JP4717418B2 - 投影システム - Google Patents

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Description

本発明は、投影スクリーンと投影機と外光スクリーンとを有する投影システムに関するものである。
従来の投影システムとしては、投影機により投射された映像光を投影スクリーン上に映し出し、その反射光を観察者が映像として観察するものが一般的である。
近年では、投影機本体の小型化や価格の低下等に伴って、ホームシアター等の家庭用途の需要が増加してきており、投影システムが一般家庭で用いられることが多くなってきている。このような投影システムでは、投影スクリーン上に投射される投影機からの投射光(映像光)の強度差によって映像の濃淡が作り出されており、例えば、黒地に白の絵を映し出すような場合には、投射光が投影スクリーンに当たる部分が白、それ以外の部分が黒となり、このような白黒の明るさの差により映像の濃淡が作り出されている。したがって、良好な映像表示を実現するためには、白表示の部分をより明るくし、黒表示の部分をより暗くして、コントラスト差を大きくする必要がある。
しかしながら、上記投影システムが、例えば家庭内で用いられる場合には、リビングスペース等に設置されることが多く、このような場所は通常、外光等の環境光が入りやすい設計となっている。このため、上記投影システムでは、外光等の環境光を、映像光との区別なく反射し、白表示の部分及び黒表示の部分の両方が明るくなり、白黒の明るさの差が小さくなってしまう。このため、上述した従来の投影スクリーンでは、部屋を暗くするための手段や環境等を用いて外光等の環境光の影響を抑えない限り、良好な映像表示を実現することが困難であるという問題があった。
このような問題に対して、明るい環境光の下でも良好な映像表示を実現することが可能な投影スクリーンが研究されており、例えばホログラムを利用したものがある。ホログラムを利用した投影スクリーンは、散乱効果を制御して白表示の部分をより明るくすることができ、明るい環境光の下で比較的良好な映像表示を実現することができ、波長選択性があるという利点を有しているが、偏光選択性を有しておらず、一定の限度でしか映像を鮮明に表示することができないという問題がある。また、ホログラムを利用した投影スクリーンでは、製造上の問題から大画面化が困難であるという問題がある。
一方、明るい環境光の下でも良好な映像表示を実現することが可能な投影スクリーンとして、偏光選択分離層を利用した投影スクリーンが提案されている(特許文献1及び特許文献2)。偏光選択分離層を利用した投影スクリーンは、白表示の部分を明るくしつつ、黒表示の部分をより暗くすることが可能であり、ホログラムを利用したものに比べて、明るい環境光の下で映像を鮮明に表示することができる。具体的には、映像光に含まれる右円偏光又は左円偏光を反射するコレステリック液晶が挙げられ、例えば、右円偏光を反射するコレステリック液晶を用いた場合、コレステリック液晶の円偏光分離機能により、左円偏光は反射されず、環境光の影響を低減することができる。
しかしながら、例えば、右円偏光を反射するコレステリック液晶を用いた場合においても、環境光の右円偏光成分は反射してしまうので、十分なコントラストの向上が実現できない場合があった。
また、自然界での光源を考えると、ほとんど全ての光は太陽光に起因しており、外光入射口から投影システムに進入する環境光としては、太陽の直接光、および直接光が物質に反射されてなる反射光がある。ここで、誘電体界面での光の反射を考えた場合に、反射がブルースター角度にある場合はS波が全反射されることから、反射光には通常、S波成分が多く含まれる。具体的には、雨等により外界が濡れている場合は、空気−水面の界面での全反射により、反射光にはS波成分が多く含まれている。このようなS波成分を多く含む反射光を投影システム内部から見ると、いわゆる、ぎらつきを引き起こし、視認性が優れないという問題があった。
特開平5−107660号公報 特開2002−540445公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、投影システム内部から外部への視認性に優れ、環境光の影響を受けず、高コントラストな表示を得ることが可能な投影システムを提供することを主目的とするものである。
本発明は、基板と、上記基板上に形成され、右円偏光または左円偏光を拡散反射する偏光選択反射層とを有し、投影機から照射された映像光を反射して映像を表示する投影スクリーンと、上記投影スクリーン上に映像光を投射する投影機と、外光入射口に取り付けられ、外界側から直線偏光板および位相差板の順で配置され、上記偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは逆向きの円偏光を構成する外光スクリーンとを有する投影システムにおいて、上記直線偏光板の透過軸が、鉛直方向であることを特徴とする投影システムを提供する。
本発明によれば、上記直線偏光板の透過軸が鉛直方向であることから、鉛直方向に振動する光のみを透過させ、上述した誘電体界面での全反射によって生じるS波成分をキャンセルすることができるので、防眩効果が得られ、投影システム内部から外部への視認性を向上させることができるという利点を有する。さらに、本発明においては、上記偏光選択反射層が右円偏光または左円偏光を拡散反射する性質を有し、かつ上記外光スクリーンが、偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは逆向きの円偏光を構成することから、投影スクリーンにおける外光の反射を理論上ゼロにすることができ、映像光のみが反射される結果、高コントラストな表示を得ることができる。さらに、本発明においては、外界からの光のP波成分を、投影システム内部に取り込むことができるため、明るい状態を保持することができる。
また、上記発明においては、上記偏光選択反射層は、コレステリック液晶構造を有することが好ましい。上記コレステリック液晶構造は、液晶分子の物理的な分子配列として、液晶分子のダイレクターが層の厚さ方向に連続的に回転してなる螺旋構造をとっており、このような液晶分子の物理的な分子配列に基づいて、例えば、一方向の円偏光と、これと逆回りの円偏光とを分離する偏光分離特性を発揮することができるからである。
また、上記発明においては、上記外光スクリーンは、可視光領域の光に対して円偏光を構成する広帯域型円偏光板であることが好ましい。外光は通常、全可視光領域に渡って波長成分が存在するため、全可視光領域において円偏光を構成することにより、本発明において外光の影響を理論上ゼロにすることができるからである。
さらに、本発明は、上記投影システムに用いられる上記外光スクリーンであることを特徴とする外光スクリーンを提供する。
本発明によれば、上記外光スクリーンを使用することにより、所望の円偏光を得ることができ、さらに、上記直線偏光板の透過軸が鉛直方向であることから、防眩効果が得られ、投影システム内部から外部への視認性を向上させることができる。
