2 とし、撮影カメラ10の現在のズーム位置及びフォーカス位置に対して求められる映像信号の抽出範囲の上端と下端の位置を、同図に示すように以下、VZ1、VZ2とする。
【0030】
一方、水平走査方向についての位置は、1つの走査線に着目したときにその走査線が画面左端からその位置までに要する走査時間で表すことができ、更に、この走査時間を所定周期で出力されるパルスのパルス数に換算して表すことができる。このパルス数によって表される上記ワイド時抽出範囲の左端と右端の位置を、同図に示すように以下、H1 、H2 とし、撮影カメラ10の現在のズーム位置及びフォーカス位置に対して求められる映像信号の抽出範囲の左端と右端の位置を、同図に示すように以下、HZ1、HZ2とする。
【0031】
そして、撮影カメラ10の現在のズーム位置z及びフォーカス位置xに対して求められる映像信号の抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2は、次式(1) 〜(4)
【0032】
【数1】
VZ1=V1 +f(z)−g(x) …(1)
【0033】
【数2】
VZ2=V2 −f(z)−g(x) …(2)
【0034】
【数3】
HZ1=H1 +a・f(z) …(3)
【0035】
【数4】
HZ2=H2 −a・f(z) …(4)
により求められる。ここで、fとgはそれぞれズーム位置zとフォーカス位置xの関数、aは定数であり、これらの関数f、gを示す具体的な式や定数aの値は、ワイド時抽出範囲V1 、V2 、H1 、H2 の値も含めて、複数の任意のズーム位置z及びフォーカス位置xにおける理想的な映像信号の抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の値を指定することによって予め求めておくことができる。特に、ズーム位置の変化量とフォーカス位置の変化量のそれぞれに対して抽出範囲の上端と下端の変化量が線型関係にあり、ズーム位置の変化量に対して抽出範囲の左端と右端の変化量が線型関係にあるときには、2つの異なるズーム位置及びフォーカス位置に対する抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の値を指定すれば、任意のズーム位置z及びフォーカス位置xに対する抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の導出式は完全に求まる。また、撮影カメラ10とセンサーカメラ30の光学的特性、これらの設置位置の関係からワイド時抽出範囲V1 、V2 、H1 、H2 の値も含めて理論的に求めておくこともできる。
【0036】
このように上式(1) 〜(4) の関係によって撮影カメラ10の現在のズーム位置z及びフォーカス位置xにおける撮影範囲に対して求められる映像信号の抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2は上記パララックスを考慮したもので撮影カメラ10のフォーカス位置を近距離から遠距離に変化させると、上式(1) 〜(4) によって求められる映像信号の抽出範囲、即ち、撮影カメラの撮影範囲Pは、図7(A)と(B)で示すようにセンサーカメラ30の撮影範囲L内において上下に移動し、フォーカス位置に応じて適切に映像信号の抽出範囲が決定される。尚、撮影カメラ10の撮影レンズ14がフォーカス位置を出力する機能を有していない場合や、パララックスによる影響が少なくパララックスを考慮する必要がない場合等があり、パララックスを考慮しない場合には上式(1) 、(2) からフォーカス位置に依存するg(x)の項を省略して映像信号の抽出範囲を求めればよい。
【0037】
上記信号処理回路40は、上述のようにしてCPU36によって求められた抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2内の映像信号を抽出し、その抽出した映像信号を積分することにより映像信号の信号レベルを導出する。
【0038】
次に、図8に示す上記テレビカメラシステムの全体回路構成図に基づいて、撮影補助装置20の具体的構成、動作について説明する。まず、上記撮影カメラ10の概略構成について説明すると、撮影カメラ10は、液晶素子22A、22B及び偏光フイルム26から成る上記液晶偏光フィルタ18(図2参照)と、移動可能なフォーカスレンズ14A及びズームレンズ14Bを含む上記撮影レンズ14と、撮像素子12A及び映像信号処理回路12B等から成る上記カメラ本体12とから構成される。
【0039】
液晶偏光フィルタ18の液晶素子22A、22Bは、撮影補助装置20の電圧制御回路42から印加される電圧によりオン・オフ状態が切り換えられ、これによって液晶偏光フィルタ18の透過軸方向が0°、45°、90°、135°に切り換えられる。
【0040】
