JP4143918B2 - 二相変調制御式インバータ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二相変調制御式インバータ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、三相交流電動機を駆動制御する三相インバータ回路と、前記三相インバータ回路の所定の一相のスイッチング素子のオンオフ状態を所定の順序で所定期間停止し、停止相以外の二相のスイッチング素子を所定のPWMキャリア周期でPWM制御するインバータ制御部と、を備えた二相変調制御式インバータ装置においては、指令電圧ベクトルを挟む60度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して、三相PWM電圧を発生させるように構成されている。
【0003】
一方、出力電圧が低い場合や電圧指令ベクトルの位相角が基本電圧ベクトルの位相角に近い場合にも直流母線の電流を検出するのに十分なパルス幅を得ることを目的として、120度位相差のある2種類の基本電圧ベクトルを利用したスイッチング方式が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−298631号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、三相交流電動機を駆動制御するための三相インバータ回路を含むインバータ装置には、ノイズ除去のためのパワーフィルタが電源端子の正極と負極とに接続されるが、パワーフィルタは、インバータ装置の体格の1/3以上の大きさを占めるため、その小型化を図ることが求められている。そして、パワーフィルタの体格は、三相インバータ回路のスイッチングによって発生する脈動電流の大きさによって決定される。
【0006】
そして、この脈動電流には、原因の異なる2種類の脈動電流が存在する。その一つは、図19に示すように、U相電流Iu>0,V相電流Iv>0の場合にPWMスイッチングにおける負荷への通電が停止する期間においてパワーフィルタのリアクトルに溜まったインダクタンスエネルギによって発生し、パワーフィルタコンデンサへ流入するリップル電流(以下、リップル電流▲1▼と称する)である。他の一つは、図20に示すように、U相電流Iu>0,V相電流Iv<0の場合に三相交流電動機のコイルに溜まったエネルギによって発生し、パワーフィルタコンデンサへ流入するリップル電流(以下、リップル電流▲2▼と称する)である。但し、リップル電流▲2▼は、所定の二相の正側スイッチング素子を同時にオンして還流モードを発生させることによって低減される。
【0007】
しかしながら、60度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させる従来のスイッチング方式(以下、60度電圧ベクトル方式と称する)では、PWMスイッチングにおける負荷への通電が停止する期間の比率が大きく、リップル電流▲1▼が比較的多く発生するため、ノイズ除去用のパワーフィルタが大きくならざるを得ないという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、PWMスイッチングによって発生するリップル電流を低減することが可能な二相変調制御式インバータ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に記載の二相変調制御式インバータ装置は、三相交流電動機を駆動制御する三相インバータ回路と、前記三相インバータ回路の所定の一相のスイッチング素子のオンオフ状態を所定の順序で所定期間停止し、停止相以外の二相のスイッチング素子を所定のPWMキャリア周期でPWM制御するインバータ制御部と、を備えた二相変調制御式インバータ装置において、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるように構成したことを特徴とする。
【0010】
従って、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるので、三相交流電動機への通電が停止する期間の比率が小さく、ノイズ除去用のパワーフィルタの平滑リアクトルに溜まったインダクタンスエネルギ等によって発生するリップル電流を確実に低減することができる。これにより、小型のパワーフィルタを用いることが可能となり、インバータ装置全体の体格を小型化することができる。
【0011】
また、請求項1に記載の二相変調制御式インバータ装置は、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式と、指令電圧ベクトルを挟む60度以内の基本電圧ベクトルと大きさを持たない零電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式とを、ロータ位置に応じて切り替えるように構成したことを特徴とする。