本発明においては、外光スクリーンを構成する直線偏光板の透過軸を鉛直方向にすることにより、誘電体界面での全反射によって生じるS波成分をキャンセルすることができるため、防眩効果が得られ、投影システム内部から外部への視認性を向上させることができるという効果を有する。さらに、本発明においては、上記偏光選択反射層が拡散反射する円偏光と、外光スクリーンが構成する円偏光とが逆向きであることから、投影スクリーンにおける外光の反射を理論上ゼロにすることができ、映像光のみが反射され、高コントラストな表示を得ることができる。またさらに、本発明においては、外界からの光のP波成分を、投影システム内部に取り込むことができるため、明るい状態を保持することができる。
以下、本発明の投影システムおよび外光スクリーンについて説明する。
A.投影システム
本発明の投影システムは、基板と、上記基板上に形成され、右円偏光または左円偏光を拡散反射する偏光選択反射層とを有し、投影機から照射された映像光を反射して映像を表示する投影スクリーンと、上記投影スクリーン上に映像光を投射する投影機と、外光入射口に取り付けられ、外界側から直線偏光板および位相差板の順で配置され、上記偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは逆向きの円偏光を構成する外光スクリーンとを有する投影システムにおいて、上記直線偏光板の透過軸が、鉛直方向であることを特徴とするものである。
本発明においては、上記直線偏光板の透過軸が鉛直方向であることから、鉛直方向に振動する光のみを透過させ、上述した誘電体界面での全反射によって生じるS波成分をキャンセルすることができるので、防眩効果が得られ、投影システム内部から外部への視認性を向上させることができるという利点を有する。さらに、本発明においては、上記偏光選択反射層が右円偏光または左円偏光を拡散反射する性質を有し、かつ上記外光スクリーンが、偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは逆向きの円偏光を構成することから、投影スクリーンにおける外光の反射を理論上ゼロにすることができ、映像光のみが反射される結果、高コントラストな表示を得ることができる。さらに、本発明においては、外界からの光のP波成分を、投影システム内部に取り込むことができるため、明るい状態を保持することができる。
本発明の投影システムについて、図を用いて説明する。例えば図1に示すように、本発明の投影システムは、基材と、上記基板上に形成された偏光選択反射層とを有する投影スクリーン1と、上記投影スクリーン1上に映像光を投射する投影機2と、外光入射口に取り付けられ、外界側から直線偏光板3および位相差板4の順で配置された外光スクリーン5とを有する投影システムである。本発明においては、直線偏光板3の透過軸が鉛直方向であることから、外光6のS波成分が透過せず、防眩効果を得ることができる。また、上記直線偏光板3を透過したP波成分が位相差板4を透過することにより右円偏光7となり、この右円偏光7は左円偏光8を拡散反射する投影スクリーン1には反射されないことから、高コントラストな表示を得ることができる。
また、ここでいう偏光選択反射層による拡散反射とは、投影スクリーンで反射された反射光(映像光)を観察者が映像として認識することができる程度に拡げたり散乱させたりすることをいう。
以下、このような本発明の投影システムの各構成について説明する。まず、本発明で最も特徴的な外光スクリーンについて説明し、次いで、投影スクリーンおよび投影機について説明する。
1.外光スクリーン
まず、本発明の投影システムに用いられる外光スクリーンについて説明する。本発明に用いられる外光スクリーンは、外界側から直線偏光板および位相差板の順で配置され、偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは逆向きの円偏光を構成する外光スクリーンであって、上記直線偏光板が、鉛直方向であることを特徴とするものである。
本発明に用いられる外光スクリーンは、上記直線偏光板の透過軸が鉛直方向であることから、鉛直方向に振動する光のみを透過させ、上述した誘電体界面での全反射によって生じるS波成分をキャンセルすることができるので、防眩効果が得られ、投影システム内部から外部への視認性を向上させることができる。さらに、本発明に用いられる外光スクリーンは、後述する偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは、逆向きの円偏光を構成することから投影スクリーンにおける外光の反射を理論上ゼロにすることができ、映像光のみが反射された高コントラストな表示を得ることができる。さらに、上記外光スクリーンは外界からの光のP波成分を、投影システム内部に取り込むことができるため、明るい状態を保持することができる。
(1)直線偏光板
本発明に用いられる直線偏光板について説明する。本発明に用いられる直線偏光板は、外光から鉛直方向の直線偏光を得るために使用されるものである。
本発明においては、上記直線偏光板を用いることにより、鉛直方向に振動する光のみを透過させることができ、外光のS波成分をキャンセルすることができるので、防眩効果が得られ、投影システム内部から外部への視認性を向上させることができる。さらに、後述する位相差板に、得られた直線偏光を透過させることにより、所望の円偏光を得ることができる。
本発明に用いられる直線偏光板は、鉛直方向の直線偏光を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール中にヨウ素色素を分散し、さらに延伸処理によりヨウ素分子を所定方向に配向させた後、保護層としてトリアセチルセルロース層で挟みこんだ、いわゆるヨウ素系の偏光板が挙げられる。市販のヨウ素系偏光板としては、例えば日東電工社製G1220DUNや、サンリッツ社製LLC2−9118が挙げられ、どちらも本発明に好適に用いることができる。
(2)位相差板
次に、本発明に用いられる位相差板について説明する。本発明に用いられる位相差板は、上述した直線偏光板で得られた直線偏光を円偏光に変換するものであり、偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは逆向きの円偏光を得るように使用される。
本発明においては、上記位相差板を用いることにより、所望の円偏光が得ることができ、後述する偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは逆向きにすることにより、投影スクリーンにおける外光の反射を理論上ゼロにし、映像光のみが反射された高コントラストな表示を得ることができる。
また、本発明に用いられる位相差板は、上述した直線偏光板により得られた直線偏光を所望の円偏光にすることができるものであれば特に限定されるものではないが、可視光領域の光に対して円偏光を構成する広帯域型位相差板であることが好ましい。外光は通常、全可視光領域に渡って波長成分が存在するため、全可視光領域において円偏光を構成することにより、本発明において外光の影響を理論上ゼロにすることができるからである。例えば、特定の可視光領域のみ、具体的には視感度が最も高い緑色(550nm付近)のみ円偏光とすることができるが、他の可視光領域で完全な円偏光とすることができない位相差板を用いた場合、光の一部が投影スクリーンで反射され、表示コントラストを悪化させてしまう。
