JP4144143B2 - 反射防止フィルムもしくはシート - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、反射防止効果を中心に構成される薄膜を表面に設けたハードコートフィルムもしくはシートに関するものであり、用途としては特に各種表示装置、具体的には液晶表示装置、CRT表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロクロミック表示装置、発光ダイオード表示装置、EL表示装置等の各種ディスプレイ、サングラス、ゴーグル、ショーウィンドウ、窓ガラス、各種計器のカバー等の表面の反射防止に効果がある反射防止フィルム若しくはシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラスやプラスチックなどの基材に、酸化チタンや酸化ケイ素などの無機酸化物を蒸着法あるいはスパッタ法などのドライコーティングによって薄膜を形成して反射防止膜などの光干渉による光学多層膜を形成する方法が知られている。しかし、このようなドライコーティングプロセスでは装置が高価で、成膜速度が遅く、生産性が高くないなどの課題を有している。
【0003】
これに対して金属アルコキシドなどを出発組成とし、基材にウェットコーティングして光学多層膜を形成する方法が知られており、高屈折材料としてはTiやZr、低屈折率材料としてはSiなどのアルコキシドを用いる方法が提案されている。
【0004】
以上のような反射防止フィルム、シートに耐引っ掻き性、耐擦傷性、耐薬品性等の性能を付与するために、フィルム、シート基材上に、中間層としてハードコート層を形成し、その上に蒸着、スパッタ、塗布等の方法によって光学薄膜を設けることにより、機械的なハード性が付与された機能性フィルム、シートを製造することが知られている。
【0005】
しかし特にウェットコーティングで作製される光学薄膜では、ある程度の高、低屈折率を得ることはできるが、硬度や耐擦傷性、基材との密着性などの物理的強度が不十分であり、光学多層膜は最外層に使用されるため、強度が不十分では実用に耐えることが困難といった欠点を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ハードコート層単独で2H〜3H程度の鉛筆硬度が実現できたとしても、その表面に金属アルコキシドなどを出発物とする反射防止膜塗液をウェットコーティングによって設けた場合、ハードコート層と反射防止膜層との密着不足、両層の硬さのバランス不良等で硬度が低下するという問題が多い。
【0007】
そこで本発明は、反射防止薄膜層を表面に設けた表面強度に優れるフィルムもしくはシートを製造するのに、ハードコート層の膜厚を変えることなく、その弾性率を特定の範囲に制御することによって、耐スチールウール性に優れ、鉛筆硬度が3H〜4Hの水準を実現する反射防止フィルム若しくはシートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はこの課題を解決するため、プラスチックフィルムもしくはシート基材の少なくとも一方の面に、ハードコート被膜層と金属アルコキシドおよびその加水分解物を主成分とする反射防止薄膜層を積層してなる反射防止フィルム若しくはシートに於いて、上記ハードコート層が、3官能以上の多官能モノマーとウレタンアクリレート材料を重量組成割合で90:10〜70:30の割合で含む活性エネルギー線硬化型樹脂の活性エネルギー線照射による加工工程を経て架橋されたものとし、上記ハードコート層の破壊歪み以下での弾性率が0.7GPaから5.5GPaの範囲で設定され、上記ハードコート層と上記反射防止薄膜層が設けられている側の鉛筆硬度が3Hもしくは4Hであることを特徴とすることによって達せられ、さらに好ましくは上記ハードコート層の膜厚が0.5μm以上、20μm以下であることを特徴とする反射防止フィルムもしくはシートである。
【0009】
また前記ハードコート層が平均粒子径0.01〜10μmの無機或いは有機或いはその双方の微粒子を含む、或いは表面が凹凸形状をしていることを特徴とする反射防止フィルムもしくはシートであり、さらに前記のハードコート層が、活性エネルギー線硬化性樹脂の紫外線もしくは電子線照射による加工工程を経て架橋されていることを特徴とする反射防止フィルムもしくはシートの製造方法によって達成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の反射防止フィルム若しくはシートの構成材料及び製造方法について詳細に説明する。
【0011】
本発明に使用する透明プラスチックフィルムもしくはシートは特に限定されるものではなく、公知の透明プラスチックフィルムもしくはシートの中から適宜選択して用いることができる。
【0012】
具体例としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルムもしくはシートを挙げることができるが、本発明においては、特にトリアセチルセルロースフィルム、及び一軸延伸ポリエステルが透明性に優れることに加えて、光学的に異方性が無い点で好ましい。
【0013】
硬化樹脂被膜層には加工速度の早さ、支持体への熱のダメージの少なさから、特に活性エネルギー線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
活性エネルギー線硬化型樹脂には特に制限はなく、紫外線や電子線硬化により鉛筆硬度がH以上の塗膜を与える樹脂であればハードコート用の候補として任意に使用することができる。
【0015】