撮影レンズ14のフォーカスレンズ14A及びズームレンズ14Bにはそれぞれフォーカス位置検出センサ50及びズーム位置検出センサ52が設置されており、各位置検出センサ50、52で検出されたフォーカス位置、ズーム位置は、それぞれA/D変換器54、56を介してCPU36に与えられる。
【0041】
カメラ本体12の撮像素子12Aは、液晶偏光フィルタ18及び撮影レンズ14を介して結像された被写体像を電気信号に変換する。映像信号処理回路12Bは、撮像素子12Aから出力された電気信号に各種処理を施し、所定フォーマット(NTSC方式)の映像信号に変換して出力する。
【0042】
一方、上記撮影補助装置20は、図3でも示したように、液晶素子34A、34B及び偏光フイルム34Cから成る上記液晶偏光フィルタ34と、センサーレンズ32、撮像素子30A及び映像信号処理回路30Bから成るセンサーカメラ30と、各種回路58〜72からなる上記信号処理回路40と、CPU36等から構成される。
【0043】
液晶偏光フィルタ34の液晶素子34A、34Bは、電圧制御回路38から印加される電圧によりオン・オフ状態が切り換えられ、これによって、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向が0°、45°、90°、135°に切り換えられる。
【0044】
センサーカメラ30の撮像素子30Aは、液晶偏光フィルタ34及びセンサーレンズ32を介して結像された被写体像を電気信号に変換する。映像信号処理回路30Bは、撮像素子30Aから出力された電気信号に各種処理を施し、所定フォーマット(NTSC方式)の映像信号に変換して出力する。
【0045】
センサーカメラ30の映像信号処理回路30Bから出力された映像信号は、スイッチS1を介してゲイン切替回路58に入力される。ここで、スイッチS1は、センサーカメラ30から出力される映像信号のうち、上述した撮影カメラ10の撮影範囲に一致した範囲の映像信号を抽出するためのスイッチであり、センサーカメラ30から出力される映像信号のうち上記抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の映像信号が出力されている間でのみオンになり、それ以外でオフとなる。尚、スイッチS1の制御については後述する。
【0046】
ゲイン切替回路58は、入力された映像信号を、抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の大きさに応じたゲインにより増幅し、積分回路60に出力する。積分回路60は、CPU36から1フィールドごとにリセットされ、1フィールド分の映像信号(1フィールド分の映像信号のうちスイッチS1を介して与えられた抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の映像信号)を積分して、A/D変換器62によりその積分値、即ち、映像信号の信号レベルをCPU36に出力する。尚、ゲイン切替回路58のゲインは、積分回路60から出力される信号レベルが抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の大きさによって大きく変化しないように、抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の大きさに基づいてCPU36から与えられる。
【0047】
CPU36は、電圧制御回路38に指令信号を出力し、センサーカメラ30の液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を所定時間おきに0°、45°、90°、135°に切り換えると共に、各透過軸方向において積分回路60から出力される映像信号の出力レベル(積分値)を取得する。そして、各透過軸方向における映像信号の出力レベルを比較し、出力レベルが最小となる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を検出する。その結果、出力レベルが最小となる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向と撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18の透過軸方向が一致するように、電圧制御回路42に指令信号を出力し、液晶偏光フィルタ18の透過軸方向を切り換える。これにより、撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18の透過軸方向が偏光を最適に除去できる方向に設定される。以上の一連の処理が終了すると、再度同じ処理を繰り返す。これにより、被写体が動き、被写体からの偏光の偏光方向が変動している場合にでも常時その変動する偏光が適切に除去される。
【0048】
