JP4144195B2 - レーダ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、CW妨害波やノイズ妨害波が到来する電子妨害環境下にて、コヒーレントな複数のパルス波を送信して目標物体からの反射パルスである所望波を受信する場合、上記妨害波を除去して目標信号の検出を行うレーダ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のレーダ装置としては、例えばDimitris G. Manolakisら著「Statistical and Adaptive Signal Processing」(McGraw-Hill, 2000)やTim J. Noharaら著「Adaptive Mainbeam Jamming Suppression for Multi-Function Radars」(IEEE National Radar Conference, 1998)に示されたものがある。図6は、上記Manolakisらの文献を元に示した従来のレーダ装置の一例を示した図である。また、図7及び図8、は上記Noharaらの文献を元に示した従来のレーダ装置の一例を示した図である。なお、レーダ装置における妨害波除去に着目していることから、上記図6及び7では受信系のみを示している。
【0003】
まず図6について説明する。同図において、1aは複数のM個のアンテナAnt#1〜Ant#Mから構成されるアレイアンテナ、2aは複数のM個の受信機Rx#1〜Rx#Mから構成され、それぞれ上記アレイアンテナへの到来波である所望波と妨害波を受信して、ビデオ信号に周波数変換し、A/D変換により距離に応じた処理単位であるレンジビン毎にデジタル信号に変換した受信信号を出力する受信機群、3は到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビンの上記受信信号および所望波の到来角を入力とし、アンテナ指向性が急激に落ち込むヌルを妨害波到来方向に形成するような荷重係数を求めて出力する荷重係数算出器、4aは上記受信信号および荷重係数とを入力とし、妨害波到来方向に対しヌルを有する受信ビーム形成を行い、目標信号を出力するビームフォーマである。
【0004】
次に、図7の動作の説明を示す。まず、一定のパルス繰返し間隔でN回の送受信を行い、受信においてはレンジビン毎に受信処理を行うものとする。このとき、着目レンジビン(以下、着目レンジビンと記す)の受信処理において、互いに無相関な所望波と妨害波が到来するような状況にあるとともに、他のレンジビンでは妨害波のみが到来する状況にあると想定する。
【0005】
まず、アレイアンテナ1aへの到来波である所望波、妨害波が受信機群2aに入力され、周波数変換によりビデオ信号に変換、さらにA/D変換によりデジタル信号に変換された着目レンジビンの受信信号を(x0(n), x1(n),…, xM-1(n))(nはサンプリング番号、サンプリング間隔は上記パルス繰返し間隔である。)とする。ここで、上記受信信号をまとめて受信信号ベクトルX(n)と呼ぶことにし、数1のように表す。ここでTは転置を表す記号である。
【0006】
【数1】
Figure 0004144195
【0007】
一方、他のレンジビン、即ち到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビンの受信ベクトルをXJ (r)(n)と表す。なお、rは着目レンジビン以外のレンジビンに対するレンジビン番号である。
【0008】
上記受信信号ベクトルXJ (r)(n)および所望波到来角qsが荷重係数算出器3に入力され、荷重係数(w0,w1,…,wM-1)が出力される。ここで上記荷重係数を荷重係数ベクトルと呼ぶことにし、数2の(2)のように表す。また、任意の到来角fに対し、上記アレイアンテナを構成するアンテナAnt#mのアレイ応答am-1(f)をとし、アレイ応答ベクトルa(f)を数2の(3)のように表す。
【0009】
【数2】
Figure 0004144195
【0010】
上記荷重係数ベクトルWの算出式を数3に示す。ここでHは複素共役転置、Rはレンジビン総数を表す。なお、(R-1)は、到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビン数であることに注意する。
【0011】
【数3】
Figure 0004144195
【0012】
次に、上記荷重係数ベクトルWおよび着目レンジビンの受信信号ベクトルX(n)はビームフォーマ4aへ入力され、数4に示す演算により妨害波到来方向にヌルを有する受信ビーム形成を行い、目標信号y(n)を出力する。
【0013】
【数4】
Figure 0004144195
【0014】
次に、図6について説明する。同図において、1bは3個のアンテナAnt#1〜Ant#3から構成されるアレイアンテナ、2bは3個の受信機Rx#1〜Rx#3から構成され、それぞれ上記アレイアンテナへの到来波である所望波1波、妨害波1波を受信して、ビデオ信号に周波数変換し、A/D変換によりレンジビン毎にデジタル信号に変換した受信信号を出力する受信機群、5aは到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビンの上記受信信号より妨害波ヌル空間への射影行列を算出するヌリング行列算出器、6aは上記受信信号と射影行列を入力とし、受信信号を妨害波ヌル空間への射影を行い、妨害波除去後受信信号を出力するベクトル射影器である。
【0015】
