JP4147454B2 - エポキシ樹脂組成物の予備硬化物、硬化物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は活性エステル化合物を硬化剤として用いる優れた低誘電正接や接着性を有するエポキシ樹脂組成物の予備硬化物、硬化物及びその製造方法に関する。本発明のエポキシ樹脂組成物の予備硬化物および硬化物は、各種の成形材料、特に通信用機器などの低誘電性材料に好ましく用いられる。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、その優れた接着性、絶縁性、耐熱性および耐薬品性から、プリント配線板などの電気絶縁材料に大量に使用されている。しかし、このエポキシ樹脂も、最近の高周波通信、例えば1GHz以上での高周波通信での伝送損失を効果的に抑制するために、更なる低誘電正接化が望まれている。
【0003】
特公平4―8444号公報や特開平10−101775号公報には、活性エステル化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として用いる硬化性エポキシ樹脂組成物が記載されている。これらの活性エステル化合物を硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は、水酸基が生じないために、他の硬化剤を用いて硬化させたエポキシ樹脂組成物の硬化物に比して、低誘電性で低吸水性である優れた特性を有する。
【0004】
しかしながら、これらの活性エステル化合物を用いる硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物であっても、高周波域、例えば1GHzでの誘電正接は3×10−3以下にならず、更なる改善が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、活性エステル化合物を硬化剤として用いるエポキシ樹脂組成物を低誘電性材料として開発すべく種々研究したが、活性エステル化合物を硬化剤として用いるエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤を併用しても、得られる硬化物のガラス転移温度や接着強度が安定せず、また場合によっては硬化に長時間を要するなど、その硬化が不安定である問題があった。
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、安定して優れた低誘電正接、接着強度および耐熱性を与えるエポキシ樹脂組成物の硬化物の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
エポキシ樹脂組成物は通常1質量%程度の残留溶媒を含んだ状態で予備硬化させ、さらに得られた予備硬化物を必要に応じて硬化させて成形品である硬化物を得るのが一般的であり、環境上の配慮や気泡の発生抑制などを除いては、残留溶媒濃度を0.5質量%以下の低い水準に制御する必要はない。
【0008】
しかしながら、本発明者らは課題を解決するために鋭意研究した結果、活性エステル化合物を硬化剤として用いるエポキシ樹脂組成物の硬化系においては、エポキシ樹脂組成物中の残留溶媒量が、エポキシ樹脂組成物の硬化物の特性に重大な影響を及ぼすことを見出した。さらに、本発明者らは活性エステル化合物を硬化剤として用いるエポキシ樹脂組成物の予備硬化物の残留有機溶媒の含有量と、該予備硬化物を硬化させた硬化物の残留有機溶媒の含有量を一定値以下に制御し2つの残留有機溶媒含有量の差異を一定値以下に制御することによって、上記課題を解決できることを確認して本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂(A)、芳香環の水素原子の2〜4個をカルボキシル基で置換したものから選ばれる芳香族カルボン酸成分と、芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと芳香環の水素原子の2〜4個を水酸基で置換した多価フェノールとがモル比で100:0から10:90の範囲にあるフェノール成分とを原料として、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる構造を有する活性エステル化合物(B)、硬化促進剤(C)および有機溶媒(D)とからなるエポキシ樹脂組成物を予備硬化物の残留有機溶媒(x)の含有量が0.10質量%以下になるまで有機溶媒を揮散させながら予備硬化させ、得られた予備硬化物を更に加熱して硬化させ、得られた硬化物の残留有機溶媒の含有量(y)が0.10質量%以下で、かつ予備硬化物の残留有機溶媒の含有量(x)と硬化物の残留有機溶媒の含有量(y)との差値が0.02%以下であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物の硬化物の製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を指し、一般にエポキシ樹脂と称されているものであれば、特に制限なく使用することができる。具体例としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニル型エポキシ樹脂、
