JP4146745B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、医療用等の磁気共鳴イメージング装置に係り、特に垂直磁場式の磁気共鳴イメージング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気共鳴イメージング装置は均一磁場空間に配置された被検体に対して電磁波を照射すると、被検体内の原子核が電磁波に共鳴して電磁波を吸収または放出する特性を利用して被検体内の断層像等の画像を生成するものである。
【0003】
このような磁気共鳴イメージング装置には、静磁場を発生させる磁石構造から2つのタイプが存在する。一つは、ソレノイド型のコイルを用いてコイル内部の水平方向に静磁場を発生させる水平磁場式磁気共鳴イメージング装置である。しかし、水平磁場式は被検体がトンネル状の細長い空間に挿入されるため、被検体に対して閉塞感を与えることになり、また撮像中に被検体の撮像部位に接近できないという問題がある。一方、もう一つのタイプに、静磁場を形成する一対の磁石が被検体を挟んで垂直方向に対向して配置される垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置がある。垂直磁場式においては、撮像時に被検体が配置される撮像空間の開口部を広く取ることで被検体に与える閉塞感は緩和される。また、撮像部位が位置する磁場中心に対して磁石外部から接近できるため、撮像中に手術等の侵襲的処置を行うインターベンショナルMRが可能となる。
【0004】
ここで、垂直磁場を発生させる一対の磁石には永久磁石を用いたもの、常電導コイルを用いたもの、超電導コイルを用いたものが存在する。永久磁石、及び常電導コイルを用いたタイプはその材料特性や発熱の観点から発生できる最大磁場強度に限界があり、現在最も高い磁場強度が得られるのは超電導コイルを用いた磁石である。
【0005】
垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置には、被検体の原子核に位置情報を与える傾斜磁場発生用コイルと、被検体に電磁波を照射する高周波磁場パルス照射用コイルが上下1対ずつ必要である。
【0006】
また、傾斜磁場発生用コイル、高周波磁場パルス照射用コイルは、従来例では図5に示すようにそれぞれ磁石同様上下に対向して配置され、開口部に向かって磁石、傾斜磁場発生用コイル、高周波磁場パルス照射用コイルの順に並んでいる。製品では、さらに表面をFRP製のカバーで覆い、ガントリ開口高さh1は上下カバー間の距離となるが、この距離は上下高周波磁場パルス照射用コイル間の距離によって決まる。前述の通り、この開口高さを大きくすることで、垂直磁場式のメリットは大きくなる。ただし単純に上下磁石間の距離を大きくするのでは、静磁場強度が弱くなってしまい、静磁場強度に比例するMR画像の信号雑音比が小さくなってしまう。このため、より高い開口高さを実現するためには、静磁場発生用磁石は大型化し、価格や重量の増大を招く。
【0007】
これに対し、[特許文献1]では、図6に示すように、磁石周縁部に環状の凸部を設け、この内側に形成される凹状のスペースに傾斜磁場発生用等コイルを収容することができるMRI用磁場発生装置が提案されている。これによれば、必要とされる起磁力の例えば70%程度を供給する上下磁石周縁部に位置するコイル間の距離を図5に比べて小さくできるため、所要起磁力が小さくなり、磁場発生装置が小型かつ安価になる。ただし、起磁力を周縁凸部に集中させ過ぎると、凸部幅Wが大きくなり、ガントリ開口h1だけ離れて対向する平面によって作られる空間が広い範囲にわたることになる。被検体が感じる閉塞感を小さくするには、この対向する平面によって作られる空間ではできるだけ狭いことが望まれる。
【0008】
【特許文献1】
特開平10-99296号公報
【0009】
これに対し、[特許文献2]では、図7に示すように、磁石内部に分割型のメインコイル2a,2b,2c,2d,2e,2fを有し、磁石中央部分に作られる円錐状の窪みに、傾斜磁場発生用コイルを収容することで、磁石間距離h2だけ離れて対向する平面によって作られる空間を最小限に抑え、開放性を高めることができるとしている。ここで、最も大きい起磁力を供給するメインコイル2a間の距離を小さくできるので、図6同様、小型かつ安価な磁場発生装置が実現できる。しかし、この構成に高周波磁場パルス照射用コイルを配置して決定されるガントリ開口は高周波磁場パルス照射用コイルの分だけ小さくなり、被検体が感じる閉塞感は軽減されない。ここで、コイル2bは、コイル2aの内側に位置したコイル2aとは逆向きの電流が流れており、コイル2aが作る辺縁部の磁場を増強させるはたらきをする補償コイルである。コイル2c,2d,2e,2fは撮像空間の磁場均一度を高めるよう、磁石中央の円錐状の窪みに沿って配置される。またシールドコイル3は、磁石最外部に位置しメインコイル2が磁石外部に作る磁場とは逆向きの磁場を発生させて、外部への磁場漏洩をシールドするはたらきを持つ。