続いて図8について説明する。同図において、7aは到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビンの上記受信信号を入力とし、共分散行列を求めて、出力する共分散行列算出器、8aは上記共分散行列を入力とし、この固有値・固有ベクトル解析を行い、固有値・固有ベクトルを出力する固有値・固有ベクトル算出器、9aは上記固有値・固有ベクトルを入力とし、最大固有値とその固有ベクトルを選定し、この固有ベクトルを出力する妨害波空間選定器、10aは上記固有ベクトルを入力とし、妨害波ヌル空間への射影行列を算出して、出力する射影行列算出器である。
【0016】
次に、図7及び8の動作を説明する。まず、一定のパルス繰返し間隔でN回の送受信を行い、受信においてはレンジビン毎に受信処理を行うものとする。このとき、着目レンジビンの受信処理において、互いに無相関な所望波と妨害波が到来するような状況にあるとともに、他のレンジビンでは妨害波のみが到来する状況にあると想定する。
【0017】
Ant#1~Ant#3から構成されるアレイアンテナ1bへの到来波である所望波1波、妨害波1波がRx#1〜Rx#3から構成される受信機群2bに入力され、周波数変換によりビデオ信号に変換、さらにA/D変換によりデジタル信号に変換された着目レンジビンの受信信号を(x0(n), x1(n), x2(n))とする。ここで、上記受信信号をまとめて受信信号ベクトルと呼ぶことにし、数5のように表す。
【0018】
【数5】
Figure 0004144195
【0019】
一方、他のレンジビン、即ち到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビンの受信ベクトルをXJ (r)(n)と表す。
【0020】
次に、上記受信信号ベクトルXJ (r)(n)をヌリング行列算出器5aに入力し、共分散行列算出器7aにおいて、数6に示す共分散行列RJを求める。
【0021】
【数6】
Figure 0004144195
【0022】
続いて固有値・固有ベクトル算出器8aにおいて、上記共分散行列RJに関する固有値・固有ベクトルを求め、さらに妨害波空間選定器9aにおいて最大固有値に対応する固有ベクトルeJを選定する。このとき、上記固有ベクトルが張る部分空間を妨害波空間、その補空間を妨害波ヌル空間と呼ぶことにする。これより射影行列算出器10aにおいて、妨害波ヌル空間への射影行列PJnullが数7のように求めることができる。ここでIは単位行列である。
【0023】
【数7】
Figure 0004144195
【0024】
上記射影行列PJnullと着目レンジビンの受信信号ベクトルX(n)をベクトル射影器6aに入力し、数8に示す演算により、受信信号ベクトルを妨害波ヌル空間へ射影し、妨害波除去を行う。
【0025】
【数8】
Figure 0004144195
【0026】
なお、妨害波除去された受信信号ベクトルX'(n)の要素は(x0'(n), x1'(n), x2'(n))である。
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
まず、図6を用いて説明した従来のレーダ装置では、妨害波が送信ビームのメインビーム内に到来する場合、荷重係数は妨害波到来方向にヌルを形成しつつ、所望波方向への拘束条件に基づき、同方向へのアンテナ利得の保持をするような値となり、荷重係数の振幅が増大してしまう。このため、妨害波がサイドローブ方向から到来するような場合に比べ、受信ビーム形成後の目標信号における雑音成分が増加する。従って、サイドローブ方向から妨害波が到来するような場合より、信号電力対雑音電力比(以下、SNRと記す)が劣化してしまうという問題があった。
【0028】
また、図7及び8を用いて説明した従来のレーダ装置では、妨害波が複数の場合、妨害波空間が妨害波に対応する複数の固有値の張る部分空間となり、最大固有値に対応する固有ベクトルが張る部分空間とは異なってしまう。このため、妨害波ヌル空間への射影行列が正しく求まらず、複数の妨害波の除去が出来ないという問題があった。
【0029】
本発明は、上記のような問題点を解決するものであり、サイドローブ方向やメインビーム方向から到来する複数の妨害波に対して、SNR劣化なしに妨害波除去するレーダ装置を得ることを目的としている。
【0030】
【課題を解決するための手段】
第1の発明によるレーダ装置は、送信パルスを空中に送信し、反射物からの反射パルス、妨害波などの到来波を受信するアレイアンテナと、アレーアンテナより到来波を入力して、レンジビン毎にデジタル信号に変換した受信信号を出力する受信機と、受信機より入力した受信信号より共分散行列を求め、共分散行列より求めた固有値を、受信機の内部雑音電力の値を超える妨害波固有値と受信機の内部雑音電力の値に等しいまたはほぼ等しい雑音固有値とに分類し、妨害波固有値が張る部分空間に基づき、雑音固有値に対応する雑音固有ベクトルが張る妨害波ヌル空間への射影行列を算出し出力するヌリング行列算出器と、受信信号と射影行列とを入力とし、レンジビン毎に射影行列を用いて受信信号を妨害波ヌル空間へ射影して妨害波の除去を行い、妨害波除去後受信信号を出力するベクトル射影器とを備えたものである。
【0031】
第2の発明によるレーダ装置は、第1の発明において、到来波にクラッタからの反射パルスが含まれている場合に、受信信号を入力として、含まれているクラッタ反射波をデジタルフィルタで抑圧し、受信信号よりクラッタ反射波を取り除いたクラッタ抑圧後受信信号をヌリング行列算出器とベクトル射影器へ出力するクラッタ抑圧器を備えたものである。
【0032】
第3の発明によるレーダ装置は、第1もしくは2の発明において、妨害波除去後受信信号に基づき目標信号を検出した場合、妨害波除去後受信信号の到来方向の測角を行い、所望波到来方向の測角値を出力する測角装置を備えたものである。
