JP4146112B2 - 冶金用水冷ランスおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼鉄の溶解および脱炭、脱燐などの操業時に用いられる冶金用水冷ランス、とくに製鋼用水冷ランスに関するものであるが、非鉄金属溶解用ランスおよび精錬用ランスとしても利用できるものを提供する。
【0002】
【従来の技術】
製鉄工場における製鉄,製鋼段階で用いられる溶解炉や脱炭容器,脱燐容器などに用いられている酸素ガス等の吹込み用ランスとしては、優れた耐摩耗性、耐熱性に加え、溶銑、溶鋼等の溶鉄が付着しにくいという特性が求められている。特に、ランスにおけるパイプ表面への溶鉄の付着、成長は、ランスの昇降を不能にするため、操業の上で極めて重要な問題である。
この対策として従来、▲1▼溶鉄の付着しにくい材質を選定する方法 (特開平4−88108 号公報) 、▲2▼表面粗度を制御する方法 (特開平 3−120544号公報) 、▲3▼各種表面処理皮膜を施工する方法、などが提案されている。そして、表面処理皮膜を施工する場合のうち、本発明の技術分野に属する溶射皮膜については、(a) Al2O3, Cr2O3などの酸化物系セラミック溶射皮膜を施工する方法 (特開昭59−23827 号公報、特開昭63−183254号公報、特開平 3−96342 号公報) 、(b) 酸化物サーメット溶射皮膜 (特開昭59−43811 号公報) 、窒化物系サーメット溶射皮膜 (特開平 8−199221号公報) を施工する方法などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した溶射皮膜の形成は、例えば、酸化物系セラミックスについては、耐熱性とともに溶鉄が付着しにくいという特性を示すものの、一方では機械的および熱衝撃性に弱く、作業中にしばしば剥離する欠点があった。また、窒化物系サーメットの溶射皮膜は、良好な密着性を有するが、耐酸化性に乏しいなどの欠点があった。そのため、今までのところ、ランスに対する要求性能を満たすような溶射皮膜は開発されていないのが実情である。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ランスパイプの外周面に被覆形成する皮膜として、高熱伝導率、高硬度、高耐摩耗性および皮膜密着性に優れた溶射皮膜を提案し、ランス機能がいつまでも衰えることなく長期間安定して使用することができる冶金用水冷ランスを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上掲の目的の実現に向けた研究の中で発明者らは、とくに、ランスパイプ外周面に形成する溶射皮膜の材質とその皮膜表面の研磨仕上げ精度が強く影響することを知見した。すなわち、本発明は、ランスの外周面に、基材との密着性がよく緻密で硬質の炭化物サーメットの皮膜を溶射法によって形成し、その後、その溶射皮膜の表面をRa:3.0 μm以下の鏡面もしくは平滑面に仕上げることとした。このように仕上げられた溶射皮膜の表面は、平滑度が高いため溶鉄粒子が付着しにくい上、良好な熱伝導性を発揮するため、水冷ランスの水冷作用が皮膜表面を効果的に伝わり、この皮膜の温度を常に低い温度に維持することができるようになり、高温環境下でも長期間にわたって安定して使用することができる。また、このような溶射皮膜は、硬質であるため、炉上方からの投入物の粒状銑鉄(以下、粒銑という)などの衝突によるエロージョン損傷に対しても強い抵抗力を発揮するものである。
そして、本発明では、このような特性を有する溶射皮膜をランスパイプの外周面上に形成するには、溶射熱源中を飛行する炭化物サーメット溶射粉末材料を、250m/s以上の速度に加速して、強い衝突エネルギーを付与することが必要であることがわかった。
【0006】
このような知見に基づいて開発した本発明は、ランスパイプの外周面が、炭化物サーメット溶射皮膜にて被覆されていると共に、その溶射皮膜表面の粗さRaが3.0μm以下であることを、基本的な構成とする冶金用水冷ランスである。
【0007】
また、本発明は、ランスパイプの外周面が、耐熱合金のアンダーコートと、その上に被覆された炭化物サーメット溶射皮膜のトップコートとの複合溶射皮膜からなると共に、該トップコート表面のRaが 3.0μm以下であることを特徴とする冶金用水冷ランスである。