【特許文献2】
WO0227345A1
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、中央部に円錐状の窪みを有する磁石に、高効率な傾斜磁場発生コイルおよび高周波磁場パルス照射用コイルを搭載した垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置を実現することに有る。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、中央部に円錐状の窪みを有する静磁場発生用磁石に対して、略円錐状の傾斜磁場発生用コイルと盤状の高周波パルス磁場照射用コイルの少なくとも一部が磁石の窪み内に収容されることで解決される。さらに好ましくは、上記コイル配置のうち、傾斜磁場発生用コイルの周縁部が円環状に突起し、高周波磁場パルス照射用コイルの全体もしくは一部が、この傾斜磁場発生用コイル辺縁突起部内側に形成される円錐台状の窪み内に収容されているものが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る、実施形態について以下説明する。
図1は本発明の第1実施形態を水平方向から見た断面図である。一対の対称な静磁場発生用磁石1が垂直方向に対向して配置される。磁石1が超電導タイプの磁石の場合、磁石1内部には、上下対向して配置された円環状のメインコイルが配置される。メインコイルは、大きくは3〜5のコイルに分かれており、撮像空間の磁石均一度を高めるための最適な配置がなされている。ここで、上下磁石間の距離h1を小さく、かつ、このh1だけ離れて対向する平面によって形成される空間を最小限に抑え、磁石外周部Bは丸みを帯びた形状とすることができるので、被検体の感じる開放感を高めることができる。
【0013】
ここで例えば上下磁石1によって静磁場強度1T、磁石間距離h2=450mmを実現するには、上下各磁石の最大外径はφ2200mm、高さは600mmであり、窪み円錐は底面がφ1200mm、高さは225mmである。また、磁石1の中心部はメインコイルの最小内径に応じた貫通穴が空いており、この貫通穴の径は、φ300mmである。
【0014】
図2には、図1-A部の詳細を示す。傾斜磁場発生用コイル4は外形が略円錐台状であり、その側面の傾斜は、上記磁石1が有する窪み面の傾斜形状に等しい。ここで、傾斜磁場発生用コイル4は、パルス状に磁場を発生させる必要があるが、この際、コイル周辺部の導電体にはこの磁場の変動を妨げるように渦電流が流れ、結果として、生じる傾斜磁場の立ち上がり時間が長くなる。この立ち上がりの遅れは、近年の高速撮影技術を実施する上で大きな問題となる。この渦電流の発生を防ぐために、傾斜磁場発生用コイル4は、内部に、撮像空間に目的の磁場を発生させるメインコイル5と、メインコイル5とは逆向きの磁場を発生させるシールドコイル6を有し、周辺部へのパルス状傾斜磁場の漏洩を防ぐアクティブシールシールドタイプのコイルを構成している。メインコイル5は、傾斜磁場発生用コイル4の開口に近い面に位置し、目的の傾斜磁場を発生させる。シールドコイル6は、傾斜磁場発生用コイル4の円錐台側面に位置し、コイルの巻数はメインコイル5より少ないが、その他の構成はメインコイル5にほぼ等しい。ここで例えばこの円錐台の形状は、上面と下面はそれぞれφ90mm、φ900mmの円であり、高さは170mmである。また同コイル4には、電気的な制御を行う制御ケーブル8と、同コイル4で発生するジュール熱による温度上昇を抑えるための冷却水用パイプ9が必要である。ここで、同コイル4の上面は上記ケーブル8とパイプ9の取り出しや、同コイル4の支持台を取り付けるのに有意な形状をしているのが好ましい。円錐台上面から取り出したケーブル類は、磁石1が有する中心貫通穴を通って配線される。このケーブル類の取り出し及び配線方法によって、ガントリ開口には何の影響を及ぼすことなく、傾斜磁場発生用コイル4を静磁場発生用磁石1の窪み内に配置することができる。
【0015】