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等から合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。さらにアクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も必要に応じて好適に使用することができる。
【0016】
またこれらの樹脂の反応性希釈剤としては、比較的低粘度である1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上のモノマー及びオリゴマー並びに単官能モノマー、例えばN−ビニルピロリドン、エチルアクリレート、プロピルアクリレート等のアクリル酸エステル類、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノニルフェニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、及びそのカプロラクトン変成物などの誘導体、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸等及びそれらの混合物、などを使用することができる。
【0017】
本発明に於いて、活性エネルギー線が紫外線である場合には、光増感剤(ラジカル重合開始剤)を添加する必要があり、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4、4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。
【0018】
これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。有機過酸化物や光重合開始剤の使用量は、前記樹脂組成物の重合性成分100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。
【0019】
ウェットコーティング方式で形成可能な反射防止薄膜層に使用できる金属アルコキシドの高屈折材料の具体例としては、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド等、TiやZrの金属アルコキシドが挙げられる。
【0020】
金属アルコキシドの低屈折材料としては珪素アルコキシドが代表的であり、その具体例としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
これらの金属アルコキシドは溶媒を含む塗液組成物中にP−トルエンスルホン酸などの有機酸触媒を含有させることで、塗工後に大気中の水分で加水分解反応させて被膜形成しても良いし、またあらかじめ水(塩酸などの触媒を含む)を添加し、加水分解反応させたものを用いることもできる。
【0022】
その際に金属アルコキシドの加水分解物が、該金属アルコキシドの全アルコキシル基を加水分解させるのに必要な水の量よりも1/8〜7/8の量の水で部分加水分解されたものであるとすることで安定な組成物を得ることができ、余分な水を残すことなく特別な分離精製せずに用いることができる。
【0023】
また必要に応じて、上記金属アルコキシドに屈折率調整用として、TiO2 、ZnO、ITO、SnO2 等の高屈折率無機微粒子、MgF2 、SiO2 等の低屈折率無機微粒子を任意に配合可能である。さらに金属アルコキシド被膜の強靭性、ハードコート層との密着を向上させる為に、熱硬化樹脂、好ましくは活性エネルギー線硬化性樹脂を必要量配合しても良い。
【0024】
またハードコート層表面に凹凸を形成することによる光学機能として、防眩効果を得たいような場合には、ハードコート剤中に無機もしくは有機微粒子を含有させたり、エンボスによって表面に凹凸を形成することによって目的を達することができる。
【0025】
特に無機もしくは有機微粒子としては活性エネルギー線硬化樹脂中で良好な透明性を保持する微粒子であれば任意に使用することができる。
【0026】
無機微粒子として一般的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどからなる微粒子が用いられ、その中でに防眩性や解像性、ハードコート性等の点よりシリカ粒子、特に合成シリカ粒子が好ましい。
【0027】
尚、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン、等の導電性の透明微粒子も帯電防止性の付与に係わらず用いることができる。
【0028】
また有機微粒子としては粒子内部に適度な架橋構造を有しており、活性エネルギー線硬化樹脂やモノマー、溶剤等による膨潤がない硬質な微粒子を用いることができる。
【0029】
例えば、粒子内部架橋タイプのスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、その他反応性ミクロゲル等を使用することができる。透明微粒子の配合量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部あたり0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。
【0030】
また必要に応じて公知の一般的な塗料添加剤を配合することができる。例えばレベリング、表面スリップ性等を付与するシリコーン系、フッ素系の添加剤は硬化膜表面の傷つき防止性に効果があることに加えて、活性エネルギー線として紫外線を利用する場合は前記添加剤の空気界面へのブリードによって、酸素による樹脂の硬化阻害を低下させることができ、低照射強度条件下に於いても有効な硬化度合を得ることができる。