【0012】
従って、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式と、指令電圧ベクトルを挟む60度以内の基本電圧ベクトルと大きさを持たない零電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式とを、ロータ位置に応じて切り替えるので、パワーフィルタのインダクタンスエネルギによって発生するリップル電流の低減に加えて、三相交流電動機のコイルに溜まったエネルギによって発生するリップル電流をも低減することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の二相変調制御式インバータ装置は、スイッチング停止相の切り替えを略120度ごとに行うパターンと、略60度ごとに行うパターンと、略30度ごとに行うパターンとをロータ位置に応じて切り替えるように構成したことを特徴とする。
【0014】
従って、スイッチング停止相の切り替えを略120度ごとに行うパターンと、略60度ごとに行うパターンと、略30度ごとに行うパターンとをロータ位置に応じて切り替えるので、ロータ位置に応じて最もリップル電流の少ない二相変調パターンへ切り替えることによって、リップル電流をより一層低減することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の二相変調制御式インバータ装置は、前記スイッチング方式の切り替えが行われるロータ位置を、力率及び/又は変調度に応じて設定したことを特徴とする。
【0016】
すなわち、力率、変調度によって三相交流電動機に印加した電圧に対する電流の位相が異なるため、前記スイッチング方式の切り替えが行われるロータ位置を、力率及び/又は変調度に応じて設定することにより、各運転条件でリップル電流が最小となるスイッチング方式を選択することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した二相変調制御式インバータ装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
まず、第一の実施形態の二相変調制御式インバータ装置(以下、インバータ装置と称する)1の全体構成について、図1の回路図を参照しつつ説明する。
【0019】
インバータ装置1は、PWMスイッチング信号に基づいて三相交流電動機の各相へ駆動電力を供給する電圧型インバータ回路(以下、インバータ回路と称する)2と、インバータ回路2を介して三相交流電動機へ電力を供給する電源3と、電源3の正極側と負極側とに接続されるパワーフィルタ4と、インバータ回路2の各スイッチング素子2u,2v,2w,2x,2y,2zへ入力されるPWMスイッチング信号(PWM−U,PWM−V,PWM−W,PWM−X,PWM−Y,PWM−Z)を生成するインバータ制御回路5とから構成されている。尚、電圧型インバータ回路2が本発明の三相インバータ回路を、インバータ制御回路5がインバータ制御部をそれぞれ構成するものである。
【0020】
インバータ回路2は、U相上段のスイッチング素子2u、U相下段のスイッチング素子2x、V相上段のスイッチング素子2v、V相下段のスイッチング素子2y、W相上段のスイッチング素子2w、及びW相下段のスイッチング素子2zからなる6個のスイッチング素子をブリッジ接続した周知構成の三相インバータ回路である。
【0021】
パワーフィルタ4は、ノイズ除去を目的として設けられるものであり、電源3の正極側に接続された平滑リアクトル4aと、平滑リアクトル4aと電源3の負極側との間に接続されたパワーフィルタコンデンサ4bとを備えている。
【0022】
次に、インバータ制御回路5におけるPWMスイッチング信号の生成方式について空間ベクトル法を用いて説明する。空間ベクトル法とは、指令電圧ベクトルを8個の基本電圧ベクトルで表現し、時間に換算して6個のスイッチング素子のオン/オフを決定するものである。基本電圧ベクトルとは、電圧型インバータにおいて6個のスイッチング素子のオン/オフの組合わせで決まる23 =8種類の電圧ベクトルである。また、8種類の基本電圧ベクトルV0〜V7は、図2に示すように、互いに60度だけ位相が異なり且つ大きさの等しい6種の電圧ベクトルV1〜V6と、大きさを持たない2種の零電圧ベクトルV0及びV7とからなる。ここで、8種のベクトル(Sa,Sb,Sc)は、8通りのスイッチングモードに対応し、各相の正側のスイッチング素子2u,2v,2wがオンであるときに、Sa,Sb,Scを「1」と表し、逆に負側のスイッチング素子2x,2y,2zがオンであるときに「0」と表したものである。
【0023】