【0033】
第4の発明によるレーダ装置は、第3の発明において、測角値に基づき、パルス変調された連続波に移相操作を施したものを送信パルスとして、アレイアンテナに出力する送信機と、測角値に指向する受信ビーム形成を妨害波除去後受信信号に対して行い、目標信号を出力するビームフォーマと、を備えたことを特徴とするものである。
【0035】
の発明によるレーダ装置は、第1から4の発明において、妨害波除去の処理対象のレンジビンにおける受信信号以外の受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とするものである。
【0036】
の発明によるレーダ装置は、第1から4の発明において、妨害波除去の処理対象のレンジビンとその周囲のレンジビンにおける受信信号以外の受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とするものである。
【0037】
の発明によるレーダ装置は、第1から4の発明において、妨害波除去の処理対象のレンジビン以外のレンジビンの内、所望波が存在するレンジビン以外における全てのレンジビンの受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とするものである。
【0038】
の発明によるレーダ装置は、第1から4の発明において、予め設定してある単一あるいは複数のレンジビンの受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とするものである。
【0039】
の発明によるレーダ装置は、第1から4の発明において、全てのレンジビンの受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とするものである。
【0040】
10の発明によるレーダ装置は、第1から4の発明において、送信を止めた場合に受信する妨害波のみの全てのレンジビンの受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とするものである。
【0041】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1を示す構成図である。図1において、11は送信周波数設定値と送信タイミングトリガとビーム指向角設定値とを出力する制御器、12は上記送信周波数設定値に基づく連続波を出力する周波数発振器、13は上記送信タイミングトリガに基づき上記連続波をパルス変調し、上記ビーム指向角設定値に基づく移相操作を施す送信パルスを出力する送信機、14は送受信を切換える送受切換器、1aは送受切換器を介し入力される送信パルスを空中に送信し、反射物からの反射パルス、妨害波などの到来波を受信する複数のアンテナから構成されるアレイアンテナ、2aは上記到来波を上記送受切換器を介して、ビデオ信号に周波数変換し、A/D変換によりレンジビン毎にデジタル信号に変換した受信信号を出力する複数の受信機から構成される受信機群、5bは到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビンの上記受信信号より妨害波ヌル空間への射影行列を算出するヌリング行列算出器、6bは上記受信信号と射影行列とを入力とし、受信信号を妨害波ヌル空間へ射影して妨害波の除去を行い、妨害波除去後受信信号を出力するベクトル射影器、4aは上記ビーム指向角設定値に指向する受信ビーム形成を上記妨害波除去後受信信号とに対して行い目標信号を出力するビームフォーマ、15は上記目標信号を入力とし、フーリエ変換による周波数解析を行い、目標のドップラ周波数に対応するドップラビンの目標ドップラ信号を出力する周波数解析器、16は上記目標ドップラ信号を入力とし、閾値処理による信号検出を行う信号検出器である。
【0042】
図2は、この発明の実施の形態1におけるヌリング行列算出器の構成図である。図2において、7bは到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビンの上記受信信号を入力とし、共分散行列を求めて、出力する共分散行列算出器、8bは上記共分散行列を入力とし、この固有値・固有ベクトル解析を行い、固有値・固有ベクトルを出力する固有値・固有ベクトル算出器、9bは上記固有値・固有ベクトルを入力とし、最大固有値とその固有ベクトルを選定し、この固有ベクトルを出力する妨害波空間選定器、10bは上記固有ベクトルを入力とし、妨害波ヌル空間への射影行列を算出して、出力する射影行列算出器である。
【0043】
以下に動作に関する説明をする。まず、一定のパルス繰返し間隔でN回の送受信を行い、受信においてはレンジビン毎に受信処理を行うものとする。このとき、着目レンジビンの受信処理において、互いに無相関な所望波及び妨害波が到来するような状況にあるとともに、他のレンジビンでは妨害波j0 (r)(n), j1 (r)(n),…, jKJ-1 (r)(n)のみが到来する状況にあると想定する。但し、アンテナ数Mと妨害波数KJとの間には、数9に示す関係が成立しているものとする。
【0044】
【数9】
Figure 0004144195
【0045】
まず、アレイアンテナ1aへの到来波である所望波、妨害波が受信機群2aに入力され、周波数変換によりビデオ信号に変換、さらにA/D変換によりデジタル信号に変換された着目レンジビンの受信信号を(x0(n), x1(n),…, xM-1(n))とする。ここで、上記受信信号をまとめて受信信号ベクトルと呼ぶことにし、数10のように表す。
【0046】
【数10】
