JP4144187B2 - チオラクトン類の製造方法 - Google Patents

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  • Heterocyclic Carbon Compounds Containing A Hetero Ring Having Oxygen Or Sulfur (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チオラクトン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(2)
Figure 0004144187
(式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。)
で示されるチオラクトン類(以下、チオラクトン類(2)と略記する。)は、例えばビオチン(ビタミンH)中間体として重要である。かかるチオラクトン類(2)は、一般式(1)
Figure 0004144187
(式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるラクトン類(以下、ラクトン類(1)と略記する。)を加硫化することにより製造される。
【0003】
しかしながら、ラクトン類(1)を加硫化すると、例えば分子内に硫黄原子を2個以上含んだ二量体等のポリスルフィド体が副生するため、該ポリスルフィド体を目的とするチオラクトン類(2)に変換するため、酸性条件下、反応液を亜鉛で還元処理して、該ポリスルフィド体をチオラクトン類(2)に変換することが行われていた。
【0004】
しかしながら、還元反応が進行しにくい場合は、ポリスルフィド体の残存が多く、また還元反応が進行しやすい場合には、過還元が起こりやすく、チオラクトン類(2)の4位のカルボニル基がさらに還元された過還元体が副生するため、かかる還元反応において、ポリスルフィド体を十分還元するとともに、過還元を抑制する必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、ポリスルフィド体を十分還元するとともに、過還元を抑制して、目的とするチオラクトン類(2)を製造する方法について鋭意検討したところ、還元処理反応において、亜鉛に対する、鉛およびカドミウムの合計の存在量が、還元処理速度に大きく影響し、鉛およびカドミウムの存在量を特定範囲とすることにより、ポリスルフィド体を十分に還元するとともに、過還元体を抑制することができることを見出し、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、一般式(1)
Figure 0004144187
(式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。)
で示されるラクトン類を加硫化し、次いで酸性条件下、亜鉛で還元処理して、一般式(2)
Figure 0004144187
(式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるチオラクトン類を製造する方法において、亜鉛に対して、鉛およびカドミウムが、合計で650〜1500ppm存在している条件下で、還元処理を実施することを特徴とするチオラクトン類の製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の出発原料である下記一般式(1)
Figure 0004144187
(式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。)
で示されるラクトン類(以下、ラクトン類(1)と略記する。)は、光学活性体、光学活性体の混合物あるいはラセミ体のいずれであってもよく、目的に応じて選択される。
【0008】
上記一般式(1)で示されるラクトン類の式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいアラルキル基を表わすが、該式中、R1およびR2が同一であるラクトン類が実用上好ましい。
【0009】
置換されていてもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等の直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜8のアルキル基、これらアルキル基に、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基等が1個または2個以上置換したフルオロメチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、メトキシキメチル基等に代表されるハロアルキル基、アルコキシアルキル基等が挙げられ、炭素数1〜4の低級アルキル基が好ましい。
【0010】
置換されていてもよいアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基等の直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜8のアルケニル基、これらアルケニル基に、例えば上記したハロゲン原子、アルコキシ基等が1個または2個以上置換したハロアルケニル基、アルコキシアルケニル基等が挙げられ、炭素数1〜4の低級アルケニル基が好ましい。
【0011】
置換されていてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等、およびこれらフェニル基、ナフチル基等の芳香環に、上記したハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等が1個または2個以上置換したもの、例えばトルイル基、キシリル基、メトキシフェニル基、クロロフェニル基、ニトロフェニル基、1−メチルナフチル基、2−メチルナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トルイル基、ナフチル基が好ましい。
【0012】
置換されていてもよいアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、およびこれらを構成するフェニル基、ナフチル基等の芳香環に、上記したハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等が1個または2個以上置換したもの、例えばメトキシベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられ、ベンジル基、メトキシベンジル基が好ましく、なかでもベンジル基が特に好ましい。
【0013】