最初に、本実施形態との比較のため、従来方式である60度電圧ベクトル方式における電圧ベクトルの合成方法について説明する。60度電圧ベクトル方式では、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む60度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して、三相PWM電圧を発生させる。例えば、図3(a)のベクトル図に示すように、60度位相が異なる基本電圧ベクトルV1及びV2と零電圧ベクトルV0とを合成して指令電圧ベクトルを生成する。また、図3(a)のベクトル図に対応する1PWM周期における各相のスイッチングパターンは図3(b)に示すとおりである。そして、60度電圧ベクトル方式では、図3(c)に示すように、負荷(すなわち、三相交流電動機)への通電が停止する期間、換言すれば、零電圧ベクトルV0の比率が大きいため、パワーフィルタ4のインダクタンスエネルギによって発生し、パワーフィルタコンデンサ4bへ流入するリップル電流▲1▼が比較的大きいという問題がある。
【0024】
これに対し、本実施形態では、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して、三相PWM電圧を発生させる(以下、120度電圧ベクトル方式と称する)。例えば、図4(a)のベクトル図に示すように、120度位相が異なる基本電圧ベクトルV1及びV3と零電圧ベクトルV0とを合成して指令電圧ベクトルを生成する。また、図4(a)のベクトル図に対応する1PWM周期における各相のスイッチングパターンは図4(b)に示すとおりである。尚、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルの合成パターンとしては、図4(a)のベクトル図に示す合成パターン以外に、図4(d)のベクトル図に示す合成パターンが存在する。図4(d)の合成パターンでは、基本電圧ベクトルV1,V2,V3を合成して指令電圧ベクトルを生成している。
【0025】
また、120度位相差電圧ベクトルは、具体的には、図5に示すように、1相のみ位相が180度シフトされたPWMキャリアで変調することにより生成される。但し、シフト量によって120度位相差電圧ベクトルの割合が異なる。
【0026】
そして、本実施形態の120度電圧ベクトル方式では、図4(c)に示すように、負荷(三相交流電動機)への通電が停止する期間、換言すれば、零電圧ベクトルV0の比率が小さく、パワーフィルタ4の平滑リアクトル4aに溜まったインダクタンスエネルギによって発生し、パワーフィルタコンデンサ4bへ流入するリップル電流▲1▼を確実に低減することができる。ここで、図6は、図4に示す本実施形態の120度電圧ベクトル方式を採用した場合のリップル電流率と、図3に示す従来の60度電圧ベクトル方式を採用した場合のリップル電流率とを示すグラフである。図6より明らかなように、いずれの変調度においても本実施形態において従来方式よりもリップル電流率の低減が図られていることが分かる。尚、リップル電流率とは、相電流実効値に対するリップル電流の比率を百分率で表したものである。
【0027】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。尚、以下の各実施形態は、第一の実施形態とPWMスイッチングの方式が異なるのみであるので、インバータ装置の全体構成についての説明は省略する。
【0028】
本実施形態は、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式と、指令電圧ベクトルを挟む60度以内の基本電圧ベクトルと大きさを持たない零電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式とを、ロータ位置に応じて切り替えるように構成したことを特徴とする。
【0029】
すなわち、パワーフィルタコンデンサ4aに流入するリップル電流には、上述したリップル電流▲1▼以外に、三相交流電動機のコイルに溜まったエネルギによって発生するリップル電流▲2▼が存在する。そして、リップル電流▲2▼については、所定の二相の正側スイッチング素子を同時にオンして還流モードを発生させる60度電圧ベクトル方式により低減が可能である。また、ロータ位置によって、リップル電流▲1▼が多く発生する状態と、リップル電流▲2▼が多く発生する状態とが存在するため、本実施形態では、リップル電流▲1▼が多く発生するロータ位置では120電圧ベクトル方式を選択し、リップル電流▲2▼が多く発生するロータ位置では60度電圧ベクトル方式を選択するようにPWMスイッチング方式の切り替えを行うように構成することにより、第一の実施形態よりもさらにリップル電流の低減を可能とするものである。
【0030】
ここで、図7は、ロータ位置とリップル電流率との関係を示しており、120度電圧ベクトル方式のみを選択した場合のリップル電流率、60度電圧ベクトル方式のみを選択した場合のリップル電流率、及び本実施形態による電圧ベクトル方式の切り替えを行った場合のリップル電流率のグラフを表している。図7のグラフに示す本実施形態の一例では、ロータ位置0度〜18度で60度電圧ベクトル方式を、18度〜54度で120度電圧ベクトル方式を、54度〜78度で60度電圧ベクトル方式を、78度〜120度で120度電圧ベクトル方式をそれぞれ選択するように切り替えを行っている。図7より、本実施形態によれば、ロータ位置に応じてリップル電流率がより低い電圧ベクトル方式に切り替えることによって、全ロータ位置においてリップル電流率を低減することが可能であることが分かる。