Figure 0004144195
【0047】
一方、他のレンジビン、即ち、到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビンの受信ベクトルをXJ (r)(n)と表す。
【0048】
次に、Rx#mにおける受信機内部雑音をwm-1 (r)(n)とし、雑音ベクトルW(r)(n)を数11のように定義する。
【0049】
【数11】
Figure 0004144195
【0050】
また、妨害波を数12に示す妨害波ベクトルで表す。
【0051】
【数12】
Figure 0004144195
【0052】
ここで、上記妨害波の到来角をψ0, ψ 1,…,ψkJ-1とし、これら到来角は違いに異なるものとする。さらに、任意の到来角fに対し、上記アレイアンテナ1aを構成するアンテナAnt#mのアレイ応答am-1(f)をとし、アレイ応答ベクトルa(f)を数13のように定義する。
【0053】
【数13】
Figure 0004144195
【0054】
妨害波の上記アレイ応答ベクトルに関し、数14のようなアレイ応答行列AJを定義する。
【0055】
【数14】
Figure 0004144195
【0056】
よって、到来波の内の妨害波のみが存在するレンジビンにおける受信信号ベクトルXJ (r)(n)は、数15のように表すことができる。
【0057】
【数15】
Figure 0004144195
【0058】
次に、上記受信信号ベクトルXJ (r)(n)をヌリング行列算出器5bに入力し、共分散行列算出器7bにおいて、共分散行列RJを数16により求める。但し、s2は受信機Rx#mにおける受信機内部雑音電力である。
【0059】
【数16】
Figure 0004144195
【0060】
ここで、妨害波は互いに無相関であることから、行列JのランクはKJとなり、妨害波数に一致する。また、到来角も互いに異なるため、アレイ応答行列AJのランクもKJとなる。従って、Graham著「Matrix Theory and Applications for Engineers and Mathematicians」(Ellis Horwood,1979)にあるようにrank(B)≦rank(C)のときrank(BC)≦rank(B)であるので、上記行列AJJAJ HのランクもKJとなる。
【0061】
さらに、上記行列AJJAJ Hは非負定値エルミート行列であるので、その固有値zj(0≦j< KJ)は必ず正の実数となる。また、行列s2Iのランクは明らかにMであり、その固有値はM個のs2である。従って、上記行列AJJAJ Hと上記単位行列Iの和である上記共分散行列RJも非負定値エルミート行列となり、その固有値及び固有ベクトルに関しては、数17が成立する。
【0062】
【数17】
Figure 0004144195
【0063】
従って、固有値・固有ベクトル算出器8bにおいて固有値・固有ベクトルを求め、さらに妨害波空間選定器9aにおいて、固有値の大きさから、妨害波に対応する固有値、受信機内部雑音に対応する固有値とに分類する。ここで、これらをそれぞれ妨害波固有値、雑音固有値、また対応する固有ベクトルを妨害波固有ベクトル、雑音固有ベクトルと呼ぶことにする。
【0064】
妨害波固有値が張る部分空間、即ち妨害波空間は数17の(21)の性質により、雑音固有ベクトルが張る部分空間に直交する。ここで、雑音固有ベクトルが張る部分空間を妨害波ヌル空間と呼ぶことにする。
【0065】
従って、射影行列算出器10bにおいて、妨害波ヌル空間への射影行列PJNullは数18のように求まる。
【0066】
【数18】
Figure 0004144195
【0067】
よって、上記射影行列PJNullベクトル射影器6bに入力し、数19に示すように、着目レンジビンの受信信号ベクトルX(n)に上記射影行列PJNullを乗じることにより、妨害波除去後受信信号X'(n)が求まる。
【0068】
【数19】
Figure 0004144195
【0069】
次に、ビームフォーマ4aにおいて、数20のように妨害波除去後受信信号X'(n)に対し送信ビーム指向角qtxbeamに対する受信ビーム形成を行い、目標信号y(n)を得る。
【0070】
【数20】
Figure 0004144195
【0071】
続いて、上記目標信号y(n)を周波数解析器へ入力し、フーリエ変換による周波数解析を行う。このとき、振幅スペクトルが最大値となるドップラ周波数をfdとし、その最大値をY(fd)とし、それぞれ目標ドップラ周波数、目標ドップラ信号と呼ぶ。このとき、目標ドップラ信号Y(fd)は数21で表すことができる。
【0072】
【数21】
Figure 0004144195
【0073】
さらに、上記目標ドップラ信号Y(fd)を目標検出器11に入力し、閾値処理により目標の検出を行う。
【0074】
以上の説明にあるように、本実施の形態では、受信信号を入力とし、これより妨害波ヌル空間への射影行列を算出し、これを出力するヌリング行列算出器5bと、上記受信信号と上記射影行列とを入力とし、レンジビン毎に上記受信信号を妨害波ヌル空間へ射影して妨害波の除去を行い、妨害波除去後受信信号を出力するベクトル射影器6bとを備えたレーダ装置を構成して上記の処理を行うことにより、サイドローブ方向やメインビーム方向から到来する複数の妨害波に対して、SNR劣化なしに妨害波除去をし、目標信号の検出を行うことが出来る。
【0075】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2を示す構成図である。図において、図1及び図2に対応する部分は同一符号を付し、その詳細の説明は省略する。17は、受信機#1〜#Mからの出力である受信信号毎にクラッタ抑圧を行い、クラッタ抑圧後受信信号を出力するクラッタ抑圧器#1〜#Mで構成されるクラッタ抑圧器群である。