【0008】
なお、本発明において、前記炭化物サーメットの溶射皮膜は、WC,Cr3C2,Cr7C3,Cr23C6,TiC,VC,SiC,B4C,TaCおよびZrCから選ばれるいずれか1種または2種以上の炭化物:60〜95mass%と、Ni,Cr,CoおよびAlから選ばれるいずれか1種の金属もしくは2種以上の金属からなる合金:40〜5 mass%とを混合してなる複合粉末材料を溶射して形成したものであること、アンダーコート用耐熱合金が、Ni,Cr,Co,AlおよびYから選ばれる2種類以上の金属を含む合金であること、上記炭化物サーメット溶射皮膜の膜厚は30〜300 μmであること、そして、気孔率が 1.5%以下であること、がそれぞれ好ましい実施態様となる。
【0009】
かかる冶金用水冷ランスは、水冷式ランスパイプの外周面に、炭化物サーメットを、溶射熱源中における溶射粒子の飛行速度が 250m/s以上となる条件で溶射して、膜厚30〜300 μm、気孔率 1.5%以下、表面粗さRa 3.0μm以下の溶射皮膜を被覆形成することにより製造することができる。
【0010】
とくに、本発明は、水冷式ランスパイプの外周面に、先ずアンダーコートとして耐熱合金の溶射皮膜を被覆した後、さらにそのアンダーコート上に、トップコートとして炭化物サーメットを、溶射熱源中における溶射粒子の飛行速度が250m/s以上となる条件で高速フレーム溶射して、膜厚30〜300μm、気孔率1.5%以下、表面粗さRa3.0μm以下の複合溶射皮膜を被覆形成する方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、ランスとくにランスパイプの外周面を、炭化物サーメットの溶射皮膜で被覆することを第1の特徴とする。本発明において、炭化物サーメットの溶射皮膜に着目した理由は、そもそも炭化物は一般に硬く、かつ熱伝導率が大きいため、ランスパイプの外周面に成膜したとき、良好な耐摩耗性を示すと共に、高熱伝導性のために水冷効果が大きくなり、ランスパイプ表面の温度を低く抑えることができる点にある。ただし、炭化物単体では、溶射時に金属のような溶融状態を呈しないために、緻密な皮膜の形成が困難である。そのため本発明では、この炭化物に対して耐熱性の金属、例えばNi,Cr,Co,Al,Yのうちから選ばれるいずれか1種の金属もしくは2種以上の金属からなる合金を、5〜40mass%添加したサーメット粉末を用いることとした。なお、炭化物としては、WC,Cr3C2,Cr23C6,Cr7C3,TiC,VC,SiC,B4C, TaCおよびZrCのうちから選ばれる1種または2種以上の炭化物を60〜95mass%程度を配合する。
【0012】
本発明において、上記炭化物サーメット溶射皮膜はまた、その表面温度を低く抑えるために、気孔率を限定することが望ましい。一般に、上記炭化物の中には、WCのように、 450℃以上の環境では酸化物 (WO3)を生成して消耗するとともに、皮膜を構成するWC粒子の結合力が低下することによって粒子が局部的に脱落して粗面化し、溶鉄が付着しやすくなるものがある。したがって、炭化物サーメット溶射皮膜の表面温度は、可能な限り低く抑えることが望ましい。この対策として本発明では、溶射皮膜の気孔率を制御して、溶射皮膜中に含まれる空気 (層)の存在による熱伝導率の低下を防ぐことにしたのである。
【0013】
そのために本発明では、溶射法として高速フレームの熱源を用い、熱源中を飛行する炭化物サーメット溶射材料粒子の飛行速度が、250 m/s 以上となる高速とし、ランスパイプの外周面の基材中に、強い運動エネルギーによって突き刺さるように付着させるとともに、その際の運動エネルギーの一部を熱エネルギーに変化させることによって、気孔率が小さく、密着力の大きい溶射皮膜を形成させることにしたのである。なお、溶射材料粒子の飛行速度は、炭化物の種類と粒径の影響を受け、また高速フレーム溶射ガンの種類と溶射条件によっても大きく変化するため、特に上限を制限しないこととした。
【0014】
例えば、上述した条件を満足する溶射条件で被覆したCr3C2−20Ni−5Cr 溶射皮膜の熱伝導率は5W/m・Kを示し、2〜5%の気孔率を有する金属系 (例えば50Ni−Gr合金) 溶射皮膜の 2.5W/m・Kよりもはるかに高くなることが判明した。