【0031】
これらの添加量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対し0.01〜0.5重量部が適当である。
【0032】
以上、本発明に使用できる主な構成材料を記述したが、続いて具体的に無機薄膜形成用ハードコートフィルムもしくはシートの製造方法を説明する。
【0033】
ハードコート層の塗工方法は任意であるが、生産段階ではロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター等によるのが一般的である。
【0034】
活性エネルギー線源として紫外線を使用する場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用でき、フィラーを含まないクリア塗膜の硬化には高圧水銀灯、フィラーを含む場合や厚膜の硬化にはメタルハライドランプが一般的に使用される。
【0035】
また電子線を利用して硬化する場合にはコックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線が利用できる。
【0036】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。
<実施例1>
以下に実施例および比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、部および%は特に断わりのない限り重量基準である。
【0037】
ハードコート層の形成
以下に示すハード成分からなる紫外線硬化型樹脂組成物に対し、同じく紫外線硬化型樹脂であるソフト成分を重量組成割合で0%,10%,20%,30%,60%,100%に配合し、この組成物を2−ブタノンにて樹脂固形分が70wt%となるように調製した塗料組成物をハードコート剤として使用した。
【0038】
(ハード成分)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 8重量部
・トリメチロールプロパントリアクリレート 2重量部
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.3重量部
【0039】
(ソフト成分)
・ウレタンアクリレートオリゴマー(M−1600、東亜合成社製)
【0040】
次に厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムの片面に、前記、紫外線硬化型のハードコート剤をワイヤーバーにて塗布し溶剤分を蒸発させて厚さ約5μmの塗布層を形成した後、塗膜側より高圧水銀UVランプ(120W/cm)の紫外線を積算光量約400mJ/m2 の条件で硬化処理することにより、ハードコート樹脂層を作製した。トリアセチルセルロースフィルムとハードコート層との密着は良好であった。
【0041】
反射防止薄膜層の形成
<高屈折率コーティング組成物>
テトライソプロポキシドチタンの加水分解物9部、ペンタエリスリトールトリアクリレート1部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.2部を酢酸エチル/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶媒に固形分として2wt%となるように調整したものを高屈折率コーティング組成物とした。上記、テトライソプロポキシドチタンの加水分解物はまずテトライソプロポキシドチタン1molに対して0.1Nの塩酸2molと酢酸エチル/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶媒を混合し、室温で2時間撹拌することによって加水分解反応を行なった。
【0042】
<低屈折率コーティング組成物>
テトラメトキシシランの加水分解物9部、ペンタエリスリトールトリアクリレート1部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.2部を酢酸エチル/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶媒に固形分として2wt%となるように調整したものを低屈折率コーティング組成物とした。上記、テトラメトキシシランの加水分解物はまずテトラメトキシシラン1molに対して0.1Nの塩酸2molと酢酸エチル/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶媒を混合し、室温で2時間撹拌することによって加水分解反応を行なった。
【0043】
上記、高および低屈折率コーティング組成物を前記ハードコート層上にバーコーターによって高、低の順に塗布、積層し、100℃,1minの条件で熱乾燥させた後、高圧水銀UVランプ(120W/cm)の紫外線を積算光量約800mJ/m2 の条件で照射し、硬化処理を行ない、光学膜厚(nd=屈折率n×膜厚d(nm))が高、低それぞれnd=550/4nmとなるように反射防止薄膜層を形成した。波長500nmでの反射率は約0.8%、430〜680nmの範囲で反射率は約1%であった。ハードコート層と反射防止薄膜層との密着は良好であった。
【0044】
評価方法
上記の方法で得られた反射防止フィルムについて、下記の測定方法により機械的物性を測定し、評価した結果を表1に示す。
【0045】