【0031】
次に、インバータ制御回路5における60度電圧ベクトルと120度電圧ベクトルとの切り替えを行うための具体的構成について、図8を参照しつつ説明する。CS(チップセレクト)=Highのとき、60度電圧ベクトルを生成し、CS=Lowのとき、スイッチングしている二相の内、どちらか一相(図8ではV相)の変調度を反転させることにより120度電圧ベクトルを生成する。すなわち、CS=Highのとき、図9に示す論理回路に信号V及びその反転が入力されると、V’及びその反転がそれぞれそのまま出力される。一方、CS=Lowのとき、信号Vの入力に対してVの反転がV’として出力され、Vの反転の入力に対してVがV’として出力される。ここで、V’は、V相スイッチング素子の上アーム(スイッチング素子2v)に入力される信号であり、V’の反転は、V相スイッチング素子の下アーム(スイッチング素子2y)に入力される信号である。尚、図9に示す論理回路において常にCS=Lowとして信号生成を行った場合が、上述した第一の実施形態に相当する。
【0032】
また、PWMキャリアに対する指令値書き換えタイミング及びCS書き換えタイミングは、図10に示すとおりである。そして、このような構成により、図11(a)に示す60度電圧ベクトル方式による各相電圧の波形と同図(b)に示す120度電圧ベクトル方式による各相電圧の波形との切り替えが行われる。
【0033】
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。本実施形態は、スイッチング停止相の切り替えを略120度ごとに行うパターンと、略60度ごとに行うパターンと、略30度ごとに行うパターンとをロータ位置に応じて切り替えるように構成したことを特徴とする。
【0034】
図12(a)は、スイッチング停止相の切り替えを略120度ごとに行う二相変調パターン(以下、二相変調▲1▼と称する)における各相のU,V,W各相の変調度(Duty)を示すグラフであり、同図(b)は二相変調▲1▼による60度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを示す図であり、同図(c)は二相変調▲1▼による120度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを示す図である。
【0035】
図13(a)は、スイッチング停止相の切り替えを略60度ごとに行う二相変調パターン(以下、二相変調▲2▼と称する)における各相のU,V,W各相の変調度(Duty)を示すグラフであり、同図(b)は二相変調▲2▼による60度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを示す図であり、同図(c)は二相変調▲2▼による120度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを示す図である。
【0036】
図14(a)は、スイッチング停止相の切り替えを略30度ごとに行う二相変調パターン(以下、二相変調▲3▼と称する)における各相のU,V,W各相の変調度(Duty)を示すグラフであり、同図(b)は二相変調▲3▼による60度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを示す図であり、同図(c)は二相変調▲3▼による120度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを示す図である。
【0037】
尚、120度電圧位相が異なる基本電圧ベクトルで指令電圧ベクトルを合成する場合、基本電圧ベクトルの選択の仕方は、図15(a)に示すパターンと同図(b)に示すパターンの2種類が存在する。
【0038】
図16は、60度電圧ベクトル方式及び120度電圧ベクトル方式について、二相変調▲1▼、二相変調▲2▼、及び二相変調▲3▼のそれぞれにおけるリップル電流率の変化を示すグラフである。図16より明らかなように、ロータ位置によってリップル電流率の低い電圧ベクトル方式及び二相変調パターンが異なっている。本実施形態では、ロータ位置に応じて最もリップル電流率の低い電圧ベクトル方式及び二相変調パターンを選択するように切り替えを行うように構成されているため、リップル電流をより一層低減することができる。
【0039】
次に、本発明の第四の実施形態について説明する。本実施形態は、スイッチング方式の切り替えが行われるロータ位置を、力率及び/又は変調度に応じて設定することを特徴とする。
【0040】