かかるラクトン類としては、例えばヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジメチルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジエチルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(n−プロピル)ヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジアリルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(2−ブテニル)ヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(2−メチル−3−ブテニル)ヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジフェニルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジトルイルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジベンジルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(メトキシベンジル)ヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(ブロモベンジル)ヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン等が挙げられ、1,3−ジアリルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジベンジルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(メトキシベンジル)ヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオンが好ましい。
【0014】
上記ラクトン類(1)を加硫化する方法としては、例えばラクトン類(1)とチオアミド類を塩基性物質の存在下に反応させる方法、ラクトン類(1)とチオアミド類とを、水硫化アルカリ、硫黄および塩基性物質の存在下に反応させる方法等が挙げられる。
【0015】
ラクトン類(1)とチオアミド類を塩基性物質の存在下に反応させて、ラクトン類(1)を加硫化する場合のチオアミド類としては、例えばチオアセトアミド、チオプロピオン酸アミド、チオ酪酸アミド等の脂肪族チオアミド類、チオベンズアミド、チオクロロベンズアミド、チオブロモベンズアミド、チオニトロベンズアミド、チオアミノベンズアミド、チオメトキシベンズアミド、チオヒドロキシベンズアミド等の芳香族チオアミド類等が挙げられる。かかるチオアミド類の中でも、脂肪族チオアミド類が好ましく、入手の容易さから、チオアセトアミドが特に好ましく用いられる。かかるチオアミド類の使用量は、一般式(1)で示されるラクトン類に対して、通常1モル倍以上、好ましくは1.1モル倍以上である。使用量の上限は特にないが、経済的な観点から、10モル倍、好ましくは3モル倍である。
【0016】
塩基性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫化ナトリウム等の無機塩基類、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、安息香酸ナトリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、後述する塩基性溶媒等の有機塩基類等が挙げられる。かかる塩基性物質のなかでも、カルボン酸アルカリ金属塩が好ましく、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが特に好ましい。塩基性物質の使用量は、ラクトン類(1)に対して、通常0.01〜10モル倍、好ましくは0.2〜2モル倍である。なお、後述する塩基性溶媒を反応に用いる場合には、かかる塩基性物質を用いなくてもよい。
【0017】
ラクトン類とチオアミド類の反応は、通常反応溶媒の存在下で実施される。反応溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチルウレア、ヘキサメチルホスホリルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、トリイソプロパノールアミン、トリ−n−ブチルアミン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の塩基性溶媒等が挙げられる。また、これら反応溶媒に、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の低極性溶媒を混合して用いてもよい。かかる反応溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率および経済面から、ラクトン類に対して、通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下である。
【0018】
反応温度は、通常100〜150℃、好ましくは110〜130℃である。反応は、常圧で行なってもよいし、加圧下もしくは減圧下で行なってもよい。
【0019】
なお、硫黄の共存下に反応を実施してもよく、その使用量は、経済的な面も考慮すると、実用的にはラクトン類(1)に対して、1モル倍以下である。硫黄は、粉末状もしくは塊状等どのような形状であっても使用することができるが、なかでも粉末状のものが好適である。
【0020】
ラクトン類(1)とチオアセトアミド類とを、水硫化アルカリ、硫黄および塩基性物質の存在下に反応させる場合のチオアミド類としては、上記したものと同様のものが挙げられる。チオアミド類の使用量は、ラクトン類(1)に対して、通常0.01モル倍以上、好ましくは0.05モル倍以上、より好ましくは0.1モル倍以上である。使用量の上限は特にないが、経済的な観点から、10モル倍、好ましくは3モル倍、より好ましくは2モル倍である。
【0021】
水硫化アルカリとしては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム等のアルカリ金属水硫化物、水硫化カルシウム等のアルカリ土類金属水硫化物等が挙げられ、アルカリ金属水硫化物が好ましく、水硫化ナトリウムが特に好ましい。水硫化アルカリは、無水物、水和物のいずれであってもよいが、通常水和物が用いられる。またその形状は特に制限はない。
【0022】
水硫化アルカリの使用量は、ラクトン類(1)に対して、通常0.1モル倍以上であればよく、上記したチオアミド類および後述する硫黄と合わせて硫黄換算で、ラクトン類(1)に対して、通常0.9モル倍以上、好ましくは1モル倍以上、より好ましくは1.2モル倍以上となるよう、チオアミド類および硫黄の使用量に応じて、適宜水硫化アルカリの使用量を決めればよい。水硫化アルカリの使用量の上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、ラクトン類に対して、通常5モル倍、好ましくは2モル倍である。