また、円偏光を得る為には、通常λ/4位相差板と直線偏光板の組み合わせが用いられる。さらに広帯域型とするには、広帯域位相差板として短波長側で屈折率異方性が大きくなる、いわゆる通常の波長分散型のλ/2位相差板とλ/4位相差板を所定の角度で貼り合わせた積層型のλ/4位相差板や、短波長側で屈折率異方性が小さくなる、いわゆる逆波長分散型のλ/4位相差フィルムを用いることができる。中でも円偏光度に対する角度依存性が低い点から、逆波長分散型の位相差フィルムを用いることがより好ましい。このような逆波長分散型の位相差フィルムとしては、ピュアエースWR−W(商品名、帝人社製)を用いることができる。
(3)外光スクリーン
本発明に用いられる外光スクリーンは、所望の円偏光を得ることができる外光スクリーンであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した直線偏光板と、位相差板としてλ/4位相差板とを組み合わせて使用することが好ましく、中でも位相差板として広帯域型λ/4位相差板を使用することにより、外光スクリーンが広帯域型円偏光板であることが好ましい。外光は通常、全可視光領域に渡って波長成分が存在するため、全可視光領域において円偏光を構成することにより、本発明において外光の影響を理論上ゼロにすることができるからである。
また、上記組合せの場合、外界側から直線偏光板およびλ/4位相差板の順で配置され、所望の円偏光を構成するように、直線偏光板に対するλ/4位相差板の角度を決定する。この際、左右どちらの円偏光を得るかは、投影スクリーンが拡散反射する円偏光の方向によって決定されるが、左右どちらの円偏光であってもλ/4位相差板の角度を調整することにより得ること可能である。なお、円偏光は、光の振動方向に異方性が存在せず、所望の円偏光が得られるか否かは、直線偏光板とλ/4位相差板との相対角度によって決定されるため、直線偏光板の透過軸の方向は特に限定されるものではないが、本発明においては、S波をキャンセルするために、直線偏光板の透過軸を鉛直方向する必要がある。
また、本発明に用いられる外光スクリーンの使用方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、直線偏光板の表面に粘着層を設け窓等の外光入射口に直接貼付する方法であっても良く、窓等の外光入射口の近辺にブラインドとして設置する方法であっても良い。
2.投影スクリーン
次に本発明の投影システムに用いられる投影スクリーンについて説明する。本発明に用いられる投影スクリーンは、基板と、上記基板上に形成され、右円偏光または左円偏光を拡散反射する偏光選択反射層とを少なくとも有し、投影機から照射された映像光を反射して映像を表示するものである。本発明に用いられる投影スクリーンは、例えば図2に示すように、本発明に用いられる投影スクリーンは、基材10と、上記基材10上に形成された偏光選択反射層11とを有するものである。
本発明においては、偏光選択反射層が、右円偏光または左円偏光を選択的に拡散反射するため、例えば、右円偏光を拡散反射する偏光選択反射層を用いた場合は、円偏光分離機能によって左円偏光は反射されず、外光の影響を低減することができる。さらに、上述した外光スクリーンと組み合わせて使用することによって、投影スクリーンにおける外光の反射を理論上ゼロにすることができる。
(1)偏光選択反射層
まず、本発明に用いられる偏光選択反射層について説明する。本発明に用いられる偏光選択反射層は、右円偏光または左円偏光を拡散反射するものである。
本発明においては、このような偏光選択反射層を設けることにより、投影機から投影された右円偏光または左円偏光が拡散反射され、本発明の目的に適う投影スクリーンを得ることができる。
上記偏光選択反射層において、螺旋軸に沿って入射した無偏光状態の光は、2つの偏光状態の光(右円偏光及び左円偏光)に分離され、一方は透過され、残りは反射される。この現象は、円偏光二色性として知られ、例えば、液晶分子の螺旋構造における螺旋巻き方向を適宜選択すると、この螺旋巻き方向と同一の旋光方向を有する円偏光成分が選択的に反射される。
またこの場合の最大旋光光散乱は、次式(1)の波長λで生じる。
λ=nav・p … (1)
ここで、pは液晶分子の螺旋構造における螺旋ピッチ長(液晶分子の分子螺旋の1ピッチ当たりの長さ)、navは螺旋軸に直交する平面内での平均屈折率である。
また、このときの反射光の波長バンド幅△λは次式(2)で表される。ここで、△nは複屈折値である。
△λ=△n・p … (2)
すなわち、例えば図2に示すように、投影スクリーンの観察者側から入射する無偏光状態の光(選択反射波長域内の右円偏光12R及び左円偏光12L、選択反射波長域外の右円偏光13R及び左円偏光13L)は、上述したような偏光分離特性に従って、選択反射中心波長λを中心とした波長バンド幅△λの範囲(選択反射波長域)に属する一方の円偏光成分(例えば選択反射波長域内の右円偏光12R)が反射光14として反射され、その他の光(例えば選択反射波長域内の左円偏光12L、選択反射波長域外の右円偏光13R及び左円偏光13L)が透過される。
このような偏光選択反射層は、上述した右円偏光または左円偏光を拡散反射するものであれば特に限定はされない。具体的には、特定の円偏光を反射する偏光反射層と、当該偏光反射層により反射された光を拡散する拡散要素とを有するものである場合、または、それ自体で拡散性を有する偏光選択反射層である場合等を挙げることができる。以下、本発明に用いられる偏光選択反射層について、両方の場合に分けて詳細に説明する。
(i)特定の円偏光を反射する偏光反射層と、当該偏光反射層により反射された光を拡散する拡散要素とを有するものである場合
このような場合の偏光選択反射層について、以下、偏光反射層および拡散要素に分けて説明する。
(a)偏光反射層
本発明に用いられる偏光反射層は、特定の円偏光を反射させるものである。具体的には、鏡面反射を行うもの、プラーナー配向状態のコレステリック液晶構造を有するもの等を挙げることができる。このような偏光反射層を用いることにより、偏光分離特性を得ることができるので、投影機から投影された光のうち、特定の円偏光のみを反射させることができる。さらに、後述する拡散要素により、偏光反射層により反射された光を拡散させることができるので、明るい環境のもとでも使用可能であり、かつ明度が高く、視認性に優れた投影スクリーンとすることができる。
(b)拡散要素
次に、拡散要素について説明する。本発明における拡散要素は、上記偏光反射層により反射された光を拡散させるものである。このような拡散要素は、上記偏光反射層により反射された光を拡散させ、投影スクリーンの観察者側へ出射させるため、上記偏光反射層の観察側上に設けられる。
具体的に拡散要素としては、バルク拡散材、表面拡散材、ホログラフ拡散材またはこれらの拡散材の任意の組合せ等を挙げることができる。具体的にバルク拡散材としては、透明媒体内に配置された粒子を挙げることができる。さらに、表面拡散材としては、構造面、微細構造面、または粗化面等を挙げることができる。拡散材により達成される拡散は、ランダムであっても良く、または秩序だっている場合でも良く、また、部分的に秩序だっている場合でも良い。