ここで、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を0°、45°、90°、135°に切り換える際の時間間隔について詳説すると、上記映像信号の出力レベルの比較判定により、映像信号の出力レベルが最小となる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を最も速く検出できるのは、例えば、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向の切り換えを、センサーカメラ30から出力される映像信号の1フィールド(1フィールド当たり1/60秒)ごとに垂直ブランキング期間で行うようにし、各透過軸方向に切り換えた直後に出力される1フィールド分の映像信号により比較判定に使用する映像信号の出力レベル(積分値)を積分回路60から取得するようにした場合である。しかしながら、液晶偏光フィルタ34の液晶素子34A、34Bは、印加される電圧が変化したときの反応速度が温度に依存するため、確実な動作を期待するためには、液晶偏光フィルタ34に印加する電圧を変更した後、液晶偏光フィルタ34がその電圧に応じた透過軸方向に切り換わり、安定するまでにある程度の時間的余裕をみて、比較判定に使用する映像信号の信号レベルを、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を切り換えた後(液晶素子34A、34Bに印加する電圧を切り換えた後)、数フィールド分の待ち時間を設けて積分回路60から取得し、その後、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を次の透過軸方向に切り換えるようにすることが望ましい。この場合、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を切り換える時間間隔は少なくとも信号レベルを取得するまでの数フィールド分の待ち時間を要する。更に、本実施では、CPU36に、温度センサ82によって検出された液晶偏光フィルタ34の液晶素子34A、34Bの温度情報がA/D変換器84を介して与えられるようになっており、CPU36は、温度センサ82から得られる温度に応じて、上記待ち時間を好適に変更するようにしている。一般的には温度が低いと液晶素子の反応速度は遅くなるため、温度が高いほど待ち時間が短く、温度が低いほど待ち時間が長くなる。これに伴い、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を切り換える時間間隔も温度が高いほど短く、温度が低いほど長くなる。
【0049】
尚、温度センサ82によって上記待ち時間を変更するのではなく、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を切り換えた後、各フィールド毎に積分回路60から得られる信号レベルを監視し、その信号レベルが一定となったときに、それを比較判定に使用する信号レベルとすると共に、次の透過軸方向に切り換えるようにしてもよい。
【0050】
また、上記比較判定における映像信号の信号レベルについて説明すると、比較判定に使用する映像信号の信号レベルは通常、1フィールド分の映像信号を積分回路60で積分した積分値であるが、蛍光灯下などでの撮影ではフリッカーが生じ、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向を切り換えたこととは関係なく信号レベルに変化が生じ、誤動作の原因となる場合がある。そこで、撮影補助装置20にはフリッカー対応オン/オフスイッチ78が設けられており、このフリッカー対応オン/オフスイッチ78をオンにすることにより、フリッカー分をキャンセルできる程度の数フィールド分の映像信号の積分値により、各透過軸方向における信号レベルの比較判定を行うことができるようになっている。
【0051】
即ち、60Hzの商用電源で動作させた蛍光灯などの照明下での撮影の際には、フリッカー対応オン/オフスイッチ78をオフにして上述のように映像信号の積分を1フィールドごとに60Hzで行っても特に問題は生じないが、50Hzの商用電源で動作させた蛍光灯などの照明下での撮影の際には、図9の曲線Sで示すように1秒間に100回の点滅を繰り返しているため、撮像素子30Aによる1/60秒ごとの各フィールドの映像取り込みに対応して示したのこぎり波Tとの関係からも分かるように、各フィールドにおける照明の点滅の位相が異なり、一定の被写体を撮影しているにもかかわらず光量が変化し、映像信号の出力レベルが変化する。そこで、このような場合にはフリッカー対応オン/オフスイッチ78をオンにすることにより、CPU36は、60と100の最大公約数である20つまり1/20秒ごとの3フィールド分の映像信号の積分値を積分回路60から取得し、それらを平均又は積分した値を比較判定に使用する映像信号の信号レベルとする。このように3フィールド分の映像信号を1単位として信号レベルを得ることによって、各単位(同図▲1▼、▲2▼)ごとにみると、照明の点滅に対して同一位相で映像を取り込むことができ、60Hzの映像の取り込みタイミングと100Hzの照明の点滅の山がずれても同じ位相関係になる。したがって、フリッカーによる誤動作が防止される。尚、3フィールド分の映像信号ではなく、3の倍数のフィールド分の映像信号を平均又は積分した値を比較判定に使用する映像信号としてもよい。