【0013】
テトラフェニル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を含有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコールや水添ビスフェノールAなどのアルコールのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンなどのポリアミンを原料としたグリシジルアミン型エポキシ樹脂およびそれらの混合物が挙げられる。
【0014】
本発明に用いる活性エステル化合物(B)は、分子中に2個以上のエステル基を含み、水酸基などの親水性基を含まず、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであれば、特に制限なく使用できる。これらは、多価カルボン酸及び多価フェノールの少なくとも一種を他のフェノール性水酸基を有する化合物またはカルボン酸とエステル化して得られる。ここでいう多価カルボン酸とは、2つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸であり、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸や、芳香族化合物の水素原子の2〜4個をカルボキシル基で置換した芳香族カルボン酸が挙げられる。多価フェノールとは、2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物であり、芳香族化合物の水素原子の2〜4個を水酸基で置換したものが挙げられる。
【0015】
特に本発明で好適に用いられる活性エステルとしては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン等の芳香環の水素原子の2〜4個をカルボキシル基で置換したものから選ばれる芳香族カルボン酸成分と、上に挙げた芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと芳香環の水素原子の2〜4個を水酸基で置換した多価フェノールとがモル比で100:0から10:90の範囲にあるフェノール成分を原料として、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが挙げられる。
【0016】
芳香族エステルを得る際には、反応を迅速化するために、芳香族カルボン酸をカルボン酸ハロゲン化物の形で縮合反応に用いても差し支えない。
【0017】
活性エステル化合物(B)の配合量は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基と活性エステル化合物(B)のエステル基のモル比が、0.8〜1.1であると好ましい。0.8未満であると、エポキシ樹脂の硬化が不完全になり易く好ましくなく、1.1を越えると誘電特性が悪化する傾向にあり、好ましくない。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤である活性エステル化合物(B)と共に硬化促進剤(C)を用いる。硬化促進剤(C)により、エポキシ樹脂(A)と活性エステル化合物(B)との反応が効率的に進行する。
【0019】
硬化促進剤(C)は、エポキシ樹脂の硬化に用いられる一般的な硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤(C)の例を挙げれば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどの有機ホスファイト化合物、
【0020】
エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどのアミン、1,8ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(以下DBUと略称する)などのアミン類及びDBUとテレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸等との塩、テトラブチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウム塩、3−フエニル−1,1−ジメチル尿素などの尿素化合物、水酸化カリウムなどの塩基類、カリウムフェノキシドやカリウムアセテートなどのクラウンエーテルの塩等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
【0021】
硬化促進剤(C)の配合量は通常、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して0.01〜12質量部であり、好ましくは0.1〜4質量部、更に好ましくは、0.2〜1質量部である。硬化促進剤(C)の配合量が0.01質量部未満では硬化反応が遅く、12質量部を越えると保存安定性が低下し、またエポキシ樹脂の自己重合が生じ易い。