(ii)偏光選択反射層自体が拡散性を有する場合
このような場合の偏光選択反射層は、それ自体が拡散性を有するものであれば特に限定はされないが、具体的には、コレステリック液晶構造を有し、投影された光が偏光を分離されて拡散するように、前記コレステリック液晶構造が構造的に不均一に形成されているものを挙げることができる。以下、このような場合の偏光選択反射層について説明する。
このような偏光選択反射層は、コレステリック液晶構造を有していることから、液晶分子の物理的な分子配列として、液晶分子のダイレクターが層の厚さ方向に連続的に回転してなる螺旋構造をとっており、このような液晶分子の物理的な分子配列に基づいて、例えば、一方向の円偏光と、これと逆回りの円偏光とを分離する偏光分離特性を有している。すなわち、このような偏光選択反射層において、螺旋軸に沿って入射した無偏光状態の光は、2つの偏光状態の光(右円偏光及び左円偏光)に分離され、一方は透過され、残りは反射される。この現象は、円偏光二色性として知られ、液晶分子の螺旋構造における螺旋巻き方向を適宜選択すると、この螺旋巻き方向と同一の旋光方向を有する円偏光成分が選択的に反射される。
したがって、コレステリック液晶構造を有する偏光選択反射層とした場合には、このような偏光選択反射層を、投影機等から射出される光と同じ側の偏光の特定波長を反射させる層とすることにより、投影された光を効率よく反射することができ、明度の高い投影スクリーンとすることができるのである。また、外光等は、上述した外光スクリーンを透過させることにより、偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは逆向きの円偏光を得ることができることから、投影スクリーンにおける外光の反射を理論上ゼロにすることができ、高コントラストな表示を得ることができる。さらに、外界からの光のP波成分を、投影システム内部に取り込むことができるため、明るい状態を保持することができる。
さらに、このようなコレステリック液晶構造を有する偏光選択反射層は、そのコレステリック液晶構造が、投影された光が偏光を分離されて拡散するように、構造的に不均一に形成されていることが好ましい。
ここで、コレステリック液晶構造を構造的に不均一にするとは、偏光選択反射層を配向させた際、各液晶相における配向の向きが一様な方向に揃わず、乱れた状態であることを意味する。具体的には、図3に示すように、偏光選択反射層11のコレステリック液晶構造に含まれる螺旋構造領域30の螺旋軸Lの方向がばらついた状態、図示していないが、ネマチックレイヤー面(液晶分子のダイレクターがXY方向で同一である面)の少なくとも一部が偏光選択反射層の面に対して平行でないような状態(染色処理したコレステリック液晶構造膜の断面TEM写真を撮ったときに濃淡パターンで現われる層の1つながりの曲線が基板面と平行でない状態)、コレステリック液晶からなる微粒子を顔料として分散させた状態等を挙げることができる。いずれにおいても、投影された光が偏光を分離されて拡散するように、コレステリック液晶構造が構造的に不均一に形成されていることから、投影機から投影された映像光が鏡面反射でなく拡散反射され、映像が視認しやすくなる。なお、このとき偏光選択反射層は、その構造的な不均一性により、選択的に反射される光を拡散させるので、特定の円偏光を拡散させながら反射する一方で、その他の光については拡散させずに透過させることができる。このため、偏光選択反射層を透過する環境光や映像光について、消偏といった問題は生じず、偏光選択反射層の偏光分離機能を維持しつつ、映像の視認性を向上させることができる。
例えば、このようにコレステリック液晶構造を構造的に不均一に形成する方法としては、特に限定はされないが、例えば後述する基材を、一定方向の配向性を有しないものとする方法、偏光選択反射層の形成に一般的に用いられる光重合開始剤またはレベリング剤の量を調整する方法、偏光選択反射層中に非液晶性の重合性化合物を添加する方法、液晶性の微粒子を含有させる方法等が挙げられる。これらの方法を任意に選択するものとし、また、これらの方法を組み合わせて用いても良い。
ここで、コレステリック液晶構造を有し、そのコレステリック液晶構造が構造的に不均一に形成されている偏光選択反射層は、上記偏光選択反射層の最大反射強度に対して半分以上の反射強度を有する波長域が、可視光域(例えば400nm〜700nmの波長域)の一部のみであることが好ましい。これにより、可視光域の特定の波長の光を選択反射することが可能となる。上述したように、コレステリック液晶は、特定の波長のみの光を、強く反射することから、この特定の波長以外の波長の光は基材等にほぼ吸収されることとなる。また、上記偏光選択反射層を構成するコレステリック液晶の反射する波長域は、コレステリック液晶の螺旋ピッチの長さにより決定される。
また、このような偏光選択反射層は、投影機等の光源から照射される波長の光を反射することが可能であれば、1種類の螺旋ピッチ長からなるものであっても良いが、例えば赤色(R)及び緑色(G)の波長域が一つの螺旋ピッチ長での選択反射波長域の波長バンド幅に含まれる場合には、これらの波長の螺旋ピッチ長と、青色(B)の螺旋ピッチ長とを有するものであることが好ましく、特に赤色(R)、青色(B)、緑色(G)のそれぞれの波長の螺旋ピッチ長を有するものであることが好ましい。これは、通常投影機から射出される光は、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)からなるものであり、この三原色によりカラー表示を実現しているからである。
本発明においては、上記の波長として具体的には、投影機の種類にもよるが、青色(B)の430nm〜460nm、緑色(G)の540nm〜570nm、赤色(R)の580nm〜620nmの波長を選択的に反射するものであることが好ましい。これにより、装置の設計や光源の種類等によって波長に差があってもカラー表示をすることが可能であり、良好な白色も表現可能な投影スクリーンとすることができるからである。
このような複数の螺旋ピッチ長を有する偏光選択反射層は、各螺旋ピッチ長を有するコレステリック液晶構造を有する層を積層することにより構成することができる。
また、コレステリック液晶構造を有し、そのコレステリック液晶構造が構造的に不均一に形成されている偏光選択反射層(偏光選択反射層が複数の層からなる場合には各層)は、特定の偏光を100%反射するような膜厚とすることが好ましい。上記偏光選択反射層の偏光に対する反射率は、偏光選択反射層の膜厚に依存するものであり、選択的に反射される特定の円偏光(例えば右円偏光)に対して100%未満の反射率であれば、映像光を効率的に反射することができないからである。上記反射率を100%とするためには、通常4ピッチ〜8ピッチとすることが好ましく、具体的には、上記偏光選択反射層の材料の種類や円偏光の波長にもよるが、通常1μm〜10μmとされる。上記膜厚より薄い場合には、反射率が低くなり、投影スクリーンに投影された画像等を明度良く再現することが困難となり、また上記膜厚より厚い場合には、コレステリック液晶構造制御が困難となる場合や、ムラが生じること等があるからである。