【0052】
また、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向の切り換え順序について説明すると、CPU36は、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向の切り換えを、0°、45°、90°、135°の順に行うが、例えば、0°から45°に切り換えたときに映像信号の信号レベルが増加する方向ならば、次に135°に切り換えるというようにして透過軸方向の切り換え順序について信号レベルが最小値に向かうようなアルゴリズムにすれば場合によっては1ステップ速く信号レベルが最小となる透過軸方向を見つけることができる。
【0053】
次に、上記スイッチS1の制御について説明する。まず、CPU36は、フォーカス位置検出センサ50及びズーム位置検出センサ52から撮影レンズ14のフォーカス位置x及びズーム位置zを逐次取得し、これらのフォーカス位置x及びズーム位置zに基づいて、センサーカメラ30から出力された映像信号のうちゲイン切替回路58に取り込む上記映像信号の抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2を上式(1) 〜(4) により算出する。尚、上式(1) 〜(4) のワイド時抽出範囲V1 、V2 、H1 、H2 の値と、関数f、gの式と定数aの値は後述する設定記憶回路74において予め設定され記憶される。
【0054】
尚、撮影カメラ10の撮影レンズ14がフォーカス位置を出力する機能をもっていない場合など、フォーカス位置xを考慮しない(パララックスを考慮しない)抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2を算出する場合には、図8に示すフォーカス入力オン/オフスイッチ76をオフにすればよく、このときCPU36は、上式(1) 〜(4) のフォーカス位置xの関数gの項を削除した式により映像信号の抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2を算出する。
【0055】
一方、CPU36には、同期信号分離回路64により、センサーカメラ30の映像信号から分離された垂直同期信号及び水平同期信号が与えられており、CPU36は、垂直同期信号が与えられるごとに内蔵のVカウンタをリセットし、このVカウンタにより、垂直同期信号が与えられた後の水平同期信号のパルス数をカウントする。これにより、センサーカメラ30の映像信号回路30Bから出力されている各フィールドの映像信号の走査線の番号が把握される。そして、そのVカウンタの値Vが垂直走査方向についての抽出範囲VZ1とVZ2の値の範囲内になると、即ち、VZ1≦V≦VZ2になると取込み領域設定回路66にオン信号を出力する。Vカウンタの値Vがこれ以外の範囲のとき、即ち、V<VZ1又はVZ2<Vのときには取込み領域設定回路66にオフ信号を出力する。これにより、取込み領域設定回路66は、センサーカメラ30から出力されてスイッチS1を通過している映像信号が垂直走査方向について抽出範囲であるか否かを判定することができる。
【0056】
また、CPU36は、比較回路68に水平走査方向についての映像信号の抽出範囲HZ1、HZ2を与える。比較回路68にはCPU36と同様に同期信号分離回路64から水平同期信号が与えられており、比較回路68は、その水平同期信号が与えられる毎に計数回路(Hカウンタ)70をリセットし、水平同期信号が与えられた後に発振回路72から所定周期で出力されるパルスのパルス数をその計数回路70によりカウントする。この発振回路72から出力されるパルスの周期は、水平走査方向についての位置をパルス数により表す際のパルスの周波数である。従って、この計数回路70でカウントされた値Hによってセンサーカメラ30から出力されている映像信号の画面の左端からの現在の走査位置を検出することができる。そして、比較回路68は、その計数回路70でカウントされた値Hと抽出範囲HZ1、HZ2とを比較し、計数回路70でカウントされた値Hが抽出範囲HZ1とHZ2の値の範囲内になると、即ち、HZ1≦H≦HZ2になると取込み領域設定回路66にオン信号を出力する。計数回路70でカウントされた値Hがこれ以外の範囲のとき、即ち、H<HZ1又はHZ2<Hのときには取込み領域設定回路66にオフ信号を出力する。これにより、取込み領域設定回路66は、センサーカメラ30から出力されている映像信号が水平走査方向について抽出範囲であるか否かを判定することができる。
【0057】