すなわち、上述した第三の実施形態では複数のスイッチングパターンの内、ロータ位置に応じて最もリップル電流率の低いパターンへ切り替えを行うように構成したが、リップル電流率の変化とロータ位置との関係は、力率、変調度によって変化する。つまり、力率、変調度(換言すれば、トルク、回転数)によって三相交流電動機に印加した電圧に対する電流の位相が異なるため、力率及び/又は変調度に応じて切り替えタイミング(ロータ位置)を適宜設定することで、各運転条件でリップル電流が最小となる方式を選択することができる。
【0041】
例えば、力率=1の場合には、図17(a)に示すように、二相変調▲2▼による120度電圧ベクトル方式が、ロータ位置の全範囲においてリップル電流が最小となっている。このため、ロータ位置の全範囲において二相変調▲2▼による120度電圧ベクトル方式を選択する。
【0042】
また、力率=0.9の場合は、図17(b)に示すように、ロータ位置が0度から20度では二相変調▲3▼による120度電圧ベクトル方式において、20度から78度では二相変調▲1▼による120度電圧ベクトル方式において、78度から120度では二相変調▲2▼による120度電圧ベクトル方式において、それぞれリップル電流が最小となっている。従って、ロータ位置が20度、78度、120度(0度)のときに、上述した順に各スイッチング方式への切り替えを行う。
【0043】
また、図17(c)に示すように、力率=0.7の場合は、ロータ位置が0度から40度では二相変調▲3▼による120度電圧ベクトル方式において、40度から88度では二相変調▲1▼による120度電圧ベクトル方式において、88度から100度では二相変調▲2▼による60度電圧ベクトル方式において、100度から120度では二相変調▲2▼による120度電圧ベクトル方式において、それぞれリップル電流が最小となっている。従って、ロータ位置が40度、88度、100度、120度(0度)のときに、上述した順に各スイッチング方式への切り替えを行う。
【0044】
尚、図18は、力率を1,0.9,0.7とし、変調度を17%,43%,65%,87%,100%とした場合における各方式のリップル電流率を測定した結果を表している。また、リップル電流率の測定データの前に*印が付してあるものが、各運転条件における最小のリップル電流率である。このように、力率、変調度によって、リップル電流率が最小となる方式が異なるため、力率及び/又は変調度に応じてリップル電流率が最小となるスイッチング方式へ切り替えを行うことにより、リップル電流を低減することができることがわかる。
【0045】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【0046】
例えば、前記第四の実施形態では、スイッチング方式の切り替えが行われるロータ位置を、力率及び/又は変調度に応じて設定するように構成したが、図18の表に示される力率及び変調度の各条件で最小のリップル電流率を示すスイッチング方式を全ロータ位置において選択するように構成してもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の二相変調制御式インバータ装置によれば、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるので、三相交流電動機への通電が停止する期間の比率が小さく、ノイズ除去用のパワーフィルタの平滑リアクトルに溜まったインダクタンスエネルギ等によって発生するリップル電流を確実に低減することができる。これにより、小型のパワーフィルタを用いることが可能となり、インバータ装置全体の体格を小型化することができる。特に、少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式と、指令電圧ベクトルを挟む60度以内の基本電圧ベクトルと大きさを持たない零電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式とを、ロータ位置に応じて切り替えるので、パワーフィルタのインダクタンスエネルギによって発生するリップル電流の低減に加えて、三相交流電動機のコイルに溜まったエネルギによって発生するリップル電流をも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態である二相変調式インバータ装置の電気的回路構成を示す回路図である。
【図2】 基本電圧ベクトルを示す図である。
【図3】 (a)は60度電圧ベクトル方式を表すベクトル図、(b)は(a)のベクトル図に対応する1PWM周期における各相のスイッチングパターン図、(c)は60度電圧ベクトル方式におけるU相、V相の通電タイミングとリップル電流波形との関係を示す図である。
【図4】 (a)は120度電圧ベクトル方式を表すベクトル図、(b)は(a)のベクトル図に対応する1PWM周期における各相のスイッチングパターン図、(c)は120度電圧ベクトル方式におけるU相、V相の通電タイミングとリップル電流波形との関係を示す図である。