ここで、コレステリック液晶構造を有し、投影された光が偏光を分離されて拡散するように、コレステリック液晶構造が構造的に不均一に形成されている偏光選択反射層である場合の、偏光選択反射層を形成する材料としては、カイラルネマチック液晶や、コレステリック液晶を用いることができ、コレステリック規則性を有する材料であれば、特に限定されるものではないが、中でも分子の両末端に重合性官能基を有する重合性液晶材料であることが好ましい。これにより、硬化後、光学的に安定した投影スクリーンを得ることができるからである。また、上記重合性液晶材料が、ネマチック規則性もしくはスメクチック規則性を呈する場合には、重合性カイラル剤を用いても良い。以下、本発明における偏光選択反射層に用いられる材料および偏光選択反射層の形成方法についてそれぞれ説明する。
(a)重合性液晶材料
このような重合性官能基を有する重合性液晶材料の一例としては、例えば下記の一般式(1)で表される化合物(I)を挙げることができる。化合物(I)としては、一般式(1)に包含される化合物の2種を混合して使用することも可能である。またさらに、上記化合物(I)と下記の一般式(2)〜(12)で表わされる化合物(II)とで構成されるものであっても良い。
化合物(I)としては、一般式(1)に包含される化合物の2種を混合して使用することができる。
Figure 0004717418
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化合物(I)を表わす一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ水素又はメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR1及びR2は共に水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素又はメチル基であることが好ましい。また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と、芳香環とのスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すa及びbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、a及びbがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶性を示す温度範囲が狭く好ましくない。
上述した例では、重合性液晶モノマーの例を挙げたが、本発明においては、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子等を用いることも可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子としては、従来提案されているものを適宜選択して用いることが可能である。
(b)カイラル剤
本発明においては、ネマチック液晶にカイラル剤を加えた、コレステリック規則性を有するカイラルネマチック液晶を、好適に使用することもできる。
本発明に用いられるカイラル剤とは、光学活性な部位を有する低分子化合物であり、分子量1500以下の化合物を意味する。カイラル剤は主として、例えば化合物(I)や、必要に応じて用いられる化合物(II)に示されるような重合性液晶材料が発現する正の一軸ネマチック規則性に螺旋ピッチを誘起させる目的で用いられる。この目的が達成される限り、重合性液晶材料、例えば化合物(I)と、もしくは化合物(I)および化合物(II)の混合物と、溶液状態あるいは溶融状態において相溶し、上記ネマチック規則性をとりうる重合性液晶材料の液晶性を損なうことなく、これに所望の螺旋ピッチを誘起できるものであれば、下記に示すカイラル剤としての低分子化合物の種類は特に限定されないが、分子の両末端に重合性官能基があることが耐熱性のよい光学素子を得る上で好ましい。液晶に螺旋ピッチを誘起させるために使用するカイラル剤は、少なくとも分子中に何らかのキラリティーを有していることが必須である。従って、本発明で使用可能なカイラル剤としては、例えば1つあるいは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミン、キラルなスルフォキシド等のようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、あるいはクムレン、ビナフトール等の軸不斉を持つ化合物が例示できる。さらに具体的には、市販のカイラルネマチック液晶、例えば、Merck社製S−811等が挙げられる。
しかし、選択したカイラル剤の性質によっては、化合物(I)と、もしくは化合物(I)および化合物(II)の混合物として例示されるような重合性液晶材料が形成するネマチック規則性の破壊、配向性の低下、あるいは該化合物が非重合性の場合には、液晶性組成物の硬化性の低下、硬化フィルムの信頼性の低下を招くおそれがある。さらに、光学活性な部位を有するカイラル剤の多量使用は、組成物のコストアップを招く。従って、短ピッチのコレステリック規則性を有する円偏光制御光学素子を製造する場合には、本発明に用いられる重合性液晶材料に含有させる光学活性な部位を有するカイラル剤には、螺旋ピッチを誘発する効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、具体的には一般式(13)、(14)又は(15)で表されるような分子内に軸不斉を有する低分子化合物(III)の使用が好ましい。
Figure 0004717418
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カイラル剤(III)を表わす一般式(13)又は(14)において、R4は水素又はメチル基を示す。Yは上記に示す式(i)〜(xxiv)の任意の一つであるが、なかでも、式(i),(ii),(iii),(v)及び(vii)の何れか一つであることが好ましい。また、アルキレン基の鎖長を示すd及びeは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。d又はeの値が0又は1である一般式(13)又は(14)の化合物は、安定性に欠け、加水分解を受けやすく、結晶性も高い。一方、d又はeの値が13以上である化合物は融点(Tm)が低い。これらの化合物は液晶性を示す化合物(I)と、もしくは化合物(I)および化合物(II)の混合物との相溶性が低下し、濃度によっては相分離等が起きるおそれがある。
本発明の重合性液晶材料に配合されるカイラル剤の量は、螺旋ピッチ誘起能力や最終的に得られる円偏光制御光学素子のコレステリック性を考慮して最適値が決められる。具体的には、用いる重合性液晶材料により大きく異なるものではあるが、重合性液晶材料の合計量100重量部当り、0.01〜60重量部、好ましくは0.1〜40重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部の範囲で選ばれる。この配合量が上記範囲よりも少ない場合は、重合性液晶材料に充分なコレステリック性を付与できない場合があり、上記範囲を越える場合は、分子の配向が阻害され、活性放射線によって硬化させる際に悪影響を及ぼす危惧がある。