なお、高速フレーム法以外の溶射法でも、炭化物サーメット溶射材料粒子の飛行速度を250 m/s 以上にできる溶射法であれば、本発明に適合する上記溶射皮膜を形成することができるので、高速フレーム溶射法に限定するものではなく、例えば、爆発溶射法なども使用することができる。
【0015】
以上説明したように、炭化物サーメット溶射材料粒子の飛行速度を250m/s以上にすると、溶射皮膜の気孔率は1.5%以下にすることができ、溶射皮膜の表面温度をランスパイプの水冷作用によって 200℃以下に制御することができるようになる。
【0016】
本発明の第2の特徴は、炭化物サーメット溶射皮膜の表面粗さを、溶鉄が付着しにくい粗さにすることにある。上述したように、本発明においては、優れた水冷効果によって、ランスパイプの外周面に形成された炭化物サーメット溶射皮膜の温度が低く保持されている。従って、スピッティングなどによる溶鉄粒子の付着機会がより増加することになる。この点に関し、発明者らの知見によると、かかる溶射皮膜の表面粗さが、溶鉄粒子の付着堆積速度に大きな影響を与えることがわかっている。そこで発明者らは、溶射皮膜の材質と表面粗さの相違による溶鉄粒子の付着力との関係を実験的に求めてみた。その結果、実施例でも詳述するように、炭化物サーメット溶射皮膜については、その表面粗さが、Raで3.0μm以下に仕上げることが有効であり、このことによって溶鉄粒子の付着力は著しく小さくなることを確認した。
なお、溶射皮膜の表面粗さの仕上げにおいては、気孔率の高い皮膜の場合、気孔部がピットとなって表面に残留して、これが溶鉄粒子の付着を促進する現象が確認されているので、上述したように、気孔率の小さい(≦1.5%)皮膜の形成は、かかる表面仕上げの点からも有利に働くこととなる。
【0017】
次に、本発明は、他の実施形態として、ランスパイプの外周面に、まず耐熱合金を用いたアンダーコートを被覆形成し、ついで、そのアンダーコート上に、前記炭化物サーメット溶射皮膜を積層した複合溶射皮膜を被覆形成したものであってもよい。即ち、本発明の炭化物サーメット溶射皮膜は、上述したように、ランスパイプの外周面に直接、溶射法によって成膜して使用することができるが、その他に、該ランスパイプの外周面に対し、予めまず耐熱合金のアンダーコートを好ましくは溶射法によって施工し、その後、そのアンダーコートの上に上記炭化物サーメットをトップコートとして溶射施工して複合皮膜とした場合でも、十分に発明の目的を達成することができる。
【0018】
本発明において、炭化物サーメット溶射皮膜の膜厚は、直接的に単層で形成する場合も、また複合皮膜にした場合も、該炭化物溶射皮膜は30〜300 μmが好適である。その理由は、30μmより薄い場合は気孔率が高くなるうえ、均等な成膜ができない。一方、300 μmより厚くしても、その効果が飽和するので、経済的に不利である。
【0019】
なお、アンダーコート用の耐熱合金は、Ni,Cr,Co,AlおよびYから選ばれる2種類以上の金属からなる合金を用いることがよく、このアンダーコートもまた膜厚は30〜250 μm程度とすることが好適である。膜厚30μm以下では、均等な成膜が困難であり、一方、250 μm厚以上のアンダーコートは、トップコートの炭化物サーメット溶射皮膜に対する水冷効果を減殺するので好ましくないからである。
【0020】
次に、本発明製造方法について説明する。
本発明において、ランスパイプの外周面に形成する炭化物サーメット溶射皮膜に求められる特性の1つとして、耐摩耗性、耐熱衝撃性の向上が挙げられる。この点、本発明では、上記炭化物サーメット溶射皮膜は炭化物を主成分としているため、ランスパイプの基材 (例えば SS400) に比較すると極めて高い硬度を有し、粒銑の衝突による摩耗作用に対しても強い抵抗力を発揮する。このような溶射皮膜は、例えば、高速フレーム溶射法によって、溶射粒子の飛行速度が250 m/s 以上となる高速度での溶射条件で成膜することが必要である。このような溶射条件の下で成膜した、例えば、WC−12mass%Coの溶射皮膜は、HV:1100〜1250、WC−20mass%Ni−5mass%Crの溶射皮膜では、HV:950〜1050、Cr3C2−20mass%Ni−5 mass%Crの溶射皮膜では、HV:750〜900を示す。しかも、1500℃程度の溶鉄粒子の付着による熱衝撃が継続して負荷されるが、発明者らが行った実験あるいは実用環境での使用結果からは、ランスが水冷されていることもあり、十分な耐熱衝撃を有するものになることが確認されている。