【図5】 120度位相差電圧ベクトルの生成方法を説明する図である。
【図6】 120度位相差電圧ベクトル方式(本方式)によるリップル電流率と60度位相差電圧ベクトル方式(従来方式)によるリップル電流率とを比較して示すグラフである。
【図7】 第二の実施形態における電圧ベクトル方式の切り替えを説明するための図であり、各スイッチング方式におけるリップル電流率の変化を示すグラフである。
【図8】 第二の実施形態における60度電圧ベクトルと120度電圧ベクトルとの切り替え方法を説明する図である。
【図9】 第二の実施形態における60度電圧ベクトルと120度電圧ベクトルとの切り替えを行うための具体的回路例を示す図である。
【図10】 第二の実施形態におけるPWMキャリアに対する指令値書き換えタイミング及びCS書き換えタイミングを示す図である。
【図11】 (a)は60度電圧ベクトル方式による各相電圧の波形を、(b)は120度電圧ベクトル方式による各相電圧の波形をそれぞれ示す図である。
【図12】 (a)は二相変調▲1▼の変調パターンを、(b)は60度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを、(c)は120度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンをそれぞれ説明する図である。
【図13】 (a)は二相変調▲2▼の変調パターンを、(b)は60度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを、(c)は120度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンをそれぞれ説明する図である。
【図14】 (a)は二相変調▲3▼の変調パターンを、(b)は60度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを、(c)は120度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンをそれぞれ説明する図である。
【図15】 120度電圧ベクトル方式における基本電圧ベクトルの選択パターンを説明する図である。
【図16】 第三の実施形態によるスイッチング方式の切り替えを説明するための図であり、各スイッチング方式におけるリップル電流率の変化を示すグラフである。
【図17】 第四の実施形態によるスイッチング方式の切り替えを説明するための図であり、(a)は力率1、(b)は力率0.9、(c)は力率0.7におけるスイッチング方式の切り替えとリップル電流率の変化とを示すグラフである。
【図18】 力率及び変調度の各条件下において各スイッチング方式によるリップル電流率を測定した結果を示す表である。
【図19】 リップル電流▲1▼の発生を説明する図である。
【図20】 リップル電流▲2▼の発生を説明する図である。
【符号の説明】
1…二相変調制御式インバータ装置、2…電圧型インバータ回路(三相インバータ回路)、2u,2v,2w,2x,2y,2z…スイッチング素子、5…インバータ制御回路(インバータ制御部)。
Claims (3)
- 三相交流電動機を駆動制御する三相インバータ回路と、前記三相インバータ回路の所定の一相のスイッチング素子のオンオフ状態を所定の順序で所定期間停止し、停止相以外の二相のスイッチング素子を所定のPWMキャリア周期でPWM制御するインバータ制御部と、を備えた二相変調制御式インバータ装置において、
少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるものであって、
少なくとも指令電圧ベクトルを挟む120度位相が異なる2つの基本電圧ベクトルを含む電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式と、指令電圧ベクトルを挟む60度以内の基本電圧ベクトルと大きさを持たない零電圧ベクトルを合成して三相PWM電圧を発生させるスイッチング方式とを、ロータ位置に応じて切り替えるように構成したように構成したことを特徴とする二相変調制御式インバータ装置。 - スイッチング停止相の切り替えを略120度ごとに行うパターンと、略60度ごとに行うパターンと、略30度ごとに行うパターンとをロータ位置に応じて切り替えるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の二相変調制御式インバータ装置。
- 前記スイッチング方式の切り替えが行われるロータ位置を、力率及び/又は変調度に応じて設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の二相変調制御式インバータ装置。
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