<ハードコート層の弾性率>:以下に示す内部応力の式を用い、ハードコート層の弾性率(Ef)を算出した。ポリエステルフィルムの弾性率(Es)、及びポリエステルフィルム/ハードコート層から成る複合膜の弾性率(Ec)は引っ張り強度試験機を用いて、その応力−歪み曲線の初期傾斜から求めた。但し、ハードコート層にはクラックが生じ易い為、クラックが発生する破壊歪み以下での応力−歪み曲線を用いた。
【0046】
σc(b+d)=σfd+σsb
Ec(b+d)=Efd+Esb
∴Ef=(Ec(b+d)−Esb)/d
σc:複合膜全体の内部応力
σf:ハードコート層の内部応力
σs:ポリエステルフィルムの内部応力
Ec:複合膜全体の弾性率
Ef:ハードコート層の弾性率
Es:ポリエステルフィルムの弾性率
b:ポリエステルフィルムの厚さ
d:ハードコート層の厚さ
【0047】
<鉛筆硬度>:異なる硬度の鉛筆を用い、1kg荷重下でJIS K5400で示される試験法での傷の有無を判定した。
【0048】
<耐擦傷性>:#0000のスチールウールにより、ハードコート膜の表面を400gの荷重をかけながら10回摩擦し、傷の発生の有無及び傷の程度を目視により観察し、以下の判定基準に従って評価した。
A:傷の発生が全く認められない。
B:数本の細い傷が認められる。
C:無数の傷が認められる。
【0049】
【表1】
【0050】
評価結果
表1にハードコート層のみの弾性率、鉛筆硬度、耐擦傷性、及びハードコート層上に反射防止層を設けた形態での鉛筆硬度、耐擦傷性の評価結果を示す。
【0051】
ハードコート組成のソフト成分割合が増加するに比例してハードコート層の弾性率、鉛筆硬度、耐擦傷性が低下する。一方、ハードコート層上に金属アルコキシドの加水分解物を主成分とする反射防止薄膜層を設けた場合、ハードコート層の弾性率が高すぎても、低すぎても鉛筆硬度が低下し、最適な弾性率の範囲が存在する。
【0052】
ハードコート層の弾性率が約0.7〜5.5GPaの範囲内で最も高い鉛筆硬度を示し、特にソフト成分が20〜30%、弾性率にして約2.9〜4.1GPaの範囲でハードコート層の最高硬度である3Hより優れる4Hの硬度が得られた。
【0053】
耐擦傷性はハードコート層の影響が小さく、主に反射防止薄膜層に依存する。反射防止薄膜層上に形成された鉛筆での引っ掻き傷を顕微鏡で拡大観察すると、ハードコートの弾性率が高すぎる場合、反射防止薄膜層に応力が集中し、反射防止薄膜層のみが表面から削り取られているように見えた。
【0054】
またハードコート層の弾性率が低すぎる場合には、ハードコートと反射防止薄膜層全体が支持体であるトリアセチルセルロース表面から削り取られている。一方、ハードコート層の弾性率が最適な範囲であれば、鉛筆の先端からの応力をハードコート層の変形によって分散、吸収することができ、反射防止薄膜層のみへの応力集中が緩和されると解釈できる。
【0055】
【発明の効果】
上述の実施例の説明からも明らかなように、本発明による反射防止ハードコートフィルムもしくはシートは、表面硬度に優れ、特にハードコート層の膜厚を変えることなく、その弾性率を特定の範囲に制御することによって、鉛筆硬度で3H〜4Hの水準を実現することができる。
Claims (8)
- プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に、ハードコート層と金属アルコキシドおよびその加水分解物を主成分とする反射防止薄膜層を積層してなる反射防止フィルムに於いて、
上記ハードコート層が、3官能以上の多官能モノマーとウレタンアクリレート材料を重量組成割合で90:10〜70:30の割合で含む活性エネルギー線硬化型樹脂の活性エネルギー線照射による加工工程を経て架橋されたものであり、且つ、
上記ハードコート層の破壊歪み以下での弾性率が2.9GPaから5.7GPaの範囲で設定されており、且つ、
上記ハードコート層と上記反射防止薄膜層が設けられている側の鉛筆硬度が3Hもしくは4Hである
ことを特徴とする反射防止フィルム。 - 上記ハードコート層が平均粒子径0.01〜10μmの微粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
- 上記ハードコート層が表面が凹凸形状をしていることを特徴とする請求項1または2記載の反射防止フィルム。
- 上記ハードコート層の膜厚が0.5μm以上、20μm以下であることを特徴とする請求項1、2、または3記載の反射防止フィルム。
- プラスチックシート基材の少なくとも一方の面に、ハードコート層と金属アルコキシドおよびその加水分解物を主成分とする反射防止薄膜層を積層してなる反射防止シートに於いて、
上記ハードコート層が、3官能以上の多官能モノマーとウレタンアクリレート材料を重量組成割合で90:10〜70:30の割合で含む活性エネルギー線硬化型樹脂の活性エネルギー線照射による加工工程を経て架橋されたものであり、且つ、
上記ハードコート層の破壊歪み以下での弾性率が2.9GPaから5.7GPaの範囲で設定されており、且つ、
上記ハードコート層と上記反射防止薄膜層が設けられている側の鉛筆硬度が3Hもしくは4Hである
ことを特徴とする反射防止シート。 - 上記ハードコート層が平均粒子径0.01〜10μmの微粒子を含むことを特徴とする
請求項5記載の反射防止シート。 - 上記ハードコート層が表面が凹凸形状をしていることを特徴とする請求項5または6記載の反射防止シート。
- 上記ハードコート層の膜厚が0.5μm以上、20μm以下であることを特徴とする請求項5、6または7記載の反射防止シート。
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