【0022】
活性エステル化合物(B)は通常固体であり、温度を上げてもエポキシ樹脂(A)に溶解させることは困難であるため、エポキシ樹脂(A)との組成物を好適に得るためには、活性エステル化合物(B)を溶解する有機溶媒(D)を用いる必要がある。
【0023】
活性エステル化合物(B)を溶解する有機溶媒(D)としては、沸点が220℃以下であることが好ましく、トルエン、キシレン、ヘキサンなどの炭化水素系の有機溶媒、ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)、アニソールなどのエーテル系の有機溶媒、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系の有機溶媒、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルアセトアミドなどのアミド系有機溶媒、エチレングルコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコール系有機溶媒、塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン含有有機溶媒などが挙げられる。
【0024】
エポキシ樹脂組成物を調製するには、有機溶媒(D)中にエポキシ樹脂(A)、活性エステル化合物(B)及び硬化促進剤(C)を混合し撹拌すれば良く、撹拌の際の温度条件は、0〜50℃であればよい。撹拌設備としては、バッチ式、連続式のいずれでも良く、公知慣用の撹拌設備で容易に混合ができる。エポキシ樹脂(A)、活性エステル化合物(B)及び硬化促進剤(C)の添加の順は特に制限されない。
【0025】
有機溶媒(D)の量は、有機溶媒(D):[エポキシ樹脂(A)、活性エステル化合物(B)及び硬化促進剤(C)の総質量]の質量比が10:90〜80:20の範囲で用いることが好ましい。このようにして、均一で、含浸や塗工・乾燥に好適に供されるエポキシ樹脂組成物が得られる。組成物中にはシリカなどの無機充填材が配合されて良く、その他にもレベリング剤、消泡剤、顔料などが適宜添加されて良い。またガラス繊維やアラミド繊維などの主として無機物から成る賦形剤を添加して予備硬化させてもよい。
【0026】
また、エポキシ樹脂組成物をシートに塗工後、所定温度で有機溶媒を揮散させながら予備硬化させて得た予備硬化物をラミネートしたシートを、複数枚積層して、更に加熱成形することによりエポキシ樹脂組成物を完全に硬化させ、エポキシ樹脂硬化物をラミネートした積層体を得ることもできる。これらのシートまたは積層体は低い誘電正接および吸水性に加えて、高い接着強度や耐熱性を有し、低誘電性材料として有用である。
【0027】
本発明では、エポキシ樹脂組成物の予備硬化物および硬化物中の残留有機溶媒の含有量を0.10質量%以下にすることにより、高いガラス転移温度と接着強度および低い誘電正接を有するエポキシ樹脂組成物の硬化物を安定して得ることが出来る。本発明の残留有機溶媒の含有量は、下式により求める。
【0028】
【数式1】
残留有機溶媒の含有量(質量%)=[(有機溶媒の質量)/(エポキシ樹脂、活性エステル化合物、硬化促進剤および有機溶媒の総質量)]×100
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の製造は、有機溶媒を揮散させながら予備的に硬化を行う、いわゆる予備硬化でエポキシ樹脂組成物中に含まれる有機溶媒の大部分が除去される。その後の加熱成形・硬化工程では、密閉状態に近い形で加熱されるために、溶媒が揮散しにくい。従って、本発明の活性エステル化合物を硬化剤として用いるエポキシ樹脂組成物の硬化系においては、予備硬化物の残留有機溶媒の含量を0.10質量%以下に制御し、予備硬化物と該予備硬化物を硬化させた硬化物の残留有機溶媒の含量を0.10質量%以下にすることが重要である。
【0030】
また、予備硬化物の残留有機溶媒の含量(x)と該予備硬化物を硬化させた硬化物の残留有機溶媒の含量(y)を、その差異(x−y)が0.02質量%以下であるように制御することが好ましい。予備硬化物と硬化物の残留有機溶媒の含量が0.10質量%を越えると、得られる硬化物の物性が低下し易い。また、予備硬化物の残留有機溶媒の含量(x)と該予備硬化物を硬化させた硬化物の残留有機溶媒の含量(y)の差異(x−y)が0.02質量%を超えると、同様に得られる硬化物の物性が低下し易い。
【0031】
予備硬化物の残留溶媒を0.10質量%以下にするための加熱条件は、該条件に影響を与える因子が、エポキシ樹脂組成物に用いる溶媒の蒸気圧、エポキシ樹脂組成物中の溶媒の拡散速度、塗工厚、乾燥設備内の風量など数多いために、一律に規定できないが、通常、40〜160℃で1〜80分間の乾燥条件が例示でき、堅型または横型の一般的な連続式乾燥機で、段階的に行うことが好ましい。
【0032】