本発明においては、このようなカイラル剤としては、特に重合性を有することが必須ではない。しかしながら、得られる偏光選択反射層の熱安定性等を考慮すると、上述した重合性液晶材料と重合し、コレステリック規則性を固定化することが可能な重合性のカイラル剤を用いることが好ましい。
(c)その他
また、この場合の偏光選択反射層には、上記重合性液晶材料、カイラル剤の他に、必要に応じて、光重合開始剤、増感剤、レベリング剤等、一般的な偏光選択反射層に用いられる材料を適宜用いても良い。
本発明に用いられる光重合開始剤としては、例えばベンジル(ビベンゾイルともいう)や、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
ここで、本発明に用いられる光重合開始剤の添加量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲であることが好ましい。
なお、本発明においては、上述したように、これらの材料の添加量を調整することによって偏光選択反射層を、投影された光が偏光を分離されて拡散するように、コレステリック液晶構造を構造的に不均一に形成する場合もある。例えば、光重合開始剤の添加量を多量に添加することにより、コレステリック液晶の分子鎖を短いものとし、コレステリック液晶表面の配向を乱すことができる。この際、反応終了後の光重合開始剤は、コレステリック液晶中でコレステリック液晶の配向を乱す不純物としての役割も果たす。
また、液晶配向性を有しない非液晶性の重合性化合物を添加することによっても、コレステリック液晶の配向が乱され、構造的に不均一に形成することができる。また、液晶性の微粒子を添加することにより、コレステリック液晶の配向を乱す場合であっても良い。なお、本発明においては上記の方法を組み合わせて用いても良く、これらの添加剤の種類や添加量等はその目的等によって適宜選択されるものとする。
(2)基板
次に、本発明の投影システムに用いられる基材について説明する。本発明の投影システムに用いられる基材としては、上記偏光選択反射層が形成可能であれば、特に限定されるものではないが、本発明においては、中でも可視光領域の波長の光を吸収するものであることが好ましく、具体的には400nm〜700nmの範囲内の光を吸収するものであることが好ましい。これにより、例えば、偏光選択反射層がコレステリック規則性を有する液晶性組成物から形成されている場合は、上記コレステリック液晶の円偏光と逆の円偏光等の反射を防止することができ、明度の高い投影スクリーンとすることができるからである。
このような可視光領域の波長を吸収する基材としては、例えば、図4(a)に示すように、黒い顔料を練りこんだプラスチックフィルム40等とすることができる。また、図4(b)に示すように、透明なプラスチックフィルム41等の上に、光吸収層42が形成されたものであっても良く、この光吸収層42は偏光選択反射層が形成される側に形成される場合であっても良く、また図4(c)に示すように、反対側に形成される場合であっても良い。
また、本発明においては、例えば、上述した偏光選択反射層が、コレステリック液晶構造を有し、投影された光が偏光を分離されて拡散するように、そのコレステリック液晶構造が構造的に不均一に形成されている場合、コレステリック液晶構造を構造的に不均一に形成するため、基材が表面の配向の少ない材料としても良い。表面の配向の少ない材料としては、例えば延伸等されていないプラスチックフィルムや、ラビング処理等されていないものを用いることができる。通常、このような場合の偏光選択反射層は規則性が良好となるように、延伸やラビング処理等が施されたプラスチックフィルム等に形成されるものであるが、本発明においては、延伸やラビング処理等が施されていない基材上に上記偏光選択反射層を形成することにより、基材表面の液晶が規則的に配向せず、投影機から投影された光が偏光を分離されて拡散するように、コレステリック液晶構造の配向を乱すことが可能となるからである。
上記基材に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく例えばプラスチックフィルムや、金属、紙、ガラス等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリカーボネート系高分子、ポリアリレートやポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系高分子、ポリイミド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、酢酸セルロース系高分子、ポリ塩化ビニル系高分子、ポリメチルメタクリレート系高分子等の熱可塑性ポリマー等からなるフィルムを用いることができる。
また、本発明に用いられる基材の膜厚としては、その投影スクリーンの用途や種類等により適宜選択されるものであり、例えば投影スクリーンが巻き取り式で用いられる場合には、通常15μm〜300μm、中でも25μm〜100μmとすることができる。また、巻き取り式で用いられず、例えばパネル型等のようにフレキシブル性を要求されない場合には、基材の膜厚は特に限定されるものではない。
また、本発明に用いられる基材は、上記偏光選択反射層との密着性を向上させるために、例えばコロナ処理やUV洗浄等により、表面を処理したものであっても良い。
またさらに、易接着層が形成されているプラスチックフィルム等を用いても良く、例えば易接着層付PETフィルムA4100(商品名 東洋紡社製)や易接着材料AC−X、AC−L、AC−W(商品名 パナック社製)等を用いても良い。
(3)投影スクリーン
本発明の投影スクリーンは、上記基材上に、上記偏光選択反射層が形成されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば図5に示すように、基材10上に、密着性向上層51が形成され、その密着性向上層51上に上記偏光選択反射層11が形成されていれば良く、さらに偏光選択反射層11上に、紫外線吸収層52が形成されているものであっても良い。また、上述したように、上記偏光選択反射層は、1層に限定されるものではなく、例えば図5に示すように、赤色偏光選択反射層(11R)、緑色偏光選択反射層(11G)、青色偏光選択反射層(11B)等としても良く、またさらに、他の色の層等を設けたものであっても良い。さらに、上述したように、紫外線吸収層52は、紫外線吸収機能のみを有する場合であっても良く、または、紫外線吸収機能に加え反射防止機能、防眩機能若しくはハードコート機能等の他の機能を有している場合であっても良い。また、紫外線吸収層の態様に応じて、例えば、反射防止層や、防眩層、ハードコート層等を別個に設けたものであっても良い。
なお、本発明においては、上記密着性向上層を形成することが好ましく、この密着性向上層は、上記基材と上記偏光選択反射層との密着性を向上させるために設けられるものである。このような密着性向上層としては、特にその種類や材料等は特に限定されるものではなく、例えばアクリル系やエポキシ系の材料等を用いることができる。