【0076】
以下に動作に関する説明をする。まず、一定のパルス繰返し間隔でN回の送受信を行い、受信においてはレンジビン毎に受信処理を行うものとする。このとき、着目レンジビンの受信処理において、互いに無相関な所望波、妨害波及びクラッタ反射波が到来するような状況にあるとともに、他のレンジビンでは妨害波j0 (r)(n), j1 (r)(n),…, jKJ-1 (r)(n)及びクラッタ反射波c0 (r)(n), c1 (r)(n),…, cKC-1 (r)(n)のみが到来する状況にあると想定する。但し、アンテナ数Mと妨害波数KJとの間には、実施の形態1の説明で示したとおり、数9に示す関係が成立しているものとする。
【0077】
まず、アレイアンテナ1aへの到来波である所望波、妨害波及びクラッタ反射波が受信機群2aに入力され、周波数変換によりビデオ信号に変換、さらにA/D変換によりデジタル信号に変換された着目レンジビンの受信信号を(xc0(n), xc1(n),…, xcM-1(n))とする。
【0078】
次に、上記受信信号(xc0(n), xc1(n),…, xcM-1(n))をクラッタ抑圧器群17に入力し、クラッタ抑圧器#mにより受信信号xcm(n)に含まれているクラッタ反射波を抑圧し、クラッタ抑圧後受信信号xm(n)を出力する。クラッタ抑圧はFIR型デジタルフィルタの原理に従って行われ、例えばMerrill I. Skolnikら著「Radar Handbook」(McGraw Hill,1989)によれば、建物、山、海面等の固定もしくは低速移動クラッタからの反射波を抑圧することができることが示されている。このようにして、クラッタ抑圧器群17からは、クラッタ抑圧後受信信号(x0(n), x1(n),…, xM-1(n))、即ち、数10のようにまとめて記述すればクラッタ抑圧後受信信号ベクトルX(n)が出力される。
【0079】
さらに、着目レンジビン以外の受信信号においても同様にして、クラッタ抑圧を行い、クラッタ抑圧後受信信号ベクトルXJ (r)(n)を出力する。ここで、着目レンジビン以外の受信信号に含まれる到来波数(KJ+KC)が、クラッタ抑圧後受信信号ベクトルXJ (r)(n)においては到来波数KJに削減されていることに注意する。
【0080】
上記クラッタ抑圧後受信信号X(n)もしくはXJ (r)(n)が出力された以降の動作は、実施の形態1の説明と同一であるので省略する。
【0081】
以上の説明にあるように、本実施の形態では、上記到来波にクラッタからの反射パルスが含まれている場合、受信機群2aからの出力である受信信号を入力とし、これに含まれるクラッタ反射波をデジタルフィルタで抑圧し、上記受信信号よりクラッタ反射波を取り除いたクラッタ抑圧後受信信号を出力するクラッタ抑圧器を備えたレーダ装置を構成したことにより、クラッタ反射波と妨害波とを合わせた到来波数(KJ+KC)がアンテナ数Mに一致もしくは上回ってしまい、上記射影行列が正しく求まらなくなることを防ぐとともに、クラッタ環境下においてクラッタを抑圧し、複数の妨害波をSNR劣化なしに妨害波除去し、目標信号の検出を行うことができる。
【0082】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3を示す構成図である。図において、図1、2及び3に対応する部分は同一符号を付し、その詳細の説明は省略する。18は、信号検出器からの探知ステータス及び妨害波除去後受信信号ベクトルX'(n)を入力とし、測角処理を行い、測角値を出力する測角器である。
【0083】
以下に動作に関する説明をする。信号検出器16までの動作の説明は、実施の形態1および2と同一であるので省略する。信号検出器16からの出力である探知ステータスが「目標信号あり」の場合、上記妨害波除去後受信信号ベクトルX'(n)を用いた測角処理を行い、所望波到来方向の測角値を出力する。測角処理は、例えばR.O.Schmit著「Multiple Emitter Location and Signal Parameter Estimation」(IEEE Trans. AP-34,3,1986)に示されているような方法により、高精度な測角値を得ることができる。
【0084】
これにより、本実施の形態では、妨害波除去後受信信号の到来方向の測角を行うための測角装置18を備えたレーダ装置を構成したことにより、電子妨害環境下において複数の妨害波をSNR劣化なしに妨害波除去し、目標信号の検出を行うとともに、所望波到来方向の測角値を求めることができる。クラッタ及び電子妨害環境下においても同様である。
【0085】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態を示す構成図である。図における符号は、全て図1〜4と同一符号を付してあるので、その詳細な説明は省略する。
【0086】
本実施形態において、測角器18までの動作の説明は、実施の形態3と同一であるので省略する。本実施形態では、所望波到来方向の測角値を制御器1に入力し、送信ビーム中心に目標が存在するように送信ビームの指向角を制御する。
【0087】
これにより、本実施の形態では、制御器1に上記測角値を入力し、これをビーム指向角設定値として用いるレーダ装置を構成したことにより、目標信号がビーム中心からずれていたことによる信号電力損失をなくすことができ、信号電力対雑音電力を改善した上での、電子妨害環境下での目標信号の検出を行うことが出来る。クラッタ及び電子妨害環境下においても同様である。
【0088】
実施の形態5.