有機溶媒(D)の除去を短時間で行うためには、エポキシ樹脂組成物の塗工厚みを1000μm以下で行い、乾燥設備中で加熱と同時に送風を行うことが好ましい。特に連続式乾燥設備を用いる場合は、エポキシ樹脂組成物を塗工したシートの進行方向と逆向きの風を送ると、溶媒除去が加速され、効果的である。また加熱温度は一定である必要はなく、例えば、初めは30〜100℃で行い(予備硬化工程中の1次乾燥工程)、続いて100〜200℃の温度で加熱する(予備硬化工程中の2次乾燥工程)ことが好ましい。
【0033】
このような段階的な加熱操作により、塗工したエポキシ樹脂組成物の外表面が一時に硬化して、内部の有機溶媒(D)の拡散及び揮散を妨げる不具合を防止することができる。こうした、段階的な加熱による予備硬化方法は2段以上、例えば2〜5段の乾燥設備を用いて行えるが、いたずらに段数を増やすと設備コストとスペースが嵩むことになり好ましくなく、2段階での加熱方法が実用的である。また各段階で昇温プログラムを設定することも可能である。また各段の乾燥設備は連結させることが好ましい。
【0034】
乾燥設備内の温度分布は出来るだけ小さいことが好ましく、温度分布の幅は10℃未満であると好ましく、5℃未満であるとさらに好ましい。温度分布が大きいと、乾燥時間を増大させたり、硬化物の不均一化を招きやすい。
【0035】
用いるエポキシ樹脂、活性エステル化合物及び硬化促進剤、溶媒種などのエポキシ樹脂組成物の成分、乾燥設備の態様、塗工厚み及び目的とするエポキシ樹脂の予備硬化の度合い等にもよるが、例えば、THFを溶媒とする場合は、30〜100℃、3〜20分間で一次乾燥させ、次いで100〜160℃、6〜15分間で二次乾燥させることにより予備硬化させる。またトルエンを溶媒とする場合は、50〜110℃で5〜30分間で一次乾燥させ、次いで100〜160℃、12〜40分間二次乾燥させることにより予備硬化させる。
【0036】
その後の予備硬化物の完全硬化は、130〜250℃の温度で、0.5〜15時間で行い、一般的なバッチプレス機や連続式のダブルベルトプレス機などが使用でき、例えば0〜50MPaの加圧下で行われて良い。また真空式のプレス機を用いることも出来る。
【0037】
このようにして得られる、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、1GHz、25℃での誘電正接が3×10−3以下であり、極めて低い誘電正接を示す。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の接着強度は通常1.0kN/m以上であり、優れた接着性を有する。
【0038】
【実施例】
以下に実施例と比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、もとより本発明はこれらの範囲に限定されるものではない。また、用いた測定方法と評価法は以下の通りである。
【0039】
(残留溶媒量の測定方法)
エポキシ樹脂組成物の硬化物(積層体)またはエポキシ樹脂組成物の予備硬化物(エポキシ樹脂の予備硬化物をPETフィルムにラミネートしたシート)の1質量部を採取し、アニソール99質量部に30℃、24時間浸漬させ、残留溶媒を抽出したアニソール溶液を得た。得られたアニソール溶液をガスクロマトグラフィー分析し各々の残留溶媒量を求めた。
【0040】
ガスクロマトグラフィーの条件を以下に示す。
ガスクロマトグラフィー装置:島津製作所株式会社製、GC−14B
カラム:島津製作所株式会社製、5%PEG20M
キャリアーガス:窒素ガス、流量50mL/分
カラム温度条件:THFとトルエンを定量する場合は3分間100℃で、次いで10℃/分で200℃まで昇温後、200℃を保持して分析した。NMPを定量する場合は、常に160℃で保持して分析した。
【0041】
[ガラス転移温度(Tg)の測定方法]
DMS(セイコー電子工業株式会社製、DMS200:動的粘弾性測定機、曲げモード、1kHz)を用い、5℃/分で昇温して測定したtanδ曲線のピーク温度をTgとした。
【0042】
(誘電正接の測定方法)
アジレント・テクノロジー株式会社製のインピーダンス/マテリアルアナライザ、HP4291Bにアジレント・テクノロジー株式会社製のテストフィクスチャー、16453Aを接続し、25℃、1GHzでの誘電正接を測定した。
【0043】
(接着強度の測定方法)
オートグラフAGS−H(島津製作所株式会社製)を用いて、幅1cm×長さ10cmに切り出した積層体のPETフィルムを樹脂硬化物から垂直の方向に5mm/分の速度で5cm引き剥がし、その強度最小値を接着強度として求めた。
【0044】
<製造例1>(活性エステルB−1の製造)
撹拌棒、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口セパラブルフラスコ中に、0.2モル(33.23g)のイソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナルケミカル株式会社製)と、0.4モル(57.67g)のα−ナフトール(スガイ化学株式会社製)及び0.48モル(49.00g)の無水酢酸(和光純薬工業株式会社製)を入れ、30分間窒素を流通し系内を窒素で置換した。
【0045】