また、本発明においては上記投影スクリーンが使用される室内の照明等は、上記投影スクリーンが反射する円偏光と反対の円偏光とすることが好ましい。これにより、照明等が投影スクリーンに入射した場合であっても、投影スクリーンがその光を反射することなく、吸収されることから、明るい環境でも明度が高いものとすることができるからである。この際、上記照明等を制御する方法としては、吸収型の円偏光板や、円偏光分離層、直線偏光分離層を用いる反射型の円偏光板等を用いることができる。
(4)投影スクリーンの製造方法
次に、本発明の投影スクリーンの製造方法について説明する。本発明の投影スクリーンの製造方法は、上述した基材を調整した後、上記基材上に、偏光選択反射層を形成する材料を混合した組成物を塗布することにより偏光選択反射層を形成する偏光選択反射層形成工程を行う。
本発明の投影スクリーンの製造方法は、本発明の目的に適う投影スクリーンを得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。ここでは、具体例として上述したコレステリック液晶構造を有し、投影された光が偏光を分離されて拡散するように、コレステリック液晶構造が構造的に不均一に形成されている場合の投影スクリーンの製造方法について説明する。
基材上に上記組成物を塗布する方法としては、上記各材料を混合した組成物をそのまま塗布しても良いが、粘性や配向性を調整する等の面から、有機溶媒に溶解させて用いることが好ましい。この際、用いられる溶媒は、後述する基材を侵食しないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、酢酸−3−メトキシブチル、ジグライム、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、塩化メチレン、メチルエチルケトン等を用いることができる。この場合、上記組成物は通常、5重量%〜50重量%、中でも10重量%〜30重量%に希釈して用いられる。
また、上記組成物を塗布する方法としては、一般的に用いられている方法を用いることが可能であり、例えばロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、スライドコート法、ダイコート法、スリットコート法、浸漬法等により行うことができる。また、上記基材がプラスチックフィルムである場合には、ロールツーロールのフィルムコーティングであっても良い。
続いて、上記組成物をコレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持し、上記組成物を配向させる。なお、最終的に得られる偏光選択反射層のコレステリック液晶構造は、プラーナー配向状態ではなく、構造的に不均一性を有し、配向が乱れた状態であるが、この場合でも、配向処理は必要となる。すなわち、コレステリック液晶構造の液晶分子のダイレクターを基材上で一定方向に揃えるような配向処理は必要とされないが、コレステリック液晶構造中に複数の螺旋構造領域を形成させるような配向処理は必要となるからである。
配向処理の方法としては、上記組成物をコレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持することによって行うことができ、これによりコレステリック液晶は液晶相を呈し、液晶分子自体の自己集積作用により、液晶分子のダイレクターが層の厚さ方向に連続的に回転してなる螺旋構造が形成される。そして、このような液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造は、後述するような手法でコレステリック液晶を固定化することができるのである。
なお、このような配向処理工程は、基材上に塗布された液晶性組成物に溶媒が含有されている場合には、通常、溶媒を除去するための乾燥処理とともに行われる。なお、溶媒を除去するためには、40〜120℃、好ましくは60〜100℃の乾燥温度が適しており、乾燥時間(加熱時間)はコレステリック液晶構造が発現し、実質上溶媒が除去されれば良く、例えば、15〜600秒が好ましく、さらに好ましくは30〜180秒である。なお、乾燥後に配向状態が不十分であることが分かった場合には、適宜加熱時間を延長するようにすると良い。なお、このような乾燥処理において減圧乾燥の手法を用いる場合には、配向処理のために別途加熱処理を行うことが好ましい。
次に、上述した配向処理工程において配向させた、偏光選択反射層中の液晶分子を、固化処理工程によりコレステリック液晶構造を固化させ、液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造を固定化する。
ここで、固化処理工程で用いられる方法としては、(i)液晶性組成物中の溶媒を乾燥させる方法、(ii)加熱により液晶性組成物中の液晶分子を重合させる方法、(iii)放射線の照射により液晶性組成物中の液晶分子を重合させる方法、及び(iv)それらの方法を組み合わせた方法を用いることができる。
このうち、上記(i)の方法は、偏光選択反射層の材料である液晶性組成物に含有されるネマチック規則性を示す液晶材料として液晶ポリマーを用いた場合に適した方法である。この方法では、液晶ポリマーを有機溶媒等の溶媒に溶解させた状態で基材に塗布することとなるが、この場合には、乾燥処理により溶媒を除去するだけで、コレステリック規則性を有する固体化した偏光選択反射層が形成される。なお、溶媒の種類や乾燥条件等については、上述した塗布工程及び配向処理工程で述べたものを用いることができる。
上記(ii)の方法は、加熱により液晶性組成物中の液晶分子を熱重合させて偏光選択反射層を硬化させる方法である。この方法では、加熱(焼成)温度によって液晶分子の結合状態が変化するので、加熱時に偏光選択反射層の面内で温度ムラがあると、膜硬度等の物性や光学的な特性にムラが生じる。ここで、膜硬度の分布を±10%以内にするためには、加熱温度の分布も±5%以内に抑えることが好ましく、より好ましくは±2%以内に抑えることが好ましい。
なお、基材上に形成された偏光選択反射層を加熱する方法としては、加熱温度の均一性が得られれば特に限定はなく、ホットプレート上に密着して保持したり、ホットプレートとの間にわずかな気層を設けてホットプレートと平行になるように保持する方法を用いることができる。また、オーブンのような特定の空間全体を加熱する装置内に静置したり当該装置内を通過させる方法でも良い。なお、フィルムコーター等を用いる場合には、乾燥ゾーンを長くして加熱時間を十分にとることができるようにすることが好ましい。
加熱温度としては一般に、100℃以上の高温が必要となるが、基材の耐熱性から150℃程度までとすることが好ましい。ただし、耐熱性に特化したフィルム等を基材の材料として用いれば、150℃以上の高温での加熱も可能である。