【0021】
【実施例】
実施例1
この実施例では、水冷ランスの使用環境下における溶鉄のスピツティング現象による付着を実験質的に再現させるため、図1に示すような装置を用いた。すなわち、図示しない冷却機構と加熱機構とを備えた、鋼製ダクト1の一面に金属系、酸化物セラミックス系および炭化物サーメット系などの各種の溶射皮膜2を 100〜200 μm厚に形成し、その後、その溶射皮膜2 の表面に、ピアノ線(SWRS92A)を溶射材料3として、フレーム式溶射ガン4によって、前記溶射材料3を粒径30〜60μmの溶滴5として吹き付けた。その後、供試皮膜上に付着した溶鉄粒子を引き剥がすことによって、その付着力を比較した。ピアノ線の溶融粒子を、水冷ランスの使用環境で発生するスピッティングによる溶鉄粒子と見做したものである。なお、溶射皮膜の表面粗さは、すべて溶射状態のままであり、表面温度 150℃溶射熱源としてのフレーム温度1500〜1800℃、溶融粒子の飛行速度はアーク溶射で 100m/s 、プラズマ溶射 120〜150 m/s 、高速フレーム溶射 250〜300 m/s である。
【0022】
表1は、上記試験結果を要約して示したものである。この表に示す結果から明らかなように、溶射溶融粒子の付着力は、金属溶射皮膜 (No.1〜3)はすべて10MPa以上、酸化物系セラミックス溶射皮膜 (No.4〜6)が最も低く3〜6MPa、炭化物サーメット溶射皮膜 (No.7,8)で6〜8MPaであり、炭化物サーメット溶射皮膜は金属溶射皮膜に比べても全く遜色がなく、被覆材料として有望であることがわかった。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例2
実施例1の結果から、炭化物サーメット溶射皮膜が有望との見通しが得られたので、この実施例では、溶射材料としてWC−12mass%Coを用い、高速フレーム溶射法によって、粒子の飛行速度 300m/sの条件で 150μm厚の溶射皮膜を形成させた後、その溶射皮膜表面の粗さを、Ra≦0.1, 1.0, 3.0, 5.0μmに調整し、図1の実験装置によりピアノ線の溶射溶融粒子による付着とその引き剥がしに要する力を測定した。
【0025】
表2は、これらの結果を要約したもので、表面粗さRaを3.0μm以下に仕上げた溶射皮膜では、溶射溶融粒子の付着力が1〜4の範囲に止まっているのに対し、Ra 2.0、3.0μmの皮膜表面では溶融粒子の付着力が非常に高いことが判明した。
【0026】
【表2】
【0027】
実施例3
この実施例では、図1の装置を用いて、各種の炭化物サーメット溶射皮膜の表面粗さとピアノ線を溶射材料とする溶射溶融粒子の付着強さを調査した。即ち、供試炭化物として、WC、WC−Cr3C2, Cr3C2およびTiCを用い、その炭化物に添加する金属として、Co,NiおよびNi−Crを用いた炭化物サーメット溶射材料を、高速フレーム溶射法によって、熱源中を飛行する溶射粒子の速度を 350 m/sの条件で150 μm厚に形成し、その後、それぞれの表面をRa≦0.1, 1.5, 3.0, 5.0μmに仕上げたものを供試した。
【0028】
表3は、以上の結果を要約したものである。この結果においても炭化物の種類およびバインダー金属の添加量、種類に関係なく、溶射溶融粒子の付着力は表面粗さの影響を受け、Ra:3.0 μm以上であれば付着力は弱く、容易に引き剥がすことができた。つまり、Ra≦1.5 μmの炭化物系サーメット溶射皮膜の場合、溶滴の剥離性が優れていることがわかった。
【0029】
【表3】
【0030】
実施例4
この実施例では、実施例1〜3の実験室試験の成果を確認するため、実際の溶解炉用ランスパイプの外周面に、表面粗さをRa 1.0μmに仕上げた、WC−12mass%Coの溶射皮膜、およびアンダーコートとして、33Ni−21Cr−9Al− 0.5Y−残Ni (数字はmass%) を高速フレーム溶射法によって、100 μm厚に施工した後、その上にWC−12mass%Coの溶射皮膜をトップコートとして100 μm厚に形成し、この表面もRa−1.0 μmに仕上げた。
実際の溶解炉では、炉の中心位置に配設されるランスに対し、多量の粒銑が接触するため、この粒銑がランスに衝突することによって、甚だしく摩耗する現象があり、この実施例が適用した溶解炉では、無処理のSS400 鋼製ランスの使用実績では、約20,000tの粒銑の投入によって、使用不可能となっていた経緯がある。