取込み領域設定回路66は、上述のようにしてCPU36と比較回路68から与えられる信号のうち、いずれか一方又は両方からオフ信号が与えられているときには、センサーカメラ30から出力されている映像信号が抽出範囲外であるため、スイッチS1をオフにしてそのときに映像信号を遮断する。一方、CPU36と比較回路68の両方からオン信号が与えられたときには、センサーカメラ30から出力されている映像信号が抽出範囲内であるため、スイッチS1をオンにする。
【0058】
図10(A)はスイッチS1のオン・オフ制御を示した図であり、同図(a)は水平同期信号、同図(b)は発振回路72から出力されているパルス信号である。同図(c)はVカウンタの値Vが1≦V<VZ1のときのスイッチS1の状態を示した図であり、このときには、常にスイッチS1はオフとなる。同図(d)は上記Vカウンタの値VがVZ1≦V≦VZ2のときのスイッチS1の状態を示しており、このときには、水平同期信号のパルス出力後、発振回路72から出力されたパルス数(上記計数回路70でカウントされた値)HがHZ1≦H≦HZ2になったときにスイッチS1がオンになる。同図(e)は上記Vカウンタの値VがV2 <V≦262のときのスイッチS1の状態を示した図であり、このときには、常にスイッチS1はオフとなる。
【0059】
以上のようにしてスイッチS1のオン・オフが制御され、抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の映像信号のみがゲイン切替回路58に導通されることによって、上述のように撮影カメラ10の撮影範囲に一致する範囲の映像信号のみが積分回路60によって積分され、CPU36に与えられる。
【0060】
次に、上式(1) 〜(4) を設定し記憶する設定記憶回路74について説明すると、設定記憶回路74は、上式(1) 〜(4) を決定するためのデータを予め設定し、これを記憶する回路である。上式(1) 〜(4) を決定するためにユーザが設定記憶回路74に入力するデータの内容及びそのデータを入力する方法等については所定のものに限られないが、例えば、撮影カメラ10を2つの異なるズーム位置及びフォーカス位置に順に設定すると共に、各ズーム位置及びフォーカス位置における映像信号の抽出範囲をユーザが設定記憶回路74に入力する。また、設定記憶回路74は、抽出範囲がユーザによって入力されたときの各ズーム位置及びフォーカス位置を撮影レンズ14からCPU36を介して取得する。そして、これらのデータを記憶する。このように設定記憶回路74に設定され、記憶された2つの異なるズーム位置及びフォーカス位置と、その各ズーム位置及びフォーカス位置における映像信号の抽出範囲により、上式(1) 〜(4) が決定され、撮影カメラ10の任意のズーム位置及びフォーカス位置における映像信号の抽出範囲が上式(1) 〜(4) に基づいてCPU36により求められる。
【0061】
ユーザによる抽出範囲の設定記憶回路74への入力は、例えば、抽出範囲の上端、下端、右端、左端を示す数値を直接入力して行ってもよいし、後述する画角調整モードでも行えるようにしてもよい。画角調整モードで行えるようにする場合においては、画角調整モードではセンサーカメラ30で撮影されている映像がモニタに表示されると共に、その映像上に現在の撮影カメラ10のズーム位置及びフォーカス位置における抽出範囲を確認するための枠が表示されるため、その枠の大きさ、位置を設定記憶回路74の所定キーの操作により任意に変更できるようにすると共に、そのユーザが変更した枠の範囲をそのときの撮影カメラ10のズーム位置及びフォーカス位置における抽出範囲として設定記憶回路74に設定できるようにする。これにより、ユーザは撮影カメラ10で撮影されている映像と、センサーカメラ30の映像上に表示されている枠内の映像とを比較しながら、その枠を撮影カメラ10の撮影範囲に一致させることで、撮影カメラ10の撮影範囲に一致した映像信号の抽出範囲を適切に設定記憶回路74に設定することができる。
【0062】
次に、画角調整モードについて説明する。同図に示すように撮影補助装置20には画角設定オン/オフスイッチ80が設けられると共に、モニタを接続する画角調整用端子86が設けられ、この画角調整用端子86からは、スイッチS1とゲイン切替回路58の間から分岐された映像信号が出力されるようになっている。画角調整用端子86にモニタを接続し、画角設定オン/オフスイッチ80をオンにすると、そのモニタには画角調整用の映像が表示される。画角調整用の映像は、センサーカメラ30で撮影されている全範囲の映像から上式抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の輪郭部分のみの映像を欠落させてセンサーカメラ30の映像上に抽出範囲を示す枠を表示させたものである。この画角調整用の映像に表示された枠内の映像と、実際に撮影カメラ10で撮影されている映像とを比較すれば、上式(1) 〜(4) により求められた抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2が撮影カメラ10の撮影範囲に正しく一致しているか否か等の確認ができ、正しくなければ上記設定記憶回路74に設定されているデータを再設定すれば正しく修正することができる。