実施の形態1〜4では、着目レンジビンを1レンジビンとしているが、目標のレンジ方向の長さがレンジビン分解能を超えるため、目標信号が着目レンジビンの周囲まで広がって存在する場合には、着目レンジビン及びその周囲のレンジビン以外のレンジビン、即ちゲート外レンジビンの受信信号ベクトルを用いて共分散行列を求める。
【0089】
即ち、着目レンジビン数をrtとすると、共分散行列RJは数22により求めることができる。
【0090】
【数22】
Figure 0004144195
【0091】
以上の説明にあるように、本実施の形態では、妨害波除去の処理対象として着目レンジビンとその周囲のレンジビンにおける受信信号以外の受信信号を用いて共分散行列を求める方法を用いるレーダ装置を構成したことにより、共分散行列RJを求めるのに用いる受信信号ベクトルXJ (r)(n)に、所望波を含む受信信号ベクトルが含まれてしまうことを防ぐことができ、より正確な共分散行列RJを用いた妨害波除去をし、目標信号の検出を行うことが出来る。
【0092】
実施の形態6
実施の形態1〜5では、共分散行列を求める際にゲート外レンジビンの受信信号ベクトルを用いるが、ゲート外レンジビン中の幾つかのレンジビンに目標信号が存在する場合には、これらを除いたゲート外レンジビンの受信信号ベクトルを用いて共分散行列を求める。
【0093】
即ち、着目レンジビン数をrt1とし、さらにゲート外レンジビン中の目標信号が存在するレンジビン数をrt2とすれば、共分散行列RJは数23により求めることができる。
【0094】
【数23】
Figure 0004144195
【0095】
以上の説明にあるように、本実施の形態では、妨害波除去の処理対象として着目レンジビン以外のレンジビンの内、所望波が存在するレンジビン以外における全てのレンジビンの受信信号を用いて共分散行列を求める方法を用いるレーダ装置を構成したことにより、共分散行列RJを求めるのに用いる受信信号ベクトルXJ (r)(n)に、所望波を含む受信信号ベクトルが含まれてしまうことを防ぐことができ、より正確な共分散行列RJを用いた妨害波除去をし、目標信号の検出を行うことが出来る。
【0096】
実施の形態7.
実施の形態1〜6では、共分散行列を求める際に着目レンジビン以外の受信信号ベクトルを用いるが、目標信号が存在しないことが既知である指定ゲート内の単一あるいは複数のレンジビンの受信信号ベクトルを用いて共分散行列を用いる。このような指定ゲート内レンジビンとしては、例えばレーダの性能上、目標信号が微弱なため受信機内部雑音に埋もれているレンジビンや、レーダ見通外距離のレンジビンがある。
【0097】
即ち、指定ゲート内のレンジビン数をr0とすれば、共分散行列RJは数24により求めることができる。
【0098】
【数24】
Figure 0004144195
【0099】
以上の説明にあるように、本実施の形態では、予め設定してある単一あるいは複数のレンジビンの受信信号を用いて共分散行列を求める方法を用いるレーダ装置を構成したことにより、指定ゲート内の受信信号ベクトルXJ (r)(n)で求めた共分散行列RJを1度求めてしまえば、着目レンジビンで受信処理毎に共分散行列を求めるための演算処理をせず、常に上記共分散行列RJを受信信号ベクトルX(n)に乗じて妨害波除去を行い、目標信号の検出を行うことが出来る。
【0100】
実施の形態8.
実施の形態1〜6では、共分散行列を求める際に着目レンジビン以外の受信信号ベクトルを用いるが、全レンジビンの中で目標信号の存在するレンジビン数が少ない場合には、共分散行列を求める際にこれらレンジビンの影響は小さいと想定できるので、全レンジビンの受信信号ベクトルを用いて共分散行列を用いる。
【0101】
即ち、目標信号の存在するレンジビン番号をq、その目標レンジビン総数をQとし、受信信号ベクトルをX (q)(n)とすれば、共分散行列RJは数25により求めることができる。
【0102】
【数25】
Figure 0004144195
【0103】
以上の説明にあるように、本実施の形態では、全てのレンジビンの受信信号を用いて共分散行列を求める方法を用いるレーダ装置を構成したことにより、全レンジビンの受信信号ベクトルXJ (r)(n)及びX (q)(n)で求めた共分散行列RJを1度求めてしまえば、各ゲート内レンジビンで受信処理毎に共分散行列を求めるための演算処理をせず、常に上記共分散行列RJを受信信号ベクトルX(n)に乗じて妨害波除去を行い、目標信号の検出を行うことが出来る。
【0104】
実施の形態9.