次いで、窒素を流通しながら撹拌下に昇温し、145℃にて3時間保持して、α−ナフトールの水酸基のアセチル化を行った。プロトンNMRにより水酸基がほぼアセチル化していることを確認した。更に、昇温し230℃となったところで1時間保持し、徐々に250℃まで3時間かけ昇温し、脱酢酸反応を行いエステル化を行った。得られた生成物を、沸騰メタノールにて3回洗浄し、続いて60℃にて17時間真空乾燥することにより活性エステル化合物(B−1)63gを得た。
【0046】
<製造例2>(活性エステルB−2の製造)
5Lビーカー中に0.3モル(79.64g)のトリメシン酸塩化物(東京化成株式会社製)を溶解した1Lの塩化メチレン溶液と、0.9モル(191.15g)の4−α-クミルフェノールと38.00g水酸化ナトリウムを溶解した2Lの水溶液とを入れ、イカ株式会社製のホモジナイザーT50で4000回転/分で撹拌した。得られた沈殿物を、沸騰メタノールにて3回洗浄し、続いて60℃にて17時間真空乾燥して活性エステル化合物(B−2)190gを得た。
【0047】
(実施例1〜5、比較例1〜10)
エポキシ樹脂、活性エステル化合物および硬化促進剤を表1に示す配合量で30℃で撹拌混合して、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を厚み38μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ユニチカ製)に約600μmの厚さで流延塗工し、表2と3に記載の条件で予備硬化させてPETフィルムにエポキシ樹脂をラミネートしたシートを調製した。調製したシートを樹脂側が重なる様に積層し、バッチ式熱プレス中で190℃、4MPaで2時間加熱下に加圧成形して積層体を調製した。
実施例および比較例の乾燥条件と残留溶媒の測定結果を表2と表3に、また、得られた硬化物(積層体)のTg、接着強度および誘電正接を表4に示した。
【0048】
なお、用いたエポキシ樹脂は以下の通りである。
HP−7200H:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量278g/eq)、
N−660:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量205g/eq)
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
実施例の予備硬化物と硬化物の残留溶媒濃度は、いずれも0.10質量%以下、かつ予備硬化物と硬化物の残留溶媒濃度の差異(x−y)値は0.02%以下であり、本発明の硬化物は安定的に高いTgと接着強度および3×10−3以下の低い誘電正接を示した。
【0054】
これに対して、予備硬化物と硬化物の残留溶媒濃度が0.10質量%を超え、また予備硬化物と硬化物の残留溶媒濃度の差異(x−y)値も0.02%未満に制御されなかった比較例の硬化物は実施例に比べ、Tgも接着強度も低く、更に誘電正接も高い値を示した。これらから、本発明の製造方法により製造されるエポキシ樹脂組成物の硬化物が安定して、優れた低誘電正接、高い接着強度および耐熱性を有することが明らかである。
【0055】
【発明の効果】
本発明は、安定した低誘電正接、優れた接着強度および耐熱性を与えるエポキシ樹脂組成物の予備硬化物、硬化物および該硬化物の製造方法を提供することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物の予備硬化物および硬化物は、各種の成形材料、特に通信用機器などの低誘電性材料として有用である。
Claims (2)
- エポキシ樹脂(A)、芳香環の水素原子の2〜4個をカルボキシル基で置換したものから選ばれる芳香族カルボン酸成分と、芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと芳香環の水素原子の2〜4個を水酸基で置換した多価フェノールとがモル比で100:0から10:90の範囲にあるフェノール成分とを原料として、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる構造を有する活性エステル化合物(B)、硬化促進剤(C)および有機溶媒(D)とからなるエポキシ樹脂組成物を予備硬化物の残留有機溶媒(x)の含有量が0.10質量%以下になるまで有機溶媒を揮散させながら予備硬化させ、得られた予備硬化物を更に加熱して硬化させ、得られた硬化物の残留有機溶媒の含有量(y)が0.10質量%以下で、かつ予備硬化物の残留有機溶媒の含有量(x)と硬化物の残留有機溶媒の含有量(y)との差値が0.02%以下であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物の硬化物の製造方法。
- エポキシ樹脂組成物の硬化物の1GHzでの誘電正接が3×10−3以下である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物の製造方法。
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