【0063】
このような画角調整用の映像信号を画角調整用端子86から出力するために、画角設定オン/オフスイッチ80がオンされると、上記取込み領域設定回路66は、スイッチS1のオン・オフ制御を上述した通常のオン・オフ制御から以下のような制御に切り換える。その他の回路では、画角設定オン/オフスイッチ80がオンされても、オフの場合の上述した処理と同様の処理を行う。
【0064】
上記図10(A)と併せて示した図10(B)を用いて、画角調整モード時における取込み領域設定回路66のスイッチS1のオン・オフ制御について説明する。取込み領域設定回路66は、上記Vカウンタの値VがVZ1≦V≦VZ2のときにCPU36からオン信号が与えられると、オン信号が与えられた直後の1水平走査の期間を除く間、即ち、同図(f)に示すようにVカウンタの値VがVZ1<V≦VZ2のときには、上記計数回路70でカウントされた値HがHZ1≦H≦HZ2になったときに比較回路68から与えられるオン信号の初めと終わりの切り換わり時において所定時間スイッチS1をオフにし、それ以外ではスイッチS1をオンにする。これにより、抽出範囲の左端HZ1と右端HZ2の映像信号が欠落され、画角調整用の映像上に抽出範囲の左端と右端の輪郭線が表示される。同図(g)に示すように上記Vカウンタの値VがV=VZ1、又は、V=VZ2+1になったとき、即ち、CPU36からのオン信号が与えられた直後の水平走査時と、CPU36からオン信号がオフ信号に切り換わった直後の水平走査時において、取込み領域設定回路66は、比較回路68からオン信号が与えられている間、スイッチS1をオフにし、それ以外でスイッチS1をオンにする。これにより、抽出範囲の上端VZ1と下端VZ2の映像信号が欠落され、画角調整用の映像上に抽出範囲の上端と下端の輪郭線が表示される。同図(h)に示すように上記Vカウンタの値Vが1≦V<VZ1、又は、VZ2+1<V≦262のときにCPU36からオフ信号が与えられているときには、取込み領域設定回路66は、スイッチS1を常にオンにする。
【0065】
以上のスイッチS1のオン・オフ制御により画角調整用の映像信号が画角調整用端子86から出力される。
【0066】
以上説明した撮影補助装置20の一連の処理動作を図11のフローチャートを用いて説明する。まず、CPU36はフリッカー対応オン/オフスイッチ78、フォーカス入力オン/オフスイッチ76、画角設定オン/オフスイッチ80の状態を読み込む(ステップS10)。そして、フリッカー対応オン/オフスイッチ78、フォーカス入力オン/オフスイッチ76のオン、オフに応じて映像信号の信号レベルの導出処理、映像信号の抽出範囲の算出処理の内容を設定する(ステップS12)。次いで、撮影カメラ10の撮影レンズ14からフォーカス位置及びズーム位置を読み込み(ステップS14)、上式(1) 〜(4) に基づいて映像信号の抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2を算出する(ステップS16)。尚、上式(1) 〜(4) は、上記設定記憶回路74に上述のように予め設定されてデータに基づいて決定される。
【0067】
次に、画角設定オン/オフスイッチ80のオン、オフにより、画角調整モードか否かを判定し(ステップS18)、YESの場合には、取込み領域設定回路66に対し、上記画角調整用の映像信号を生成するためのスイッチS1のオン・オフ制御を実行させ、画角調整用端子86から出力するセンサーカメラ30の映像上に現在の撮影カメラ10のズーム位置及びフォーカス位置における映像信号の抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2を示す枠、即ち、撮影カメラ10の撮影範囲(撮影レンズ14の画角)を表示させる(ステップS20)。
【0068】
一方、画角調整モードでないときには、抽出範囲VZ1、VZ2、HZ1、HZ2の大きさに応じたゲインをゲイン切替回路58に設定する(ステップS22)。続いて、パラメータnを4として(ステップS24)、以下のステップS26〜ステップS32の処理をn=0となるまで4回繰り返す。ステップS26において、CPU36は、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向をパラメータnの値4、3、2、1に応じて0°、45°、90°、又は、135°に設定する(ステップS26)。そして、ステップS26で設定した透過軸方向に基づいて、電圧制御回路38により液晶偏光フィルタ34に印加する電圧を設定する(ステップS28)。
【0069】