実施の形態1〜8では送信を行っているので、共分散行列を求める際の受信信号ベクトルを選ぶ際には必ず目標信号の存在を考慮するが、妨害波の到来に伴い送信を止め、このとき受信される妨害波のみの全てのレンジビンの受信信号ベクトルを用いて共分散行列を用いる。
【0105】
即ち、共分散行列RJは数26により求めることができる。
【0106】
【数26】
Figure 0004144195
【0107】
これにより本実施の形態では、送信を止めたときに受信される妨害波のみの全てのレンジビンの受信信号を用いて共分散行列を求める方法を用いるレーダ装置を構成したことにより、送信停止時の全レンジビンの受信信号ベクトルXJ (r)(n)で求めた共分散行列RJを1度求めてしまえば、各ゲート内レンジビンで受信処理毎に共分散行列を求めるための演算処理をせず、常に上記共分散行列RJを受信信号ベクトルX(n)に乗じて妨害波除去を行い、目標信号の検出を行うことが出来る。
【0108】
【発明の効果】
請求項1に関わる発明によれば、上記受信信号を入力して共分散行列を求め、上記共分散行列の固有値・固有ベクトル解析を行い、上記固有値が大きい1個あるいは複数個の妨害波固有値を選び、上記妨害波固有値に対応する妨害波固有ベクトルの張る部分空間をもとに補空間をなす妨害波ヌル空間への射影行列を算出、出力するヌリング行列算出器と、上記受信信号と上記射影行列とを入力して、上記レンジビン毎に上記受信信号を妨害波ヌル空間へ射影して上記妨害波の除去を行い、妨害波除去後受信信号を出力するベクトル射影器とを備えたレーダ装置を構成したことにより、サイドローブ方向やメインビーム方向から到来する複数の上記妨害波に対して、SNR劣化なしに上記妨害波除去を行うことが出来るという効果がある。
【0109】
また、請求項2に関わる発明によれば、上記到来波にクラッタからの反射パルスが含まれている場合に、上記受信信号を入力して、含まれているクラッタ反射波をデジタルフィルタで抑圧し、上記受信信号よりクラッタ反射波を取り除いたクラッタ抑圧後受信信号を出力するクラッタ抑圧器を備えたことにより、クラッタ環境下においても、クラッタを抑圧し、サイドローブ方向やメインビーム方向から到来する複数の上記妨害波に対して、SNR劣化なしに上記妨害波除去を行うことが出来るという効果がある。
【0110】
また、請求項3に関わる発明によれば、上記妨害波除去後受信信号の到来方向の測角を行うための測角装置を備えたことにより、電子妨害環境下、もしくはクラッタ及び電子妨害環境下においても、複数の上記妨害波をSNR劣化なしに上記妨害波除去し、上記目標信号の上記測角値を求めることが出来るという効果がある。
【0111】
また、請求項4に関わる発明によれば、測角値に基づいて送信ビームの移相操作、受信ビーム形成を行うことにより、上記目標信号がビーム中心からずれていたことによる信号電力損失をなくすことができ、信号電力対雑音電力を改善した上で、電子妨害環境下、もしくはクラッタ及び電子妨害環境下においても、複数の上記妨害波をSNR劣化なしに上記妨害波除去し、目標検出を行うことが出来るという効果がある。
【0113】
また、請求項に関わる発明によれば、上記妨害波除去の処理対象の上記レンジビンにおける上記受信信号以外の上記受信信号を用いて共分散行列を求めることにより、上記共分散行列を求めるのに用いる上記受信信号ベクトルに、所望波を含む上記受信信号ベクトルが含まれてしまうことを防ぐことができ、より正確な上記共分散行列を求めることが出来るという効果がある。
【0114】
また、請求項に関わる発明によれば、上記妨害波除去の処理対象の上記レンジビンとその周囲の上記レンジビンにおける上記受信信号以外の上記受信信号を用いて共分散行列を求めることにより、上記共分散行列を求めるのに用いる上記受信信号ベクトルに、所望波を含む上記受信信号ベクトルが含まれてしまうことを防ぐことができ、より正確な上記共分散行列を求めることが出来るという効果がある。
【0115】
また、請求項に関わる発明によれば、上記妨害波除去の処理対象の上記レンジビン以外のレンジビンの内、所望波が存在する上記レンジビン以外における全ての上記レンジビンの上記受信信号を用いて共分散行列を求めることにより、上記共分散行列を求めるのに用いる上記受信信号ベクトルに、所望波を含む上記受信信号ベクトルが含まれてしまうことを防ぐことができ、より正確な上記共分散行列を求めることが出来るという効果がある。
【0116】
また、請求項に関わる発明によれば、予め設定してある単一あるいは複数の上記レンジビンの上記受信信号を用いて共分散行列を求めることにより、上記レンジビン内の上記受信信号ベクトルで求めた上記共分散行列を1度求めてしまえば、着目している上記レンジビンで受信処理毎に上記共分散行列を求めるための演算処理をなくすことが出来るという効果がある。
【0117】
また、請求項に関わる発明によれば、全ての上記レンジビンの上記受信信号を用いて共分散行列を求めることにより、上記共分散行列を1度求めてしまえば、着目している上記レンジビンで受信処理毎に上記共分散行列を求めるための演算処理をなくすことが出来るという効果がある。
【0118】