【0031】
また、この実施例では、比較例として水冷式ランスパイプの外周面に大気プラズマ溶射法による Al2O3・Cr2O3皮膜を 200μm厚に形成し、表面をRa 1.0μmに仕上げたものも供試した。
投入粒銑13,000tの運転結果によると、無処理のランス部材は甚だしく磨耗し交換寸前の状態であった。そして、比較例として供試した Al2O3・Cr2O3溶射皮膜の場合は、粒銑による摩耗は殆ど認められず、スピッティングによる溶鉄の付着量も無処理ランスの40〜60%に軽減したが、溶射皮膜を構成する粒子の相互結合力が衝撃に弱いため、皮膜に亀裂が発生し、局部的に剥離した。これに対し本発明に適合する構成のWC−12mass%Coおよび耐熱合金のアンダーコートを施工しその上にWC−12mass%Coを形成した溶射皮膜は、いずれも投入粒銑により摩耗は認められず、また溶銑の付着率は無処理ランスの約16%にとどまっており、長期間にわたって使用可能であることが実証された。また、使用後の溶射皮膜の表面は、溶射粒子の脱落および亀裂の発生は全く認められなかった。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、水冷ランスの外周面に炭化物サーメット溶射皮膜を直接形成したり、耐熱合金のアンダーコートを介して炭化物サーメット溶射皮膜を形成したものは、それらの表面をRa:3.0 μm以下の粗さに調整した場合、高硬度で良好な密着性と熱伝導率を有するので、実用環境中における粒銑等の衝突による摩耗によく耐え得るとともに、溶銑粒子の付着,成長を効果的に抑制する作用を発揮させることができる。この結果、本発明の炭化物サーメット溶射皮膜を備えた水冷ランスは、長期間にわたって安定した品質を維持できるので、水冷ランスの早期取替えによる作業の中断とランスの消耗品化による経費の支出抑制を可能とすることができ、生産性の向上とコストダウンに資するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 溶射皮膜表面への溶鉄付着力を試験する装置の略線図である。
【符号の説明】
1 鋼製ダクト
2 金属系・酸化物などの溶射皮膜を形成した面
3 ピアノ線 (溶射材料)
4 フレーム式溶射ガン
5 ピアノ線の溶滴
Claims (2)
- ランスパイプの外周面が、
Ni , Cr , Co , Al およびYから選ばれる2種類以上の金属からなる耐熱合金のアンダーコートと、その上に被覆された、WC , Cr 3 C 2 , Cr 7 C 3 , Cr 23 C 6 , TiC,VC,SiC , B 4 C,TaC および ZrC から選ばれる1種または2種以上の炭化物: 60 〜 95mass %と、 Ni , Cr , Co および Al から選ばれるいずれか1種の金属もしくは2種以上からなる合金: 40 〜 5mass %とからなり、かつ膜厚が 30 〜 300 μm、気孔率が 1.5 %以下の炭化物サーメット溶射皮膜のトップコートとからなる高速フレーム溶射に係る複合溶射皮膜にて被覆され、
該トップコート表面の粗さRaが3.0μm以下であることを特徴とする冶金用水冷ランス。 - 水冷ランスの外周面に、先ずアンダーコートとして、 Ni , Cr , Co , Al およびYから選ばれる2種類以上の金属からなる耐熱合金の皮膜を被覆した後、さらにそのアンダーコート上に、トップコートとしてWC , Cr 3 C 2 , Cr 7 C 3 , Cr 23 C 6 , TiC,VC,SiC , B 4 C,TaC および ZrC から選ばれる1種または2種以上の炭化物: 60 〜 95mass %と、 Ni , Cr , Co および Al から選ばれるいずれか1種の金属もしくは2種以上からなる合金: 40 〜 5mass %とを混合してなる複合粉末材料を、溶射熱源中における溶射粒子の飛行速度が250m/s以上となる条件で高速フレーム溶射して、膜厚30〜300μm、気孔率1.5%以下、表面粗さRa3.0μm以下の複合溶射皮膜を被覆することを特徴とする冶金用水冷ランスの製造方法。
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