【0023】
硫黄は、粉末状もしくは塊状等どのような形状であっても使用することができるが、なかでも粉末状のものが好適である。硫黄の使用量は、ラクトン類(1)に対して、通常0.1モル倍以上であればよく、上記したチオアミド類および水硫化アルカリと合わせて硫黄換算で、ラクトン類(1)に対して、通常0.9モル倍以上、好ましくは1モル倍以上、より好ましくは1.2モル倍以上になるよう、チオアミド類および水硫化アルカリの使用量に応じて、適宜決めればよい。硫黄の使用量の上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、ラクトン類(1)に対して、通常5モル倍、好ましくは2モル倍である。
【0024】
塩基性物質としては、上記したものと同様のものが挙げられ、その使用量は、ラクトン類に対して、通常0.01〜10モル倍、好ましくは0.2〜2モル倍である。なお、塩基性溶媒を反応に用いる場合には、上記と同様、かかる塩基性物質を用いなくてもよい。
【0025】
反応は、通常溶媒の存在下で実施される。溶媒としては、上記したものと同様のものが挙げられ、なかでも、グリコール類が好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。また、これら溶媒に、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の低極性溶媒を混合して用いてもよい。かかる溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率および経済面から、ラクトン類(1)に対して、通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下である。
【0026】
反応温度は、通常50〜150℃、好ましくは70〜120℃、より好ましくは80〜110℃である。反応は、常圧で行なってもよいし、加圧下もしくは減圧下で行なってもよい。
【0027】
次に、ラクトン類(1)を加硫化した後に行われる亜鉛還元処理について説明する。
【0028】
亜鉛還元処理は、酸性条件下で実施される。通常ラクトン類(1)を加硫化して得られる反応液に、亜鉛、必要に応じて水と水に不溶の有機溶媒を加え、例えば塩酸、硫酸等の鉱酸、酢酸等の酸の水溶液を加え、反応液のpHを、通常3以下、好ましくは1以下の酸性条件に調整することにより実施される。
かかる還元処理の温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜70℃である。亜鉛は通常粉末状のものが用いられる。
【0029】
亜鉛の使用量は、ラクトン類(1)に対して、通常0.9〜2モル倍、好ましくは0.95〜1.5モル倍である。
【0030】
還元処理は、亜鉛に対する鉛およびカドミウムの合計の存在量が650〜1500ppmである条件下で実施することが重要である。鉛およびカドミウムの合計量が、この範囲であれば、ポリスルフィド体を十分還元し、また過還元を抑制することができる。鉛およびカドミウムの合計の存在量が、亜鉛に対して、650ppmより小さい場合や1500ppmより大きい場合には、ポリスルフィド体の還元が不十分であったり、過還元が進行しやすくなる。
【0031】
かかる条件下で、還元処理を行う方法としては、例えば鉛およびカドミウムの合計の含有量が、亜鉛に対して、650〜1500ppmである亜鉛を用いる方法、反応系内に、鉛およびカドミウムの合計の含有量が、亜鉛に対して、650〜1500ppmとなるよう鉛塩および/またはカドミウム塩を添加する方法等が挙げられる。鉛塩としては、例えば酢酸鉛、塩化鉛等が、カドミウム塩としては、例えば塩化カドミウム等が挙げられる。
【0032】
還元処理終了後、例えば残存亜鉛等の不溶物を濾別し、必要に応じて水等で洗浄処理した後、濃縮処理することにより、目的とする一般式(2)
Figure 0004144187
(式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わす。)
で示されるチオラクトン類(以下、チオラクトン類(2)と略記する。)を取り出すことができる。取り出したチオラクトン類は、例えばジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えばヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アルコール系溶媒と水との混合溶媒等から再結晶させることにより、さらに精製することができる。
【0033】
かくして得られるチオラクトン類(2)としては、例えばヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジメチルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジエチルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(n−プロピル)ヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジアリルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(2−ブテニル)ヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(2−メチル−3−ブテニル)ヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジフェニルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジトルイルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジベンジルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(メトキシベンジル)ヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン、1,3−ジ(ブロモベンジル)ヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン等が挙げられる。
【0034】
なお、ラクトン類(1)として、光学活性体を用いた場合には、立体が保持されたチオラクトン類(2)が得られる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、高速液体クロマトグラフィ(LC)により分析を行った。
【0036】
実施例1