ここで、高周波磁場パルス照射用コイル9は、核スピンの共鳴周波数に等しい周波数で回転する回転磁場を水平方向に発生させる必要がある。これに対し我々は、特願2001-021988号公報において、照射効率が高く、照射均一性も良い、平面型バードケージコイルを提案している。なお、詳しいコイルパターンについては同特願2001-021988号公報を参照されたい。図2に示すように、このコイルメインパターン10が高周波磁場パルス照射用コイル8の開口に近い面に位置する。また、同照射コイル8は、外部から高周波ノイズが侵入することを防ぐために、照射する方向とは逆の面は電磁シールド11によってシールドされている。ここで、メインパターン10と電磁シールド11との距離が近づきかぎると本来目的とする照射の効率を下げてしまうため、この距離は、25mm以上にすることが望ましい。この高周波磁場パルス照射用コイル9は、例えば外径がφ850mmであり、高さは25mmである。
【0016】
これらの各コイルを、上記磁石1の窪みに、開口部に向かって傾斜磁場発生用コイル4、高周波磁場パルス照射用コイル9の順に配置し全体をカバー12で覆う。図2に示すように、高周波磁場パルス照射用コイル9のメインパターン面10が磁石開口高さに等しいか、僅かに低い高さに位置する。この状態で磁石1の窪み内に、傾斜磁場発生用コイル4、高周波磁場パルス照射用コイル9が内包されている。すなわち、開口高さh1は上下磁石間の最小距離h2によって決定される。
【0017】
図3は本発明の第2の実施形態を水平方向から見た断面図である。また、図3-A部の詳細を図4に示す。磁石1は第1実施形態に等しい形状を持つ。傾斜磁場発生用コイル4の外形は略円錐台状であり、その側面の傾斜は、上記磁石1が有する窪み面の傾斜形状に等しい。傾斜磁場発生用コイル4の周縁部は円環状に突起し、この辺縁突起部内側には円錐台状の窪みが形成される。この突起部は最大で磁石開口高さに等しい位置まで突起させる。例えばこの突起は高さにして、28mmである。ただし、上記円錐台状の窪みは、実施形態1と同形の高周波磁場パルス照射コイル9が収容されるような形状である。
【0018】
このような形状の傾斜磁場発生用コイル4では、円錐台側面に位置するシールドコイル6を図1に比べて、大きくすることが出来る。ここでアクティブシールドタイプのコイルはメインコイルに対してシールドコイルの外径が大きいほどメインコイル径方向に対するシールド効率が高くなる。本発明は、磁石1に内包される形で傾斜磁場発生用コイル4が配置されるので、メインコイル5の径方向に漏洩したパルス磁場は、磁石1内部の導電体に渦電流を生じさせる可能が有る。外径を大きくしたシールドコイル6は、この径方向の漏洩磁場を効率よくシールドすることができ、MR画像の画質を劣化させる渦電流によって形成される磁場成分を減少させることができる。
【0019】
また、傾斜磁場発生用コイル4の上記辺縁突起部にメインコイル5の一部を配置し、同コイルのインダクタンスを小さくすることも可能である。メインコイル5のインダクタンスは生じさせるパルス磁場の立ち上がり時間に大きく影響を与えるものであり、インダクタンスが小さく、立ち上がり時間が短ければ、MRI高速撮像技術が実施可能となる。
【0020】
一方、高周波磁場パルス照射用コイル9の外形は、磁場発生用コイル4が有する窪みに内包されるような、例えば、外径がφ850mmで、高さは25mmの円盤状である。この形状は、同コイル9の照射効率を低下させないようなメインパターン10とシールドパターン11の関係を保ちつつ、円錐台状の形状をしていても良い。
以上、本発明は第2の実施形態においても、開口高さh1は上下磁石間の最小距離h2によって決定される。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、中央部に円錐状の窪みを有する静磁場発生用磁石に対して、略円錐状の傾斜磁場発生用コイルと、円盤状の高周波パルス磁場照射用コイルが磁石の窪み内に収容できるため、ガントリ開口を磁石開口に等しくすることができる。すなわち上記磁石に対して最大のガントリ開口を実現できる。また、傾斜磁場発生用コイル制御ケーブル及び水冷用パイプを円錐台上面から取り出し、磁石中央貫通穴を通して配線することによって, ガントリ開口に対するこれらのケーブル類の影響はなく、被検体が感じる開放感を妨げることはない。さらに、傾斜磁場発生用コイルの周縁部を突起させ、メイン・シールド両コイル配置に有益なスペースを作ることで、シールド効率が高く、インダクタンスの低い、高効率化された傾斜磁場発生用コイルが実現し、MRI高速撮像技術が実施可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において、第1実施形態を適用する垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置を水平方向から見た断面図。