この後、CPU36は、ステップS28で設定した液晶偏光フィルタ34の透過軸方向においてセンサーカメラ30から出力される映像信号の出力レベル(積分値)を積分回路60から読み込む(ステップS30)。このとき、各透過軸方向0°、45°、90°、135°で得られた積分値をそれぞれPV(0)、PV(45)、PV(90)、PV(135)とする。
【0070】
次に、nを1減算して(ステップS32)、n=0か否かを判定する(ステップS34)、NOの場合には、上記ステップS26からの処理を繰り返す。これにより、液晶偏光フィルタ34の透過軸方向が0°、45°、90°、135°の場合におけるすべての信号レベルPV(0)、PV(45)、PV(90)、PV(135)が取得される。
【0071】
次にCPU36は、各透過軸方向0°、45°、90°、135°の信号レベルPV(0)、PV(45)、PV(90)、PV(135)を比較し、最小となるものを選択する(ステップS36)。そして、その信号レベルが最小となる液晶偏光フィルタ34の透過軸方向と一致するように、電圧制御回路42に指令信号を出力して撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18の透過軸方向を設定する(ステップS38)。そして、以上ステップS10〜ステップS38の処理を繰り返し実行する。
【0072】
また、CPU36は、上記処理に対して割り込みにより上記スイッチS1のオン・オフ制御に関連する制御を行っている。図12のフローチャートに示すようにCPU36に同期信号分離回路64から垂直同期信号が与えられると(ステップS50)、CPU36は、内蔵のVカウンタをリセットする(ステップS52)。一方、図13のフローチャートに示すように同期信号分離回路64から水平同期信号がCPU36及び比較回路68に与えられると(ステップS60)、比較回路68は計数回路70(Hカウンタ)をリセットすると共に(ステップS62)、CPU36はVカウントを1インクリメントする(ステップS64)。そして、CPU36は、V<VZ1又はVZ2<Vかを判断し(ステップS66)、YESのときには、取込み領域設定回路66にオフ信号を与え、取込み領域設定回路66によってスイッチS1をオフにする(ステップS68)。一方、上記ステップS66においてNOのときには、取込み領域設定回路66にオン信号を与える。そして、比較回路68において計数回路70(Hカウンタ)の値がH<HZ1又はHZ2<Hか否かが判断される(ステップS70)。YESであれば、比較回路68から取込み領域設定回路66にオフ信号が与えられ、スイッチS1がオフとなる(ステップS68)。一方、YESであれば、取込み領域設定回路66にオン信号が与えられスイッチS1がオンになる(ステップS72)。
【0073】
以上、上記実施の形態では、撮影補助装置20が、撮影カメラ10に入射する偏光の偏光方向を検出すると共に、これに基づいて撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18を制御するようにしていたが、撮影補助装置20としては、撮影カメラ10に入射する偏光の偏光方向を検出するだけでもよく、撮影補助装置20によって検出された偏光の偏光方向に基づいて撮影補助装置20とは別体の装置が撮影カメラ10の液晶偏光フィルタ18を制御するようにしてもよい。
【0074】
また、撮影カメラ10やセンサーカメラ30の光学系に配置される偏光を除去するための手段は、上述した液晶偏光フィルタでなくてもよく、偏光フィルタをモータ等によって回転させて偏光フィルタの透過軸方向を変更できるようにしたものであってもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、センサーカメラ30で撮影カメラ10の撮影範囲の偏光の偏光方向を検出するために、センサーカメラ30の映像信号から撮影カメラ10の撮影範囲に一致する範囲の映像信号を抽出するようにしたが、上述したように、センサーカメラ30のセンサーレンズ32をズーム調整が可能なズームレンズとし、このズームレンズを撮影カメラ10の撮影範囲に応じてモータ駆動し、センサーカメラ30と撮影カメラ10の撮影範囲を一致させるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態では、センサーカメラ30の映像信号から撮影カメラ10の撮影範囲に一致する範囲の映像信号を抽出するようにしたが、必ずしも撮影カメラ10の撮影範囲に完全に一致する範囲の映像信号を抽出する必要はなく、例えば、撮影カメラ10の撮影範囲に応じて、撮影カメラ10の撮影範囲の一部(例えば中央部分)或いは撮影カメラ10の撮影範囲よりもある程度広い範囲の映像信号を抽出するようにしてもよい。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る撮影補助装置によれば、外部センサとして、透過軸方向が切換可能な偏光フィルタを備えた撮影手段を用い、その偏光フィルタの透過軸方向を切り換えながら撮影手段から撮影カメラと例えば同一撮影範囲の映像信号を取得し、各透過軸方向で得られた映像信号に基づいて撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を検出するようにしたため、窓ガラス等で反射して撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を撮影カメラの撮影範囲に対応させて適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る撮影補助装置が使用されたテレビカメラシステムの一実施の形態を示した構成図である。