また、請求項10に関わる発明によれば、送信を止めた場合に受信する上記妨害波のみの全ての上記レンジビンの上記受信信号を用いて共分散行列を求めることにより、上記共分散行列を1度求めてしまえば、着目している上記レンジビンで受信処理毎に上記共分散行列を求めるための演算処理をなくすことが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示すレーダ装置の構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1におけるヌリング行列算出器の構成図
【図3】 この発明の実施の形態2を示すレーダ装置の構成図である。
【図4】 この発明の実施の形態3を示すレーダ装置の構成図である。
【図5】 従来のレーダ装置を示す構成図である。
【図6】 従来のレーダ装置を示す構成図である。
【図7】 図6の従来のレーダ装置におけるヌリング行列算出器の構成図である。
【図8】 図6の従来のレーダ装置におけるヌリング行列算出器の構成図の一部である。
【符号の説明】
1a、1b アレイアンテナ、 2a、2b 受信機群、
3 荷重係数算出器、 4a、4b ビームフォーマ、
5a、5b ヌリング行列算出器、6a、6b ベクトル射影器、
7a、7b 共分散行列算出器、 8a、8b 固有値・固有ベクトル算出器
9a、9b 妨害波空間選定器、 10a、10b 射影行列算出器
11 制御器、 12 周波数発振器、 13 送信機、
14 送受切換器、 15 周波数解析器、 16 信号検出器、
17 クラッタ抑圧器群、18 測角器

Claims (10)

  1. 送信パルスを空中に送信し、反射物からの反射パルス、妨害波などの到来波を受信するアレイアンテナと、
    上記アレーアンテナより到来波を入力して、レンジビン毎にデジタル信号に変換した受信信号を出力する受信機と、
    上記受信機より入力した受信信号より共分散行列を求め、上記共分散行列より求めた固有値を、上記受信機の内部雑音電力の値を超える妨害波固有値と上記受信機の内部雑音電力の値に等しいまたはほぼ等しい雑音固有値とに分類し、上記妨害波固有値が張る部分空間に基づき、上記雑音固有値に対応する雑音固有ベクトルが張る妨害波ヌル空間への射影行列を算出し出力するヌリング行列算出器と、
    上記受信信号と上記射影行列とを入力とし、上記レンジビン毎に上記射影行列を用いて受信信号を妨害波ヌル空間へ射影して上記妨害波の除去を行い、妨害波除去後受信信号を出力するベクトル射影器と、
    を備えたことを特徴とするレーダ装置。
  2. 上記到来波にクラッタからの反射パルスが含まれている場合に、上記受信信号を入力として、含まれているクラッタ反射波をデジタルフィルタで抑圧し、上記受信信号よりクラッタ反射波を取り除いたクラッタ抑圧後受信信号を上記ヌリング行列算出器と上記ベクトル射影器へ出力するクラッタ抑圧器を備えたことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  3. 上記妨害波除去後受信信号に基づき目標信号を検出した場合、上記妨害波除去後受信信号の到来方向の測角を行い、所望波到来方向の測角値を出力する測角装置を備えたことを特徴とする請求項1もしくは2記載のレーダ装置。
  4. 上記レーダ装置は、
    上記測角値に基づき、パルス変調された連続波に移相操作を施した上記連続波を送信パルスとして、上記アレイアンテナに出力する送信機と、
    上記測角値に指向する受信ビーム形成を上記妨害波除去後受信信号に対して行い、目標信号を出力するビームフォーマと、
    を備えたことを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
  5. 上記妨害波除去の処理対象の上記レンジビンにおける上記受信信号以外の上記受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載のレーダ装置。
  6. 上記妨害波除去の処理対象の上記レンジビンとその周囲の上記レンジビンにおける上記受信信号以外の上記受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載のレーダ装置。
  7. 上記妨害波除去の処理対象の上記レンジビン以外のレンジビンの内、所望波が存在する上記レンジビン以外における全ての上記レンジビンの上記受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載のレーダ装置。
  8. 予め設定してある単一あるいは複数の上記レンジビンの上記受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載のレーダ装置。
  9. 全ての上記レンジビンの上記受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載のレーダ装置。
  10. 送信を止めた場合に受信する上記妨害波のみの全ての上記レンジビンの上記受信信号を用いて共分散行列を求めることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載のレーダ装置。
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