【図2】図1-A部の詳細図。
【図3】本発明において、第2実施形態を適用する垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置を水平方向から見た断面図。
【図4】図2-B部の詳細図。
【図5】 従来例である、垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置を水平方向から見た断面図。
【図6】従来例である、各種コイル収容用の凹状スペースを有する静磁場発生装置を水平方向から見た断面図。
【図7】従来例である、中央部に円錐状の窪みを有する磁石に、傾斜磁場発生用コイルを収納する磁気共鳴イメージング装置を水平方向から見た断面図。
【符号の説明】
1 静磁場発生用磁石、2a 磁石メインコイル、2b 補償コイル、2c,2d,2e,2f 補正コイル、 3 磁石シールドコイル、4 傾斜磁場発生用コイル、5 傾斜磁場メインコイル、6 傾斜磁場シールドコイル、7 傾斜磁場発生用コイル制御ケーブル、8 傾斜磁場発生用コイル水冷パイプ、9 高周波磁場パルス照射用コイル、10 照射コイルメインパターン、11 照射コイル電磁シールド、12 カバー

Claims (5)

  1. 中央部に略円錐台状の窪みを有する静磁場発生用磁石と、
    前記静磁場発生用磁石の略円錐台状の窪みに少なくとも一部が配置される傾斜磁場発生用コイルと、
    円盤状の高周波パルス磁場照射用コイルと、
    を有する垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置において、
    前記傾斜磁場発生用コイルは、第1の面と、前記第1の面より小さい第2の面とを有する略円錐台状の外形を有し、その周縁部は円環状に突起し、その周縁突起部内側であって前記第1の面内には円錐台状の窪みが形成されており、
    前記高周波パルス磁場照射用コイルの少なくとも一部は、前記傾斜磁場発生用コイルの円錐台状の窪みに配置されていることを特徴とする垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置。
  2. 請求項1記載の垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置において、
    前記傾斜磁場発生用コイルの電流ケーブルと水冷用パイプとが前記第2の面から取り出されており、
    前記静磁場発生用磁石は、前記前記傾斜磁場発生用コイルの電流ケーブルと水冷用パイプとが通る貫通穴を有していることを特徴とする垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置。
  3. 請求項1又は2記載の垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置において、
    前記傾斜磁場発生用コイルは、メインコイルとシールドコイルとを有し、
    前記シールドコイルの一部が前記周縁突起部に配置されていることを特徴とする垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置。
  4. 請求項1又は2記載の垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置において、
    前記傾斜磁場発生用コイルは、メインコイルとシールドコイルとを有し、
    前記シールドコイルの外径が前記メインコイルの外径より大きいことを特徴とする垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置。
  5. 請求項1又は2記載の垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置において、
    前記傾斜磁場発生用コイルは、メインコイルとシールドコイルとを有し、
    前記メインコイルの一部が前記周縁突起部に配置されていることを特徴とする垂直磁場式磁気共鳴イメージング装置。
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