【図2】図2は、液晶偏光フィルタの構成を示した図である。
【図3】図3は、本発明に係る撮影補助装置の概略構成図である。
【図4】図4は、撮影カメラとセンサーカメラの撮影範囲の関係を示した図である。
【図5】図5は、撮影カメラとセンサーカメラの撮影範囲の関係を示した図である。
【図6】図6は、映像信号の抽出範囲の説明に使用した説明図である。
【図7】図7は、パララックスを考慮した場合における撮影カメラとセンサーカメラの撮影範囲を示した図である。
【図8】図8は、本発明に係る撮影補助装置が使用された撮影カメラシステムを示した全体回路構成図である。
【図9】図9は、フリッカー対応の処理動作の説明に使用した説明図である。
【図10】図10は、スイッチS1のオン・オフ制御の説明に使用した説明図である。
【図11】図11は、本発明に係る撮影補助装置の処理動作を示したフローチャートである。
【図12】図12は、本発明に係る撮影補助装置の処理動作を示したフローチャートである。
【図13】図13は、本発明に係る撮影補助装置の処理動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
10…撮影カメラ、14…撮影レンズ、18、34…液晶偏光フィルタ、20…撮影補助装置、30…センサーカメラ、36…CPU、38、42…電圧制御回路、40…信号処理回路、58…ゲイン切替回路、60…積分回路、64…同期信号分離回路、68…比較回路、70…計数回路、72…発振回路、74…設定記憶回路、S1…スイッチ
Claims (3)
- 撮影カメラに入射される偏光の偏光方向を検出する撮影補助装置において、
前記撮影カメラと撮影方向が同一方向に設置された撮影手段と、
前記撮影手段の撮影光学系に挿入される偏光フィルタであって、偏光を透過させる透過軸方向が切換え可能な偏光フィルタと、
前記偏光フィルタを駆動し、前記偏光フィルタの透過軸方向を切り換える偏光フィルタ切換手段と、
前記撮影カメラの撮影範囲に応じた範囲の映像信号を前記撮影手段から取得する映像信号取得手段と、
前記偏光フィルタ制御手段によって切り換えられる偏光フィルタの各透過軸方向ごとに前記映像信号取得手段によって映像信号を取得し、該取得した各透過軸方向ごとの映像信号に基づいて、前記撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を検出する偏光方向検出手段と、
を備え、
前記映像信号取得手段は、前記撮影手段から出力される映像信号から、前記撮影カメラの撮影範囲に一致する範囲の映像信号を、前記撮影カメラのズーム位置及びフォーカス位置に基づいて抽出することを特徴とする撮影補助装置。 - 撮影カメラに入射される偏光の偏光方向を検出する撮影補助装置において、
前記撮影カメラと撮影方向が同一方向に設置された撮影手段と、
前記撮影手段の撮影光学系に挿入される偏光フィルタであって、偏光を透過させる透過軸方向が切換え可能な偏光フィルタと、
前記偏光フィルタを駆動し、前記偏光フィルタの透過軸方向を切り換える偏光フィルタ切換手段と、
前記撮影カメラの撮影範囲に応じた範囲の映像信号を前記撮影手段から取得する映像信号取得手段と、
前記偏光フィルタ制御手段によって切り換えられる偏光フィルタの各透過軸方向ごとに前記映像信号取得手段によって映像信号を取得し、該取得した各透過軸方向ごとの映像信号に基づいて、前記撮影カメラに入射する偏光の偏光方向を検出する偏光方向検出手段と、
を備え、
前記偏光方向検出手段は、前記偏光フィルタの各透過軸方向ごとに前記映像信号取得手段によって取得した映像信号を所定時間積分し、該積分した値の大きさに基づいて前記撮影カメラに入射される偏光の偏光方向を検出すると共に、前記映像信号を積分する時間を、入射する光量の周期的な変化によって前記積分した値が変化しない時間とすることを特徴とする撮影補助装置。 - 前記偏光フィルタは、所定方向の偏光のみを透過させる偏光子と、該偏光子の前面に配置され、印加する電圧を制御することにより入射した偏光の偏光方向を所定角度回転させる液晶素子と、から成ることを特徴とする請求項1又は2の撮影補助装置。
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