反応容器に、シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン80.0g、チオアセトアミド5.05g、硫黄5.17g、酢酸ナトリウム12.57g、水硫化ナトリウム10.78gおよびポリエチレングリコール(平均分子量600)117.0gを加え、内温105℃に昇温し、同温度で9時間攪拌、保持した。その後、内温90℃に冷却し、トルエン430.8gおよび水274.4gを加えた。さらに内温20℃まで冷却し、亜鉛粉末(鉛1310ppm、カドミウム20ppm含有)20.96gを加え、内温15〜30℃で、濃塩酸113.54gを2時間かけて滴下した。内温45℃へ昇温し、同温度で10時間攪拌、保持した。反応液を高速液体クロマトグラフィ分析したところ、残存ポリスルフィド体は未検出、過還元体/生成物比=0.74%(LC面積百分率値比)であった(生成物:シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン)。
【0037】
実施例2
反応容器に、シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン80.0g、チオアセトアミド5.05g、硫黄5.17g、酢酸ナトリウム12.57g、水硫化ナトリウム10.77gおよびポリエチレングリコール(平均分子量600)116.9gを加え、内温105℃に昇温し、同温度で9時間攪拌、保持した。その後、内温90℃に冷却し、トルエン430.8gおよび水274.4gを加えた。さらに内温20℃まで冷却し、亜鉛粉末(鉛4ppm、カドミウム1340ppm含有)20.96gを加え、内温15〜30℃で、濃塩酸113.54gを2時間かけて滴下した。内温45℃へ昇温し、同温度で10時間攪拌、保持した。反応液を高速液体クロマトグラフィ分析したところ、残存ポリスルフィド体は未検出、過還元体/生成物比=0.30%(LC面積百分率値比)であった(生成物:シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン)。
【0038】
比較例1
反応容器に、シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール2,4−ジオン80.0g、チオアセトアミド5.05g、硫黄5.17g、酢酸ナトリウム12.57g、水硫化ナトリウム10.77gおよびポリエチレングリコール(平均分子量600)116.9gを加え、内温105℃に昇温し、同温度で9時間攪拌、保持した。その後、内温90℃に冷却し、トルエン430.8gおよび水274.4gを加えた。さらに内温20℃まで冷却し、亜鉛粉末(鉛32ppm、カドミウム7ppm含有)20.96gを加え、内温15〜30℃で、濃塩酸113.54gを2時間かけて滴下した。内温45℃へ昇温し、同温度で10時間攪拌、保持した。反応液を高速液体クロマトグラフィ分析したところ、残存ポリスルフィド体/生成物比=3.34%(LC面積百分率値比)であった(生成物:シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン)。
【0039】
比較例2
反応容器に、シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール2,4−ジオン80.0g、チオアセトアミド5.05g、硫黄5.17g、酢酸ナトリウム12.57g、水硫化ナトリウム10.77gおよびポリエチレングリコール(平均分子量600)116.9gを加え、内温105℃に昇温し、同温度で9時間攪拌、保持した。その後、内温90℃に冷却し、トルエン430.8gおよび水274.4gを加えた。さらに内温20℃まで冷却し、亜鉛粉末(鉛1000ppm、カドミウム570ppm含有)20.96gを加え、内温15〜30℃で、濃塩酸113.54gを2時間かけて滴下した。内温45℃へ昇温し、同温度で10時間攪拌、保持した。反応液を高速液体クロマトグラフィ分析したところ、残存ポリスルフィド体は未検出、過還元体/生成物比=1.13%(LC面積百分率値比)であった(生成物:シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン)。
【0040】
比較例3
反応容器に、シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロフロ[3,4−d]イミダゾール2,4−ジオン80.0g、チオアセトアミド5.05g、硫黄5.17g、酢酸ナトリウム12.57g、水硫化ナトリウム10.77gおよびポリエチレングリコール(平均分子量600)116.9gを加え、内温105℃に昇温し、同温度で12.5時間攪拌、保持した。その後、内温90℃に冷却し、トルエン430.8gおよび水274.4gを加えた。さらに内温20℃まで冷却し、亜鉛粉末(鉛582ppm、カドミウム26ppm含有)20.96gを加え、内温15〜30℃で、濃塩酸113.54gを2時間かけて滴下した。内温45℃へ昇温し、同温度で10時間攪拌、保持した。反応液を高速液体クロマトグラフィ分析したところ、残存ポリスルフィド体/生成物比=1.87%(LC面積百分率値比)、過還元体/生成物比=0.18%(LC面積百分率値比)であった(生成物:シス−1,3−ジベンジルヘキサヒドロチエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン)。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、ラクトン類の加硫化反応で生じるポリスルフィド体を十分に還元するとともに、過還元体の副生を抑制することができるため、効率的に目的とするチオラクトン類を製造することができる。

Claims (3)

  1. 一般式(1)
    Figure 0004144187
    (式中、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいアラルキル基を表わす。)
    で示されるラクトン類を加硫化し、次いで酸性条件下、亜鉛で還元処理して、一般式(2)
    Figure 0004144187
    (式中、R1およびR2は上記と同一の意味を表わす。)
    で示されるチオラクトン類を製造する方法において、亜鉛に対して、鉛およびカドミウムが、合計で650〜1500ppm存在している条件下で、還元処理を実施することを特徴とするチオラクトン類の製造方法。
  2. 加硫化反応が、一般式(1)で示されるラクトン類とチオアミド類を、塩基性物質の存在下に反応させる方法である請求項1に記載のチオラクトン類の製造方法。
  3. 加硫化反応が、一般式(1)で示されるラクトン類とチオアミド類とを、水硫化アルカリ、硫黄および塩基性物質の存在下に反応させる方法である請求項1に記載のチオラクトン類の製造方法。
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