上記(iii)の方法は、放射線の照射により液晶性組成物中の液晶分子を光重合させて偏光選択反射層を硬化させる方法である。この方法では、放射線として、電子線や紫外線等を条件に応じて適宜用いることができる。通常は、装置の容易性等の観点から紫外線が好ましく用いられ、その波長は250〜400nmである。ここで、紫外線を用いる場合には、液晶性組成物に上述したように光重合開始剤が添加されていることが好ましい。なお、液晶性組成物に添加される光重合開始剤の添加量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲であることが好ましい。
以上のような一連の工程(塗布工程、配向処理工程及び固化処理工程)を行うことにより、単層の偏光選択反射層を備えた投影スクリーンを製造することができるが、上述した一連の工程を繰り返すことにより、複数層の偏光選択反射層を備えた投影スクリーンを製造することが可能である。ここで、光の拡散性を有する偏光選択反射層上に、さらに偏光選択反射層を塗布した場合、下層の配向状態が継続されることから、配向制御をする層を間に設ける必要は特にないが、例えば易接着層等の他の層を形成しても良い。
また、本発明に用いられる投影スクリーンは、必要に応じて、紫外線吸収層を備えていても良い。紫外線吸収層を形成する方法としては、例えば、紫外線吸収層を形成する紫外線吸収層形成用塗工液を偏光選択反射層の投影機側上に塗布し、紫外線吸収層を形成する方法が挙げられる。上記塗布方法としては、具体的には、ロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、スライドコート法、ダイコート法、スリットコート法、浸漬法等が挙げられ、また、基材がプラスチックフィルムである場合には、ロールツーロールのフィルムコーティングであっても良い。
さらに、本発明に用いられる投影スクリーンにおいては、必要に応じて、密着性向上層、反射防止層、防眩層およびハードコート層等を形成することにより、これらを有する投影スクリーンを製造することができる。
3.投影機
次に、本発明の投影システムに用いられる投影機について説明する。本発明に用いられる投影機は、上記投影スクリーンに光の濃淡により画像を映し出すことが可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば光源の前にフィルム等を配置することによって画像を形成する映写機のようなものであっても良い。本発明においては中でも、CRT方式等の自発光タイプ、液晶方式、DLP方式等のライトバルブタイプの投影機を用いることが好ましい。また、射出される光を円偏光させる場合には、例えば液晶方式の投影機であれば、射出させる直線偏光を円偏光に変換する位相差板を透過させることによって、ほとんど光量の損失がなく、円偏光に変換することが可能となる。この際、用いられる位相差板としては、λ/4位相差板を使用することが好ましく、具体的には視感度が最も高い550nmに合せて、137.5nmであるものを用いることが好ましい。さらに、射出されるRGB全ての波長に適用させることから、広帯域型λ/4位相差板であることが特に好ましい。広帯域型λ/4位相差板としては、上述の「1.外光スクリーン (2)位相差板」で述べた位相差板が同様に好適に用いられる。ここで、上記位相差板は、投影機内部に組み込まれているものであっても良く、また外付けで射出口に装着させるものであっても良い。
また、CRT方式およびDLP方式の投影機は、射出光が偏光制御されていないことから、光学素子を介して直線偏光にし、位相差板を配置することが好ましい。この場合、投影機自体の光量は半減するが、コントラスト向上効果を得ることが可能となる。
B.外光スクリーン
次に、本発明の外光スクリーンについて説明する。本発明の外光スクリーンは、上述した投影システムに用いられるものである。上記外光スクリーンを使用することにより、所望の円偏光を得ることができ、さらに、上記直線偏光板の透過軸が鉛直方向であることから、防眩効果が得られ、投影システム内部から外部への視認性を向上させることができる。
本発明の外光スクリーンは、直線偏光板と位相差板を有するものであるが、これらの部材等については「A.投影システム」において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本発明の外光スクリーンの形態としては、上記投影システムにおいて所望の効果を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、外光スクリーンの外界側に位置する直線偏光板の表面に粘着層を設け直接外光入射口に貼付する貼付型外光スクリーンであっても良く、上記のように外光入射口に直接貼付せず、外光入射口の近辺にブラインドやパーティションとして使用する外光スクリーンであっても良い。上記貼付型外光スクリーンは、例えば、投影システムを常設した会議室等に好適に使用することができ、また、ブラインドやパーティションとして使用される外光スクリーンは、例えば、普段は外光を充分に取り入れる窓等に対して設置することにより、投影システム使用時のみ所望の効果を得ることができることから、家庭用投影システム等に好適に使用することができる。また、本発明の外光スクリーンを構成する直線偏光板は、通常、延伸処理により製造されることから、横長の外光入射口に対する外光スクリーンを工業上優位に生産することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
本発明の投影システムの一例を示す説明図である。 本発明における偏光選択反射層の光学的機能を説明するための説明図である。 本発明における偏光選択反射層が有するコレステリック液晶構造の構造的な不均一性を説明するための説明図である。 本発明における基材の他の例を示す概略断面図である。 本発明における投影スクリーンの他の例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 … 投影スクリーン
2 … 投影機
3 … 直線偏光板
4 … 位相差板
5 … 外光スクリーン
6 … 外光
7 … 右円偏光
8 … 左円偏光

Claims (3)

  1. 基板と、前記基板上に形成され、右円偏光または左円偏光を拡散反射する偏光選択反射層とを有し、投影機から照射された映像光を反射して映像を表示する投影スクリーンと、
    前記投影スクリーン上に映像光を投射する投影機と、
    外光入射口に取り付けられ、外界側から直線偏光板および位相差板の順で配置され、前記偏光選択反射層が拡散反射する円偏光とは逆向きの円偏光を外光から構成する外光スクリーンとを有する投影システムにおいて、
    前記直線偏光板の透過軸が、鉛直方向であることを特徴とする投影システム。
  2. 前記偏光選択反射層は、コレステリック液晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の投影システム。
  3. 前記外光スクリーンは、可視光領域の光に対して円偏光を構成する広帯域型円偏光板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投影システム。
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